探索者たちは、気づくと見知らぬ部屋に倒れていた。
部屋にあるのは謎の祭壇と、白・灰・黒の三つの扉。
この奇妙な空間から脱出するため、探索者たちはこれまでの経緯を思い返しつつ調査を開始する。
[プレイ人数] 1~3人(1人の場合はNPCが参加)
[プレイ時間] オンセ2時間程度
[推奨技能] 【精神分析】【回避】【目星】
少人数・短時間で回せるシナリオとして作りました。導入は何もありません。いきなり部屋に倒れているところからスタートするクローズドです。
探索、推理、戦闘をバランスよく楽しみつつ、さっくりとプレイしたい時にご活用ください。
探索者たちは、気づくと見知らぬ部屋に倒れていた。
部屋にあるのは謎の祭壇と、白・灰・黒の三つの扉。
この奇妙な空間から脱出するため、探索者たちはこれまでの経緯を思い返しつつ調査を開始する。
※導入も何もなく、いきなり「目が覚めたら見知らぬ空間でした。」から始まるクローズドです。
※神話生物(下級の独立種族)との友情が鍵になっているのでご注意下さい。
[プレイ人数] 1~3人(1人の場合はNPCが参加)
[プレイ時間] オンセ2時間程度
[推奨技能] 【精神分析】【回避】【目星】
[準推奨技能] 【聞き耳】【英語】【心理学】【図書館】ほか
※推奨技能はシナリオクリアに必要な技能、準推奨技能は情報を回収するためにあると役立つ技能としています。
少人数・短時間で回せるシナリオとして作りました。
探索、推理、戦闘をバランスよく楽しみつつ、さっくりとプレイしたい時にご活用ください。
ある程度PL経験がある方向けかもしれません。
アドゥムブラリ(マレウスp.15)
アドゥムブラリ=シーカー(マレウスp.50)
ティンダロスの猟犬(基本p.183 / マレウスp.79)
小説家を志す病弱な青年・姉崎ヨウ。彼はとあるきっかけで魔導書『イステの唄』を入手する。
『イステの唄』には吸血影アドゥムブラリが封印されており、アドゥムブラリは姉崎の命を吸いつくそうとその体にとりつく。
しかし姉崎は親しげに共生者に接し、語りかけ続け、やがて一人と一匹は友人ともいえる関係を築いた。
ある時、姉崎はアドゥムブラリに一つの提案をする。
「自分の命を吸いつくしていいから、その後は本に戻らないか。そうしたら棺に入れてやろう」
これは自分以外に被害が広がらないようにという姉崎の計画だったが、アドゥムブラリはその提案をのみ、ともに焼かれることを約束した。
だが、姉崎の友人たちは死後アドゥムブラリの存在を知り、再来するかもしれない吸血影への対抗策として『イステの唄』の保管を決める。
アドゥムブラリは怒った。アドゥムブラリはシーカーを生み出し、約束を反故にされた原因――探索者たちを自らの次元へ呼び出した。
魔導書を持ち去った人間を無きものとするために、再び『イステの唄』に戻るために、――友人、姉崎ヨウとの約束を守るために。
シナリオ内で出てくる用語について解説しています。長いのでページ末尾に掲載します。
シナリオ内の出来事の時系列を解説しています。同じくページ末尾に掲載します。
PCが一人の場合は、NPCが参加します。
PLにはあらかじめ「姉崎ヨウという友人がいる」ことを条件として伝えてください。
シナリオ開始前に伝えられる姉崎ヨウの情報は、以下のとおりです。
<姉崎ヨウ 29歳男性(変更可)
探索者の友人。性格は穏やかだが掴みどころがなく、空想がち。
周囲からの評としては、おとなしいが世間ずれした変人。
生来病弱で幼いころから入退院を繰り返しており、小説家を志している>
PC同士が知り合いであることを想定してキャラクターを作成する必要はありません。
(シナリオの都合上、強制的に知り合いだったことになります)
シナリオ開始時には、全員が「姉崎ヨウの親友である」ということ以外は覚えていません。
*PC1
姉崎の親友。今回「姉崎ヨウを見かけた」と探索者たちに連絡を入れた張本人。
姉崎の死に立ち会い、『イステの唄』の内容であるアドゥムブラリとその「シーカー」について把握している。
姉崎の葬儀の際、今後必要になる可能性を考えて『イステの唄』を棺に入れず、現在も所持。
今回「シーカー」絡みの案件だと直感したため、姉崎つながりで連絡を取り合う探索者たちに一報を入れ、
その驚異に対抗すべく協力することを提案した。
*PC2以降、またはNPC
姉崎の親友。
PC1とは(もともと友人でない場合は)姉崎の葬儀の際に知り合い、以降連絡をとりあっていた。
今回PC1から連絡を受けて集合。
*姉崎ヨウ(29歳程度、男性)※変更自由
PCの友人であり、故人。シナリオ開始時から一年ほど前に死亡している。
性格は穏やかだが掴みどころがなく、空想がち。周囲からの評としては、おとなしいが世間ずれした変人。
