2018年05月04日更新

鬼やらい

  • 難易度:★★|
  • 人数:1人~上限なし|
  • プレイ時間:1時間(ボイスセッション)

 節分の日にとある神社の祭事を観光した探索者は、その祭事で鬼払いの豆とお守りであるクチナシの枝を貰う。帰り道、探索者は駅で、恐ろしい事件を目撃する。しかしそれは、その夜の始まりにしか過ぎなかった。

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ストック

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●レギュレーション

 現代、基本ルルブ準拠
 タイマン、推奨技能は目星だが無くて可
 ボイスセッションで30分~1時間
 難易度低め、ロストあり、エンディング分岐あり

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●あらすじ

 節分の日にとある神社の祭事を観光した探索者は、その祭事で鬼払いの豆とお守りであるクチナシの枝を貰う。帰り道、探索者は駅で、恐ろしい事件を目撃する。しかしそれは、その夜の始まりにしか過ぎなかった。

●シナリオの全体の流れ

 神社でアーティファクトを手に入れる⇒事件に巻き込まれ鬼がとり憑かれる⇒アーティファクトで鬼に豆まき⇒終了

●導入

 時刻は黄昏時。夕焼けの残滓が漂う、今宵の始まり。
 探索者は節分の日、とある神社の祭に足を運んでいた。神社は平安時代から疫鬼を追い払う祭事を行っている由緒あるもので、崇敬(すうけい)篤い鎮護の神を祀っている。
 屋台が並ぶ道を通り過ぎ、石畳の階段を上って更に進む。暫く行くと、人の背丈を優に超える大きな鳥居が見えて来る。その先には四つの神を祀った本宮があり、本宮の前で神楽が行われる予定だ。
 神楽は追儺式(ついなしき)、別名「鬼やらい」と呼ばれている。その名の通り、鬼を追い払うことを目的にした神楽だ。

※この時、探索者が神について調べると宣言するならば、神社の資料を検索するRPまたは知識・博物館ロールなどで次の情報を得ることが出来る。
⇒祀っている神は厄を払い開運に導く神であるタケミカヅチノカミ、フツヌシノカミ。思慮深い学問の神アメノコヤメノミコト、女性に徳を与えてヒメガミとされる。アメノコヤメノミコトとヒメガミは夫婦神で、良縁や夫婦和合の神徳を授けると言われている。

※屋台
 様々な屋台がある。探索者を屋台に寄らせても良い。

●鬼やらいの神楽

 本宮の前では既に神楽が始まっていた。燃え上がる炎を背に、笛と太鼓、鈴と鉦(かね)、琴と琵琶の音が鳴り響く。
 十二単を身に着けた女性たちが鬼のお面をつけた狩衣(かりぎぬ)姿で松明を手にした男たちに追われている。女性たちは扇を片手に美しく舞いながら、武官の着物を着こんだ勇ましい男たちの後ろへと回る。
 男たちは和弓を片手に、鬼の前へと立ちはだかった。きりきりと和弓をひいて、男たちが弓を放つ動作をすると、あれよあれよと鬼のお面をつけた狩衣の男たちが立ち去って行く。一人だけ、男を残して。
 残された男の鬼のお面は弓が一本刺さっていた。鬼のお面は、ふたつに割れ、その場に男が崩れる。
 色とりどりの十二単の輪から抜けて、一人、男のもとへと駆けだす女性がいた。女性は男に寄り添うと、扇を開いて顔を隠して、男に何かを告げる。男はゆっくりと、女性の手をとった。
 雅な音色が高まり、男女の傀儡子(くぐつし)が剣舞を踊り始める。剣や太鼓を片手に踊る傀儡子の中に、漆黒の小さな包みを持った傀儡子がいた。
 小包は鬼打ち豆が入っており、クチナシの枝が添えられている。厄払いの品として有名で、とてもご利益があると言われている。傀儡子が星の輝く天高く、小包を投げやる。どこにいったのかと探索者が目で追うも、小包は闇にまぎれていく。小包を手にしたのだろう、人々の中から歓声が上がる。最後の小包が投げ上げられる。

