下請けアニメ制作の苦しみを味わえる珍シナリオ。
君たちは、しがない下請けアニメ制作会社「ミッドナイト・ミミック」のアニメーターたちだ。
小さな案件を丁寧にこなして慎ましやかに暮らしていた会社だが、二代目ボンボンのプロデューサーが、絶賛炎上中の火中の栗案件を受けてしまった。超有名テレビアニメ「獣フレンズ」、の続編「獣フレンズ2」。低予算・無宣伝の絶望的状態で、監督、作画監督、美術監督らの天才的采配により10年に一度の大成功を収め……その立役者たちを権利関係のトラブルで追い出してしまったという「獣フレンズ」。2年近く炎上が続く中での次回作だ。
果たして君たちは、生き延びることができるだろうか。
●タイトル:獣フレンズ2
●主人公が何をする話:記憶喪失の人間として、おうちを探す話
●予算:プレイヤー人数×3D3[百万円]
●脚本:
「導入部」:記憶喪失の主人公は謎のカプセルから目を覚まし、そこがサファリ型美少女動物園「JP」だと知る。途中出会った猫耳美少女2人を引き連れ、モノレールに乗って旅立つ。
「主要な目的の設定づけ」:起きたときに手元にあったスケッチブックの絵を手がかりに「おうち」を探す。
「今更やめられないが、一方で明確化する目的」:謎のモンスター「CERULEAN」が増え、海底の火山活動が活発化するなど、サファリ型美少女動物園「JP」に起きている異変の謎を解き明かす。
「新しい目的」:偉い人が作るだろう。
「ツイスト(ひねり)」:偉い人が作るだろう。
皆さんは、国内では早期に3Dアニメーションに手を付けたということで宣伝している、「ミッドナイト・ミミック」という小さなアニメ会社のアニメーターです。中小だし、面白かったり有名だったりするような作品を出しているわけではありませんが、他のアニメ制作会社の下請けをしたり、「ジャパンの昔ばなし」など有名作品に似た作品を短期間で作って市場に出したりすることで、なんとか暮らしていけています。
ある日、社長の子の二代目プロデューサーが、飲み友達である東京のテレビ局のプロデューサー(局プロ)からとんでもないビッグタイトルの「2作目」という案件を持ってきてしまいます。「獣フレンズ」。有名漫画家を総監督とし、ソーシャルゲームや漫画を展開したもののヒットせず、ゲームも漫画も終わった後、前から決まっていたテレビアニメを「敗戦処理」のように放映したという12話深夜テレビアニメです。国内ではまだ珍しい「フル3DCGアニメ」で、監督はテレビアニメ初と、誰もが失敗を予感していました。
ところが、いざ封切りしてみれば超名作。低予算ながら味のあるアニメーション、少人数ゆえの良く統制された美しい画作り、ベテラン声優とベテラン音響監督が主導した活き活きとした収録、そして何よりシリーズ構成とストーリー。多重に意味を込められた物語は考察しがいがあり、厳しい世界の中で登場キャラクターたちが見せる優しさと友情の物語は、現代日本の人々を感動に震えさせたのです。SNSを端緒に口コミで広がり、DVDが6桁枚以上売れるほどの大ヒット。ゲーム的には配給成功度「8,000,000」でした。
10年に1度のヒット作となったこの作品は巨額のカネを生み、放映中に「新規映像作品」の制作がプレスリリースされました。この「2作目」も当然「1作目」のチームが請け負ったのですが、その後権利関係のトラブルなどが発生し、降板させられることとなります。製作委員会のこの決定に対してSNSは大炎上、それから1年半が経っても鎮火の目処は経っていませんでした。
二代目プロデューサーが持ってきてしまったのはそんな案件でした。期待度は天井知らず、製作委員会に対し渦巻く憎悪も底知らずと、「ミッドナイト・ミミック」社では到底受け切れるものではありません。「1作目」を制作したのは業界でも上位の実力を持つメンバーで、一見簡単そうに見えるがハリウッド顔負けの高度な技法と構成で大ヒットを勝ち取った作品です。アニメーターたちは「いやいや、無理無理」「あれはできない」という反応でしたが、二代目Pの鶴の一声でやることになってしまいました。
あれだけの有名IPの作品にも関わらず、予算はかなり少ない水準です。しかし、制作を発表した時点ではSNSの反応は二分されており、ちゃんとした作品が出せれば巻き返せる可能性もあります。果たして、皆さんは生き残ることができるでしょうか。
本シナリオでは通常の「ミッドナイト・ミミック」に以下の変更を加えて遊んでください。
本シナリオではプレイヤーキャラクターたちは俳優ではなく「アニメーター」なので、能力段階も以下のように変わります。
■能力段階
画力
CG技術
アニメーター根性
幸運
また、撮影方法も映画ではなくアニメーションなので、以下の方法を使います。
