2019年07月10日更新

忌み子が生きていくという事

  • 難易度:★★★|
  • 人数:3人~5人|
  • プレイ時間:8時間以上(テキストセッション)

「ナイトメア」がテーマのシナリオ。生まれながらに穢れを持つ彼らは、ラクシアでどんな偏見や理不尽に晒されるのか。ダークナイトはいかにして闇に堕ちるのか。この世界に生きるあなたのPCは、彼らにどんな言葉をかける?

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SW2.0シナリオ「忌み子が生きていくという事」


トレーラー1
'トレーラー1'
トレーラー2
'トレーラー2'

概要

ナイトメアPCがいる卓向け。ナイトメアの差別問題を扱ったシナリオ。
レベル帯:3〜4向け(総経験点7000点のPCを想定)
PL人数:3〜5人向け(フェローが2人います。どんなフェローでも構いませんが、後述の理由により必ず同行します)
所要時間:オフセ5人で6時間、テキセ4人で8時間
使用ルールブック:SW2.0 基本ルールブックⅠ、Ⅱ
マスタリング難易度:PCに合わせた個別導入を行うため、単発なら高。キャンペーンに挟むなら中。
プレイング難易度:中〜高? 世界観の理解が必要なため、RPは初心者向けではないです。攻略という意味では簡単です。
NPCの性格や行動指針、裏話などは私のブログに詳しく掲載しています。本ページだけでは難しければ参考にどうぞ。↓

あとで名づけるものがたり


あらすじ

蛮族領で生きることを決意したダークナイトの男が、決意を固めるため手近な村を襲った。そこで男は、地下牢に幽閉されていたナイトメアの少年を発見する。激怒した男は大人たちを皆殺しにして、子どもたちを連れ去った。徹底的に破壊された村の惨状を通りがかった行商が発見し、冒険者の店に依頼が出された。


舞台

ザルツ地方ルキスラ帝国を想定していますが、蛮族領が近くにある街(ルーフェリア-ゼルブリス、リオス-ディルフラムなど)ならOKです。


個別導入

単発セッションの場合、キャラメイクのときに次の質問をPLにしてください。

「あなたのPCは『ナイトメア』に対して、どのような立場を取りますか?」

GMは、その回答に合わせた個別導入を行ってください(個別導入の組み方については後述します)。
キャンペーンに挟む場合は、「今回はナイトメアのお話なんだ」とPLに感じてもらえれば個別導入はOKです。
個別導入のあと、冒険者の店に行くよう促してください。


トレーラー3(参考までに)
'画像'


共通導入

概要:依頼を受けます

 PCらは、『雷雨に遊ぶ鳥亭』略して雷鳥亭で昼食をとっているところです。雷鳥亭は冒険者の店らしく珍しい食材を扱った料理で、一般人にもそこそこ人気のある定食屋です。名物は「サンダーバードのゆで卵」「ビリビリぼんじり」「シビレ鳥丼」など。
PCらが初対面なら、「あなたたち冒険者?よかったらうちに登録しない?」「あらーちょうどいいわぁーパーティ成立ね♪」などと言わせてパーティを組ませましょう。

 PCたちが歓談しているところに、

「すみません!ここは冒険者の店ですよね!」

と言って、商人風の若い男が息を切らして飛び込んできます。

「私は行商ですが、さきほど通った得意先の村がめちゃくちゃにされていました。おそらく蛮族の襲撃にあったのでしょう」
「まだ息のある方もいたので、襲撃にあった直後だと思われます。とにかく死屍累々でした」
「村人は、蛮族たちに子供がさらわれた、と言っていました。ですが私一人ではどうすることもできず….とにかく急いでここへ来ました」
「場所はルインの村、南の街道沿いです。早馬ならば2時間程度でしょう」

店主は雰囲気が一変、

「話はわかりました。よくここまで伝えに来てくださいました、貴方の勇気を称えます。その件、冒険者ギルドからの依頼として扱いましょう」

仕事人の目になり、あなたたちにこう言います。

「皆、話は聞いてたわね」
「依頼主は冒険者ギルドルキスラ支部『雷雨に遊ぶ鳥亭』。あなたたちを勇敢なる冒険者と見込み、緊急に依頼します。」
「依頼内容は、ルイン村の状況と生存者の確認。これは最低限です。」
「そこから先は現場の判断で動いてね。可能であれば、拐われた子供たちの生存確認あるいは奪還。蛮族まで討伐してくれれば言うことはないわ。そのぶん報酬は増額するけど、決して無茶はしないように」
「馬はライダーギルドからすぐに手配します。いまのうちに購入するものなどあれば急いで整えて。(道中でゴーレムを作るPCがいるなら、馬車で移動しながら作ることができます)」
「ルイン村であれば、ここに地図と、戸籍表の写しがあるわ。役立てて。」
「代表者に通話のピアスを貸し出します。1日1回、最大10分間まで私と通話ができます。これを用いた報告を以って依頼完遂あるいは撤退の最終判断とし、生存者がいた場合には追加で迎えの馬車を向かわせます。」
「依頼内容に関して、私への質問は?」

