使用ルールブック:『ソード・ワールド2.5 ルールブックⅠ』および『ソード・ワールド2.5 ルールブックⅡ』(以下ルルブⅠ・Ⅱ)
経験点:初期+2000点
所持金:初期+1000G
名誉点:10点
また、ルルブⅠ・P402のサンプルシナリオから続けて本シナリオに進むこともできます。その場合は上記のレギュレーションは無視し、サンプルシナリオで取得した経験点、所持金および名誉点を加算した上でPCを成長させてあげてください。
少しずつ仕事にも慣れだした新人冒険者たち(プレイヤーたち)は、今日も冒険者ギルドで新たな依頼に手を出すこととなる。それは『町の木こりの救助』だ。緊急の依頼にたまたま居合わせた冒険者たちは早速、近隣の森へと向かう。しかし、どうにも様子がおかしい。森のあちこちに巨大な傷跡が残されており、動物たちの気配が消え去っている。
疑問を覚えつつも無事に洞窟で動けなくなっていた木こりを発見するが、直後現れた巨大な蛇に襲われてしまう。すぐさま勝ち目は無いと悟った冒険者たちはどうにか別の道を見つけ、町へと木こりを送り届けるのであった。
無論、これは一つの結末に過ぎません。あくまでGMに全体の流れを知ってもらうためのあらすじです。PLたちの行動に応じて、GMは臨機応変に物語の流れを変えてみてください。
近年、別大陸との航路が確立し目まぐるしい発展を遂げる、港湾都市ハーヴェス。
少しずつ仕事にも慣れだしたものの、まだまだ駆け出しでしかないきみたちは身の丈に見合った仕事が無いかと、冒険者ギルドを訪れているだろう。或いは買い物から戻り、たった今ギルドの扉を潜ったところかもしれない。どちらにせよ、冒険者ギルドに足を踏み入れたきみたちに担当者であるリーナ・バークマン(ルルブⅠ・P402参照)が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「ごめんなさい、緊急の依頼よ。街の木こりが一人、近くの森から一晩経っても帰らないの。仕事仲間が言うには、生真面目でいつもなら決まった時間に戻ってくるそうだから明らかにおかしいわ。すぐにでも捜索と救助に向かってほしい」
・依頼人は造船業者のクレール・ヘンザー(ドワーフ/男/42歳)。
・報酬は、成功報酬として一人1000ガメル(失敗時は0)。
・目的は、同僚の木こりであるジャック・アッカー(リカント/男/44歳)。
※何の動物に変貌できるリカントかはGMが自由に決めてしまいましょう。困ったら狼などが良いかもしれません。
・制限日数は特になし。ただし早急な依頼対象の救助を求められる。
・ジャックが怪我をしてしまっていた時のために〈ヒーリングポーション〉(ルルブⅠ・P325)を3つと〈アンチドーテポーション〉(ルルブⅠ・P325)を1つ、保存食1日分をパーティ人数+1人(ジャックの分)が支給される。また余ったポーションは冒険者が自由に使用しても良い。
・クレールが向かった森は都市のすぐ側であり、歩いてもここから2時間程度。冒険者であるPCたちは聞くまでもなく場所を知っている。
・その森は本来であれば、稀にウルフなどの動物が出る程度で危険はほとんど無い。
上記の内容を元にPCたちの疑問にはリーナが答えます。逆に言うとこれ以上の情報をリーナは持ち合わせていません。更なる情報をPLたちが求めるのであれば、造船所にいる依頼人のクレールの元を訪ねてほしいと伝えれば良いでしょう。
その場合にはリーナと同じ情報に加えて、クレールは以下のことも知っています。
・ジャックは○○のリカントである。
※GMが決めたリカントになります。困ったら狼のリカントで。
・冒険者ほどではないが、最低限の危険から逃れる力は持っているはず。
※もしも詳しい実力を問い質されたら、GMとしてジャックはレンジャー技能レベル2を取得していると答えてください。
・ジャックは生真面目な性格で信用できる人物である。そのような彼が日没まで戻ると言って帰ってこないなら、何かがあったことは間違いない。
※クレールはジャックに絶対の信頼を置いています。何を言われようともジャックが約束を破っただけでは? という疑問は抱かず頑なに何らかの事件に巻き込まれたのだと引くことはありません。
森は都市のすぐ近くなので道は最初から全員が知っていることにしても良いでしょう。準備ができたら出発させてください。
穏やかな自然特有の香りがきみたちの鼻腔をくすぐる。木々の葉が作り出す緑の天井の隙間からは暖かな陽の光が差し込んでいた。気を抜いてしまえば眠ってしまうほどだろう。
