2024年01月03日更新

モリアーティ教授の夢

  • 難易度:★★★★|
  • 人数:3人~6人|
  • プレイ時間:4~5時間(ボイスセッション)

 東京都新宿では5年前より、奇妙で残酷な事件が住民を不安と恐怖に陥れている。それは霧の夜に現れ、人間を切り裂き、食らう、およそ人間の所業とは思えない事件だ。全メディアはこれを、『霧の獣』として報道していた。
 一方でまた、日本では急激に犯罪率が増加していた。爆弾テロ組織、武器密輸組織と言った犯罪組織の乱立に、未解決事件の増加など、異常事態が起きていた。
 無関係そうな2つだが、実は1人の科学者の野望が生み出した負の産物だとは誰も知らないだろう。その科学者は『獣』と『犯罪王』を作り出してしまったのだ。

*boothにて、このシナリオのリブート作品「新モリアーティ教授の夢」を有料頒布中です。

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モリアーティ教授の夢
もりあーてぃきょうじゅのゆめ

鎮魂歌を、眠れない街に。

【はじめに】

 新作です、宜しくどうも。今回は4月下旬のまだ肌寒さ残る、東京都内を舞台にシナリオを組みました。
 今シナリオでは、コナン・ドイルの世界的名作『シャーロック・ホームズシリーズ』に出て来た、ホームズのライバル的存在「ジェームズ・モリアーティ」を題材にしたシナリオです。言えども、『Fate/Grand Order』が好きな友人の熱い要望で作りました故に、全体的に行き当たりバッタリな風です(笑)

 夜霧に紛れて現れる怪物、連続殺人、小河内ダムを彷徨う影、悪夢に悩む女性、廃れた神経学者、爆弾テロを策謀する犯罪集団、謎の武装勢力、天才ハッカー少女……様々な立場で様々な存在が絡み合う、複雑なシナリオであります事を伝えておきます。また、巨大な神話生物との直接対決はありませんが、非常にダイナミックな内容だと自負しております故に、何卒。

【キーパー向け情報】

 4月28日、冷たい朝の風が吹き荒む東京都新宿区。
 ここで前代未聞の連続的な猟奇的殺人事件が起こる。区内に住む自営業の男が、全身を滅多に斬り刻まれ、また下半身が喰い千切られている、あまりに異常で凄惨な事件だ。しかし同様の手口での犠牲者はここ5年で、既に9人目だ。

 殺害現場が山などの人の少ない所ではなく、街の真ん中で行われている点も、恐怖が煽られている。犯人は大きな獣の怪物で、実は「桜屋 遊」が神経学者「鞍骨 佐」によって「食屍鬼」の人格を与えられた結果生まれた生物だ。

 鞍骨は死んだ妻を蘇らせるため、『人格変換装置』を考案する。しかしそんなアンモラルな研究は受け入れられる訳はなかった。

 彼は友人である資産家の「畠中 甲」と呼ばれる人物の協力を得て、機材提供と資金援助のバックアップを受けて装置を完成させる。彼は人体実験として、助手らに無差別で攫わせた2人の人間に初めて装置を使用する。1人は桜屋で、もう1人は「廣末 潔」と言う青年だ。
 捕らえた2人に人格改変を施すが、畠中は研究結果を奪取するため、そして鞍骨に死んで貰うために電流を操作し、1人の人格を怪物に変えて襲わせる。しかもその影響は、人格を2つに分離してしまった。それも体格を大きく変貌させる程の、『ビリー・ミリガン』を彷彿とさせる多重人格症状だ。

 鞍骨は熱狂的な『シャーロック・ホームズシリーズ』のファンで、特に『最後の事件』に登場する「ジェームズ・モリアーティ」が好きだった。モリアーティの再現も夢であった。
 廣末へはその男性被験者用人格「モリアーティ」が作られ、女性用被験者人格である鞍骨の妻が入るはずだった桜屋へ畠中の策略で「食屍鬼の人格」を作ってしまう。

 結果、鞍骨神経研究所は暴走した桜屋によって破滅。それが5年前だ。研究所は奥多摩の深い山奥にあるため、人目に付かず、惨劇が気付かれる事は無かった。
 信じていたパトロンである畠中には、人格変換装置のデータを奪われてしまうが、鞍骨は彼は死んだと思い込んでいる。
 鞍骨は何とか生きていられたものの、酷い罪悪感と嫌悪と狂乱に陥った鞍骨は、研究所で原始人同然の生活をしている。

 桜屋は暴走後、山の麓で原人格に戻ったが、二重人格として食屍鬼の記憶が残され、霧の覆う夜に出現しては人間を襲う。

 一方でモリアーティとなった廣末は巧みに逃走し、桜屋の追跡を逃れる。一度そこで原人格に戻ったが、度々に出現しては原作同様に犯罪組織の統率を開始。
 この5年もの間に起こった未解決事件は彼が関わっており、急増した犯罪組織も彼が作り上げたもの。
 一昨年からは日本に恐怖を振り撒いているテロ集団『メアリ』を組織し、関西を中心に爆弾テロを起こしている他、圧倒的な知性とカリスマ性でヤクザや技術者達を丸め込み、派生して海外マフィアと繋がって日本では入手不能の武器まで入手している。

 廣末の第2人格となったモリアーティは、自分の誕生のルーツを知る為に奥多摩の鞍骨秘密研究所へ。
 一年前の事だが、立ち寄った小河内ダムの奥多摩湖にて、奇怪な生物を観測した。

『淵(ふか)みに棲むもの』と、その従僕たる『ガスト』であり、あるイタリアンマフィアから手に入れた『ゾス=オムモグの像』に惹かれて現れた。
 モリアーティは淵みに棲むものと公約を結び、協力関係となる。公約は湖の底の『夢の歪み』を表す事つまり、ダムの爆破だ。この二種の生物は歪みによって事故的にこの世界に放出された生物で、何とかダム湖から出たは良いが歪み周辺の水流が酷くとても再突入出来ないとして、ダムの水を全部抜いて貰う事をモリアーティに頼んだ。
 代わりとして彼の強力な手下となり、ガードマンから邪魔者の暗殺などをさせ、褒美として太陽光を嫌う彼らへの住処の提供と、食料の提供を与えた。

 モリアーティは自身の操る『メアリ』の恐怖を知らしめる為に、関西から彼らを招集。小河内ダムを始めとし、東京近郊の各所ダムを爆破する大規模な計画による、東京の沈没を目論む。
 その日に彼は、ホームズとの死闘を繰り広げた日でもあり、ジェームズ・モリアーティとしての命日でもある『5月4日』を計画日とした。
 彼は、彼としての運命を全うするために。

【プレイヤー向け情報】

 今回のシナリオは、4月下旬の東京を中心とする。霧の夜に起こる連続殺人事件に怯える新宿区には、また別の闇が存在している。その闇はとても巨悪だが、止める事が出来なければ全てを呑み込む恐怖が日本を襲う事だろう。
 探索者はまず、二つのグループに別れて貰う。一方はとある女性からの相談で、もう一方はとても危険な展開からだ。正気度と肉体に自信のある探索者が後者に行くべきだろう。
 では、まずはAルートから始まる。

『推奨技能』
・目星
・聞き耳
・機械修理
・精神分析
・応急手当


『推奨職業』
・心理学者
・技術者
・探偵

【登場人物】

『桜屋 遊』さくらや ゆう
 常に影が掛かったような表情をした、妙齢の女性。宅建士として不動産屋で働いている。趣味は読書。彼女は5年前に鞍骨らによって拉致され、人格変換装置の影響で食屍鬼の人格が作られてしまっている。食屍鬼の時の彼女は面影は無く、剥き出しの歯と血走った目を剥いた、悍ましい形相をした身の丈二メートルはあろう怪物と化す。
 桜屋としての彼女に食屍鬼としての記憶は無いが、唯一夢にて、人間を襲い食する様子が悪夢として発生し、彼女はその夢の度に殺人事件が起こる事を偶然と捉えられず、気を病んでしまう。
 食屍鬼の人格は存外に狡猾で、目撃者を減らす為に夜霧の深夜を狙って原人格である桜屋を抑え、狩りへと向かうのだ。一人の人間を食えば、二ヶ月は耐えられる。


『廣末 潔』ひろすえ いさぎ
 郵便配達員の男。お金を貯めて指輪を買い、彼女にプロポーズするつもりだ。痩せて疲れた顔をした男だが、笑顔が常の誠実な好青年である。
 5年前の鞍骨による人格変換装置実験でジェームズ・モリアーティの人格が作られてしまっている。それは鞍骨が想像していたものよりも精度が高く、超人的なものとなった。彼は勿論、自身にそんな人格があるなどとは知らず、まさか日本を恐怖に陥れているテロ集団と犯罪組織の首脳が自分であるとは夢にも思うまい。


『鞍骨 佐』くらぼね たすく
 神経学者でその傍ら大学教授。神経系の働きと脳への影響に注目し、脳科学的な展開での性格改善に対する論文で、一時期学会の有名人であった。しかし彼自身は酷く自己評価の乏しい男で、唯一の支えであった妻の病死を受けて半狂乱状態となる。その狂気が妻のコピーを作り出すと言う凶行に走らせ、自身の論文を悪用し、畠中のバックアップの元で性格変換装置を完成させた。他の女性を妻の性格に変換させ、擬似的に蘇らせようとしたのだ。
 結果、装置の不良で失敗に終わり、森の奥の廃れた秘密研究所で人間に怯えて原始人のように暮らしている。


『畠中 甲』はたなか きのえ
 元理化学研究所所員で、株で成功した投資家。日本人にしては彫りの深い顔立ちの男。鞍骨が人格変換装置を作るに辺り技術者、機材、金銭面でのバックアップをした。しかし実は『マホロバPSI研究所』と関係のある人物であり、組織への貢献活動から協力したに過ぎない。桜屋と廣末の二人をモルモットと呼び、現在は経過観察を行っている。
 しかし支配欲の強い彼は装置によって自身に狂信的な兵士を作り上げ、軍隊を立ち上げてやろうと画策している。現在、人格変換装置の小型化に成功し、試験的に7人の人間を強靭な兵士へ変えている。探索者が真相に近付いていると察知すると、刺客を差し向け殺害を図るだろう。


『常川 舞』つねかわ まう
 ネット上にて「dance(ダンス)」と呼ばれる伝説のハッカー。中学生だがその実力は神憑りで、彼女の前ではどんなセキュリティも薄いガラス、数多の企業より機密情報を奪いネット上に流出させる剛腕を持つ孤高の天才。偶然マホロバ社へ届いた畠中の報告書を入手し、内容に興味を持ったが為に、畠中のパソコンをハッキングして人格変換装置の内容を知る。動揺から残した痕跡より畠中が逆探知をし、彼女の家へ処刑隊を送り込む。
 プログラマーとしても超一級で、彼女の協力を得たなら鬼に金棒であろう。酷い人間嫌いだが、アニメに関して並々ならない情熱があり、同志には気軽に接する。


『ジェームズ・モリアーティ』
 シャーロック・ホームズの24番目の短編である『最後の事件』にて登場した、『犯罪界のナポレオン』の異名を持つフィクション人物。作中でホームズと互角の頭脳を持ち、尚且つ巨大な犯罪組織を運営し、ロンドンの裏社会を牛耳っていた巨悪。
 このモリアーティは鞍骨の装置によって再現され、廣末の別人格として生み出された、謂わば『作られた存在』だ。本当は性格と仕草のみの再現だったが、桜屋の暴走により装置の不良が発生し、原作同等の知能と威厳とカリスマ性を持ったモリアーティが完成する。
 廣末とは完全に見た目は違い、高い背丈と白い肌、モノクルが嵌められる程に深い彫りの顔と言った、完全なる英国紳士と化し、猫背と爬虫類のように首を揺らす癖も、モリアーティそのままの姿。誰も彼を廣末とは思えまい。
 爆弾テロ集団、メアリを率いてダム破壊を目論む。


『食屍鬼』グール
 桜屋のもう1人格として生み出された怪物。実験の際に畠中が作り出して生まれた。2メートルもある巨体ながらも素早い動きで翻弄し、鋭く尖った爪で切り裂く殺人鬼。見た目は長髪乱した男の姿であり、とても桜屋と結び付かない姿に変貌している。
 霧の夜に桜屋の原人格を抑えつけ、見た目も感情も乗っ取り獲物を求める。この時、近場の廃墟に自身の服を隠しており、着替えてから狩りを始める。
 人語を話す事は出来ないが思考はかなり狡猾であり、桜屋の人格を半分戻し、身体のサイズを落として一般人に紛れたりも可能だ。また、畠中に従うようにプログラムされており、彼の言葉に忠実だ。

