2019年08月08日更新

クトゥルフ神話TRPG「Rain;without an umbrella」

  • 難易度:★|
  • 人数:3人~上限なし|
  • プレイ時間:1~2時間(ボイスセッション)

▼あらすじ
 あなた方は全員25歳前後である。カレーライスが食べられない。
HO1:あなたは肉が食べられない
HO2:あなたは刃物が持てない
HO3:あなたは紐状のものが触れない
 探索者たちはたまたま、バーや喫茶店など、同じ店に入り、近くの席に座る。
 互いを見ることによって、徐々に記憶を思い出し、トラウマの背景を知る。
 全てを知った探索者たちは、何を思い、何を感じ、何が変わってしまうというのだろうか。

▼レギュレーション
[舞台]
現代、ハンドアウト式
[PL人数] 3人
[セッション時間]
1~2時間程度

 改変ご自由に。

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ストック

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《1.はじめに》
'画像'
■レギュレーション
これは現代舞台の新規探索者限定のHO式のシナリオである。舞台は日本でもアメリカでも構わない。クローズドではないが、シナリオの進行は全て、街にある平凡な喫茶店の、限られた空間で完結できる仕様となっている。
内容はグロ要素を多分に含んでいるが、KPや他PLの助けがあれば、初心者でもプレイ可能だろう。
プレイ時間は1~2時間程度。RPを慎重に行った場合は4時間かかる可能性がある。
改変は全くの自由。他システム(インセイン)などに改変しても構わない。

■共通HO
 あなた方は全員25歳前後である。カレーライスが食べられない。
HO1:あなたは肉が食べられない
HO2:あなたは刃物が持てない
HO3:あなたは紐状のものが触れない

■概要
 探索者たちはたまたま、同じ喫茶店(バーに改変してもよい)に入り、それぞれの席に座る。互いを見ることによって、徐々に記憶を思い出し、トラウマの背景を知る。全てを知った探索者たちは、何を思い、何を感じ、何が変わってしまうというのだろうか。

■PL向けあらすじ
 雨が降り続くその日、探索者たちはそれぞれの理由で同じ喫茶店に入った。
 出会ったことのない人物。それなのにどうしてこんなにも、気になってしまうのか、そして懐かしいと感じてしまうのか。
 どうして、こんなにも――。
 雨は降り続くのか。

■全容
全HOが猟奇監禁殺人の被害者であり、加害者である。始まりは15年前に遡る。
HO1には妹がおり、妹、HO2、HO3と共に拉致・監禁された。犯人は他にも何人かの子供たちをさらっては、凄惨な行為を行い、飽きた順に殺していた。
ある日、犯人は子供たち全員に食事を与えなかった。子供たちの空腹が頂点に達する頃合いに、犯人はHO2とHO3に命が惜しければHO1の妹を調理するように命じた。HO2が刃物を持ち、HO3が縛り上げ、妹は腕を生きたまま切断される。犯人はHO1に、命と妹を助けてほしくば、HO1の妹の腕でカレーライスを作るように命じる。そうしてカレーライスは作られ、全員に振舞われた。
数日後、警察の努力によって探索者たちは救助されたが、救助までの間に、HO1の妹は敗血症により死亡した。
探索者たちのカウンセリングを担当した精神科医はクトゥルフ神話技能を有しており『記憶を曇らせる』という魔術を使用できた。あまりの事件の悲惨さに、精神科医は探索者たちの記憶を奪い、保護者にも「思い出させないように」と指導した。
このような全容がある為、探索者たちが過去の探索をし続けると正気度が削れて行くこととなる。探索者によっては、過去を掘り起さないという選択もあるだろう。
尚、エンディングではHO1が帰宅すると妹が“生きて”いる。彼女が何者であるのか、何故生きているのか、このシナリオ内で明かされることはない。

■NPC情報
 精神科医師網貞二以外のNPCは、KPが自由に設定して構わない。
HO1の妹の名前はHO1に似たものにすると関連性が生まれやすいだろう。
犯人の名前は、それぞれのHOの名前をもじって作るとよいだろう。名前の似た子どもを選んだなどの犯行理由が生まれる。

