2019年05月11日更新

おとぎばなし

  • 難易度:★★|
  • 人数:3人~6人|
  • プレイ時間:2~3時間(ボイスセッション)

ルルブも持ってないセッション数回回しただけの時期に書いた吸血鬼シナリオです。
今読み返してみると相当ガバガバ。笑ってやってください。
Evernoteでも公開中です。そっちのほうが見やすいかもです。
https://www.evernote.com/l/AH-DnMgmVxxF4Zi161Ow_7sMlytVY9YLbyE/

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ストック

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=シナリオ概要=
 シナリオの舞台は日本、現代の初夏頃。クローズドサークル。
 本シナリオは謎の解明が大きなウエイトを占めているが、その謎そのものは非常に単純なものであり、KPがいかにその周辺の環境を整えるかによってエンディングの達成感が変わってくる。サスペンス風に味付けするかホラー風に味付けするかはKP次第である。いずれにせよこのシナリオがクトゥルフ神話TRPGである以上、容疑者の底知れなさを演出すべきではある。情報を過剰気味に与え、PLに取捨選択させる形がベターだろう。

=あらすじ=
 ある日探索者は、知り合いの大学生・神崎梢に彼女の兄が一人で住んでいるという孤島「巡音島」への同行を頼まれる。一人暮らししている兄の身を案じてのことだったが、少々気味の悪い伝説が存在しているということもあり、一人で島に行くのは心もとないという理由からだった。その話を聞いた梢の友人である鳴海あんじゅも共に行くことになり、探索者達は強行軍とばかりに翌日には巡音島へと向かう。
 しかし巡音島は梢の話以上に何もない島であり、存在するのは荒れた畑と森とほんの少しの民家、そして大きな洋館のみだった。探索者達は梢の兄であり館の主でもある神崎渉によって決して豪勢とは言えないが温かみのあるもてなしを受け、それぞれ与えられた個室で眠りにつく。しかしその夜、あんじゅがベッドに首から大量の血を流しながら倒れているのが発見される。
 奇しくもそれは、前日に渉によって語られた吸血鬼伝説と酷似した状況であった。

=探索者の作成=
 探偵の探索者がいると導入がスムーズになる。ただし、NPCの一人である神崎梢とある程度年齢が近い探索者がいるならばそれで代用できる。推奨技能は〈目星〉〈他の言語(ドイツ語)〉。
 戦闘は多くないが、必ず強敵との戦闘となるので戦闘技能を取っておくに越したことはない。少なくとも、一人は戦闘をこなせる探索者がいたほうが良い。

=シナリオ背景(KP向け)=
 巡音島にはかつて少なくない数の人間が住んでおり、エリスという神々しい容姿の少女が守り神として祀られていた。エリスは外からの流れ者であり吸血鬼でもある自分はそのような高尚な存在ではないと何度も島民達に訴えていたが、やがて彼らの安寧の元となれるのならばと守り神としての役割を享受するようになった。外からの来客はほとんどないが、温和な村人たちは恵まれた土地で自給自足し、エリスとも助け合い、平和な日常を送っていた。
 そんなある日、学徒のような格好をした青年が島を訪れた。久方ぶりの来客に村人達は総出で彼を歓迎し、夜を通して宴会が行われた。流れ者の神職者、葛葉ソウマと名乗るその青年はそのまま島に住むようになったが、エリスへの信仰には懐疑的な態度を見せていた。そして一年ほどが経ち、ソウマもすっかり島に馴染んだ頃、村長が大量の血を流して倒れているのが発見される。翌日、村長は干からびて死亡。ソウマはこれを吸血鬼であるエリスの仕業だと糾弾し、状況的にもそうとしか考えられないことから村人たちもエリスが犯人であると断定、彼女を地下深くの牢獄へと幽閉する。そうして、島に再び平和が戻ったかに見えた。しかし、次の晩その次の晩と、犠牲者は次々と増えていく。彼らは村長と違い、死体すら発見されない。一ヶ月後、生き残ったのは青年とわずかな村人のみ。そう、村長殺しの犯人は青年だったのである。青年は神職などではなく悪魔使いであり、彼は永遠の生命を欲し、星の精を従えて夜な夜な村人で人体実験を行っていたのだ。エリスを幽閉したのは強大な力を持つ吸血鬼である彼女が邪魔だったからである(彼女がいないにも関わらず犠牲者が増えるという状態にすることで恐怖感を煽る目的もあった)。
 やがてエリスは地下から脱出し、諸悪の根源であるソウマを殺害する。しかし、その現場を目撃され、かえって疑惑を強めてしまったエリスは再び地下牢獄へと幽閉される。ソウマは不完全ながらも研究の末に不死を身につけており、醜い姿と成り果てながらも地下へと潜伏する。
 そうして巡音島には、真実が捻じ曲げられたまま吸血鬼伝説が語り継がれるようになった。

=シナリオ背景(PL向け)=
 巡音島にはかつて少なくない数の人間が住んでおり、エリスという神々しい容姿の少女が守り神として祀られていた。彼女は吸血鬼であったが、穏和で慈悲深い人柄から村人に慕われていた。村人たちは恵まれた土地で自給自足し、エリスとも助け合い、平和な日常を送っていた。
 そんなある日、学徒のような格好をした青年が島を訪れた。久方ぶりの来客に村人達は総出で彼を歓迎し、夜を通して宴会が行われた。流れ者の神職者と名乗るその青年はそのまま島に住むようになった。そして一年ほどが経ち、青年もすっかり島に馴染んだ頃、村長が大量の血を流して倒れているのが発見される。しかし、翌日には村長の姿は消えてしまっていた。青年はこれを吸血鬼であるエリスの仕業だと糾弾し、彼女を地下深くの牢獄へと幽閉する。青年は神職者ではなく、悪魔祓いだったのである。しかし、次の晩その次の晩と、犠牲者は次々と増えていく。彼らは村長と違い、死体すら発見されない。エリスの呪いは続いていたのだ。青年も手を尽くしたが、ついに彼も地下から脱出したエリスに襲われてしまい、二度と村人たちの前に姿を見せることはなかった。
 その後、エリスは再び地下牢獄へと封印され島に平和が戻るが、今でも地下からは悪魔の怨嗟が響き渡るという。

=登場NPC=
▼神崎渉(男性/42歳)
 かんざき わたる。
 巡音島の洋館「藤堂館」に住む男性。シナリオでの役割は「島に伝わる伝説の語り手」「共犯者」。
 日本の大企業・神崎グループの社長の次男。独身。数年前までは自身も系列企業の社長を務めていたが、部下が起こした不祥事の責任を取る形で辞任。元々俗世に縛られることを嫌っており、少し早いセカンドライフのつもりで巡音島に移り住んだ。人と接するのは嫌いではなく、たまに島を訪れる客人との交流を生き甲斐としている。とはいえ用事でどうしても島の外に出なければいけないことはあり、そういった意味では未だ俗世に縛られている。不器用な性格で、感情があまり表に出ないがその誠実さから人望はある。家族とはそれほど仲は悪くないが良くもない(大切には思っている)。昔は料理人になるのが夢でイタリアに留学していたこともあり、そういった経緯からトマト料理が得意。また、学生時代からコーヒーに凝っていて自らのブレンドを知り合いの喫茶店に置いてもらっていたりする。
 エリスの存在には気付いており、度々血を吸われていることも知っていたが巡音島における"家族"として共存していた。
 グッドエンドの場合、エリスを改めて受け入れ親子として二人で巡音島に住み続ける。バッドエンドでは葛葉ソウマによってあっさりと殺害されてしまう。