【シナリオ】

 2つのグループに、まず分かれて貰う。桜屋の相談を受けるAグループに、銀行強盗に巻き込まれるBグループだ。

《Aグループの導入》

『桜屋の悪夢』
 まずこちらでは、桜屋の相談を探索者が受ける事になる。その際に探索者の内、誰かをNPC桜屋の友人か、知り合いにすると展開が進めやすい。知り合いなどでは無くても、職業柄他者の相談を受けやすい探索者でも良い。心理カウンセラーか精神科医等、心理系の技能に精通した職業の探索者なら、赤の他人でも相談をするだろう。

 探索者の元に、桜屋がやって来て「一年に何度か、似た悪夢を見る」と相談を持ちかける。内容は、自分が誰かを襲い、その誰かの身体を切り刻んで食べると言う、思い出すだけで吐き気が出るような悪夢。
 しかし、悩みの種は悪夢だけでは無い。この夢を見た日、街で連続殺人が起きるのだ。探索者は【知識】に成功で、その事件の内容を思い出せる。


『新宿連続猟奇殺人事件』
 5年間の内に9人が惨殺された事件。どの被害者も身体を切り開かれ、食い散らかされたような姿で発見されている。手口からして同一犯と決められているが、不定期かつ目撃情報の少ない深夜帯の犯行であり、5年も経過と言うのに犯人像が掴めていない。
 警察も、市民に深夜帯の出歩きを控えさせたり、パトロールの動員数を増やしたりと対応しているが、捜査は難航している。
 ただ、決まって犯行は夜霧の出ている日に起こるので、『霧の獣』と呼ばれて恐れられている。


 探索者が桜屋と知り合いなら、桜屋は宅建士で不動産屋で働く、まさかそんな怪物な訳が無いと分かるだろう。

 彼女は良い精神科医を教えて貰おうと聞いて来る。探索者がその類の職業なら、鬱屈とする彼女に【精神分析】を行える。「自分はとても背が高くて、腕も太くて、大柄な怪物って感じになる。あと、絶対に客観視じゃなくて、私の目線。完全に私自身がその怪物」と、自分の変貌した姿をまじまじと思い出してくれるだろう。
 それ以外ならば、一旦桜屋と別れる。



『噂話』
 新宿の怪事件「霧の獣」に興味を持った探索者は、【コンピュータ】でネット検索したり、【図書館】で関連書籍を見つけたり、或いは【幸運】に成功でコンビニで売られている雑誌や、または探索者の友人から噂話が分かる。ただし、検索方法によって得られる情報が変わる。


『ネット上の噂』
 ネットでは霧の獣についての憶測が飛び交っており、中には目撃者を名乗る者が掲示板を立てていたりと、情報は玉石混交としている。
 掻い摘んで見てみるなら、「身の丈2メートルの鬼」「人狼」「恐ろしい牙」と言った真偽の程は分からない情報が列挙されている。
 しかしどう入手したのか、ある監視カメラ映像を流出させている者がいた。そこには薄暗い霧の中で、確かに人間とは思えない、動物的風貌の巨大な影がいると見える。
 この生物が、確かに桜屋の別人格である食屍鬼だが、映像は暗く不明瞭なので姿形は分からない。監視カメラ映像を流出させたのは、「dance」と呼ばれるハンドルネーム。【知識】に成功で、巷とネット社会を騒がせている伝説のハッカーだと分かる。


『新宿の怪物』
 異常犯罪評論家、河内航太の出版物である。


 私は40年余りを異常犯罪の研究に費やして来たものの、起こる事件には毎度驚かされてしまう。だがその中でも、この「新宿連続猟奇殺人事件」は特段に奇怪な物であると言えよう。
 犯人は不定期に現れ、深夜の新宿にて人間を一人殺害するのだ。それならまだしも、この犯人は被害者を食べると言う、カニバリスト。同じ人間とは思えない、まるで獣のような殺害方法だ。
 この薄気味悪い犯人は、5年前に現れてから全く犯人像が特定されていない。しかし、犯人は人間なのだろうか。最早これは、獣と同等では無いか。
 霧の夜に飛び回り、適当に標的を惨殺し、その肉を喰らうのだ。まるで野生肉食動物の狩りだ。
 狩りを終えると、颯爽と消える。この亡霊のような神出鬼没さも人外じみている。何故犯人は人間喰うのか、そして何を発端として5年前より事件を起こし始めたのか、犯行手口は。それも重要であるが、犯人の思考を人間的目線と常識で捉えず、多角的に調査すべきだ。


 前々作のシナリオ、『ウェルミスの心臓』にて登場したNPCだが、それをプレイし、面識のあり尚且つ信頼されている探索者が電話をかけると、重要な情報を教えてくれる。

「唾液が検出されていて、DNAは人間の形態だそうです。DNAは採取しましたが、警察のデータベース上の前科を持った人間全てに一致しませんでした。しかし、犯人は人間に間違い無いですが……被害者の身体は刃物で切られた傷では無く、動物の爪で引き裂かれたようでした。それに歯で食い千切った痕跡も……果たして犯人は、人間なのでしょうか?」


『怪物の噂話』
 霧の獣の正体について、様々な憶測が立っている。動物を人間のように改造した生物が登場する、SF小説『モロー博士の島』を引き合いに、何処かのマッドサイエンティストが作り上げた生物だと言う噂も。政府の陰謀やら、都市伝説で何かと噂のある『マホロバ社』の生物兵器やら、噂が飛び交っている。
 この情報を聞き、探索者がマホロバ社に行ったとしても門前払いが目に見えている。関連を仄めかせる程度で結構だ。マホロバ社は世界的な電化企業であるが、裏では超能力実験やら人体実験やらと黒い都市伝説が多い。
 実際にマホロバ社はそれを行なっているのだが、関係者の畠中含めて知っている者は一握りしかいない。

《Bグループの導入》

『銀行強盗現る』
 こちらの探索者は、公共料金の支払いや口座開設などの適当な理由で、新宿区内の銀行に来ている事とする。銀行で用事をしている最中、銃を持った4人組の覆面強盗がエントランスで発砲する。「抵抗するな、動くと撃つ」と脅し、銃口を向けて来る。突然の出来事に探索者は【正気度0/1D3】を行う。

 探索者は【目星】に成功で、強盗団の覆面がニッコリ笑っているような柄である事に気付く。その上で【知識】に成功で、彼らは「殺人」強盗集団『ハッピーハッピーハッピー(HHH)』である事に気付ける。当事者は全員皆殺しにする、最低の強盗集団だ。「動くと撃つ」とは言っているが、最終的には殺してしまう。その事実を知ってしまい、探索者は【正気度0/1D4】を行う事。
 HHHはモリアーティの傘下にある犯罪集団で、彼の与えた指示と情報と武器で、正体不明の強盗団として名を馳せているのだ。HHHは早速、強盗に取り掛かろうとする。

 ここで探索者の行う行動は、強盗団と真っ向勝負か、銀行内に【隠れる】で身を隠して隙を伺うか、団員の内一人を【言いくるめ】か【信用】で誘い込み、武器を奪って応戦も可能。無理矢理銃を奪うには、HHH団員と【STR対抗ロール】も可能だ。
 戦う場合は、4ラウンドの後に警察が銀行を包囲する。打破が難しい場合はそのタイミングで、数名が強盗団に挑み、一人が【1D4ラウンド】で人質たちを逃す事も可能だ。

 いずれの方法を取っても強盗団は失敗を察知し逃走を図るが、全員が突然射殺される。
 弾が飛んで来た方を見れば、かなり長身の、フロッグコートを纏った人物が立っている事に気付き、その手にはリボルバーが握られている。【目星】に成功すると、やや猫背で、骨格からして男性であると分かる。その男は団員全てを恐るべき射撃術で射殺した後、銀行の非常階段に入り込む。

 探索者が追うと、廣末とぶつかるだろう。強盗団を撃ったのは、廣末の別人格であるモリアーティだ。口封じとして、HHHを見限り射殺したのだ。身なりも服装も全く違うが、一縷でも彼を疑われないようにしたい。非常階段は二階と、関係者以外立入禁止の扉がある。廣末は「二階から降りて来たから分からない」と答えると、探索者は立入禁止の方へ行くだろう。立入禁止の方はただの裏口だが、路地にリボルバーが落ちている。



『廣末の杞憂』
 警察は射殺された強盗達を見て、探索者に事情聴衆を行うだろう。最も、現場には人質がいるので、探索者達が殺した訳では無いと知ってはいるが、射殺した者を見たか、について聞かれる。
 この時、人質の聴取として同行し、探索者らと同室だった廣末が「全く……日本はここ3年で物騒になりましたねぇ」とたわいの無い話をする。

「最近、『メアリ』って爆弾テロ集団が大阪で連日騒がれていますし、他にも放火グループや大型の麻薬シンジケートの登場に、ネットでの殺人請負業者とやら……ここ新宿でも、連続猟奇殺人だし、ヤクザ経由で海外の武器が密輸されて流通し始めたり。一体、何があったんですかね。警察には頑張って欲しいですよ」

 探索者は【知識】に成功で、メアリについて思い出せる。失敗の場合は、廣末に聞くという事も可能だ。因みに「メアリ(Mary)」は「モリアーティ(Moriarty)」をもじったもので、仲間内での呼称を畠中の報告書経由で、常川にリークされた。


『爆弾テロ集団メアリ』
 関西を中心に爆弾テロを展開する、大型テロ集団。爆発物に関してかなりの専門知識があるのか、遠隔操作、衝撃作動、小型と大型、高破壊力と、多種多様の爆弾を造成する。
 メンバーと思わしき人物が誰一人特定出来ず、テロリズムを起こす動機と思想が判明せず、無予告で犯行に及ぶ不気味で危険な集団だ。メアリと言う名前は、ネット上で広まった彼らの俗称で、誰が言い出したかは分からない。明確な名称が無いので、ニュース番組でもメアリと呼ばれ、そのまま定着した。
 メアリ関連と思われる事件のみで、2年間で15件に及ぶ。一昨年7月7日の、大阪梅田駅爆破事件が発端と思われている。


 メアリについては非常に憶測の多い、謎のテロ集団と言う認識を与えておこう。この危険集団は、探索者達の目の前にいる廣末の第2人格モリアーティが組織しているとは思わないだろう。
 そして彼の言った放火グループ、麻薬シンジケート、殺人請負業者、武器密輸集団も彼が関与し、それ以外でも多くの未解決事件や組織犯罪に関わっている。
 特にメアリは彼のお気に入りで、社会に貶められた技術者を募り、彼らの復讐心を基盤に作り上げた組織だ。メアリの存在がモリアーティの作品であり、謂わば爆破テロは作品発表のような感覚だ。


『帰りしな』
 探索者が銀行強盗に対して何をやったとしても、お手柄として表彰される。軽い治療とカウンセリングを受け、耐久力と正気度をそれぞれ【1D4】回復。他の人質達に混じり、廣末と一緒に警察署を出る。【信用】に成功すると、彼と親しくなり、身の上話をしてくれる。

「歌舞伎町の郵便局で配達員をしてましてね。近々、やっとお金が貯まって、それで指輪を買おうと思うんです。それで、その、彼女にプロポーズしようかなって。あぁ、恥ずかしい話をしました。いや、僕はまだ死ねませんや!」

 既に夕暮れ時だが、夜には今月一番の冷え込みになるそうだ。ぽつりと廣末は「これだけの気温差だと、今日の夜は霧になりそうですね」と呟く。
 ここでA、Bルートの導入パートは終わり、異変が明らかになる夜へと移行する。

《夜霧の獣》

 廣末の予想通り、その日の夜は霧が発生する。連続殺人に怯える新宿は早々と眠りにつき、代わりに警官の巡回が目に見えて多く投入される。
 霧の獣について聞かされていた探索者は夜の街に出ようと考えるかもしれないが、そうでは無い時は探索者一人の知り合いをNPCとして作り、「霧の夜は危ないもんでな、迎えに来てくれ」と頼みを入れて外に出させるようにしても良い。被害者はその知り合いのNPCにしても良いし、迎えに行きしなに殺害現場を目撃してしまう事にしても良い。

 探索者が夜霧の新宿を歩いているならば、突如として肉を潰すような音がする。【聞き耳】に成功で、少し先の霧の中より聞こえて来ると分かる。聞き耳のロールに失敗の場合は音の発信源が特定出来ず、みすみす食屍鬼の眼前に出てしまう。
 探索者がロールに成功し、【目星】に成功したのなら、霧の中の人影にいち早く気付ける。探索者はその状況であれば【幸運】で気付かれぬようにして、奇襲可能である事を伝えよう。

