明治44年、桜のつぼみもゆるく口を開き始めた春のこと。
天下の花街、吉原でとある騒動が起こっていた──
明治の吉原遊郭を舞台にひとりの花魁の身請け話からこの物語は始まる。
4PL / 3サイクル / 特殊型 /
※注意事項※
・NPCとの恋愛要素有
・初期狂気有
・R18的な描写などはありませんが舞台の場所と時代によりR18としています。扱いにご注意ください。
・自サイトにて公開していたシナリオです。再公開にあたって改稿しています。(主筋に変更なし)
2021/03/27 ver.2公開
明治四十四年、桜のつぼみもゆるく口を開き始めた春のこと。
天下の花街、吉原でとある騒動が起こっていた。
おさな子すら見惚れ、亡八ですら垂涎もの、高尾太夫の再来かと謳われる高位の遊女。
藤緒太夫に身請け話があがったのだ。
しかし水揚げされてからただの一度も番付を外れたことのない太夫の身請けだ。
かの藤緒を妾に出来るのならばと、我も我もと手をあげる男が後を絶たない。
男と生まれたからには、一度は夢を見たいものだ。
けれども先立つものがなけりゃあ話は始まらん。
政財界で彼の人の影響を受けぬ者はいないと噂される傳衛門翁を筆頭に、金でものを云わす男どもが雁首を揃えた。
はたして、
一人の女を前に男達は何を競い、何を得るのか。
これは、恋の物語である──
恋ノ花 散ルラム
・PL:4人
・リミット:3サイクル
・タイプ:特殊型
・ワールドセッティング:狂騒の二〇年代
(明治44年は1911年であり実は20年代に届いていない。GMはPL全員と相談し時代に合せて楽しんでほしい)
・狂気カード:16枚
・シーン表:オリジナル
・初期狂気有
▼注意事項▼
NPCとの恋愛要素有
あなたは金持ちである。
どこの馬の骨ともわからぬ素性怪しい下賤の輩、などと噂されているが金持ちである。
藤緒太夫はあなたの敵娼でもあり、そこそこ気に入っている女だ。
彼女の落籍と言われたら引くわけにはいかない。
西園寺家の傳衛門翁が名乗りをあげたならば話題性は抜群、商売の宣伝にもなるだろう。
打算と少しばかりの恋慕の情にて、あなたはこの争いに参戦した。
あなたの【使命】は「藤緒太夫を落籍する」ことである。
あなたは金持ちである。
妻子もあり公私ともに順風満帆であるが、藤緒太夫はあなたの敵娼でもある。
あれはヒヒ爺に渡すにはあまりに忍びないし、もったいないいい女だ。
あなたの【使命】は「藤緒太夫を落籍する」ことである。
あなたは金持ちではない。
友人であるPC2が藤緒太夫の落籍に名乗りをあげたと聞き、
記者であるあなたは好奇心を抑えきれず、無理やり同席させてもらった。
しかし話はとんと進まず、少しばかり飽きてきた。金持ちの話はよくわからぬ。
そんなことよりもつい先日。
運命的に出逢い、一目惚れしてしまった女学生と恋仲になりたい。
見合い結婚も妾ももう古い。いまや時代は浪漫主義だ。
あなたの【使命】は「吉原見物を適当に済ませ、今後の恋路の対策を練る」ことである。
あなたは藤緒太夫が禿の頃から見守ってきた。
かつての幼いあなたは下男として働いていたが、今では大きく成長し用心棒を務めている。
今回の落籍話を楼主は大層喜んでいるが、中々話がまとまらない為か。
少々はばかりに、と一言残して下がってしまった。
あなたはこっそり、結論が出るまではお前が見張っておけと命じられる。
あなたの【使命】は「藤緒太夫の行く末を見守る」ことである。
本シナリオの内容はフィクションです。
登場する人物・団体・事件・地名・名称等は実在するものとは一切関係がありません。
このシナリオは
『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』
『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン2』
『インセインシナリオ集 ブラックデイズ』
に対応するシナリオとなっております。
本シナリオの内容は性的倒錯表現を含んでおります。
また、暴力的・猟奇的・差別的な表現を含みますが、シナリオ世界上での表現、時代や文化的背景の表現を目的としたものであり、
特定の思想・人物・嗜好等を差別や非難、あるいは助長する意図はありません。
■シナリオ利用規約
燕屋敷百々が作成、公開しているシナリオの利用規約です。
シナリオを使用する前に必ず目を通してください。
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・二次配布、転載行為
本シナリオの文章・画像の( セッションに必要な最小限をのぞく) 無断転載・複製及びインターネット上へのアップロードを禁止しております。
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改変した場合は必ずその旨をセッション後PL へ伝えてください。
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▼利用にあたってのお願い
・セッション開始前に全PLが知っていること(トレーラーやPCHO、レギュレーション)以外の事柄をSNSなど
第三者の目に入る場に公開する行為はネタバレになります。
それらを含む発言はふせったーやプライベッターなどを利用していただき、必ずワンクッション入れるようにしてください。
・NPCが登場するシナリオの場合、NPCに対するPCの感情をシナリオタイトルと共に出すことは完全なるネタバレです。
GMはこれらの点を留意し、PLにも共有するようにしてください。
フリーで公開しているシナリオは予告なしに削除することもあります。ご注意ください。
■使用略称一覧
・GM・ゲームマスター
・PL・プレイヤー
・PC・プレイヤーキャラクター
・NPC・ノンプレイヤーキャラクター
・CS・キャラクターシート
・OP・オープニングフェイズ
・HO・ハンドアウト
・メイン・メインフェイズ
・MS・マスターシーン
・CX・クライマックスフェイズ
・ R ・ラウンド
・ED・エンディングフェイズ
ショック:全員
あなたはかつて、とある武家の下人であった。
両親を早々に亡くした幼いあなたを拾ってくれた、立花の家に大恩を感じている。
立花家は明治維新も乗り越えたが。
当主が事故死してからお家が立ち行かなくなり、心労からか奥方も亡くなり、遺された多額の負債を長女である藤乃(ふじの)がすべて背負うことになった。
まだ赤ん坊である妹には苦労をかけまいと、彼女は自ら遊郭へその身を売った。
藤乃の人生をあなたはずっと追ってきた。いつかお助けしようという一心で。
馴染みとなった際、誘惑に負け1度だけ抱いてしまったが……
その後は一切手を出さずのらりくらりと過ごしてきたのだ。
あなたの【真の使命】は
「藤緒太夫を他の者に落籍させることなく、自由にする」ことである。
初期狂気:いきすぎた思い
※「自由にする」の内容についてはPLの任意とする。
己の物とするも可。
藤乃は藤緒の本名。名家出身の女郎と箔をつける為、敢えて本名に近い名をつけられた。
ショック:全員
あなたは高級官僚ではない、軍人である。
「吉原の地下に眠るらしき、強大な兵器となり得る生物の情報を集めよ。
そして可能ならばその生物、もしくは生物の遺体を回収せよ」
とのことで潜入捜査をしているうちに、今回の騒動に巻き込まれてしまった。
任務とはいえ経費を使いまくり、太夫にはいい思いをさせてもらった。
ヒヒ爺にやるにはもったいない女ではあるが、如何せんあなたには先立つものがない。
ここはひとつ。いけ好かない金持ち爺の誘いなどは気持ちよく跳ね返し、このまま女郎を続けてくれればいいのにとあなたは考えている。
