【】……使用する技能。【】の次の文章が判定に成功した際得られる情報です。
『』……地の文。読み上げていただくと情景が伝わりやすくなります。
SAN○/●……SANチェックのタイミング。○が成功時、●が失敗時の減少値です。
時は平静初期。探索者たちは幼馴染の「尾長 瑞希」から招待を受け某県某所「火酉村」を訪れる。
昔ながらの風習に囚われるその村で探索者たちは奇妙な体験をする。探索者たちは小学校卒業までその村に住んでいた。
火酉村は大昔にクトゥグアを信仰していた。ニャルラトホテプはンガイの森での一件の意趣返しに火酉村周辺を地球上の拠点とすべく水面下でクトゥグアと争っていた。
邪神同士の争いは拮抗したまま表面化すること無く、いつしかクトゥグア信仰も廃れ、人々は神々の争いなど知らぬまま現代にいたる。
しかし、幼い尾長瑞希が神社で偶然発見した書物により事態は動いた。クトゥグアは瑞希の無意識化に干渉し、自身を召喚させようとした。結果としてクトゥグアの現界は失敗したが、クトゥグアは火酉村での影響力でニャルラトホテプをわずかに上回った。
対してニャルラトホテプは瑞希の母である尾長葵の無意識に干渉し、探索者たちを呼び寄せクトゥグアの存在を否定させて影響力を弱めようとする。
邪神同士の縄張り争いは如何なる結末を迎えるのか……! ……という裏設定がありますが上記の設定は仄めかす程度にしか
本編で分かりません。以下がPLが体験するシナリオの真相となります。
火酉村のある土地には特殊な蛾(御霊蛾)が生息している。
その蛾は体内で油を生成し100年に一度謎の大量発生をするため度々大規模な山火事が発生していた。
昔の人はそれを山に棲む火の神(カグツチ)が荒ぶるからだと考え、巫女を生贄に捧げる儀式を行っていた。
だが、その儀式は時代とともに廃れて伝承のみが現代に伝わっている。
尾長瑞希は偶然生贄の儀式を知ってしまい、自分は生贄となるため成人できないと思い込むがHO4に恋をしてしまう。
村に残る限り自分が生贄になる未来は避けられないと思い駆け落ちを望むが、その申し出はすげなく断られる。
最後の手段として自分の宿命と、18歳の誕生日に迎えに来てくれと書いた手紙をHO4に渡すが、HO4はそれを読まずに村を出てしまう。
誕生日を迎えてHO4が現れないことに絶望した瑞希は村とHO4への復讐を神に願い掘蛾神社の境内で焼身自殺した。
尾長瑞希の自殺から数年、娘を失い狂気に陥った母親が自殺の真相に気付き、探索者たちを殺害するために瑞希を装って手紙を出した。
彼女は探索者たちを殺し、火酉村を焼き払うための計画を立てていたのだ。
しかし葵の計画に関わらず、今年は御霊蛾が異常発生する年だった。夕雅祭の篝火に向かって鉤土山から数億匹の御霊蛾が押し寄せる。
本シナリオで探索者が巻き込まれる怪異は単なる偶然や事故、あるいは人為的なものが重なって起きただけのものとしても解釈できます。
逆に霊魂や神、妖怪などの超常的な存在が引き起こした事件だと解釈することもできます。
一応真相で裏設定を書いていますがどちらの解釈でも正解のシナリオです。
Y県山中にある小村。四方を山脈に囲まれておりY市とは県道で繋がっている。1日数回バスが来る。
周辺の集落から子供たちが通うための小学校はあるが
中学校が無いため小学校卒業後はほとんどの子供たちが村の外の中学校に通うため引っ越したり寮に入ったりする。
死者の魂が蛾となり鉤土山に昇るという迷信がある。年に一度行われる夕雅祭という祭が行われる。
死者の魂は御霊蛾になり鉤土山に昇ると言われている。鉤土山に棲む女神の下で魂は浄化され極楽へ行くとされている。
そのため火酉村では御霊蛾を殺すことを禁忌としている。また、夜中民家に御霊蛾が入ってくると「死者の魂が迷い込んだ」として
家中の明かりを消して御霊蛾が出ていくのを待つという習わしがある。その間、死者が家に居つかないよう声を出さない。
昔は尾長家がイタコをしていたが現在その風習は無い。
鉤土山周辺に生息する蛾。ヤママユガの一種。7~8cmと大きいが、止まっている姿は木の葉そっくりだ。体内で油を生成するため翅に独特のぬめりけがあること、つぶした際に呻き声のような気味の悪い音を出すことが特徴。詳しい生態などは明らかになっていない。
火酉村北部にある標高600m程の低山。古くから霊山として地元民に信仰されている。山頂の掘蛾神社まで登山道が整備されており
慣れた地元民なら2時間足らずで登頂することができる。
毎年10月7日に行われる祭。16時から始まり24時に終わる。民家の軒先と村の辻ごとに松明を掲げてその火を以て
鉤土山に棲む女神を喜ばせるための祭。
鉤土山山頂にある神社。祭神はカグツチノカミ。年老いた宮司が一人で管理していたが改修が間に合わず朽ちかけた神社。
昔は火酉村の子供たちの遊び場になっていたが近年はわざわざ山を登ってまで神社で遊ぶ子供はいない。
探索者たちの幼馴染。民宿の一人娘。村を出てからは疎遠になっていた。
軽度の知的障害を持っており、そのせいで思い込みの激しい性格だが人懐っこく目上の人物から可愛がられるタイプ。
彼女の自殺は生贄になるという思い込みのせいか、恋に敗れたからか、邪神に唆されたか、決めるのはGMとPL。
尾長瑞希の母。火酉村出身。麓の町で生活していたが瑞希を身ごもった状態で夫が失踪し、実家を頼って火酉村に戻ってきた。
両親が経営していた民宿を引き継ぎ、両親の死後も女手一つで瑞希を育てながら民宿を経営し続けていた。
瑞希の死後、瑞希の日記を読み自殺の原因がPCたちと夕雅祭にあると考え、夕雅祭で振舞う料理に毒を混ぜることでPCたちを殺害し、
夕雅祭自体も中止に追い込むために偽の手紙でPCたちを火酉村に呼んだ。
幼いころから憑依体質だったこともあり、瑞希の死後に御霊蛾を食すことで瑞希の魂を自身に憑依させる。
そのため時折瑞希の声色で喋り、瑞希のような振る舞いをする。