(状況の詳細については商人が答えます)

Q:蛮族の詳細は?
「剣を2つ持ったもの(ボガードソーズマン)が2体と、それより一回り大きく盾と剣を持ったもの(ボガードトルーパー)が1体、飛んでいて魔法を使う紫色の小鬼(ディープグレムリン)が1体」

話を聞いた時点では<魔物知識判定>に−2の補正がつきます。この時点で失敗していても、補正なしの値で成功していれば、実際に敵と相対したときに知名度/弱点が見抜けることとします。

このとき、GMは「魔晶石、救命草、魔香草、ヒーリングポーション、アウェイクポーション」などをパーティの実力に応じた量支給してもいいでしょう。

街の門の前でフェローと合流させてください。(このフェローはGMが好きに設定して構いません。当ページに掲載のフェローはサンプルです)


ルイン村での探索

概要:馬を走らせて2時間でルイン村へ到着します。ルイン村は酷い有様で、奥のジェラルディン邸はもっと酷いことになっています。
GMは以下の描写をしてください。


『ルイン村入口』

描写:あなたたちを乗せた駿馬はルイン村へ到着する。
村の入り口には大人たちが折り重なるようにして倒れていて、みな死んでいる。
ここから逃げようとしたところを蛮族に塞がれ、斬られて殺されたようだ。

先には民家と、地図によれば奥には村の最有力者『ジェラルディン家』の屋敷がある。

<探索判定>
達成値9〜  蛮族の足跡は村を出て続いている。子どもたちの足跡も一緒だ。隠す気はなく、追跡は難しくなさそうだ。(蛮族に対するのちの<足跡追跡判定>に+2)

達成値15〜 蛮族、子どもたちの足跡のほかに、商人の情報にはなかった足跡が2対ある。ひとつはふかく沈み込んでいて、金属鎧だろう。もうひとつはなんとも言い難い、「もにょっ」とした感じだ。
(「もにょっ」という足跡にも<魔物知識判定>を試みることができますが、ゴーレムは術者によって大きさや形に違いがあるため突き止めるのはかなり難しいです。このタイミングで行う場合、−4の補正がかかります。補正なしの値で成功していれば、相対した時に知名度/弱点はわかります)


『ルイン村 民家』

概要:攻略に必要な情報は特にありません。凄惨な現場を描写したり、PCの持ち物に不安があれば置いといてあげましょう

描写(あくまで参考にどうぞ!):
民家のひとつに足を踏み入れると、そこは凄惨な現場が広がっていた。倒れ伏し、血で床を濡らす女性の遺体。タンスの戸棚を覆い隠すようにうずくまる男性の遺体。そこに押し込めていたであろう子供の姿は、残念ながら見当たらない。
結局あなたたちがわかったのは、「この村の子どもは拐われたようで、村内には生存者も蛮族もいない」ということだった。未探索のジェラルディン邸を除いては。


『ジェラルディン家 屋敷前』

概要:ここには磔にされたジェラルディン夫妻の遺体があります。クラウスを幽閉していたことに激怒したノワールが殺しました。

描写:村一番の有力者、ジェラルディン家の屋敷。
戸籍表によれば、ここに住んでいるのはジェラルディン夫妻、6歳の一人娘「アナ」、メイドのルーンフォーク「ジーナ」だ。

まず一番に目に飛び込んでくるのは、廃木材で拵えた十字架に磔にされた中年の男女の遺体。殴られ続けたのち、最後は杭に貫かれたのだろう。蛮族のやり方とは違うように思える。犯人の激しい怒りが感じられる。遺体を磔にしている杭は、庭の杭を引き抜いたものだろう。

屋敷の奥からも、血の匂いがする。

<探索判定>
達成値7〜 
・金属鎧の足跡と、「もにょっ」としたなんとも言い難い足跡(フラービィゴーレム)がある(初発見だった場合、魔物知識判定可能)
足跡は追跡判定をせずとも、「一度屋敷内に入り、ここで夫妻を痛めつけてから村の外へ出た」ことがわかる。


