2018年11月06日更新

天翔ける君と巡りて

  • 難易度:★★|
  • 人数:2人~上限なし|
  • プレイ時間:2~3時間(ボイスセッション)

□あらすじ
どこか寂しい日々を送る、独り身の探索者。
想い人も傍にいないからか、街中を彩る七夕の知らせが心に引っかかる。
そんな七月の六日のこと。探索者は突然、意識を失う―――。
これは、まだ見ぬ彦星と織姫の物語。

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ストック

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□レギュレーション

基本ルールブック準拠(サプリメント2010、2015使用可)
現代、クローズド
七夕をテーマにしたコンビシナリオ
推奨技能:なし
PC1は彦星、PC2は織姫の役回り
2時間くらいで終わるかと

□あらすじ
どこか寂しい日々を送る、独り身の探索者。
想い人も傍にいないからか、街中を彩る七夕の知らせが心に引っかかる。
そんな七月の六日のこと。探索者は突然、意識を失う―――。
これは、まだ見ぬ彦星と織姫の物語。

◆導入◆

(共通のもの。同様のことがあったとして同時進行で描写する)
探索者はそれなりに交流関係はあるものの、どこか寂しい日々を送っていた。
もうすぐ、七夕がやってくる。何か願いがあるわけでもなく、誰かを想うわけでもない。
だけど何故か、七夕を知らせるポスターや季節の御菓子を見ていると、心は締め付けられた。

七月六日、その日は七月の初旬だというのに、真夏のように暑かった。
いつもの通り仕事や学業などを終え、帰路につく。今日は妙に、ミスの多い日だった。酷く疲れた身体を叱咤しつつ、歩く。
蒸し暑さは日が沈みかけた頃合いだというのに、続いていた。汗が何をするでもなく、頬や首筋をつたう。
その時だった。

ホワイトアウト。次の瞬間、探索者は路上に倒れ込んでいた。何が起こったのか。突然、身体に力が入らなくなった。
目の前が白んで、酷く喉が渇く。そのまま眠るように、泥のような倦怠感に身を任せ、探索者は目を瞑った。

◆病院にて◆

気付くと、探索者は救急病院のストレッチャーに横たわっていた。どうやら救急車で運ばれたらしい。
「脱水ですね。点滴が終わったら帰れますので」
素っ気ない医療従事者の言葉に、現状を理解する。診断結果が健常者の脱水だからだろうか、点滴のスピードは早く、あっという間に終わった。

会計を終え、病院のロビーへと進む。天井が3階まで吹き抜けの広いロビーには、最低限の灯りのみだ。人はおらず、ガランとしている。広々と、どこかうら寂しい空間には、一本の大きな竹が置かれていた。
近づいてみると、細長い紙が幾つも掛けられている。どうやら、七夕用の笹竹のようだ。飾りも、暗がりをおいても色鮮やかだ。

◎短冊を見る
⇒短冊には願い事が書かれている。「お父さんの病気が治りますように」「早く学校に行って、友達に会いたい」「家に帰れますように」「正月に家族と過ごせますように」
病院だからだろうか、個人の願いを書いているものはひとつもない。皆、誰かしらの想い人なのだろう。

ここで周囲を見渡すか、帰ろうとした際に《強制目星》OR《アイディア》を行う。成功すると、張り紙が目に留まる。張り紙には以下のことが書いてある。

「七夕の飾りには様々な願いがあります。地域によって異なりますが、代表的なものをご紹介します。
*巾着
昔のお財布です。富貴と貯蓄、商売繁盛を願います。
*紙衣
病や災いの身代わり、または、裁縫の上達を願います。
*千羽鶴
家の長老の年の数だけ折ります。家族の長寿を願います。
*投網
豊漁や豊作を願います。
*短冊
早朝、サトイモの葉にたまった朝露を集めて墨をすり、色紙の短冊に詩歌を書きます。学問や書の上達を願います。
*吹き流し
織姫の織り糸を象徴します。長寿を願います。
くずかご
7つの飾り付けを作るとき出た裁ち屑・紙屑を集めて入れます。清潔と倹約を願います。」

「1945年7月7日、千葉空襲によって多くの尊い命が失われました。当時、市街地に住んでいた初代病院長はその時の経験から、医療の道を目指しました。千葉空襲の悲劇を忘れない為、病院長の想いを後世に伝える為、当院では毎年七夕祭りを行っています」