彼女が本当に死者の霊を降ろしているのか、あるいは単なる自己暗示か。決めるのはGMとPL。
表の顔は都内の昆虫学者。その正体はニャルラトホテプ。
第一発見者は掘蛾神社の宮司だった。清掃のため掘蛾神社を訪れた際、境内で焼死体を発見した。
身元が分からないほど焼け焦げた死体だったためY県警が検死をして尾長瑞希の死体だと判明した。
山菜取りに出かけた宮司が山道の崖から落ちて死亡した事故。宮司が独り身だったことと現在使われていない古い登山道を
利用していたため発見が遅れた。宮司は何かから逃げていたような痕跡が発見されたため事件としても捜査されたが結局は
野生動物に追われたものだとして処理された。
あなたは12歳の冬まで火酉村で過ごしたが、村での生活はあまり覚えていない。おぼろげな記憶の片隅にあるのは当時仲の良かった
HO2~4と、幼馴染の「尾長 瑞希」の事だけだ。
彼女のためならなんでもできる、少なくとも当時はその決意があった。
あなたは12歳の冬まで火酉村で過ごしたが、村での生活はあまり覚えていない。おぼろげな記憶の片隅にあるのは当時仲の良かった
HO2~4と、幼馴染の「尾長 瑞希」の事だけだ。
※以下相談の内容
・尾長瑞希はHO4に恋心を抱いていたが「自分の役目」によってHO4と恋仲になることはできない。
・どうしたらHO4と結ばれるか。
幼かったあなたはテレビか漫画か、何かで知った「駆け落ち」を勧めた。
あなたは12歳の冬まで火酉村で過ごしたが、村での生活はあまり覚えていない。おぼろげな記憶の片隅にあるのは当時仲の良かった
HO2~4と、幼馴染の「尾長 瑞希」の事だけだ。
尾長瑞希には常に死が付き纏っていた。故にあなたは彼女のことが少し怖かった。
GMに「霊視」を宣言(秘匿でも可)することで対象が死にそうか否かが黒い靄のように見えます
(死にそうな人間や危険なものに黒い靄がまとわりつく)。
「霊視」の初期値はPOW×3。ただし先天的な弱視、あるいは盲目のPCかつ目星の初期値を0にすることでPOW×7を「霊視」の初期値にしても良い。
あなたは12歳の冬まで火酉村で過ごしたが、村での生活はあまり覚えていない。おぼろげな記憶の片隅にあるのは当時仲の良かった
HO2~4と、幼馴染の「尾長 瑞希」の事だけだ。
彼女はあなたが村を出る前日に1通の手紙を渡したが、照れ臭かったあなたはその手紙を読まずに村のどこかに捨てた。
君たちの自宅に1通の手紙が届いた。差出人は「尾長 瑞希」、君たちと共に「火酉村」に暮らしていた言わば幼馴染だ。
手紙には瑞希自身の近況が軽く書かれている他
・来月行われる「夕雅祭」で瑞希が主役を務めるということ。
・当時仲が良かった他のPCにも手紙を送っていること。
が書かれていた。久しぶりの再会に心を躍らせ、君たちは火酉村に向かうための準備を始める。
『タクシーを降りた途端懐かしい記憶が脳内に溢れた。皆で遊んだ小川、恐いおやじの居た商店、クワガタを探して駆けた山道。
どの思い出にも同じ顔触れが揃っている。狭い村でいつも一緒にいた4人の友人。感傷に浸っていると道の向こうから手を振りながら
歩いてくる人物がいる。Tシャツの袖を肩までまくり上げ、首からかけたタオルで汗を拭きながらその人物は「おーい」と一声上げて
もう一度大きく手を振った。最後に見た時から随分背が高くなったが、くりくりとした目や大げさな身振りは変わっていなかった――尾長瑞希だ』
尾長瑞希はHO1との再会を喜び、他の探索者はまだ着いていないことを話す。明日の夕雅祭の準備で忙しいため日中はあまり時間が取れないので
夕飯時に改めて皆に会いに来るという。
・夕雅祭について→今年は自分が主役で巫女の役をするという。また、今年の夕雅祭は村の歴史から見ても大きな節目に当たり
重要であると言うが、よく知らないため詳細は掘蛾神社の資料を読むように言う。
・小学校卒業後について→県外の中学校の学生寮に入ったという。中学卒業後は村に戻って実家の民宿を手伝っていたと言う。
・手紙について→瑞希は怪訝な顔をしてそんな手紙は知らないと言う。ここに来たのは彼女の母親からPCたちが村に来ると教えられたからだという。
しばらく話していると車が到着する。降りてきたのはHO3だった。
『曲がりくねった山道を走ること1時間。親の車に乗っていた時は意識していなかったが、麓の町から随分と距離がある。
木漏れ日の山道を抜け、両脇に水田の広がる開けた道路を進み、ようやく見慣れた場所に来た。村内唯一のバス停だ。
記憶の通りバス停の横に空き地があり車が止められそうだ。車を止め何の気なしに停留所のベンチに目を向けるとそこに座る人物がいる。
随分長く会っていないが、見た途端分かった。HO1だ。【霊視】:シークレットダイスを振る(自動成功)車から降りて
歩み寄るあなたはHO1が何かと話しているのを目撃する。――何か、HO1の傍らに立ち昇る得体のしれない何かはあなたと目が合うと
揺らめきながら薄れ、消えていった』
HO1が尾長瑞希だと認識していたソレはHO3の霊視では真っ黒な炎のようなものに見えた。黒い炎は消えてしまい、HO1の認識としては
HO3の方を向いた一瞬のうちに瑞希がいなくなってしまったように感じる。HO1.SAN0/1 HO3.SAN0/1d3
『あなたたちは麓のバス停で偶然出会い、現在二人で火酉村行のバスに乗っている。車内には君たちの他にもう一人だけ乗っている。
見た目は40代半ばの男性だ。大きなリュックを背負い、登山に挑むような装いと日に焼けた肌からスポーティーな印象を受けるが、
車窓から外を見て手元のノートに忙しなく何かを書きつけるその姿には奇妙な違和感を覚える』
PCが男に話しかけると男は都内の大学からフィールドワークに来た学者「佐藤 昭也」だと名乗る。
・何の研究をしているのか→昆虫学者でありこの地域に生息する固有の蛾について調べに来た。
探索者たちが詳細を聞こうとすると佐藤は突然大きな声を上げ運転手に止まるよう詰め寄る。多少の問答があった末バスは停車し、