あなたの【真の使命】は
「任務を遂行し、あわよくば藤緒太夫とプラスの感情を結ぶ」ことである。
この秘密を知ったキャラクターは《驚き》で恐怖判定
初期狂気:敵か味方か
ショック:なし
一目惚れした女学生『志波 籐香(しば とうか)』を尾行したところ、
彼女は東京警視庁の幹部の娘であることがわかった。
しかも明治維新が起こる以前は武家のお家である。
将を射んと欲しているが馬は随分と立派なようだ、戦況はなかなかに厳しい。
ここはひとつ、小耳に挟んだネタを生かそう。
藤緒太夫落籍勝負の大本命と見える西園寺傳衛門は後継にすべてを譲り第一線を退いているが、まだまだ精力旺盛な爺である。
最近では、吉原周辺の土地を買い占めているとの噂だ。これは何やらきな臭い。
あなたの【真の使命】は、
「一手柄あげて片恋相手の父親への手土産を入手し、あわよくば想い人である『志波藤香』とプラスの【感情】を結ぶ」ことである。
初期狂気:誇大妄想
ショック:なし
あなたは幼い頃から『NPC-藤緒』、藤乃(ふじの)に惚れている。
これは秘めた初恋だ。
今回の落籍話に対して、裏があることをあなたは知っている。
藤乃には苦界へ入る前に生き別れた妹、藤香(とうか)がいる。
真っ当な家に養子として引き取られた妹は幸せに暮らしていたらしいが。
人質として西園寺傳衛門の手の者に拐され、「妹を家へ帰したければ己の物になれ」と半ば脅されているのだ。
藤乃本人はもう流れに身を任せているような状態だ。
あなたは現状を打開しようと西園寺家の周囲を探り、藤香をなんとかさらい解放し自由にしてきた。
なんとかこの事実を藤乃に伝えられたらいいのだが……。
シナリオ開始時点であなたは『藤緒』に対し【愛情】の感情を所持している。
(シナリオ中に藤緒との感情判定を行った場合、新しい感情で上書きするかはPLの任意)
あなたの【真の使命】は「藤乃を幸せにする」ことである。
初期狂気:盲目
※「幸せにする」の内容についてはPLの任意とする。
己の物にしてもよし、他人の物となるを見守るもよし。
元の生活と変わらぬ状態だとしてもPCが「あれが幸せ」とするならば問題はない。
藤乃は藤緒の本名。名家出身の女郎と箔をつける為、敢えて本名に近い名をつけられた。
江戸の昔、吉原の地下には隠し通路があった。
これは遊女を逃がす為だけではなく、治外法権である花街での面倒事を隠すものでもあった。
しかし時を経ていくうちに拡大していったそれらは使い勝手が失くなり、この街に住む人々の記憶から消えていく。
そこへ、とある遊女が産むことの出来なかった胎児の遺体を捨てた。
本人にしてみれば投げ込み寺へ捨てるように埋葬され、死して尚、女郎だ女郎の子だと蔑まれる己と我が子を憐れんだのかもしれない。
彼女はそんな己の身分を、己の運命を、そして己を苦界へ落とした男達を恨んだ。
彼女の怨念は胎児に届く。
母の恨み節を寝物語にする、世に産まれることすら出来なかった赤ん坊は。
母の愛を求め、母を苦しめる男達を恨んだ。
その声に耳を傾けたのが、外なる神、シュブ=ニグラスである。(本シナリオには登場しない)
邪悪な豊饒の女神は哀れな怨念の塊へ気まぐれに命を与え、己の仔、黒い仔山羊とした。
けれどもそれはとても小さな力。今にも消え入りそうな些末な命である。
なにがしかの脅威になるようなものではなかった。
しかし、黒い仔山羊は夜ごと母を求める。
その声に惹かれ、数人の遊女が始まりの遊女のように堕胎し産みそこねた胎児を捨てた。
仲間を手に入れた黒い仔山羊は時にソレを喰らい、時にそれと融合し、少しづつその身を育てていった。
やがて、5体の集合体となった黒い仔山羊は母(遊女たち)の手を求め、母を悲しませる男達を恨むようになる。
母の嘆きが酷い明け方には、黒い仔山羊は地下を抜ける触肢を伸ばして餌を捕える。
そうして、
吉原にて一晩を過ごしたろくでなしの、命を吸い尽くされた木乃伊(ミイラ)のような遺体が現れるようになるのだった。
明治44年には、定期的に不自然な遺体が現れるようになっていた。
これに目をつけたのが軍である。
──不可思議な現象を生み出すもの。ソレを生物兵器として使用できるのでは?──
そんな可能性を求めた軍上層部の人間が兵器研究を目論み、PC3ら潜入捜査員を放つ。
その動きは勿論、耳敏い吉原の亡八たちも勘付くこととなった。
──我らはお上にこの場での商売を許されたものである。権力の介入許すまじ──
『幻華楼』主人を始めとした大見世の主人達により、不審な遺体を生み出したもの、黒い仔山羊の発見に至る。
彼らは自分達だけで原因を処理し事を隠そうとしたが、黒い仔山羊は銃火器や電力などの攻撃が効かない。
倒すことは出来ず負傷者を出したのみだった。
吉原の先行きを案じた亡八たちは、第一線を退いたとはいえ政財界に未だ根強いパイプを持つ、西園寺傳衛門に相談する。
傳衛門はこの件は金になると睨み、すべてを燃やしてしまえばいいと嘯いた。
地下にて対象である化け物を燃やし、地上の街すらもすべて燃やし蒸し焼きにしてしまえばいいのだ、と。
そこまですれば如何な化け物とて焼失するだろう。
見世の復興には金がかかるだろう。土地は自分が買ってやる。
化け物を燃やすための燃料や火薬も用意してやろう。
更には、決行の日にはすべてをこちらで処理してやる。お前達は被害者の顔で逃げればいいだけだ。
焼野原相手に軍も何も見つけられないだろうて。どうだ、簡単だろう?
商売が絡んだ席で傳衛門に敵う者などいなかった。
こうして、浅草大火が企てられたのだった。
『NPC-傳衛門』は『NPC-藤緒』に対して愛情を持ってはいる。
己の先を見据え、最後の女にしようと考えていた所でこの件が決まった。
傳衛門は藤緒に火災による辛い思いもさせたくないと考え、結構日よりも前にどうにか彼女を吉原から連れ出そうとしていた。
しかし藤緒自身は誰かに囲われるのは、吉原にて遊女として過ごすのと同じことと考えている。
人生に既に絶望している彼女は誘いを受けない。
想像していた色よい返事をもらえなかった傳衛門は意固地になり、彼女が人生をかけて守った実の妹、『NPC-藤香』を拐かすこととする。
偶然居合わせたPC2により一度は逃れた藤香だったが、執拗に狙う傳衛門の手の者により拐かされてしまう。
己の独り勝ちを悟った傳衛門は、江戸の華の前段階での茶番劇を催した。
太夫の競りだ。
そこへ何も知らぬ、PC1、PC2、おまけのPC3が顔を揃える。
真実を知ったPC4は藤香をどうにか逃がし、言葉少なにその場を立ち去る。
しかしなぜ己が執拗に狙われ拐かされなければいけなかったのか、何もわからず疑問を覚えた藤香はPC4を追いかけ吉原へと辿り着く。
姉を探していた藤香は、やっと見つけた唯一の吉原への繋がりであるPC4を諦めきれず、大門から離れられなかった。
これにて本シナリオ舞台の出来上がりである。
浅草大火、俗に言う『吉原炎上』という大規模火災を舞台に、
男達は己の求めるものを見失うことなく、生き残ることが出来るのだろうか──
実際の浅草大火では。
火元として警察が目をつけたのは、東京市浅草区(現在の東京都台東区)新吉原江戸町2丁目の貸座敷「美華登楼(みかどろう)」である。
しかし美華登楼の女郎が発見者でありその後も生存しているにも関わらず、火元はよくわからなかったとされていること。
これだけ大規模な火災だったにもかかわらず、死者が8名だったこと。
焼け跡から5人分の幼児の遺体(標本という説あり)が出たということ。
火災後、復興に伴い大規模な江戸改造計画が行われたこと。
などを元に、浅草大火をテーマに作ったシナリオです。
シナリオに登場する人物、場所、起こった出来事などなどはすべてフィクションです。