読み終わると、「こんにちは、良い夜ですね」という声がロビーに響いた。いつの間にか、真横に1人の子供が立っている。
黒いパーカーを着ており、フードで顔がすっぽりと隠れている。その様は、まるでおとぎ話の魔法使いのようだ。入院しているのだろうか。先ほどまでいなかったはずのその姿に、探索者は思わず驚いた。
「あなたは、どんな願いを吊り下げたいですか?」
(探索者はここで、願いを口にする。願いが無くても良い)

□願いがある場合、
「そうなのですね。その願い、かなえて差し上げましょうか?」
□願いが無い場合
「そうなのですね。願いが無いなんて、死んでいるみたい」

 子供はそういうと、クスクスと微笑み、パーカーのフードをバサリと外す。その姿は、子供のそれでは無かった。そればかりか。
毛の一本もない頭、骸骨のように細い首、ミイラのように干からびた皺だらけの肌。鼻も口も無く、両の目にあるはずの眼球も無く、眼のあるべき場所にはぽっかりと漆黒の穴が並んでいる。それなのに、見られていると、覗かれているとハッキリと分かる。
恐るべき存在の姿に、正気度を《1d6/1d20》喪失する(ここで発狂した場合でも、狂気は気絶として統一して処理する)。

「やっぱり、僕が見えるんですね。あぁ、嬉しいなぁ……。ねぇ、折角なので、遊びましょう?」
ケタケタという笑い声が脳髄に直接響き、探索者は再び意識を失った。

※クァチル・ウタウス(塵を踏むもの)
マレウスモンストロルム158頁参照のこと。
本シナリオでは、死を忌避し、永遠の命を願った病院長(或いはその亡霊)に召喚されたクァチルの残滓である。死を望む人々に死を与えている、いわば死神のような存在。自身を視認した探索者に興味を持ち、遊戯を楽しむように異空間へと誘う。

◆異空間◆

目覚めると、そこには宇宙が広がっている。そして目の前にはPC1またはPC2がいる。
PC1とPC2は幾つか会話をするだろう。どこかに行こうとしても重力が無いかのようにフワフワと浮かんでしまい、進むことができない。
ある程度PC1とPC2が会話をしたところで、「◎◎(PC1の名前)は、彦星。△△(PC2の名前)は、織姫。さぁ、七夕を始めよう」
そうして、周囲の宇宙が忽然と姿を変える。
以降、別行動となる。しかし、テレパシーのように会話が可能である。そして、お互いに与えられたギミックを解かなければ、お互い進むことは出来ない。

◆PC1:最初:巾着

箱のような窓も扉も無い部屋に、テーブルだけがある。
テーブルの上には全く同じ形の小判8枚と、左右の釣り合いを量る天秤。そしてテーブルには血文字でこのように書いてある。
「8枚の小判の内、1枚だけが偽物で、僅かに軽い。天秤を最低何回使えば、偽物を見つけられる?」
⇒正解は2回。間違いを答えるごとに小判がPC1にポルターガイストのように飛んできてぶち当たる。1d3の耐久力減少。
※答えの手順
①最初に左右に3枚ずつ乗せる。
②もしも釣り合ったら、残った2枚を左右に乗せ量る。
③釣り合わなかったら、左右3枚ずつのどちらか軽いので傾く。
軽い方の3枚の内、2枚を左右に乗せ測る。
釣り合えば残った方が偽物だし、そうでなければ軽い方が浮く。
④よって、天秤で重さを量るのは2回だけで良い。

◆PC2:最初:紙衣

箱のような窓も扉も無い部屋に、紙だけが一枚ある。
「次の理論は正しい?
織姫は裁縫に失敗する時、いつも寝不足である。
織姫は寝不足だった。
だから、織姫は裁縫に失敗する。」
⇒正解は、正しくない。間違いを答えるごとに大きな針がどこからか現れてPC2を刺す。1d3の耐久力減少。
数学におけるベン図で考える。裁縫という現象と、寝不足という現象を分けると、裁縫という現象の中の失敗原因として寝不足という現象が存在する。つまり、裁縫の失敗原因の全てが寝不足というわけではなく、裁縫の失敗の中には、寝不足以外のものも原因として含まれるということである。