 ここで探索者は《DEX×5》のロールを行う。成功すると、小包を手にすることが出来る。
 失敗した場合、以下の描写が入る。
 神楽が終わり、人々が帰っていく。探索者も帰路へと足を向ける。が、その瞬間、ぐっと体が止まった。
 見やると、白い和装を着た小さな少年が、探索者の袖を引いている。
「これをどうぞ。僕には必要のないものだから」
 そう言って少年は一本の枝をぐいと探索者に押し付けると、「あなたに神々の加護がありますように」と囁いて、瞬く間に雑踏に消えていった。

 探索者は小包とクチナシの枝を手に、帰路につく。
 
※この時、探索者がご利益ついて調べると宣言するならば、神社の資料を検索するRPまたは知識・博物館ロールなどで次の情報を得ることが出来る。
⇒小包には鬼打ち豆が入っており、歳の数食べると神々の庇護が得られると言われている。また、鬼が近寄った時に豆を投げると、その鬼を退治することが出来る。
クチナシの枝は魔よけの効果があり、悪夢や恐怖を和らげる効果がある。また、人との複雑になった縁を断ち切り、結びなおすという効果もある。枝は神楽で使った矢にも用いられているという。

●惨劇

 帰路につくべく駅へと来た探索者。電車を待つホームで、探索者が目的とする電車が駅に止まり、扉が開く。
 突然の衝撃。何かが眼前にぶつかる。受け身を取ることも出来ず、探索者は転倒する。
ここで探索者はDEX×5或いは幸運ロールを行う。失敗で耐久を1d3減らす。

 衝撃に一瞬、めまいを覚えるが、すぐに意識を取り戻すと、腹部に温かいものを感じた。見やると、ぬるりとした感触と共に、手のひらが真っ赤に染まっていた。人間の血だと理解するのに、時間は必要なかった。
重たい。転んだ探索者に覆いかぶさるように男が倒れ込んでいる。そしてその背中には刃物が突き刺さっていた。人が刺されたのだと、理解した瞬間、男がぎゅっと探索者を抱きしめた。
「違う、違うんだ。そうじゃない、信じてくれ……」
 男は錯乱したように呟くと、そのままずるずると力を失っていく。
驚く探索者を叩くかのように人々の悲鳴がつんざき、辺りに木霊する。探索者は開かれた電車の扉の向こうに、「どうして裏切ったの、どうしてこんな酷いことを」とブツブツと呟き、返り血で手のひらを染めるやつれた様子の女性と、女性の足元で泣きじゃくる子どもを見る。
 男、女、子供。三つの視線、六つの瞳。それに自身の瞳を、脳を、心臓を射抜かれる。彼らの負の感情がぞわりと探索者の心へと侵入する。
 探索者は予兆のなく自身を襲った惨劇に、正気度ロール《1/1d3》を喪失。

●わが家へ

 事件に巻き込まれた探索者は事情聴取を受ける。事情聴取と言っても、事件に巻き込まれただけの探索者にはあまり語るべき内容などなく、日をまたぐ前に帰路へ着くことが出来る。
 また、血で汚れた衣服は、警察署で適当な服を貰い、着替えた。衣服を持ち帰っていない場合、事件の名残を感じるものはひとつも持っていないだろう。あれは夢だったのではないか、本当にあったことなのかと、ぼんやりと思ってしまう。ただ疲労感だけがある。
 ひとまず眠りたいと思う探索者の手元には、小包とクチナシの枝がある。それを枕元に置いていた方が良いような、奇妙な感覚がある(置くかどうかはPCに任せる)。

