「おおい、お前さんたち! もうすぐ船が出ちまうぞ!」
肉体的ロストPC専用シナリオです。
正直クトゥルフでこれはどうよ? とも思ったのですが、解釈が合わない場合はニャル様がやったんだなぁとふんわり考えてください。
私はロストPCには厳しくいくべきだと思うのでそこそこ厳しめのシナリオになっています。ロストのロストとでも言うべき状態になることがあります。
描写をそのまま書いているので一読すればKP初心者でも回しやすいシナリオです。
1〜4人向け。PL難易度は高めです。ボイセで一、二時間ほどですがエンドによっては十分ぐらいで終わります。
推奨技能は三種の神器と高DEXです。
探索者たちは常世の住人にさせられるようなところでした、と言う感じです。黄泉竈食ひですね。かまどを使った料理でなければ住人にはならないので、女の人の「水は大丈夫だったのに」につながるわけです。
料理を食べた探索者は料理を食べた後、本来は旅館の奥(旅館は関所のような役割をしています)に連れられ、反対側の出口から出て黄泉の国の住人になり、ゆっくりと体がゾンビへとなっていきます。
女将が誰かはあんまり考えていないのですが多分イザナミです。ニャルラトホテプの化身の一つとしてもいいし、オリジナル神格にしても構いません。クトゥルフ世界での死後の国描写が見つからなかったので神道ベースに考えてみました。
後ちょうどFGOで迷い家の話が出てたのでちょうどええやんけ! とモチーフの一つにしました。本の中のプレゼントをもらえる機会とかそう言うのは完全にブラフです。それに踊らされて何か持って帰ってしまえばもれなく黄泉の国の住人です。女将がその本の存在を許している時点で真っ当なヒントではないです。
後灰になるとかは私の完全なオリジナルなので適当に腐り落ちるとかでもOKです。まぁ本来は外に出てゾンビとして活動することになるのでしょうが。流水は魔を退ける的なことを聞いたのでじゃあ風もじゃね? と思いました。なので、風が吹く方=地上、となるわけです。
千引の岩が軽々と動かせるのは、探索者がまだ黄泉の国の住人になりきっていないからです。正直あんまり理由考えてないです。イザナギが助けてくれたんじゃないですかね? 仮にも国生みの神の片割れですし。イザナミと喧嘩してますし。
探索者たちは各々、は、と目を覚まします。…いや、目を覚ます? なぜだ、自分は、死んだはずなのに。あの死ぬ瞬間の手足の先から冷たくなって、そうしてだんだんと呼吸のできなくなったあの瞬間を、確かに覚えているのに。
いや、覚えているなんて生易しいものじゃない。命を刈り取られる瞬間の恐怖は、はっきりと自分の頭にこびりついている。そう、今まさに、確かに息をしているこの瞬間だって! ひゅう、と呼吸が狭まる。なぜ自分は、生きている?
死の恐怖をまざまざと思い出してしまった探索者たちはSAN値チェックです。1d5/1d10→【河原】へ
今いる場所はどこまでも続くような石川原。雄大な川が横に流れています。川には桟橋がひとつかかっており、その桟橋には一隻のモーターボートがつけられています。見た所あと(探索者の人数)人だけ乗れそうです。それ以外は荷物で埋まっています。
…しかしあなたはどこか物悲しいような雰囲気を覚えることでしょう。明かりがないと言うのに星も何も見えない空がそう感じさせるのかもしれません。
→探索者を調べる
白装束を着ています。持ち物はありません。(葬式後ということになってるので白装束ですし、一緒に燃やされた持ち物は黄泉の街の方に届けられる(渡し守の持っている荷物がそれです)ので持っていません。)
→[アイデア]
数々の臨死体験の話を思い出します。三途の川。もしかしたらここがそれなのではないか、と思うことでしょう。自らの死を突きつけられた探索者はSAN値チェックです。0/1d6
→[目星]
川にはおろか、河原にも虫も何もいないことがわかります。今まで生きてきた上で見たことのない状況に怖気の走った探索者はSAN値チェックです。0/1
落ち着いたところで、モーターボートの周りで何やら作業をしていたローブのフードを目深にかぶった人物が振り返って探索者たちに呼びかけます。
「おおい、お前さんたち! もう直ぐ船が出ちまうぞ! 乗らなくていいのかい? 次の便は明日になっちまうが!」
船に乗りますか?