『ジェラルディン家 邸内』

概要:ここにはメイドの「ジーナ」がいます。PCに隠し子クラウスのことを伝えて絶命します。

屋敷内は他の家屋のように目立って荒らされた様子はないが、ところどころで家具や絨毯などが引き裂かれている。
廊下の奥、血だまりの中にメイドが倒れている。(戸籍表からして、ジェラルディン家のメイドのルーンフォーク、「ジーナ」)だと思われる。


ジーナ

概要:ルーンフォークのメイド「ジーナ」が、死の間際にナイトメアの隠し子「クラウス」のことを伝えます

 血溜まりは大きく、魔法によって傷を塞いだとしても失血死は免れません。
もし、白髪やナイトメアのPCがいた場合、「ぼっ...ちゃん...?」と見間違えさせてもいいでしょう。

ジーナとはあまり会話ができません。言いたいことだけ言って死んでしまいます。

セリフは以下を参考にしてください:
「冒険者様...。よかっ...た。これで、坊ちゃんのことを託せます...」
(傷を治そうとする場合)「もう、無理、です....それよりも、わたしが今伝えなければ」

「ぼっちゃんを、クラウス様を、あいつの手から救って」
「クラウス様は、この家の隠し子です」
「ナイトメアであるために、地下室で...幽閉、されておりました」
「ご主人様も奥様も、クラウス様のことは誰にも見せないよう、乳飲み児の頃からお世話は全て私がしてまいりました」
「お嬢様が生まれて以降は、全く気にかけず」
「....きっと、クラウス様は、ご家族や、何もできなかった私を恨んでおられると思います」
「黒い甲冑のナイトメア、あいつに連れられて、クラウス様は行ってしまわれました」
「あいつは言っていました。『絶望しかない人族の社会より、実力主義の蛮族領へ連れていってやる』」
「『心配はいらない。強くなるまでは俺が守ってやる』と。」
「何がぼっちゃまにとっての幸せか、私が決めていいことではありません。ですが少なくとも、この屋敷でご家族が亡くなるまで暮らすことが良いとは、決して言えません」
「ご家族や私がしていたことが、決して許されることでないことはわかっています」
「けれど、あいつが、あいつがクラウス様を幸せにできるとは、どうしても思えません」
「ここではなく、蛮族領でもなく、どこか別の場所に。ぼっちゃんがいられる場所があるはず」
「どうか、坊ちゃんを。クラウス様を、救ってください」

そう言うと、ジーナはゆっくりと目を閉じ、動かなくなった。
(ジーナはルーンフォークであるため、街へ連れて行けば蘇生は可能です。しかし今ジーナを街まで連れて帰るならば、犯行グループの追跡は不可能となります)


追跡①

概要:蛮族を追って、山林の中の洞窟にたどり着きます。PCが洞窟の前に立つと少女が出てきますがこれは<ディスガイズ>で化けた蛮族です。真偽判定に失敗すると不意打ちされます。

描写:
あなたたちは蛮族を追って山林へ入り、洞窟にたどり着いた。中は真っ暗なようだ。あなたたちは今、中からは気づかれない角度に立っているので内部の様子はよくわからない。

<隠密判定>
目標値:11(ディープグレムリンの魔物レベル4+2d平均値7)
・全員が成功したなら、真偽判定に失敗しても、全員が先制判定に−2で参加可能
・<暗視>を持ったキャラクターが隠密判定に成功した場合、真っ暗闇ででこぼこな洞窟の中を軽い足取りで駆けてくる少女の姿が見える(のちの真偽判定に+4)。

あなたたちが洞窟の前に立つと、中からひとりの、育ちの良さそうな少女(見た目はジェラルディン家の6歳の一人娘「アナ」)が駆けてくる。露出した手足は傷だらけで、息を切らしおびえた様子で立ち止まる。
「はぁ、はぁ、冒険者....?」

PCがそうだと答えると、安心した様子で近くに寄ってきます。
GMはPCの能力値を参照し、代理でクローズドの真偽判定を振ってください。

<真偽判定>
達成値11以上〜 その言葉遣いやしぐさは、普通の幼い少女だとするには違和感をおぼえる。蛮族が化けている!
10以下 何も気付くことはない

少女はあなたたちの懐にもぐりこむと、下品で汚ならしい声でげらげら笑い出した。
気付くとあなたたちは、蛮族に取り囲まれている!