▼神崎梢(女性/20歳)
 かんざき こずえ。
 神崎家の末妹。シナリオでの役割は「依頼人」「同行者」「サブヒロイン」。
 いわゆるお嬢様だがそれを鼻にかけることはなく、人見知りしない快活な性格から大学でも友達が多い。勉強は得意だが運動は苦手、しかし体力はある。子供向けアニメが好きで、怖いものが嫌い。免許は持っていないがボートの運転ができる。
 可憐な容姿やその親しみやすさから非常にモテるが、本人は実の兄である渉に好意を寄せている。恋心を自覚したのは高校に上がった辺りで、その頃には渉は社会にあまり関わらなくなっていたのでこれ幸いとかなり積極的にアプローチをかけている。まだ若いが神崎家の人間らしく芯は強く、渉が自分を受け入れてくれるならば自分も俗世間を捨てる覚悟を持っている。ただ、島に伝わる吸血鬼伝説もあり、たまに思い出したように綺麗になる館のことは少々気味悪がっている。
 シナリオでは探索者に巡音島への同行を依頼してくる。エリスの存在を知ってからは彼女を化け物扱いし、その後の関係はエンディングによって分岐する。
 グッドエンドでは今までと変わらず、しかし懸念が消えたことから積極的に島を訪れるようになり、和解したエリスとも姉妹のような関係を築く。バッドエンドでは葛葉ソウマによって殺害され、文字通り帰らぬ人となる。

▼鳴海あんじゅ(女性/20歳)
 なるみ あんじゅ。
 梢の親友。シナリオでの役割は「被害者」「キーパーソン」。
 いわゆるゆるふわ系の容姿をしており、少し気の抜けた喋り方をする。幼少期から霊感が強く、本人もオカルト話が好きで、今回ついてきたのはそうした部分も大きい。実は強い魔力を持っており、それが霊感として現れている。しかし、結果的には今回の事件の被害者となってしまう。一命は取り留めるが強い魔力を持つがゆえに呪いを受けてしまい、概ね24時間以内に解呪しなければそのまま死亡する運命にある。持ち前のマイペースさから暗い状況にあっても探索者や怖いものが苦手な梢を励ますムードメーカーの役割を果たすが、本心では自らのせいで探索者たちを事件に巻き込んでしまったことに苦悩している。本人は知らないが島の人間の血を引いており、そもそも強い魔力を持つことや吸血鬼伝説を知っているのもそれが理由である。
 オカルト好きであることから吸血鬼に関する情報を彼女から提示させても良い。また、彼女と探索者を交流させ親しみ、あるいは好意を持たせれば、探索者にとっては事件解決の動機となるだろう。
 バッドエンドでは呪いで死亡。ただし、強い魔力を秘めた肉体は葛葉ソウマによって利用される。

▼エリス・ハーウェル(女性/外見年齢16歳)
 かつて巡音島で守り神として奉られていた吸血鬼。シナリオでの役割は「表ボス」「伝説の吸血鬼」「メインヒロイン」。
 少々素直ではないところもあるが非常に穏やかな性格で、仲間を大切にする。人間に害意はない。寂しがり屋。基本的に登場する際は中学~高校生程度の可憐な少女の姿だが、実年齢は約500歳といったところ(封印されていた時期もあるので正確には覚えていないようだ)。魔眼の力によって見た者に恐怖を植え付けることができる。博識だが、クトゥルフ神話の知識はない。
 長い年月を経て封印の力が弱まったことで地下から脱出するが島がほとんど壊滅していたため、自身が昔住んでいた藤堂館に隠れ住んでいる。血を吸うのは嫌いだが生きるためにこっそり渉の血を吸っており、時折恩返しとして館の清掃や片付けをしている(なお当然のように渉にはバレている)。また、長年血を吸い続けてきたことにより渉に変身することができるようになっており、彼が不在の際に誰かが島を訪れた場合は代わりに客人をもてなしている。なお、そうした場合は少量だけ客人から血を吸うこともある。過去の巡音島では主に親友だった鳴海すみれから血を吸っていたが、村としても週に一度処女の血を捧げていたため血には困っていなかった(吸血衝動は誤魔化せないこともなかったため、そうした習慣自体は申し訳なく感じると同時にありがた迷惑だったらしい)。
 今回の事件では、血を吸ったあんじゅが呪いを受けてしまったことで己の過失と考え(葛葉ソウマが生きているとは思っていなかったためである)、自身の存在を隠匿することと渉の名誉を守ることも含め、証拠の隠滅を目的として暗躍する。また、渉が疑われた場合は彼を守るために探索者に全力の抵抗をすることとなる(いずれにせよ多少動揺していおり、状況判断能力を欠いている)。彼女と邂逅した際、探索者の行動によってはシナリオ終了時まで彼女を同行者とすることができる。
 グッドエンドではソウマとの過去から続く因縁に決着をつけ、渉と親子のような関係を築き、梢とも和解して神崎家の一員として受け入れられる。バッドエンドでは探索者に殺害、あるいはソウマによって滅ぼされる。

▼葛葉ソウマ(男性/?歳)
 くずのは そうま。創魔。
 かつて悪魔祓いとして島を訪れ、島民を虐殺した魔術師。というか悪魔使い。シナリオでの役割は「真ボス」「悪魔使い」。
 自らの研究によって得た成果で醜くなりながらも生きながらえており、地下を拠点にしている。完全な復活のために暗躍し、生気に満ちた人間達、特に強い魔力を秘めた鳴海あんじゅが島を訪れたことを好機として活動を始めた。復活のみならず、エリスを利用し、その上で彼女への復讐を遂げるつもりでもいる。永遠の命を最終的な目的としているようだ。なお「葛葉」は偽名。過去に渉、梢の祖先と出会っている(100年前、巡音島を訪れる前)。
 シナリオでは、エリスがあんじゅから血を吸った後にあんじゅの血を尽く星の精に吸わせるつもりだったが、梢に気づかれたため離脱。エリスに罪を押し付けるための行動だったが、気付かれたにせよあまり問題はなかった。あんじゅの吸血に失敗しても肉体を使えばいいだけであり、成功すれば少なくともエリスへの復讐は果たされるためだ。その後はエリスと探索者たちの対立を期待するが、探索者が彼女との和解に成功していれば実力行使に訴えてくる。
 ソウマ自身は大した戦闘力は持たないが星の精を使役しており、戦闘に関してはそちらにほとんど依存している。自己陶酔しやすいタイプで、目的や真意も割とぺらぺら喋ってくれる。エリスのことは皮肉たっぷりに「お姫様」と呼ぶ。
 グッドエンドでは探索者に滅ぼされる。バッドエンドではあんじゅの身体を利用し復活、100年前よりも強い力を得て外の世界へと解き放たれる。