佐藤はバスから駆け下りてきた道を戻っていく。探索者たちが追いかけようとする場合はバスから降りると村にたどり着けないであろうと
伝えて制止する。
それからしばらくバスは進み火酉村に到着して停留所でHO1とHO3が話しているところに合流する。
『君たちは停留所で合流し、村唯一の民宿「尾長荘」を訪れる。玄関に掲げられた「尾長荘」の看板も、庭に干されているシーツや
枕カバーも、すりガラスのはまった立て付けの悪い引き戸も記憶のままだ。誰からということもなく尾長荘二階の左端の窓を見上げた。
尾長瑞希の部屋だ。少し色あせてしまっているが昔のまま薄桃色のカーテンが閉じている』
PCが尾長荘に入ると尾長瑞希の母「尾長 葵」が奥から迎えに出てくる。葵はPCたちを歓迎し、2階の部屋に荷物を置いたら食堂に
お茶を用意しているから降りてくるように言う。
・瑞希について聞く→「後で瑞希にも会ってもらおうかね」と言いこの場では詳しく話さない。
・瑞希に会ったという話をする→驚いた顔をするがすぐに優し気な表情で「皆が来て嬉しいのだろう」などと言う。
・他の宿泊者について聞く→東京からもう一人宿泊客が来るはずだがまだ来ていないと言う。
『食堂に全員が揃うと、尾長葵がお盆にお茶を入れて持ってくる。HO1の前に、HO2の前に、HO3、HO4の前に、そして自分の席にカップを置き、
最後に葵の隣、HO4の正面の空席にカップを置いた。その後葵は食堂を出たがすぐに写真立てを持って戻ってきた。セーラー服を着て満面の笑みを浮かべる
瑞希の胸から上が大きく映し出された写真をテーブルに置き葵は話し始めた』
・瑞希は18歳の誕生日の翌日に自殺した。場所は掘蛾神社の境内、ガソリンを頭から被って焼身自殺だった。SAN0/1
・遺書も無く原因は不明。死の数週間前から落ち着きのない様子だったがそれ以外に不審な点は無かった。
PCたちの質問には次のように答える。
・手紙について→知らないと答える。手紙を見るとこれはたしかに瑞希の字だと言い泣き崩れる。
・手紙の内容について→手紙に書かれている「瑞希の近況」はたしかに死の直前までの瑞希の行動と合致している。
しかし、瑞希が務める「祭の主役」については分からないしそんな役割は無いと言う(これはPCの持つ夕雅祭の記憶とも一致する。夕雅祭で巫女が何かの役割を担ったことは無い)。
・今年の夕雅祭について→夕雅祭は毎年行っており、今年は第100回目だと言う。
・もう一人の宿泊客について→東京から来る学者だということくらいしか知らない。
一通り質問が終わると葵が夕飯を運んでくる。佐藤昭也はまだ到着していない。
しばらく会話を楽しんだ後に次のイベントが発生する。
『それは突然起きた。バタバタと羽音を立てながら何か大きなものが食堂の天井を転がりだした。見上げると茶褐色の大きな蛾が天井に何度も
ぶつかりながら不格好に電灯のまわりを飛んでいる。それを見た途端葵が悲鳴のような声で「いかん!」と叫び立ち上がってブレーカーを落とした。
一瞬にして辺りは塗り潰されたような暗闇になり自分の手さえも見えない。「明かりを点けるな、声も出したらいかん」低く唸るような声で葵が言う。
バタバタともがくような羽音と息遣いだけが聞こえる。「鉤土山から御霊蛾が降りてきたわ。ありゃ死んだ人の魂だけぇ、静かにしちょればじき御山に帰る」
重苦しい静寂の中、不意に[PC4]の首筋に何かが触れた。カサカサと乾いた感触は木の枝を思わせるが、妙なぬめり気もある。その何かは
ゆっくりと這うように首筋をなぞる。「来てくれて、嬉しいよ」その声は間違いなく瑞希の声だった。「私、こんなになっちゃったけど、まだいっしょに行けるよ」HO4:SAN1/1D6 他0/1D6
次の瞬間、再び明かりが点く。ブレーカーを上げて尾長葵がこちらを見ている。穏やかに微笑みながら「良かった、瑞希も会いに来たみたいだわ。夕飯は一緒するって言っちょったもんねぇ」と
と言いながらエプロンで手を拭きながら食卓に戻って食事を再開する。いつのまにか蛾はいなくなっている。
イベント後は就寝。瑞希の部屋を葵が見せることは無い。
翌日、朝食が終わると葵は夕雅祭の準備をするために尾長荘を出ていく。探索場所は大きく分けて以下の3つだ。
推奨の処理順番は掘蛾神社→広場→尾長荘の順。
探索を開始するのは15時~。一通り終わるころには祭が始まる時間になるだろう。
『板張りの廊下の冷たい感触も、イグサと生活臭とお香の混じった独特な臭いも全てが懐かしい。記憶の通り2階は5部屋+瑞希の部屋。
1階には食堂と台所、トイレと風呂。それから尾長葵の部屋がある』
【目星】特段変わったところはないが勝手口に金属製の籠に入ったランプが吊るされている。その下には虫の死体が散らばっている。
【知識】それが誘蛾灯という害虫駆除の機械だと分かる。ランプの光に釣られた虫が電流の流れる金網に当たって落ちる仕組みだ。
【聞き耳】どこからか物が腐ったような臭いがする。ある地点で急に臭いが強くなり、視線を落とすと地面から何かがはみ出しているのを発見できる。
『引っこ抜いた雑草を覆いかぶせるようにしてカモフラージュされた地面から強い腐敗臭が漂ってくる。よく見ると無数の蛆が土から
湧いており、あなたの靴の先にも数匹が這い上っている最中だ。これだけでも十分に嫌悪感を覚えるが、さらに不愉快なのは
この裏庭の至る所に同じように何かを埋めたような形跡があるということだ。あなたの耳元を羽虫が掠めて飛んでいくSAN0/1』
地面を掘り返すと腐りかけの猫の死体が出てくる。原形をとどめた比較的新しい猫の死体もある。
【医学or生物学or薬学】猫に外傷は無くおそらくつい最近に毒殺されたものであることが分かる。
仏壇『満面の笑みを浮かべる瑞希の遺影の前に埃は一切積もっておらず大切にされているのがよくわかる』
【目星】仏壇の引き出しの中にカギと茶褐色の小瓶が見つかる。カギはどこかの扉のものだろう。小瓶のラベルには「strychnine」と記載されている。