真偽判定に成功していたPC+フェローのみが、先制判定に参加できます。
この先制判定に負けた場合、「不意打ち」が成立します。PCは強制的に後攻となり、先攻の蛮族ターンの間あらゆる行為判定にー2がつきます。


戦闘①

敵データは2.0ルールブックⅡを参照してください(2.0ルールブックがない場合、能力値がこれに近い蛮族に置き換えてもかまいません。ただし「見た目を変化させる類の能力」が使える者がいなくてはなりません)。

ボガードソーズマン×2
ボガードトルーパー(剣のかけら×2)×1
ディープグレムリン×1

ディープグレムリンは後衛に居続け、味方が全て倒れたら降伏します。倒してしまっても、グレムリンが生命抵抗判定に成功すれば尋問をすることができます。

「ひぃっ!命だけはおたすけ.....」
「おいらはよぉ、命令されて動いてただけなんだ!」
「なんでも喋るから、命だけは見逃してくれよぉ!」

Q:子どもたちはどこにいる?
「ガキどもならこの洞窟の中だぁ....」
Q:なぜ子どもたちをさらった?「しらねぇよ!人族野郎がそう言ったからだよ!!」
Q:ナイトメアの子がいないか?
「いーや、ナイトメア?のガキだけは別だ。そいつだけは、人族野郎と一緒に別の入り口へ向かった。林道に秘密の抜け道があるんだよ(詳細な道順を教えてくれる)」
「ちなみにこっちの洞窟は行き止まり。しょぼい牢屋があるだけだぜ」
Q:どんな計画だったんだ?これから何を企んでいる?
「計画的な襲撃だったかって?ちげぇよ!単に蛮族領にいくついでに襲ったら人族野郎と似てるガキがいたってだけだよ!」

尋問が終わったらPCはグレムリンを始末すると思いますが、最後に
「そうだ、人族野郎は日没と同時に出発するって言ってたなぁ?あと1時間てとこだな、間に合うか?ヒヒッ!」
と言わせましょう。


救出

概要:洞窟奥の牢屋に子供達が閉じ込められています。クラウスの妹「アナ」が、「兄を助けてほしい」とお願いしてきます。フェローは、子供達を連れ帰るためにここで離脱します。

洞窟はあまり長くなく、すぐに最奧の簡素な檻にたどり着きます。檻には、外から触れると作動する魔法の罠が仕掛けられています。
この魔法の罠を解除するための目標値は16です。解除に失敗すると、檻の前にいる者は全員「威力0+10の雷属性魔法ダメージ」を受けます。(これは一見冒険者への罠のようですが、蛮族が子どもたちに手を出した時のためにノワールが仕掛けておいたものです。しかし、GMはこのタイミングでそのことを明かしてはなりません)
ただし、PCに魔法感知や魔法解除(ディスペル・マジックやワードブレイクなど)系の技術をもつものがいなければこの罠は省略して構いません。

檻は武器で攻撃すれば簡単に破壊できます。ここには、ルイン村の子どもたち数名が閉じ込められています。子ども達は真っ暗闇の中、これから自分たちはどんな目に遭うのかと悪い想像ばかりをして怯えています。PCが優しい言葉をかけてやれば落ち着きを取り戻し、話に応じてくれます。
子どもたちには「両親が蛮族に殺されてしまった」とか、「蛮族が親に化けてからかってきた」とか適当に言わせましょう。

 その中で、ディープグレムリンが化けていた育ちの良さそうな少女「アナ」だけは、PCがやってきても押し黙っています。
PCが声をかけたり、あるいは子どもの一人に「助けが来たから出よう」と話しかけられると、アナは

「わたしは....行けない。だって、おにいちゃんはまだ、たすかってない」

と答えます。
その先はPCが話をつないでくれるはずなので、
「おにいちゃんはわたしとジーナさんにはやさしいよ」
「パパとママはツノがあるからダメっていうけど、ツノがあってもおにいちゃんはやさしいもん」
「あのわるいひとから、おにいちゃんをたすけて。ぜったいだよ!」
などと言わせましょう。
(アナの役割は、「クラウスはもう敵側についているかもしれない」と考えているPCに「やっぱりクラウスを助けたい!」と思わせることです。「クラウスはいい子」だと一生懸命伝えさせましょう)

PCは「クラウスを助けに行かなくちゃ!」と言ってくれると思います。そのタイミングで、フェローに
「子どもたちは私たちが命に代えても無事に送り届けます。クラウス君の救出は皆さんにお任せします」
と申し出させましょう。

このイベントでかかる経過時間は、どんなに短くてもどんなに早くても20分です。


追跡②

概要:クラウスとノワールがいる洞窟にたどり着きます。足跡追跡判定の成否で、薬草類を使用できる回数が増減します

<足跡追跡判定>
目標値13〜 成功で10分、失敗で30分を要して、秘密の洞窟を発見できる。ディープグレムリンに抜け道を聞いていた場合、達成値に+4の補正がつく。