歴史的背景はふわっとしています。
※『太夫』という位は基本的に島原のものであるとされています。
が、シナリオ上にて極上の高位の遊女、と表現するために敢えて使用しています。
『明暦の大火による江戸の大改造』http://token.or.jp/magazine/g200309/g2003091.htm
『東日本歴史事件簿』
吉原の大火(上)遊郭から謎の火の手、裸足の娼妓、野次馬の黒山…10時間も燃え続けた「江戸」
http://www.sankei.com/premium/news/141218/prm1412180002-n1.html
ウィキペディア 明暦の大火
https://ja.wikipedia.org/wiki/明暦の大火
消防防災博物館 むさしあぶみに見る明暦の大火と俗説「振袖火事」
http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index.cgi?ac1=R204&ac2=R20402&Page=hpdview
(ふじお)
本名:立花藤乃
幻華楼の遊女 23才
生命力:6 正気度:6
好奇心:知識 恐怖心《緊縛》
特技:《我慢》《官能》《芸術》《効率》《教養》《歴史》
・アビリティ
【基本攻撃】攻撃 《我慢》
【お熱いのがお好き】サポート なし
【資産】
・アイテム
鎮痛剤×2 お守り×2
▼行動方針:<妹さえ無事ならば、あとはどうでもよい>
すべてを諦め流れに任せている彼女は「妹が幸せに暮らしている」ということのみが心のよりどころとなっている。
RPをする場合、あまり感情を見せない人形のような女性をイメージすること。
・表に出ることはない情報だが8~9才頃に苦界入りと設定してある。
・アイテムは感情を結んでいるPCが欲した場合にのみ譲渡する
▼感情について
・PCが『感情判定』に成功した場合、藤緒は必ずプラスの感情を獲得とする。
彼女はPC全員を客としか思っていない為、いい感情を抱いた方が楽と考える。
あまりに態度が悪い場合はマイナスを取ってもいいだろう。(侮蔑される、暴力を振るわれるなど)
・複数名が感情を結んだ場合、感情表の数値に従い以下のように優先順位をつける。
共感<友情<愛情<忠誠<憧憬<狂信
プラスの感情を結んでいるPCが複数いた場合、藤緒は優位の感情のPCのいうことを聞く。
上記の理由から、感情表はGMが振るよりはPLに振らせる方がいいだろう。
この際、NPCとの感情判定においての感情表を振る人物をGMかPL本人か必ず統一すること。
・PC4はシナリオ開始以前より藤緒に対し感情を所持しているが、全PCに対し 感情による情報の共有を藤緒は受けない。
PC全員と何かしらのHO秘密を共有する、などの場面では藤緒もその場にいれば知ることになる。
しかし妹の無事を知ったとしても、すべてを諦めている彼女の行動に変化はなく傳衛門の妾になるしかないと考えている。
感情を結んだPCにEDにて存在を強く求められた場合のみ、
彼女はすべてを捨ててPCと共に逃げる(もしくは誰かPCの物になる等々)という道を選択する。
(さいおんじ でんえもん)
政財界に強力なパイプを持つ元実業家 63才
▼行動方針:<すべては己の筋書き通りに>
・「今回の事件の黒幕なのか?」と匂わせつつも裏であれこれ動いていたフィクサー的な存在。
・藤緒への想い
純粋に"可愛がろう"と思っている。
妹を誘拐してまで落籍を強要したのも、この日(4/9)の火災に藤緒を遭遇させたくないと考えてのこと。
老い先短い身のため少しばかりの時を共に過ごしてくれたなら、後は自由に生きてほしいと考えている。
・RPをする場合は一筋縄ではいかない、いけ好かない老爺をイメージ。
(しば とうか)
生き別れの姉を探す女学生 16才
生命力:6 正気度:6
好奇心:知識 恐怖心《官能》
特技:《恋》《我慢》《情景》《整理》《教養》《数学》
・アイテム
お守り×1 鎮痛剤×1
▼行動方針:<己の正義に従う>
良家の子女とはいえ、警察幹部である養父と養母に厳しくもやさしく躾られた為、清く正しく賢く育った。
その場その場で自分の頭で考え、自分が正しいと思う通りに動く。
RPをする際は溌剌としたかわいらしい女学生をイメージ。
▼藤緒との関係について
・藤香は『生き別れの姉』の顔も名も知らないが当然藤緒は妹の名を知っており、志波家に引き取られたことも知っている。
良家の子女と花魁、23才と16才、と年齢や環境が違い過ぎる為、この二人が似ているという印象は受けない。
しかし「似ているのでは?」との疑問を持ってゾーキングする場合
→《人類学》《医学》《整理》などで判定
成功で面差しに似ているところがあるとわかる。
▼感情について
・PCが感情判定に成功した場合、藤香は必ずプラスの感情を獲得する。
(おそらくPC3のみがこの判定を行う可能性がある為)
暴漢から助けてくれたPC3に藤香は好印象を既に持っており、この年の娘らしく恋に憧れも抱いている。
脅威度:7 属性:怪異/神 生命力:100(25点×5体)
好奇心:怪異
特技:《破壊》《緊縛》《手触り》《第六感》《暗黒》
・アビリティ
【基本攻撃】攻撃 《破壊》
【押しつぶし】装備 (インセイン:P261)
【 吸命 】サポート《緊縛》 触肢で拘束し目標のキャラクターの生命力を吸収する。
目標が回避判定に失敗したら1d6点生命力にダメージ。
ダメージの1/2点(端数切捨て)が生命力に加算される
:12枚
【蛮勇】【頑迷】【忌み数】【愚行】【奇妙な欲求】
【かんしゃく】【疑心暗鬼】【広がる恐怖】【現実逃避】
【疎外感】【狂信者】【歪んだ心】
:オリジナル1d6・2種
[1~2サイクル専用]
1:びゅう、と強い突風が室内にまで桜の花弁を届ける。随分と風が強い。
2:妙に喉が渇いた。喋り過ぎたせいか、空気乾燥しているせいなのか。
3:じとり、と湿ったような視線を感じる。目を向けても誰かはわからない。
4:見習いが練習でもしているのだろうか。どこからか拙い三味線が愉快そうな曲を届ける。
5:窓から忍び込む風が首筋を撫でる。昼前だというのに冷えてきたようだ。
6:春風があまい花の香りに異臭をまぎれさせている。これはなんの匂いだろうか。
※MSが発生し火災の発生以降、3サイクルは以下のシーン表に変更※
[3サイクル専用]
1:じりじりと肌が痛む。吹き付ける熱風に焼かれるようだ。
2:噴き出る黒煙に包まれ咳が止まらない。息苦しい。
3:おじちゃん、どこか痛いの?通りにしゃがみこんだ童女が飴玉(鎮痛剤)をくれた。
4:「───」赤ん坊の泣き声のような、女の呻き声のような、酷く不気味な声が聞こえた。空耳だろうか。
5:突き刺すような視線を感じる。振り返っても何もいない。
6:熱風に煽られ黒煙に巻かれ、目を開けているのも辛い。涙が止まらない。
※GM情報※
・PC1からPC番号順に個別で導入を行い、PC4の後、全員で導入を行い終了となる。
・個別導入の時系列はPC1→PC2→PC3→PC4(明治44年4月9日当日)となる。
・互いの秘密を探り合う楽しみもあるので、
他PLに個別導入の様子を公開しつつの進行で構わないが、PC秘密に関わる部分は伏せること。
春もそろそろ盛りが近い、とある日。
あなたは吉原にて、いつものように、いつもの部屋で過ごしていた。
部屋の主である藤緒太夫は元々表情豊かではないが、心なしかいつもよりも浮かない表情に思える。
※RP挟む※
※GM情報※
・時系列としては落籍話が表へ出る前である。
藤緒は浮かない表情について何を聞かれても答えず、誰かに頼るような発言はしない。
導入でPC1の秘密に関わることは出ない。雰囲気を掴むための1発目の導入。
以下会話描写例.
