2019年07月13日更新

狂気より導く者

  • 難易度:★|
  • 人数:2人~4人|
  • プレイ時間:1~2時間(ボイスセッション)

現代日本クローズド系シナリオです。はじめて書いたシナリオなので不足などありましたらすみません。
KP難易度もPL難易度もおそらく低め。ロスト可能性はそこまでないと思いますが運が悪ければSANが0になります。
初心者で、発狂ロールをしたい人向け。
シナリオ使用・リプレイなどの作成について報告は不要です。改変もご自由になさってください。

★SANチェックの回数および数値は、いじって頂いてかまいません。

9298

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ストック

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KP向け前提情報

【イントロダクション】
あなたがたはきっと、毎日のように扉をくぐるだろう。その日常の中で何気なく開いた、一枚の扉。それを通り抜けたとたん、あなたがたの意識は闇へと落ちてしまう。
目が覚めるとそこは石畳の廊下。振り返っても通ってきたであろう扉はない。どこへ行けば戻ることができるのか。彷徨うあなた方の前に、現れる者がいる――
推奨技能:特になし
あったら使用可能な技能:跳躍、登攀、水泳、~学系の知識系技能
(※これもなくてもクリアできるかと思います)
推奨人数:2~4程度
(SANが高い方がいいでしょう、多分)
 
【神格】
アイホートです。
(ゲート的なものを作って)迷宮に誘い込む力、幻覚を見せる力を使っています。
マレモンP123参照。
 
【NPC】
○うつろな目をした若い女性(水島彩音)
かつてとある怪奇事件に巻き込まれた際に、生還はしたものの正気を失い、精神病棟で眠り続けている。もともとはアイドルをしており、ドラマ出演経験もある。
霊のようなかたちになって、夢のなかで怪奇に巻き込まれた人を助けようとしているが、本人も正気を失っている。そのため、酷い耳鳴りがするらしく、探索者の声は一切聞こえない。また、喋ったとしても意味不明の言葉の羅列となってしまう。
本能的にフルートの音をとても怖がっている。耳鳴りがする中で、フルートの音は不幸にも聞き分けられてしまうらしい。(正気を失った原因となるアイテムがフルート)
正しい出口を知っているらしく、探索者たちを導く。探索者が自分の導きに反してアイホートのいる場所に向かおうとするならば、それを必死になって止める。
STR10 CON15 POW9 DEX13 APP12 SIZ9 INT15 EDU12
技能:
聞き耳70 ※音については耳鳴りのため使用不可
跳躍55
信用50
オカルト55
芸術(歌唱)70 ※発狂のため使用不可
芸術(演技)40
博物学50
歴史50
※シナリオ中に関係するのは信用。しゃべることができないため、情報がでるタイプの技能は使用しても意味がありません。また、ところどころで「跳躍」がある動きをしますが、ロールは行いません。
'画像'
↑とふでセッションをする際によければお使いください。
 
※とあるシナリオで正気を失った作者のキャラクターです。
 
【発狂の扱いについて】
このシナリオでは、発狂していると幻覚が晴れて探索がスムーズになるというギミックがあります。
ですので、発狂の内容をダイスで決めるよりも、その場にあったものをしていただければよいと思います。
また、狂気に陥った探索者が「正しい視界」を示しても、他の探索者はそれを信じることはできないということを伝えてください。というのも、見るからに発狂した人間が言うことと、自らの視界にうつるもの、どちらが正しいと感じるかは明らかではないでしょうか……。
 
【話の流れ】
アイホートがゲートを作って自らの住む迷宮に探索者を誘い込む。
アイホートはもともとT字の左側で待ち構えているが、彩音の邪魔が入って逃げられるので、追いかけるような形で移動している。そのため、最後に探索者たちは最初の場所へ戻ってくることができる。
アイホートは探索者たちが迷った末、自分へと至る道を選んで進んでくることを期待しているため、最後に逃げられそうになるまでは自分から追いかけて襲うことはなく、分かれ道の先で待ち構えるのみである。
 
 

シナリオ本編

 
 
【導入】
導入として聞き耳を行う。成功したならば、この後行うアイデアロールの際に女性の声の情報が追加される。(※アイデアロールの後で行ってもいいと思います)
 
日常生活の中、不意に気を失ってしまった探索者たちは、目がさめると、見知らぬ薄暗い石畳の通路に横たわっていた。持っていたはずのものはなくなっている。
 
どうやら気を失ってから少し時間が経っているらしい。あなたがたは空腹で、かなり些細なことにも驚いてしまうような心細い気持ちになっている。
★心細い~という部分は、不要と思えば削ってもいいかと思います。このシナリオはSANチェックが不可解なほど多いため、その理由づけのための一文です。
 