生来病弱で幼いころから入退院を繰り返しており、小説家を志していた。
とあるきっかけで『イステの唄』を入手し、アドゥムブラリに寄生された。
STR:11 / CON:6 / POW:15 / DEX:9
APP:13(青い斑紋を含めると8) / SIZ:12 / INT:15 / EDU:14
耐久:9 / MP:15 / db:なし / SAN: 75
[武器] なし
[呪文] なし
[技能] 【精神分析:80】【心理学:60】【人類学:30】【図書館:60】
*姉崎ヨウ・シーカー
姉崎ヨウと友人になったアドゥムブラリが、その最期の約束を遂行するために生み出したもの。
外見は姉崎と全く同じ。能力値は全体的に姉崎より高め(健康な姉崎の姿をうつしているため)。
探索者たちを自身の次元に連れてきて、探索者たちが『イステの唄』を持ち出した過去を改変しようとしている。
STR:13 / CON:8 / POW:18 / DEX:11
APP:16 / SIZ:12 / INT:15
耐久:10 / MP:15 / db:1d4 / SAN:なし
[武器] なし
[呪文] なし
[技能] 【こぶし:50】【繊維状突起:30 ※行動順無視行動】【吸血:100】
[正気度喪失] なし
*白澤大河(29歳程度、男性)※変更自由
姉崎ヨウの親友。ジャーナリスト。姉崎と対照的に賑やかな人物だが、繊細で気難しい一面もある。
仕事で得たネタを姉崎に持ち帰り、創作活動の手助けをしていた。
PCが一人の場合に参加。名前・性別・能力値などは自由に変更して良い。
STR:13 / CON:7 / POW:11 / DEX:14
APP:13 / SIZ:10 / INT:16 / EDU:16
耐久:9 / MP:11 / db:なし / SAN:55
[武器] なし
[呪文] なし
[技能]【目星:65】【聞き耳:40】【図書館:40】【英語:50】【精神分析:80】【言いくるめ:60】【心理学:45】
本シナリオは部屋移動やイベントによって数値が加算されていき、一定以上になると最終フェイズに突入する仕組みになっています。
この数値は、[始まりの部屋]にある電光掲示板の数字として、PC達にも確認可能な状態で変化していきます。
最終フェイズに突入可能な数値は800〜950です。950が上限値であり、上限に達すると強制的に最終フェイズに以降します。
初期値 25
各部屋に初回移動 +100
各部屋に2回目以降の移動 +50
白の部屋で姉崎の日記を読む +100
灰の部屋で姉崎の遺影を確認 +100
黒の部屋で姉崎・シーカーに遭遇 +100
ティンダロスに初回遭遇 +100
ファンブル、時間経過(戦闘、長考)等でKP任意の数を加算
※各部屋で手がかりを集めながら進行していくと、部屋を3つ回って[始まりの部屋]に戻って来た時点で725。
もしこの時点で全ての手がかりが揃っているなら、PCの目の前で数字を上昇させて最終フェイズに移行して良い。
※想定される最短ルートは[灰色の部屋]→[黒の部屋]→[白の部屋]。
※[始まりの部屋]で数字が899以下なら、かろうじてもう一度部屋移動が可能。しかし[始まりの部屋]に戻って来た段階で
数字が900台に達していた場合は、その時点で強制的に最終フェイズに入る。
また、[黒の部屋]以外のすべての部屋でティンダロスの猟犬が出現する可能性があります。
確定出現のイベント後、[始まりの部屋][白の部屋][灰色の部屋]でKPは任意のタイミングで1d6を振り、
5以上で出現させることができます。
【】 SANチェック、技能ロール
[] 場所
「」 台詞、会話例
<> シナリオ内部描写
() 補足説明等
※ 条件付き行動
<目が覚めると見知らぬ空間だった。
探索者たちは固い床に倒れている。起き上がって辺りを見渡すと、そこが無機質で小さな部屋であることがわかる。
光源は見当たらないが、全体的にうすぼんやりと明るい。>
<見たところかなり狭い部屋で、手を動かせば壁にぶつかってしまいそうに見えるが、不思議とぶつかることはない。
まるで空間が歪んでいるような、認識でとらえられない歪さ・不気味さを感じる>
覚えのない空間にいたことにより、探索者は【SANチェック 0/1】。
姉崎ヨウの火葬室。火葬の当日であるが、この時点ではまだ棺は来ていない。
ティンダロスの猟犬が出現する可能性があるが、一度部屋を移動するまではこの部屋では出現しない。
探索可能箇所は[部屋全体]、中央の[台]、前方の[三つの扉]、[後方の扉]である。
この時点で探索者たちの持ち物はすべて無くなっている。PC1のみ、身に覚えのない[謎の本]を一冊所持している。
[部屋全体]