藤緒:「わたくしの話など、どうでもいいではありませんか」
まるで何かを誤魔化すように藤緒は微笑んだ。
彼女は廓言葉を話さない。
訛りのないはっきりとした言葉で喋り、客である敵娼のことも名で呼ぶ。
そんな所も上等な女に思えるのか、彼女は遊び慣れた男にも人気なのだという。
藤緒:「そんなことよりも、もっと楽しいお話をいたしましょう」
「__(PC1)さまのお話をお聞かせくださいませ。ね? なんぞ楽しいお話をいつものようにお聞かせくださいな」
さぁどうぞと言わんばかりに膝を叩かれ、あなたは言われるがまま、
いつものように、彼女のやわらかな腿に頭を乗せた。
とある日。
あなたは銀座煉瓦街にて、贔屓の店にて紳士らしく優雅にブラジル珈琲を飲み
所謂、銀ブラをしている。
仕事はそう忙しくはない時期だ。街行く人々に目を向け、午後のひと時を楽しんでいた。
※他PLへ非公開での情報※
と、いうのはあなたの表向きの顔である。
潜入捜査もなかなかに長く務めていると、紳士がぴしりと板についている。
その場に溶け込むあなたのテエブル脇を、するり給仕が通り抜けた。
見知らぬ給仕の男は。
小さく折りたたんだ紙片を素早くあなたの手元へ滑らせ、通り過ぎていく。
顔は知らぬが仲間もしくはソレに雇われた者なのだろう。
紙片を確認すると、それは上官からの指示書だった。
指示は仕事を急かすものである。情報が集まらぬことに苛立っているらしい。
これまでは「兵器となり得る生物」の情報を集めよという任務だったが、
見つけ次第「一部でもよいからソレを回収せよ」と変更されている。
おそらく、余所へ潜入している顔も知らぬ仲間が何かしらの情報を仕入れたのだろう。
残された時間は少ないようだ。
※GM情報※
他PLにも公開しつつの進行であったなら、GMとPC2PLには
裏では上記のやり取りをしつつ表では紳士RPを楽しむ、というスパイRPを楽しんでほしい。
とある日、仕事帰りのあなたは吉原の近くをひとり歩いていた。
そろそろ日も落ちる、早く家に帰ろう。
花冷えか、少しばかり冷たい風に思わず身を竦め足を速める、と。
「きゃああああああああっっ」
甲高い悲鳴が鼓膜を震わす。姿を見ずともわかる、あれは若い女の声だ。
声の元へあなたが駆けつけると。
一人のうら若き女学生が、男ふたりがかりでそのか細い両手を掴みあげられていた。
女学生:「やめてくださいっ、……は、離して……だれか」
※GM情報※
・声をかけると男達は顔を見られぬようにしつつ素早く逃げていく。
・尾行は不可能。
・男達にゾーキング→《情景》などで判定
[成功]
フロックコート、とまではいかないが暗い色の洋装の背広に身を包み、中折れ帽を深く被った男達は随分と身形がよかった。
酔いに任せ商売女をからかうならまだしも、女学生に手を付ける無頼漢にも見えず随分とおかしな印象を受けた。
この場ではまだPC3にはわからないが、2名のうち一人はNPC西園寺傳衛門の秘書である。
[会話、描写例]
_籐香:「あ、あの…っ!危ないところをお助けいただき有難うございました」
「私は志波 籐香(しば とうか)と申します。その……あ、貴方様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
女学生は頬を染め、初々しくあなたを見あげる。
※RP少々挟む※
藤香:「いけない……もうこんな刻限でしたのね。私、帰らなければ」
「――さん、お礼はまた後日改めさせていただきますわ!本日は本当に有難うございました」_
彼女は深々と頭を下げ、その場を去っていった。
※GM情報※
・自宅まで送る、などの提案があっても藤香は近くに迎えが来ている筈と断る。
・藤香がこの場にいた理由
彼女は『実の姉が吉原に遊女としているらしい』とのことを突き止め
姉を探す為、なんとか大門を越えられないかと度々、吉原周辺を調べていた。
・己の身を守るために姉が苦界へ身を落とした。とまでは知らないが、そうではないのだろうかと怪しんでいる状態。
四月九日、東京市。春の吉原。
この街随一の大見世『幻華楼』では。
本日、藤緒太夫の落籍について当事者たちにより話し合いが行われることとなっている。
あなたはその場に花魁の警護の意味も含め、同席するよう言いつけられていた。
が、時間へ遅れそうで通りを必死で走っている。
※他PLへ非公開での情報※
あなたは藤緒の実の妹である『志波 籐香(しば とうか)』をなんとか救い出し、自由の身としてきた。
時刻はまだ九時前である。人通りの多い場へ藤香を送り、あなたは仕事へ戻ろうとしたのだが。
何故、己を助けてくれたのか。
自分をかどわかしたのは誰なのか。
己の意思で助けた訳ではないのならば、あなたは誰の手の者なのか。
等々、疑問を次々に投げかけ彼女はあなたを追って来る。
藤香:「まって!お願いです待ってくださいっ、少しでいいから教えてくださいいいいい!!!」
※他PLへ非公開での情報※
妹との再会も、姉がどうなっているのか妹に知られることも、藤緒は望んでいないと知っているあなたは何も答えずに逃げた。
しかし彼女は中々しぶとく、そして中々に足が速かった。
嫁入り前の女学生が袴姿で街中を全力疾走である。
藤香:「ね、ねぇ……っは…ま、……ってくださ」
嫁入り前の女学生が人目もはばからず袴姿で全力疾走している。
しかし男の足には敵わない。
二人の距離はかなり空いたが眉を顰める道行く人々に目もくれず、彼女は大声をあげつつあなたを追ってくる。
気付けばもう大門が目の前だ。遊女ではない女はこの門を越えることは出来ない。
もう二度と会うこともないだろうと、あなたはそのまま走り続けた。
※GM情報※
・NPC藤香の登場によりPC3の導入との繋がりがうっすら見えるようになっている。
この為、他PLへ公開しつつ進行している場合
PC4への状況説明の部分のみを他PLへ伏せ、藤香の台詞、それに対して逃げるPC4のRPや台詞などは伏せずに進行するといいだろう。
───ホケキョ、鶯の囀りが耳を擽る。
昼見世が始まるにはまだまだ早いが、よく晴れた花見にはいい日和だ。
通りを歩く人達のひそめられた話し声や、三味や琴の音が
爽やかだが少しばかり強い風に乗って聞こえてくる。
大見世である【幻華楼】で遊ぶとなれば、本来は茶屋を通さなければならないが本日は勝手が違った。
藤緒太夫の旦那争いである。
上座へお飾りのように座らせられている【NPC-藤緒太夫】を囲むように、
幻華楼の主人、PC1、PC2、そして何故か強引に同席してしまったPC3と、【NPC-西園寺傳衛門】が雁首を揃えていた。
旦那争いと云いつつも、ひとりの女の競りのような会話は平行線で一向に進まない。
誰かが値段を釣り上げれば、誰かがそれを越える金額を訴える。
その繰り返しだ。
飽きてきてしまったのかPC3の欠伸が「くあり」と漏れる。
主人はひとりほくほくと、えびす顔で笑っているが、藤緒はぼんやりと視線を窓の外へ向けてしまっていた。
会話に参加する気はないようだ。
そんな進まぬ商談に飽いたのか、ここで傳衛門が動いた。
すっと彼が小さく手を動かすと、背後へ控えていた秘書らしき男が前へ出る。
洋装の背広に身を包んだ男は、恭しく抱えていた大きな大きな風呂敷包みを解いた。
江戸の頃の話でも真似たのか、それは藤緒の目方ほどもありそうな金子の山であった。
傳衛門:「これだけ出せば問題なかろうて。さて、更に値を釣り上げる若者はいるかね?」
にんまり、と傳衛門が笑った。場に何とも云えぬ空気が流れる。
そこで、すっと音もなく障子が開かれた。
新たに入室したのはPC3以外の全員が知る、この見世の用心棒であるPC4だ。
PC4がそっと近寄ると、あとは任せた、とばかりに彼の肩を叩き
「申し訳ございません!ワタクシはちょいとはばかりに」
そう云い残して、主人は席を立ってしまった。
【吉原】
【幻華楼】
【NPC藤緒太夫】
【NPC西園寺傳衛門】
【PC1】【PC2】【PC3】【PC4】
以上の初期HOを公開
※GM情報※
・『NPC-傳衛門』の秘書をゾーキング→《情景》などで判定
PC3のみこのゾーキング判定に成功することで、秘書がNPC藤香を拐かそうとしていた人物だとわかる。
この件についてNPC傳衛門、もしくは秘書本人に問い質す、またはこの場にいる全員の前で言及したとしても、彼らはのらりくらりと言い逃れて認めない。
引き下がらなければ立場を利用して脅してもいいだろう。
・OP時点で時刻は9時半ごろ、傳衛門の都合に合わせこの時間となった。
(火災発生は10時頃)
▼1サイクル終了で『MS-勝者の余裕』発生
MS以降、傳衛門は幻華楼を去り【NPC-西園寺傳衛門HO】の調査は不可能となる。
▼2サイクル終了時に『MS-異変』、3サイクル開始時に『MS-花街に不似合いな少女』発生。
▼3サイクル前開始前に火災が起こってしまう為、
・【吉原HO】とここから派生するHO、【幻華楼HO】【幻華楼主人HO】【主人の走り書きHO】が調査不可となる。
【主人の走り書きHO】のみプライズ扱いとして、その場から持ち出していればその後も調査可能とする。
・火災発生以降はシーン表を3サイクル専用に変更する。
・『MS花街に不似合いな少女』からNPC志波藤香が登場する。
しかし【吉原の地下HO】を調査することになった際、『NPC-藤緒』はそれ以降の藤香の同行を認めない。(見るからに危険な為)
それ以降は別行動となるので、『吉原の地下HO』を調査以降、藤香の調査判定、感情判定は不可となる。
PC3から藤香へ同行するような提案があるかもしれないが
その場合、藤香は拒絶し、同行発言をしたPCに対して不信感を持つことになる。
[描写、会話例]
藤緒:「この子たちに良くしていただき、誠に有難うございましたお嬢さん」
「けれどこれ以上の同行はお断りいたします。手助けを、と仰って下さるのならば
どうかこの子たちを安全な場所までお連れくださいまし。外へ出れば見知った顔もいるでしょうから」
毅然とした藤緒の声に藤香は僅かに口を開き何かを言い返そうとしたが、
藤緒にそっと背を押された禿たちを見つめると、その小さな手をとった。
藤香:「……わかりました。必ず、おふたりをお身内の下まで無事に送り届けてみせます」
藤緒:「ふたりを、どうぞよろしくお願いします」
藤緒は深く深く頭を下げると、
さっと踵を返してしまい、もう己を呼ぶ禿の声にも振り返らなかった。
▼別れる際、藤香と感情を結んでいるPCがいる場合アイテムをすべてそのPCへ渡す
藤香:「__さま、どうかこれをお持ちください。必ず、ご無事でお帰り下さいね」
藤香が鎮痛剤1、お守り1を譲渡。
▼藤香と一緒に行くと言うPCがいる場合、発言にドン引いて軽蔑すらしそうな態度を取る
_藤香:「……は? あ、失礼いたしました。私ったら聞き間違えてしまったようで」
「もしや今、私と共に行くと仰いましたか?」
「藤緒さんが…、あんなたおやかな女性が菖蒲さんをお助けに行くと仰っているのですよ?