しかし、ここは森の入り口。人族の領域の外側。きみたちはそれを思い出し、再び気を引き締め直した。
ここからは森の探索となります。今回のシナリオでは、マップは基本的に一本道となっています。PLたちが“奥に進む”、“先に進む”などと宣言したら次の番号を参照してください。
ここには特に何もありませんが、目標値7の「探索判定」に成功した場合には以下の描写を付け加えます。PLたちが気づかぬようであれば目標値9の「異常感知判定」を要求し、成功した場合には同じ描写をしましょう。
あまりにも静かすぎる。動物たちの鳴き声が聞こえないのはともかく、虫の合唱さえきみたちに届くものは存在しない。一度気づいてしまうとそれはあまりにも不気味だろう。まるで森そのものが怯えているようだった。
きみたちが慎重に歩を進めていると、目の前に天然の広場のような空間が広がっていた。その中心辺りには小さな荷車が鎮座している。尤も、それは無残にも破壊されてしまいとても機能しているようには思えなかった。
ここでの「探索判定」は2段階です。高い目標値に届いたのであれば両方の、低い目標値にのみ届いたのなら低い方のみを説明してください。
・目標値6に成功
壊れた荷車に目がいってしまっていたが、付近の木々もなぎ倒されている。まるで巨大な何かが無理やりに通過したかのように、破壊された森の痕はさらに深いところにまで続いていた。
・目標値9に成功
荷車から続く足跡が森の深くに続いている。その歩幅などから察するに、何かから逃げているようであり、森の破壊痕もそれを追っているように見えた。
荷車の中には特に何もありません。砕け散った木片がある程度です。
まるで景色の変わらぬ森の中で、ようやく別のものがきみたちの視界に飛び込む。それは崖だ。断崖絶壁の岩肌が頭上高くまで伸びていた。
ここでも目標値7の「探索判定」です。成功した場合には以下の描写をしてください。
きみたちは足元に赤黒い汚れを発見する。確かめるまでもない。それは血痕だ。流血していたのか、赤い染みは転々と続き、崖に空いていた洞窟の中にまで繋がっていた。
洞窟に入った場合、程なくして苦しげに座り込むリカントの男性を発見します。左手は流血する右肩を抑えており、先ほどの血の主が彼であると分かります。まだ入り口付近のため暗闇によるペナルティは発生しません。
この状態では質問をしても首を振るだけで、答える気力も残されていません。貰った〈ヒーリングポーション〉を使用する、神聖魔法で治療するなどをした場合には感謝を述べ、自分がジャック・アッカーであると名乗ります。
ジャックとの会話を終え、PCたちが移動を始めようとした段階で目標値6の「危険感知判定」を行わせてください。成功した場合には以下の描写をしましょう。失敗した場合には全員が突然の揺れに転倒してしまってから、同じく以下の描写を述べてください。
きみたちは不意に殺気を感じ、入ってきた洞窟の入口へ視線を向けた。そこに居たのは一匹の狼だ。人族を襲うことも珍しくない獰猛な獣を前に、きみたちはすかさず身構えるが、すぐにそれは無意味だと悟るだろう。
直後に襲い掛かるのは激しい揺れと、天井から降り注ぐ石の欠片。そして、洞窟に飛び込もうとした狼はあと一歩のところで、何かに薙ぎ払われて宙を舞っていく。
代わりに現れたのは鱗で覆われた巨大な生物。洞窟の外で蠢くそれはやがて、覗き込むように頭部を洞窟に入口へ運ぶ。きみたちを見定めたのは瞳孔の長い水晶のような瞳──巨大な蛇の頭部だった。_
「魔物知識判定」に成功した場合には、狼の正体は〈ウルフ〉(ルルブⅠ・P450)、巨大な蛇の正体は〈ペトロヴァイパー〉(ルルブⅡ・P396)であると分かります。
※〈ペトロヴァイパー〉には剣のかけらが3つ入っており、強化されています。(ルルブⅠ・P425)
ペトロヴァイパーはその巨体ゆえに洞窟の中には入れません。そのためPCたちが自ら接近しない限り、危害は無いと初めに伝えてください。また仮に真正面から戦っても現在のPCたちでは勝ち目が薄いでしょう。
よっぽど運が味方しない限りは、全滅する可能性が高いです。このことをGMはジャックのロールプレイを使ってPCたちに伝えるとより臨場感が増すかと思います。とにかく、PLたちには戦ってはいけないと伝えてください。
ここで目標値6の「探索判定」に成功した場合には、風の流れを感じるため洞窟に別の入り口があると分かります。失敗した場合や、PLたちがどうすれば良いか悩み始めてしまった時には、ジャックが知っていることにしても構いません。
