●概要
探索者がバスでA県に移動中、事故に巻き込まれる。気がつくとそこは生贄に溺れた狂気溢れる場所だった。
血に濡れた儀式とはなにか、最後に待ち受けるのはどんな狂気なのか。
探索者は無事に元の世界へ戻れるのだろうか。
プレイ時間:2時間半〜3時間
推奨技能:目星・図書館・生物学
推奨人数2〜4人(男女混合だとより楽しめる)
ロストあり
零シリーズ、濡鴉ノ巫女をイメージした作品になっています。零シリーズが好きな方なら楽しめるシナリオです。
エンディングに鳥籠〜in this cage〜を流してみてはいかがでしょう?
●NPC
□不来方 深玲 (こずかた みれい)
性別:女性 年齢:15歳
・STR7 ・CON7 ・POW10 ・DEX8 ・APP17
・SIZ6 ・INT12 ・EDU11 ・HP10 ・SAN50
・IDE60 ・幸運50 ・知識55
□氷見野 澄子(ひみの すえこ)
性別:女性 年齢:51歳
・STR10 ・CON14 ・POW14 ・DEX9 ・APP9
・SIZ13 ・INT15 ・EDU15 ・HP14 ・SAN70
・IDE75 ・幸運70 ・知識75
波篭伏(はこぶせ)旅館の女将
●導入
探索者はある日バスを用いてA県に行くことになった。そのバスは夜行バスなのか乗客員は今のところ探索者意外いない。バスが次の停留所に着くと一人の少女が乗り込む。やがてバスが再出発すると白い霧に包まれガードレールを突っ切り真っ逆さまに落ちてしまう。
探索者が目を覚ますと石造りの古い密室に閉じ込められる。床は膝下まで水が浸っていた。中央には1つの箱と一体の死体が箱に伏せて置いてある。探索者は動こうにも鉛のように動かず、声を発することすらできない。ポケットなど持ち物を確認してもどこにも見当たらない。すると突然、白髪の女性の霊が現れ探索者に襲いかかる。
●1日目
探索者が悪夢から目覚めると見知らぬ旅館にいた。
悪夢を見たことによりSANC 1 or 1d4
広い客室のようで一人ひとつ布団が用意されている。時計を確認すると夕方6時を回っていた。隣には一緒にいた少女がおり、先に起きていたらしい。
少女の名前は不来方 深玲(こずかた みれい)彼女は健人という恋人がある村に入っていく夢を何度も見ているという。彼女は失踪した健人を追ってバスに乗り込んだ。そこで彼女から一緒に手伝って欲しいと懇願されケータイで健人の写真を見せてくる。
ケータイなどの電子機器は使えず、電話もかからない。外を見ると周りは薄暗く霧が立ち込め、外に出るのは危険な状態。
□旅館の客室(今いる部屋)
小さな机の上にパンフレットが置いてある。
◇パンフレット
ようこそ。波篭伏旅館は19xx年に建てられました。天津山の絶景と当旅館でした。味わえないご馳走をお楽しみください。
もし尋ねたいことがあればロビーへお越しください。
館内マップ
地図
□ロビー
ロビーに行くと女将と思われる人物が話しかけてくる。
「お目覚めになさったのですね。お怪我はありませんか?私の名前は氷見野 澄子と申します。」
と自己紹介をする。更に
「あなた方が旅館付近で倒れていたからここへ運んできたのです。警察に連絡しても繋がらないし霧も立ち込めているから今晩は泊まって行きなさい。」
という。澄子の情報からするとバスと運転手については探索者意外見当たらなかったという。
※KP情報
この場所について聞かれた場合、A県の天津山(あまつやま)山を登った先に波篭伏神社がありそこから湖が見渡せる。元は湖の絶景と神社を観光地としていたが湖での自殺者が後を立たず、湖は立ち入り禁止となり、今では神社の参拝客がここへ訪れている。ということを伝える。
また宿泊部屋は自由に決めてくれて大丈夫。
△探索者は旅館での食事や入浴を済ませ眠りにつく。
するととある夢を見る。村人らしい人が男を連れ去り、縄で縛り付けている。するととある村人が小刀を取り出した。とうとう小刀を首にかけ血が飛び散る。という所で探索者は目覚める。SANC 1 or 1d3
●2日目
深玲が怯えた表情をして起きてくる。話を聞くと健人がとある神社へ行った夢を見たのだという。朝食を取りに大広間へ行くと澄子がまだ電波は通じないけど霧が晴れたから神社に行ってみるといいと教えてくれる。
□波篭伏神社
山を上り1時間弱、鳥居が見えてきた。拝殿に通じる参道があり、参道の両脇に灯篭が並んでいる。