【目星】成功で、部屋はタイルかレンガのようなものでできており、床壁天井全てが同じ材質であるとわかる。
【聞き耳】成功で、一瞬不快なにおいを感じる。何かが腐るようなにおいだ。
※【聞き耳】から更に【アイデア】成功で、においの詳細を得られる。
<肉の腐る匂い。真夏に豚肉を一か月常温で放置したような臭気だ。
どこかに臭いのもとがあるわけではなく、この空間自体にしみついているような気がする。>
[台]
80㎝×2m程度の台座。高さは腰くらいで、材質は部屋の他の部分と同じ。
台を見る宣言があった時点で、メモが台の上に乗っているのを発見できる。
☆たどたどしいメモ
「わたしのともだち
わたしをともとよんでくれたおまえ
おまえのためにわたしはもどってきた
おまえとのやくそくをまもる さよならのまえに おまえとのやくそくをまもる」
文字は汚く、線の太さはまちまちで、まるで何かがのたくった跡のように見える。
誰かが一度見ると文字が紙を滑って床に落ち、インク溜まりのような、影のかたまりのような黒い集合体になると
スルスルと床を這って台の下に潜り込んでしまう。紙は気づくと風化しており、見る見るうちに粉になってしまう。
この一連の出来事を目撃した探索者は、【SANチェック 0/1d3】を行う。
※アドゥムブラリのメッセージ。最終フェイズで台が動くまで、この影の様子をうかがうことは出来ない。
台に【目星】成功、もしくは文字を追って屈み込んだりした場合は、その台が一つの大きな車輪で支えられていることと、
レ―ルが部屋の後方に続いていることがわかる。STRなどで動かすことは不可能。
【アイデア】成功で、人一人が横たわることのできるサイズであり、まるで祭壇か何かの宗教的オブジェクトのようだと思う。
[三つの扉]
白、灰色、黒の三つの扉がある。
・白は縦長の手すりがついた引き戸。中央に曇りガラスの窓があり、中を見通すことはできないが明るいことがわかる。
【聞き耳】成功で、風でカーテンが揺れる音をきくことができる。
・灰色は観音開き。窓はなく、向こうを見通すことはできない。
【聞き耳】成功で、穏やかなピアノの曲が聞こえる。音の聞こえ方からして、そこそこ広い空間のようだ。
・黒にはドアノブが見つからない。ただの板のようにも見える。
前に立つとまるで布の切れ目がほつれるように裂ける。触手のような細い繊維を残し、扉の中央から左右に引き開けられる。
奥は暗闇でここからは何も見えない。【聞き耳】を振っても何もわからない。
[後方の扉]
一見してエレベーターの扉のようにも見える金属の両開き戸。取っ手はなく、開けることはできない。
上方に電光掲示板があり、数字が光っている。最初の段階では25。
※この数字は部屋の設定温度を表している。詳細は「部屋移動と数字上昇のシステム」を参照。
[謎の本]
革張りで真鍮の縁飾りとタイトルプレートがついており、「Song of Yste」とある。
アンティークな装丁で、ベルトと鍵がついているため中を見ることはできない。
また、この時点で鍵は所持していない。ある程度探索をすすめると鍵を入手可能になる。
※力ずくでベルトを引きちぎって開けても良いが、最終局面で誰か一人が確定ロストになるため注意。
※内容は英語で書かれおり、PC1が【英語】に成功した場合は内容が一瞬で分かって良い。PC1以外が【英語】判定を行った場合は、
解読のために一部屋分行動不能となる。
☆イステの唄
「生ける影、アドゥムブラリに関する記述。
アドゥムブラリは異次元の生命体である。
我々の世界で現れるときは二次元の影の形をとっており、基本的には水平方向以外には移動できない。
細長い触手を伸ばしながらスルスルと物体の表面を這うように移動する。
非常に狡猾で、身を潜めて近づいて犠牲者の体液を吸う。アドゥムブラリの犠牲になった者の体には青く輝く斑紋が浮かび上がる。
垂直方向に移動できないために上下に逃げられると弱いが、対象を自分の次元に連れてくる方法も持つ(後述)。
彼らは知性を持ち、狩りの成功のために対象について研究し、様々なことを学習するのだ。
探し求めるもの(シーカー)
アドゥムブラリによって生み出された存在。狙いを定めた種族と全く同じ姿に自己をつくりかえ、犠牲者に催眠をかける。
催眠にかけられた者は精神を本来のアドゥムブラリの次元へ投影される。
本来のアドゥムブラリには時間や空間の一般概念は適応されず、あらゆる場所と時間に接している」
ここから探索者は白、灰色、黒の扉いずれかへ入って探索を行う。
探索の順番は自由である。
□探索を済ませて戻ってきた場合
移動と各部屋の行動に応じて、後方の電光掲示板に表示される数字が上昇している描写を入れること。