全員が目覚めたところで、全員にアイデアロールを行う。
成功すると、気を失っている間にある声を聞いていたことを思い出す。「……となるか、死を選ぶか」恐ろしい声を思い出してしまった探索者は、背筋が凍る。
SANチェック1/1d3
そしてアイデアに成功し、冒頭の聞き耳にも成功していた探索者は、恐ろしい声とともに聞こえていた、女性の声を思い出すことができる。それは次のようなものである。
「すでに狂気の内にいるならば、正気は狂気となる。狂気を恐れないで。」
 
 
片側は壁になっており、前はまっすぐとした一本道で、向こうは見えない。
この突き当りの壁に触ろうとするならば、触ろうとしたその手を壁が避けるようにぐにゃりと歪む。壁が自分の手を避けたという異常な光景にSANチェック。0/1d2
 
★本当はここに壁などなく、探索者たちはアイホートによって幻覚を見せられているにすぎない。この壁の先に、元いた場所へと戻ることのできるゲートがある。
 
★このタイミングで目星を行うならば、壁に引っ掻き傷で書かれた「正気であることは幸せなのだろうか。狂っていることは、あるいは、幸せなのかもしれない」という文字があり、その下に誰かのつけた傷があること、その傷は一本道の向こうに続いていることがわかる。
 
 
まっすぐ進んでいくと、突きあたりが見えてきて、左右に道がわかれていることがわかる。
 
【女性との遭遇】
探索者が突きあたりにたどり着いた時、目の前に突如、若い女性が現れる。どうやら日本人のようで、茶色い長い髪に、うつろなこげ茶の目をした女性であった。探索者たちは、どこか現実味のないその女性の出現に驚愕する。
SANチェック0/1d2
知識ロール(強制)に成功した探索者は、彼女の顔をテレビか何かで見たことがあるような気がする。しかし、はっきりとは思い出すことができない。
女性と遭遇した瞬間、探索者たちがやってきた道の天井が崩れ、戻れなくなる。
彼女は、こっちだ、とでも言うかのように、右を指差し、その方向へ歩いていく。後ろを振り返って、探索者たちがついてきているかを確認したりもする。
 
★導入のときに目星に成功していると、誰かのつけた傷は左に続いていることがわかる。
※今回の探索者たちの前に犠牲となった探索者が残したものであり、単なるトラップ。これ以降「前の探索者」を示唆するものはない(アイホートにすぐ食べられてしまうため)。難易度調整としてなくしてもいい。
 
探索者たちが反対方向に行こうとすると、彼女は必死に腕にしがみつくなどして、首を強く横にふる。しかし、何か問いかけても反応しない。口をあけて、何かもごもごと音を発しているが、聞き耳をしてもそれが意味をなさない音の羅列だということしかわからない。
 
○女性について
★はじめて女性に反して示された道の反対側に行こうとしたときに、女性の信用を振る。(成功率50)成功した場合、彼女が真剣に、そちらに行ってはいけないと善意で伝えようとしていることがわかる。失敗しても、特に探索者に不利益があるわけではない。
★女性に心理学をすれば、彼女は正気ではなく考えは読み取れないものの、少なくとも探索者たちに危害を加えるつもりはないことがわかる。
★心理学で正気ではないことに気がついた探索者が、発狂の回復の意図で精神分析をすると、彼女の精神は専門の機関でしかるべき処置をとる必要があり、この場の簡易の処置ではなすすべがないことがわかる。
★人類学で、彼女が一般的な日本人女性だということがわかる。
 
★探索者たちがそれでも、女性に反して違う道をいくのであれば、BADエンドへ。また今後、彼女の選ぶ道を行かないだけでなく、一度来た道を戻ろうとする場合もBADエンドへ。(女性はどの場合も必ず必死に止める。言葉は発せないので、しがみつくなどの行動で示す)
 
 
探索者たちが右の道を行ってすぐに、何か恐ろしい声のようなものが頭に響いてくるのを感じる。それが何を言っているかはわからないが、怒りのようなものが伝わってきた。
SANチェック1/1d3
それからしばらく歩くと、少し開けた場所に出る。
 