※この時、仮にペトロヴァイパーに勝利してしまった場合には来た道を戻ることで無事に都市へ帰ることができます。その場合には4)エンディングに進んでください。
奥に進むにつれて、光は失われていく。その頭部を獣に変貌させたジャックと、暗視の能力を持つ冒険者ならば視界を確保できるだろうが、他の面々の視界に映るものは何も無い。全くの黒一色だろう。
ここからは暗闇による行使判定へのー4のペナルティが発生します。このことを告げ、松明などの使用を促してください。誰も所持していない場合には、ジャックが持っていたことにしても良いでしょう。
明かりを付いた段階で先頭を歩くPCは目標値9の「危険感知判定」です。(ロールプレイなどが盛り上がっているのなら、そちらを十分に楽しんだ後でも構わないでしょう)
成功した場合には、足元に不自然に動く石があることに気が付きます。
失敗した場合には、気づくことはできず先頭のPCは転倒してしまいます。
前衛:〈チープストーン〉(ルルブⅠ・P460)×3体
前衛:〈ドライコープス〉(ルルブⅠ・P458)×1体 との戦闘です。
※〈ドライコープス〉には〈剣のかけら〉が2つ入っており、強化されています。
・ジャックは背後で身を隠しています。戦闘中は彼のことを無視して進行しましょう。
・上級戦闘を導入している場合には、先頭から10mに〈チープストーン〉が。そのさらに5m後ろに〈ドライコープス〉がいます。
敵を退け順調に歩みを進めていくと、やがて太陽の光に気が付く。暗闇に慣れてしまったきみたちはその眩しさに目を細めながら足を進め、踏み出した先は森の一角だった。
近くに危険は感じられない。無事に大蛇の牙から逃れることができたのだ。
洞窟を出てすぐにジャックは辺りを調べます。そして①の森の入り口にまで案内してくれることでしょう。そこから先に危険はありません。やり残したことが無ければ、そのまま都市へと帰還し4)エンディングに進んでください。
もしも〈ペトロヴァイパー〉を討伐したいと願うならば、ジャックはこの辺りなら罠を張れるかもしれないと助言をくれ、またここからは1人でも帰ることができると言い残し、先に街へと戻っていきます。この時点でも〈ペトロヴァイパー〉の討伐を諦めて、帰還することはできます。その場合にも4)エンディングに進みましょう。
ジャックの助言通りに「罠設置判定」を行えば、この場に落とし穴を作成することができます。罠の設置は2d6の出目が最低値の2(ピンゾロ)でない限りは成功します。
この後の罠への誘導方法はPCに委ねます。あちらから現れるのを待つにしろ、見つけ出して誘い込むにしろ、必ず〈ペトロヴァイパー〉は罠にかかります。GMは臨機応変に描写し、PLとPCたちの考えを尊重してあげましょう。
罠にかかった場合には自動的にPCたちの先制となり、また〈ペトロヴァイパー〉に「命中力-2」、「回避力-3」のペナルティを与えてください。
前衛:〈ペトロヴァイパー〉×1体
※〈ペトロヴァイパー〉には剣のかけらが3つ入っており、強化されています。
無事に討伐が完了し、都市へ戻ったのなら4)エンディングへ。
都市へ入ってすぐにそわそわと待っていたクレール(先に戻っていたのならジャックも)がPCたちの無事を確認して、安堵と感謝の言葉を伝えてきます。報酬はギルドに渡してあるのでそっちで受け取ってほしいこと。何かあれば力になるからすぐにでも言ってほしいと、固い握手を求められるでしょう。
またこの時に〈ペトロヴァイパー〉を討伐できており、そのことを伝えたのであれば、目を丸くしてPCたちが将来大物になると予言します。
「その若さであんな化け物を倒しちまうなんて、あんたらはきっと大物になるな! 今のうちからよろしく頼むぜ」
クレールの最後の言葉の一例です。GMが望むのなら彼にも個性的な設定を付け加えて、好きなセリフを口にさせましょう。
1人当たり
経験点:1000+1ゾロ分+倒した魔物分(ルルブⅠ・P424)
ガメル:1000+剥ぎ取り換金分をパーティーで割った分
名誉点:討伐した敵が所持していた〈剣のかけら〉をルルブⅠ・P344を参照して変換してください。
また、造船業者のクレールと木こりのジャックとの友好関係が築かれます。シナリオを自作することがあれば、彼らの協力を得られるようにしても良いかもしれません。
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