2018年07月27日更新

【鵺鏡】茸筍 春秋争い

  • 難易度:★|
  • 人数:3人~4人|
  • プレイ時間:5~6時間(ボイスセッション)

鵺鏡で茸筍戦争をするシナリオです。
鵺鏡初めての方向けのシンプルなシナリオを目指しました。
一般的な対立構造が苦手な方でも、茸筍戦争を通したコメディよりの対立なのでとっつきやすいのではないでしょうか。
初心者GM向けでもありますが、構造がシンプル過ぎるという点では少し取り回しがしにくいかもしれません。展開に迷ったら判定をしてください。

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ストック

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茸筍 春秋争い

 

【客分NPC】

 安倍晴明 芦屋道満

【常ならざる事】

 本演目においてPLの派閥は問わないが、PL間の争いをPC間に持ち込まないこと。

【目標成功値】

 基本ルールブックp117「門決定表」にある通りである。

【演目之筋】

 彼の乱より、魑魅魍魎の跋扈する魔都と化した平安京。
 魔都と化した今であっても、続いている文化がある。
 その一つが「春秋の争い」と呼ばれるもの。
 より良いのは春か秋かなどという優劣の付けがたいことを、和歌などによって比べるのである。
 そのうち「春秋の争い」は激化していき、いつの間にか直喩を避ける習慣から徐々に変化をしていった。
 それが「茸筍の争い」である。
 風流文化を愛する貴族たちは、いと遠きところより来たる稀人の技術や、陰陽道や影を操る力を持って、それぞれが考えた茸筍を形作っていった。
 「香合」「絵合」などのように各々の茸筍を比べる「茸筍合」などが行われるようになり、貴族たちの間で活気を増していく。

 そんな折、時の皇后である玉藻前はふと漏らした。
 曰く。――「この世に必要なのは筍だけである」と。

平安幻想夜話 鵺鏡「茸筍 春秋争い」

今に続く戦いは、ここから始まった――。

 

【道標】

[PC甲]

初期因縁:安倍晴明への[主君]
初期喪失:一線(魂魄9)
推奨分限:貴族、式、呪験、依童
目的:茸派を優位に立たせる。

 あなたは安倍晴明の部下である。部下である己を疑う日はなかった。
 だが、ある日玉藻前の命により秘密裏に茸狩りの命が晴明にくだされた。
 表から見れば玉藻前の一時の戯れに過ぎない仕事。だが仕事にかける晴明の姿は、まるで兎を狩る獅子のようである。
 その姿にあなたは怯えた。なぜならあなたは茸派である。
 このままではいけない。筍派の勢いを止める為には、筍派の急先鋒である安倍晴明を討つ他ない。
 なんとしても、茸が筍より素晴らしいと示すのだ。
 

[PC乙]

初期因縁:芦屋道満への[主君]
初期喪失:一線(魂魄9)
推奨分限:影司、惑師、孤児、畜生
目的:筍派の優位に立たせる。

 あなたは芦屋道満の部下である。主との絆は代えようもない大切なものだ。
 ある日、玉藻前が影で茸派の拠点を急襲するという報が入る。もちろんそれを阻止すると道満は高らかに宣言をした。
 あなたは芦屋道満の考えに同意し、協力している――ようにみせかけている。
 なぜならあなたは筍派である。
 道満に対して、己がどれだけ対抗できるかは分からない。
 だが芦屋道満の脱落――これは茸派を崩す最高の一手になるだろう。
 それがたとえ、道満との絆を裏切ることになっても。
 

[PC丙]

初期因縁:安倍晴明[利用]
初期喪失:正気(魂魄19)
推奨分限:大妖、影司、惑師、娼妓
目的:茸筍の争いを続かせる。

 「春秋の争い」が「茸筍の争い」に変化をしてからというものの、あなたは順風満帆だ。
 新しい茸筍を造るのに使用する知識や術はあなたの持ち物。それをあなたは茸派筍派関係なく、対価さえあれば渡してきた。
 しかし、あなたは茸狩りの噂を耳にする。
 茸もそして筍も失うべきではない。双方の争いこそがあなたの力の元であり、あなたの存在全てであるのだ。
 何につけても争いは相手がいた方が盛り上がる。
 筍派、茸派、芦屋道満、安倍晴明、どちらも失いたくない存在だ。すべてはあなたの力の為に。
 