◆邂逅1

PC1のギミックを解くとPC2の部屋に扉が、PC2のギミックを解くとPC1の部屋に扉が現れる。
そして再び、2人は宇宙に飛ばされ、巡り合う。しかしながら、透明な何かに阻まれるようにして、近づくことは出来ない。
やがて流れ星が遠くで流れる。それを目で追った瞬間、場面が変わる。

◆PC1:2番目:千羽鶴

気付くと、夜空が広がる美しい湖畔の傍にいる。月は雲に隠れてしまっているようだ。
湖畔で耳を澄ませてみると、白鳥の声が聞こえると気付く。しかし姿は見えない。そして足元には白い正方形の紙が散らばっている。
※ここでは鶴を千羽折るとクリア。そのことに気付かないようならば《アイディア》を振って、「白鳥の湖」「笹竹の飾りのひとつに千羽鶴がある」などヒントを適宜出す。
PC1が千羽の折り鶴を折ると、突然、頭上の雲が晴れ渡る。丸く大きなレッドムーンが、ゾッとするほど美しい光を湖畔へと注ぐ。
すると、折り鶴が飛んでいき、湖畔へと漂着する。折り鶴は月の光を浴びると、瞬く間に白鳥へと変わっていく。白鳥たちは湖畔を泳ぐと、奇妙なことに、やがて娘たちへと変わっていった。
「愛によって人は、変わることができる」と娘たちは囁くと、消えていく。
やがて湖畔から水が湧き立ち、まるで海のようになっていく。ゆっくりと海に巻き込まれていく。

◆PC2:2番目:投網

気付くと、小舟の上、漆黒の海の真ん中にいる。頭上には眩い夜空が広がっている。
小舟を調べると、網、ナイフ、人形が置かれている。
PC2が網を海に投げやると、ずしりした重さが腕にかかる。
《STR×5》で振る。失敗すると耐久値が1d3減少する。
成功すると、ブクブクと泡を立てる何かが引きあがる。それは女性である。女性(人魚姫)は泡を立てながら、少しずつ溶けていく。
同時に息苦しさを感じ、PC2は自分も溶けていっていることに気付く。
窒息ロールが始まる。1ターン毎にCON×10からスタート、失敗すると耐久を1d3減少する。
※ここでは、人形をナイフで刺せば、身体が元に戻りクリア。
人形をナイフで刺すと、どこからか断末魔が聞こえる。正気度を《0/1》減少する。
女性がさめざめと泣いている。その足は驚くことに魚の尾に変化している。
彼女を慰めることも出来るし、声を掛けなくても良い。
やがて船の周囲に人魚たちが現れ「愛によって人は、変わってしまう」と人魚たちが歌う。人魚たちに誘われるように、女性は再び海へと飛び降り、泳いで、立ち去る。
やがてゆっくりと船が沈んでいく。

◆邂逅2

PC1がギミックを解くと、PC2のところに大きな白鳥が現れる。白鳥の背中には椅子が取り付けられている。
PC2がギミックを解くと、PC1のところに小さな船が現れる。
2人はそれぞれ、白鳥、船に乗るだろう。
それらは宙へと浮かび、夜空へと向かっていく。
平行して遠くから、PC1にはPC2が、PC2にはPC1が見える。少しずつ白鳥と船は近づいていく。
少しだけ話が出来るだろう。しかしまた、離れていく。
白鳥と船は宇宙の海を越えて、それぞれ巨大な恒星へと向かっていく。
PC1の向かう恒星は、白く眩く激しく輝く(アルタイル)。
PC2の向かう恒星は、青い炎に包まれ光り輝く(ベガ)。
あまりの眩しさに、眼を開けていられない。
漸く光が収まって目を開けると、そこは真っ赤な血の海に小島がぽつんと浮かんでいる奇妙な空間だ。頭上には今まで見たことが無いほどに澄み切った夜空、月、惑星、銀河。
きらり、きらりと時折、夜空が泣くように星が流れ落ちていく。
PC1、PC2はそれぞれ別の小島にいる。