_ 正気ですか、それでもあなたは日本男児ですかっ?! なんって情けないことを!」
「私は一人で大丈夫ですとも、ええ、雛菊さんと菜の花さんがご一緒ですもの!」
「ただここから逃げればいいだけですもの! なのにあなたはっ、いくさ場へ向かおうとしている女性を置いて逃げると仰るので?!」
1617年、江戸幕府公認の吉原遊郭は日本橋葺屋町(現在の日本橋人形町)に誕生。
江戸最大の繁華街と呼ばれた。
本日は花見向きな日和の日曜である、浅草の隅田川両岸や周辺は多くの人出で賑わっているようだ。
【秘密】
拡散情報
ショック:なし
一年ほど前からだろうか、もしかしたらもっと前から。
酔漢が亡くなるという事件、もしくは事故がちらほら続いている。
定められたかのように、ひと月にひとり、客の男が死んでいるのだ。
しかし吉原は治外法権、外からの干渉を受けない場である。
被害者も総じてろくでなしだったせいか、遺体は闇から闇へ葬られこの件を知る者は少ない。
夏場ならば怪談も受けるのだろうが、怪しげな遺体が出る明け方には必ず妙な音を聞く者がいるのだという。
耳敏い遊女は吉原の怪とひそかに嘯いているそうだ。
【ろくでなしの死】
【明け方の妙な音】
以上のHOを公開
吉原随一と呼ばれる大見世。
藤緒太夫も随分と有名になったが、彼女だけでなく昔から名立たる花魁を輩出し現在の地位を築いた。
建物は大層入り組んだ造りだ。
見世を徐々に大きく造り替え、建て増しを繰り返した結果である。
厠へ向かうにも禿のひとりでも付き添わせてもらわなければ客は迷ってしまうだろう。
【秘密】
ショック:なし
拡散情報
そろり部屋を出て周囲を窺ってみると、妙に静かだった。
昼見世もまだ始まらぬとはいえ泊り客は帰りそうな刻限であり、湯屋などへ向かう遊女がいてもおかしくない。
けれども幻華楼内では三味の音ひとつ、女の笑い声ひとつ聞こえないのだ。
見世の中は静まり返っていた。
他の遊女たちはそれぞれの部屋にいるのだろうか?
主人はどこへ行ったのだろうか?
【幻華楼主人】HO公開
※GM情報※
・藤緒以外の高位の遊女は既に主人によって連れ出されている。
・見世から連れ出されていない遊女や下働きのものは、藤緒の落籍に伴い江戸の頃に倣って総仕舞(※)とされた。
藤緒が派手な見送りは嫌がるとの表向きの理由で(実際は速やかに吉原から脱出する為)
祝い金代わりにすべての遊女を傳衛門が買い取り本日は客を取らずともよしとしている。
商談の邪魔をしないよう主人から言いつけられている為、みな部屋の外へは出てこない。
・主人はPC4を連れ出す気はなかった為、彼にはこれらの話は伝えていない。
他の遊女を探したい、などの宣言があった場合
《物陰》もしくは《物音》で判定。成功で菓子を食べている禿などを見つけ表向きの情報を得ることが出来る。
[描写、会話例]
他にひと気はないのかと周囲を窺ったあなたは小さな物音に気付いた。
音を頼りにそっと近づき襖を開けてみると、禿がひとり大人しく菓子を食べている。
禿:「ひっ、……んぐ」
「わ、わっちはきちんと、お、お云いつけとおり大人しくして…」
怒られると思ったのか禿は目に涙を溜めるがあなたがやさしく問うと、小さな声で語り出した。
「ねえさんたちは、どっかにいっちまいましたよぅ。
ほんじつは、藤緒太夫のだんなさまが総仕舞にしてくださったって。
でも太夫は派手にしてほしくないって。
だから、きょうはねんさんたちはみなさんお客を取らないでいいのです。でも宴はしないから。
わっちらは、おとなしくしてなさいって。
わっち、おとなしかった、ですかぃ? ……せっかんされる?」
(※)総仕舞
太夫や花魁の身請けの場合、芸妓、幇間など見世に関わるすべての人間に祝い金が与えられ、派手な祝いの宴が行われた。
身請けされた太夫は大勢に祝いの言葉をかけられ、見送られながら大門を出ていく。
あなたは大層人気のある高位の遊女である。
誰より美しく、どの遊女よりも教養があり、一度閨を共にした男を虜にする床上手だ。
本日はあなたの落籍を誰がするのかという、云わば競りの日だ。
あなたの【使命】は「旦那方のいいように決めた結果に粛々と従う」ことである。
【秘密】
ショック:PC1
あなたの行先は既に決まっている。西園寺傳衛門の下だ。
ぽろりと突然もたらされた落籍話を「興味がない、己はこの街に骨を埋める覚悟である」とやんわり蹴った結果。
苦界へ身を落としてまで守った、娑婆にいる実の妹を質に取られてしまった。
従わなければ妹がどうなってしまうのかわからない。
あなたの【真の使命】は「どのようなことをしても妹の人生を守る」ことである。
あなたは金持ちである。
そして藤緒太夫の敵娼である。
他にも囲う女はいるが、初々しい水揚げの頃から愛でてきた藤緒は特別な存在だ。
妻は何年も前に鬼籍に入りもういない。子も既にそれぞれ家庭を持っている。
最期は彼女に看取ってもらうのがよかろう。
あなたの【使命】は「藤緒太夫を落籍する」ことである。
【秘密】
ショック:なし
すぐさまいい返事がもらえるだろうと思い、二人きりでした落籍の誘いに藤緒は頷いてくれなかった。
年甲斐もなく意固地になったあなたは、藤緒が苦界へ身を落としてまでその人生を守ったという、彼女の実の妹を使うことにした。
己の手の者を使い妹を拐かすと、藤緒はやっと頷いてくれた。
この場は茶番だ。血気盛んな若者たちをからかうのも悪くない。
あなたはこの状況に満足しており、結果にはさして興味が失くなってしまった。
何より。
そうのんびりとしてはいられない。この後に大事な商談が控えている。
決行日を見極め急いだつもりではあったが最後のあの店(たな)が本日になってしまった。
これで買い取る土地は最後だ。あとはすべてが上手く運ぶよう天に任せるしかない。
藤緒が従わないようであったらこの場へ放っていこう。
若過ぎる娘にも興味はない。事が済んだ後にそこらへ放してやればよかろう。
あなたの【真の使命】は「商談を成立させ、速やかに安全な場所へ向かう」ことである。
吉原にて、遊女を買い一夜を共に過ごした酔漢が死ぬ事件。
ひと月にひとりと定期的になってきたのはここ一年ほどであるが、客の原因不明の死はそれ以前から起こっていた。
しかしどの男も、遊女に暴力を振るう、それだけでは飽き足らず見世の者にまで手をあげるなど。
常の振る舞いからこの街の人間に嫌われていた為、問題にされてこなかった。
【秘密】
ショック:全員
男達の死因はわからぬが、死に顔はみな同じだという。
その命を、その身に流れる体液のすべてを吸い尽くされてしまったかのように。
皆、木乃伊のように干からびて死んでいたというのだ。
宵には嬉々として女たちを甚振っていた男が、お天道様の下では変わり果てた姿で死んでいる。
とても人間のすることとは思えない。
口さがない女たちは「苦しみのなか死んでいった遊女たちの祟り」だと噂している。
この秘密を知ったキャラクターは《霊魂》で恐怖判定を行う
異様な遺体の出る明け方、必ず誰かが耳にするという音。
【秘密】
ショック:全員
赤ん坊の泣き声か、或いは女の咽び泣く声か。
甲高くもか細く、地を這うように低くも儚く揺らぐ。はっきりと聞えぬ音は何かの声に聞こえる。
空から降るように、柳の影から広がるように、橋の下から染み出るように──
姿は決して見えぬのに、どこからともなく滲み出るかのようなその声は誰かの耳に届くのだ。
まるで、ここに己はいるのだと、それは己がやったのだと、誇示するように。
この秘密を知ったキャラクターは《地底》で恐怖判定を行う
主人を探して声をかけるが誰も言葉を返してくれない。
帳場にでもいるのだろうか。
【秘密】
ショック:なし
帳場に行ってみると、そこは細々とした荷物をすべてひっくり返したように散らかっていた。
床に落ちていた紙片数枚を拾って見てみると【幻華楼の見取り図】と、
数字が並ぶ帳面へ重ねて殴り書かれた【誰かの走り書き】のようなものがあった。