●鬼

 探索者が寝具に横になると、途端に事件のことがありありと思い出されるだろう。探索者を射抜くあの、悲しみと怒りに惑う六つの瞳に見られているような、嫌な感覚。夜の静けさは探索者の感覚を鋭敏にさせる。遠くで走り去る自動車の音、どこかで飼われている犬の遠吠え、生きる為の呼吸の音、心臓の音。
 心音を意識した瞬間、心臓を鷲掴みにされるような激しい恐怖に襲われた。何かが来る、そんな、魂からの恐怖感が腹の底から沸き上がり始める。
 ――――いる。
 探索者は自室の扉の向こうに、何かの存在を感じた。ひたり、ひたり、と、裸足で、何かが、扉の前へとゆっくり近づき、止まった。やがて、ゆっくりと扉が開かれる。
 そこにいるのは、やせ細った、やつれた裸の女だった。どろどろと女の体には黒い霧のような、泥のような何かがまとわりつき、ひたひたと粘着質な音を立てている。長い黒髪を下ろし俯いており、表情はよく見えない。しかし、女は何かを顔につけていた。
 くいっと、女が顔を上げる。それは鬼だった。女は禍々しい鬼の面をつけていた。
 探索者は正気度ロール《1/1d8》を喪失する。

 探索者はここで《目星》ロールを行うことが出来る。目星に成功すると、背丈と様子から、あの時に電車で男性を刺した女性かもしれない分かる。

●鬼やらい

 ここからはターン行動となる。1ターン数秒とする。探索者が先制攻撃をすることが可能。
 もし狂気を発症していた場合、枕元にクチナシの枝があれば、狂気はすぐに収まり、行動することが出来る。
 窓も扉も魔力により閉ざされ、逃げることは出来ない。

※鬼について
 鬼のステータスは探索者のPOW+α(難易度で調整して構わない)、INTとする。鬼に物理攻撃は一切効かない。鬼の攻撃はPOW対抗となる。つまり、探索者とPOWが同値であれば、50%でダイスを振り続けることとなる。
 鬼の攻撃は噛みつく、殴りつける、刃物で切るなど多彩で構わないが、全て物理攻撃では無く、精神攻撃に変換される。抱き着いた場合は自動成功となる。
 探索者が物理攻撃を鬼には一切効かない。探索者に女の攻撃が当たると、POWを1+1d4減少する。

※アーティファクトによる戦闘
 探索者が鬼打ち豆を使用した場合、鬼に与えられるダメージは1+1d4のPOW減少。また、クチナシの枝を握った場合は1d4のPOW回復が可能。
 眠る前に豆を年の数分食べていた場合、最初の鬼からのダメージによるPOW減少は1で良い。

※戦闘の終了について
 鬼のPOWが無くなった時点で、戦闘は終了となる。
 探索者のPOWが先に無くなった場合、幸運ロールを行う。
 成功すると、普通に目覚める。しかし事あるごとに鬼の生霊の気配を感じ、毎日正気度を1d3喪失する。
 失敗すると、探索者は死ぬことは無いが、永遠に悪夢から目覚めることは無い。精神的なロストとなるか、あるいは生霊として世界を彷徨うことになる。

●クライマックス

 探索者が豆を投げた瞬間、鬼が断末魔のごとき悲鳴を上げる。反響し、ビリビリと辺りが揺れる。部屋のありとあらゆるものが浮かびあがり、ゆっくりと探索者に向き直る。本、衣服、ペン、ハサミ……。(血に汚れた服を持ち帰っていた場合、その服が人間のように立ち上がるだろう)
 体は、金縛りにあったように動かない。回避することは出来ない。探索者へと狙いを定めて、それらが飛ぶ。
 探索者の体を、部屋中のありとあらゆるものが狂気を持って殺意を持って、貫く。鬼が哄笑を上げる。
が、それは、かなわなかった。
 残りわずかとなった豆が、探索者の前に飛び出し、まるで円を描くように散らばり、探索者を襲う物へとぶつかっていく。豆は爆ぜ、ボロボロと落下する。鬼は力尽き悲鳴を上げながら、その場に倒れ込んだ。
 鬼が、腹ばいになりながら、そしてドロドロと融けながら、「どうして……、あなたどうして……」と探索者へとずるずる近づいてくる。探索者へと手を伸ばす。

※ここでお面に向かって、クチナシの枝を使うことが可能。
 パキンッ、と、何かを穿つ音。クチナシの枝が深々と、女の鬼の面、その眉間に突き刺さっていた。ぱっくりと鬼の面が割れて、床に転がり落ちる。女の顔が見える。疲れ切って、泣き腫らしている。
「あなた、あの人じゃない……。わたし、ちゃんとあの人の言葉を聞いていない。聞かなきゃ。聞きに行かなきゃ」