【薬学or医学】小瓶はストリキニーネ。害虫駆除などにも使われる劇薬で、人体にも極めて有害。強い苦みがある。致死量は子供であれば30mg、大人でも100mgほど。
本棚『様々なジャンルの本が並んでいる。一見小説の類はなさそうだ』
【図書館】本棚にあるのは自らに死者の霊を降ろす降霊術の本と薬学に関する本がほとんどだ。
降霊術は死者の一部または死者を象徴するものをを食すことで魂を取り込むという記述に線が引いてある。
薬学は様々な毒について入念に読み込んだ形跡がある。特にストリキニーネという毒について調べていたようだ。
机の上には日記帳が置かれているなど奇妙な生活感がある』
【アイディア】机の上に文芸誌が開いた状態で置いてあり、ゴミ箱にはお菓子の空き箱やレシート、ティッシュなどが捨ててある。レシートは村の商店の物でつい最近の日付が記載されている。
【図書館】日記は瑞希が小学生のに何か印象的な出来事がある度に書かれていたものだ。以下、日記の内容。
A(瑞希が小学1年生のころ)今日はくつが神社に行きました。神社でたんけんごっこをしていると図書室みたいなところがありました。
こわい本があったのでかえろうとしたら神主さんに見つかっておこられました。神主さんは「わるい子は夕が祭で神さまに
つれていってもらうぞ」と言いました。とてもこわかったのでないてしまいました。家にかえってからランドセルの中に
こわい本が入っていたから明日かえしにいきます。
B(Aの翌日)今日は本をかえしにいきました。おこられるかと思っていたら神主さんはおこりませんでした。
神主さんは本に書いてあることをおしえてくれました。
「かぎ土山には火の神さまがすんでいてむかしはわるいことをたくさんしていたんだよ。むかしの人は神さまがこわかったから
神さまに人をたべさせてわるいことをしないでくださいっておねがいしていたんだよ。だからわるいことをするとかぎ土山から
神さまが来て人をたべちゃうかもしれないよ」と言いました。べんきょうをたくさんするしよるも早くねようと思いました。
C(瑞希が小学校高学年のころ)神社の図書室で昔教えてもらった本を見つけました。夕雅祭のなりたちは鉤土山に住む神様に
生にえをささげるぎ式だと書いてありました。本に書いてあることが本当なら、生にえのじょう件を私は全部もっています。
とてもこわいですが、母に相だんしてめいわくをかけたくありません。もう生にえのぎ式をしてほしくないです。
D(Cから数週間後)今日、(HO3の名前)とけんかしました。さいきんHO3が私をさけているからなぜか聞いたらけんかになりました。
私がシカトしないでよと言ったらHO3は「長生きできないくせに」と言いました。どういう意味か私が聞くとHO3は死ぬ人が分かったり
悪りょうが見えると教えてくれました。私のまわりにはまっ黒な炎のようなものがついていると言われました。
けんかをしたことも悲しかったですが、やっぱり私は生にえになる運命のようです。
E(Dから数日後)今日、帰り道で川に体そうぶくろを落としてしまったのをHO4君が拾ってくれました。すごくうれしかったです。
HO4君はいつもやさしくてかっこよくて頭も良いです。お母さんにお願いして明日のおべんとうは玉子焼きを多めに入れてもらいます。
HO4君にお礼を言って、いっしょにおべんとうを食べたいです。
F(Eから数か月後)今日、HO1君に告白されました。とてもびっくりしました。私はHO4君が好きだったのでごめんなさいと言ってことわりました。HO1君は泣いていました。
私もいつかHO4君に好きと言いますが、びっくりさせないようにしようと思いました。あと、だめでも泣かないようにします。
G(Fからしばらくして)HO4君に告白したいけど、生にえになってしまったら付き合えないのでそのことを考えるととても悲しくなります。
HO2ちゃんに相だんしたらかけ落ちしたら良いと言いました。男子は好きな女子を遠くの町につれて行っていっしょに住むみたいです。
私が「HO4君は私とかけ落ちしてくれるかな?」と言うとHO2ちゃんは「HO4君も瑞希のことが好きだからぜったいだいじょうぶ」だと
こっそり教えてくれました。
H(HO4が村を出る前日)明日HO4君がべつの町に行ってしまうので放課後にかけ落ちしようとお願いしました。でも、HO4君はいやだと言いました。そういうことは大人がするものだと言うので私が大人になったらかけ落ちしてくれるのかときいたらだまっていました。
私のことが好きじゃないのかと聞いたら好きじゃないと言われました。ふられても泣かないつもりだったのにたくさん泣いてしまいました。
でも、今はHO4君の気持ちが少しわかります。HO4君も、私がHO1君に告白されたときみたいにびっくりしてしまったのだと思います。
だから、気持ちを手紙にして明日HO4君にわたします。
以降日記には小学校卒業までの何気ない日常が書かれている。
【聞き耳】閉じた部屋特有の黴臭さも、空気がよどんだ感じもしない。丁寧に清掃されているが生活感がある。。
【人類学or芸術や文化にまつわる技能】部屋の内装は20代前半の女性のセンスであり、室内の雑誌などから流行を追っていることがよくわかる。
瑞希の部屋の探索が終わるとイベント発生。葵が毒瓶を取りに帰ってくる。
『気付けばすっかり日は傾いている。西日で陰影を強調された室内は奇妙な寂しさを持ち、死者の部屋であるという事実まで濃く表しているように見える。
その時だった「ただいまー」と階下から声が聞こえた。その声には聞き覚えがある。間違いなく、瑞希の声だSAN0/1d3』
【聞き耳】に成功すると足音が葵の部屋に入っていくのが分かる。毒瓶があれば瑞希の憑依した葵は玄関で探索者の靴を見つけ、名前を呼びながら上がってくる。
失敗の場合は「ただいまー」以降の物音は聞こえず、瑞希の憑依した葵が突如部屋に入ってくる、あるいは部屋から出た途端待ち伏せていた葵と遭遇することになる。