■NPC:網貞二
 初老の精神科医師。網は白髪交じりの初老の男性で、柔和な笑みが印象的だ。網は彼の経営する精神科クリニックにいる。
 彼は魔術“記憶を曇らせる”を使用できる。基本ルールブック第六版p255に掲載されている。
 名前は原作のアーミテッジ、そして、ドリームキャッチャーより。ドリームキャッチャーとは、アメリカインディアンのオジブワ族に伝わる網で出来た蜘蛛の巣のようなお守りのこと。ベッドの上に掛けることで、眠っている子供を悪夢から守ってくれる、悪夢を変えてくれる、魔除けの一種である。

■KPの手引き
 このシナリオはRP次第では長くも短くもなる。ストーリーは極めて単純であるから、情報を出すタイミングを逃さないようにするだけで良い。
 ただし不測の行動をする探索者も中にはいるだろう。探索者たちは被害者であり加害者であり共犯者であるが、情報の取得が断片的である場合は、PvPとなる可能性もある。例えばHO1がHO2とHO3に妹を殺されたと思い込む、妹を殺された復讐をしようとする、などの場合だ。
 その場合はPLと相談しつつ、ターン制で進行させると良いだろう。

■PLがトラウマの背景を作ってきた場合
 もしもPLがHOを受けてトラウマの背景を作ってきた場合は、『あまりのことに無意識な記憶改ざんをしている』という設定で生かすとよいだろう。トラウマやPLが持ってきた設定を引用したシーンを独自に作ってよい。
 リプレイを後述しているので、よろしければそちらを参考に。

■正気度減少について
 このシナリオは非常に特殊な構造を持っている。KP判断で以下の処理を行ってよい。
①正気度減少をPLが必要だと感じたタイミングで行わせる
②一切の発狂を禁止する
③シーンごとに正気度減少をまとめておこなう
①の理由
このシナリオの探索ポイントが互いの過去だ。探索者の感じ方、PLの感じ方はKPやシナリオが用意したものとは異なるだろう。セッションは生き物だ。正気度チェックは自由にPLが加えて構わない。
②の理由
シナリオの核心部分はとっくに終わった過去であり、犯人の死刑は既に執行済みである。その為、『狂いたくても狂うことは出来ない』という処理を施し、短期・長期を含む発狂を禁止して構わない。ただし、正気度0になった場合、心は壊れてしまっているだろう。人形のようになり、一生涯動くことが出来ないかもしれない。記憶を曇らせない限り。
③の理由
 都度、正気度減少をしてしまうと、会話を切ってしまう原因となりかねない。このシナリオはRP重視、会話主体である為、それは望ましくないことだ。

■HO1の妹について
 セッション後半で、HO1が妹との過去や思い出について詳しく話した場合、例えば「葬式をした。生きていれば中学に入り、高校に入り、今頃は一緒に酒でも飲んでいたかもしれない」というようなことを発言した場合、KPは「妹は生きている。葬式はしていない。中学や高校に行き、今は成人だ」と告げて構わない。何故、妹が生きているか尋ねられるだろうが、「わからない。だが死んだ。そして生きている」と説明し、それ以上は語らなくてよい。

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《2.シナリオ本文》
 以下、シナリオ本文となる。
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■1:冒頭にて
 しとしとと雨が降っている。ここ数日、冷たく、ひと粒ひと粒の大きな雨が降り続いている。降っては止み、止んでは降る。湿気の含んだ空気が肺に入って体が冷えると、何かを思い出しかける。だが、それが何なのか、分からない。
ともあれ雨は探索者たちを濡らした。探索者たちはそれぞれの理由で雨に濡れ、それぞれの理由で喫茶店に足を運ぶ。濡れたので気分転換に、或いは仕事の待ち合わせに、温かいコーヒーが飲みたくて。
理由は何でも良い。同時刻でなくともよい。同じ店に入り、同じ空間を共有する。