 食屍鬼は一人の人間を殺し、食事をしていた。血走った目に、身の丈は2メートルもある大男。隆起した顔面の筋肉は歪み、まさに鬼の形相。牙が並んだ口からは血が滴り落ち、足元には惨殺された被害者の姿。探索者はそのような怪物に遭遇し、【正気度 1/1D6】のロールをする。
 また、被害者が探索者の知り合いに限り、【アイディア】に成功してしまうと死体がその知人だと知ってしまい、【正気度 1/1D6】を行う。
 食屍鬼は探索者の存在を確認すると立ち上がり、探索者に襲い掛かる。探索者は【回避】か【武道】等の受け流しで攻撃を避けられるが、当たれば【1D6】のダメージを受ける。みすみす眼前に出てしまった場合は、回避不能の攻撃となる。

 奇襲に成功の場合は、食屍鬼に攻撃はかわされてしまうものの、距離を離されるので攻撃はされずに済む。探索者は戦うのも良いが、まず一人で敵う相手では無い為に逃走を促す。【DEX×3】か【幸運】に成功で、逃げ切れるか、警察や他の探索者等の急行で事無きを得られる。失敗の場合は食屍鬼からの追撃が入る。
 食屍鬼の姿は、まさに獣のような生物。血に染まった白衣を着て、髪は長く振り乱されていた。


『獣の行方』
 警察や他の探索者等が助けに来た場合に、食屍鬼はあまり姿を見られたく無いのか、撤退を開始する。大柄ながらも高速で高所を飛び回る姿を追いかける事は大変だが、【追跡】の-10補正に成功で辛うじて逃げる姿を追える。
 獣は霧の中を街灯やビルの壁を超人的な身体能力で飛び、郊外まで行く。追い掛ける者が2人以下の場合、食屍鬼は探索者に襲い掛かるかもしれない。
 郊外まで追えると、そこは廃工場。工場内に入り、職員用のロッカールームより血濡れのコートが手に入る。これは食屍鬼の着ていた、返り血防ぎだ。【アイディア】に成功で近くに気配は無く、また【目星】に成功でコート裏より『鞍骨神経研究所』の刺繍に気付ける。

 追跡に失敗してもこの廃工場は日中の捜査も可能で、その際にはネットの噂話という事で【コンピュータ】か【オカルト】に成功で聞かせるように。
 また食屍鬼退散中、追跡の失敗の有無に関わらず、ロールの必要無しで食屍鬼が何かを落とした所を見て、近付くと『謎の壊れた装置』が手に入る。この装置は機械修理で直せないが、【電子工学】に成功で「かなり高度な機械。近場の工場はおろか、大手の工場でも設置していないようなトップクラスの機械の破片」である事が分かる。
 これは鞍骨の作った人格変換装置の初期型の一部で、食屍鬼は唯一コレに愛着を示していた。つまり、この装置の破片を持つ探索者は今後、食屍鬼に積極的に狙われると言う事になる。


『死体現場』
 警官がいない場合、死体の確認が可能だ。死体はズタズタに切り刻まれ、食い破られた腹が生々しい惨殺死体だ。死体慣れしていない探索者は【正気度 1/1D3】をする。とても人間の所業には思えないだろう。
 死体には何も残っておらず、決定的な証拠は見当たらないだろう。ただし、【目星】に成功で死体の開いた腹の中から、『鞍骨佐』と表示された名札と思わしき物が発見される。
 鞍骨について、探索者は図書館かスマートフォンかパソコンなりで調べたのなら、ロール無用で鞍骨佐に関した6年前の事件記事に行き着く。


『神経学の権威、行方不明。』
 神経学の分野で革新的な論文を発表した鞍骨佐氏が、突然行方不明となる。行方不明当初は学会参加を控えており、いつまでも到着せず音信不通な鞍骨氏に疑問を思った助手たちによって発覚した。
 鞍骨氏は1年前に妻の真(まこと)さんを亡くしており、行方不明の日は丁度1周忌だった。警察は事件性も考慮しつつ、心痛による後追い自殺を視野に入れて調査をしている。

 鞍骨氏は異常心理学における神経学的側面から見た、人格の歪みを正す事による療法を提案。人格と神経に関わる論文を数多く発表し、神経学会での地位を確立させた。


 記事に載せられていた鞍骨の顔は、当時50歳の鞍骨。白髪混じりの髪は短めで髭も剃られ、鼈甲縁の眼鏡をかけた如何にも真面目そうな研究者と言った風の男。
 6年前に奥多摩の秘密研究所にて装置の開発を進め、その1年後に事故を起こしてしまったのだ。現在の彼はその秘密研究所で狂気に陥り、原始人のようになっている。


『事件後』
 探索者は第一発見者として警察から聴取を受けるが、身なりが綺麗な探索者に比べてあまりにも死体が凄惨な為にすぐ疑いは晴れるだろう。犯人像を聞かれたとしても怪物だとは信じない。
 警察署を出る途中、左腕に包帯を巻き付けた廣末に出会う。面識のある探索者がいれば、彼に話しかけられる。曰く、仕事中に当て逃げを食らったそうだ。
「全く、酷い人間もいたもんですよ。軽傷で済みましたけどね」
 彼のこの怪我は、最終局面でモリアーティの正体が分かる、大事な要因となる。印象付けておこう。

【桜屋の杞憂】

 事件後に桜屋は、また悪夢を見た旨を探索者に伝えに来るだろう。【精神分析】に成功で夢の内容を思い出させると、昨日の事件と内容がそのまま一致し、襲われた探索者がいるなら「あっ!」と声をあげて探索者が夢に出て来た事を伝えるだろう。
 探索者は本格的に桜屋があの怪物と何かしらの関連がある事に察知する頃だ。言えども彼女に記憶は無く、何を聞いても「分からない」の一点張りだ。心理学をロールしても、本当に分からない表情を浮かべている。
 ただし【信用】に成功した時、彼女は「関係あるか分からないけど、5年前に夢遊病になっていた」と話してくれる。酷い夢遊病を患っており、度々夜中に外へ出ようとしていた事を話す。今は完全に治癒したそうだが。これは彼女に食屍鬼の人格が形成された時の、一時的な副作用だ。


『獣の行方』
 探索者は食屍鬼と桜屋との関連を疑い、彼女の家や近辺を調べるだろうが、これと言った成果は得られないだろう。鞍骨の事を認知し、その名前を伝えた所で「知らない」と首を振る。
 廃工場や様々な場所を探した所で、5年間警察にその正体を晒さなかった怪物を探索者が見つけられるハズは無い。
 探索者はまず、鞍骨について調べるべきである。鞍骨は東京都内の「峰先医療大学(架空の大学)」で常勤教授だった。探索者が大学に連絡を入れるか、直接赴くかをしなければならない。連絡を入れる場合は【言いくるめ】で鞍骨の友人をでっち上げて聞き出せるし、直接赴くのなら【信用】が必要だ。鞍骨についてはこの大学の講師が語る。

「凄い論文を出した割には自己評価の低い男。それに奥さんを亡くされてからは体調を崩しがちになっていた。彼の事なら畠中に聞けば良いよ。連絡しておく」と、鞍骨の友人だった資産家の畠中を紹介してくれる。


『畠中甲』
 探索者は聞いた住所に向かえば、新宿の一等地に居を構える畠中の豪邸に辿り着く。畠中は元理化学研究所の所員で、その関係で鞍骨と知り合った事と、株で成功してからは投資家となり医学分野へ積極的に投資をしているそうだ。

 畠中はこのシナリオの黒幕的存在だ。マホロバ社に通じ、モリアーティと食屍鬼の動向を報告している。探索者が聞きに来ると言うのなら危険因子と判断し、今後は脅し程度の目的で兵士を差し向けるだろう。キーパーは畠中宅訪問の際に、プレイヤーを二手に分かれさせるべきだろう。もう一方のチームはこの後すぐの【躍動】まで待機させる。

 探索者が到着すれば、連絡は来ているので畠中本人が出迎えてくれる。日本人にしては彫りが深い端正な男で、もう50過ぎだと言うのに若々しく見える。彼に鞍骨の事を聞くと「一時期、彼は奥さんを亡くされて、非常に不安定でしてね。何しろ、彼の精神的支柱が奥さんでしたから。奥さんの支えで、あの素晴らしい論文が出来上がったのですから。もう6年ですか、どうしたものか」と、心配している様子を見せる。彼の演技は大した物で、心理学でも読み取る事は出来ない。

 畠中は続けて、「鞍骨さんがどうしたんですか?」と尋ねて来る。探索者はどんな返答をしても良い、霧の獣と関係がある事を伝えても可だ。
 すると畠中は考え込み、「鞍骨さんが行方不明になった時期と殺人事件の開始って、合致しますよね。もしかすると、犯人は鞍骨さんですか」と太々しく嘘の推理をする。彼は探索者に協力する旨を伝え、夜8時にレストランへ知人の探偵を連れて行くと約束する。ここで彼はまた一芝居するつもりだ。

【躍動する】

 このシナリオのターニングポイントだ、ここから一気にシナリオは進行する。まず探索者を三等分に分けたい。桜屋に再度相談を受ける探索者、夜の街に出る探索者、畠中と待ち合わせをする探索者だ。
 桜屋とは、夜7時半に銀座近くの日比谷公園で待ち合わせ。彼女の知人が良いだろう。
 夜の街に出る探索者は、「廃工場を再度調べる」と言う名目で行動させる。こちらも夜7時半だ。
 畠中と待ち合わせをする探索者は、夜8時に銀座の高級レストランへ向かう為に銀座へ。まずは夜の街の探索チームだ。


『霧の夜再び』
 探索者が廃工場への行きしな、突然また霧が現れる。これはモリアーティの協力者となった『淵みに棲むもの』の呪文による物で、彼らは『ガスト』を使役した裏切り者達の謀殺を開始したのだ。明らかに不自然で不気味な濃霧だ。
 それでも霧の中を進むと、郊外に入った頃に数人の男性の悲鳴が轟く。
 悲鳴を聞きつけそこに向かうと、2人の大柄の男がズタズタに斬り裂かれて殺されていた。探索者は【正気度 1/1D4】をする。【法律】に成功で、彼らは指定暴力団「楠木組」の者たちだと分かる。最近、武器の密輸が噂されている暴力団だ。事実、モリアーティの指示の下で武器の密輸が行われている。

 探索者は死体を縫って歩けば、【聞き耳】で肉を磨り潰すような音が聞こえて来る。近付けば、殺した男を吊るし上げている、2体の『ガスト』に遭遇する。ガストを見た探索者は【正気度 1/1D6】をロールする事。ガストは探索者に気付くと、爪で殺した男を引き摺って逃走を図る。
 探索者はガストを追ったのなら、突然探索者の人数分の銃声が鳴る。【幸運】に成功で弾を避けられるが、失敗なら【1D6】のダメージ。

 霧の中から尊厳な声が響き、「まさかここに人が来るとは思わなんだ」とぼやく。霧を縫って現れたのは外国人の初老の男。首をゆらゆら揺らす奇妙な癖を見せながら、シルクハットとフレンチコートのまるで、19世紀の英国紳士と言った風貌。
 これが現代日本に現れたジェームズ・モリアーティで、廣末の第2人格だ。【知識】に成功で、仕草と見た目から、シャーロック・ホームズに出て来るジェームズ・モリアーティみたいだと気付ける。

 モリアーティは4人の黒服とガストらに守られ、外国人の見た目に反して流暢な日本語で殺害を命じる。その際、「霧はまだ保って貰いたいと、伝えてくれ」とガストらに手話で命じると、ガストは了承したように唸った後、死体を全て抱えて退散する。淵みに棲むものへの連絡へ向かったのだ。モリアーティに見られながら、黒服4人と勝負が始まる。

 黒服たちは銃を持ち、容赦無しに殺害に入る。
 黒服に勝てないと踏んだのなら、【DEX×3】による逃走も手である。逃げる際に背後から撃たれるが、【幸運】で逃げ切れる。その際に撃たれると【1D6】のダメージを追い、痛みから逃げ遅れてしまう。戦闘が続く場合は3ラウンドの後に、一旦別のルートに交代してから戻す。戻った時には霧が消え始め、「消せと間違えたか」と首を振り、黒服たちと車で撤退する。


『獣の正体』
 桜屋が探索者を呼んだ理由は、思い出した事と電話じゃ話しにくい事柄があるからだそうだ。その時に呼ばれる探索者は桜屋の知り合いか、いるのであれば『謎の壊れた装置』を持つ探索者1人のみだ。食屍鬼が桜屋を通じ、装置を取り戻そうと動いた。
 探索者は銀座に近い日比谷公園で待っていると、桜屋がやって来る。桜屋は「実は、5年前の事で、気になっていた事がある」と切り出す。
 彼女には鞍骨らに拉致された記憶は消えてしまっていたが、突如として思い出したのだ。