=用語=
▼巡音島
 めぐりねしま。
 現在は渉しか住んでいないが、昔はそれなりに島民がおり、それなりの村を築いていた。守り神として祀られていたエリスを精神的な支柱として慎ましやかながらも平和な暮らしをしていたが、ある日葛葉ソウマが島に来てから徐々に歯車が狂い始め、最終的に数人を残して壊滅。ほそぼそと血を残してきたがシナリオの二年前に最後の村人も死亡し、島の血は途絶えることとなった。一応、島外に島の血筋を継ぐ者はいる。
 一般にはほとんど知られていないが、島を訪れる人間も多くはないものの存在はする。ただし、大体は島の人間と取引をしていた業者や漁師、物好きくらいである。来客がほとんどないのは、島に特別来るような理由がないからであり、場所そのものは行きづらいような場所ではない(ただし、本島からはかなり遠い)。普段は海も穏やかで、釣りもできるらしい。
 余談だが、島の周囲は時期によって天候や電波状況が大きく変化し、探索者が訪れた時期はそれが最悪な時期である。
 島民は普通の人間よりも強い魔力を秘めた者が多かった。かつてのエリスはそれに惹かれやってきており、ソウマがわざわざ巡音島に来たのもそれが理由である。あんじゅは島の人間の血を引いている。
 屋敷の地下には倉庫から繋がる牢獄が存在する。重罪人を収監するためのものだったようだが、巡音島ではほとんどそういった犯罪行為が起こらなかったため使われていなかった。エリスを幽閉する際にソウマによって魔を封印する結界を張られている。弱まっているが現在でも結界そのものは生きており、強い魔力を持つ者は気分が悪くなったり体調を崩してしまうかもしれない(つまりそれが結界の実在を示唆している)。

▼藤堂館
 とうどうかん。
 エリスが昔住んでいた洋館。いつからあったのかは定かではなく、エリスが巡音島に流れ着いた時にはもう存在していたようだ。
 藤堂館と名付けたのは渉。その前は普通に「洋館」とか呼ばれていた。

▼神崎家
 大企業・神崎グループを経営する一族。現在の社長は神崎彰(かんざき あきら)。長男は次期社長と目される翔(かける)、次男はシナリオに登場する渉(わたる)、三男は弁護士の照(てる)。長女は女優の晶(あきら)、次女はアイドルの鞘(さや)、三女はシナリオに登場する大学生の梢(こずえ)。母・百合花(ゆりか)は梢を産んでから数日後に亡くなっている。
 全体的な傾向としては男性が真面目、女性が自由。代々美人が多いらしい。

▼吸血鬼伝説
 →【シナリオ背景】を参照。
 さほど有名ではないが、渉は島民から聞いて詳細までよく知っており(ただし口伝えなのである程度形は変わっているだろうと渉は推測している)、梢も存在だけは知っている。何故かあんじゅは話の大筋まで知っていた。

▼悪魔使い
 あくまつかい、あるいはデビルサマナー。
 文字通り悪魔を仲魔とし、使役する者。悪魔と言っても悪性のものばかりではなく、デビルサマナー自体も一口に悪人というわけではない。大昔から存在する。
 シナリオに登場する葛葉ソウマは現在は星の精しか従えていないが、全盛期(島に来るよりも前)は多くの悪魔を使役していたらしい。当時は悪魔使いも悪魔祓いも多くはないものの決して珍しい存在ではなかったとされる。
 葛葉というのはデビルサマナーの名門だが、ソウマのそれは偽名であり彼自身は葛葉の血を引いていない。彼は本物の葛葉一族と戦い、力のほとんどを失った。

▼星の精
 この恐ろしい怪物は、普通は目に見えない。彼らの存在が知れるのは、気味の悪いクスクス笑いのような音によってだけである。エサを取ると、摂取した血液によって姿が見えるようになる。宇宙の深淵から召喚して、強力な魔術師やほかの生き物に奉仕させることができる場合もある。
 本シナリオに登場した個体は少々鈍臭いようで、普通は一分程度で終わる吸血に二分以上かけている。ソウマはそれなりに愛着を抱いており、昔から重用していた。

=導入=
 以下はシナリオの導入および依頼となる。必ずしも探索者全員と神崎梢が知り合いである必要はないので、KPは探索者の設定に合わせて展開を変更してもよい。舞台が大学であるため、社会人がいてもさほど違和感はないだろう。なお、探索者達が乗るボートは梢が操縦する。
 探索者に探偵がいる場合、いない場合でプロローグの展開が異なる(大筋は変わらない)。
 なお、アンダーラインが付されている箇所はKP向けの情報となる。PLへの情報の開示は自由である。

▼タイプライター(探偵がいる場合)
 ある日探索者のもとに、知り合いの大学生・神崎梢から電話が掛かってくる。探索者と梢は彼女の実姉・神崎晶が探索者に仕事の依頼をしたことがある縁から面識があった。彼女は相談事があるということで、翌日自分の通う大学で会えないかと訊いてきた。

▼始まりの電話(探偵がいない場合)
 ある日探索者のもとに、大学の知り合いである神崎梢から電話が掛かってくる。探索者と梢は二、三度ほど飲み会で一緒になったり同じ授業を取ったりしていた程度の知り合いである。彼女は相談事があるということで、翌日大学で会えないかと訊いてきた。

◆少しの悩みと小さな依頼
 翌日、大学に存在する喫茶店で探索者と梢は落ち合う。既に探索者が集合している場合、梢は少し驚いたような様子を見せるがすぐに探索者に笑顔を見せる。その笑顔は愛想笑いというよりは、梢の性格を表したような明るい笑顔である。ここで梢のパーソナルデータを開示できる。
 梢はひとしきり世間話をしてから、巡音島という孤島に歳の離れた実兄・渉が一人で住んでおり、心配だから会いに行きたいがとある理由で一人で行くのは怖いので探索者についてきて欲しいことを告げる。〈心理学〉で、梢が本気で怖がっていることを開示できる。何故怖がっているのかを訊いてもよい。吸血鬼伝説の存在を教えてくれるだろう。
 ※梢は巡音島のことはほとんど知らない。一度だけ行ったことはあるが渉を迎えに行く際の船に同乗していただけで上陸はしておらず、その他は渉から島についての情報を多少伝え聞いた程度。PLから質問があった場合、以下の情報を開示できる。下線部に関しては梢も知らない情報である。
 ・島にほとんど店はなく(実際は一切存在しない)、島民はほとんど自給自足していた。
 ・近年は昔に比べれば外との交流もあったようで、民家には家電等も普通に存在する(ただし、島にはシナリオ開始時点で三軒しか民家が存在せず、既に住人はいない)。
 ・携帯やネットの電波は普通に入るが、時期によって電波状況は変わる(ちなみに探索者が行くのはそれが最悪な時期)。
 ・天気は変わりやすい。
 ・吸血鬼伝説が存在する。梢はそれを気味悪がっており、詳細も知らない。

 探索者が同行を承諾した時点で一日が経過し、次のシーンに移行する。PLが巡音島について知りたがった場合、【用語】の『巡音島』の項の下線部程度の情報を開示できる(観光地でもないただの孤島なので、情報はほとんどないと思っていい)。

◆音の巡らぬ島へ
 ※持ち物確認はこのシーン開始時に行う
 集合場所である船着き場には、梢の他にもう一人の少女がいた。鳴海あんじゅという名前の彼女は梢の親友でありオカルトマニアだ。できる限り多くの同行者が欲しい梢から呼び出されたが、あんじゅもかねてから巡音島には興味があったため同行を快諾したという。ここであんじゅのパーソナルデータを開示できる。挨拶を済ませ、探索者達は梢の運転するボートに乗って巡音島へと向かう。
 ボートに乗ってからのロールプレイでは、できるだけ探索者とあんじゅを親しくさせるとよい。その場合、あんじゅの側から積極的に交流させるとスムーズだろう。
=会話例=
「梢とはどんな関係?」→「親友ですー。もう8年くらいの付き合いかな?」
「巡音島についてきたのは何故?」→「他でもない梢ちゃんのお願いですからね。あとわたしオカルト好きなんですけど、巡音島ってそういう類の伝説があるんですよー」
「伝説って?」→「巡音島には吸血鬼伝説があって。昔、巡音島には吸血鬼がいて、島の人と仲良く暮らしてたのにある日突然村人をほとんど皆殺しにしちゃったらしいんです。まあそれだけと言えばそれだけなんですけど、やっぱり気になるじゃないですか」