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■2:席にて
 入ってみると、モダンなデザインの、こじんまりとした純喫茶である。メインの照明は天井から等間隔に垂れ下がるランプで、淡い橙色の光が店内を薄く照らしている。マスターは初老の男性のようで、彼は入ってきた探索者に「いらっしゃいませ」と微笑む。
 探索者たちはそれぞれ、好みの席に着くことだろう。席に着くと、マスターがメニュー表とレモン水を持ってきて、注文を尋ねる。
▼メニュー
 様々な種類のコーヒーや紅茶、ホットケーキやナポリタンスパゲティなどがある。
探索者は自由に注文をするだろう。本日のお勧めのメニューはカレーライスのようで、マスターが「妻の作ったカレーです。とても美味しいんですよ」と話す。
※飲酒に関して:17時以降はバーも兼ねるという設定で、時間によってアルコールメニューを出してもよい。
※ここで〈アイデア〉を振らせ、成功で「このような初老の男性を、どこかで見たような気がする。だが、マスターとは初対面だ」と思うだろう。

▼目星
狭い店内である為、探索者たちが注文する様子は、自然と他の探索者の目に入る。
ここで〈目星〉を振ることが出来、成功すると、どこか懐かしい感覚を覚えるだろう。失敗で、何故か気になると思う。

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■3:記憶にある顔
 他の探索者たちがレモン水を飲んだりなどしてそれぞれの席で過ごす様子も、お互い自然と目に入る。
技能を振らずとも、探索者たちは『彼(ないし彼女)と食事を摂ったことがある。とても昔に。しかしながら記憶はぼんやりと靄がかかったようで、思い出すことが出来ない』と、思うことだろう。
ここで〈アイデア〉に成功するか〈POW×3〉に失敗すれば、“彼(ないし彼女)に覚えがある。幼い頃に共に過ごした”と確信を得る。

▼声を掛ける
 探索者の中には声を掛けようとする者がいるだろう。その場合は『4:会話』を参照のこと。

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▽イベントの進行について
以降のイベントは、『4:会話にて得られる情報』と『5:会話以外で得られる情報』を交互に交えて進行していくと良いだろう。『6:家族から情報を得ようとする』『7:トラウマについて話す』は、状況によっては『4』『5』よりも先にくる場合がある。その場合はPvPに発展する可能性が高まるが、マスターに止めに入らせるなどして、一旦間を置くと良いだろう。それでもPvPとなるようであれば、進行をターン制にしながら、KPから記憶を想起させる情報を加えていくとよい。
▼もしも早々に喫茶店を去る場合
 探索者によっては、探索を過去への真相追及を放棄して喫茶店を後にするという選択もあるだろう。
その場合、KPは『ここで喫茶店を出た場合、探索者たちが再開しない限り、過去の情報を得ることはない。その為、シナリオ終了となる。』と話してよい。PLがそれを了承するならば、そこでシナリオを終了する。
描写は以下の通り。
『探索者は喫茶店を後にする。雨はまだ降り続いている。構わず、探索者は進むことだろう。この雨が止もうとも、心にとどまる重たい雨が止むことはない。だが、それが探索者の望んだことである。知らない方が良いということは、この世にあまりにも多い。目を瞑り、耳を塞ぎ、口を閉ざせば、今までどおり生きられる。今まで通り、あなたらしく。雨は降り続ける。』
⇒ED:Heavy rain