また、一度白か灰色の部屋でティンダロスの猟犬に遭遇した後だと、この部屋でも遭遇する可能性がある。ここでの探索・相談が長くなるようなら、KP判断で出現させて良い。
□携帯電話の情報(始まりの部屋)
[灰色の部屋]で携帯電話を入手した後に訪れると、下記の情報が出てくる。
・携帯電話の示す日付が1年前、姉崎の出棺の日である、
・他は灰色の部屋で出る情報と同じ。
<仄かに消毒薬のにおいが漂う、清潔な空間だった。
入った瞬間に探索者たちは、ここは病室だ、とわかるだろう。白い壁、ビニルの床。奥には薄緑色のカーテンがゆるやかに揺れており、
淡い光が差し込んでいる。
入ってすぐの右手側にはクローゼットと洗面台があり、控え目に置かれた日用品の色彩が、この部屋に対してどうにもちぐはぐに見える。
部屋の中央には一台だけベッドがあるが、今はそこに人の姿はない。どうやら外出中のようだ>
姉崎の病室。時系列的には姉崎とアドゥムブラリが火葬の約束をする直前であり、この段階で姉崎は自分がもう長くないことを悟っている。
ティンダロスの猟犬が出現する可能性がある。
探索可能箇所は[ベッド][クローゼット][洗面台][サイドテーブル]。他、通常病室にあるようなものはあって良い。
姉崎は検査で不在だが、サイドテーブルの日記を読んだ後に戻ってくる。
[ベッド]
清潔なベッド。掛け布団は足元に寄せられている。
ヘッドボードにはナースコールがあり、ベッド下には送り状の貼られた段ボールが入っている。
段ボールに【目星】で、送り状の宛先が姉崎の実家であること、中には本(小説や伝記など)、筆箱、タオルや日用品等の雑貨が入っていることがわかる。
※筆箱の中に『イステの唄』の鍵が入っているが、PCの記憶から鍵のありかを入手していない場合は発見できない。
[クローゼット]
着替えの服がある。探索者は姉崎が身につけていたことで見覚えのあるものがあるかもしれない。
ただ数は少なく、がらんとしており、頻繁に開け閉めしている様子もないことが伺える。
[洗面台]
体を拭いたりもできるようになっている洗面台。歯ブラシなどが置いてあるが、数は必要最低限といったところ。
[サイドテーブル]
日記帳と姉崎の携帯電話、小振りのフラワーアレンジメント(※PC2もしくはNPCが見舞いに持ってきそうなものに変更可能)などがある。
日記帳を読むのはロール不要。以下のような内容が書かれている。
☆姉崎の日記帳
「おはよう。この部屋は眺めがいい。見えるのは街の景色だが、俺の育った街だ。
夜はカーテンを閉めないで橙色の明かりが揺れるのを眺めるのが好きだ。
知っている家がいくつもある。向こうは俺のことは知らないかもしれないが、
あの人が今、あの家で生活しているのだな、と考えるのは楽しいものだ」
「 (空白のページ) 」
「おはよう。今日はいい朝だ。雲は少しあるが、概ね晴れている。
雲は少しあった方が、朝方に差し込む光の筋が見られて俺は好きだ。
お前は陽の光は大丈夫か?もし苦手なようなら、俺の影にでも隠れているといい。」
「 (空白のページ) 」
「おはよう。俺は今とても気分が良い。友人が明日こちらに来てくれるそうだ。
(PC2もしくはNPCについての姉崎の感想を自由記述/NPC白澤の場合→クセの強い奴だが、楽しい男だ。
いつも面白い話を持ってきてくれる)。明日が楽しみだな。お前はおとなしくしているんだぞ。」
「 (空白のページ) 」
手記を読み終わった時点で姉崎が検査から帰ってくる。
<探索者たちがその不思議な日記を読み終わったところで、背後の扉がひらく音がした。
振り向くと、点滴のカートを押しながら姉崎が戻ってくるところだった。淡い緑色の病院着を着て、その下には全身に包帯をしている。
やせ衰えているのがぱっと見ただけでわかるくらい、痛ましい有様だった>
PC1はこの姉崎に遭遇した瞬間、(約束を破ったことにより)なんとなく申し訳ない気分になる。
PC2もしくはNPC(自分のことが書かれていた人物)は【POW×5】判定をする。
成功すると、姉崎が現れた時に彼の症状が「癌であり、全身に転移が進んでいる。すでに摘出は困難である」ということを「知っている」。
姉崎は病室にいる探索者たちを見ると驚いた表情を浮かべる。
☆会話例:急な見舞客
「いつ来ていた? 連絡を寄越してくれればよかったのに。驚いたぞ。
ところでお前たち面識はあったのか? というか(PC2 もしくはNPC)はこの前も来ただろう」
単純に驚いているだけなので、嫌がったり追い返したりはしてこない。むしろ探索者たちが来てくれたことを喜ぶだろう。
ここでの会話はRPに任せるが、『イステの唄』については必ず姉崎に言及させる。
☆会話例:『イステの唄』について(PC1がそのまま本をもってきている場合)