=巡音島と吸血鬼=
 ここからは本編となり、舞台が巡音島に移る。
 巡音島に到着した時点で携帯電話、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン等の電波は届かなくなることに留意。

▼最悪の到着
 到着直前まで晴れ晴れとしていた天候が突如として悪くなっていく。それでも航海にはそれほど問題も起こらず巡音島には到着した探索者と梢、あんじゅだったが、思わず一同は言葉を失う。巡音島には梢の話以上に何もなかったのである。
 島には店どころか建物自体がほとんど存在せず、見渡す限り今はもう使われていないであろういくつかの古い民家と荒れた畑、森しかない。ボートを停めた船着き場もギリギリ使い物になるという程度で今にも瓦解しそうだ。悪天候ということもあって島の雰囲気は最悪であり、村人達の暖かい出迎えなど期待できそうにない。〈目星〉に成功すると、そもそも村人などもういないことが分かる。
 しかし、その中にあって、一際異彩を放つ大きな建物が存在する。決して派手ではないが堅実で堅牢、荘厳な威圧感すら漂わせる、棺桶を思わせる黒色の洋館。それこそまさに、梢の兄が住んでいる『藤堂館』そのものである。

◆激しい嵐と大きな洋館
 洋館を目の前に嵐に見舞われた探索者たちはたまらずその洋館へと駆け込む。鍵が開いたままの扉を開くと、大量のタオルを抱えた男性が奥の部屋から出てきたところであった。男性はこちらの姿を認めると、静かに微笑んで歩み寄ってくる。彼に、梢は「兄さん」と呼びかける。
 彼こそが梢の兄であり、藤堂館の主・神崎渉だ。渉は梢に軽く返事すると、探索者達にタオルを配っていく。ここで渉のパーソナルデータを開示してもよい。
 その後、女性陣は大浴場〔サービスシーン〕へ、男性陣は食堂〔Un cafe, s'il vous plait〕へと移動してもよい(必要がない場合、あるいは必要がなくなった場合は飛ばしてもよい)。女性がNPCしかいない場合、あるいはKPがサービスシーンに必要性を感じなかった場合(シナリオの雰囲気、PLのモチベーションにもよるだろう)はそのまま個室へと案内された後に着替えて食堂へと集合、次のシーンに移行する。

▼サービスシーン(女性陣・大浴場)
 KPはこのシーンを描写しなくてもよい。伏線もわずかに存在するが、あってもなくても支障はなく、その描写自体も大浴場である必要はないためだ。このシーンで分かることは、「洋館には渉一人しか住んでいないのに洋館は全体的に手入れが行き届いている」ことである。それさえ分かれば他は改変しても全く問題なく進行するだろう。また、探索者に女性がいない場合もこのシーンは飛ばしてよい。
 渉の大浴場を訪れた探索者と梢、あんじゅはまずその浴場の豪華さに感嘆する。豪華と言っても決して華美ではないが、手入れの行き届いた大浴場は岩の冷たさを感じさせながらも実際は力強い熱を秘めていた。そして一人どころか五人いても広すぎると感じるであろう浴場の規模に、女子組のテンションは最高潮である。
 かけ湯もそこそこに探索者達は湯船に浸かり、一息ついてぐるりと周りを見渡す。あんじゅは大浴場以外にも綺麗にされていたエントランスや廊下を思い出し「いいお手伝いさんがいるんだね」と呟くが、それを梢は即座に否定した。渉はここに一人で住んでおり、一人たりとも家政婦は雇っていないし、基本的に家族も訪れないと。だから渉が掃除もやっているんだろうと梢は言うが、あんじゅはこっそり住み着いてる小人とかがいたりして、と梢をビビらせていた。

▼Un cafe, s'il vous plait(男性陣・食堂)
 KPはこのシーンを描写しなくてもよい。伏線もわずかに存在するが、あってもなくても支障はなく、その描写自体も食堂である必要はないためだ。このシーンで分かることは、「神崎渉は勘がよく気が利く(気を回すのがうまい)」ということである。それさえ分かれば他は改変しても全く問題なく進行するだろう。あるいは足りないと思った場合、描写を追加するのもよい。
 渉に案内され個室で各々着替えてきた探索者は食堂を訪れる。
 それなりの広さを誇る食堂には既に香ばしい鋭い匂いが充満しており、考えなくてもそれがコーヒーの匂いだと分かるだろう。コーヒー好きならば、それが相当上物であること、そして酸味の強いものであるということがその時点で分かるかもしれない。渉はドラマやアニメで見るような長テーブルについた探索者にコーヒーを配ると(苦手なら断ってもよい)、続いて奥にある暖炉に薪をくべる。そうした作業をしながら、探索者がそれほど梢と親交が深いわけではないことや依頼が突然であったことを言い当てる。昔から察しがいいとは言われる、と言いつつも、これでも梢の兄だから家族のことは分かる、と渉は一人苦笑するのだった。何か聞きたいことがあれば質問をしても良い。
 渉に対して〈目星〉が成功した場合、渉が40代半ばであること、よく見れば確かに梢と似ていること、髪の分け目が左であることが分かる。それ以外のパーソナルデータを開示してもよい。
=会話例=
「どうしてこんなところに住んでいる?」→「元々は東京でとある企業の社長を務めていたんだが、部下の不祥事と、周囲からのプレッシャーに耐えかねてね。お恥ずかしい話だ」
「一人で寂しくはないのか?」→「梢なんかはよく電話してくれるし、島に一人というわけではないからね。寂しくはないよ」(島における、別の存在を示唆している)
「コーヒーがおいしい」→「こういうところに住んでいると、こういうことばかりに凝ってしまってね。嵐でなければ、釣りのできる場所でも紹介できたんだが」

◆Daydream Cafe(食堂)
 KPは〔激しい嵐と大きな洋館〕から直接このシーンに移行してもよい。その場合、〔サービスシーン〕〔Un cafe, s'il vous plait〕で描写するはずだったことをこのシーンで描写してもよいが、しなくても大筋に影響はない(しておくに越したことはない)。また、このシーンでは巡音島の吸血鬼伝説に関することが語られる。【シナリオ背景】をあらかじめ要点をぼかす形でまとめておくと進行がスムーズになる。
 女性陣が入浴を終え、やがて全員が食堂に集合する。渉は彼女らにも同じようにコーヒーを配り、改めて探索者達を歓迎する。そこで、梢以外の探索者とNPCは渉に自己紹介する。ロールプレイを行ってもよいし、したという体で流してもよい。ただしいずれにせよ、最後に自己紹介するのはあんじゅである。
 あんじゅの自己紹介の際に発した「巡音島の吸血鬼伝説に興味がある」という言葉に、渉が反応を見せる。探索者も事前に少しだけ聞いているので知っているが、確かに巡音島には吸血鬼伝説が存在する。しかし、有名な話というわけでもないものなので、渉も少し驚いたようだ。ここで渉から巡音島の吸血鬼伝説が語られる。【シナリオ背景(PL向け)】を参照のこと。口頭で説明した後に、事前に印刷しておいた当該項目を配布すると後々役立つだろう。
 吸血鬼伝説に対する梢とあんじゅの反応は全くの逆だ。あんじゅは渉の細かい補足などを逐一メモしているが、梢は全く興味がないとばかりに溜め息をついている。梢は現実主義とまではいかないがオカルトには興味がなく、吸血鬼の信仰が根付いていたこの島を少々気味悪がっていたのだった(あと怖がりなのであった)。
 ここで渉に〈目星〉あるいは〈心理学〉をすると、彼が少し苛立っている、ということが分かる。渉はエリスに肩入れしているため、歪められているであろう吸血鬼伝説に苛立っている。しかし、そこまでは明かさないほうがPLの想像力を掻き立てることができるだろう。

