作:伊津なつき
PC4人・平均レベル1~2を想定しています。
適宜PCにあわせてシガラミの数値を調整してください。
もうすぐ文化祭。PCたちは文化祭のステージに参加する。
ある日PCは、同じライブに出演するクラスメイトの七瀬葉月がうかない顔でため息をついている姿を目撃する。
そのため息の理由を、寂しげな表情を晴らすことは出来るのだろうか。
ターゲット七瀬 葉月(ななせはづき)はボーカリストとして、
NPC月島 透(つきしま とおる)の作曲で音楽活動をしていた。ふたりでいれば新しいアイデアが沢山溢れてきた。葉月は透を相棒として大切に思い、尊敬し、そして一番傍にいたいと願っていた。
あるとき、才能を見いだしたプロのミュージシャンによって、透だけがスカウトされる。透は自分たちの作った音楽が認められるなら、と一生懸命楽曲を作るが、うまくいかない。やがて透は自分の殻にこもるようになり、葉月と連絡を絶ってしまう。
葉月は音楽を作り、認められるよりも、透と一緒にいることが楽しかった。透を欠いた葉月の歌は輝きをなくし、やがて、歌そのものをやめようと思うようになる。
このシナリオには、ふたつの側面がある。
NPCふたりの絆を後押しすること。
ひとりでも夢を追い続けるよう応援すること。
用意する曲によって、どちらの面を主役にするかが変わってしまう。GMは、PLの好みややりたい演出に合わせて選曲するとよい。
また、葉月が透を思う描写・透も葉月を想っていたという描写を増やして恋愛色を強めてもいい。葉月と透はシナリオ上女性同士として記載しているが、変更は自由である。好きに設定して欲しい。GMとPLの心に委ねると良いだろう。全体的になんか良い感じにアレンジしてほしい。自由!趣味!!
・七瀬葉月(ななせはづき)
初期絆を取得したPCと同じクラス。
明るく素直でよくしゃべり、多少雑な面がある。
誰とでも仲良くなれるが、透のことを一番の親友だと思っている。エクレアが好き。
透の呼び方は「透ちゃん」
・月島 透(つきしま とおる)
地味でおとなしい、PCたちとは別のクラスの生徒。
まじめで無口、思慮深く、一見葉月とは正反対のように見えるが、葉月とは趣味があい、心を許しているらしい。
スイートポテトが好き。
葉月の呼び方は「葉月さん」
・絆を主題にする場合
★I still…/畠中祐&ランズベリー・アーサー
orion/米津玄師
スターフィッシュ/ELLEGARDEN
・夢、別れを主題にする場合
★ムーンソング/[ALEXANDROS]
三日月/絢香
memorise/MAN WITH A MISSION
※雪が重要なフレーズになるので、舞台を冬にするといい。
(季節は夏~秋の文化祭の時期を想定しているが、春の文化祭、冬の予餞会などに変更しても良い。)
文化祭ライブを控えたPC達。同じライブに出演する、クラスメイトの七瀬葉月(ななせはづき)がうかない顔でため息をついている姿を目撃する。
葉月は軽音部に所属していないが、ボーカルとして二人組のユニットで歌っていることをPCたちは知っている。
ため息の理由を聞いても葉月はなんでもない、煮え切らない返事しか返さない。 やがて葉月は用事があるから、と逃げるように席を立ち去ってしまう。
葉月のことは気になるが、自分たちも文化祭に向けて準備をしなくてはならない。そう、文化祭の準備はなにひとつ進んでいないのだ!