→船に乗らない
探索者たちは明日までこの風が吹きすさぶ石河原で夜が明けるのを待つことになるでしょう。[CON×5]に失敗すると1d6のダメージを受けます。それを7回繰り返します。繰り返すと朝が来て、また次の船がやってきます。
→[幸運1/3]に成功する
HP-1の状態で即座に蘇生することができます。→【エンド分岐】へ
→[幸運1/3]に失敗する
河原に残留です。
→船に乗ろうとする
呼びかけてきた人物は渡し賃を要求します。二百円だそうです。探索者たちがごそごそと自分の懐やらポケットやらを漁ると、ちょうどぴったり二百円が出てきます。渡しますか?
→渡さない
船に乗らないルートに合流してください
→渡す
呼びかけてきた人物は「まいど」といって探索者たちに船に乗るように言います。無事に船に乗ったところで、探索者同士自由にRPしてください。→【モーターボート】へ
→渡し守のフードをめくるなど顔を見るRPをする
フードをめくると人間ではない顔…頰がこけ、黒ずんだ顔が見えます。
「お客さぁん、困りますよ」
探索者は渡し守の正体に気がつきます。不死の者、死んでない者。そう、ゾンビです。SAN値チェックです。1/1d8
→[聞き耳]
渡し守からどこか甘いような匂いがします。
→[聞き耳]情報が出た上で[アイデア]や[医学]を振る
渡し守からする匂いが死臭だと気がつきます。
RPが落ち着いたところで、船が対岸に着きます。→【旅館】へ
そこには立派な旅館のように見える建物がひとつそびえ立っています。渡し守はロビーで案内を待つように、と言うとモーターボートに乗せた荷物を運んだり、モーターボートを桟橋にくくりつけたりと仕事をしています。旅館に入りますか?
→周りを見渡す
旅館以外にあるものは大きな塀のみです。おそらくこの旅館のようなものが関所のような役割をしているのだろう、と探索者たちは思うことでしょう。
→旅館に入らない
渡し守が早く旅館に入るように急かしてきます。
→それでも旅館に入らない
渡し守が「おおい、頼む!」と言って女中を呼びます。ゾンビとの戦闘です。1ターンに1d3人増えます。ゾンビのデータは基本ルルブ232pにあります。探索者が死亡した場合、女中が探索者たちを手当てします。HPを即座に1まで回復させてください。探索者たちはこの後すぐに旅館の中に運ばれ、料理を口にねじ込まれます。以下描写です。
次に目を覚ました時、探索者たちの体は、どこか”違う”ようになっています。違和感を覚えて体を検分したりあたりを見渡したりしている最中に、美しい女性が入ってきます。(女将です)
「お目覚めになりましたか。でもあなた様がたもいけないのですよ。ここに入らないなどと言うから。ああ、でも、安心しました。だってもう、仲間ですものね」
女性はうっそりと笑いました。ロストです。これにて「死者は生者となり得るか?」終了と相成ります。お疲れ様でした。
→旅館に入る
→【ロビー】へ
旅館に入ると、豪華絢爛なエントランスが探索者たちを出迎えます。忙しそうに働いているなぜか顔布をした女中があなたたちに気がつくと、「ご新規様ですね、椅子に座って少々お待ちください!」と言ってきます。見渡すと背もたれのない長椅子がいくつかと机もいくつか、そして本棚が置かれています。また、長椅子にはさめざめと泣いている女性が一人います。(女将が探索者を呼ぶまでにかかる時間はおよそ一時間ほどです)
→本棚に[図書館]
「マヨヒガ」と言う本を見つけます。各地の迷い家伝承をまとめ、考察した書物のようです。母国語に成功すると重要な記述を短時間で見つけることができます。失敗でも一時間あれば読めます。
・迷い家は山の中に突然現れる豪華絢爛な屋敷だ。そこはつい先ほどまで人が住んでいたかのような状況で山中にある。
・謙虚な様子を見せれば米が湧き出る椀が届くなど、その人間に富を授ける。
・いわば山の神からのプレゼントをもらうことのできる機会だと捉えることもできるかもしれない。
→机に[目星]
「ここは現世ではない」と机の裏に殴り書きされているのを発見します。
→椅子に[目星]
「道は風上に」と書かれたメモを発見します。
→女性に話しかける
さめざめと泣き続けています。([信用]や[説得]に成功するか、余興を見せる、いいRPをするなどしないと話はできなさそうです。[聞き耳]でもカッコ外の情報を手に入れることができます。)