◆フリータイム・食事前
 渉から吸血鬼伝説に関する講釈を受け、17時になったあたりで一度全員解散となる。探索者は部屋に戻って休んでもいいし、浴場に行ってもいいし、図書館へ行って資料に目を通してもいいし、渉の自室を訪ねて歓談するのもいい。

《探索者の自室》
 部屋の作りは全室共通。それなりに広いが、ホテルではないのでトイレや浴室、テレビは存在しない。それ以外の設備はKPの裁量で有無を決めてよい(念のため注釈を入れておくと、監視カメラの類も存在しない)。
 手入れは行き届いており、埃一つ見当たらない。ベッドメイキングもきっちりされている。が、石造りなのでやや寒い(その代わりに堅牢である)。

《浴場》
 〔サービスシーン〕を参照のこと。

《図書館》
 図書館には背の高い本棚、そしてその中にあらゆる本がこれでもかと敷き詰められており、本来の広さに対して非常に手狭に感じる。部屋そのものは綺麗だが本の並びは雑然としており、規則性はない。また、詰められている本のジャンルも、一冊だけ置いてあるハードカバー小説から渉が購読しているらしい釣り雑誌のバックナンバー、分厚い歴史書など様々だ。
 〈目星〉あるいは〈図書館〉に成功した場合、部屋の奥に古びた書籍が隠すようにしまわれているのを発見する。内容はドイツ語らしき言語で書いてあり、〈母国語(ドイツ語)〉〈外国語(ドイツ語)〉に成功した場合は内容を解読できる(一人も技能を取っていない場合はINT2で振ってよい)。内容は日記のようであり、詳しく読むためには少し時間がかかりそうである。失敗した場合は内容を理解できないが、〈図書館〉に成功した場合はドイツ語辞典を見つけたということで、INT4で振ってよい。ただし、時間は経過する。
 内容は先述の通り日記で、日付は100年前(大正時代)。エリス・ハーウェルの日記だが、サインはないので探索者には誰のものか分からない。島での平穏な生活が幸せであるという旨が記されており、親友であったらしい「鳴海すみれ」の名前がよく出てくる。
 葛葉ソウマという人物の来訪についても記されており、相談に乗ってもらった、私には少し手厳しいがいい人だ、といった比較的好意的な記述が目立つ。途中、島民たちが罪人を捕らえる牢獄を屋敷の地下に作ったことが記されている。また、すみれの一家はソウマと入れ替わりで島の外に出たらしいことも記されている。
 最後のページはかなり正確に抜き取られている。〈アイデア〉が成功すればページが欠けていることに気付く。

《渉の部屋》
 部屋に入ると、渉が少し慌てた様子で迎えてくれる。曰く、片付けが間に合わなくて恥ずかしい、らしい。髪も少し乱れている。
 重厚な机と椅子、その上にノートパソコンと数冊の文庫本が散乱している。壁には本棚があり、かなり雑多なジャンルの本やDVDが敷き詰められている。カーテンを開ければ陽の光は入るほうで、窓からの見通しもいい。中型のテレビも置いてあるが、今は電波が最悪なので映らない(余談だが、テレビが映らない時期だと渉はよくDVDを観ている)。高級そうなベッドもある。
 使用人がいないのにやたらと手入れが行き届いていることや、吸血鬼伝説に関してもう少し詳しく質問できる。差し入れに渉のブレンド豆を使ったコーヒーを持っていくのもいいだろう。
=会話例=
「手入れの行き届いた屋敷だ」→「ありがとう。そういう作業が好きでね」
「この部屋だけは少し汚い」→「この部屋はどうしても後回しにしてしまうんだ。あまり時間がないというのもあるかな」
「吸血鬼伝説は本当にあったことなのか?」→「……さあ、どうかな。吸血鬼はいたかもしれないが、伝説が本当だという確証はないよ」
(ちなみに、このシーンにおける渉はエリスが変身したもの。慌てたのは急に探索者が部屋に入ってきたため。そのため、手入れの質問に対する答えも嘘は言っていないことになる。渉の部屋だけ手入れが微妙に行き届いていないのは、渉は基本的に自室にこもっていてエリスがこっそり手入れをする隙があまりないため。探索者が渉のブレンドコーヒーを持って訪れた場合、コーヒーに対してなんらかのリアクションを行うとよいだろう。エリスは渉のコーヒーを飲んだことがないため、必ず新鮮なリアクションになるはずだ。それがPLにとって違和感、ヒントとなる。なおこの時間、本物の渉は食糧庫にいる)
 ちなみに、渉の部屋は探索者たちの部屋からは少し離れている。

《居間》
 広い。大きなソファ、暖炉、大型テレビ、等々が置かれている。渉の部屋のテレビと同じく、電波が最悪な時期なのでテレビが映らない。また、屋敷の中央部に位置しているため風通しや日当たりも悪い。そのせいで一年を通して寒いので、寝る時以外は常に暖炉に火がくべられている。
 梢はここにおり、雑談することができる。〔サービスシーン〕等で明かされることをここで説明させてもよいだろう。

《地下倉庫》
 大事なものが置かれている倉庫。渉から許可をもらわないと入れない(面倒なら演出上は許可を取ったということにして進入させてもよい)。
 地下牢獄に繋がる隠し通路がある。弱まっているが結界が張られており、それなりの魔力(MP16以上)を持つ探索者が〈目星〉に成功すると、なんらかの嫌な雰囲気を知覚できる。結界の残滓であるため、正気度判定は必要ない。
 渉から許可を得たあんじゅはここにおり、地下通路への入り口があったりして、なんて冗談めかして言っている。
 ちなみに食糧庫とは別物。
 〈アイデア〉等の気配察知技能に成功すると、壁と床の隙間に一枚の紙が挟まっているのが分かる。〈ドイツ語〉に成功すると日記のページのようであり、夜に赤く光る大きな「何か」を見たという記述がされていることが分かる。また、最後には「ハーウェル(Herwell)」というサインがある(一人も技能を取っていない場合はINT2で振ってよい。〈アイデア〉に成功した場合、持って帰ってドイツ語辞書を用いて解読することができる。その場合、INT4で振ってよい)。技能値判定に成功した探索者は正気度判定。成功で0、失敗で−1D3。