◇灯篭
灯篭(とうろう)には火がついていない。
〈目星〉
全ての灯篭に花の模様が刻まれている。
※KP情報
花の模様は菊。生物学などでわかる。
◇拝殿
拝殿には賽銭箱と鈴がある。拝殿の扉には鍵が閉まっており、開けることが出来ない。
〈目星〉
全体的にちらほらと花の模様(灯篭と同じ)が描かれている。また拝殿の中に鏡が備えられており、その鏡に花の家紋が刻まれている。
※KP情報
鏡の家紋は蓮の花の模様
探索中、拝殿の裏から足音が聞こえてくる。
〈強制聞き耳〉
成功で女性の声が聞こえてくる。
その足音の方へ向かうと澄子が崖際に立っている。探索者が止めようとする間もなく飛び降りてしまう。SANC 1d3 or 1d6
探索者が崖を覗くと湖があるはずだが見えるのは村だった。SANC 0 or 1
澄子が飛び降りた場所に日記帳が落ちていた。
◇日記
A県の天津山を観光地化するために旅館を建て、その旅館を私が経営することになった。建てると言うよりかは昔の屋敷を改装して使うらしい。私は改装する屋敷へ訪れたがとても不気味だ。黒く焦げた跡や小刀が落ちていた。
改装後すぐに経営する予定だったが、改装に携わった人々がたくさん死んでいった。観光地化の計画はすぐに終わってしまった。
あれから私はよく天津山を夢で見かけるようになった。そしてその山に呼ばれている。私は気になって独断で旅館の経営を始めた。それから度々、お客様が来館するが自殺者は後を絶たない。でも私は経営をやめれない。なんだか狂いそうだ。
※KP情報
探索者が神社への飛び降りを目撃したことにより波篭伏から匣伏(はこぶせ)になる。
PLがどこに行けばわからなくなった場合、旅館に戻ることを促してあげる。
△旅館に戻る途中、霧が立ち込めて来た。何とかして探索者が旅館に戻ると前に見たコンクリート作りの旅館ではなく木造構築の屋敷になっていた。その屋敷は古びており半分崩壊しており黒く焦げた跡が目立つ。ふと周りを見渡すと一緒にいた深玲が居なくなっていた。
□古びた屋敷
中は廃れている。受付には古い構造の割に前の旅館にあった電子機器が置いてある。
□スタッフルーム
会議室のような間取ではあるがどう見ても物置小屋に見える。1つの机と4つ椅子、ロッカーがある。
◇机と椅子
机の上には何者かの手記、椅子には106と書かれた鍵があった。
◇何者かの手記
俺もとうとう自殺の名所とされる天津山へ来てしまった。会社はクビになりそれを境に人との縁も切れた。もう俺には夢も希望もない。こんな俺なら死んでもいいだろう。
◇ロッカー
ロッカーの中には従業員の衣装が掛かっている。衣装を漁ると1着の衣装から古い1枚の写真が落ちてくる。その写真には波篭伏神社よりも大きい神社が写っていた。
◇浴場
浴場の前に男女別の更衣室がある。
女性用の更衣室、浴場は特に変化がなく、籠やドライヤーなどが常備してある。
◇男性用更衣室
中は籠やタオルが散乱しており鏡が割れている。
◇男性用浴場
水滴の音が響き渡るほど静寂が広まっている。探索者が歩く度にぴちゃぴちゃと音を立てる。探索者が周りを見渡すと辺り一面真っ赤に広まっており、浴槽には首の無い無数の男性の死体が散らばっていた。SANC 2 or 1d4+1
◇大広間
複数の机と座布団が並んでいる。どうやら大広間は食堂として使われていたらしい。1つの机の上に手記と3枚の写真がある。写真には花の模様が刻まれている小刀と黒い箱、5段構えの雛壇がある。
※KP情報
小刀にある花の模様は蓮(はす)。生物学などで調べられる。また105の部屋の小刀、鏡の模様と同じ。
〈図書館〉
◇民俗学者の手記
私はとある儀式について調べるために天津山へ訪れた。現在ここでは波篭伏村より伝わった雛流しの儀式があるがその儀式よりも前のことを調べている。
しかしこの天津山は観光地化されていると聞いたが廃れている。特にこの場所はおかしい。ここは昔に建てられているはずであるが現代のものがある。どうやらここは次元が歪み昔と現代が混ざっているようだ。私は引き続き湖を調査する。
手記の裏側にはA.Tというイニシャルが書いてある。
◇101〜104の部屋、厨房は開かない。
◇105の客室
〈聞き耳〉
部屋の中からボソボソと男性の声が聞こえるが何を言っているのか分からない。(クリティカルの場合は俺なんてと言っている。)