 
【第一の関門:水の上を歩く】
そこは半円の形をした岸のようになっている。草が生えていて、突然外に出たようだ。振り返ると、岩壁があり、そこに穴があいている。どうやらそこから出てきたらしい。三方を水に囲まれている。その湖のようなものの左右は、鬱蒼とした木が生い茂っており先は見えないが、正面には同じように岸があって、その向こうの岩壁にやはり同じように穴があいている。そして、探索者たちがいる側の岸の脇に、木でできた小舟がある。
女性はこっちへ来い、と言うように歩き出す。向かう先は船ではなく、水の上である。
彼女はすぅ、と、水の上を滑るように歩いていく。そんな異常な状況を見た探索者は、自分の精神を疑う。
SANチェック0/1d2 ※発狂している探索者は回避。
 
既に発狂している探索者:
ここが何もない岩壁の広場で、向こう側に同じような通路があり、探索者たちの近く(小舟のある場所)に暗く、深い穴があいているのが見える。女性はごく普通に、この広間をまっすぐ歩いていくだけである。
 
上記のSANチェックに失敗した探索者は、その水面はなんだか「歩けるもの」であるという、奇妙な確信を得る。一方、正気を保った探索者は、水の上を歩くことはできず、舟を使わないのであれば、泳いで渡るしかない、という思いにかられる。
 
○舟を使わずに湖を渡る
SANチェックに失敗していれば、水の上を歩くことができる。
 
一方、SANチェックに成功した探索者は、この湖を泳いで渡ることとなる。ここで水泳を振る。
水泳に成功したとしても失敗したとしても、泳いでいる探索者は「見えない何か」に襲われて1d3のダメージを受けてしまう。また、その姿が見えないことで恐怖にかられる。
SANチェック0/1d2
水泳に失敗すると、泳いでいる途中に一度溺れかけて1のダメージを受けるが、女性が腕を引いて岸まで連れていってくれる。
★泳ぎ切った探索者は、岸に上がったあとで、自分の体が濡れていないことに気が付く。
※「泳いでいる」という妄想である。「見えない何か」は単なる小石である。発狂している探索者は、「石畳の上を泳ぐような格好でじたばたしている他の探索者」を見てちょっとシュールな気分になる。(この事実は、個別チャットなどで暗に伝えてもいいだろう)なお、泳いでいる途中のSANチェックで発狂したなら、自分がものすごくシュールな状態にあったことに気がつくだろう。
 
 
○小舟
★目星で「底が抜ける心配はなさそうだ」という確信を得る。
★探索者が近づこうとすると、女性が羽交い締めにしてその小舟に乗ろうとすることを阻止する。
★女性とのSTR対抗に勝つか、誰かが女性を拘束するとかしてその間に他の探索者が乗るならば、(目星をしていた場合はその確信に反して)その船の底が抜けて、探索者は落ちそうになる。女性を拘束していない状態ならば、女性が腕を掴んでくれるため岸に戻れる。女性を拘束してまで船に乗った場合は、幸運で「岸を掴める」。失敗した場合、その時点でそのキャラクターはロストする。成功した場合は、他の探索者の協力を得て岸に戻ることができる。
→なお、この時「水に落ちたはずなのに濡れていない」ことに気がつく。また、アイデアロールで「岸を掴む」というよりも、「穴に落ちそうになって縁を掴んだ」という感覚が強かったということに気がつく。この事実に気がついた、もしくはアイデアロールに失敗していても、「これは水ではない」ということに気がついたRPがあれば、探索者は安全に水の上を歩くことができる。
★(小舟への目星に成功していた場合)、落下の恐怖でSANチェック0/1d2。
 
 
全員が無事穴の前に来れば、女性は先に進む。通路に入った瞬間、先ほども聞こえた恐ろしい唸りがまた聞こえてくる。先ほどよりも強い怒りを探索者たちは感じる。
SANチェック1/1d3+1
 
 
【第二の関門:闇の中を歩く】
一本道を抜け、全員が広間に足を踏み入れた途端、探索者たちの視界が奪われる。自らの手も見えなくなるほどの闇に、探索者たちは根源的恐怖を覚える。
SANチェック0/1d2 ※発狂している場合回避
探索者たちが暗闇に立ちすくんでいると、右手から女性の声が聞こえる。
「こっちだよ」
 
★発狂している探索者:
発狂している探索者は、視界が闇に包まれることはない。ここは何もない広間であり、左奥の壁と右側の壁に道があるのが見える。そして、右側の通路の奥で、昏い瞳が蠢くのを目撃する。SANチェック1/1d4。
 
 
探索者が、その声が聞こえた方に歩くか、立ち止まっていると、その手を掴むものがある。それはうめき声のようなものをあげている。
SANチェック0/1d3(発狂している場合回避)
手を掴まれた探索者はアイデアロールを行い、成功すればその手が若い女性のもののようであることに気がつく。
※若い女性が手をつかんで導こうとしているのである。
 