▼慟哭、そして…
 夕食、男子陣の入浴も終わり、全員疲れていたということもあって解散、各々自室に戻って就寝する。あんじゅは少し体調が悪そうだが、本人曰く「女の子の日かなあ?」。
 深夜午前2時。探索者は全員寝静まり(起きているならそれはそれで別に支障はない)、静寂の訪れた屋敷に甲高い女性の悲鳴が響き渡る。〈聞き耳〉に成功すると悲鳴の主は梢であることが分かるが、失敗したとしても誰か一人でも成功していれば問題ない。探索者は急いで梢の声がした方へと向かう。
 探索者が辿り着いたのはあんじゅの部屋だ。扉は開けられており、中の様子を伺うことができる。探索者が中を見ると、ベッドの上で首から血を流し辛うじて呼吸をしているあんじゅと、それを見て泣いている梢の姿があった。また、テーブルと椅子が倒れている。探索者に遅れて、悲鳴を聞きつけた渉も駆けつける。
 〈目星〉に成功すると、ベッドの下から英語で書かれた古びた一片の紙切れを発見する。〈他の言語(英語)〉に成功する(一人も技能を取っていないならINT4で振ってよい)、地下倉庫から罪人を捕らえる独房に繋がっており、魔力を持つ人間が近づくと呪いが発生するという旨が記されていることが分かる。研究経過の走り書きのようで、文体は形式的。裏には「東の燭台には巡音の血を。西の燭台には外様の血を。闇の最奥、眠り姫の眼前にて創魔の叡智は拓かれる。」と記されている。
 なお、この呪いとは眠っていた魔力の循環を早めることで存在を知覚させやすくするものである。ソウマが強い魔力を秘めた人間を見つけるために仕掛けたものだが、並の人間では1日と持たず自滅してしまう。
 この場面での渉はエリスである。そのため前髪は右分け。そもそも、客室から渉の部屋は多少離れているので甲高い悲鳴と言えど眠りに入っている渉の元には届かない。エリスがあんじゅから血を吸った少し後に悲鳴が聞こえたため、すぐに駆けつけた(動揺しており、うっかり本物の渉と鉢合わせたときのことは考えていない)。
 あんじゅの処置は渉に任せ、探索者たちは居間に集まる。泣きじゃくっていた梢も兄や仲間たちが駆けつけたことで話ができる程度には落ち着きを取り戻している。梢に事情を聞いた場合、開示できる情報は以下の通り。
 眠れない梢(枕が変わると寝付けないタイプ)は隣の部屋から妙な音がするのを聞き、同じくあんじゅも眠れないのかと思い部屋を訪ねた。しかし、扉をノックしても返事がない。寝ているのかと思い引き返そうとしたが、何かが倒れた音がしたため様子を見るために部屋に入る。怖がりゆえに、音の原因を確かめなければいられなかったのである。暗がりの中、あんじゅの呼吸の音が聞こえたが、それにしては少し様子がおかしい。梢が電気を点けると、あんじゅはベットの上で首から血を流して伏しており、それを見た梢は反射的に悲鳴を上げてしまった。
 梢はそうした事情を途中泣きながら話した後、とにかく渉の処置に任せるしかない、と言ってまた嗚咽を漏らし始める。10分後、渉が居間に戻る。あんじゅはとりあえずは生きているが、今は予断を許さない状況であり、とりあえず自分が明日の朝までは付きっ切りで看病するとのことだった。探索者たちは解散しても居間に留まってもあんじゅの傍に寄り添ってもいいが、原因も分からず危険であるためとにかく出歩くのは避けたほうがよさそうだ。出歩いた場合、探索者は死ぬ。
 ここでの渉は本物。居間で梢の説明した事情を影で聞いた渉があんじゅの部屋を訪れ状況を確認、居間に戻った。ここで渉とエリスが鉢合わせ、以降正式に協力関係となる。

▼嵐の朝に
 翌朝8時、天気は変わらず嵐である。
 疲弊しており相変わらず体調はあまり良くなさそうだが、あんじゅは会話できる程度には快復。ただし、あんじゅ自身も状況を飲み込めておらず、情報は期待できそうにない。
 奇しくも昨夜の状況は、渉が語った吸血鬼伝説に酷似していた。渉の部屋で紙切れを拾っており解読に成功しているなら、吸血鬼伝説の真偽はともかくとしてもあんじゅが相当危ない状態であることが分かるだろう。地下倉庫で魔力の残滓を感じていた探索者がいた場合、それが更に現実味を帯びる。そのことを知っていながらあんじゅを地下倉庫に通したのか、とこの場で渉を糾弾しても良いが、梢からの好感度が下がることと場の空気が悪くなることは覚悟したほうが良い。〈心理学〉に成功した場合、渉は地下独房については何も知らなかったことを開示できる。
 その後は解散となる。あんじゅの元に残ってもいいし、呪いを解く方法を見つけるために屋敷を探索してもいい。

《図書館》
 〈図書館〉か〈目星〉に成功すると、真っ黒な鉄製の表紙を備えた分厚い本を発見する。本の名前は「De Vermis Mysteriis」、ラテン語で書かれているようだ。〈他の言語(ラテン語)〉に成功すると魔術の数々や不思議な神話的生物についての記述を解読することができる。自分自身を糧として他人の身体を乗っ取るというような呪法についても詳しく書かれている(一人も技能を取っていない場合、INT
2で振ってよい。〈アイデア〉に成功したなら、INT4で振ってよい)。本を読んだという事実が重要であるため、詳しい解説は必要ない。

《渉の部屋》
 渉がデスクでしんどそうにしている。知らなかったとはいえ、あんじゅを地下倉庫に通してしまったことに責任を感じているようだ。〈心理学〉に成功した場合、渉は地下独房については本当に何も知らなかったことを開示できる。

《地下倉庫》
 渉が佇んでいる。渉の「自分のしたことは間違っていたのか(処置は間違っていたのか、あんじゅを地下倉庫に通したことは間違っていたのか、と後悔しているとPLに思い込ませたほうがよいだろう)」という問いに返した答えによって分岐する。間違っていた、あるいはそれに準じた回答をした場合は正体を現したエリスとの戦闘。殺した場合はバッドエンド。間違っていなかった、あるいはそれに準じた回答をした場合はエリスが自らの正体を明かし次のシーンへ移る。
 以下はエリスの台詞。
「僕はね、この島でずっと一人で生きてきた。島の人たちがひとりひとり死んでいくのを看取ってきた。だから、この島に人が来たときは正直舞い上がっていたんだ。……誰かが近くにいるっていうことはね、嬉しいことなんだよ。でも、こんなことになってしまった。僕は間違っていたんだろうか」

>間違っていた
「……そうか。それじゃあ、間違いは正さないとならないね。僕は―――私は、エリス・ハーウェル。渉のために、死んでもらうわ」
 →戦闘へと移行。
エリス・ハーウェル
STR:30 CON:25 SIZ:13 DEX:35 POW:50 INT:60
db:なし 耐久値:100
攻撃:
爪で切り裂く 90% 威力:2D10
蹴り 75% 威力:3D10
吸血 75% 1ラウンドに1D6STRを失う
畏怖の魔眼 戦闘に参加している探索者全員はPOW
5で振り、失敗した場合は次のラウンドでの全ての判定ロールを半分の数値で行う。
 →撃破した場合はバッドエンドとなる。戦闘に参加している探索者が全滅してもバッドエンドとなる。エリスを撃破した場合は〔魔界転生〕へと(うっかりこっちに辿り着いてしまった場合はアドリブで)、戦闘に参加している探索者が全滅した場合は〔変わらないお伽話〕へと移行する。

