決闘と秘密がテーマの、ダークなPvPシナリオです。
ドラクルージュでダブルハンドアウトをやりたくて作りましたがヘレティカノワール発売以前につき追加ルール未対応。かなり人を選ぶシナリオですが、遊んで頂けるようでしたらどうぞ。
夜獣と騎士、そしてもう一人の騎士。決闘とは名ばかり、これは夜獣が堕ちる瞬間からそれを地獄に封じるまでの過程を饗とした、見世物であり、処刑である――
紅い月下の闘技場。ここは、かの"粛清伯"アンドレアス・ルトガー・ヴァルホル・フォン・ヘルズガルドの手により具現せし特殊な領域。
幾多の堕落者の血を吸ったであろうこの闘技場で今宵、捕らえた夜獣と騎士との強制決闘が行われようとしている。
――しかし決闘とは名ばかり、実のところはこれは。
夜獣が堕ちる瞬間から、それを地獄に封じるまでの過程を饗とした宴であり、見世物であり、処刑である。
観客席を埋めるは、粛清伯の支持者たる騎士たちの好奇のまなざし。
哀れ夜獣は鎖に繋がれ、満員の観客からは憎しみと侮蔑ばかりを浴びせられ、月下の闘技場へと引き立てられた。
かくして、血の饗宴が幕を開ける。
PC1の「渇きを1点以上残して終の幕を終了すれば、貴卿は後の幕で堕落してしまう」という状況は、「キャラシートに反映はしていないが"見えない渇き"が既に2点溜まっている状態」とする。
この"見えない渇き"は、潤いで打ち消すことはできない。
この"見えない渇き"に加え本編中で新たな渇き1点を得た場合、従来ルール通りにその場で堕落表を振り、結果に従うこと。
その上で、壁の花にならず終の幕終了まで持ちこたえ、新たな渇き1点以上保持した状態で後の幕を迎えた際には、後の幕において堕落表なしに堕落するものとする。
なお、終の幕-後の幕の幕間での処理は従来ルール通り。
PC1
推奨:夜獣
消えざる絆:粛清伯【仇】
夜獣一掃を唱える粛清伯、その手なるヘルズガルドの騎士らに追われ、ついに貴卿は囚われの身となった。
逃げまどい抗ううち傷ついた貴卿は、もはや渇きに渇き、今や堕落寸前の身。
渇きを1点以上残して後の幕を迎えれば、貴卿は堕落してしまうだろう。
相手問わずルージュ3点以上を得れば、貴卿は【二つ目のハンドアウト】をいつでも自由に公開してもよい。
PC2
推奨:ヘルズガルド 近衛、狩人、遍歴
消えざる絆:粛清伯【主】
粛清伯の忠実な僕である貴卿は、任務にもまた忠実だ。
今宵、貴卿は夜獣の決闘相手として引き立てられた。必ず夜獣を討てとは、伯の命令だ。
相手問わず他者からのルージュ4点以上を得たとき、貴卿は【二つ目のハンドアウト】を公開する。
PC3
推奨:ノスフェラス 近衛、賢者、領主
消えざる絆:PC1か2【任意のルージュ 】
決闘の名をとる以上、見届け役なくして公正とは言えまい。
かくして審判の任を負った騎士こそが貴卿である。
審判権限として、公平を期すために必要と判断すれば、任意の片方への加勢が認められている。
が、無論それも方便で、粛清伯の言外の言いつけはこうだ――万が一にもPC2が打ち漏らすことなきよう騎士を助け、夜獣を必ず追い詰めて、ヘルズガルドの正義執行を完遂させよと。
ノスフェラスの騎士である貴卿がこれを断れば、たちまち貴卿もまた不徳の徒とみなされ、PC1と同じ運命を辿ることとなろう。貴卿に選択権などないのだ。
相手問わずルージュ/ノワール計6点以上を獲得したとき、貴卿は【二つ目のハンドアウト】を公開する。
以下はPLとして遊ぶ予定のあるかたは、閲覧しないてください。
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【PC1の二つ目のハンドアウト】
復讐心こそ貴卿の渇き。貴卿を卑劣な罠で追い詰めたのと同じように、貴卿を叙勲せし主もまた、粛清伯により追われて地獄に封じられたと聞く。一矢でも報いねば。
この決闘に勝てば粛清伯手ずから恩赦を与えられる、その時こそが好機だろう。
この決闘を、堕ちずに勝ち抜かねばならぬ。
【PC2の二つ目のハンドアウト】
粛清伯に忠誠を誓っているものの、咎無き者を先んじて封じる伯のやり方が本当に正義なのか、時折疑問に思う。
そんな真意を押し殺して尖兵を務め続けるうち、貴卿の心には少しずつ、澱のように疲辟が積っている。
そう、実は貴卿こそが堕落寸前の身。