木々で巧妙に隠されており、見張りはいない。洞窟内はたいまつで光源が確保されていることが外からでもわかる。

実はこの洞窟は蛮族領へ繋がる長いトンネルです。上向きのわずかな傾斜があり、通風も確保されているので水責めや放火は効果がありません。PCがそのような提案をした場合には、GMはやんわりと却下してください。
トンネルはリルドラケンがすれ違えるほどの高さと幅があります。1分ほど歩いたところで左に脇道があります。

脇道へ進むと小部屋があり、そこに「クラウス」が、まっすぐ進むと広間があり、中央にダークナイトの「ノワール」がいます。


クラウス

概要:条件によって説得できるかできないかが決まります

脇道へ進んでいくと、ほどなくして小部屋と呼べるような空間があります。クラウスは冷たい床に腰を下ろし、床に置いたランタンの炎をただ見つめています。
クラウスは白金の長髪をサイドテール風に下ろした美少年です。額の左上あたりに小ぶりな角があります。細く儚げな印象ですが、話をしてみると歳の割には大人びた印象を受けます。

PCが「助けに来た、ここから出よう」などと話しかけるなら、クラウスはアナとジーナの安否を尋ねてきます。

クラウス:
「待って、妹は無事?それと、屋敷に、ジーナっていうメイドがいたはず...なんだけど」
PC:
「アナは保護された、ジーナは助けられなかった」
クラウス:
「そう...。アナをよろしく頼むよ」
「...あのさ、もし屋敷がめちゃくちゃにされてなかったら、お金はたくさんあるから、悪いんだけどジーナを蘇生させてくれないかな?」
「そして、僕は行ったと伝えてほしい」
「黒鎧の男...ノワールに、『絶望しかない人族社会を捨て、実力主義の蛮族社会に行こう』と誘われているんだ」

PCはおそらく、クラウスを説得しにかかるでしょう。クラウスはこう言います。

「僕は、両親や村の人がむごたらしく殺されるのをこの目で見た。だのに、何も感じなかった。いや、むしろスッキリしたね。あぁ、僕を苦しめていた奴らはいなくなった。これで自由になれるんだ、ってね」
「僕はもう身も心も蛮族みたいなもんだ。ジーナは別の主人に仕えたほうが幸せだろう」
「せめて...こうなる前にもっと色々見られたらと思うけど、もう遅いんだよ。自分の正体に気付いてしまった」

クラウスを説得できるかどうかの基準は、RPの中に
・ジーナとアナの気持ちを無視してはいけない
・君は蛮族なんかじゃない(大切な人たちに向ける優しい心をちゃんと持っている)
という内容が含まれているかどうかです。この基準は、両方満たしていなければなりません。

PCが「ふーん、そうなんだ。じゃあ好きにすればいいじゃん?俺たちは別に止めないぜ?」
という反応なら当然ノワールにつきます。

「蛮族領は危険だ」という方向の説得では、
ノワールと対峙したときに「悪いけど、こっちにいるよりは魅力的なんだ」と言って、敵側に歩いていきます。

基準が片方しか満たされていない場合には、ノワールと対峙したときに、
「やっぱり、僕は人じゃない。アナや、ジーナの隣にいてはいけないんだ」と言って、やはり敵側に歩いていきます。

PCがその場でクラウスを殺そうとするなら『ノワール』を乱入させましょう。


ノワール

概要:ラスボスです。PCが挑まなければ戦闘は回避できます。

「クラウスよ、ほだされたか」などと言いながら登場させましょう。
PCがクラウスを殺そうとしているなら、「そいつに手を出すな」といったかんじでしょうか

ノワールは黒い甲冑を纏い大剣を携えた魔法戦士です。常に異貌化しており、その目には怒りと孤独をたたえています。また、フラービィゴーレムを一体連れています。

PCらに対しては、「俺はこの先にある蛮族領に行き、くだらない差別のない実力主義の中で生きる。邪魔をするならば、殺す。」と言います。ノワール的には面倒なので、積極的に戦いを挑んではきません。

PCとは様々な掛け合いが考えられますが、彼とは絶対に和解できません。
彼は蛮族領で生きる決意を固めるためだけに蛮族を力で従わせ村を襲い、怒りに任せて大量虐殺という大罪を犯しています。もう引き返せないところまで来てしまっており、それを自覚していながら、後悔するつもりもありません。
ノワールを倒すべき絶対悪として演出するなら、戦闘前には彼の過去をあまり語らない方がいいと思います。