・(女将に出された料理を)食べてしまった
・(常世の)住人になってしまった
・水は大丈夫だったのに
・道は分かっているのに、食べてしまったから
・風は探すことができたのに
ある程度調べ終わったところで、美しい女性(女将)が話しかけてきます。
「もし、お客様がた、女将でございます。お食事の用意が整いました。どうぞこちらへ」→【大部屋】へ
女将に招かれて大部屋へと入るとそこには到底探索者だけでは食べられそうにない量の豪華絢爛、贅の限りを凝らした食事が机にずらりと並べられています。
「どうぞお召し上がりになって。あなたたちのために用意させましたの」
→食事に[目星]や[製作(料理)]など
もも、酒、まめなどの食材が料理に一切使われていないことがわかります。
→[目星]情報が出た上で[知識]や[歴史]など
使われていない食材には魔を払う、邪気を遠ざける、などの言い伝えがあることがわかります。
→食事を食べる
とても美味しい食事です。(常世の住人となります。ロストです。ラストで一緒に処理をするのでKPはメモだけしていてください)
→全員食事を食べた場合
美味しい料理でした。…そのはずでした。あなたたちが料理を飲み込んだのを確認した瞬間、女将がうっそりと微笑みます。
「ああ、よかった。これで私たちの仲間ですね」ロストです。これにて「死者は生者となり得るか?」終了と相成ります。お疲れ様でした。
→食事を食べない
女将が怒り出します。「なぜ食事を食べないのです? …ああ、もしかして、あの女。あの女の言うことなど信じる必要はございませんよ、お客様。とっても美味しい食事なんですから」
→それでも食事を食べない
「なぜ、なぜ食べぬのです! お前たち!(ここで顔布をした女中が数人大部屋に入ってきます)押さえつけなさい、私手ずから食べさせます!」
[DEX×5]に成功すれば逃げることができます。失敗しても[STR 16との対抗]に成功すれば振り払うことができます。→【再度河原】へ
→どちらにも失敗した場合
カンカンに怒った女将に料理を口にねじ込まれます。美味しい料理でした。…そのはずでした。あなたたちが料理を飲み込んだのを確認した瞬間、女将がうっそりと微笑みます。
「ああ、良かった。これでもう私達の仲間ですね」ロストです。これにて「死者は生者となり得るか?」終了と相成ります。お疲れ様でした。
あなたたちは旅館を出ます。[聞き耳]を振ってください。
→成功
川の上流の方から風が吹いていることに気がつきます
→失敗
何もわかりませんでした。川の上流、下流、どちらに進みますか?
→上流
上流に進むルートに合流してください
→下流
あなたたちは必死に走り続けました。走って、走って、走って…しかし、当然のことながら人間には疲労があります。息が切れ、足が動きにくくなり、スピードの緩んだあなたたちを女中は見逃しませんでした。がっしりと掴まれ、旅館へと連れ戻されます。走り続けて疲労の溜まったあなたたちはそれに抵抗することもできません。
旅館につき、カンカンに怒った女将に料理を口にねじ込まれます。美味しい料理でした。…そのはずでした。あなたたちが料理を飲み込んだのを確認した瞬間、女将がうっそりと微笑みます。「ああ、良かった。これでもう私達の仲間ですね」ロストです。これにて「死者は生者となり得るか?」終了と相成ります。お疲れ様でした。
→川の上流に進む
女中は絶えず追ってきています。到底人間だとは思えないスピードで追ってきているその鬼気迫る姿に触発されるように、あなたたちは必死で走ることとなるでしょう。しかしどんな人間にも限界はあります。長い長い石河原です。いい道とは言えませんし、単純に疲労もあなたたちの足を襲います。
(DEX×5からスタートして×4、×3…と成功値は減っていきます。二回失敗したら女中たちに追いつかれてしまいます。その場合下流へ向かったルートの描写を読み上げてください。)
→DEXロールに三回成功する
→【千引の岩】へ
ゼエゼエと必死で息をするあなたたちの向こうに、大きな岩が見えてきました。道はそこで途切れてしまっています。あなたたちは女中から逃げるために、この岩をどうにかしてどかさなければなりません。
[STR(ここにたどり着いた探索者の人数×12)との対抗]成功で岩をどかすことができます。
→二回失敗する(女中から逃げ切るところで失敗していた場合、一回にしてください)