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■4:会話にて得られる情報
もし互いに会話を発生させる場合は、次のように記憶が鮮明になっていく。情報を得る度に正気度を1減少する。
▼名前を尋ねる
 互いに名前を尋ねれば、その名前に憶えがあると感じ、互いのあだ名を思い出す。
※あだ名はKPが用意すること。子供がつけるようなものがよいだろう。
▼記憶がないかを探る
 記憶がないか探ったり、互いの現状を話しても、さして分からないだろう。靄がかかったように、思い出せない。〈アイデア〉or〈精神分析〉or〈心理学〉で、同じように、机を面して、誰かに状況を尋ねられたことがあるような気がする。
▼家族がいるかを尋ねる、或いは暫くしてから思い出す
家族構成について話すか、シナリオ進行と共に入る記憶の想起。
HO2とHO3のみ、〈アイデア〉に成功するか〈POW×3〉に失敗すれば、『HO1には妹がいた』ということを思い出す。
このことをHO1に尋ねると、HO1は『妹がいる。でも死んでしまった。何故死んだか思い出せない』と思う(※:この情報は『5:会話以外で得られる情報』でも出て来る情報である。よって省略しても構わない)。
▼HO1の妹について
 HO2とHO3がHO1の妹の名を知ると『とても可愛い子だった。人懐っこくて、いつも怯えていた』と思う。

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■5:会話以外で得られる情報
情報を得る度に正気度を1減少する。
▼女の子が駆けて行く
 窓の外、喫茶店に面する歩道を、幼い女の子が傘を差し「ぴちぴちちゃぷちゃぷらんらんらん」と歌いながら歩いて行く。
ここでHO2とHO3のみロールを行う。〈アイデア〉の成功か〈POW×3〉の失敗で、『HO1には妹がいた』ということを思い出す。このことをHO1に尋ねると、HO1は『妹がいる。でも死んでしまった。何故死んだか思い出せない』と思う。
▼パトカーが走っていく
 窓の外、喫茶店に面する街路をパトカーがサイレンを鳴らして通過していく。探索者たちは『雨の日に、一緒にパトカーに乗った。3人で』と思う。
▼マスターが銀食器を拭き上げる
 カウンターの奥で、マスターが銀食器を拭き上げる。スプーンとフォーク、そしてナイフ。探索者たちは『HO1がスプーンを並べた。HO2がナイフを握った。HO3は血を拭った』と思う。
誰の血かという質問があればアイデアを振らせ、成功で『HO1の妹の血。右手。なかなか止まらなかった』と思い、失敗で『右手』ということだけ思い出す。

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■6:家族から情報を得ようとする
 状況によっては外から情報を得ようとする探索者もいるだろう。
もしも家族から情報を得ようとした場合、「忘れなさい。どうしても思い出したいなら、網先生に聞きなさい」と言われる。
網の名前を聞けば、網という人物が近くで精神科クリニックを開業していることを思い出す。幼い頃に、通院したことも。

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■7:奇妙な数字
ある程度の情報が出た段階で、探索者たちはロールを行う。〈アイデア〉の成功か〈POW×3〉の失敗で、HO1は3文字の数字、HO2とHO3は4文字の数字を思い出す。このロールは成功するまで何度行っても構わない。3人のトラウマが開示されたら、数字を全て思い出すだろう。
全ての数字が分かったら、KPは『●●●―●●●●―●●●●』と告げる。
※この数字は、精神科医師の網貞二の精神科クリニックの電話番号の断片であり、3人が情報を共有すれば電話番号ではないかと思い至るかもしれない。これが電話番号だと分かった瞬間に、『何かあればいつでも相談していいよ』という言葉を聞いたことがあるような気がするだろう。

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■8:それぞれのトラウマ
 探索者たちがある程度の情報を得た段階で、シナリオ進行に引っかかりがある場合は、KP判断でシナリオの鍵であるトラウマを想起させて構わない。
喫茶店の客が1人、カレーライスを注文する。カレーライスの匂いを嗅いで、探索者たちはそれぞれこのように思う。
『HO1は肉が食べられない。HO2は刃物が持てない。HO3は紐状のものが触れない。全員、カレーライスが食べられない。』