 桜屋は5年前、仕事帰りに拉致され、妙な機械に繋がれていた。白衣を着た男たちが右往左往し、良く分からない専門用語を使い合っていた。
 彼女の記憶はそこまでが限界であったが、【精神分析】に成功すると、「同じく機械に繋がれた人がいた事」と「痩せた、かなり年配の男が私を悲しそうに見ていた事」を思い出せる。機械に繋がれていたのは廣末で、年配の男とは鞍骨の事だ。鞍骨の顔写真か何かを見せると彼女は動揺し、この人だと叫ぶだろう。

 彼女が次の話題に移ろうとした時、公園に淵みに棲むものの霧がやって来る。霧はかなり深く、そして違和感のある発生に【正気度 0/1D3】をする。
「また霧だ」と呟く桜屋は不安に駆られているのか、探索者の腕にしがみ付くだろう。
 この時に【アイディア】に成功で、腕を掴む彼女の手の感触が嫌にごわごわしている事に気付く。サイズも大きくなったようだ。探索者は桜屋を見ると、そこにいるのは食屍鬼だ。探索者は衝撃から【正気度 1/1D6】をする。
 アイディアに成功していた場合は力を込めて掴まれる前に抜け出せるが、失敗の場合は食屍鬼との【STR対抗ロール】をしなければならない。これに失敗の場合は、腕を完全に掴み上げられ、逃走が不可となる。

 逃走可能の場合は、【DEX対抗ロール】で逃げ切れる。食屍鬼に捕まった場合は噛み付かれ、【1D4】のダメージを受ける。その最中に【STR対抗ロール】で成功すると振り解ける。
 失敗が続いた場合は、もう一度【1D4】ダメージを受け、霧が晴れ出した事により食屍鬼が脱走に入る。その際には『謎の壊れた装置』を奪い、夜の町に消える。

 探索者は【追跡】により追う事も可能だ。追っている時、食屍鬼の身体が段々と縮んで行く事に気付き、最終的には体格も華奢になり、桜屋の姿に戻る。着ていた服は急激な体格変化によりボロボロに破けていた。
 身体が元に戻ると、ある一点で立ち止まる。探索者が桜屋に追い付く前に、銀座から突如、逃げ惑う群衆が現れ、桜屋と探索者を飲み込む。あまりに強い人の流れに探索者は押されてしまい、桜屋を見失ってしまう。
 その後桜屋は行方不明となる。実は逃走中に畠中らの兵に拿捕されてしまった。


『銀座の極悪』
 時系列は、探索チームがモリアーティに会う前、待ち合わせチームが桜屋と話している頃だ。
 銀座の華やかな目抜き通りにて、畠中を待っている探索者。会社帰りの飲み会で上機嫌なサラリーマンやお洒落な服の老夫婦、何らかの記念日のカップルが大勢右往左往としている。
 探索者が待っていると、銀座もまた霧に包まれ始める。突然の霧に騒つく群衆だが、その時に畠中は探偵を連れてやって来る。人の多い場所のお陰か、不安による正気度ロールは不要だ。

 畠中は「霧が何でまた。取り敢えず、入りましょう」と目の前のレストランに探索者を促す。しかしレストランに通された時に【心理学】に成功で、彼の連れて来た探偵が殺意を持っている事に気付く。探索者が振り返るのなら、探偵は拳銃を取り出し、プロ級の腕前で発砲。畠中を撃つのだった。
 探偵は畠中の小型人格変換装置により作り上げた兵隊の1人だ。畠中は探索者たちへの脅しと共に、自分自身への疑いを無くす為に芝居をしている。
 心理学ロールに成功し、一早く畠中への発砲準備に気付いた探索者は畠中を庇う事も可能だ。【DEX×3】で振らせるのも良い。探索者はこの穢れた罪人をわざわざ庇うのだが、その際に彼は防弾チョッキを付けている事に気付ける。その事を後に聞くなら、「予想はしていたが、まさか彼が敵とは思わなかった」としらばっくれる。

 庇いはしなかった場合は、チョッキが防いでいる癖に、苦痛に歪んだ悲鳴をあげて倒れる芝居をするだろう。探索者は【正気度 1/1D4】を行う。
 探偵は「貴様らは我々に図らずも近付こうとしていた。我々の大事な資源の為だ。死んで貰うぞ」と叫び、探索者に銃を向ける。
 この時に【アイディア】に成功で、店内からも殺意がある事に気が付くだろう。振り返れば、3人の一般人が大きな鞄から「アサルトライフル」を取り出し、探索者に向けている。こちらの行動が読まれていた衝撃と謎の兵隊たちの不気味さから【正気度 1/1D4】を行う。
 気付けなかった場合、四方からによる一斉射撃が開始され、【幸運】に成功しなければ【1D10】ダメージを負う。気付いた場合は一早く動け、障害物に隠れてやり過ごせる。

 兵隊たちは強力で、軒並み強力な銃器とスキルを持っている為に、対抗は飛んで火に入る夏の虫に他ならない。彼らが他の客を容赦無く撃ち殺す惨状に【正気度 1/1D6】をする。
 探索者は【DEX×3】で隙を突いて出口に走るか、【変装】で死体の服を奪って他人に成り済ます事も可能。【芸術(演技)】ならば死体の振りも可能だし、【隠れる】でやり過ごす事も可能だ。発見されたとしたら発砲され、戦闘に持ち込まれる。【回避】に成功しなければダメージを受けるだろう。
 3ラウンドを耐え切れたのなら、彼らはあくまで脅しとしてやって来た為に、霧が晴れる頃には早々に引き上げる。
 この騒動によって銀座はパニックに陥り、一般人に紛れ込んだ兵隊たちを追うのは不可能だ。

【霧が晴れたら】

 3ルート全ての探索者の合流点としても良い。銀座チームは病院に搬送されている。待ち合わせチームはその双方の元へ行き、情報の共有を行うパイプの役目を担っても良いだろう。
 病院に搬送された探索者は【1D6】を回復して翌日には退院出来る。警察の事情聴取も入るだろうが、大した力にはなってくれやしないだろう。警察側では囮捜査の失敗でてんやわんやとなっていた。プレイヤーに警察関係者がいるのなら、やけに怠惰的な捜査に疑問を持つだろう。
 そこからは以下のイベントを、キーパーの裁量で起こしても良い。


『桜屋のマンション』
 桜屋の住むマンションに、彼女の姿は無い。ただ、鍵は開けたままであり、部屋に入る事が可能だ。桜屋は帰宅後に畠中の兵隊に拿捕された為に、部屋は酷く荒れている。【目星】に成功したのなら、複数の人間と争ったような形跡がある事に気付ける。
 部屋を探るのなら、彼女の書いた物と思われる、震えた文字のノートが読める。


 深い森の中だ。暗い顔をした男がいる。
 彼らは「奥多摩の森に研究所があるとは」「良くも準備をしてくれたよ、あいつは」と独り言を言っている。
 暫くしたら綺麗な建物が出て来た。私はそこに入れられ、『実験』される。

 昨夜の夢日記。


 また、隣人に話を伺うと、酷く取り乱している事に気付く。【信用】に成功すると、昨日は恐ろしい形相をした4人組が隣の部屋に押し入り、桜屋を連れて行った様を見たと言う。その時に脅され、口止めされていると言う。


『鞍骨の論文』
 論文の類としては非常に有名な為、ネット上でも【コンピューター】で見れるし、図書館でも【図書館】ロール成功で拝見出来る。


 脳が性格に及ぼす影響は、昨今の研究より明らかとなっている。脳に損傷を起こした人物が、突如として凶暴になったりと人格が変わる事も多々指摘されている。
 脳が及ぼす性格形成は、神経からの介入によって人工的に変換させる事が可能であるのではと、研究データを取った。被験体はモルモットである。特殊な電極を低い単位で流した場合、モルモットからは抑うつの傾向が見られ、逆に高い単位で流した場合は凶暴性が増した。
 また、電極のレベルによってはリラックス状態が可能であり、前者の抑うつ性と凶暴性が穏やかになると言うデータも取れている。これを突き詰めれば将来的に、電極による神経介入の性格療法が可能となる。


 鞍骨はこの特殊電極の理論を応用し、人格変換装置を作ったのだ。


『小河内ダムの影』
 探索者は【オカルト】に成功で、とあるオカルト雑誌を見つける。「小河内ダムに大きなヒトデのような生物」を銘打ち、フェイクかどうかも分からない写真付きで報じていた。姿形は立ち上がった蜘蛛のようで、奥多摩湖を泳いでいる姿がある。これこそ、奥多摩湖に潜む淵みに棲むものであり、写真は本物だ。


『昨夜の事件』
 昨日の一連の事件についての世間の認識が、テレビニュースや新聞等で分かる。
 モリアーティとの対峙は、死体は片付けられていたので発砲音の騒ぎとだけになっていた。桜屋の件は逃走の際の姿が何処かの野次馬のカメラに収められ、ネット上で白熱している程度。
 特に銀座の事件は衝撃的であり、日本全国のメディアが挙って話題にしている。一部ではメアリに続くテロ組織の登場だと騒いでいる。また異常発生の霧についてもオカルトめいた噂が立ち始めていた。
 だが、探索者がスマートフォンかでインターネット検索をするのなら、ロールの必要無くネットで警察の文書が漏洩されている件が話題である事が分かる。


『警視庁、ヤクザに送った潜入捜査官3人音信不通でワタワタな件』
 警視庁の文書を盗んだぜ

「武器密輸の疑惑のある楠木組に送った捜査官3名が昨夜より音信不通。最後のメッセージは「歌舞伎町にて呼び出された」だ。捜査官を歌舞伎町に送ったものの、一向に現れず。恐らく、道中で何かあった模様。突如発生した霧に遮られ、確認出来ず。
 郊外の廃工場近くで銃声があったとの情報も。最悪の場合、暗殺された可能性も視野に入れる」

 日本警察は何をしているんですかね。アディオスby.『dance』


 danceは今ネット社会を白熱させている、天才ハッカーのハンドルネームだ。これについて警視庁の声明は無いが、メディアも取り上げんばかりに騒ぎとなりつつある。ガストが殺していた3人の男たちは、この警視庁の潜入捜査官であり、勘付いたモリアーティによって暗殺された訳だ。探索者に警察関係者がいるのなら、【信用】に成功で警視庁に問い合わせたら本当である事が分かる。


『畠中へお見舞い』
 畠中が庇われず、撃たれた場合(撃たれた振りだが)には、彼の病室を訪ねる事が出来る。彼は病院の院長に口聞きし、重傷者として入院しているのだ。
 ベッドに横たわる彼は探索者を見ると優しく歓迎する。探索者は以下の質問が可能だ。

 あの襲撃者は何者か。
「さぁ、私には分からないな。しかし霧の獣の事を調べるなと言っていたな。関係があるのか? しかしあの武装……テロリストが関わっているのか?」

 探偵とはいつ知り合った。
「彼とは古い友人なんだ。信じていたのだが……すまない、少しショックを受けてね」

 鞍骨の居場所に心当たりは無いか。
「全くだ。唯一は理化学研究所なんだが……実は私も昔は理化学研究所の所員でして。鞍骨の行く場所はもう分からないよ」

 ここで懸命な探索者は、最初の質問に「霧の獣について調べるな」と答えていた畠中に疑問を持つだろう。襲撃者は「霧の獣とは一言も言っていない」からだ。これについて探索者が突っ込んだ場合、彼の嘘だらけの仮面にヒビが入り、【心理学】に成功で明確な動揺を感じ取れるだろう。
 彼はすぐに取り繕い、「いや、君たちは霧の獣について調べていたろ?だから、そうだと思ったんだ。あの時は撃たれて動揺していから」と答える。
 探索者が疑惑を持つか持たないかは別として、そこで面会は終了となる。

【danceの誘い】

 イベントが終了した時、突如として銀座での襲撃に遭った探索者へ、見知らぬ名義のメールが届く。送り主には『dance』と書かれ、返信も逆探知も不可な使い捨てアドレスを使用している。
 メールの内容は、秋葉原のとある大型マンションの住所。最後に「来なけりゃアンタらの命は今日まで」と脅し文句も添えられている。


『常川舞』
 常川舞は、以前より畠中の計画を盗み見していた。今回再び覗けば、銀座の事件の事と、探索者を全滅させる旨、そして奥多摩の秘密研究所の事を確認したのだ。しかしその形跡は残ってしまい、彼女自身もそれを自覚しており、助けを求める為に探索者を呼んだのだ。生き残るにはその秘密研究所へ行き、奴らの秘密を暴露させる事だと思っている。
 探索者は彼女の送ったメールに従い、秋葉原の一等マンション6階の一室に辿り着くと、鍵の開いた
ままの扉から入る。ここが常川の家だが、両親は仕事に行き、彼女は今日は学校をサボっていた。