ドアを開けると1人の男が今まさに自分の首を切り自殺しようとしていた。しかし探索者に気づいたのか小刀を握りしめ探索者に襲いかかる。
[戦闘]
自殺志願の男
・STR12 ・CON7 ・POW11 ・DEX8 ・APP9
・SIZ11 ・INT11 ・EDU14 ・HP9 ・SAN55
・幸運55 ・知識70
小刀→成功率45 1d4
△男を倒すと手に取っていた小刀を落とす。
小刀を調べる、持つ。→POW×5
失敗で殺人の狂気に陥る。
△105の客室に本棚がある。
〈図書館〉
黒く目立つ資料を2冊見つけ出す。
●八勺様、怪談「牡丹灯篭」に関する資料
化物に魅入られた男が、その害を遠ざけるために霊的な結界のはられた場所に閉じ込められる、といったもの。
●雛祭りに関する資料
平安時代には紙で作った人形を川へ流す「流し雛」があり、穢れ祓いの儀式として行われていた。
当時の乳幼児死亡率は現代とは比較にならないほど高く、赤ん坊のうちに亡くなることは珍しくはなかった。親としては必死の思いでこの成長を見守り、形代に厄を肩代わりしてもらい、1年災いを春のひな流しで祓う。これが、ひな祭りの起源である。
◇106号客室(鍵がないと開かない)
中は崩れた瓦礫が積み上がっている。また黒く焦げた押し入れが異臭を放っている。
◇瓦礫
瓦礫をどけると1冊の手記が落ちていた。
◇民俗学者の手記2
この地方では〈はこぶせ村〉という村があった。その村では5年に1度、子供の繁栄を祈るため男性を生贄として捧げられるのだ。
手記の裏側にはA.Tとイニシャルが書かれている。
◇押し入れ
押し入れを開けるとカメラを持った焼死体が出てくる。SANC 0 or 1
カメラは壊れており使い物にならない。また焼死体の横にジッポーライターがあり、そのライターには誰かが掘ったと思われる刻印が刻まれている。
〈目星〉
ライターにはA.Tとイニシャルが刻まれている。SANC 0 or 1
△外に出ると霧が晴れていたが薄暗く不気味な雰囲気を醸し出している。下りの道へ進んでいくと2手に道が別れてあった。
◇右ルート
右に進むと沢山の地蔵が並ぶ奇妙な場所に辿り着く。
〈目星〉
沢山の地蔵を眺めると宝条 蓮、安岡 昭三、守田 栄吉などと男性の名前が書いてあった。すると急に寒気を感じる。振り返ると白髪の女性の霊がこちらを見ている。SANC 1 or 1d6
するとスっと消えていった。これ以上道はなく引き返すしか他にない。
◇左ルート
左に進むと村が見えてくる。村に着く頃には暗くなっている。その村の入口に石碑があり匣伏村と書いてある。
その村には神社があり火のついた灯篭が神社へ向かって列をなしている。
◇灯篭
捜索すると前の神社で見た灯篭と同じだとわかる。
〈目星〉
一つだけ火のついて居ない灯篭がある。
※KP情報
灯す灯さないでエンディングが分岐する。
◇匣伏神社
火をチラつかせた灯篭が本殿の方へ誘っている。本殿の扉は開いているが人の気配はない。本殿の側に木札が建てられており、匣伏神社と書かれている。(写真の神社)
◇本殿
本殿に入ると火の揺らぐ行灯(あんどん)が部屋を照らしている。中には1つの机と雛壇があり、雛壇を挟むように人形が2つ置いてある。(雛壇は写真にあった雛壇である。)
◇机には伝記と思われる書物が置いてある。
〈図書館〉
◇匣伏村の伝記
この匣伏村では子供が産まれず困っていた。そこで幽宮家という一家から1人の女の子が生まれた。その女の子の名は白菊。彼女は白髪として産まれてきたため村から神の子として授かった。
白菊が18の頃、宝条蓮という男と出会い恋に落ちた。恋に落ちてから2年後、結婚を間近にしていたが蓮は不慮の事故亡くなりその後も蓮の後を追って白菊も死んでしまう。。村の住民は蓮の首をきり、箱に入れ白菊を箱の側に寝かせてあげた。そうしてから村は2人を御神体として祀った。
◇人形
1つは男、もう1つは女の人形。女の人形は白無垢の姿をしており、男の人形は黒の羽織袴を着ている。どの人形も幼稚園児サイズの大きさ。
〈目星〉
女の人形は白髪をしている。
◇雛壇
5段構えの雛壇。小さな人形が置いてあるが雛壇と言え男の人形が多い。手に取ってみると男のらしき名前が書かれていた。
〈目星〉
赤い敷物がたれているのに気が付き、調べると地下への入口がある。
◇地下
地下に降りると床が水で膝上まで浸っていた。壁は石造りでひんやりと冷たい。奥に大きな門があり、その傍に祀り場と書かれた木札がある。