【プライズ-幻華楼の見取り図】獲得
【主人の走り書き】HO公開
※GM情報※
・2サイクルが終了すると幻華楼は燃えてしまう為、それ以降『幻華楼主人HO』は調査不可となる。
※調査対象外※
迷路のような幻華楼の見取り図。
遊女はときに暴漢となった客に襲われることもあるという。その為のものだろうか。
花魁の部屋、現在藤緒の部屋でもあるこの部屋の床の間に隠し通路があると記されていた。
通路は複雑に入り組んでおり大層わかり難く、地下にも繋がっているようだ。
一度地下へと下りれば他の見世の隠し通路とも繋がっているのだろうか、その通路の全容は幻華楼の規模を越えている。
しかし、見取り図をよく注視し外を目指せば迷わず建物の外へ出られるようだ。
悪筆な主人が更に焦って書いたのだろうか。
ひとつひとつの文字は帳面に重ねて書かれただけでなく震えており、かなり読みにくい。
【秘密】
ショック:なし
どうにか読み下していくと、それは誰かからの指示を書き記したようだった。
以下のように記されている。
四月九日
カネテヨリノアンケン ケッコウス
メボシイモノノミ ヒソカニツレダスベシ
ノコスモノハミナ タイキサス
ヒノテガアガリシダイ モンヲデル
ジカンマチガエルベカラズ ショウサイモラスベカラズ
アヤマリガアレバ イノチヲトラレルトオモエ
※GM情報※
・2サイクルが終了すると幻華楼は燃えてしまう為、
この場へ放置していき3サイクルとなってしまうと調査不可となる。
女学生 16才
あなたは東京警視庁の幹部の娘であり、父は武家の出である。
つまりあなたは良家の子女である。
あなたの【使命】は
「在学中にそれなりの身分のそれなりの男性の目に留まり、結婚を決める」ことである。
【秘密】
ショック:PC3
あなたの現在の両親は養父母である。元の名が立花藤香であることはわかった。
生家も武家ではあった、が。
当主が事故死してから立ち行かなくなり、心労からかその妻も亡くなり、遺された多額の負債を当時まだ八~九才ほどの幼い姉が背負い、遊女になったらしい。
赤ん坊であったあなたは姉の名も知らず、顔すら覚えていない。
わかることはひとつ。
いま現在のあなたの人生があるのは、姉の存在と決断があったから、という事実。
あなたの【真の使命】は「実姉を見つけ出し、その身を自由にする」ことである。
藤緒付の振袖新造 13才
妹分である禿『菜の花』を探して消えてしまった遊女。
彼女もまだ幼い、こんな状況で探すところと言えば限られそうなものだが……。
【秘密】
ショック:なし
火事場で誰かを探している者は少なくない。
しかし偶々、菖蒲を知る者が彼女の姿を見かけていた。
菖蒲は誰かを大声で探しながらうろついており、そのままふっつり消えてしまったらしい。
彼女がいた場所に元々あった建屋は既に燃え尽き炭になっており、床板が抜けてしまったそこには見慣れぬ大穴が空いていた。
地下への通路のように見えたという。
【吉原の地下】HO公開
菖蒲が消えた場にあった地下への通路は、幻華楼の隠し通路とも繋がっているようだ。
【幻華楼見取り図】に地下通路のすべては載っていないが、この入口を見るとかなりの広さに思える。
落ちてしまったのか自ら向かったのかわからないが、菖蒲はここにいるのかもしれない。
【秘密】
拡散情報
ショック:全員
──ホウ ホウ──
梟のような鳴き声が狭い地下通路に響く。
迷路のような通路を進めば、音も近くなっていった。
そうして。
しばし進むと、ソレを見つけた。
吉原の地下通路は怪異『黒い仔山羊』の巣だったのだ。
仔山羊は迷い込んでしまった遊女、菖蒲を触肢で絡め取り精気を吸っている。
『MS_地下に眠る赤子』発生
※GM情報※
このHOを調査するということは、地下通路へ入ることになる。
一度入ったらメイン中に地上へ戻ることは出来ない。
吉原の地下に巣食い、菖蒲を捕らえている怪異。
彼女の命を吸い尽くしてしまったら、新たな獲物を求め地上へ向かってしまうかもしれない。
【秘密】
ショック:なし
黒い仔山羊、絡み合う哀れな5人の仔
脅威度:7 属性:怪異 生命力:100
好奇心:怪異
特技:《破壊》《緊縛》《手触り》《第六感》《暗黒》
アビリティ
【基本攻撃】攻撃 《破壊》
【押しつぶし】装備 (インセイン:P261)
【 吸命 】サポート《緊縛》 触肢で拘束し目標のキャラクターの生命力を吸収する。
目標が回避判定に失敗したら1d6点生命力にダメージ。
ダメージの1/2点(端数切捨て)が生命力に加算される。
このエネミーに銃火器、熱、炎などによる攻撃でダメージを負わせることは出来ない。
※GM情報※
菖蒲の生命力は発見時点で2とする。
救出判定の成功か否かに関わらず、救い出せる為
その後の儀式判定にPC達が失敗し続けない限り彼女が死亡することはない。
※条件条件:1サイクル終了
※登場PC:全員
※このシーン以降【NPC-西園寺傳衛門HO】は調査不可となる。
そうして、あなた方が言葉を交わしていると。
袂から取り出した懐中時計に目を落とした傳衛門が立ちあがった。
傳衛門:「これ以上はいくら話しても時間の無駄だろう。儂は失礼するよ」
「藤緒、用意は出来ているな。さ、行くよ」
※誰かが傳衛門を止めたら※
傳衛門:「金額はお前さんの好きにするがいい。
っはは、金子がアレで足りぬようなら後で幻華楼へ使いを出す。西園寺はけち臭いことはせん、心配はいらぬよ」
傳衛門は口の端で軽く嗤い、あなた達に背を向けた。
主の先周りをした秘書が襖を開けると、藤緒も彼らに続くように席を立った。
※GM情報※
・PCの誰かがNPC藤緒と感情を結んでいた場合
彼女は一度は立ちあがるが、対象のPCを見つめこの場にとどまる。
[描写、会話例]
__(PC名)をじっと見つめ、藤緒は足を止めた。
藤緒:「西園寺さま……、私は後からまいります」
「必ず、まいりますから…」
小さく、しかしはっきりとした藤緒の声に傳衛門はひとつ溜息を吐くと、苦く微笑った。
その表情から感情は読めない。
傳衛門:「大門前に車を待たせておく。そう長くは待てない、立場はわかっているね?」
藤緒:「……はい、必ず」
傳衛門:「ふん、よかろ。
もう少しばかり藤緒との逢瀬を楽しむがいいよ若者。ソレはもう儂の女だ」
その場にいる全員へ見せつけるようにじっとりと細腰を撫で上げると、
傳衛門は金を抱えた秘書を引き連れて去っていった。
▼PCの誰もNPC藤緒と感情を結んでいない場合
《恋》《哀しみ》《愛》、いずれかの判定に誰かひとりでも成功すれば『藤緒に懇願し彼女の心を動かせた』として、藤緒はこの場に残る。
この判定には全員が1度挑戦できるとする。
[判定成功後描写例]
あなたの言葉に耳を傾けていた藤緒は困ったように微笑み、豪奢な着物を直して座り直した。
藤緒:「ふふ……ほんとうに仕様のないお方。私などにそのようなお言葉、勿体ない……」
「西園寺さま、もう少しだけお時間をくださいませ。必ずまいりますので」
「想いをくだいてくださる方には、私もきちりと向き合いたいのです」
小さく、しかしはっきりとした藤緒の声に傳衛門はひとつ溜息を吐くと、苦く微笑った。
その表情から感情は読めない。
傳衛門:「大門前に車を待たせておく。そう長くは待てない、立場はわかっているな?」
藤緒:「……はい、必ず」
傳衛門:「よかろ。
もう少しばかり藤緒との逢瀬を楽しむがいいよ若者。ソレはもう儂の女だ」
その場にいる全員へ見せつけるようにじっとりと白い頬を撫で上げると、
傳衛門は金を抱えた秘書を引き連れて去っていった。
・これ以降、NPC_西園寺傳衛門HOの調査、傳衛門への戦闘を仕掛けることは不可となる。
※発生条件:2サイクル終了
※登場PC:全員
※シーン以降、【吉原HO】とここから派生するHO、【幻華楼HO】【幻華楼主人HO】【主人の走り書きHO】が調査不可となる。