 
★発狂していない探索者でアイデアロールを行い、「女性は言葉を発することができなかった」と気がついてもいい。また、それに気がついた探索者が、冒頭のアイデアロールで女性の声を思い出していた場合、「あのときの声とは少し違って、どこか端々に悪意を感じる」という事実に気がつく。
 
 
手を掴まれた探索者が歩みを止めた場合、他の探索者が声の方へと向かうなら、手は一度離れて声のする方へ向かう探索者の手を掴んで引っ張る。
探索者たちが闇の中で何か声を発すれば、強制で全員の聞き耳を振る。一人でも成功すれば各々がいる場所を確認して合流することができる。
謎の手は探索者の一人の手を掴み、導くように引っ張っていく。
発狂しておらず、手を掴まれているわけでもない探索者は、導かれている探索者か、もしくは発狂している探索者と手を繋いで左奥の通路へと向かわなくてはいけない。発狂している探索者に手を掴まれた別の探索者は、驚いてSANチェック0/1。(先に声で確認していたならばこのSANチェックはなくてもいい)
 
 
★探索者同士の声を聞くため以外に聞き耳をしても、右側から「こっちだよ」という声が聞こえるのみである。もしくは、「その手についていってはいけない」という声がするのを聞いてもいい。
 
 
左奥の通路にたどり着き、広間を出れば、闇に包まれていた視界は元に戻る。女性に手をつながれていた探索者は、それがずっと探索者たちを導いてきた女性であることを確認する。その瞬間、また恐ろしい声が聞こえてきた。
SANチェック1/1d4
 
 
その先は通路になっていて、奥に木製のドアが見える。
 
 
【第三の関門:塩酸の壁を抜ける】
そこは広間のような部屋だった。中央には小さなテーブルがあり、その周りを取り囲むように何か白いものがたくさん並び立っている。左側の壁に木製のドアがある。正面の壁には、滝のようなものが見える。そしてどこからか、楽器の音のようなものが聞こえてくる。
この部屋に入ると、そこまでの道のりで迷わず探索者たちを導いていた女性が、しゃがみこんで耳をふさぐ。どうやら非常に怯えた様子だ。
 
★音楽系の芸術で、音がしている楽器はフルートだとわかる。
 
★聞き耳で、音は白いもののひとつから聞こえることがわかる。
 
 
○しゃがみこんだ女性
精神分析もしくは心理学を行うと、楽器の音に怯えているのだとわかる。
左側の壁の方へ探索者が向かおうとすると、彼女はしゃがみこんだままで、何か声を発する。探索者が彼女を見るなら、しゃがみこんで動けないものの、声だけは出して探索者に警戒を促していることがわかる。
 
 
○左側のドア
・女性が動けない状態で(フルート処理前に)ドアを開けた探索者は、伸びてきた虫の足のようなものとSTR対抗。(16との対抗)失敗すればロスト確定。
※かなり難易度が高いが、警告は出させているはずなので、ここまできて従わないPLには死を与えてもよいのではないか。温情を出すならば受動値を変動させてください。
・女性が動くことができるようになってから、部屋にいる間に探索者がドアに近づくと、女性はぶんぶんと首をふる。開けようとすれば、走ってきて探索者がドアを開けることを阻止する。STR対抗で勝てば/他の探索者が女性を拘束していれば無理やりドアを開けられるが、このとき、ドアの向こうに「昏い何かの瞳」を見てしまう。
SANチェック1/1d6
その後、女性を拘束していなければすぐに女性によってドアを閉められる。(賢明な探索者なら、これでもう一度ドアを開けることはしないと思われるが、無理にもう一度開ける場合は全員BADエンド行きでもいいだろう)
女性を拘束していた場合は、やはり伸びてきた虫の足のようなものとの対抗ロールを行う。
 