◆PC1:3番目:短冊

小島の上には植物が沢山生えている。《博物学》で成功すれば、それがサトイモだと分かる。露でしっとりと濡れている。
周囲を更に見渡せば、すずり、墨、小筆、短冊を見つける。短冊の裏には「星に願いを」とある。
※ここでは、サトイモの露を集めて墨をすって、書道の要領で願い事を書けば、クリア。

◆PC2:3番目:吹き流し

小島の上には刺繍糸、刺繍枠、刺繍針、刺繍糸、ハサミがある。刺繍枠には「星に願いを」とある。
※ここでは、刺繍によって願い事を布に縫い付ければ、クリア。

◆PC1&PC2:最後

それぞれ願い事を書く、或いは縫い付けると、目の前に扉が現れる。扉を開けると、そこには宇宙と、輝く川が流れている。
対岸にはそれぞれ、PC1とPC2がいる。
それぞれの足元には以下のようなものがある。
PC1:古びた巾着、正方形の白い紙、破れた投網
PC2:紙切れ、ちぎれた投網、壊れた刺繍道具
輝く川を調べると、水ではなく、星屑のような砂が輝いていると分かる。
※屑籠と星屑をかけている。クリアするには、足元に見つけたものをすべて、川に投げいればよい。

◆天の川を渡り◆

探索者たちが川に投げやると、みるみるうちに投げやったものが橋へと変貌していく。
橋を渡って、探索者たちは会うことが出来る。
幾つか会話を交わすと、
「ああ、巡り合えたようだね」と声が響く。
見やると、病院で在った謎の存在が、虚空に浮いている。鼻も口も無く、漆黒の眼窩が二つあるのみであるが、何故か探索者達にはその存在が笑っているのだと分かる。
「良い暇つぶしになったよ。楽しかった。そうだ。お礼に願い事をひとつ、叶えてあげる。あと、記憶も消してあげる。僕を覚えていると、君たちは君たちにとって悪いものを引き寄せてしまうからね。願い事は、さっきので良い?」
願い事を言うと、探索者たちは異空間から自分たちの世界へと戻っていくだろう。願いは余程無茶な願いや、忘れたくないといった願いでない限り、叶う。

◆エンディング処理について◆
エンディングは自由に処理して構わない。願いが叶った、というエンディングにして良いだろう。

もしも、「PC1(PC2)に会いたい」や「PC2(PC1)に健康になってほしい」といった、互いに向けた願いの場合、PC1とPC2には邂逅するエンディングとなる。

◆邂逅の描写例:天翔ける君と巡りて
目覚めると、探索者たちはそれぞれの部屋にいた。腕には点滴を受けた跡の絆創膏が貼ってある。
そういえば昨晩、脱水で倒れて病院を受診したことを探索者は思い出すだろう。受診後、真っすぐ帰宅し、疲れから着の身のまま眠ってしまったのだ。
大事をとって、今日は仕事も学校も休む手はずとなっている。
どう1日、身体を休ませようか。そんな風に思っていると、突然電話がかかってきた。
電話に出ると、病院からである。
「トイレに財布をお忘れです。取りに来てください」
財布には身分証から何まで入っている。
急いで病院に行くと、ロビーでは七夕祭りがおこなわれていた。ちょっとした縁日のように、病院職員が店を開いている。綿あめに、焼きそばに、リンゴ飴……。
そして、中央には、大きな笹竹。そこには短冊に願いがいくつも下げられている。
短冊の中に、探索者は自分とよく似た字を見つける。見やると、自分の名前が添えてある。
(※ここでそれぞれの願いを出す。)
こんなものを書いただろうか。頭を傾げていると、隣で、同じくう~んと悩んでいる様子の人物。
どこか、見覚えがある。
何故だか、懐かしく思う。
不意に、目が合った。

※ここでPC1とPC2は出会う。
以降の処理はPC1とPC2に任せよう。彼らは友人となるかもしれないし、それ以上の間柄になるかもしれないし、はたまた、ただ病院で一時会った人物となるかもしれない。
なんにせよ、このシナリオ「天翔ける君と巡りて」は、これにて終了である。

◆クリア報酬

正気度回復1d6
もし邂逅した場合、更に1d6回復

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クトゥルフ神話TRPGを主に「オンセンsns」さんでやっております。 基本的には物語の中身はシリアスだけど、救いのあるものが好きです。 宜しくお願い致します。

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