 女は探索者の足を掴むが、そのままドロドロと融け、黒い水たまりのようになり、やがてスゥっと消えていく。

●エンディング

①鬼の仮面を割った場合
 数日後、道端を歩いていると警察から連絡が入る。あの事件は家族間のいざこざによるもので、探索者の関係性はないと判断されたとのことだった。そして、男性は重傷であったが生きており、夫婦は和解したとのことだった。
 警察の電話が終わって、探索者は再び歩き出す。
 探索者が進む街路には、偶然にもクチナシが植えられていた。6月になれば、きっと甘い香りを放ちながら、白い花を咲かせることだろう。
 鬼は外、福は内。クチナシの花言葉は確か、そう、「喜びを運ぶ」。

②鬼の仮面を割らなかった場合
 数日後、警察から連絡が入る。あの事件は家族間のいざこざによるもので、探索者の関係性はないと判断されたとのことだった。
 更に数週間後、世間をとあるニュースが騒がせる。夫のストーカーに騙されて夫を刺し殺した妻が、警察の目を盗んで自殺したというニュースである。二人には子供がいるということだった。
 あの日、女性の足に縋りついていた子供の、光を失った目を探索者は思い出すだろう。
 鬼は外、福は……。あの子供のもとに、福が訪れることを、探索者は静かに願った。

③鬼との戦闘で負けた
 探索者のPOWが先に無くなった場合、幸運ロールを行う。
 成功すると、普通に目覚める。しかし事あるごとに鬼の生霊の気配を感じ、毎日正気度を1d3喪失する。
 失敗すると、探索者は死ぬことは無いが、永遠に悪夢から目覚めることは無い。精神的なロストとなるか、あるいは生霊として世界を彷徨うことになる。

<報酬>

①正気度回復1d10
②クチナシの枝を使わなかった場合:クチナシの枝で出来た邪気払いの霊木を手にする。これは1か月間祈りを捧げれば自身の正気度を1d3回復出来る。他人に使えば正気度を1d6回復できる。

<シナリオ解説>

 ある男性はストーカーに悩まされていたが、それを気の弱い妻には打ち明けていなかった。それを知ったストーカーが入念に計画を立て、妻に近づき、夫との不倫を匂わせて妻を精神的に追い込んでいく。妻はやがて精神を病んでいき、夫との心中を考えて包丁を持ち歩くようになる。子供を連れて夫婦で神社に行き参拝した帰りに、夫婦はついに口論してしまう。それが引き金となり、妻は夫を刺す。
 探索者は事件に巻き込まれ、混乱の中、妻の生霊の象徴である鬼にとり憑かれてしまう。
 鬼を砕くことで妻の狂気は収まり、探索者に与えられた加護は福となって家族へと分けられる。そして夫は重傷であったものの生き残り、家族は和解する。

<シナリオで使用した設定>

 今回のシナリオは節分をモチーフにした。モデルとしたのは京都にある吉田神社である。様々な設定も参考にさせていただいた。
 鬼打ち豆はオリジナル。クチナシの枝は、クトゥルフ・コデックスp46より“アーティファクト邪気払いの霊木”を参照にした。
 鬼はルールブックp229,233の生霊と亡霊を参考としてはいるが、ほぼオリジナル要素になっているのでKPはこれを大いに変更してオリジナリティを出して構わない。
なお、シナリオで少年の正体は分からない。マレウス・モンストロルムp250より、ヤード=サダジの夢の片鱗とする。
 また、今回のシナリオのテストプレイでは、探索者がエンディング②を迎えながらも、孤児院を経営していたことから、子どもを迎え入れて愛情を注ぐという結末を選んだ。その為、①のエンディングと和合させた終わり方となった。

 タイトル画像は「ばくたそ」https://www.pakutaso.com/よりお借りした。

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

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クトゥルフ神話TRPGを主に「オンセンsns」さんでやっております。 基本的には物語の中身はシリアスだけど、救いのあるものが好きです。 宜しくお願い致します。

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