渇き1点以上を残して 後の幕を迎えれば、貴卿は後の幕で堕落する。
この決闘に勝利しPC1を封じられれば主の正義は肯定され、貴卿のすべての渇きは癒され堕落を免れることだろう。
しかし、PC1を討つことに貴卿には未だ躊躇いがある。何故なら――
このHOが公開された時、貴卿はPC1へ消えざる絆【恋】を得る。
【PC3の二つ目のハンドアウト】
名誉を盾に取られ、望まぬ務めに貴卿は逆らえぬ。――しかし本心では、誰にも堕落などしてほしくない。
このHOが公開された時、貴卿は、他のPCが得ているノワールを任意で2点分、打ち消すことができる。
また、このHOが公開された時、 審判の権限として貴卿は、「 終の幕で PC1とPC2双方が渇き0点の状態で2ラウンド以上経過すれば、[引き分け]として戦闘終了を宣言できる」ようになる。
戦の幕
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常の幕1篇
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終の幕
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後幕
2ラウンドまで行う。
PC初期配置: 玉座、宮廷のみ可。
NPC初期配置: 全エリアに「端役/兵士役」を1ずつ(計3)配置。
伴奏: 任意のPC(自分含む)かNPCにノワール1獲得。
PC初期配置: 宮廷、庭園
NPC初期配置: 「端役/反抗役」1を玉座に。「端役/兵士×3」を庭園に配置。
伴奏: 任意のPC(自分含む)かNPCにルージュ1獲得。
PC初期配置: 玉座、宮廷のみ可。
NPC初期配置: 宮廷に「端役/兵士」3、「端役/地獄の鎖」2をPC1と同じエリアに、もう一方のエリアに「端役/反抗役」2
伴奏: 任意のPC(自分含む)かNPCにノワール1獲得。
PC番号を決定し、DRはそれぞれに呼応したハンドアウトと二つ目のハンドアウトを、それぞれ配布する。
「このシナリオの特殊ルール」「決闘のルール」「堕落の条件」を各PLに必ず伝え、よく周知したうえでPC作成に入る。
~~口上~~
紅い月下、円形の闘技場に立つ影は三つ。引き立てられるは哀れ夜獣、その決闘の相手であり処刑者たる騎士、そして審判役を務める今一人の騎士。
観客席は粛清伯の支持者たちが占め、決闘の名をかりたこの処刑へ、一様に好奇の眼を注いでいる。
観客たちは一様にきらびやかな仮面を着けてはいるが、その眼窟の奥から光る双眸はいずれも、夜獣への憎しみと侮蔑に満ちていよう。騎士には惜しみない賛辞や歓声を、夜獣には惜しみない侮蔑を送るもの。
そして、一段高い貴賓席に鎮座するは、かの粛清伯。冷厳たる眼差しで貴卿らを睥睨する。
相対した貴卿らへ、伯の傍らに仕えた従者が一歩出でると、朗々たる声をあげる。
「(PC1)卿、(PC2)卿、そして(PC3)卿。剣を交える前に、何らか互いへ言葉はあるか」
「申したいことがあれば申すがいい。粛清伯の寛大な御心である!」
~~ ~~
DRは以上の口上を読み上げる。各PCにそれぞれ言葉を交わしてもらったところで、「双方、構え!」という従者の声と共に、戦闘が開始される。
戦いは2ラウンドまで進行し、絆奏が終わったところで、従者が制止を宣言する。
そしてDRは以下の口上を挟む。
(粛清卿の台詞はPCの動き次第で適宜アレンジ推奨)
~~口上~~
ぱん、と手を打つ渇いた音。粛清伯の合図で、従者が声高に制止を宣言した。
「手ぬるい」
粛清伯の声は呟くようなものなのに、ほんの一声で水を打ったようにその場が静まり返る。水とすればそれはほんの一滴で凍り付くほどの。
「(PC2)卿。私を失望させることが、貴卿の望みかね? 買い被りだった、などとはゆめ思わせないでくれ給えよ」
ゆるゆると吐息しながら伯は物憂げに蟀谷を叩き、貴卿らを冷然と見渡した。
「(PC3)卿、貴卿もだ。 不徳の騎士に審判役の大儀、名誉にこそ思えどこに厭う由がある? 見込みに違わぬ働きを、貴卿には期待している」
一方、(PC1)卿には声すら掛けず、侮蔑しきった一瞥を向けるのみ。
やがて粛清伯は席を立ち、貴賓室へと歩き去る。鋭い目線ひとつで従者に何事かを命じると、従者は慌てて舞台に向き直った。