[PC丁]

初期因縁:芦屋道満[仇敵]
初期喪失:安眠(魂魄5)
推奨分限:神、孤高、依童、畜生
目的:茸筍の争いを終わらせる。

 あなたは山に住んでいる神や精霊、もしくはそれに仕える者である。
 魔の都と化した後でも、あなたが住んでいるところは四季に彩られ穏やかな日々が流れていた。
 しかし、「茸筍の争い」が広がってから日常は終わりを告げる。
 あなたの住む山に術がかけられ、四季もなく競うように茸筍の生産が始まった。
 人も増え、諍いも増える。あなたの穏やかな眠りはなくなった。
 なによりも本人は覚えているかわからないが――遠い昔に大切な人と共に遊んだ景色をなくしたくはない。あなたは決意と共に、この争いを終結させることを決めた。
 

【己の道標を定むる法】

 鵺鏡を初めて遊ぶのであれば目的のはっきりした[PC甲]、[PC乙]を選ぶとよい。
 [PC丁]も同様に目的、行動ともにシンプルだが、全陣営と対立する可能性が大きい。そのことを念頭において選ぶとよいだろう。
 [PC丙]は場に応じた臨機応変な立ち回りが要求される。システム経験者、RPに慣れている、などのPLが選ぶとよいだろう。
 また、本演目においてPLの派閥とPCの派閥は問わない。あまりにPL側が片方の陣営にのめり込みすぎるのであれば、逆の派閥の道標を渡し、PL=PCでないことを意識づけるとよい。
 PC三人の場合は[PC甲][PC乙]を固定で、[PC丙][PC丁]のどちらかを選択してほしい。
 

【客分かく動けり】

芦屋道満 安倍晴明……

 ともにそれぞれ本演目では茸派、筍派という設定が付与されている。それぞれ場が硬直したときに投入し、場を動かす潤滑油の役割を担っている。
 あまり動けていないPCの側に縁のある方、場の状況に応じた方を選び登場させるとよい。
 初めて鵺鏡に触れるGMならば、それぞれのNPCの項目の「立場」「有様」「友誼」「敵対」必要に応じて「滅び」を参照するとよい。
 また本演目はコメディになることを想定している。NPCが死ぬことになっても、いずれ生き返るような展開にするとよいだろう。
 

【演目かく流れん】

 本演目は互いに身を削り合うシンプルなつくりとなっている。GMはPCの目的をそれぞれ確認し、どのようなことを起こしたいか積極的に取り込んでいこう。場が硬直したらNPCを投げ、まぜっかえす。
 最後の道にさしかかったあたりでPLにどのように物語を終結させるかを聞き、どちらか一方の陣営を取り込んでも良いし、また別の勝負を続けてもかまわない。
 もし全PCが万が一にも道の途中で協力するようなことになれば、どちらかのNPCをラスボスとして位置づけ、ラストバトルを演出するとよいだろう。
 

【舞台之事柄】

茸筍争い……
 シナリオ製作時は以下のように定義していた。

 ・絵合や香合のように、質の良い茸筍を育てて比べるのがはやっている。
 ・その為に、とある山――[PC丁]が住んでいる山の一角に、季節に関係なく茸や筍が生える場所を作った。
 ・今もその規模は拡大している。
 ・表向きの茸筍戦争は武力介入が行われていない。いわゆる現代で時々戯れに会話を交わすのと同じような程度である。

 以上の事柄はキャラクター作成時、もしくは導入時に共有するとよい。
 また、諸々に合わせて自由に変更してよい。 
 

【演題之幕開け】

【一】

登場PC:PC甲 PC丙
登場NPC:安倍晴明

描写:

 きん、と冷える冬の夜。床についていた[PC甲]は突然安倍晴明に呼び出された。
 晴明の自室に着いた[PC甲]を出迎えるのは、他の従者なのではなくまごうことなく晴明である。それを鵺の隙間から薄らと月光が差し、わずかに照らしていた。
 大陰陽師であり、晴明神社に祀られる神の一柱である主、安倍晴明はゆるりとした笑みを浮かべてあなたの支度を待っていました、と優しく言う。
 それを見た瞬間、あなたはどことなくその微笑みが、獲物を得た猟犬の歓喜に噎ぶような表情であるということを悟るかもしれない。

 [PC甲]が安倍晴明から茸狩り令をくだされる場面である。
 晴明はトレーラーにあるように、玉藻前から”秘密裏に”きのこ狩り例が下ったことを伝える。
「玉藻前から、極秘裏に命令がくだりました」
「……茸狩り、ですよ」
「ああ、ようやく茸派に筍派の優位をこの手で示すことができる。これほどまでに素晴らしいことはありませんよ」
「……おや、PC甲。どうしました、少々顔色が悪いようですが」
「これから茸派の拠点を襲撃します。そこを壊滅させれば、最も大きな茸の生息地は全滅です」
「……あなたにはその先鋒となってもらいます」
「ああ、その為にこちらの方を朝廷よりご紹介いただきました」

 そこに[PC丙]が入ってくる。[PC甲]、[PC丙]が互いの立場を確認した時点で〆。
 その時、軽い音を立てて外でなにかが飛び立ったことにPCたちは気付いてもよい。

【二】

登場PC:PC甲 PC乙
登場NPC:芦屋道満

描写:

 冬の夜明けも近い頃。
 [PC乙]は道満の前に呼び出される。なんでも、秘密の仕事があるそうだ。道満は式のひとつである鴉の喉元を撫でながら、少し上機嫌そうにしている。
「なあ、緊急の仕事があるんだが……受けていかないか?」
 道満は”茸狩り”のことを[PC乙]に話し。
「これは好機だぜ。きっと向こうは手薄だ。今のうちに筍の地を襲撃する。……あわよくば、すべて茸にしちまおうぜ」
「……なんか不安そうな顔してんな。大丈夫だって、こんなときの為に策は打ってんだからよ。……なあ、」
と言って、道満は[PC甲]を呼び出します。先鋒としてやってきた[PC甲]が晴明の発言を聞いて、ここにそれを伝えにきたのだ。
※ここで[PC甲]のPLが伝えにきたくない、などあれば式神の烏から情報を得た、という描写に変更する。
 また、この前後で行動を起こしたい、という提案があった場合にはのちほど挿入してもらおう。
「たまたまこいつに会ったときに、茸派だってことがわかってな。なんでも、急先鋒任されてんの。……まー油断はできねえけど、初動を遅らすことくれえできんじゃねえかな」
「ということで、お前、こいつが色々頑張ってる間、筍派の拠点襲撃してこい」
「俺もすぐに追いつくから、さ」
[PC甲]と[PC乙]が互いに言葉を交わした時点で〆。

【三】

登場:PC丁
 PC丁がなんらかの方法(そのPCに合った方法で)道満の話を聞いていたという場面。
 過去回想など交えてもらうとよいかもしれない。
 ここで茸の領域と筍の領域が隣同士にある、ということを示し、双方の地の行き来がそこまで困難ではないということを出しておくとよいかもしれない。

【刻と判定】

【我道】

 PCにこの時点で事前準備しておきたいことなどあったら聞く。また鵺鏡を初めてプレイする人がいたら、ここで何もしなくても後付けで「実はこのときに~があったんだよ!!」ということが言える、ということを伝えるのもいいだろう。コンセンサスさえとれていれば、RPは自由である。
 この後、[PC甲][PC乙][PC丙]は山へ向かうという道筋をとることになるだろう。それを[PC丁]が迎え撃つ形になるはずである。
 特にPL側に要望が無ければ、一番先行しているPCと[PC丁]を会わせ、そこに合流させる形をとるとよいだろう。

 PC同士が邂逅した時点で一回目の判定。
 PCそれぞれの立場を認識した時点で二回目の判定。
 話が発展しそうであれば続けざまに三回目の判定。膠着しそうであれば、ここで晴明もしくは道満を登場させ、判定に臨む。
 晴明、もしくは道満は、自分が指示したPCの尻を叩く言動をする。 
 