「ああ、その本、お前が持っていたのか。……別に持っていってもいいぞ。
お前の趣味ではないと思うが……まあ、最後は俺に返してくれることを約束してくれ」
☆会話例:『イステの唄』について(他の部屋に本を置いてきている場合)
「ところで俺の本を知らないか? 革の装丁の良い本なんだが。見つけたらまあ、
持っていても構わないんだが、最後は俺に返してくれることを約束してくれ」
(本は置いていっても持っていっても構わないが、最終フェイズで必要になる。
相当もたつかない限りは本を取りに戻ってくるチャンスはある)
その他、姉崎との会話例は以下。
☆会話例:『イステの唄』について
「とあるツテから手に入ったんだ。英語で書かれた叙事詩で、イステは主人公の女性の名前だ。
イギリスのある土地を舞台に女性の生涯と…………興味があるなら読んでみるのが一番だな」
【心理学】成功で「適当なこと言っているな」と思う。
☆会話例:不思議な日記について
「見られたか。一人きりで暇だったからな。誰かと共同生活している体で日記を書いていたんだ」
少しばつが悪そうに笑う。【心理学】成功で嘘だとわかる。
☆会話例:包帯について
「まあ、いつものやつだ。気にするな」
心理学を振るまでもなく、はぐらかされていることがわかるだろう。
☆会話例:症状について(それとなく尋ねた場合)
「少しだるい。力が落ちたな。あと、いつもではないんだが、全身に鈍痛がある」
【心理学】成功で「適当なこと言っているな」と思う。
☆会話例:症状について(癌だと知っていることを告げた場合)
「……まあ、そうだ。だが、怖いとか、嫌だとか、そういうのは別に無い。
さんざん体が弱いと言われ続けていて、ここまで生きられたんだ。むしろこうやって
見舞いに来てくれる友人もできたし、幸運だと思っている。
そうだなあ、来年の桜まではもたないかもしれないが、変わらず仲良くしてくれ」
【心理学】成功で、彼の気持ちに嘘は無いとわかる。
基本的にアドゥムブラリのことについては黙秘する。適当なことを言ってはぐらかしてくるが、姉崎に悪意はない。
【心理学】にクリティカル等した場合は、いずれも「真実を述べてはいないが、こちらに余計な心配をかけさせまいとする「白い嘘」のようだ」などと記述するとよいだろう。
また、包帯に【目星】もしくはRPで包帯を取らせると、青く光る痣が見える。
<頬に、胸に、手足に、青黒い斑紋が浮かび上がっていた。
色味自体も大層グロテスクだが、不思議なことに痣はうっすらと光っているのだった。
きらきらと、それはまるで月に照らされる湖面のごとく、姉崎の肌の上で輝いている。
じっと見ているうちに、さらに異常なことがおこった。その輝く斑紋は、「動いている」。きらきらと輝いて見えるのは、
その表面が細かく波打っているせいだ。痣はじわじわと動き、僅かずつ場所を移動している>
これを目撃した者は【SANチェック】1/1D3。
更に【POW×5】判定を行い、成功した場合は「この青い痣は確実に死に至るものである」ことを「知っている」。
追加で【SANチェック】0/1D3。
※この部屋が初めて移動した部屋の場合、一通りの探索を終えた時点でティンダロスの猟犬が確定出現する。
<探索者たちは、ふと感じる。腐ったような、吐き気を催すようなにおいがどこからか漂ってくる。
周囲を見回すと、病室の隅が青黒く光り始めていた。清潔な空間に似つかわしくない、おどろおどろしい雰囲気。
微かな雷光と黒々とした煙、死体の匂いが溢れ出している。
陰った場所のちょうどそこが、壁と床の隅だとわかるだろう。隅は見ているうちにぐぱり、と開くと、
死体の匂いと共に四つ足の化け物が這い出してきた>
ティンダロスの猟犬【SANチェック】1D3/1D20
STR:16 / CON:30 / POW:24 / DEX:10
SIZ:16 / INT:17
耐久:23 / MP:24 / db:1d6
[戦闘] 6面ダイス1~4【前足:90】1d6+db(1d6)+POT2d6の膿汁のダメージ
6面ダイス5~6【舌:90】毎ラウンド1d3のPOW吸収
[装甲] 皮膚2、毎ラウンド4ずつ体力を回復
ティンダロスの猟犬は姉崎をターゲットにしない。
姉崎のSANチェックは発生するが、発狂で自殺癖は引かない。このシーンで姉崎が死ぬとシナリオが崩壊するので、何があっても姉崎が死亡しないようにすること。
ティンダロスの猟犬は戦闘して勝てる相手ではないので、撤退推奨。
扉を出ると[始まりの部屋]に戻り、ティンダロスの猟犬は追いかけてこない。姉崎を扉の外に出した場合、この部屋の時間軸の病院廊下に出るだけなので、[始まりの部屋]にはいない。
□2回目以降の白の部屋
2回目以降に訪れると、姉崎はベッドで眠っている。