鉢合わせる場合を除いて葵は【隠れる】でやり過ごすことができる。やり過ごした場合は瑞希の声で独り言を呟きながら歩き回る葵が生きたままの御霊蛾を食す場面も目撃するSAN0/1d3。
鉢合わせた場合は葵との戦闘になるが、隙を見て逃げることもできる(窓から逃げる場合は1d6の落下ダメージを受け戦闘終了)。戦闘で葵を倒すと葵は瑞希の声で探索者への恨み言を叫ぶ。
拘束され警察に連行されるなどした場合はそのまま連れて行かれるが、隙を見て脱出してchapter3―火祭―へ。
『2時間ほどかけて山道を登ると灰色の鳥居と摩耗して表情の分からない狛犬、そして今にも崩れ落ちそうな荒れ果てた神社が姿を現した。
見る限り祭の準備などは行われていないようだ』
『神社の裏手に回ると竹ぼうきを持って煙草を吸っている老人がいた』
老人はこの神社の管理をしている「楠重」だと名乗る。【アイディア】に成功したPCはそれが村の商店を経営している「クスさん」だと思い出す。
この事実を思い出し「クスさん」と呼びかけながら判定する場合【信用】【言いくるめ】【説得】の判定に+20しても良い。
【信用or言いくるめor説得】クスさんは神主が山菜取りの最中に崖から滑落して死んでしまったため去年から神社の管理をしていると教えてくれる。また、調べ物をしたいというと社務所の鍵を開けてくれる。その他聞かれれば知る限りの情報をPCたちに教える。
・尾長瑞希の自殺について→参道の石畳が一部黒く変色している場所を見せ、ここで死体が見つかったと言う。
詳細は『尾長葵の自殺について』参照。
・尾長葵について→瑞希の死後、精神を病んで村の医者にかかっていたが去年頃から「瑞希が帰ってきた」と言い出した。
初めは心配だったが言動はともかく生活がまともになったので今は特に気にしていない。
『宴会に使ったり、祭具を保管したりすることに使われる小屋。最近は使われていない。現在は火酉村の歴史書などをまとめた資料庫となっている』
【図書館】「夕雅祭の成り立ち」「鉤土山伝説」の2冊を見つけることができる。
「夕雅祭の成り立ち」
夕雅祭の起源を語るにはまず鉤土山の歴史を語らねばならない。今でこそ火酉村を始め周辺集落の霊山として親しまれているが
元を辿れば山自体が災害の象徴として忌避されていた事実がある。―中略―最も古い記録は平安時代に遡る。山自体が物の怪であり
人が入山すると突如燃え上がり登山者を焼き殺して喰らうという記述がある。―中略―その後も100年周期で大規模な山火事を起こす
鉤土山を鎮めるため、いつのころからか山の神に人身御供を捧げる祭事が行われ始めた。儀式の最中に山の神を模した篝火に虫が集まることから誘蛾祭」と呼ばれたのが現在の「夕雅祭」の始まりである。
『縛り上げられた女性が大きく燃え上がる篝火の中に投げ込まれる挿絵がある』
生贄は霊媒の血を引く10代の乙女が選ばれたという。
(以降のページは破れておりつい最近セロテープで補修された跡がある)
篝火に生贄を投げ込む風習も、最後に確認されたのは江戸時代の後期である。
当時の村長と神職他数人が逮捕されてこの野蛮な風習は幕を閉じた。現代では近隣集落から人が集まる火酉村最大の娯楽となっている。
※セロテープでの補修の事を聞くと元々破れた本だったが掃除の最中にページを見つけたため張り付けたことを説明する。
「鉤土山伝説」
古くから鉤土山にはクツガミと呼ばれる魔物が棲むと言われている。「屈が身」「屈噛み」など書かれるそれは山中に突如現れる
炎の形をしている。クツガミが現れたら目を伏せ音を立てず、その場に跪きクツガミに見つからないことを祈る他ない。
もし見つかってしまえば生きながらにして焼き殺されるという。身を屈めて果てた焼死体の様子から身を屈める、「屈が身」の字が当てられたのだろう。
一通り調べ終わり、帰路につくとイベント発生。
『あなたたちが1時間ほど歩いたところだ。すでに辺りは薄暗く、遠くから差し込む西日が山の木々を昼間よりも黒々と大きく見せている』
【聞き耳】成功ならイベントが進む。失敗ならまたしばらく歩かせてから聞き耳の判定を行う(最大3回)。
『耳をすませば確かに聞こえた。気のせいではない、あなたたち以外の何かが歩いている。その足音はあなたたちが歩くと歩き出し、止まると止まる。
遊歩道から外れた鬱蒼とした森の奥からこちらを窺いながら歩く気配が伝わってくる。あなたたちがソレを意識した途端、焦げ臭い臭いが漂ってきた。
濃い煤の臭いだ。足音と臭いは徐々に強まってきている。その時脳裏に浮かんだのは森の中に浮かぶ黒々とした炎。静かに燃える陰火が悪意を持って
じりじりとあなたたちに近づいてくる、そんな想像が頭をよぎったSAN0/1。それは単なる想像に過ぎないが、このまま手をこまねいていれば
臭いと足音の主に遭遇してしまうとあなたたちは確信した。そして、その遭遇はきっと取り返しのつかない事態を招くと本能が警鐘を鳴らしている』
探索者たちが進むと来た時には無かった二手に枝分かれした道が5回出現する。右右右左左の順番で進むと無事に村に出てイベント終了。間違える度に
足音と臭いが強まりSANチェックが入る。全部間違えても村にはたどり着く。1回目SAN0/1、2回目SAN0/1d2、3回目以降SAN0/1d3。直前の聞き耳で1度失敗していると道を間違えた時の
SANチェックが0/1d2から始まる。2回聞き耳に失敗していると最初から0/1d3でSANチェックを行わなければならない。
※探索者たちがその場に屈んで祈ろうとした場合は聞き耳1回失敗分のペナルティを与えてから足音の主は探索者たちを既に見つけており、足を止めると捕まるであろうということを伝える。5回の分かれ道が終われば次に進む。
『足音は既に真後ろから聞こえる。むせ返るような焦げの臭いが辺りに充満している。その時目の前に外灯が見えた。電信柱に取り付けられた電灯がやたら頼もしく感じられる。