 
○像について
近寄ってみると、白い、振り返ったポーズの女性の像であることがわかる。非常にリアルなその表情は何かに怯えているようであり、まるで生きた人間がそのまま像になったかのようである。探索者たちは、その像のリアルさと、それが怯えているもののことを想像してしまい恐怖を覚える。SANチェック0/1d3
★触れる前に目星をすると、その像が何も持っていないことがわかる。そして、かなり脆そうだということに気がつく。
★触れるとその像は非常に脆く、さらさらと白い粉となって跡形もなく崩れ、小さな白い山をつくる。あまりにリアルなその像が崩れていく様を見てしまった探索者は気分が悪くなる。SANチェック0/1d2
★医学に成功しても、この像は真に迫っているが生きているわけではないことがわかるのみである。
★博物学・薬学に成功する、もしくは崩れ去ったあとの粉を舐めるなどすると、それが塩であることがわかる。
★人類学で、その像の顔はだいたい地中海あたり、イスラエルあたりの民族の顔つきに近いということがわかる。(※ロトの妻)
★塩であることが判明するか、人類学に成功したあと、歴史をふることができる。成功すれば「旧約聖書に、塩の柱というものが登場する」ということを思い出す。
※塩であることと人類学の結果がどちらも出ていれば、ロールなしで塩の柱の情報を出してもよいだろう。(このことに気がつくのは、探索者たちの中で一番EDUが高いか、もしくは歴史に技能値を振っている者が望ましい)
※PLが(メタ的な意味で)すでに塩の柱ということに気が付いているなら、無理に振ることもないと思われる。
※これは「振り返ってはいけない」ことを示すものである。元ネタは旧約聖書の創世記にある「ソドムとゴモラ」の話。性の乱れによってこの2つの街は滅ぼされるが、善人であったロトとその家族は神によって救われる。しかし、街から出る道中「振り返ってはいけない」という言葉に反して振り返ってしまったロトの妻は、塩の柱と変えられた。──というものであり、プレイヤーたちが(メタ的な意味で)塩の柱というワードからこの話を思い出せないようであれば、この話を知識として紹介してもいい。
★崩れ去ったあとの山をさぐる、もしくは目星で、その中からフルートを発見する。
 
 
○フルートについて
そのフルートは一見何の変哲もないフルートであるが、風もないのにメロディらしきものを発している。しかし塩の中から取り出すと、やがて静かになった。
フルートを見て、女性は怯える。探索者が持っていこうとするなら、必死になって首を振る。その場においておく意思を示せば、彼女は安心して先へ向かう。
★フルートはCON10とのSTR対抗を行えば破壊できる。破壊すると、彼女は非常に安心した顔をする。
※このフルートは「彼女が発狂する原因となったもの」を示唆するだけの(フレーバー的な)アイテムです。また、彼女が怯えている間なら、特に障害なく扉に入れますが、高確率でロストすることでしょう。女性は正しい道を示す者であり、彼女なしに自分で道を選ぶことは非常に危険です。
 
 
○フルート処理後の女性
フルートの音が止むと、彼女は探索者らに一礼した後、テーブルの方へ向かう。
 
 
○テーブル
テーブルには、赤い液体が入った(探索者の数+1)個の瓶が乗っている。彼女はそれを飲み干すと、滝のようなものの方へと向かう。
★目星(テーブルを調べたときに強制的に使用):この赤いものが、血液であることがわかる。医学の知識を持つ探索者ならば、この情報は強制的に得てしまうものである。SANチェック0/1d3 ※発狂中の探索者は回避。
(血だという情報が共有された場合、上述の目星に失敗していても「女性が何の抵抗もなく血を飲み干した」という事実への恐怖にSANチェックが発生する)
★発狂している探索者:
瓶に入っているものは「琥珀色をした液体」に見える。
 
SANチェックに失敗した、もしくは目星に失敗してこれが血だと気がついていない探索者は、飲もうと思えば難なく飲み干すことができる。SANチェックで成功した探索者は、飲む際に再度0/1のSANチェックを行うことになる。
 
※血だと思われるものはAF:黄金の蜂蜜酒(不完全)である。不完全であるため、その効力は本物よりかなり弱いが、塩酸の滝を越えることは十分に可能。
 
★聞き耳でにおいをよくよく嗅ぐなら、発狂していない探索者も、それから「鉄のにおい」がしないことに気がついてもいい。だが、SANチェックに成功していた探索者なら、血であるという確信からは逃れられない(飲む際のSANチェックは行う)。
 
 
○滝のようなもの
滝のように見えたのは、壁から湧き出す液体であり、床でその液体が受けられる噴水のような構造になっていた。近寄ると強い刺激臭がし、すぐそばまで寄ることはできない。
※マーライオンの激しい版みたいなやつです……語彙力が乏しくてすいません。
 
★知識-30もしくは博物学-10もしくは薬学で、この刺激臭は濃塩酸のものであり、流れているのは非常に危険な薬品だとわかる。
 
テーブルで赤いものを飲み干した女性は、探索者たちのことを確認しつつ、この塩酸の中を難なく通り抜けていく。
 
 
先ほどのテーブルの上のものを飲み干しているなら、なんらのダメージもなく通り抜けることができる。
飲まずにここを通り抜けることもできるが、その場合1d5+1のダメージを受けてしまう。また、その場合幸運ロールが発生し、失敗すると顔がただれ、APPが1d2減少する。
 