姉崎との会話以外は初回と同じように探索可能。
□携帯電話の情報(白の部屋)
[灰色の部屋]で携帯電話を入手した後に訪れると、下記の情報が出てくる。
・携帯電話が示す日付が一年以上前である。
・メール等のやりとりは、もともと友人同士だった場合を除き、PC間同士では無い。
・PCと姉崎との間で、病状を尋ねるメールなどが残っている可能性がある。
<スタッキングチェアの並ぶホールだった。突き当たり奥には白い菊が美しく並び、誰かの写真が掛けられている
物悲しいピアノの旋律に、線香の香り。探索者達はここが斎場であるとわかるだろう。>
姉崎の葬儀場である。時系列的には始まりの部屋の前日となる。
部屋には[スタッキングチェア]が並び、司会の台とマイク、焼香用の仏具が乗った[祭壇]、僧侶用の軽便椅子がある。
また、探索者達が入ってきた扉とは別に、斎場の外へ通じる扉がある。扉の先は[控え室]になっているようだ。
※棺は無い。遺体に不可解な斑紋があるために死亡日から葬儀が遅れ、遺体の状態がよくないためという理由にしている。
(実は生きているのでは?というミスリードを起こさせるのが目的)
[スタッキングチェア]
【目星】で並んだ椅子の間にメモを発見できる。手帳を切り取って書かれたものらしい。
このメモをPC1が見た場合【アイデア】判定をし、成功で「自分の筆跡だ」とわかる。
☆手帳のきれはしメモ
「あいつは狡猾だ。きっと再び現れるだろう。この本は燃やさずにとっておくべきだと思う。
いずれまたあいつが姿を現した時に、何らかの対抗策となるかもしれない」
[祭壇]
近づくと遺影が姉崎の姿を映しているとわかる。見た者は【SANチェック】1/1d3。
祭壇に【目星】で、折りたたまれた紙を発見する。手書きの弔辞の原稿である。PC1以外で役割の少ない探索者の筆跡とすると良い。
その人物が見た場合【アイデア】判定をし、成功で「自分の筆跡だ」とわかる。
本文に【目星】で、病状を述べている箇所に何度も書き直した跡があることに気付ける。
☆弔辞の原稿
「……(前略)幼少から体が丈夫ではなく、幾度も入退院を繰り返しておりました。そのせいで本を友人とし、文字を愛したのでしょう。
彼は小説家を志していました。一見すると風変わりな人物、というのは周囲からの評でありましたが、
その感性が紡ぐものには多くの人が期待していたのです。……(中略)……彼の最期は癌でした。
レントゲン写真では体のいたるところに影が巣食い、もはや摘出も不可能だったとのことです……(以下略)」
[控え室]
卓と椅子が並んでおり、奥には白い布の被せられた机がある。机の上には同じく遺影が飾られており、みかんやお菓子が供えられている。
部屋のすみに[ロッカー]がある。
部屋全体に【目星】で、卓上に携帯電話が数台残されているエリアを発見する。
携帯電話は連絡先を交換する画面になっており、探索者たちはそれぞれが自分の携帯電話だとわかる。
詳しく調べると(特に技能ロールは必要ない)、「□携帯電話の情報(灰色の部屋)」の内容が取得できる。
※この携帯電話を入手以降、各部屋の時間に応じた情報を得られるようになる。
主なものは日付、メール等のやりとりである。
黒の部屋で確認した場合は、現在の日付と、今までのすべてのやりとりを見ることができる。
[ロッカー]
座布団とふきん、工具、一冊の本が入っている。
工具からはバールを入手可能。
本は「葬儀のいろは 〜他人に聞けないこともこの本でまるわかり〜」というタイトル。
この本を読み始めると、一部屋分行動不能になる。キーワードを宣言して【図書館】に成功することにより、
時間消費なしで情報を抜くことが可能。
☆葬儀のいろは(キーワード:火葬・車輪・台車)
「火葬には大きく分けて2種類があり、それぞれが台車式とロストル式と呼ばれている。
台車式とは鉄製の車輪がついた台の上に棺をのせてバーナーで焼く方法、ロストル式とは網の上に棺を乗せて焼く方法である。
日本はほとんどが台車式であり、悪臭が発生しづらい・遺骨が型崩れしづらいといった利点がある。
火葬温度はダイオキシンの発生しづらい800〜950度であり、これは台車式・ロストル式ともに同じである」
※斎場と控室の両方を探索し終わった時点で姉崎の棺がないことに気づいていなければ、【アイデア】を振らせても良い。
難易度を少し上げたい時など。
※この部屋が初めて移動した部屋の場合、一通りの探索を終えた時点でティンダロスの猟犬が確定出現する。
<探索者たちは、ふと感じる。腐ったような、吐き気を催すようなにおいがどこからか漂ってくる。
周囲を見回すと、部屋の隅が青黒く光り始めていた。静謐な空間に似つかわしくない、おどろおどろしい雰囲気。
微かな雷光と黒々とした煙、死体の匂いが溢れ出している。