>間違っていなかった
「そう言ってもらえると嬉しい。僕だって彼だって、責任を感じているんだ。だから鳴海あんじゅを助けるために全力を尽くしたけど、治せるのは身体だけだった。呪いまでは癒せない。
 ……自己紹介が遅れたね。僕は―――私は、エリス・ハーウェル。この島の吸血鬼よ」
「秘密はフェアじゃないでしょう? みんなを集めてもらえるかしら。私が知ってることを、みんなに話すわ」

▼明かされる真実
 歩けるまで体力の戻ったあんじゅも含め、居間に全員が集まる。エリスは今まで度々渉と入れ替わっていたこと、ある程度それを渉と示し合わせていたこと、あんじゅから血を吸ったこと、そして吸血鬼伝説の吸血鬼は自分であることを語り、謝罪する。そして、それに加担していた渉も探索者たちに謝罪する。しかし、エリスは人体に影響があるほど血を吸うことは絶対にないと言う。〈心理学〉に成功すれば、それが本心であることを開示できる。実際、渉も度々自分が血を吸われていたことには気付いていたが、翌朝多少調子が悪い程度で血まみれになったことはないそうだ。しかし、梢はそれに納得できず、渉を脅かしていたことやあんじゅを瀕死にしたこと(少なくともそのきっかけを作ったこと)を糾弾し、エリスを拒絶して自分の部屋に去って行く。探索者は追いかけても良い。梢を諌めるロールプレイを挟むと、終盤の梢とエリスの和解に説得力が増すだろう。
 エリスは渉の家族に拒絶されたことにショックを覚えつつも、吸血鬼伝説は本当だがソウマによって歪められて伝わっており、本当の黒幕はソウマであったこと、探索者の拾った紙切れはソウマの筆跡であり、結界もまた自分が幽閉された際にソウマによって張られたものであることを語る。しかし、それは100年も前の話であり、ソウマが生きているはずはない、とも。
 ひとしきり話が終わった後、もう一度エリスは探索者たちを巻き込んでしまったことを謝罪する。これまで何も無かったとはいえ、自分が渉を脅かしていたことも、あんじゅをこんな状態にしてしまったことも事実であると。それに対してあんじゅは、本物の吸血鬼に血を吸われることなんて人生であることじゃない、と無邪気に笑いかける。それに、梢は友達思いで家族思いだから、エリスを憎んでいるのではなく心で納得できていないだけであるということも付け加える。
 しかし、問題が解決したわけではない。元々は渉とエリスがあんじゅを治して何事も無かったかのようにするつもりだった。どうにもならないようであればエリスは探索者と梢、あんじゅを全員殺して証拠を隠滅するつもりだったが、今は探索者たちとも「あんじゅを治し問題を解決する」という利害を共有できるようになったため、協力してあんじゅの解呪を目指す。エリスと協力したくないのならば、探索者は独自に動いても良い。なお、独自に動いた探索者は死ぬ。

◆血塗れの道
 エリスと探索者たちは手がかりを求めて、地下牢獄へと進入する。全員が一緒にいたほうが安全であるというエリスの意見で、あんじゅ、渉、渉(あるいは先のシーンで梢を追いかけた探索者)に説得され渋々ついてきた梢も探索者に同行する。あんじゅは一度呪いを受けているため、再び呪いを受けることはない。渉、梢は魔力を持たないため呪いを受けることはない。
 牢獄までは長い階段で繋がっている。階段の幅は成人男性一人分で、高さもそれほどではない。明かりはなく埃っぽいが、〈目星〉に成功すると薄くはあるが血のような足跡が下まで続いていることに気付く。
 下まで降りると、電車1輌ほどの長さを誇る通路が探索者達を待ち受けていた。通路の途中には壁、天井、床をぐるっと一周するように太陽と月の満ち欠けを表したレリーフが彫られており、牢獄の傍にのみ今はもう赤黒く腐食した燭台がふたつ備えてある。
 檻の向こうには、壁に石で作られた手錠と床には藁葺きが敷いてある。手錠は石が劣化し既にボロボロだ。エリスによれば手錠はソウマによって作られたもので、生物を痺れさせて動けなくする作用を持っていたらしい。しかし、牢獄にはそれ以外には何もない。ここで〈アイデア〉に成功した場合、藁葺きをどかした下の床が蓋状になっていて動かせるようになっていることに気付くだろう。力のある探索者(STR15以上)なら床を動かせる。動かすとそこは小さな物置になっており、刀身の錆びたナイフ、同じく錆びた懐中時計、粉の入ったガラスの小瓶、もはや読めなくなっているが何かが書かれた紙の束が発見できる。ガラスの小瓶にはイブン=グハジの粉が入っている。ここで重要なのはガラスの小瓶のみなので、それ以外は適当に変えてもよい。全て持ち出せるが、一人ひとつまで。錆びたナイフは戦闘で使用できる(一度きりの消費アイテム、ダメージ1D4、DB適用あり)。
 牢獄の傍にある東側のあんじゅの血、西側の燭台には探索者の血を捧げると、壁が開き新たな通路が開かれる(探索者があんじゅの部屋で拾ったはずの紙切れの裏に書かれている文言がヒントとなっている)。血を捧げた探索者のHPは−1される。

▼創魔の叡智
 開かれた通路を進んでいくと、体育倉庫ほどの広さの部屋に辿り着く。そこは灯りもないのに不思議と明るいが、不気味なクスクス笑いが響いている。探索者たちは同時に嫌な気配を感じ取るだろう。直後、客人を歓迎するように、魔法陣の刻まれた石塊の向こうから醜い人間のようなモノが姿を現す。探索者は正気度判定(成功で−1、失敗で1D3)。
 ソレを見て、エリスは「葛葉ソウマ」と呟く。もはやヒトガタをなしておらず肌も爛れた生物のような何かは、にやりと悪魔的な笑みを浮かべて手を叩き、掠れた声で「ようこそ」と言った。エリスも半信半疑であったが、探索者たちの前にいるのは間違いなく、かつて島で惨劇を引き起こした葛葉ソウマそのものだ。
 以下はソウマの台詞。
「やあ、久しぶりだねお姫様。もっと使えるかと思ったが、君では少し不足だったようだ。全く100年前と変わらない。君たち同士で殺しあってくれたりしたら楽だったのに。まあ、お姫様に期待したのが間違いだったかな」
 彼はエリスを挑発するように煽り、もはや腐りかかった茶色い双眸を探索者たちに向ける。すると、あんじゅが何かがいることに気付いたようだ。図書館で「De Vermis Mysteriis」を読んでおり、日記のページを見つけていれば、それが星の精ではないかと思い至るだろう。ソウマはそれを鼻で笑って、探索者たちを慇懃無礼に歓迎する。
 以下はソウマの台詞。
「それにしても、これは珍しい客人だ。強い魔力を感じて外へと出てきてみれば、外様の群れがこの島にやってくるとは。俺が言えたことじゃないが随分な物好きだな。……なるほど、魔力の元は鳴海の血筋か。因果だな、島の人間の血筋が再び俺の前にまた現れるとは」
「呪いが気になるのか? ああ、解けるさ。解けなければ俺が困るんでね。ソレは強い魔力を持つ存在を探し出すためのものだ。俺が身体を得るためのな。この有様を見ろ、肉は爛れ、カタチはもはや人のそれではない。中身を"マトモ"に保つので精一杯と言ったところでね、全く長く生きるのは楽じゃない」
「お喋りしすぎたな。人と話すのはいつぶりだったか、少し舞い上がってしまったかな。……さて、そっちのお姫様があんたらと結託してるっていうのなら結構だ、俺も色々策を弄する手間が省ける。さあ、死んでくれ」
 上記の描写を終了後、戦闘へと移る。敵対NPCは星の精1体と葛葉ソウマ。戦闘場所は周りが石造りの壁に囲まれた体育倉庫ほどの空間である。渉、梢、あんじゅはエリスが守っているのでそちらに気を使う必要はない。光源、酸素の心配はないが、狭く閉じられた空間なので爆発物を使った場合は対象がNPCを含む全員に、ダメージは2倍となることは説明しておくべきだろう。