「ひととき、幕間の時間とする。疲れを癒し決着に臨めるようにとの、慈悲深き伯の思し召しである!」
従者が宣言を下すと、すっかり舞台の裾で恐れをなしていた兵士達が、夜獣卿に鎖を掛け、裾へ引き立てていく。
騎士らにも兵士たちは向かい、裾へと先導する――と言えば聞こえはいいが、実際は腕を引きこれ見よがしに槍を構えた、威嚇に等しいものだ。
突然の休止に観客はざわめきの声をあげ、舞台から退いて行く貴卿らを見送っていた。
~~ ~~
幕間の処理(229ページ)を行う。
地下控え室で過ごす、PCたちの場面。PC1には看守役の兵士が目を光らせ(端役/兵士)、粛清伯の控える貴賓室に続くドアは護衛(端役/反抗役)が守りを固めて通さない。
当シナリオでは粛清伯が後の幕以外でPCのルージュ/ノワールを増減させることはなく、彼のデータは存在しない。
ゆえに原則的にはこの幕にも登場しないが、PC1との過去の因縁設定やPC2との関係性などによっては、粛清伯との会話を持ちたいと望むPLもいるだろう。その場合は、粛清伯を出演させてドラマに深みを持たせるのも良いだろう。
とはいえあくまでメインはPCたちのやり取りであり、PC同士の関係性やドラマが主に深められるように、あまりNPCに焦点が当たりすぎないようDRは意識すること。
幕間の処理(229ページ)を行う。
再び決闘場へPCたちが引き立てられ、勝敗を決める最後の戦いが始まる。
しかしPC1は鎖の戒めを嵌められ(端役/地獄の鎖)、舞台の裾ではPC1を兵士達(端役/兵士)が槍で追い立てており、この決闘が決して平等ではないことを知らせている。
~~口上~~
紅い月下の闘技場。かくして短い休息を経た騎士らは再び、この舞台上へと引き立てられる。
一度は戸惑いざわめいていた観客たちは今はもう、あの好奇の眼差しを取り戻し、舞台にのぼる夜獣と騎士らに、仮面の奥から爛々と目を輝かせている。
「これより行われるは最後の決戦。時は満ちた。因果を断ち切り、正しい裁きが下される」
粛清伯の隣に陣取った従者が、朗々と声を上げた。
舞台中央には大きな穴が開き、夜獣卿めがけて地獄の鎖どもがうねうねと蠢いている。
貴賓席の粛清伯が優雅に、しかし冷然と掌を打つ。それは、開始を知らせる合図である。
「双方、構え!」
~~ ~~
DRは以上の口上を読み上げ、戦闘が開始される。
勝敗が決まれば地獄の門が開き、堕落した敗者を飲み込むことだろう。
DRは決闘の結末を演出する。
<結末について>
想定されるパターンは「PC1勝利」「PC2勝利」「PC3による引き分け宣言」の3つに大別されるだろう。
いずれにしても、堕落者、地獄に封印される者の出る可能性が高く、時には悲恋への展開もあるだろう。悲劇で終わるPCが存分に輝き、悔いなく最後まで楽しめるよう、DRは敬意と配慮をもった描写で盛り上げられれば望ましい。
また、決闘のルールにおける「2. 勝者には粛清伯より手ずから、恩賞、または恩赦が与えられる」を逆手に取った発想で、敗者の救済を望むPCもいるかもしれない。その際は、最大限PC(PL)の意向を汲み、各自が望む結末をのびのびと演じられるような裁定をDRは心がけること。(粛清伯は当シナリオでは悪役的立場だが、本当に道理のわからない愚かな人物では決してないだろう。ただちょっと冷徹で極端な思想の持ち主なだけで)
また、PCたちが手を取り合い全てを捨てて逃げる道もあるかもしれない。あるいは、悲恋に身を投じもろとも地獄へ心中する選択も。いずれにしても、彼らは喪うものは多くとも、自由と誇りを選び取ったことだけは確かだろう。
PCたちの選択に従い、それぞれの思い思いに演出されたし。
●備考
・逸話†仕える主はただ一人なり†、行い 《 ささやかな夢語り》の使用制限については、進行やバランスを鑑みて各DRが適宜決定すること。全篇で一回までくらいが適当と思われるが、PC作成の時点で取得禁止にしてしまってもいい。
・PL二人で遊ぶ場合は、PC3をNPCと扱いDRが担当する。
●端役の扱いについて
シナリオの展開上、端役は主にPC1を苦しめるために置かれている装置である。が、PCたちのロールプレイによっては、その限りではなく、より物語が盛り上がるようアドリブで動かすこと。