 
塩酸の滝の向こうには、石畳の一本道が続いている。ここでまた、恐ろしい声が聞こえる。さらに怒りを増している。
SANチェック1/1d4
 
しばらく歩くと、その先に何もない少し広い空間が見えてくる。
 
 
【最後の関門:怪物の口へ入る】
たどり着いたその部屋の奥には恐ろしい怪物がいた。その怪物はヒキガエルのような姿をしていて、横になり、口を開けて、探索者たちを待ち構えている。
怪物から離れた右側の壁に、しゃがめば通れそうな穴があいている。
SANチェック1/1d6 ※発狂している場合回避
※イメージしているのはツァトゥグアですが、幻覚のため本物ではありません。
 
★発狂している探索者:
怪物の姿は見えず、壁の少し高いところにあいている穴が見える。
しゃがめば通れそうな穴があいているところからは、目星などに成功すると昏い瞳が蠢くのを目撃する。SANチェック1/1d4。
 
 
○怪物について
どうやら怪物は、その場から動くことができないらしい。しかし不用意に近づけば、その腕を振り上げるだろう。口はずっと開いている。
 
女性は、怪物に向かってまっすぐ歩いていく。そして驚くほどのジャンプ力を発揮し、怪物のあいている口の中に飛び込んでしまった。SANチェック0/1d3 ※発狂している場合回避。
しかし怪物はすぐに口を閉じて彼女を咀嚼することはしない。彼女はこちらへ来い、とでも言うように手招きしている。
 
★アイデアロールで、怪物は腕を振り上げはしたものの、攻撃してきそうではなかったことに気がつく。
 
 
発狂していない探索者は、自ら怪物の口の中へと入り込む恐怖から、入ることに成功した時にSANチェック0/1d2が発生する。
 
★SIZが16以上ある探索者なら、跳躍や登攀がなくても頑張ってジャンプすることでたどり着ける。また、SIZが16未満の探索者は、SIZが16以上の探索者に肩車されることもできる。
★跳躍もしくは登攀で口(穴)にたどり着ける。
★SIZ14以上の探索者は引っ張り上げる人間とのSTR対抗次第で引っ張り上げてもらうことができる。(女性のSTRは10)失敗すると上にいる人間は引きずり落とされ、1のダメージを負う。(落ちたのが女性だった場合、女性はまたジャンプで口の中へ入る)
★知識-40もしくは博物学-10で、探索者は自分の服を用いてロープのようなものを作成できる。下にいる人間がロープを作った場合は、ロープができたのを見れば、女性は降りてきて、そのロープを受け取ると、ロープを怪物の歯(穴の中にあった出っ張り)にくくりつけてくれる。
★全員が辿り着けなさそうな場合、女性の博物学ロールを行う。成功すれば、女性は自分の服を裂いて強いロープのようなものを作ることができる。本当に詰んでいる場合は、自動成功させてもいいだろう。
 
★上にたどり着いた発狂していない探索者はアイデアロールで、唾液などに濡れないことに気がつく。
 
 
全員が口の中に進むと、口の中に見えていた場所は、ぎりぎりすれ違えるくらいのの幅しかない石畳の通路であることがわかる。女性は全員が上がってきたのを見ると、その通路を歩いていく。また、声が聞こえる。怒りは非常に強くなっている。
SANチェック1/1d5
 
 
【再びT字路】
穴を通り抜けてしばらくすると、通路に穴があいている。その下には瓦礫が積み上がっており、どうやら床が崩れたらしいとわかる。見下ろすと、そこは見覚えのある場所だった。女性と出会った、T字路である。上からおりたことで、瓦礫によって塞がれた方、つまり目覚めた場所へと、探索者たちは戻ることができる。
しかし、おりてしまえば、後ろは瓦礫であり、進んだ先は少し前に見たとおり壁に突き当たる。女性は難なく飛び降りて袋小路に入る。
※瓦礫から降りるときに、女性が行ったのとは違う方向に降りることもできるが、ここまで来て女性についていかないような探索者は他の探索者をEDまで描写した後に一方そのころのような形でロスト描写を入れて終わらせてしまっていいのではないか。
 
降りる際に幸運ロールを行い、失敗すると1d2のダメージを受ける。跳躍技能を持っている探索者は、この幸運ロールを回避して下に降りるられる。
 
女性はまっすぐに道を進んでいく。探索者たちがついていくと、少し前に目覚めた突き当りにたどり着く。やはり行き止まりか、と思う探索者たちの目の前で、女性は突き当りの壁に向かって、何もないかのように歩いていき、そのまま壁の向こうへと消えてしまった。SANチェック0/1d2 ※発狂中の探索者はこのSANチェックを行わない。
 