 部屋は暗く、カーテンさえ閉め切られて不気味な感じしか無い。【聞き耳】に成功すると、奥の部屋よりコンピューターの排熱音が聞こえる事に気付く。その部屋に入ると、一人の少女がかなり大型のパソコンに向かってキーボードを叩いている様が目に入る。この少女が天才ハッカー常川舞だ。
「常川舞。『舞』って字から『dance』。以後よろ」と、気怠げで素っ気ない挨拶する。
 探索者はまず、呼び出された訳を聞くだろう。すると彼女は別のパソコン画面に、ある文書を出現させる。そこには「奥多摩、六ツ石山」と書かれた文字と、横には指標も載せられている。常川は「偶然ハッキングした」と前置きし、鞍骨の秘密研究所はここにある事を伝える。

 鞍骨の件を調べている事を何故知っているのかと、探索者に聞かれたのなら、また別のパソコン画面に文書を出現させた。
「観察対象Aを追っている奴らがいる。早急な殺害を望む」と書かれた文字。
 これをネットの渦で拾ったと言い、「あたし同様狙われているの」と説明する。彼女は追って、文書を盗った事はバレている旨を説明し、「警察に突き出すよりも、ここに行くべき。あいつらの秘密の決定的証拠を暴露すれば、死なずに済む」と話す。【心理学】に成功すると、死んだような目をしているが嘘偽りの無い目だと分かる。しかし、何か隠していると気付く。

 探索者はこの捻くれ者に【信用】か【説得】で話を引き出せる。また暗い部屋の中で【目星】に成功すると、部屋中にアニメキャラクターのポスターやらタペストリーが貼り付けられ、部屋にあるディスクの類も良く見ればアニメのブルーレイか、アニソンのCDばかりだ。
 彼女がかなりのアニメオタクだと知り、その話題で話をすると上機嫌になり、同様に隠し事を話してくれる。自分が爆弾テロ組織の名前を暴いたと自慢げに話すだろう。
 曰く、1年前にマホロバ社の文書内から偶然拾った物に、「人格を変貌させる装置の開発」と「観察対象A、Bの報告書」があり、それを見てから探っていたと話す。ただ、その時の形跡はバレていて、最初はこの場所の特定は避けたけど今度のでバレたと頭を抱える。残念ながら文書にて名前は隠蔽されており、彼女は畠中が黒幕とは知らない。


『襲撃』
 探索者が常川を信じるか信じないかとは別で、突如として窓を蹴破り3人の人間が襲撃する。顔に髑髏をあしらったヘッドギアで完全武装した、事実認識者処刑隊。これは銀座の3人とは別に、暗殺に特化した近接攻撃型の特殊部隊だ。勿論、元は普通の人間であり、後頭部に突き刺された小型装置によって人格と体格がプロのアサシンとして作り変えられている。突然の襲撃に、探索者は【正気度 0/1D4】を行う。
 愕然とする常川を余所に、処刑隊は彼女含めたこの場にいる者全員を殺そうと襲いかかる。

 非常に強力な敵だが、探索者は2ラウンド耐えきった後に【目星】で、ヘッドギアの後頭部辺りに妙な排熱口があることに気付く。人格変換装置は高度な技術で作られ、排熱口を用意しなければ熱暴走を起こすからだ。
 探索者は排熱口の存在に気付いたのなら、そこを合計ダメージ10を与えて破壊が可能。また、ガムテープ等排熱口を塞げる物を持っている場合は口を塞ぎ、熱暴走によって装置の破壊が可能。
 人格変換装置を壊された処刑隊は突如として痙攣を起こし、最後には動かなくなる。【アイディア】に成功すると、処刑隊の体格が変化している事に気付く。【医学】に成功すると、全員が死んでいる事に気付く。
 もし、人格変換装置との関連に気付いてしまった探索者は、これは普通の人間だったのではと思い【正気度 0/1D6】を行う。
 また探索者は、倒した処刑隊から偶然外れた小型人格変換装置を拾える。

 こんな襲撃に遭い、一刻の猶予も無い事を悟ったのなら、常川の案内の元で奥多摩の鞍骨秘密研究所へ向かう事となる。

【奥多摩の六ツ石山】

 東京とは言え、奥多摩は殆ど自然の王国である。六ツ石山は登山道が開拓されている、登山家にとったら至ってメジャーな山ではあるが、普段は人の気は無く、とても閑散とした山だ。六ツ石山から南下をすると、水道専用貯水池としては日本最大級の『奥多摩湖』があり、それを堰き止めている『小河内(おごうち)ダム』がある。
 秘密研究所はこの、六ツ石山の登山道からかなり離れた、最早樹海と呼べる深い森の中にある。探索者は常川を連れているので、彼女は指標を覚えており、研究所に辿り着ける。

 研究所はこの場にとても不似合いな、コンクリート製の建物だ。酷く寂れているものの、損壊は見当たらないので築10年も経っていないと分かる。比較的新しい建物だ。
 建物内に入ると、壁や床は傷だらけで、物の散乱した、荒れ放題の内装を確認出来る。物に【目星】をすると、機械の破片や専門用語だらけの書類と、確かにここが何かの科学実験施設だと分かる。
 研究所には部屋がいくつかあるが、どの部屋でも本類が散乱しており、【図書館】に成功すると医学や心理学系の専門書に混ざり、些か場違いにコナン・ドイルの『シャーロック・ホームズシリーズ』がある事に気付ける。

 また、【アイディア】に成功すると、誰かの鋭い視線に気付ける。この視線は、研究所に入り込んだモリアーティ一行の物だ。モリアーティは探索者がここに向かっている事をリークし、追跡していた。POWが10以下の探索者はこの視線に不安を覚え、【正気度 0/1D3】を行う。

 手掛かりとしてはその程度だが、探索者が能動的に調べている場合に限り、【幸運】に成功で写真が発見出来る。笑顔で映る2人の中年夫婦の写真で、30代頃の鞍骨夫妻だ。写真の裏には「君を必ず取り戻すよ」と達筆で書かれているが、その下には後から書かれたような、震えた弱々しい文字で「君は戻って来ない。愚かな私を許して欲しい」と書かれている。


『実験室の恐怖』
 探索者は研究所を見て回ると、一際大きく、そして頑丈そうな扉を発見。扉のプレートには「実験室」とある。ただ、【アイディア】に成功で、厭にその扉は他の場所より傷が多く、扉の隙間から血の跡らしきものが見える事に気付ける。
 探索者が意を決して扉を開けると、薄暗い部屋に白骨死体が散乱した、血痕と傷だらけの悍ましい光景を目の当たりにする。【正気度 1/1D6】を振る事。白骨死体に対し【医学】に成功で、最低死後3年以上が経過している事が分かる。どの死体にも白衣が着せられており、序盤で食屍鬼に襲われた探索者は、霧の獣が着ていた白衣と同じである事に気付ける。

 死体は全部で6人。全員が畠中が用意したマホロバ社の研究員だ。暴走した桜屋の食屍鬼に襲われ、死を遂げたのだ。
 そして部屋の中心には、死体に囲まれたような形で手術台が置かれ、傍らには巨大な装置が2セットある。【電気工事】に成功で、これは電流を流す類の装置である事が分かり、『壊れた装置』を持つ、或いは持っていた探索者のみ【目星】に成功であの装置の破片と同じ部品がある事に気付ける。この装置こそ、桜屋と廣末を怪物に変えた人格変換装置だ。
 探索者が装置にもっと近付こうとすると、装置の影から男が現れる。

【鞍骨佐】

 男は伸び放題の髪と髭、浅黒く汚れた身体、爛々と輝いた鈍い理性の伺える目をした、一瞬人間とは思えない風貌。男は嗄れた声で「俺のもんだ」と叫び、装置に近付く探索者に襲いかかる。【心理学】に成功すると、一切の理性が無く、この敵意には殺意さえある事に気付ける。
 一見は凶暴な男だが、5年間人間との交流を一切していない為に、一発殴ればすぐに逃げ出すだろう。更に酷く弱ったこの男を捕まえる事は容易だ。探索者はこの男の顔を見て、一度鞍骨の写真か何かを見た探索者なら【アイディア】で彼が鞍骨佐に似ている事に気付ける。

 鞍骨は頻りに「装置に触るな」と繰り返し、探索者を離れさせようとする。探索者が装置の事について聞くなら、【信用】か【説得】で話させる事が出来る。彼は「この装置は、俺が作った。俺の装置だ。人間の性格を変えるんだ」と豪語する。


『実験室資料』
 探索者が実験室を見て回ると、1つの結果報告書が発見出来る。


 特殊電流、前頭葉浸出。人格変換の兆候見られる。被験者Aは3分間の痙攣、被験者Bは比較的落ち着いている。
 被験者A、表情に険しさが表出。見た目が幾分か老化したような印象を受ける。被験者Bにも似たような兆候。
 被験者A、およそ人間とは思えない形相になる。電流放出停止、経過観察。


 探索者は鞍骨に過去の話をさせるのなら、彼は叫び出して「思い出させるな」と怒鳴りつける。

 また部屋には観察用のビデオカメラが転がっている。6年前からそのままで、電源は点けられる。映像には、鞍骨含めた7人が白衣を着て、縛り付けられた桜屋を囲んで実験をしている。
【目星】に成功で、奥に影となっているがもう1人の姿を確認出来る。このもう1人が廣末であるが、映像は不明瞭で誰かは分からない。男性だとは気付ける。

 桜屋の頭にはクラゲの触手のようなチューブが装着され、装置は一定のリズムでライトを光らせている。報告書の通り、桜屋の表情はみるみる内に醜く歪み始め、記録係が装置を止めに入った時に桜屋は食屍鬼となって拘束を外し、研究員を惨殺する。最後はカメラ台が倒されて映像は止められた。
 この事実を探索者は看過する事は出来ないであろう。鞍骨を問い詰め、何がここであったかを聞き出そうとするも、鞍骨は雄叫びを上げてうずくまる。5年前の出来事は彼にとって受け入れ難く、そして罪悪感と恐怖を伴っている為に酷いトラウマと化しているのだ。

【装置の秘密】

 鞍骨の処遇に手間取っていると、常川が実験室内より大きな資料を持って来る。それは人格変換装置の設計図である。専門用語はあるものの、人格を変える装置である事は分かる。これを突き付けて鞍骨に迫れば、【信用】か【説得】で彼の口を割る事が可能だ。

「6年前、妻を亡くした私は、妻の人格を他人に移し、擬似的に妻を蘇らせようとしていた。2人の男女を拉致し、それぞれに別人格を施したんだ。愚かな事をした、私は友人の悪魔の囁きに乗った結果、実験は失敗して2人の怪物を作ってしまったんだ」

 2人の怪物とは桜屋の食屍鬼と、廣末のモリアーティだ。彼は被験者の名前を知らないので誰が誰かは言わないが、「女性は人喰いの鬼に、男性の方は……」と言いかけた時、彼は目の前の探索者に飛びかかる。瞬間、隠れていたモリアーティの一味が発砲し、探索者は鞍骨に庇われる形となったのだ。

【モリアーティとの対峙】

 探索者たちの前に現れたのは、モリアーティと彼が率いる爆弾テロ集団『メアリ』のメンバーだ。メアリの団員は7人おり、モリアーティを囲うように守護しつつ、全員が拳銃を構えていた。

 モリアーティの一味は「動くな」と怒鳴り、探索者へ屈服を強制する。探索者が武器を持っている場合は放棄を命じるだろう。モリアーティは首を揺らしながら、「その装置で作られたもう1人とは私の事だよ。私はそこの、酔狂なホームジアン(熱狂的ホームズファンの俗称、シャーロキアンとも呼ぶ)によって作られた、フィクションなのだよ」と自身を「ジェームズ・モリアーティ」と名乗る。
 彼は無抵抗な探索者たちを前に、逃した日から監視していた事と、日本国内の犯罪組織を束ねている事、常川のハッキングに気付いていた事、一目につかないココなら処刑は容易い事を探索者に明かす。

「人間の身体とは、その者の人格に沿って作られている。風化して行く岩のように、進化と淘汰の均衡ように、身体は人格に合うように取捨選択され削がれ、形となる。身体とは人格の彫刻に過ぎん。いわばあの怪物も私も、人格によって変貌した仮の姿なのだ」

 彼は「しかし私は現代に実在してしまった。私は私を全うするまでだ」と続け、メアリのメンバーに発砲を命じた。探索者は【回避】、【幸運】のいずれかで銃弾を避けられるが、当たれば【1D6】のダメージだ。回避した探索者は【DEX×4】で放棄した武器を拾い上げられる。
 応戦も可能だが、鞍骨が探索者を案内して研究所の別通路から脱出を促してくれる。つまり応戦する側は時間稼ぎの要員となり、2ラウンド対峙するのならメアリの増援によって否応無しに確保される。