あなたたちの心に安堵が広がりかけた瞬間、大きな音を立てて何かが藪に飛び込んだ、いや、飛び込んだだけでなくそのままがさがさと音を立てて何かは頭上に駆け上がり
木の枝を伝いあなたたちを追い越そうとしている(探索者に走るかどうかを聞く。走る場合はそのままクスさんと出会い展開A。走らない場合は何かに追い越され展開B)
A:電灯の下に駆け込むと同時にあなたたちは何かにぶつかった。ぶつかられた何かは地面に尻もちをついたまま「何やっとんじゃ!」と大きな声を上げた。その怒声は懐かしいものだ。
クスさんは懐中電灯を振り回しながらぶつかってきたあなたたちに抗議する。彼は自分が下山した後もあなたたちが村に戻っていないので様子を見に来たのだという。
「ここはもう使われとらん古い登山道だ。危ないから塞いどったが、どっから入った」気付けばもう足音は聞こえない。クスさんはあなたたちを怒鳴った後、目を細めて言う。
「お前ら、首んとこどうした」あなたたちは互いの首に目をやる。黒々とした煤のようなものががべったりとついていたSAN0/1d3。
B:頭上の物音は瞬く間にあなたたちを追い越し、そして止まった。あなたたちの目の前、電柱の上に何かが居る。外灯がまぶしく逆光になっていてはっきりとは見えないが、
黒い何かがじっとこちらを見ている。その時、不意に外灯が点滅を始めた。消えて、すぐに点き、しばらくして消えるがまたすぐに点灯する。
明かりが消えた一瞬だけ、その黒い何かの輪郭が鮮明になる。それは痩せた人のように見えた。頭のてっぺんから爪先まで塗り潰したように黒いそれは外灯が消える度に、
まるでコマ送りの映像のようにゆっくりと動いていた。ゆっくりと、見せつけるように逆さ向きで電信柱を下りながら、口を大きく開け、あなたたちはその中に燃える赤い火を見たSAN1/1d6。
「こりゃー!」
突然の怒声にあなたたちは思わずソレから目を離した。その怒声は懐かしいものだ。クスさんが懐中電灯を振り回しながらこちらに歩み寄ってくる。
彼は自分が下山した後もあなたたちが村に戻っていないので様子を見に来たのだという。「ここはもう使われとらん古い登山道だ。危ないから塞いどったが、どっから入った」
気付けば電信柱の上には何もいなくなっていた。クスさんはあなたたちを怒鳴った後、目を細めて言う。「お前ら、首んとこどうした」あなたたちは互いの首に目をやる。黒々とした煤のようなものががべったりとついていたSAN0/1d3。
『多くの村人が集まり祭の準備をしている。広場の中央には2m四方の巨大な祭壇が設営途中だ。忙しそうではあるが村人に話を聞くこともできる』
【目星】丸太で組まれた祭壇は巨大なキャンプファイヤーの井桁のように見える。また、祭のパンフレットが落ちているのを発見する。
「第100回夕雅祭」
16:00 開会の挨拶 与那国 三男 火酉村村長
18:00~ 豚汁炊き出し 尾長 葵 尾長荘
20:00 神楽舞 山間 真由 加賀神社宮司
22:00~ 火分け
23:45 閉会の挨拶 与那国 三男 火酉村村長
【信用or言いくるめor説得】『その人物は驚いた顔であなたの顔をまじまじと見た。そして一言「大きくなったねえ!」』
話しかけた相手は村唯一の診療所で医者をしている「雀野 太郎」だった。雀野は再会を喜び
知り得る全ての情報を隠さず提供する。
・尾長瑞希の死体について→焼死体のため身元の特定が難しかったが最終的に警察が行った検死の結果瑞希本人だと確定した。
・生前の尾長瑞希について→中学卒業後は村に戻って民宿の手伝いをしていた。なぜ戻ってきたかを聞くと「待っている」とだけ答えた。
・尾長葵について→瑞希の死後、二重人格のような症状が見られていたため町の精神科に行くよう進言したが聞き入れられなかった。
現在は少し落ち着いているように見える。尾長家はイタコの家系だった。イタコは死者の霊を降ろすと言われるが、
実際のところ遺伝性の多重人格だと最近の研究では考えられている。
・祭の催しについて→毎年持ち回りで炊き出しを行っている。今年は尾長家の豚汁だ。神楽舞は宮司が死んでから
隣の集落から人を呼んで代わりに行ってもらっている。火分けとは篝火から火を分けてもらい玄関先に飾る行事だ。
・宮司の死について→山菜取りの最中に崖から落ちた。ここだけの話他殺の可能性があったが証拠不十分で事故扱いになっている。
一通りの質問が終わると雀野はHO4について話したいことがあると言う。
HO4について→HO4が村を出る日、彼が乗る車の窓から手紙が飛んできた。思わず拾うとどうやらラブレターのようだ。捨てるに捨てられず取っておいたが、今日HO4が来ることを知って持ってきたという。以下、手紙の内容。
HO4君へ
きのうはとつぜんごめんね。HO4君にどうしてもつたえないといけないことがあります。
わたしは大きくなったら村を守るために生にえにならなければいけません。
わたしの神社の本に書いてありました。私のご先ぞ様はたくさんの人のゆうれいとお話する仕事をしていました。
れいばいと言います。夕が祭では火事がおきる前にれいばいを生にえにして
かぎ土山の神様にわるいことをしないでくださいとおねがいします。
でもわたしは生にえになりたくありません。なぜならHO4君が好きだからです。
HO4君と結こんしたいです。デートもしたいです。なのでHO4君が言ったように待ちます。
HO4君が大人になるまで待ちます。HO4くんがむかえに来てくれるまで待ってます。
ずっとずっと待ってます。ぜったいにむかえに来てください。
HO4から手紙を受け取った後、村人から倉庫から脚立を取ってきてほしいと手伝いを頼まれイベントが始まる。
『倉庫の戸を開けた拍子に舞った埃を窓から差し込む西日が照らした。壁際の棚に農具や工具が無造作に立てかけられており、埃をかぶった箪笥や布の掛けられた鏡台のような家具もある。
どうやらここは使われなくなった民家をそのまま倉庫として利用している場所のようだ。