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■9:トラウマについて話す
探索者たちが互いにトラウマについて話すならば、次のような情報を得る。情報を得る度に正気度を〈1/1d4+1〉喪失する。
▼HO1のトラウマ:肉が食べられない
 HO1のトラウマを訊くと、以下のことを思い出す。
①HO1
『縛られた。切られた。料理を作るように言われた。カレーライスだ。甘口のカレーライス。何日かぶりの食事。妹にも食べさせた。それから肉が食べられない。妹を食べた』
②HO2
『HO1が料理を作っている。カレーライスだ。何日かぶりの食事。どこかですすり泣く声が聞こえる。痛い、痛い、痛い……。刃物を持って。自分は加害者だ』
③HO3
『HO1が料理を作っている。カレーライスだ。何日かぶりの食事。どこかですすり泣く声が聞こえる。痛い、痛い、痛い……。縛り上げて。自分は共犯者だ』
▼HO2のトラウマ:刃物が持てない
①HO1
『妹が死んだ。いつも自分にしがみついていた。血まみれになって、痛い痛いと呻いた。右腕が無かった。だから抱きしめた。痛いの痛いのとんでいけ。何時間も何時間も死なないでと祈った。でも、死んでしまった。刺したのはHO2』
②HO2
『HO1には妹がいた。人懐っこい可愛らしい、だが、いつも酷く怯えていた。あの部屋で包丁を握った。その包丁をHO1の妹に向けた。腕を切り落とした。刃物を何度も何度も振り下ろし。HO3が縛った』
③HO3
『HO1には妹がいた。人懐っこい可愛らしい、だが、いつも酷く怯えていた。あの部屋でHO2が包丁を握った。HO1の妹の腕を切り落とした。何度も何度も刃物を振り下ろす。動けないようにと、自分が紐で縛った。』
▼HO3のトラウマ:紐状のものが触れない
①HO1
『縛られる。HO2とHO3に縛られる。自分が、そして妹が。泣き叫んでいる。泣きながら縛る。殺さないで』
②HO2
『HO1を抑え込んだ。HO3がHO1を縛る。追いかける。HO1の妹を掴まえて、今度は自分の番。包丁を握る。腕を切り落とした。腕を切り落としても、人は少しの間、生きられる』
③HO3
『生きるために縛る。HO1、HO1の妹。縛り上げる。そうしなければ生きていけない。力をこめて、紐を握りしめる。紐が手のひらの肉に食い込んで、血が滴る。それでも力をこめるのを止められなかった』

▼共通のトラウマ:カレーライスが食べられない
 イベント『最後の晩餐』参照のこと。

■10:最後の晩餐
カレーライスを注文した場合、探索者たちは『食卓を囲んだことがある。何度も。そして最後に一緒に食べたのはカレーライスだった』と思い出す。そしてカレーライスの匂いから、共通して以下のことを思い出す。
『カレーライスを一緒に食べた。何日かぶりの食事だった。HO1が作った。HO2が食材を用意した。HO3が手伝った。HO1の妹も食べた。右腕がなかった。硬い感触が口に残る。吐き出せば、それは爪だった』
※カレーライスを食べないと探索者たちが決めることもあるだろう。それでも構わない。その場合は、『7:奇妙な数字』を得ていたならば『あれは電話番号だ。精神科クリニックの、電話番号だ。いつでも相談していいよ、という声を思い出す』と描写を加え、進行を促すとよいだろう。

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ED
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《3.ED》
■ED1:Never stop rain
▽殺しを行う
 もしもPvPに発展した場合、殺し合いとなるかもしれない。誰かが死亡した直後にマスターが呼んだ警察官が駆け込んできて、殺人を犯した探索者は逮捕される。雨が降る中、殺人を犯した探索者が連行される。また、生き残った探索者がいれば事情聴取を求められ、パトカーに乗せられる。
探索者たちはこう思うだろう。
『雨の中、パトカーに乗るのはこれが初めてではない。あの日からずっと、心の奥で雨が降り続いている。ずっと、ずっと。重たく冷たく痛々しい雨が降り止むことはないだろう。もう二度と。死がこの人生を終わらせてくれるまで』
 このエンディングに報酬はない。