サブシナリオ、シガラミ①を出現させドラマフェイズに移行する。シガラミの出現タイミングは以下の通り。
・シガラミ①が公開される>シガラミ②が出現する。
・シガラミ②が公開されており、サブシナリオをひとつ以上クリアしている>シガラミ③が出現する。
シガラミ②が公開されたとき、マスターシーンを挿入する。
◇マスターシーン「短すぎるメッセージ」
葉月が「あっ」と小さく声をあげる。表情がぱっと明るくなるが、すぐに暗い顔に戻る。葉月に声をかけると「透ちゃんから返信が来たの。でも、1行だけ……」と答える。
内容を聞くか、葉月のスマホをのぞき見るなら「文化祭には間に合うと思う」という1行だけの返信と困り顔の絵文字(´^`)が表示されている。
葉月は練習しなきゃ、と立ち上がり去ってしまう。
シガラミ③が公開されたとき、マスターシーンを挿入する。
◇マスターシーン「あなたは私の半月」
葉月は透との出会いを話す。
「わたしたち、同じ歌が好きだってきっかけで、知り合ったの」
「中学の時、クラスのみんなでカラオケに行って、私が歌った曲を聞いて、透ちゃんが『葉月さんの歌、好きだな』って言ってくれたんだ」 それをきっかけに、二人は仲良くなったという。
「透ちゃんが、もしプロとして活動していくなら応援したいけれど、そのときは私はとなりにいられないんだって思ったらすごく悲しくなってしまった」
「こんな醜い気持ちはいや。でも、透ちゃんを応援したいのも、ひとりじめしたいのも私の本音……」
葉月は透を応援したい。しかし、透のパートナーとして自分を一番のボーカルにしてほしいという気持ちも嘘ではない。葉月は自身の矛盾する感情に戸惑っているように見えた。
文化祭前夜。メンバーは衣装合わせをしながら、当日に向けての決意表明をする。サブシナリオBが終わっていないと、衣装は完成せず制服でライブをすることになる。
それぞれ決意判定を済ませ、ライブに備えよう。
いよいよ文化祭当日。PCたちのステージのあとは、葉月のステージが控えている。客席を見渡しても透の姿は見えない。PCたちの曲が終わるまでに、透は来てくれるだろうか。
DPは120、初心者が多い場合は100、メンバーのレベルが高そうな場合は180とする。残りDPが3~2割程度になったとき、透が会場に到着する描写を入れても良いだろう。
《DPがゼロになった/透との絆をあきらめない場合》
演奏が終わり会場を見回すと、透が最後尾の壁にもたれるようにして拍手を送っていた。肩で息をしている。どうやら走ってきたらしい。
そして透は足早に葉月に駆け寄り、その手をとってこう言った。「葉月さん。待っていてくれてありがとう。私の曲は、やっぱり葉月さんの歌じゃないと完成しないよ」
葉月は泣くように笑い、明るく「そうだね」と答えるとふたりは手を取って舞台に上がる。仲睦まじい双子のように。
「それでは聞いてください。ジェミニムーン、私たちの出会いの歌――」そして、彼女たちも奏でるのだ。ふたりで初めて作った、あの歌を。
《DPがゼロになった/透を応援し送り出す場合》
演奏が終わり会場を見回すと、透が最後尾の壁にもたれるようにして拍手を送っていた。肩で息をしている。どうやら走ってきたらしい。
葉月は透を見つけ駆け寄り、まっすぐに目を見て告げる。
「透ちゃんのこと、応援するから。だから私も頑張る。応援してくれる?」もちろんだよと透は笑い、指切りをする。
葉月は穏やかに微笑むと、ひとりで舞台に上がり、練習していた曲を歌いきる。その歌は力強く、優しかった。
ふたりの小指ははなれてしまうが、これから互いの道を歩き、そして、いつかまた舞台の上でふたたび交わるかもしれない。
《DPがゼロにならなかった場合》
透は文化祭に来なかった。
葉月はひとりで舞台に立ち、別れの歌を歌いきる。少し寂しそうに笑いながら立ち去る後ろ姿には、声をかけても振り向いてくれないだろう。
ほどなくしてPCは透がプロデビューしたことを知る。葉月は、歌うことをやめてしまった。
双子の月は、半分になってしまったのだ。
①葉月のためいき 《自分/主義6》 《不安/エモーション4》
葉月はギターボーカルとして活動しており、曲は月島 透(つきしま とおる)が作っている。
PC達とは違う音楽だが、ふたりは「ジェミニムーン」というユニットとして活躍している。
ふたりはとても仲が良かったが、最近、一緒にいるところを見ない。葉月も透と一緒にいられないことで、元気がないようだが……。
《正体》不協和(P226)
支配力:公開時5 非公開時9
②ジェミニムーン 《歌/モチーフ7》 《実力/逆境7》
透は、作曲の腕を買われプロのミュージシャンにスカウトされている。
葉月は透を応援するために一時活動を休止し、見守ることにした。
しかし、透は葉月の前に姿を見せなくなってしまった。メッセージの返事もなく、学校にも来ない。来たと思えば、授業が終わった途端逃げるように帰ってしまう。評価される音楽をつくり、透が幸せになるなら良いが、いまの透を見ているとそうは感じない。
葉月は透の心配をしている。作品を評価されなくてもいい。
彼女が楽しめているなら、それでよかったのに……。
《正体》プレッシャー(P226)
支配力:公開時6 非公開時10
③月島透 《背中/身体9》 《消す/行動4》
葉月は透のことを大切に思っている。
透の才能を周囲に認めてもらいたい。けれど、自分の一番でいてほしい。だが、透の才能を独占してよいものだろうか。
葉月は葛藤している。透の音楽を歌うのは、自分でありたい。けれど透の重荷になりkたくない。それが彼女の本音だ。
そんな言葉を、透に言うことはできない。だって、透を応援するって決めたはずなのに……。
《正体》独占欲(P226・「伝染」のデータを使い名前を変える)
支配力:公開時8 非公開時12
サブシナリオタイトル:もうすぐ文化祭!