★発狂している探索者:
ここに壁など見えない。ただただ、通路が続いている。
 
発狂しておらず、チェックに成功した探索者も、壁を通り抜けることは可能であるが、その時あえて壁にぶつかりに行くという恐怖が湧き上がってしまう。SANチェック0/1d2。
 
 
追いかけていった壁の向こうにもまっすぐの石畳の通路が続いているが、しばらく歩いていると、そのずっと奥の向こう側に、かすかな光が見えてくる。
その光が見えたとき、先導していた女性が探索者たちを振り返って笑顔を浮かべ──その笑顔が凍りつく。
一瞬の硬直ののち、彼女はぶるぶると首を振って、「──────ぇ!」何か警告するように大きな声をあげ、光の方を指差して駆け出す。
 
※彼女は「逃げて!」と言っている。
 
※ここはこのような反応をすればおそらく探索者たちは絶対に振り返らないような気もするので、以下の描写でもいいかもしれません。↓
追いかけていった壁の向こうにもまっすぐの石畳の通路が続いているが、しばらく歩いていると、そのずっと奥の向こう側に、かすかな光が見えてくる。女性の体は、その光の中に飲み込まれ、消えていく。
 
 
探索者が振り返って後ろを見るならば、GOODエンドへ。
振り返らず、女性を追うならばTRUEエンドへ。
 
※おそらくここまで来た探索者が女性を追いかけないという選択肢を取ることはないと思われるが、もし立ち止まって彼女を追いかけない選択肢をとるのであれば、全員ロストのBADということにしてもよい。
 
 
 

エンディング

 
【TRUEエンド】
NPCの若い女性を囮にして逃げることなく、女性に従って迷宮の出口にたどり着く。
 
光の中で身体の感覚が途切れた探索者たちの意識に、女性の声が届く。
「あなたたちは、正気の世界へと戻る。私は夢の中から見守っているよ。またここに連れてこられたとしても、私が助けるから──」
気がつくと、あなたがたは意識を失った場所に戻ってきている。あの不思議な体験は夢だったのだろうか。
知識ロールで女性の顔に見覚えがあることに気がついた探索者なら、そこで思い出すだろう。彼女は以前ワイドショーを賑わせた、とある事件の関係者であったこと。その事件に巻き込まれた結果、正気を失い、以降精神病棟でずっと眠りについているが、かつてはアイドルとして活動していた人物であることを。
 
不定の狂気に入っていた探索者は、その時点でのSAN値の不定を計算し、その不定値+1までSAN回復する。加えて、シナリオクリア報酬1d10。
フルートを破壊していた場合、加えて1d5の報酬を得る。
 
 
【GOODエンド】
最後に振り返る。
 
振り返った探索者は見るだろう。自分を追いかけてくる脅威の姿を。それは青白く、醜い楕円形の塊に、蜘蛛を思わせる足がついていた。おぞましい怪物は、その足を這わせて通路を進んでくる。
 
SANチェック1d6/1d20
 
その恐怖に足がすくんでしまった探索者の前を、あの若い女性が駆け抜けていった。戻ってきたのだ。振り返らずに進んでいた探索者がいたとしても、女性が道を戻ったことでその姿を目で追ってしまい、怪物を見てしまうだろう。
怪物は女性を捕らえ、「邪魔をしおって」と恐ろしい声をあげる。そのとき、女性がはじめて、意味のある言葉を発した。
「逃げて」
 
POW5を行う。
その切実な声を聞いて、我に返ることができた探索者は、光に向かって走りだすことができる。
逃げ遅れた探索者(POW
5に失敗した探索者)は、その場で女性と共に殺されてしまうだろう。(確定ロスト)
 
光へとたどり着けた探索者は、その中で身体の感覚が失われていく。そうして残った意識に、女性の声が届く。
 
○逃げ遅れてしまった探索者がいた場合、次のような声が聞こえる。
「助けられなかった。みんなを。ごめんね、ごめんね────」
 
○逃げ遅れた探索者が一人もいなければ、次のような声が聞こえる。
「私の体はあなたたちと違って、本体ではないから、大丈夫。安心して、帰ってくれたらいいよ。もう、これからは助けられないかもしれないけれど────」
 
気がつくと、探索者たちは意識を失った場所に戻ってきている。あの不思議な体験は夢だったのだろうか。
知識ロールで女性の顔に見覚えがあることに気がついた探索者なら、そこで思い出すだろう。彼女は以前ワイドショーを賑わせた、とある事件の関係者であったこと。その事件に巻き込まれた結果、正気を失い、以降精神病棟でずっと眠りについているが、かつてはアイドルとして活動していた人物であることを。
声には大丈夫だと言われたものの、恐怖はおさまらない────
 