[生様]→[魂魄]→[血脈]
 

【鬼道】

 この場面で、特に誰かが前の邂逅から移動するようなことがなければ、場所を移動させてしまう。場にNPCが出ていれば、それぞれのNPCの陣営で爆発が起き、NPCが舌打ちをしてそちらの防衛に向かう。
 晴明なら筍。道満なら茸。
 ここに乗じてPCたちは防衛に向かってもいいし、逆に他の陣営を荒らしにいってもいいし、隙ができたNPCに攻撃をしてもよい。
 ただし、この場でNPCが攻撃を受けてしまうと場が動かない可能性が高い。一旦姿を消させてから追わせるとよいだろう。
 もし一つ目の道でNPCが出ていない場合、好きな方で爆発を起こそう。
 
以下、筍のさとの描写である。

春的な描写:

 今は冬、のはずである。
 それでもこの地には一切雪の気配など感じられない。
 代わりに散るのは桜。桃色の花弁がひらひらと舞い、そして落ちてゆく。
 そこから少し離れた竹林。その根元には小さな筍がひょっこりと顔を覗かせていた。
 人によって編み上げられた術で、一部の山の気候を変化させ、筍を一年中収穫できるようにしているのだ。

 ゆらりと花が曲線を描き、落ちていく。
 その不安定な線の中に、芦屋道満は立っていた。

 道満はおもむろに地へ手を這わせ、奇妙な文様を描く。すると瞬く間にその部分が起き上がり、そして地面を四方八方へと割っていく。その中心で道満は高笑いをしていた。

以下、茸のやまの描写である。

秋的な描写:

 今は冬、のはずである。
 それでもこの地には一切雪の気配など感じられない。
 代わりに散るのは紅葉。赤や黄色の葉がひらひらと舞い、そして落ちてゆく。
 その根元には、茶色や白の茸が幾本も生えている。
 人によって編み上げられた術で、一部の山の気候を変化させ、茸を一年中収穫できるようにしているのだ。

 ゆらりと葉が曲線を描き、落ちていく。
 その不安定な線の中に、安倍晴明は立っていた。

 晴明は符を高く掲げる。それが天へと舞い上がったかと思うと、周囲に雷をまき散らしはじめた。
 晴明の高笑いがあなたがたには聞こえる。

 場所を移動する際に一回目の判定。
 場所が移動し終わって、NPCと邂逅してから二回目の判定。
 三回目の判定は続けざまに行う。
 
[魂魄]→[血脈]→[生様]
 

【苦道】

 三つ目の道では先ほどと逆のことが起こる。もう片方の陣営で爆発が起こるのである。あるいは陽動により、もう片方のNPCが何らかの理由でこの場に乱入してくる。

 また、この時点ですでに展開が変わってきている場合が多いだろう。その時はシナリオの流れは無視してしまってもかまわない。

 ただし、この時点でPC全員の和平が成立してしまいそうな場合、それぞれのPCの目的を再確認することが重要になってくるだろう。また、どうしてももう戦う理由がない場合は、NPCをラスボス位置に持っていきつつ、残りの道を省くことで物語を終わりに導くことも考えておくとよい。
 
[血脈]→[生様]→[魂魄]
 

【外道】

 この道では演目を終了に導くように意識するとよい。一旦PL会議をし、どのようにもっていくかを話し合うとよいだろう。
 一旦どちらかの陣営の勝利で終わらせる。アイドル対決や別の武力ではない戦いに持っていく。俺たちの戦いはまだまだこれからだ、という。どうしても議論が紛糾した場合、山は燃え、茸も筍も燃える、という形にするとよいだろう。
 
[血脈]→[魂魄]→[生様]
 

【それぞれの悟道】

 どのような最期を迎えたかでだいぶ色が変わってくるだろう。また、晴明や道満が死亡した場合、完全消滅ではなく生き返ったり転生する道を推奨する。
 

【次なる演目への道標】

 本演目はコメディを重視してつくられている。PCがロストする可能性は低いはずである。たぶん。のちのち戦争が解決していなければそれを元にして他の演目につなげてもよいだろう。

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