A:ポスターを作ろう
宣伝用のポスターを作る。手書きでも、パソコンで作成しても、はたまた業者に依頼してもかまわない。
A:アレンジを考えよう
曲を自分たちのバンドで演奏するに当たって、担当楽器やメンバーの得意分野にあわせてアレンジしてみよう。
B:ステージ演出を考えよう
せっかくの文化祭。素敵な衣装や楽しい演出で、みんなに楽しんでもらおう!
EX:全体練習!
ここまでクリアできたならあとは地道に練習するだけだ。
各自好きなように演出してもらおう。
シナリオはレベル1~2向けとしているが、初回プレイ時はレベル3でのセッションを行った。レベル3向けのデータ調整は以下の通り。
・①葉月のためいき の正体を「後退(P226)」に変更する。シガラミ名は「オーバーケア」に変更するとそれっぽい。
・②ジェミニムーン の支配力を公開時7、非公開時12に変更する。
・文化祭準備シーン表
ライブの舞台が文化祭となるため、文化祭前の雰囲気を味わえる表を用意した。接近シーン用に以下の表を選んでも良い。
2:生徒会に呼ばれる。ステージ調整の手伝いを頼まれてしまったが、そこには見知った顔が。
3:文化祭では使わないと思って片付けたアレが必要になった。どこにしまったっけ?誰かに聞いてみよう。
4:クラスの友人に呼び止められる。クラスの出し物を手伝わなければ……。
5:校内には、飾り付けが進んでいる教室もある。わくわくする。そう思っている人はあなただけではないようで……。
6:備品が足りない。買い出しにいかなければ。そこで出会ったのは……。
7:廊下でバンドメンバーに会う。文化祭、どうしようか?
8:廊下でターゲットに会う。文化祭、どうするつもりか聞いてみよう。
9:昼休み。いまのうちに足りなかった小道具を購買に買いに行こう。
10:放課後。大道具を作る金槌の音がカンカンと聞こえてくる。
11:玄関ホール。色とりどりのポスターが貼られている。それを眺めているのは……。
12:職員室前。刷り上がったフライヤーを抱えたターゲットに会う。
・夏休みシーン表
こちらは夏休み中の風景を想定したフレーバー的シーン表である。任意で接近シーン・奔走シーン表と組み合わせて使うと描写が膨らむかもしれない。他のシナリオで使っても構わない。
2:学校のプール掃除に呼ばれる。大変だけど頑張ろう。
3:メンバーの家で、流しそうめんをすることに。
4:日差しが強すぎる。図書館で涼もうか?
5:文化祭の準備。クラスの出し物も手伝わないと。
6:近所の神社で夏祭り♪どんな出店があるかな?浴衣を着ていこう!
7:部活の帰り道、アイスを食べながら。
8:道のはずれにヒマワリが咲いている。風鈴の音が涼しげだ。
9:みんなで海水浴!!泳げないのは誰だ……!?
10:夏の風物詩!?すいか割り!
11:山!早起きして虫取りに出かけよう!
12:夏合宿!避暑地で泊まり込み練習しよう
セッション初出:2019/06
シナリオ作成:なつ(@natsu_cs620g)
Ver.1.00 作成
Post Comment