【目星】探してみるが脚立は無い。あなたたちが他の場所を探そうとすると、倉庫の奥、2階に上る階段から老婆がこちらを見ている。小豆色の着物を着た老婆だ。年齢は分からないが
今まで会った村人たちの中でも随分と年上に見える。老婆はこちらをじっと見ていたがあなたたちを手招きすると両手を使いながら這うように1段1段階段を上り始めた。
あなたたちが2階に上るとそこはきれいに掃除された和室になっている。部屋の四隅に行灯が置かれ、四方の壁全てに障子窓がついた、18畳の広い和室だ。
いつのまにか老婆は和室の中心に敷かれた布団の上に横たわっている。振り返ると上ってきた階段は無く、あなたたちは自分たちがどことも知れない和室の中にいることに気付くSAN0/1d3』
探索者たちの混乱をよそに老婆は布団に横たわったまま話を始める。ここからは探索者と対話。老婆は今までたくさんの人のために霊を降ろしてきたと語る。だが、語れば語るほど
霊たちはこの世への未練を募らせて、やがてあの世に帰るのを渋るようになった。そうして帰りたがらなくなった霊たちは自分の体に少しずつ魂を残していくようになった。
霊の一部が体内に溜まっていくにつれてだんだん自分が自分であることが分からなくなってしまい、イタコの役目を終えた今は狂人として誰にも看取られずに死のうとしている。老婆はそう語ると俄かにえづきだす。
『老婆はそう語ると突然胸に手をやり苦しみだした。もはや体を起こす力も残っていないが、首を左右に振り胸を掻きむしりながら何度もえづいている。その内、天井を仰ぎ
裂けんばかりに開かれた口の端に何かが顔をのぞかせた。それは探るように細い足を何度か動かした後唾液で濡れた全身を振るわせて飛び出した。大きく太った、御霊蛾だ。
苦しそうにあえぐ老婆の口から次々に御霊蛾が這い出て室内を飛び回るSAN1/1d6』
【目星】それぞれの障子窓には北が「山」東が「地」南が「天」西が「海」と書かれている。探索者たちが「山」の障子窓を開けるとイベント終了。それ以外の窓を開けた場合は御霊蛾の大群が流れ込んできてSAN値が1減少する。
『「山」と書かれた障子を開けると黒々とした山が見えた。鉤土山だ、とあなたは直感した。鉤土山の頂上にぼっと赤い火柱が上がった。この距離から見えるということはかなり巨大な炎だ。御霊蛾たちが一斉に窓から飛び出し山頂で燃え盛る炎に向かって飛んで行った。
黒い帯が鉤土山に雪崩込み、燃え盛る火はさらに勢いを増して吹き上がった。
「おい、おい!」
頬を叩かれる感触で目を覚ますと清潔そうな白い天井が目に入った。そしてこちらを覗き込む雀野の心配そうな顔も』
雀野は探索者たちが入った倉庫はシンナー缶が倒れたままになっており、脚立を探している最中に中毒を起こしてしまったのだろうと言って謝る。
毒瓶を葵が持っている場合は毒入りの豚汁を村人に振る舞い殺そうとする。探索者たちに阻止されれば『』の流れに合流する。
持っていない場合は直接『』内の文章から始まる。
『探索者たちが広場に到着すると篝火のまわりに人だかりができていた。ただし、それは祭の賑わいなどではない。自身の首元に包丁を当てた尾長葵が祭壇の上に立っている。轟々と燃える炎に背中を舐められながらも葵は微動だにしない』
止めようとする村人たちの声を無視し、葵は瑞希の声で自分が生贄になり村を救うと宣言する。探索者たちに声を掛けられると罵倒し自身の首を掻き切り火の中に倒れこむ。
※葵は瑞希が生贄になる運命を儚んで自殺したと思い込んでいるためここでの問答の返答はそうなる。
※葵は瑞希の日記を読み瑞希が探索者たちを恨んだまま別れたと思っているため罵倒する。
※葵は瑞希が勘違いのまま死んだと信じたくないため瑞希を自分に降ろして篝火に身を投じることで瑞希の妄想を実現しようとしている。
※葵は瑞希の死の原因が間接的に村にあると考えているため毒入りの豚汁で事件を起こし夕雅祭自体を潰そうとも考えている。
葵が自殺した場合村中が騒然とし、篝火を消して祭を終えようとする。しかしなぜか火が消えず消火に手間取っている間に村人の一人が山を指さして騒ぎ始める。
『初めは山が動いているのだと思った。だがすぐにそれが間違いで、何か黒くて大きなものが山から下りてこちらに向かってきているのだと分かった。だけどそれも一部分が間違っていた。「黒くて大きな物」ではない。
それの先頭集団が突風のような羽音と共に篝火に飛び込んできた。そしてすぐに狂乱し、火達磨になりながら村中に散っていく。
次から次へとなだれ込む億匹の御霊蛾が篝火を通常時の何倍にも燃え上がらせ、億匹の御霊蛾が火の粉をまき散らしながら
火酉村を焼き尽くしていく。驚き叫ぶ村人の口に焼け狂う蛾が飛び込んだ。痛みと苦しさに地面を転がる村人の上に無数の燃える蛾が折り重なり彼はすぐに動かなくなった。
我が子をかばい覆いかぶさった母親の上から無数の蛾が降り注ぎその辺で燃えている何かと見分けがつかなくなった。止まることを知らない炎が村中を昼間のように照らし、焼け落ちる人と村を克明に浮かび上がらせるSAN0/1d6。そしてあなたたちは見た。村を照らしていた祭壇の篝火が天を焦がすほどの大きさとなりこちらに倒れこむのを。
倒れこむその瞬間、まるで巨大な手のような形に変形しあなたたちを押し殺そうとするのをSAN1d3/1d6』
【回避】の判定に失敗した探索者は1D6+1のダメージを受け、さらに【幸運】の判定に失敗した探索者は顔に重度の火傷APP-1d6を負う。
燃え盛る村から脱出する際、HO2は【目星】で判定する。成功すると曲がり角を曲がる瑞希を目撃し、ついていく場合はダメージを受けず進める。
失敗、あるいは瑞希を追わなかった場合全員【回避】で判定し失敗なら火炎によって1d3ダメージを受ける。
続いてHO1は【聞き耳】で判定する。成功すると皆を呼ぶ瑞希の声を聞く。ついていくならダメージを受けない。失敗、あるいは無視した場合は全員【回避】で判定し失敗なら火炎によって1d3ダメージを受ける。