『確保されたら』
 探索者が確保された場合、「人質にしろ」と命じられ、メアリの捕虜となるだろう。研究所を出て、近場に停めてあった車に乗せられ、小河内ダムまで走らされる。勿論、縛られた上に通信手段も武器も取られている。
 ダム近くまで来ると車から降ろされ、ログハウスに入る。中は太陽光1つも通さない程に密封されており、腐臭がする。一昔前のような水銀燈が点けられると、ガストと遭遇する。ここは太陽光が苦手なガストの為に用意した住処だ。淵みに棲むものは奥多摩湖の底に眠っている。

 モリアーティは手話でガストに「見張っていて欲しい」と伝えると、探索者をログハウスに押し込める。逃げる意思を見せたなら、ガストの餌食となるだろう。
 この時【目星】に成功すると、ログハウスの奥のテーブルに、不自然に掛けられた布がある事が分かる。そして【アイディア】に成功か、或いはPCの設定上「感受性が高い」探索者は、その布の向こうから漂う禍々しい空気に気が付き、吐き気すら催すだろう。その布の向こうにはモリアーティが海外マフィアから貰い受けた『ゾス=オムモグ』の偶像がある。偶像から伝う正体不明の不安感を覚えた探索者は【正気度 1/1D4】を行う。

 ガストは不気味に目を光らせて、探索者を見張るだろう。探索者が逃げる意思を見せなければ何もしないが、もし逃げようものなら鋭い爪で引っ掻かれ、再起不能の怪我を負わされる。
 捕まった探索者は、逃げ果せた探索者たちによる決死の突撃まで待機して貰う。その間を暇にさせない為、以下のイベントを行う。


『夢の声』
 探索者は暗闇の中で、ひたすら「我に従え、我に遣えよ」とくぐもった声が続けられた。探索者は夢であると気付き、ハッと目を覚ます。部屋はさっきまで通り、ガストが唸り声をあげるログハウスの中だ。探索者は【アイディア】に成功で、像を覆う布から漂う雰囲気が強まっている印象を受けた。そしてさっきの悪夢はその雰囲気のせいではと考え、【正気度 0/1D3】を行う。
 ルルイエに眠るゾス=オムモグの念力が偶像を通じ、探索者に当たったのだ。


『シンキングタイム』
 ガストは夜行性である為、日中無理に行動している奴らはうたた寝を始める。その時に足は縛られていない探索者はログハウスを【忍び歩き】で回れるようになる。ガストが気付くかどうかは、ガストの技能の聞き耳によるだろう。
 忍び歩きに成功なら、ガストの聞き耳を10%に落とせる。普通に歩いて探索も可能だが、その場合はガストの聞き耳技能が50%そのままとなり、3歩歩く度にロールする。気付かれたのならガストは飛び起き、探索者を威嚇する。
 出入り口の扉は立て付け悪く、少し触れば大きく軋む。その音にガストはすぐに反応するだろう。扉からの脱出は不可だ。窓もあるが、高い位置にある為、後手に手首を縛られている状態では開ける事は出来ないだろうし、カーテンを開ければ日光が入り、それを毛嫌いするガストは探索者を斬りつけてでも締め切るだろう。斬りつけられた場合は、【1D6】のダメージを負う。

「戸棚」
 戸棚には埃の被った様々な食器類があるが、残念ながら縄を切れそうな鋭利な物は置かれていない。ただ、【目星】に成功で、戸棚の下にやけにドス黒いシミがある事に気付く。匂いはやけに甘い。【化学】か【薬学】に成功で、これは強力な爆薬「ニトログリセリン」であると気付く。ここでメアリはダム破壊用の爆弾を作っていたのだ。

「布の下」
 不気味な雰囲気を醸し出す布を剥がす事が出来る。下には、爬虫類の頭部に触手がタテガミのように生えた異形の生物の金像が出て来る。これこそが、ゾス=オムモグの偶像である。探索者はこの像に睨まれたような印象を受け、【正気度 1/1D4】を行う。【オカルト】に成功なら、遥か昔に沈んだ死都に眠るとされる、ゾス=オムモグの伝承を思い出せる。

「本棚」
 本棚には栞の挟まれた本が一冊以外、何も無い。その唯一の本とは、ジェームズ・モリアーティがシャーロック・ホームズと直接対決を行なった「最後の事件」だ。栞の挟まれたページを開けば、そこはこの話のラストシーンで、ワトスンがライヘンバッハの滝でホームズの名を叫ぶ場面だ。ホームズがモリアーティと格闘し、共に滝壺へ落ちた事を示唆させるシーンで、5月4日に二人は運命を共にしたとされる。最もホームズ自身は何とか凌ぎ、モリアーティを倒した後の三年後にワトスンと再会していたが。
 重要なのは、「5月4日」の場面で太い丸印が付けられている事だろう。作中内日数は、この時点で5月4日の昼過ぎだ。この夜に、彼は小河内ダムの爆破を開始するだろう。
 探索者が【図書館】か【知識】に成功したなら、モリアーティが登場きた『最後の事件』を知っており、この5月4日とはホームズとモリアーティが戦い、滝に落ちた日だと分かる。

【ホームズの人格】

 モリアーティ一味から逃げ切った探索者たちは、この山の事を知り尽くす鞍骨の案内を受けて麓のロッジに逃げ込めるだろう。
 正気に戻った鞍骨は、脳に特殊電流を再度流せば人格を消し去る事が可能と言うが、機械が無い事を告げる。この時、常川の部屋での襲撃にて拾った機械があれば、それを見せてやる。鞍骨は予てより計画していた、小型人格変換装置だと気付き、修理をすればすぐに使える事を告げる。鞍骨の指示を受け、【機械修理】【電気修理】【電子工学】のいずれかの技能で修理が可能だ。

 次の彼の懸念として、モリアーティに近付けるかどうかだ。モリアーティ自身とても強く、また味方にも恵まれている為に近付くのは容易では無い。そこで彼は、「シャーロック・ホームズの人格」を誰かに与えたいと言う。装置へのデータ転送は常川がやってくれるので、可能だ。
【心理学】に成功で、あのモリアーティは自分がフィクションだと知覚し、更に「私は私を全うする」と宣告していた所を見ると、彼はモリアーティである事に一種のこだわりがあると読む。
 完全無欠のモリアーティでも、自分を負かせたホームズに執念があるハズで、動揺と執念を利用して誘き出す作戦だ。ホームズ自身もバリツを使用出来る等、屈強な男な為に一回でも近付けば装置を必ずモリアーティに当てられる。

 探索者は、誰がホームズになるのかを話し合うべきだろう。そして取り決めた際には早速、直された装置で人格が入れられる。人格の表出には時間がかかるので、最終局面までは普通の人格だ。

 また場合によっては、探索者でなくても良い。例えば捕まえた、メアリの構成員などの敵NPCも可とする。
 しかし鞍骨、常川、畠中の主要NPCには使用は禁じて欲しい。


『装置が直せない場合は』
 止むを得ず、そのままモリアーティとの対峙だろうが、この時はモリアーティを殺すか屈服させるか、最終局面には畠中の兵隊たちが登場するのでそこから拝借するのも手だ。この装置があるか無いかでエンディングが左右し、装置ありの場合は「トゥルーエンド」、無しの場合は「ハッピーエンド」となる。


『向かう先』
 ホームズの人格が入ったか、モリアーティとの対峙を決意したのなら、早速彼らを追う事になる。捕まった探索者がいるのなら、助ける事も大事だろう。研究所の方へ戻ると、3人ばかしのメアリ構成員が張り込んでいる。探索者は不意打ちでも正面衝突でも、彼らの捕縛が可能だ。
 捕縛したとしても、モリアーティに心酔している彼らは口を割らない。しかし身体検査をするのなら、指名書を発見する。燃やして隠滅する前に捕まったようだ。そこには「夜9時、小河内ダム、爆破」と書かれている。探索者は小河内ダムへ向かう事となるだろう。

【道中】

 モリアーティは小河内ダム周辺に人を張り巡らせるかもしれない。【ナビゲート】に成功すると、裏道を歩いて気付かれる事なく小河内ダム近郊へ行ける。通常に行く場合はランダムに選んだ探索者1人による3回連続の【幸運】、或いは捕縛した構成員から服を奪い、【変装】によって仲間に擬装し欺く事も可能だ。発見された場合は、構成員との戦闘となる。或いは車で突っ切る事も出来るだろう。

 いずれかの方法で突破をすると、小河内ダム近郊のロッジに辿り着く。そのロッジはガストの潜む場所で、捕縛された探索者がいる場所だ。ただ、その探索者は人質としてダムにいる。ロッジに突撃すると、太陽光を浴びて弱体化したガストと戦闘になる。弱体化したガストは、全ての技能が-10となるものの、窮鼠猫を噛むと言う通り、追い詰められれば補正無しで噛み付き攻撃をする。

 ガストを再起不能にしたのなら、ロッジ内の探索も可能だ。その際にゾス=オムモグの像を見つけるだろうが、処置は探索者に任せよう。放置も壊すも盗むも自由だが、近付けば邪気に当てられ、【正気度 1/1D4】を行う。

【小河内ダムの異変】

 小河内ダムに着く頃には、夕方6時に差し掛かる。小河内ダムに勤務する従業員の死体が見受けられ、不気味な程に静まり返っている。死体を見た探索者は【正気度 1/1D3】を行う。
 すると、晴れた空は突然厚い雲に覆われ始め、雨が降り始める。雨足はどんどんと強まって行き、台風と同等の豪雨となるだろう。これは淵みに棲むものの呪文で降らされた雨で、貯水率を引き上げてから一気に放出するつもりなのだ。
 不穏な空気の漂う中、雨の中を縫ってダムへ辿り着く。豪雨の中の為、【目星】【聞き耳】と言った五感に関係した技能には-10の補正が発生する。また道中はメアリの構成員が徘徊している、【アイディア】か【幸運】をロールしても良い。

 モリアーティはダムの堤頂部より奥多摩湖を眺めていた。小河内ダムはどんな地震にも耐えうる耐震性と強度を誇る。それを爆破する事は、メアリに破壊出来ないものはないと示せる事に他ならない。勿論、ダムを完全破壊する程の爆弾では無いものの、数学者としても一流のモリアーティは緻密な計算の末に脆弱点を見出し、そこへ的確に爆弾が設置されているのだ。
 探索者は山路と順路を経由し、展望塔から堤頂部へ行ける。ダム湖である奥多摩湖は満々と雨水で溜まりつつある。この時、常川はダムの放水をしようといつの間にかいなくなる。


『モリアーティ一味との対決』
 堤頂部、傘をさして雨の中に佇むモリアーティに、理解不能の言語で呪文を唱える3体の淵みに棲むものに遭遇する。そして雨曝しのメアリ構成員が2人、彼を守護しているのだ。人質の探索者がいるのなら、銃を突き付けられている。淵みに棲むものを見た探索者は、【正気度 1/1D6】を行う。「彼らは異界の友人だ。この奥多摩湖の底に帰り道があるそうだが、近付けないそうだ。だから、このダムを破壊してやろうと思ってね。どうせやるなら、溜め込んで放出してやりたいじゃないか」

 彼は「多摩川の氾濫を狼煙に、東京周辺に集まったメアリ爆破部隊が別のダムを破壊する。首都圏の川は濁流となり、呑み込むのだ。数万以上の人間が死ぬぞ」と説明。「しかし、障壁が出来てしまった。それには、君たちの存在の消失によって取り除ける。君たちは私を認知した、死んで貰うぞ」と、メアリ構成員に発砲を許可する。

 人質がいる場合は、「だが、そうだな。この人質の死か、君たちの装置かで許してやる。人質を処刑させたのなら、君たちを今後狙わない。或いは君たちの持つ、人格変換の装置と人質を交換しようではないか。持っているのだろ?壊れているのなら、私の部下が直せる」と、小型装置との交換を条件に迫る。何故装置の存在を知っているかと問われれば、モリアーティは無線機のような装置を取り出し、「とある事情で、人格変換装置の電流から発される特殊な電磁波を傍受する装置を持っていてね」と説明する。
 モリアーティは畠中の存在を知っており、彼らを警戒していたのだ。

 探索者は二択を迫られるが、人命を優先して渡そうとするだろうし、或いは画期的なアイディアが浮かぶ者もいるだろう。無いことを祈るが、考え無しに人質を売る場合は、人質の探索者に回避不能で即死の射撃がされ、ロストとなるだろう。
 装置を渡す場合は雨に濡らさないようにと念押しし、近付くように指示を出す。その時、モリアーティの探査装置が別の電波を傍受し、彼らが避けた途端に発砲される。畠中が4人の兵士と食屍鬼と共に、モリアーティ達の背後より襲撃に来たのだ。

 撃たれたのはメアリ構成員の2人と、淵みに棲むもの。構成員は死亡するが、淵みに棲むものは脳組織を破壊されない限りは死なないので、無事だ。人質となった探索者と、装置を渡そうと近付いた探索者は【回避】か【幸運】に成功しなければ、【1D6】のダメージを負う。また避けたとしても、絶対的に装置を落としてしまう。