───カンカンカンカン
狂ったように激しく半鐘を鳴らす音が聞こえた。
音の感覚は短い。火元が近いことを知らせている。
障子を開け放ち窓の外を見下ろすと、通りは逃げ惑う人々で溢れていた。
黒煙がそこら中に立ち込め、もうもうと吹き出し、焦げた匂いが充満している。
見紛うことはない、間違いなく大規模な火災だ。
火事と喧嘩は江戸の華だが、近すぎると厄介極まりない。
不幸にも本日はからりと乾きよく晴れた火であり、風も強かった。
密集している木造の見世などひとたまりもないだろう。
全員《焼却》で恐怖判定
※GM情報※
・PC達のいる部屋は2階であり、1階から窓にかけての壁も炎をあげている。
窓から飛び降りることは不可能。
廊下も火が回っている。
以上のことから『プライズ-幻華楼見取り図』を用いて隠し通路を使わなければ逃走不可能である。
・誰もプライズを入手していなかった場合
藤緒は化粧道具の中に隠し持っていた『プライズ-幻華楼見取り図の写し』の存在を思いだし、持ち出す。
[描写、会話例]
藤緒:「……ぁ、あれが使えるかも…」
ぽつり呟いた藤緒は急いた様子で化粧道具入れをひっくり返した。
紅や白粉をかき分け、彼女は小さく折りたたまれた紙片を取り出す。
藤緒:「昔……まだここへ来たばかりの頃。禿時代に見つけてしまって、いつか使えるかもしれないと……写していた物です」
「これを使えば、外へ出られるのではないでしょうか……」
※藤緒はプライズを希望者へ渡す。判定はプライズを所持する1名が1度のみ挑戦できる※
[恐怖判定後追加描写]
襖を開けてみると、そこには既に燃え盛る炎が迫っていた。
幻華楼が燃えている。
板張りの廊下を舐めるように炎が広がっていく。逃げ場はないように見えた。
『プライズ-幻華楼見取り図』を使用すれば、藤緒の部屋の床の間にある隠し通路から外へ出ることが出来る。
▼逃走判定
『プライズ-幻華楼見取り図』を所持するPCが《効率》での判定に成功すれば、NPC含むPC全員をうまく誘導できる。
全員ダメージなし。
判定に失敗すると全員が軽いやけどを負う。全員の生命力に1点のダメージ。
判定に失敗しても屋外へ逃走することは可能である。
[逃走判定後描写]
誘導する(PC名)に続き入り組んだ細い道をどうにか駆けに駆け、あなた達は屋外へと抜け出すことが出来た。
しかし外もあまりいい状態とは言えない。
裸足に寝間着姿の遊女たちが半狂乱で逃げ惑っていた。みな大門を目指して走っていく。
肌に吹き付ける風が熱い。
そこら中から立ち上る黒煙に目や喉を燻され、呼吸もままならない。
そこは、まるで地獄絵図だった。
※発生条件:『MS異変』終了
※登場PC:全員
一刻も早く吉原から逃げ出そうとあなた達が大門を目指そうとした時だった。
藤緒:「…ひなっ? なのか!」
藤緒が逆方向へ走って行ってしまう。
彼女はあいらしい顔を炭で真っ黒に汚し、涙をこらえている二人の童女に駆け寄った。
PC3以外は全員見覚えのある顔である。藤緒についている禿である、雛菊(ひなぎく)、菜の花(なのか)である。
藤緒:「よかった、二人とも無事だったのねっ。他の子たちは? はぐれてしまったの?」
雛菊:「ぅうっ……ひっく、ねえさあああああん」
幼い禿たちは膝をつく藤緒に抱きつき、盛大に泣きはじめてしまった。
藤緒はやさしく抱き留めあやしてやるが、二人は嗚咽を漏らすばかりで言葉を話せない。
すると、雛菊のすぐ脇に所在なさげに立っていた少女が口を開いた。
藤香:「あの、この子たちの保護者の方たちでしょうか? あっ、私は志波藤香(しばとうか)と申します!
少し前に転んでしまって泣いているお二人を見つけたのですが、
どうやら連れの方とはぐれてしまったようなのです」
この場に不似合いな少女は袴の裾を汚すことも厭わず、心配そうに禿たちを見つめる。
※RP挟む※
藤香:「ひなぎくさん達のお姉さん?お母さん?なのでしょうか。始めは誰か年配の方に連れられて逃げていたらしいのですが、
「菜の花さんが途中ではぐれてしまったようで、『あやめ』さんという方が探しに戻っていってしまったようなのです。
「お姉さんが心配だったのでしょうね。ひなぎくさんはご一緒の方を振り払って追いかけたそうなのですが、
このあたりで見失ってしまったと」
「菜の花さんとは運よく出会えたようなのです、けど……」
※GM情報※
年配の方: 遣手(禿を監督する立場)
『雛菊』(7才位の童女)と振袖新造(まだ見習の遊女)である『菖蒲』(13才位)、
他数人の禿を連れ逃げていた遣手だったが、『菜の花』というひとりの禿がはぐれてしまった。
放っておけという遣手を無視し、菖蒲は探しに行ってしまった。
少女たちは全員、藤緒付(※)である。
(※)花魁には数人の付き人や身の回りの世話をする者達がつく。
禿は遣手のもとで教養を身に付けながら姉さん女郎の身の回りの世話の手伝いなどを行う。
禿が成長し13~14才程になると振袖新造となる。
見習いの為、客は取らないが姉さん女郎に複数の客が登楼した際、待たせる客の相手を名代として勤めるなどする。
これら全員の着物から食べ物など生活のすべてにかかる経費を姉女郎が賄う。
藤緒:「菖蒲がまだ逃げていないなんて……そんな、こんなに火が回っているのに…」
呆然と藤緒が呟いた。
多数の火消しも出動しておりポンプ車の姿も見える。
そこかしこで消火活動が始まっているが、火の勢いが弱まる気配は見えない。
藤香:「あ、の…わたし、も!私もご一緒に探しますからっ、ですからきっと見つかりますよ大丈夫ですっ」
己すらも鼓舞するように藤香が大きな声で言った。
そんな彼女に今初めて気付いたような表情で、藤緒が見上げる。
藤緒はなぜか一瞬動きを止めたが、すぐさま遊女らしい華やかな微笑みを浮かべて言った。
藤緒:「随分と身形がいい。どちらのお嬢様かしら?好奇心旺盛なのも結構ですけれど、大門を女が超えるはご法度でございますよ」
「お言葉はとても有難いですが、良家のご子女が女郎などと関わってはいけません。それにここは火事場、まだまだ危険でございましょう」
「ばあやにじいやにととさまにかかさまと、きっと皆さまご心配をしておいでですよ。
さ、ご自分のあるべき場所へお帰りなさいませ。お早く」
言葉を返せない藤香に構わず、藤緒は道行く遊女たちに菖蒲を見ていないか聞きに行ってしまった。
しかし足を止めてくれるものは中々いない。
【NPC-志波 藤香】
【遊女 菖蒲】
以上のHO公開
※GM情報※
・PC3に話しかけられたら藤香はきちんと彼を覚えており会話可能。
・HO公開まで行くと周囲を見る余裕も出てくるため、PC4の存在に藤香は気付く。
しかしRPする場合は空気を読むこと。PC4に制されれば藤香は不服そうにしつつも彼を問い詰めるようなことはしない。
・藤香が近くに寄れば寄るほど、藤緒は鉄壁の笑顔と遊女としての顔で突き放そうとする。
藤緒は妹の幸せの為にも、彼女が自分の存在を知ることはあってはならぬと考えている。
しかしこのシーンが発生することにより、PCの誰かからPC4の秘密を知らされることがなかったとしても
藤緒が妹の無事を知ることが出来る為、傳衛門の妾になる必要性が薄くなる。
※発生条件:『吉原の地下HO』調査成功、秘密公開
※登場PC:全員
ソレは一見、地下に生える1本の巨大な樹木のようだった。
低い天井に、薄汚れた床に、壁に、太い幹から伸びる黒い蔦のようなものがびっしり蔓延っている。
けれどよくよく見ると、それら樹のようなモノは5本が絡みあっており
それぞれに目も開いていない赤子の『顔』のようなものが付いている。
その顔がか細くも不気味な呻きをもらして、いや、鳴いているのだ。
まるで母を求めるかのように。
泣いているのだ、まるで
抱いてくれと懇願するかのように。
全員《暗黒》で恐怖判定
周囲を見渡すとまず臭気に気付いた。
油と火薬の匂いがする。