PCはノワールと戦ってもいいですし、見逃しても構いません。見張りの蛮族を倒し、子どもたちを保護した時点で依頼の条件は達成しています。ノワールのことを黙っていても、冒険者ギルドにバレることはありません。PCの倫理観にお任せします。

PCがだいたい言いたいことを言ったら、
「クラウス、お前がどうしようと俺は構わない。自分の生き方は自分で決めろ」と言います。

PCがクラウスを説得できていた場合、
「僕の答えは決まってる...」と言って、ノワールに「エネルギー・ボルト」を行使します。
クラウスの<行使判定>2d+6と、ノワールの<精神抵抗判定>2d+9を処理してください。

クラウス「ノワール!僕の大切な人を殺したお前を!絶対に許さない!!」
ノワール「...いいだろう。だが、俺のようにはなるな」

と言って戦闘開始です。

説得できていなかった場合、前述のセリフを言ってクラウスは敵陣NPCとなります。


戦闘②

ノワール(魔物知識は弱点まで自動成功)
フラービィゴーレム(柘榴石の活力(小)を使用)

クラウスは敵味方いずれの場合でも、MPの続く限り「エネルギー・ボルト」を行使します。HP20 MP27、生命抵抗力4、精神抵抗力5、知力ボーナス4、ソーサラー2、生命抵抗力4、精神抵抗力5、装備品なし《ターゲッティング》を習得しています。

ノワールを倒したなら、
「なんとくだらない人生だった...」
「いや、俺は既に....人であることをやめたのだったな…..」
と言って絶命します。その場のノリによってノワールの過去を話させてあげてもいいでしょう。その場合、ノワールは最期、大剣を自らに突き刺し剣に炎を纏わせて炎上、死亡します。

見逃すなら、
「本当にいいんだな?二度と人族には関わりたくないが、互いに自由の効かない身だ。再び顔を合わせることがない事を願う。」
と言ってトンネルの闇の中へ消えていきます。
数分後フラービィゴーレムがトンネルから出てきて、PCたちの前で「魔化された肉」に戻り、中に入っていた「柘榴石の活力(小)」を取得できます。

 子どもたちを連れて山を下り、通話のピアスで報告をすれば2時間後にライダーギルドが迎えに来て、子どもたちを保護します。そのまま街へ帰還し、依頼完遂です。

RP次第ですが、エピローグの参考です。

「ノワールやあなた達の言うことを聞いていて思ったけど、僕は相当狭い見識でものを見ていたらしい」
「ジーナのことも…そばにいるのが当たり前すぎて、彼女の気持ちに寄り添って考えたことなどなかった」
「ルーンフォークだから、決めた相手には仕えるそういうものだからって、そう思い込んでいた」
「はは、本当に情けない!種族の差をこれほど憎んでいたのに、結局はそれを認めてしまっていたのか」
「僕は自分の目で確かめてみようと思う。ノワールのようにならないように。ノワールがそう望んだように。そして、大切な人たちのそばに連れ戻してくれて、ありがとう」


報酬

総計一人2200G
(内訳)
村の状況確認...200G
子供達を救出...400G
蛮族を討伐...800G
ノワールを討伐...600G
クラウスを救出...200G


経験点

総計1770点
(内訳)
依頼達成(村の状況を確認)...500点
依頼達成(子供達の救出)...250点
依頼達成(蛮族の討伐)...250点
PC判断により生まれたエンド分岐の処理
ノワールの討伐...250点
クラウスを説得・救出...250点

合計1500点

戦闘による経験点
ボガードソーズマン(レベル4)×2...80点
ボガードトルーパー(レベル5)...50点
ディープグレムリン(レベル4)...40点
フラービィゴーレム(レベル4)...40点
ノワール(レベル6)...60点
計270点


剣のかけら

総計5
(内訳)
ボガードトルーパー ×2
ノワール ×3 


個別導入の作り方

 本シナリオをプレイしてくださるのは、おそらくRP重視卓の方だと思います。うまくいくセッションは、導入の時点で自分のキャラに移入でき、ワクワクできるものです。言い方を変えれば、導入が雑だとRPの興が乗るのに時間がかかってしまいます。依頼を受注する前のPCらの日常パート、プロローグがとにかく大事です。

 架空世界の差別問題を扱う本シナリオでは、PLに「差別のあるラクシア世界」を体験させてやる必要があります。でないと考える材料がなく、クラウスやノアールを前にPLが黙り込んでしまうかもしれません。