【三巴の乱戦】

 間一髪で避けたモリアーティの背後から、まるで特殊部隊が任務中に着けるような装甲を身に纏った5人が現れる。銀座での襲撃に遭った探索者のみ【アイディア】に成功すると、内4人はその時の襲撃者だと分かる。
 兵士達の後ろからは同じく武装した畠中が現れ、不気味な笑みを浮かべている。

「やぁ。久しいね、鞍骨君。君の研究のお陰で、私だけの軍隊が作れそうだよ。どうだい、小型人格変換装置を使用し、人格を統制した我が部隊は。少し前は普通の一般人なんだぜ?」

 ここで畠中は研究データを盗み、5年前に人格変換装置初期型の回路をいじり、桜屋の食屍鬼と言うモンスターを作った事と、一般人に兵士の人格を入れ、いざと言う時に有能で従順な兵士となれる準ステルス部隊を作る事が夢である事を告白する。
 また、食屍鬼には畠中に従うように人格をプログラムされているので、食屍鬼が畠中側として再登場する。鞍骨は畠中が死んだものと考えていた為に、彼の暗躍と裏切りに酷く動揺する。鞍骨は「私の研究のバックアップをしてくれたんだ。無二の親友と思っていたのに、利用しただけだったのか」と慟哭する。

 一方でモリアーティは淵みに棲むものに守られながら無線で仲間を呼び、哨戒させていた残り4人の増援を送らせる。探索者、モリアーティ一味、畠中の軍勢の三巴の戦いが始まる。


『スイッチを押させるな』
 畠中の兵団に殺されたメアリ構成員の手から、無線スイッチが転がり落ちた事はロール無しで確認出来る。その構成員の死体に一番近い探索者か、DEXが一番高い探索者、またホームズの人格を入れられた探索者が1人だけ、それを拾いに行ける。モリアーティもスイッチを拾おうとする。そのスイッチこそ、ダムに仕掛けられた爆弾の発動装置だ。
 モリアーティが早いか探索者が早いかは、【DEX対抗ロール】だろう。競り勝てばスイッチを手にし、競り負ければモリアーティにスイッチを取られる。取られた場合、彼は安全地帯へ行く為にすぐには押さない。スイッチを手に入れる為には、彼の前に立ち塞がらなければならない。モリアーティとのサシの勝負となる。

 その間、人格統制兵2人はメアリの増援と衝突し、畠中は「装置を知る者は生かしちゃおけないな」として、探索者に迫る。淵みに棲むものは食屍鬼と戦っている。ここで探索者は分散され、モリアーティとスイッチの争奪戦をする者、畠中達と戦う者、そして装置を拾いに行く者と別れる事となる。装置の修復がされていないのであれば、畠中達かモリアーティとに分けよう。

 また、モリアーティを逃し、起爆させられた場合はダムが崩壊し、奥多摩湖の膨大な水が一気に流れ出し多摩川を氾濫させ、都内で甚大な被害をもたらすだろう。その事件の報道が狼煙となり、他のダムが破壊されれば、何十万の命が犠牲となる。その場合探索者は罪の意識から【正気度 1D6/1D10】を行い、東京に友人や家族などかけがえのない存在がいる場合にはもう一度【正気度 1D6/1D10】をしなければならない。
 ダムが破壊された場合は、探索者もタダでは済まない。圧倒的な水量は近隣を激しく揺さぶり、探索者は立っていられず、全ての技能に-20の補正がかかるだろう。


『モリアーティ教授との戦闘』
 スイッチを拾おうが拾われようが、モリアーティは探索者の前に立ち塞がるし、或いは立ち塞がれる。彼は仕込み剣にしていたステッキから刃を見せ、フェンシングの構えで探索者と相対する。
 探索者はモリアーティを叩きのめす事でスイッチを奪取し、或いは【組み付き】からの【STR対抗ロール】でも奪取可能。また、ホームズの人格が入れられた探索者は2ラウンド後に眩暈を起こし、シャーロック・ホームズへと変貌を遂げる。
 シャーロック・ホームズとなった探索者は、以下の技能へ一時的にチェンジさせて戦える。モリアーティは驚き、同時に笑い出しながら彼と組み合う。
 まさに、モリアーティの『夢が叶った瞬間』でもある。


シャーロック・ホームズ、伝説的な諮問探偵
STR.17 CON.18 SIZ.15 INT.19
POW.18 DEX.16 APP.9 EDU.18
正気度:94 耐久力:17
db:+1D4
武器:こぶし、85% ダメージ・1D3+db
フェンシング、81% ダメージ・1D6+db
キック、67% ダメージ・1D6+db
バリツ、82% ダメージ・特殊(組み付きと同等の効果)
技能:言いくるめ、96% 医学、29% 応急手当、51% オカルト、55% 回避、56% 聞き耳、86% 心理学、100% 投擲、78% 目星、94% ヴァイオリン、63% 犯罪学、90%

 エキセントリックな性格で、無能嫌いで皮肉屋、気難しい面がある。ただ友人や賛同者には人懐っこく自分の考えを子どものように語る面もある。事件の謎や真相については、解決した後に話してくれる。思い通りに事が運ぶと、独り言を漏らしながら狂喜する。彼は自分に役立つ知識しか得ようとせず、地動説やら進化論と言った常識を知らない。知ったとしても推理の邪魔だとして、忘れるように努めている。地球は丸かろうが、人は猿から進化しただろうが、自分に影響は無いと知っているからだ。女性嫌いではあるが、女性の持つ直感性は尊敬を抱いている。


 ホームズにもフェンシングの技能が存在するので、モリアーティから予備の剣を貰い受けてフェアに戦わせる事も面白いかもしれない。またホームズに探索者は変貌するが、上記の大まかな性格を伝えたのなら、好きにロールプレイさせて構わない。
 また攻撃を食らわせたのなら、モリアーティの左腕の裾が捲れあがり、包帯が巻かれている様が確認出来る。それは廣末人格の時の当て逃げで受けた彼の怪我だ。戦いを見ているであろう探索者達は、その廣末を見ている者限定で【アイディア】でモリアーティの正体に気付ける。


『畠中達との戦闘』
 畠中は人格統制兵を2人引き連れ、探索者と相対する。非常に強力な兵士で、CQCも扱えるが、処刑隊同様に後頭部の装置に10ダメージ以上を与えれば兵士は倒せる。また畠中は身の危険を察知すると、食屍鬼に助けを求めるだろう。すると淵みに棲むものを放り出し、食屍鬼は探索者に襲いかかる。淵みに棲むものもこの乱戦に参加し、探索者と畠中達の見境なく攻撃する。
 淵みに棲むものは攻撃前に1D10を振り、偶数なら探索者に、奇数なら兵士や食屍鬼に襲いかかる。畠中や兵士側も同様の手順で、偶数・探索者、奇数・淵みに棲むもので攻撃する。食屍鬼は何があっても探索者を狙うだろう。
 畠中は3ラウンドの後に食屍鬼に任せて撤退をするが、彼を鞍骨は追いかけ、組み付くであろう。畠中は兵士達に装着させた人格変換装着の操作端末を持っている事に気付き、取り上げようとしている。

 淵みに棲むものは脳組織の破壊が唯一の弱点であり、それに気付くかどうかは【アイディア】か【生物学】にて、異形の怪物とは言え肉体構造は原始的である点に着目し、脳が弱点ではと気付く。


『装置を拾え』
 装置の修復がされている場合、探索者側の小型人格変換装置は、乱闘の最中に蹴られ蹴られて、メアリと兵士の銃撃戦の真っ只中へ飛ばされる。弾幕を縫ってそれを拾えるかは【幸運】で、出目が1〜10の間で成功ならば、痛い目をみずに拾える。それ以外の出目での成功は【1D4】発の弾丸が探索者を掠め、1つにつき1ダメージを負う。失敗の場合は【1D6】発、90〜94での失敗は【1D10】、ファンブルは当たり所が悪く【1D10ダメージ】の上に気絶状態が入ってしまう。

 装置を拾えたのなら早急に戻り、モリアーティと戦う探索者に渡さねばならない。戻る際は畠中らと探索者、淵みに棲むものとの激戦区を越えねばならない。応戦している探索者が扇動するか、【DEX×4】で通り抜けられる。
 そこを抜ければモリアーティと探索者ホームズの決闘場だ。そこで戦うホームズと化した探索者に渡すか、協力するかだ。ただ探索者が少しでも無能だと判断されるような行動を道中で行なっていたのなら、ホームズはその協力を拒否する。彼は無能に我慢ならないからだ。

【最後の事件】

 モリアーティを伏せる、或いは装置の人格消去用の電流を流した場合にモリアーティとの戦闘は終わる。他の条件として、雨を降らしている淵みに棲むものの討伐が成功した場合に、畠中らとの戦闘は終わる。鞍骨が操作端末を奪い、兵士達を元に戻したのだ。
 起爆スイッチを入手し、ダム爆破を止めたのなら成功だ。淵みに棲むものの呪文効果の消失は雨を止める。何をせずとも溢れ出しそうな状態であったが、突然ダムが開き、放水が始まった。常川がコントロールルームに辿り着いたのだ。

 探索者がホームズ化している場合、モリアーティは渾身の力を込めてホームズに組みかかり、放水中の滝のすぐ真上で取っ組み合いを開始。他の探索者はそれを止めねばならないが、食屍鬼や兵士、メアリ構成員が残っている場合は足止めを食らう。ホームズ探索者は【STR対抗ロール】でモリアーティと競わせ、勝てば再度組み伏せられるが、失敗したのならモリアーティに滝へ突き落とされようと、崖っ淵に倒される。他の探索者の助けが無ければ、そこからまた【STR対抗ロール】に勝たなければ滝へ落とされてしまう。
 彼のその光景を見た探索者は、【正気度 1D6/1D10】を行う。しかしホームズ探索者は落ちた際に、元の探索者へ人格が戻り、【幸運】に成功によって【1D10】のダメージは負うものの、死亡には絶対に至らない。上手い具合に木に引っかかり、死は免れたからだ。

 いずれにしてもモリアーティを伏せると、人格が元に戻り行き、廣末が姿を現す。食屍鬼も同様で、桜屋に戻るだろう。


『畠中と鞍骨』
 逃げた畠中を追うと、撃たれて血だらけの鞍骨と組み合っている様を確認出来る。鞍骨は死力を尽くし、倍の背丈である畠中を押している。2人は取り合い、激しく取っ組みあった結果、鞍骨は彼と共にダムの滝へ落ちて行く。まるで『最後の事件』のラストシーンを彷彿とさせる最後だ。
 この時に鞍骨を死なせたく無い探索者は【DEX×4】で早急に近付けるし、【投擲】か何かで援護も出来る。畠中も兵士達がやられ、自身も探索者らに伏せられれば、降伏するだろう。

【結末】

『ダムを崩壊させた場合』
 東京は深く傷付けられた。未曾有の爆破テロにより、大都市は轟音の波の中に呑まれて行く。モリアーティの狂笑と鼓膜を破裂させんばかりの爆音が辺りに木霊する。
【bad end】


『装置無しの場合』
 モリアーティは一度、鳴りを潜めたであろうが、いつ現れ、彼らに復讐するのだろうか。桜屋の中の怪物はまた、霧の夜に人を貪り食らうのだろうか。東京に安寧は、訪れないのだろうか。
 しかし、未曾有の災害は回避された。畠中の研究データで、2人からモリアーティと食屍鬼が消える日も近い。夜空にはまだ、薄雲が立ち込めている。
【happy end】


『装置有りの場合』
 廣末と桜屋の中からモリアーティと食屍鬼は消え、これで日本と東京に安寧が訪れる事となるだろう。同時に探索者に入れられたホームズの人格も取り除かれた。
 ダムは閉まり、轟音が止む。静かな奥多摩の夜空はすっかり晴れ、満天の星空が覗く幻想的な風景が広がっている。
 ホームズの人格が入っていた探索者には、奥多摩湖の底に、虹色の光が見えていた。モリアーティの言っていた、異世界の道が微かに見えたのだ。ふと、探索者にはこんな声が聞こえた気がした。

「この世には知ってはならない事象も、確かにある。解き明かしてはならない謎もある。それは知ってしまったばかりに、知らない時以上の破滅を招くからなんだよ。さぁ、これ以上の犠牲が嫌ならば、それ以上覗く事をやめたまえ」