■ED2:Re-IN&Cloudy sky
▽網貞二に会い、真実に辿り着く
 後述。『8:真実へ』へと進行した後に起こるED。更に分岐あり。

■ED3:Heavy rain
▽情報を得ず、喫茶店を後にする場合
探索者は喫茶店を後にする。雨はまだ降り続いている。構わず、探索者は進むことだろう。この雨が止もうとも、心にとどまる重たい雨が止むことはない。だが、それが探索者の望んだことである。知らない方が良いということは、この世にあまりにも多い。目を瞑り、耳を塞ぎ、口を閉ざせば、今までどおり生きられる。今まで通り、あなたらしく。雨は降り続ける。
 このエンディングの報酬はない。

■ED4:Cleared up
▽網貞二に会わない
 後述。『8:真実へ』の項目『ED:Cleared up』参照のこと。

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■11:真実へ
探索者たちが電話番号を繋げる、或いは、直接会いに行こうと試みれば、精神科医・網貞二に会うことが出来る。勿論、接触せずシナリオを終了しても構わない。その場合は『ED4:Cleared up』へと移行する。
▼ED4:Cleared up
▽網貞二に会わない
 探索者たちは真実の確証を得ることを、やめた。過去の掘り下げは、ここまででいい。探索者は自分達から得た記憶を抱えて、誰に言うことも無く、進むことだろう。心にとどまる重たい雨が止むことはないが、それでも進んでいける。雨に濡れ心が冷たく凍り付いていても、表向きは晴れているふりくらい出来る。嘘偽りの青い空の下、生きていくのだ。
 このエンディングの報酬は正気度回復1d8。

▼網医師との会話
網は彼の経営する精神科クリニックにいる。電話も簡単に通じるだろう。電話をすれば精神科の受診予約が即日取れる。
精神科クリニックに行くと、定刻に網が玄関先で待っている。
網は白髪交じりの初老の男性である。柔和な笑みが印象的だ。彼は「大きくなったね。どうぞ、こちらへ」と言うと、診察室へと案内する。
診察室はアンティーク調の木製の机とソファがあり、探索者は入った瞬間に、懐かしいと思うだろう。
網からの情報は以下の通りである。
①探索者たちは15年前に起こった小児拉致監禁殺人の被害者である。猟奇的な事件であった為、情報規制がなされた。その為、ネットなどにも殆ど情報はない。
②警察の捜査によって犯人が捕まった時、犯人の自宅地下室で保護されたのがHO1、HO2、HO3、HO1の妹である。
③犯人は子供を拉致監禁しては口にするのも躊躇われる行為をしていた。子供に子供を殺させる、子供に子供を食べさせるなど、極めて猟奇的なものだった。
④網はあまりにもひどい事件に、保護された子どもたちに催眠術をかけて、その記憶を奪った。
※表向きは催眠術ということになっているが、網が行ったのは魔術による記憶の忘却である。
▽描写・会話例
扉を開けると、白髪交じりの初老の男性で出迎えた。ポロシャツに白衣といういで立ちで、柔和な印象を受ける。
「よく来たね。まぁ、座りなさい。久しぶりだね。私のことは覚えていないだろうが……。網貞二という。精神科医師だ」
「大きくなったね。こちらにどうぞ」
「君たちは小児を対象とした拉致監禁殺人の被害者だ。君たちはそのことを覚えていないだろう。私が催眠術で記憶を消してしまったからね」
「酷い事件だったんだよ。子供たちを拉致監禁しては、子供同士で殺し合いをさせたり、……もっと酷いことも」
「報いは受けた。犯人の死刑は既に執行されている。」
「知りたいのかい。分かった。君たちはHO1さんの妹さんの腕をカレーライスにして食べさせられたんだよ。HO1さんは肉が食べられない、妹の肉を調理し、食べたから。HO2さんは刃物が持てない、HO1さんの妹の腕を食材として切り落としたから。HO3さんは紐状のものに触れない。HO1さんとHO1の妹さんを縛り上げたから。……何故、思い出してしまったんだい。思い出さなくとも、良かったろうに……」
「君たちは子どもだった。ただ、子供だったというだけだよ。忘れて良いんだよ」
▽正気度喪失
 他人から核心的な情報を得た探索者たちは正気度を〈0/1D10〉喪失する。
▼網医師の提案
 網は真実を告げ終わると「君たちは忘れたいとは思わないかい? もしよければ、昔と同じように催眠術をかけて、記憶を曇らせることが私には出来るよ」と提案する。提案を受け入れるかどうかは探索者たちの自由である。
 エンディング分岐となる。