シナリオクリア報酬1d6。
フルート破壊で1d3。
怪物(アイホート)を見たことによってクトゥルフ神話技能成長1d4。
 
 
○逃げ遅れた探索者
逃げ遅れてしまった探索者たちだが──次のようなことを問われるだろう。
 
「我が雛を宿すか、それともここで死を選ぶか?」
 
雛を宿すことを選択した、もしくは発狂している探索者は選択をすることができず、雛を宿されてしまう。
そして、気がつけば気を失ったときにいた場所にいる。しかし、もはやまともな生活には戻れない。理性を失い、いつ食い破られるともわからぬ恐怖の中、探索者は幻覚に溺れていく。
 
死を選んだ探索者は、先に雛を宿された女性の体を食い破って現れた無数の白い蜘蛛のようなおぞましいものに食われて死亡する。
 
 
 
【BADエンド】
女性に従わず、道を外れた場合
 
たどり着いたその先で待ち受けていたのは、平穏な日常ではなく、──青白く、醜い楕円形の塊に、蜘蛛を思わせる無数の足がついた、おぞましい怪物だった。
SANチェック 1D6/1D20
怪物は問う。「我が雛を宿すか、それともここで死を選ぶか?」
 
狂気に至っている探索者は、抵抗することができず強制的に雛の宿主になる。一方、自らの意思で死を選んだ探索者は、他の探索者らが雛を宿されているところを目撃してしまう。もしも雛を宿された探索者がいなければ、追いかけてきた若い女性がとらえられ、意思を問われることもなく強制的に宿主とされてしまうだろう。
SANチェック 1d6/1d10
 
探索者の中に宿主がいれば、死を選んだ探索者たちは、追いかけてきた若い女性が、その恐ろしい姿を目撃して立ちすくむところを見る。怪物は恐ろしい声で言う。
「邪魔をしていたのはお前か」
そうして、雛を宿された探索者のうち一人の腹から、無数のおぞましい蜘蛛に似たものたちが食い破って現れる。その蜘蛛たちは、女性と死を選んだ探索者たちを食い荒らす。
この時腹を食い破られなかった雛を宿した探索者は、気がつけば気を失ったときにいた場所にいる。しかし、もはやまともな生活には戻れない。理性を失い、いつ食い破られるともわからぬ恐怖の中、探索者は幻覚に溺れていく。
 
 
【女性を道中で見捨てた場合】
第一の関門で女性を穴に突き落とすとか、第三の関門でフルートを処理せずに塩酸の滝を潜り抜けるとか。(いないと思うけど)
その場合、女性に関するイベントがなくなったままで進行し、正しい道に進めなかった場合は即BADにいけばいいと思います。なんで善良なNPCを殺すのやら。
万が一女性無しで最後までたどり着けた場合:
アイホートが追いかけてくるシーンでは、女性の警告がないため、背後に忍び寄る存在に気がつくことができない。
アイデアロールを行い、「背後になんらかの脅威が迫っている」ことに気がつく。気がついた探索者はPOW2ロールを行い、失敗すると振り返ってしまう。
誰かが振り返ってしまった場合は探索者をランダムで一人選ぶ。選ばれた人間はアイホートに捕まることになるし、振り返らなかった探索者もその断末魔に思わず背後を見てしまうだろう。捕まっていない探索者は、POW
5ロールを行い、成功すれば捕まった探索者を囮にして光へ逃げることができる。
女性を見捨てて最後に誰も振り返らず生還すれば1d3のボーナス。
女性を見捨てて最後に誰かが振り返った場合の、逃げ切った探索者は1のボーナスとクトゥルフ神話技能1d4。
なお、女性を見捨てた場合はフルートの破壊によるボーナスはなし。
※基本的には女性を排除した時点でBADみたいなものだと思っていただければ……。
 
 
 

補足

・SAN値によっては途中で全員不定入りしてなんの面白みもなくなってしまうのではないかと思います……。部屋を減らすなどして、どんどん改変してください。特に第四については改良の余地がたくさんあると思います、すいません。
・基本的に部屋と部屋を繋ぐ道は一本道ということにしておりますが、途中で道の分岐を追加してもいいと思います。というかその方が迷宮としては自然かと思います。その場合も、女性が歩む正しい道以外は全て危険な道にしてください。
・発狂している探索者への情報は、個別チャットなどで発狂していない探索者には共有されない方が面白いのではないかと思います。

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基本的にKPをすることが多いです。自作はあまりしませんがたまに。

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