 ホームズの声だ。気が付けば光は消え、静かな湖畔に星空が映る奥多摩湖が眼下に広がっていた。
【true end】

【後日談とボーナス】

 まずはクリア報酬として、正気度1D6のボーナスが入る。
 探索者がガスト、淵みに棲むものを全て倒した場合、正気度1D10のボーナスが入る。また、モリアーティと食屍鬼の人格を消去させた場合にも、正気度1D10のボーナスが入るだろう。逆に人格変換装置による奴隷と化していた桜屋や廣末、兵士達を殺してしまった場合には、1人につき正気度1D3を消失させなければならない。ホームズの人格として動いてくれた果敢な探索者がいたのなら、正気度1D6のボーナスが追加で入る。鞍骨が死ななかった場合は、正気度1D10が追加のボーナスとなるだろう。

 事件後、桜屋に事の顛末を教えるかは自由だ。だが彼女は自身が新宿の連続殺人の犯人で、しかも人肉を食していた事実を知った時は狂気に陥る事も視野に入れるべきだ。彼女は悪夢を見なくなったと言う結果だけだ、十分だろう。
 それは廣末にも同様で、日本の犯罪界を牛耳っていた存在だったなんて事は知らせるべきでは無いだろう。彼は仕事をこなし、結婚指輪を買い、彼女にプロポーズするのだ。幸せな未来は近いはず、水を差すべきでは無い。これらはホームズの言った、「知らなくても良い謎」であるからだ。

 畠中を捕らえた場合は、彼はまず銃刀法違反と、人格を変換させて兵士を作ると言う狂った機械を悪用した事実から日本中のみならず世界を震撼させる大犯罪者となって裁かれるだろう。その機械を考案した鞍骨は、行方不明から登場した衝撃と共に、到底誹謗中傷の的となるはずだ。だが彼の精神は妻の死を乗り越え、一回り成長している。彼は清々しい表情で、証言台に上がるはずだ。
 常川は今回の一件でハッキングに懲り、両親に構って貰えないから拗ねてただけとしてハッカーを引退するだろう。彼女の中で今回の一件は、非常に考えさせられるものとなったハズだ。
 他のダムに待機していたメアリ達も捕縛され、メアリは壊滅。また武器密輸を行なっていたヤクザグループも、主導者喪失で一気に分裂し、崩壊した。

【NPCステータス】

桜屋遊(25)、鬱屈な宅建士
STR.9 CON.6 SIZ.14 INT.15
POW.12 DEX.13 APP.13 EDU.15
正気度:25 耐久力:13
db:+0
技能:図書館、80% 説得、60% 歴史、58% ナビゲート、90% 経理、75%


廣末潔(29)、快活な郵便配達員
STR.11 CON.13 SIZ.12 INT.12
POW.10 DEX.9 APP.12 EDU.14
正気度:50 耐久力:19
db:+0
武器:こぶし、55% ダメージ・1D3
キック、55% ダメージ・1D6
組み付き、60% ダメージ・特殊
技能:運転(バイク)、75% 応急手当、60% ナビゲート、80% 隠す、55% 回避、40%


鞍骨佐(56)、狂気の神経学者
STR.8 CON.10 SIZ.14 INT.19
POW.11 DEX.14 APP.5 EDU.22
正気度:10 耐久力:17
db:+0
武器:こぶし、65% ダメージ・1D3
重いステッキ、60% ダメージ・1D6
組み付き、45% ダメージ・特殊
ノーリンコT-54、70%・ダメージ1d6+1
技能:医学、80% 写真術、76% 忍び歩き、90% 博物学、70% 薬学、60% 精神分析、50% コンピュータ、50%、神経学、95%


常川舞(14)、天才ハッカー
STR.10 CON.12 SIZ.10 INT.18
POW.15 DEX.16 APP.15 EDU.10
正気度:60 耐久力:13
db:+0
武器:こぶし、65% ダメージ・1D3
キック、80% ダメージ・1D6
技能:オカルト、70% 聞き耳、58% 回避、50% コンピュータ、100% 電気修理、40% 電子工学、90% アニメ、100%


畠中甲(53)、妄信的ジンゴ
STR.15 CON.16 SIZ.13 INT.20
POW.11 DEX.10 APP.14 EDU.22
正気度:45 耐久力:23
db:+1D4
武器:こぶし、55% ダメージ・1D3+db
キック、60% ダメージ・1D6+db
ファイティング・ナイフ、80% 1D4+2+db
グロック17(拳銃)、70% ダメージ・1D10
CQC(立ち技系)、80%
技能:化学、60% 心理学、70% 信用、80% 変装、65% 生物学、90% 電子工学、60%


ジェームズ・モリアーティ、顕現せし犯罪王
STR.14 CON.14 SIZ.14 INT.20
POW.18 DEX.16 APP.10 EDU.20
正気度:94 耐久力:21
db:+1D4
武器:フェンシング、75% ダメージ・1D6+db
45口径リボルバー、60% ダメージ・1D10+2
20ゲージショットガン、55% ダメージ・2D6/1D6/1D3
技能:回避、55% 言いくるめ、75% オカルト、81% 化学、75% 機械修理、69% 聞き耳、66% クトゥルフ神話、5% 信用、100% 説得、80% 追跡、68% 心理学、81% 法律、82% 目星、67% 数学、100% コンピュータ、60% 値切り、65%


食屍鬼、新宿の怪物
STR.17 CON.16 SIZ.18 INT.12
POW.15 DEX.14 APP.3
耐久力:25
db:+1D6
武器:かぎ爪、55% 1D6+db
装甲:火器と飛び道具はロールで出た目の半分のダメージ(端数切り上げ)
噛みつき、40% 1D6+db+牙でいたぶる(1D4)
技能:穴掘り、75% 登攀、85% 隠れる、80% 跳躍、75% 聞き耳、70% 忍び歩き、80% 目星、50%


HHH団員
     A  B   C   D
STR. 13  12  14  12
CON. 11  10  10  13
SIZ.  13  12  12  15
INT. 10   14  13  12
POW. 10  13  11  10
DEX. 14   12  12  13
耐久力: 13   14  14  16
db: +1D4 +0 +1D4 +1D4
武器:こぶし、65% ダメージ・1D3+db
キック、50% ダメージ・1D4+db
拳銃、60% ダメージ・1D6
技能:追跡、70% 心理学、50% 目星、40% 聞き耳、40%


黒服
    A  B  C  D
STR. 13   12  14  13
CON. 12   12  11  15
SIZ. 14   15  13  14
INT. 12   13  13  14
POW. 12   11  13  15
DEX. 15   14  11  11
耐久力: 13   20  16  22
db: +1D4 +1D4 +1D4 +1D4
武器:こぶし、60% ダメージ・1D3+db
キック、55% ダメージ・1D4+db
38口径リボルバー、50% ダメージ・1D10
技能:言いくるめ、60% 重機械操作、50% 信用、60% 目星、75%


メアリの組員平均ステータス
    A  B  C  D  E
STR. 11   14  13  13  12
CON. 14   16  12  12  13
SIZ. 14   12  13  11  14
INT. 15   14  15  15  13
POW. 11   13  10  12  13
DEX. 14   13  11  9  10
耐久力: 15   16  19  13  14
db: +0 +1D4 +1D4 +0  +1D4
武器:こぶし、65% ダメージ・1D3+db
グロック17、56% ダメージ・1D10
火炎瓶、《投擲》 ダメージ・2D6+【幸運】に成功しない限り1D4 個数5
手製グレネード、《投擲》 ダメージ・4D6/4m 個数5
技能:回避、35% 投擲、55% 電気修理、60% コンピュータ、70% 爆弾処理、90%


ガスト、不健康な厄介者
    A  B
STR. 22   15
CON. 10   16
SIZ. 18    16
INT.  4    1
POW. 13   16
DEX. 15   12
耐久力: 20   20
db: +2D6 +1D6
武器:噛み付き、45% ダメージ・1D10
キック、40% ダメージ・1D6+db
技能:回避、35% 忍び歩き、80%、聞き耳、50%


淵みに棲むもの、水生の怪物
    A  B  C
STR. 17  14  16
CON. 16  18  12
SIZ. 22  10  14
INT. 13  12  9
POW. 16  17  14
DEX. 10  13  16
耐久力: 20  14  19
db: +1D6  +0  +1D4
武器:触手、70% ダメージ・1D6+db
装甲:脳組織への攻撃以外は物理的ダメージを無効とする。脳組織ダメージに成功の場合は、別途10%のロールに成功で即死攻撃となる。
技能:回避、40% ほかの言語(日本語)、50%
呪文:天候を変える(霧、豪雨)


畠中の人格統制処刑隊
    A  B  C
STR. 15   14  10
CON. 14   15  14
SIZ. 14   12  14
INT. 12   11  10
POW. 11   15  10
DEX. 14   13  15
耐久力: 16   19  14
db: +1D4 +1D4  +0
武器:こぶし、70% ダメージ・1D3+db
小型のブレード、60% ダメージ・1D6+1+db
CQC(立ち技系)、70% 
絞殺ワイヤー、55%、ダメージ・《窒息》
技能:回避、40% 忍び歩き、90% 隠れる、80%


畠中の人格統制兵隊
    A  B  C  D
STR. 14   13  13  16
CON. 14   15  14  10
SIZ. 14   12  14  13
INT. 12   11  10  13
POW. 11   15  10  12
DEX. 14   13  13  10
耐久力: 14   19  15  21
db: +1D4 +1D4 +1D4 +1D4
武器:こぶし、80% ダメージ・1D3+db
キック、70% ダメージ・1D6+db
コンバットナイフ、65% ダメージ・1D6+db
AK74(アサルトライフル)、60% ダメージ・2D6
SIGザウエルP220(拳銃)、50% ダメージ・1D10
CQC(立ち技系)、65%
射出型スタンガン、70% ダメージ・《スタン》
装甲:試験的特殊装甲、近接攻撃ダメージが半減。
技能:回避、40% 忍び歩き、50% 聞き耳、80% 追跡、90%

【参考文献、参考推薦箇所】

『クトゥルフ神話TRPG』.2004.著、サンディ・ピーターセン/リン・ウィリス他 訳、中山てい子/坂本雅之

『抵抗表』P.60
 本シナリオには、対抗ロールの場面が考えられる。

・『負傷のスポットルール』P.62〜63
 本シナリオには、火と窒息と爆発による負傷が考えられる。またスタンも考えられる為、61ページも参考すべき。


『クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム』.2008.著、スコット・アニオロフスキー他 訳、坂本雅之/立花圭一

・『ガスト』P.33
 ガストの技能はルールブックにも記載されているが、より詳しく書かれているこちらを参考とした。

・『食屍鬼』P.56
 桜屋の第2人格である食屍鬼の技能も、こちらを参考。ただ見た目は大きく違っているので、あくまで技能の参照のみ。

・『淵みに棲むもの』P.100〜101
 プロフィールの掲載は本書のみの神話生物。詳細や脚色を加えたい場合は、こちらを参考願いたい。

・『ゾス=オムモグ』P.186
 プロフィールの掲載は本書のみの神話生物。その他、ルルイエに存在している事からクトゥルフと関係の深い神話生物として語られており、クトゥルフ同様、他者の夢に干渉する能力を所持しているとされる。また、人間に自身の信者となる事を呼びかけているとも。本シナリオでは直接的な行動はしないものの、参考として。


『クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010』.2010.著、坂本雅之/内山靖二郎/坂東真紅郎 他

・『武道:立ち技』P.28
 本シナリオの一部の敵が使用するCQCの効果は、このページのこの項目を参考願いたい。

・『武器の表』P.36〜37
 本シナリオに出て来る武器の殆どはここより参考とした。基本射程、攻撃回数、故障ナンバーもここより参考願いたい。


『クトゥルフ神話TRPG クトゥルフカルト・ナウ』.2013.著、坂本雅之/内山靖二郎/坂東真紅郎 他/アーカム・メンバーズ

・『マホロバPSI研究所』P.76〜80
 本シナリオに登場する畠中甲は、このマホロバ社と関係者である設定。プレイヤーよりマホロバ社の説明を求められたのなら、ここを参考願いたい。またキーパー自身がマホロバPSI研究所と本シナリオを絡めたい場合にも参考となる。


『クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ・バイ・ガスライト』.2014.著、ウィリアム・バートン、ケビン・ロス他 訳、坂本雅之/アーカム・メンバーズ

・『シャーロック・ホームズ』P.114〜115
 人格変換による仮人格ホームズの一時追加技能は、このページのプロフィールより参考にした。

・『モリアーティ教授』P.119
 本シナリオに登場するモリアーティ教授は、このページのプロフィールより参考にした。キーパー自身が脚色を加えたい場合、こちらより参考にして貰いたい。

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 クトゥルフTRPGが大の好き好きであります、映画みたいなCoCシナリオを書くの好きな人。監督と呼ばれたい。  こちらにあるシナリオは全て、旧CoC6版を遵守しております。7版対応に関しては、このサイトでは視野に入れておりませんので、留意願います。  色々は、URL辿ってTwitterより。

https://twitter.com/ergotBear

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