匂いへ目を向ければそこら中に大きな甕が並び通路脇をびっちりと埋めている。
あの甕に油が仕込まれているのだろう。
爆薬らしき仕掛けもそこかしこに仕込まれており、それらはバケモノを囲むように置かれていた。
そして、菖蒲は───
絡み合う5本のバケモノが伸ばす沢山の触肢に絡み取られ、気を失っている。
敵はまだあなた達の存在に気付いていない。
『黒い仔山羊』HO公開
※発生条件:メインフェイズを終える、もしくは『黒い仔山羊HO』を調査する。
吉原の地下HOを調査した時点で地下へ足を踏み入れたこととする。
▼CXフェイズの終了条件は儀式判定に成功することである。
戦闘開始前に終了条件と伝え、『儀式地下通路の破壊』の情報を公開する。
・エネミーに対する攻撃(着火、爆破)を行わずに、地下通路からの逃走を選択することも可能である。
この場合、PCたちの1つめの行動時はエネミーに存在を気付かれていない為、自発的な逃走に対し妨害は発生しない。
判定は不要、逃走は自動成功となる。
しかしその後、エネミーはNPC菖蒲の生命力を吸いつくし、地上へと出る。
その後の吉原や東京市は無差別に行われる殺人と怪異に怯えることとなる。バッドエンド。
▼儀式地下通路の破壊
1.菖蒲救出 《切断》 判定に成功することで気絶した菖蒲を救出できる。
挑戦しようとするPCが誰もいない場合、NPC藤緒が名乗りをあげる。
判定に失敗しても救出は出来るが、エネミーに気付かれることとなる。
戦闘時のバッティング状態と見做し、アビリティ【押しつぶし】発生。実行者は生命力に1点のダメージ。
2.着 火 《焼却》 判定に成功することで油へ効率よく火をつけることが出来る。
失敗した場合、実行したPCは火傷を負い生命力に1d6点のダメージを受ける。
判定に失敗しても判定をした時点で着火済となり儀式は次の段階へ進む。
3.爆 破 《罠》 判定に成功することで効果的に爆薬を使用することが出来、
地下通路の床が抜け、エネミーは地中深く落とされ、永い眠りにつくこととなる。
失敗した場合、実行したPCは火傷を負い1d6点のダメージを生命力に受ける。
この判定を『軍に所属する者や土木関係者、化学者』などの火薬や爆薬に詳しい者が行う場合、+1の修正がつく。
『3』の判定に成功した時点で爆薬が効果的に作動するとする。
この為、判定に成功するまではエネミーはその場に存在し続ける。
4.脱 出 《地底》 NPC藤緒含めこの場にいる全員が判定を行う。ファンブルしたPCは地中へ落下し死亡する。
※GM情報※
▼儀式について
・儀式挑戦初回はエネミーがPC達の存在に気付いていないとし、戦闘ラウンドとして処理しない。
速度値を設定せずに実行者が順番に判定を行う。
・初回の『3.爆破』に失敗した場合そこでプロットを組み、それ以降は戦闘処理となる。
・戦闘になった場合、エネミーはラウンドの最後に攻撃を行う。速度値は1とする。
▼PC2の真の使命について
・《切断》《整理》《効率》いずれかの判定に成功すれば、エネミーの一部を採取できるとする。
この判定は『3.爆破』判定の成功以前ならば、儀式判定を行いながら密かに行えるとする。
(プロットを設置したか否かにかかわらず、1R(1つの行動)の他に1度できる)
『3.』に成功するとすぐに逃走が必要となる。この時点で判定に成功していなければ真の使命未達成となる。
▼NPC-藤緒の行動について
・感情を結んでいる相手に反対されない限り戦闘に参加する。速度値は2。
・感情を結んでいる相手がダメージを受ける際、ブロックを行う。
・気絶したNPC菖蒲を連れだすPCの脱出の判定にマイナス修正はかからないが(意識不明で小柄な子どもな為)、
NPC藤緒の手を引いて脱出を試みるなど彼女を助ける宣言があった場合、逃走判定にマイナス1の修正がつく。
この場合の藤緒の脱出判定は免除となる。
補助的な動きが特になければ逃走判定を行う。
▼5ラウンドを終えても爆破判定に成功しておらず、生存しているPCがいる場合
・傳衛門の手の者を引き連れて秘書が到着し、すべての事を成してくれる。
脱出の判定は不要となり自動成功。
※GM情報※
NPC-藤緒が生きているか、PCに生存者がいるかによって分岐する。
GMは状況に合わせて演出すること。
[描写、会話例]
※藤緒が生きており、PC全員生存
そうして、あなた達は命からがら地下から脱出した。
しかし地上も安全ではない。未だ火はそこら中で燃え盛っている。
あなた達は駆けに駆け、やがて──
大門を抜けた。
遊女たちにとっては地獄の門のようなソレを、藤緒も駆け抜ける。
吉原の正面玄関である大門は鉄で出来た大層頑丈なものであったが。
今はもう見る影もなく、無残にも焼け崩れていた。
息を切らせた藤緒が、ふと足を止める。
藤緒:「わたしは……これから、どうしたらよいのでしょうねぇ」
※GM情報※
・藤緒と感情を結んでいるPCがいる場合、この問いはそのPCに向けられる。
藤緒は最優先の感情を結んでいるPCの言うとおりにこの先の道を選ぶ。
・感情を結んでいるPCがいない場合
全員にこの問いを向ける。
しかし最終的には、傳衛門の誘いも改めて蹴り、幻華楼へ戻ることにする。
このときPC4もいるなら共に帰ろうと声をかける。
・GMは状況に合わせて進行すること。
感情を結んでいるPCがいない場合のみの描写例を載せておく。
[描写、会話例]
藤緒:「ふふ……、まさか、生きてこの門を抜ける日が来るとは、思いもよりませんでした」
「まるで、自由みたい……。
あぁ、いいえ、違う。違います。
私はいつでも自由でした。どんな状況にあろうと、この心まで囚われるはことはないのですから……」
何もかもを吹っ切ったような、そんな爽やかな表情であなた達を見つめて、彼女はひどく美しく微笑んだ。
「幻華楼へ戻ります。皆々様には色々とご助力いただき誠に有難うございました」
「この御礼はまた改めて。花魁、藤緒太夫の名に恥じぬ御礼を致しますので、是非とも皆さま見世へお運びください」
深く綺麗に華奢な腰を折り、彼女はその場を去っていった。
[ED締め描写例]
1617年、江戸幕府公認の吉原遊郭は日本橋葺屋町(現在の日本橋人形町)に誕生した。
吉原は江戸時代を通じて江戸最大の繁華街として不動の地位を築く。
しかし明治44年(1911)、4月9日。
浅草大火、後の世では映画にもなった火災、俗に言う吉原炎上により焼失した。
当時南西からの風が強く、懸命な消火活動にもかかわらず火災は10時間も続いた。
午前10時頃、火災発生。
午後4時30頃には、病院、電灯会社出張所、憲兵駐在所、貸座敷楼主の住宅などを残して全焼。
215軒の貸座敷は全て焼失し、約2800人の娼妓は燃え尽きた吉原を後に避難した。
燃え盛る炎は、南は今戸(現在の台東区今戸)、北は南千住駅方向へと燃え広がり、東京瓦斯(現東京ガス)南千住発生所にも迫った。
同所はレンガ造りのため無事だったが周辺の家屋は殆どが焼けてしまった。
猛威を振るった炎が鎮火したのは同日午後9時頃である。
周囲も含めこの火災は約6500戸を焼いたという。
昼間の火災だった為か、みな上手い具合に逃げ果せたのか。死者は火災の規模に対しては比較的少なく8名だった
焼け跡から生後間もない幼子の焼死体が5名分出たらしいが、
その後の調べにより医院においてあった標本だったという説も残っている。
吉原は江戸期より何度となく火事に遭ったが、その都度しぶとく復活した。
此度の火事とてその例に漏れない。
過去の火災と比べその被害は甚大であったが、周囲も含めこの土地は復興と共に大改造されたという。
その際、土地を転がして随分と儲けた男がいたとかいないとか───
けれどその真相は定かではない。
あくまでも、口さがない江戸っ子たちが囃し立てた
『うわさ』である。
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