※記憶を曇らせるかどうか迷っておりダイスで決めたいという提案があれば、網が魔術を使い、POW対抗で判定するという方法もある。〈POW×3〉の成功で、『忘れられたくても忘れられなかった。心のどこかで忘れることを拒否した』という処理となる。その場合、網は「あんなに子供だったのに。君はもう、大人になってしまったんだね」と謝罪する。

《5.ED:》

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■記憶を曇らせる:Cloudy sky
 網による魔術で記憶を曇らせるED。探索者たちが望むと、網は探索者たちの頭に手をかける。そして魔術『記憶を曇らせる:CLOUD MEMORY』を唱えるだろう。探索者が望んでいる状態であるためにMP対抗ロールは発生せず、この魔術は自動成功である。
▽描写
 探索者の頭を網が撫でる。その瞬間、昔、同じように網に撫でられたことがあると思い出すだろう。あの日、確かに失った記憶。それを偶然にも15年越しに得た。そして今、再び、記憶が雲に覆われていく。どんよりと厚い、記憶の曇り雲に。
 そうして探索者たちの過去は曇天に帰り、未来は晴れ、雨は止む。もう思い出すことはないだろう。もう二度と会うことも無いだろう。それで良い。それが望んだ結果なのだから。
⇒ED:Cloudy sky
 このEDでの報酬は、正気度の全回復。悪夢は最初から、なかった。

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■記憶を保ち続ける
 探索者たちは網の提案を断り、それぞれ家に帰ることだろう。
掘り起した記憶を抱え込んで。
過去に、心に、雨は未だ降り続く。雨に打たれ続ける。
この雨が晴れることはないだろう。永遠に。死が何もかもを奪い去ってしまう、その時まで。
⇒ED: Re-IN
 このEDでの報酬は正気度回復1d3である。悪夢と共に、人生を行くがいい。

《6.ED後の最終描写》
 以降は、ED後に入る最終描写である。条件がそろった場合に発動する。

▼HO2、HO3、記憶を消していない場合の追加描写
家に帰り、今日の疲れを癒していると、ふいに気配を感じた。雨に濡れる窓にいる。
その人物が。自分達に悪夢を与えた張本人が。死刑になり、既にこの世にない人物が。怖気が走り悲鳴を上げようとした瞬間、その人物は自分自身だと気付く。窓に移った自分であると。
探索者は思い至る。自分たちは悪夢を見た、悪夢を植え付けられた、悪夢の作り方を知っている。種のような存在で、幾度もの雨の果てに、たっぷりと水を吸い、いつでも芽吹くことが出来るのだと。
思い知るだろう。

▼HO1にどの状態においても行われる追加描写
HO1は帰宅した。体がすっかり濡れて、冷えている。
「大丈夫? すっかり濡れちゃったね」
後ろから声がかかった。そこにいるのは、妹だ。彼女は傘を握りながら、微笑んでいる。冷たい雨の匂い、湿った吐息。彼女とはもう、何年も、十何年もずっと、共にいる。家族だから。
彼女は今、目の前で、“生きて”いる。
そして確かに、微笑んでいるのだった。
まるで雨など知らない、雲一つない、青い、碧い、夏空のように。

Rain;without an umbrella 了

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クトゥルフ神話TRPGを主に「オンセンsns」さんでやっております。 基本的には物語の中身はシリアスだけど、救いのあるものが好きです。 宜しくお願い致します。

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