導入時にいくつかの視点を提示してあげましょう。視点は、「忌避」「平等」「当事者」「利用」「無知・無関心」など、いろいろ考えられます。

 例えば街中ではナイトメアPCを見かけて顔をしかめる一般市民がいる一方で、スラム街の空き地に開かれる青空教室では、様々な種族の子ども達が額を寄せ合い、自分の名前を書こうと悪戦苦闘しているかもしれません。
 ナイトメアPCが出自に悩んでいるなら、街の図書館で穢れを取り除く方法を探しているシーンから始めてもいいでしょう。レベル13の神聖魔法「リーンカーネーション」を用いれば、7日以内にラクシアのどこかで赤ん坊として生まれ変わる事ができ、高確率でナイトメア以外の種族になれるでしょうが、果たしてそれはPCの望むところでしょうか。(ちなみにウィザーズトゥームには「パジャリガー・スラッシュ」という、ナイトメアの穢れすら簡単に取り除く事ができる魔剣が掲載されていますが、これの存在を示唆してしまうと議論の余地がなくなる可能性が高いので出さないほうがいいです)
 ナイトメアは冒険者の素養が高いとはいえ、みなが冒険者を目指そうとは思わないでしょう。差別に晒されやすい一般的な職業につけるのはよほど運がいいか、差別などとものともしないような高い職業的技術や手腕を持つ者に限られるでしょう。そうでない者たちの社会的立場につけ込んで後ろ暗い仕事をさせる輩はいるでしょうし、不老という特徴を生かし娼婦(夫)となる者もいるかもしれません。
 恵まれた家庭に生まれた者は、そもそも差別問題に触れる機会のないまま大人になるかもしれません。「人はそれぞれ違っているのに、なぜ種族で一括りに扱うのか。ナイトメアを憎む人々と、自分たち以外の人族を嫌う・恐る・恨むナイトメアは、本質的に同じではないか」などと語るPCの友人を出してもいいかもしれません。尊重されるべき視点だと思いますが、クラウスやノアールが受けた仕打ちを聞いてなお、同じ意見を持ち続けられるでしょうか。

 個別導入は、単発セッションの場合とキャンペーンに挟む場合とで作り方が異なります。
キャンペーンに挟む場合は、PCを上記のようなキャラクターに接触させたり、見かけさせたりするだけで十分です。「今回のシナリオはこういうテーマなんだな」とPLが予想してくれれば導入は成功といえるでしょう。
 単発セッションの場合はすこし難しいです。「ナイトメアに対してどんな立場をとりますか」の答えからそのキャラクター像を想像して個別導入を考えます。
 基本は、ナイトメアに寛容なPCに対しては「ナイトメアが理不尽な差別に晒される現実」を見せつけてゆさぶる、ナイトメアに否定的なPCに対しては「なぜそう思うようになったのか」を理由づけする出来事を作ってあげることです。
ナイトメアPCに対してはどのようにしても大丈夫だと思います。希望を持たせるような始まりにしてもいいし、思わずノワールに同情してしまうような辛い目に遭ってもらってもRPのネタになります。
悩みがちなのはナイトメアに対してあまり関心がないキャラクターですが、こういった立ち位置のキャラクターはナイトメア差別問題を俯瞰したかんじで捉えている動きが予想できます。ですので、こちらも「差別を見せつける」でも「希望を持たせる」でもどちらでも構わないと思います。

 また、PCのうちの誰かは「過去に冒険者時代のノワールに助けられていた」という導入にするとクライマックスが非常に盛り上がるかもしれません。

一例として、私のキャンペーン卓での個別導入を載せておきます(はっちゃけてたり特殊な舞台設定があったりであまり参考にならないと思いますが...)。
単発セッションの個別導入の参考例は、私のブログ
あとで名づけるものがたり(忌子が生きていくという事(2019/05/26 twitterオンセ卓)
をご覧ください。


○「打ち倒した蛮族の剥製を展示しようとしているあなたのところに、いかにも悪徳成金ゲス商人みたいな男がやってきて『その話乗らせてくれ!』と言ってきます。男は、
『ナイトメアの娼館も併設しよう。やつら穢れちゃいるが見た目は人族とほとんど変わらねぇし、男女とも顔にハズレはねぇときてる。蛮族の剥製なんて悪趣味なモンを見にくる奴らなら、ついでに金と劣情もぶちまけてくれるだろうよ。冒険者になって命を危険に晒す以外の道をやつらに作ってやるんだ。素晴らしい慈善事業だろ?』と続けてきます」