陰った場所のちょうどそこが、壁と床の隅だとわかるだろう。隅は見ているうちにぐぱり、と開くと、
死体の匂いと共に四つ足の化け物が這い出してきた>
ティンダロスの猟犬【SANチェック】1D3/1D20
STR:16 / CON:30 / POW:24 / DEX:10
SIZ:16 / INT:17
耐久:23 / MP:24 / db:1d6
[戦闘] 6面ダイス1~4【前足:90】1d6+db(1d6)+POT2d6の膿汁のダメージ
6面ダイス5~6【舌:90】毎ラウンド1d3のPOW吸収
[装甲] 皮膚2、毎ラウンド4ずつ体力を回復
ティンダロスの猟犬は戦闘して勝てる相手ではないので、撤退推奨。
扉を出ると[始まりの部屋]に戻り、ティンダロスの猟犬は追いかけてこない。
□2回目以降の灰色の部屋
初回と同じように探索可能。
□携帯電話の情報(灰色の部屋)
この部屋で携帯電話を入手すると、下記の情報が出てくる。
・探索者たちはすでに連絡先を交換している
・携帯電話の示す日付が1年前の姉崎の葬儀日である
・ここ1年(姉崎死亡〜シナリオ開始直前までの期間)のデータが何もない
・PC1は姉崎から受信した最後のメールを見ることができる。
「見舞いに来てくれた時の約束、覚えているか? 忘れてくれるなよ」
・PC1と任意のPC(NPC)は、メールのやりとりを見ることができる。
「from 任意のPC(NPC) to PC1
お疲れ様です。姉崎さんのお家で身辺整理を手伝っていたのですが、病院から送られてきた
段ボールを片付けていたら筆箱から小さな鍵を見つけました。
PC1さんが仰っていた本の鍵でしょうか。確認されるならお持ちします」
「from PC1 to 任意のPC(NPC)
ありがとう、そうしましょう。棺の中に入れる前に、ヨウが気にしていた本がどんなものだか
確認しておきたいので」
<扉の先はめまいのするような暗闇だった。先へ進もうにも、道があるのかすらわからない。
だがしばらくすると、探索者たちはその暗闇にも目が慣れてくるだろう。そうして気づいた周囲の様子は――混沌だった。
様々な景色が混ざり合っており、年代や場所もちぐはぐな風景が、たくさんの映像素材をめちゃくちゃに編集したかのように
現れては消え、現れては消えを繰り返している。
前も後ろも、上下左右も、整合性のない風景が360度をぐるりと取り囲み、吐き気のするような速度で探索者の周りを流れていく>
すべての場所と時間に接続する、アドゥムブラリの次元である。
この部屋に入った探索者は、めまぐるしく入れ替わる風景の嵐に【SANチェック】0/1。
ここは特殊な時間軸のため、ティンダロスの猟犬が出現しない。また、[灰色の部屋]で携帯電話を入手している場合、
現在までのすべてのやりとりが確認可能(携帯電話の情報(黒の部屋)を参照)。
部屋全体に【目星】することで、混沌とした中で比較的はっきりと見える景色に気づくことができる。
<どうやらそこはどこかのカフェのようだった。よく行く場所かもしれないし、覚えがないかもしれない。
だが間違いなく探索者達はそのカフェを知っているはずだ。なぜなら、映し出されているカフェの、ボックス席に座っているのは、
探索者たち自身であったからだ。
座る探索者たちはどこか遠い目をしており、会話はなく、項垂れたままじっとしている。
まさに放心状態と呼べる様子で、周囲の他の客が動き回る中、そこだけ時間が凍りついたように固まっている>
【SANチェック】1/1d3。
服装は探索者たちが今身につけているものと同じ。
※現在の現実空間の様子。PC1が他のPC/NPCを招集して話し合いをしているカフェである。
しばらく進むと、探索者達は誰かが近づいてくることに気づく。
<しばらくその部屋を進んでいると、探索者たちはふと、部屋の中に人影があることに気づく。
その人物は部屋の奥から現れ、混沌とした風景の中をゆっくりと歩み寄ってくる。
顔が見えるくらい近くに来て、それが誰だかわかった途端、あなた達は驚くかもしれない。病弱で、本と包帯が友人だったような男の、
健康で直と背筋を伸ばした姿がそこにあった>
姉崎ヨウ・シーカーである。
彼はPC1の持つ『イステの唄』に目を留めると(持ってきていない場合はPC1を見ると)、「……ああ、お前だったのか」と呟いて
心底残念そうな表情を浮かべる。
以降、シーカーと会話が可能。シーカーは完全に姉崎を写しているため、探索者たちが外見や口調から違和感をおぼえることはない。
ただし彼の健康そのものといった彼の姿に首を傾げることはあるだろうし、友人に対するにしては表情が厳しい。
【心理学】では、こちらに対して敵意を抱いていることがわかる。
☆会話例:お前は誰だ?