◇祀り場
閂を取り中に入ると中央に黒い箱、白髪の死体が箱に伏せてあった。その奥で深玲が「健人...健人...」と泣いていた。探索者が深玲に近づくと白髪の霊が現れる。POW×5→失敗で1d3のHPダメージ
霊は「見たい...見たいの...首を見たいの。」と囁いている。
[戦闘]
特殊ルール
1ターン毎、POW×5→失敗で1d3のHPダメージ。
※KP情報
除霊方法が以下の方法である。
1・男の人形を持ってくる。(2ターン消費、運搬中はダメージ無効)
2・男の人形を小刀で切り取り霊に見せる。(1ターン)
箱の中身は健人の頭であり、それを見せても効果はない。PLが除霊方法がわからなければ霊の囁きを活用しわかるようにしてあげること。
戦闘終了後、深玲に近づくと健人の胴体が目の前に落ちていた。
ここで3分の時間を設けさせる。徐々に床の水が水位を増していく。3分で探索者を飲み込んでしまう。
※KP情報
健人の胴体と頭をくっつけることで復活する。これで灯篭さえ灯していればHAPPY ENDである。
●エンドロール
「BADEND1」
探索者が物語の途中で死んでしまった。
黒く冷たい闇に探索者は溶けていく。魂だけが残り永遠にここで彷徨うのであろう。(ロスト)
「BADEND2」
灯篭をともしてない。
霊に人形の顔を見せると霊は発狂し開いた門から出ていってしまった。探索者は黒い闇に包めれていき、気がついた時にはバスの横で警察に保護されていた。探索者が日常に戻る一方不可解な自殺事件が多数発生。探索者が匣伏村へまた呼ばれるのは時間の問題だろう。(ロスト?)※ご自由にお決め下さい。
「GOODEND」
灯篭を直したが健人は復活していない。
深玲に話しかけても胴体だけとなった健人を見て泣いているだけで話すことはできない。水が溢れ探索者を飲み込んだかと思うとバスの横で警察に保護されていた。近くには深玲もいるため心做しか安心出来る。1d10のSAN値回復。
「HAPPYEND」
灯篭を直し、健人も復活。
健人の胴体と頭をくっつけると不思議な力が働き復活した。すると深玲が健人を抱きつき泣きながらも笑みを浮かべている。やがて白い光に包まれ、気がつくとバスの横で警察に保護されていた。近くには深玲はいないものの探索者の手に握れられた白菊の花を見ると最後に見た深玲の笑みを思い浮かべるのであった。2人はきっとどこかで仲良く過ごしているのだろう。1d10のSAN値回復。
アイテム:枯れない白菊→POW+5
●解説
1・灯篭について
灯篭は八尺様で言うお地蔵さんみたいなもの。
壊れたり欠損していれば怨念は出ていってしまう。また波篭伏神社に灯篭があった理由として、土砂災害で湖となった神社を作り直したため灯篭がある。
2・儀式について
まず匣伏と波篭伏について考える。
匣の字の甲を頭として思い浮かべると想像しやすい。また波篭伏は雛流しを表しており篭に入った雛人形が波で揺れている様子を表している。
3・大量の地蔵について
大量の地蔵は生贄となった人達の供養としてして作られた。
4・白無垢の人形と黒い羽織袴の人形について
蓮と白菊は結婚まじかで死んだために形代として結婚させた。
最後までご覧いただきありがとうございます。質問があればコメントにてお待ちしております。
Comment
シナリオを読ませていただきました。
その上で質問があるのですが、R.Hは現代人ですか?それとも過去の人間ですか?
よろしければ返信お願いいたします。
現代の人です。
返信ありがとうございます。
補足ですかR.Hが宝条蓮と被っていたためA.Tに変えました。
御理解お願いします。
了解しました。
シナリオ拝見させていただきました。
以前のバージョンでは、灯篭に関する詳しい情報が、古い屋敷の中にあったと思うのですが、それは削除してしまったのでしょうか?
もし覚えていらっしゃるのであれば、どのようなものであったか教えてほしいです。
コメントありがとうございます。
ヒントを八尺様の灯篭にさせて頂いております。
灯篭の内容としては1つでも灯してない灯篭があれば封印は溶けるという内容です。
先日、再びこのシナリオで遊んだのでお礼を言いに来ました。素晴らしいシナリオをありがとうございました。
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