○「あなたは知り合いのスラム出身のNPCに頼まれて、ガキンチョたちに読み書きを教えているところです。彼らは目を輝かせ、あなたの話を熱心に聞いています。その輪から少し離れたところで、最近スラム街に仲間入りした7歳くらいのナイトメアの少年が羨ましそうに見ています。あなたにつられてドワーフの少年が彼に気付き、『そんなとこで何してんだ?こっち来いよ!あ、もしかしてツノのこと気にしてんのか?ばっかやろー!オレなんかまだがきんちょなのにこーんな立派なヒゲがあるんだぜ!』『お前のツノけっこう手触り良さそうだな!触ってもいいか!?』などと言いながらナイトメアの少年を輪の中に引きずりこんでいます」

○「あなたは図書館で、穢れを取り除く方法を探しているナイトメアに出会います(別卓の私のPC。今回はフェローとして参加)。あなたたちは、高位の神聖魔法の中に生まれ変わりの奇跡を見つけます。どうやら一度死亡する必要があるようですが、魔法がかかればあなたの魂は新たな赤ん坊に宿るようです。しかしそれを見た彼女は『やっぱ私らは、生まれてきちゃいけなかったってことなんだろうね』と呟きます。


追記(読まなくてもいいです)

うちの卓のナイトメアPCの人間嫌いがどうしても治らないので、あえて人間嫌いガチ勢の敵キャラをぶつけて「ノアールと自分はどう違うのか?」と線引きをしてもらいつつ、他のPCもナイトメアPCを理解するきっかけを作ってみようとしたシナリオです。
PL達はみな真剣に考え、十人十色の意見を出してくれました。GMは中の人とPCで意見が違ったりして葛藤するさまを見ることができました。
うちのPC達の印象的なセリフを抜粋します。

わたしは最近まで差別というものを知らなかった。だから、あなたを見ていてわからないこと、不思議なことがある。あなたの角や肌を見て決めつけ忌み嫌った人たちと、差別された経験からひとくくりに人間を嫌うあなたと、一体なにが違うの?(人間)

旅の途中で出会った人達の中には、ご飯をくれる人もいたし、こっちを見もせずに去っていくこともあったよ。だから種族関係なくいい人も悪い人もいるんじゃないかな?(グラスランナー)

ノワールとともに蛮族の国へ行くか、それともエリザ(ナイトメアPC)のリルドラケンの村へ行くか。全てはクラウス、キミの自由だ。だから見ていてくれ、ここでのオレたちとノアールの戦いを。キミならどちらの心と一緒に行くのか。(ルーンフォーク)

思い浮かべて。あなたにとっての大切な人。それが思い浮かぶのなら、あなたはその人といたほうがいいわ。

私も人里に出て差別された経験があるから気持ちはわかる。でも、だからといって殺すのは蛮族となんら変わりないわ。人族としてのあなたは、あの村で死んでいる。同族のよしみで見逃す代わりに、二度と人族に関わらないで。(ナイトメア)

お金くれるんなら蛮族領へだってついていきますぜダンナ!(シャドウ)

ジーナ(picrew「レトロ風メイドメーカー」byプラチナ氏にて作成)
'ジーナ'
クラウス(illust:picrew「泥ん子」by泥氏にて作成)
'クラウス'
ノワール(illust:たかはる)
'ノワール'
フェロー1
'フェロー1'
フェロー2
'フェロー2'
ノワール_エネミーデータ
'ノワール_エネミーデータ'


バッドエンド?について

 あまりないと思いますが、「ルイン村到着後ジェラルディン家を調べずに即蛮族を追跡した場合」には、その間にジーナは死んでしまい、蛮族を倒したあとアナはクラウスのことを語らず(冒険者たちもナイトメアを差別する大人なのではと警戒しているため)、ノワールのところに行ってはじめてクラウスと対面します。当然、説得材料が足りないのでクラウスはノワール側につきます。「ルイン村の状況確認が第一」って店主も言ってたのに無視して行動した結果です。
 PCがそのように行動しようとした場合、「奥には有力者の屋敷があるんだけど...」「依頼の最低条件はルイン村の状況確認なんですけど...」とぶっちゃけましょう。
 村の探索はフェロー組に任せようなどと言い出した場合(フェローのそういう使い方はできないとルルブにも書いてあるんですけど)、「通話の相手は鳥亭店主なのでPC組との情報共有はできませんよ」などなど言ってなんとしても屋敷に行ってもらいましょう。

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ソードワールドとクトゥルフのシナリオを時々自作します。 感想や、「こここうしたらもっとうまく回せたよ!」などあればお気軽に教えてください!飛びあがって喜びます。 ニコニコでクトゥルフ動画も投稿しています。https://www.nicovideo.jp/watch/sm31500873 twitterID→numachipachi blog:「あとで名づけるものがたり」

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