近年伸長著しい中国のアニメ制作会社に丸投げします。3Dアニメーションの分野でも高い技術力を持っていますが、海を隔てての共同作業になるため、正確かつ的確な指示を早期に出さなければなりません。「ミッドナイトミミック」社にはそんなノウハウは無いため、作品のレベルは下がってしまいます。しかも、脚本を変な内容にすると絵コンテを流出させたりすることもあります。
・安全性修正により:けが表/死亡表を振らなくてよい
・作品レベル修正により:撮影難易度-3修正
・予算:3消費
自分たちで3Dアニメーションを制作し、ときにはエフェクトやモデリングなどを外部に発注します。アニメーターは作画監督やシリーズ構成・脚本などの中心メンバーと密にコミュニケーションを取ることができるため、作品レベルはそこそこ上がります。ただし、そもそも「ミッドナイトミミック」は3Dアニメーションに不慣れで人数も限られています。「国内でも早期に3Dアニメに挑戦」したと喧伝していますが、最新の3Dソフトには適応できていません。このため、無理をすればたちまち労働環境がブラック化し、最悪死者が出てしまいます。
・安全性修正により:けが表のサイコロ出目に+1する。
・作品レベル修正により:撮影難易度+1修正
・予算:0消費
「ミッドナイトミミック」の3DCGチームは、3Dアニメーションに不慣れであり、キャラクターの腕が真後ろに回ることがあるくらいです。モーションキャプチャーの方が作品レベルが上がります。なぜかアニメ放映の前からソーシャルゲーム「獣フレンズ3」が発表されており、そのチームに依頼することができます。この作画方法に限り、安全性と予算は自由に選択できますが、これらを際限なく投入することで作品レベルが上がります。
・作品レベル修正により:撮影難易度+2+(自由設定値)修正
・予算:(自由設定値と同値)+2消費
最初のハプニングが発生すると「アクシデントフェーズ」が発生しますが、このシナリオでは脚本家は逃げ出しません。ただし、自身の体験を元にしたライトノベルの執筆に没頭するようになり、脚本をアニメーターである皆さんに丸投げしてしまいます!
脚本家がやる気をなくした理由とは?実は、この案件を持ってきた局プロが、3つの無理難題を言ってきたのです。
製作委員会の決定に逆らった「1作目」の制作会社はあわや業界を干されるかというところになりましたが、外資ビッグ4を含む一流企業をスポンサーに集め、新作テレビアニメの制作に踏み切りました。むしろ「獣フレンズ」よりも予算が潤沢になるわけで、作品レベルは圧倒的なものになるでしょう。
局プロデューサーはなんとしてもこの新作品を潰すため、皆さんの「獣フレンズ2」を同時期放映でぶつけることに決めました。このため、納品までの期限が3ヶ月早まりました。
当のテレビ局の決定ですから、この要求はどうしようもありません。スケジュールが逼迫したことで作品レベルが低下し、クランクアップフェーズで配給成功度が-100されます。
また、局プロは、(こんな遅いタイミングで)シリーズ構成にも口を挟んできました。
導入で出てきた猫耳美少女は実は「1作目」の主人公の1人です。これにさらに「1作目」の主人公を登場させて、最後のシーケンスでは「2人が別れを告げて猫耳美少女が「2作目」主人公に付いていく」というシーンを作れ、というのです。BGMは、「1作目の」主題歌と指定されています。
この要求を飲まない場合、予算をすべて取り上げられて予算0になってしまいます。
この要求を飲む場合、クランクアップフェーズで配給成功度が-300されます。
「獣フレンズ」シリーズは、アニメ登場キャラクターのかわいい声優を使ったリアルイベントで稼ぐスタイルです。イベントに参加させる新人声優の顔ぶれは既に決定されており、無理にでもこれからアニメに登場させて、「登場キャラクター」にしなければなりません。
プレイヤーは、以下の8人もの声優のためにキャラクターを作り、どうにか残るシーケンスの中で最低1回は出番を作らなければなりません。
幸い、これらの新人声優たちは「事務所に正式に所属していない個人事業主」で、ギャラが激安なので、予算は0百万円でオッケーです。中には未成年もいますので、打ち上げで深夜まで付き合わせたりしないようにしましょう。
新人声優A 歌って踊れる準所属声優。演技力はまるで無い。
新人声優B 身体が魅力的な準所属声優。演技力はあまり無い。
新人声優C 顔がきれいな準所属声優。演技力はどうしようも無い。
新人声優D 芸名がきれいな準所属声優。演技力はほとんど無い。
声優の卵E コンビニバイトで生計を立てる預かり声優。演技力は低い。
声優の卵F 養成所を出たての預かり声優。演技力はまったく無い。
声優の卵G 枕のセールスを得意とする預かり声優。演技力はほぼ無い。
声優の卵H 局プロと仲が良い預かり声優。演技力は一切無い。
この要求を飲まない場合、違約金を取られて予算がさらに20百万円減少します(マイナスに入るでしょう)。
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