次にHO3は【霊視】で判定する。成功すると影の少ない安全なルートを進めるためダメージを受けない。失敗の場合全員【回避】で判定し失敗なら火炎によって1d3ダメージを受ける。
村の出口まで来たところでHO4は「私も連れて行って」という瑞希の声を聞く。振り返るなら火達磨になった葵がしがみついてきてHO4は1d6のダメージを受けるSAN1d3/1d6。葵との筋力対抗ロールに勝利しない限り1d3のダメージを受け続ける。
振り返らない場合村からの脱出に成功しchapter4―選択―へ。
探索者たちが村から出てしばらく走ったところでイベントが始まる。
『火災の混乱の中、あなたたちは森の中の道なき道を進んでいた。振り返ると遠くで赤々と燃える空が見える。正面を向くと対照的に
黒々とした森が広がっている。月も星も村から立ち上る煙が覆い隠し森は闇に包まれている。
そんな暗夜行路の先に、不意にぼっと炎が浮かび上がった。
赤く燃えるこぶし2つ分の程の火はこの闇夜の中で異様な存在感を醸し出している。
その火を見つめながら、あなたたちはこの村での出来事を思い出していた。
火酉村であなたたちは恐ろしい体験をした。それらの体験に合理的な解を持てるだろうか。
擦り切れそうな精神を繋ぎとめるのは理論か、信仰か。
もしも村で経験した全てが尾長葵の狂気と不幸な偶然、そして勘違いによるものであるなら目の前の火は救助隊か、
あるいは近隣住民のものだろう。声を掛け、助けを乞うべきだ。
もしも村で経験した全てが尾長瑞希の霊魂と鉤土山の怪異、そして神の悪意によるものであるなら目の前の火の正体を知ってしまった時、
あなたたちは正気でいられない。跪き、祈る以外にできることは無い』
探索者たちが眼前の火をどうするかによってエンディングが分岐する。
『あなたたちが声を掛けると火は大きく揺れこちらに近寄ってくる。そして松明の影からぬっと日焼けした顔が現れる。HO2とHO4は見覚えがある。彼は都内から来た昆虫学者の佐藤昭也だ』
昭也はあなたたちの様子に驚きながらも県道まで案内してくれる。どうやら彼はバスから降りてそのままこの周辺でフィールドワークに夢中になっていたようだ。あなたたちの話を聞き、佐藤は御霊蛾が100年周期で異常な大量発生をすること、御霊蛾は体内で特殊な油を生成して翅を雨水から守るため非常に燃えやすいことを話す。
佐藤はあなたたちを県道まで送るとそろそろ消防車や救急車が通るため町へ帰れると言う。
昭也は最後に自分の持っていた松明がクツガミだと思わなかったのかと尋ねる。探索者の答えを聞くと
『佐藤は笑った。何がそんなにおかしいのか、辺りに響き渡る声で大きく、大きく笑った。暗い県道に反響する狂ったような笑い声が次第にあなたたちの背筋を冷やしていく。笑いながら佐藤は手に持っていた松明を落とした。アスファルトの上に火の粉が散り、火が消えた。
暗闇の中に佐藤の笑い声だけが響く。あなたたちは気づく、一向にパトカーのサイレンが聞こえないことに。
県道だというのに1本の外灯すら立っていないことに。佐藤の笑い声があなたたちを取り囲むように周囲から聞こえることに……。
あなたたちは各々の自宅で目を覚ます。日付は尾長瑞希から手紙が届いたあの日だ。
その時、郵便受けからカタンと音がした。覗きに行くと、水道屋のマグネットが投函されていた。
――後日知ったことだが、火酉村も鉤土山も御霊蛾も尾長瑞希も、そんなものは存在しなかった。君たちはY県Y市で生まれ、育ち、
それぞれの事情で今を生きている。山村での奇怪な事件など、何も存在しなかったのだ』
ED―理性―
2D6のSAN値回復。火傷で失ったAPPを含む全ての傷や精神的な後遺症は無かったことになる。
『あなたたちはその場に跪き、祈った。人知の及ばない大いなるものから身を守るとき、人類は太古の昔から同じ格好を取った。目を閉じ指を組み、身を丸めてただひたすらに祈り続ける。どれほどの時間が経っただろうか、乱暴に肩をゆすられ目を開けると視界が白く染まった。そして徐々に目が馴れた。見渡す限り灰色の世界、1本の木すら残っていない焼け野原の真ん中にあなたたちは座り込んでいた。
あなたたちを揺り起こした警官が無線機に早口で何かを報告する。遠くからサイレンが聞こえる。
現状を認識すると急激に景色が遠くに飛び去り体が沈むような感覚に陥る。次に目覚めたのは病院だった。
病院の大部屋で目覚めたあなたたちは事情聴取に来た警察から火酉村とその周辺が山火事で消滅してしまった事を聞く。
原因は祭の篝火が強風で倒れたことだという。
生き残ったのはあなたたちだけで、なぜか掘蛾神社の境内に全員で輪になり座り込んでいたそうだ。
神社も社務所も跡形もなく焼け落ちてしまっていたがあなたたちだけが
無事であるということに警察は不信感を隠さなかったが、すぐにあなたたちの疑いは晴れた。
放火の疑いは晴れたが、警察はあなたたちが何かのカルト宗教の信者である疑いをなかなか捨てなかった。
聞くところによるとあなたたちは全員で輪になり、全く同じ異国の呪文を声を揃えて唱えていたというのだから』
※ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ ぐあ なふるたぐん いあ くとぅぐあ
ED―本能―
1D6のSAN値回復。5%のクトゥルフ神話技能獲得。
坂東眞砂子氏の「死国」、三津田信三氏の「刀城言耶シリーズ」あたりに大きく影響を受けたシナリオです。
プレイヤーの皆様には邪神の喧嘩に巻き込まれてどうしようもない虚無感と無力感を味わってほしいのですが、
瑞希の霊魂が探索者を手助けする描写を強めれば強大な力から愛と友情の力で逃げ遂せるという気持ちの良い
お話にもなります。
楽しんでいただければ幸いです。感想など頂ければとてもとても嬉しいです。
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