星の精
 攻撃の際には、一度に1D4本のかぎ爪を使って特定の1人をつかむことができる。犠牲者は生死にかかわらず血を吸い取られる。生きている探索者は、血を吸われることで1ラウンドに1D6 STRを失う。殺されずに済んだ場合は、この喪失は3日以内という早さで回復する。
 見えない星の精のクスクス笑いで見当をつけて攻撃をした場合は、命中率を半分にする。エサを取ったあとの星の精はその後6ラウンドの間姿が見えるようになっている。その後は血液を新陳代謝して、透明なものにしてしまう。そうなるまでの間は姿が見えているので、普通の命中率で攻撃することができる。
 探索者が牢獄の床下からイブン=グハジの粉を入手していれば、使用することで2ラウンドの間、星の精を可視化させることができる。
STR:31 CON:12 SIZ:22 INT:12 POW:17 DEX:12
移動:6/飛行:9 耐久値:20
平均db:+2D6
武器:
かぎ爪 40% 威力:1D6+db
噛みつき 80%
吸血 1ラウンドに1D6 STRを失う
装甲:4ポイントの皮膚 地球外の物質で出来ているので、弾丸は半分のダメージしか与えない
正気度喪失:星の精を見たか、あるいは星の精の攻撃を経験した探索者は1D10正気度ポイントを失う

葛葉ソウマ
 もはや大した力は持っておらず特別な攻撃もしてこないが、肉体が既に腐り果てているため、有効打を与えづらい。探索者に攻撃されるたびに行動する。
STR:10 CON:30 SIZ:13 INT:80 POW:50 DEX:16
耐久値:55
平均db:なし
武器:
回避 50%
体当たり 75% 威力:1D4
装甲:2ポイントの皮膚
正気度喪失:なし

 戦闘終了の条件は、星の精とソウマの撃破、探索者の全滅。いずれかの条件を満たした場合、〔エンディング〕へと移る。

=エンディング=
 星の精とソウマを撃破した場合は〔お伽話の結末〕、探索者が全滅した場合は〔魔界転生〕へと分岐する。

◆お伽話の結末
 ソウマが満身創痍となったことでコントロールを失った星の精は自らの召喚者を襲う。おぞましい姿を探索者たちに見せつけた星の精だったが、もはや現界を保つだけの力は残っておらず、真紅の粒子をばら撒きながら消滅していく。ソウマ自身も星の精に血を吸われたことで化石のように干からび、息絶えた。それを見届けたエリスは過去に思いを馳せるように目を閉じる。梢は何か言いたげだが、ソウマが死んだことで空間を照らしていた不思議な光と酸素が薄れ始めたため、探索者たちは急いで地下から脱出する。
 牢獄を去り、倉庫を抜け、探索者たちはエントランスへ辿り着く。天窓から差す光にあんじゅが目を輝かせ、眩く輝く青空を指差した。
「嵐、やっと晴れましたね」

◆エピローグ 音の巡る島
 嵐は去った。疲れ果てていた探索者は渉の提案もあって、屋敷にもう一泊していくことになった。乗ってきたボートが予想外の嵐で失われてしまったという理由もあったためだ。
 その夜は渉とエリスによるもてなしでパーティーが催された。時間が経つにつれてあんじゅの体調も万全に戻り、パーティーを一番満喫しているようだった。これまではあまり感情を表に出していなかった渉も、秘蔵のワインを片手に上機嫌だ。
 一方、まだ罪悪感が残っているのか隅でワインをあおるエリスに、緊張した面持ちの梢が近づいて行く。あの、と口を開こうとしたエリスを遮り、先に声を上げたのは梢だった。「ごめんなさい」と。吸血鬼伝説は島の人たちとエリスの絆であり、屋敷もまた渉とエリスの繋がりだった。それを考えずエリスを傷つけてしまったことを、梢は謝罪したのだ。エリスは黙って、そんな梢の手を取る。許すわけでも、謝るわけでもない。ただ微笑むエリスに、梢もまた笑いかけるのだった。

 一週間後。梢からの連絡で、探索者たちは再び集まることとなった。梢自身から探索者にお礼がしたかったそうだ。約束の時間から遅れて、渉も姿を見せる。「煩わしい太陽ね」なんて言いながら、白い帽子を被った少女も一緒だ。梢が笑顔を見せる。その笑顔は愛想笑いというよりは、梢の性格を表したような明るい笑顔である。
 そう、嵐は去った。ようやく人並みの幸せを手にした吸血鬼のお姫様。その物語はきっと、ハッピーエンドで締めくくられることだろう。

 以上で、シナリオを終了する。

=シナリオ終了処理=
 エリスと和解しており、ソウマと星の精をどちらも撃破しているのならば正気度ポイントを1D10回復できる。更に、あんじゅと親しくなった探索者は1D6の正気度ポイントを回復できる。
 図書館で「De Vermis Mysteriis」を発見した探索者は〈クトゥルフ神話〉に1D6の技能値追加が行われる。

――――――――

◆魔界転生
 探索者が全滅し、有象無象を気にする必要がなくなったソウマは星の精にエリスを殺害させ、次いで渉、梢をも襲わせる。そして自らもまた、あんじゅの首筋へと牙を立てた。次第にソウマの身体が塵となり、あんじゅの身体のあらゆる場所から彼女を侵食していく。星の精が梢の血を吸い終わった頃には、あんじゅの身体は既にソウマのものとなっていた。あんじゅの自我はもはや存在せず、身体は全て彼の支配下に置かれる。強い魔力を秘めた健康な肉体を手に入れ、ソウマは満足げに口元を歪ませる。
「女の肉体とは随分面倒そうだが、思っていた以上の力を秘めているな、これは。……さて、手始めにまずは島から出ないといけない。幸い現代は便利そうだからな、せいぜい利用させてもらうとするよ」
 あんじゅのパンプスの靴音を鳴らして、ソウマが自らの棲み家であった小部屋を後にする。これまでで最も強い力を手に入れた創魔の悪魔使い。日本が魔界へと生まれ変わるのも、そう遠くない未来の話かもしれない。

 以上で、シナリオを終了する。

――――――――

◆変わらないお伽話
 探索者と協力関係を結ぶのは不可能だと考えたエリスは倉庫にいた探索者を殺害。その後、他の探索者と梢、あんじゅも殺害し、死体は地下牢獄へと投棄する。これは渉の名誉を守るためだ、と自分に言い聞かせて。そのことを知った渉も、それを弾劾することはできなかった。
 エリスは誰の声もしない宙空に問う。自分は間違っていたのかと。答えは返ってこない。お伽話は結局、何かを守るために何かを奪ったという結末のままだ。ただ、罪を抱えるのが吸血鬼という化け物と彼女が守った人間という二人に増えただけ。その物語はきっと、バッドエンドで締めくくられることだろう。

 以上で、シナリオを終了する。

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過去からの因縁と、煮え切らない態度と、本物じゃない家族が好きです。

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