女中に追いつかれてしまいます。以下の描写を読み上げてください。
必死に走り、大きな岩をどかそうと努力していたあなたたちの背後に、無情にも女中たちが迫ります。
ぬう、と出た影に驚き、怯んだあなたたちの体を無数の手が掴み、そのまま旅館へと連れ戻されます。抵抗しようにもその無数の手の一つ一つが力強く、到底抗うことはできないように感じます。
旅館につき、カンカンに怒った女将に料理を口にねじ込まれます。美味しい料理でした。…そのはずでした。あなたたちが料理を飲み込んだのを確認した瞬間、女将がうっそりと微笑みます。「ああ、良かった。これでもう私達の仲間ですね。黄泉比良坂に着いたと知った時は恐ろしく思いましたが、千引(ちびき)の岩に引っかかったのならあの忌々しい岩にも感謝をしなければならないのかもしれません」
ロストです。これにて「死者は生者となり得るか?」終了と相成ります。お疲れ様でした。
→成功した場合
→【エンド分岐】へ
→船に乗らず、[幸運1/3]に成功した場合
蘇生はしましたが、肉体的な死亡には変わりありません。周りに人がいるか、またその人物が適切な処置をできる人間か、ということで幸運を二回振り、どちらも成功することでHPが1の状態にまで回復することができます。
→[幸運]二回に失敗した場合
冷えていく体。止まっていく呼吸。意識がないながらもあなたは再度味わう死の感覚にすっと背筋が冷えることでしょう。ロストです。これにて「死者は生者となり得るか?」終了と相成ります。お疲れ様でした。
→[幸運]二回に成功した場合
幸運にも蘇生に成功したあなたは治療を施した人間により即座に病院まで運ばれ、集中治療室に入ることとなるでしょう。「死者は生者となり得るか?」終了です。お疲れ様でした。
SAN報酬 1d5
→無事に岩をどかすことができ、また、料理を食べた探索者がいなかった場合
あなたたちは光さす地上へと帰ることができます。地下から響く怨嗟の声にハッとした探索者は大岩をまた元の位置に戻すことでしょう。
見覚えのない場所を調べるとすぐにここがどこかはわかります。石碑が建っているのです。ここは黄泉比良坂。あなたたちは見事常世…黄泉の国から帰還を果たしたのです。おめでとうございます、シナリオクリアです。
SAN報酬 1d5+1d6
女性を泣き止ませた 1d3
注意点 探索者たちは一度死んでいます。生前の知り合いと出会った時は知り合いの方に1/1d6+1のSAN値チェックをさせること。
→無事に岩をどかすことができたが、料理を食べた探索者がいた場合
あなたたちは光さす地上へと帰ることができます。地下から響く怨嗟の声にハッとした探索者は大岩をまた元の位置に戻すことでしょう。しかしそこで気がつきます。(料理を食べた探索者の名前)の体が風にさらわれるようにさらさらと崩れ散っていっていることに。
さらさら、さらさらと崩れていくそれを止める手立てを探索者たちは持っていません。友人の異様な死に様を目撃してしまった探索者たちはSAN値チェックです。0/1d6
呆然としていたあなたたちの目の前で、風は無情にも残りの灰さえもさらってしまいます。料理を食べた探索者はロストです。
見覚えのない場所を調べるとすぐにここがどこかはわかります。石碑が建っているのです。ここは黄泉比良坂。あなたたちは見事常世…黄泉の国から帰還を果たしたのです。おめでとうございます、シナリオクリアです。
SAN報酬 1d5
女性を泣き止ませた 1d3
注意点 探索者たちは一度死んでいます。生前の知り合いと出会った時は知り合いの方に1/1d6+1のSAN値チェックをさせること。
→無事に岩をどかすことができたが、全員料理を食べていた場合
あなたたちは光さす地上へと帰ることができます。地下から響く怨嗟の声にハッとした探索者は大岩をまた元の位置に戻すことでしょう。
しかしそこで気がつきます。探索者たちの体が風にさらわれるようにさらさらと崩れ散っていっていることに。
さらさら、さらさらと崩れていくそれを止める手立てを探索者たちは持っていません。風はあなたたちの体を確実にさらっていき、ついには無くなってしまいました。ロストです。これにて「死者は生者となり得るか?」終了と相成ります。お疲れ様でした。
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