「お前達がよく知っている奴さ」
☆会話例:姉崎ヨウか?
「親友の顔も忘れたか?」
☆会話例:久しぶりだね。
「ああ、そうだな」
☆会話例:病気よくなったの?/健康そうだね。
「そうか、そう見えるか。……なら、良かった」
☆会話例:ここはどこ?
「さあ、時間と空間の狭間、とでもいうところか。見たとおり、あらゆる時間と場所の景色が
流れていっている」
☆会話例:ここで何をしている?(『イステの唄』を持っていない場合)
「お前達が来るのを待っていた……約束を果たすために。
とても大事な約束だ。一人の男が命をかけた、最期の優しい約束だ。
だが、邪魔者がいたんだ。だから呼び出した。そしてお前達が来た。
もう余計なことはさせない、邪魔者はここで始末する!
二度とあいつとの約束を反故にはさせない!」→戦闘へ移行。
☆会話例:ここで何をしている?(『イステの唄』を持ってきている場合)
「お前達が来るのを待っていた……約束を果たすために。
その本を返してくれ。それは俺のものだ」
→返す
「ありがとう。……アハハ!これで用は済んだ!ありがとう!
後は邪魔者を消してしまえばもう二度とあんなことは起こらない!」→戦闘へ移行。
→返さない
「そうか、……お前達は何度だってそう答えるんだな。ならば、こちらがやることは一つだ。
お前達を殺して奪い取る」→戦闘へ移行。
*姉崎ヨウ・シーカー
【SANチェック】なし ※友人に襲われたことによるSANチェックを発生させても良い
STR:13 / CON:8 / POW:18 / DEX:11
APP:16 / SIZ:12 / INT:15
耐久:10 / MP:18 / db:1d4 / SAN:なし
[武器] なし
[呪文] なし
[戦闘] 【こぶし:50】【繊維状突起:30 ※行動順無視行動】【吸血:100】
・戦闘開始直後、1d6本の繊維状突起がシーカーの背後から伸びてきて探索者たちを絡め取ろうと襲ってくる。
突起1本ごとに命中判定を行い、命中した場合は1本につき戦闘中のDEXを-5とする。
・繊維状突起の攻撃はシーカーの行動と別であり、各ターンの始めに入る。
・2ターン目以降の突起の数は1d3。1本につきSTR8との対抗で振りほどき可能、1以上のダメージで解除(装甲なし)。
・DEXが0になった探索者がいる場合、シーカーの行動順で【吸血】を行う。 ダメージは1d6STR & 1d6CON。
・基本的には『イステの唄』を所持している者を集中して攻撃する。
・シーカーのHPが半分以下になったら逃走する。オーバーキルした場合もHPが残ったことにして逃走。
・姉崎への信頼を熱く語るなどのRPが入った場合、攻撃をやめて撤退する。
シーカーとの戦闘に勝利した場合
シーカーが敗走した際に紙束を落とす。『イステの唄』を渡している場合は、『イステの唄』も同時に落とす。
☆紙束(=姉崎の日記帳後半)
「おはよう。はは、そう拗ねるな。ともあれありがとう。
…感慨深いな、はじめはお前とこうやって意思の疎通ができるなどとは考えてもいなかった。
字もずいぶん上手くなった。
医者によるとそろそろおれも長くないようだが、逆にお前とずっと一緒なのだと考えれば、先を考えても寂しくはないな。」
「 (空白のページ) 」
「おはよう。そうだな、そろそろ身辺整理をはじめようかと思っている。発つ鳥後を濁さず、だ。
俺の友人たちに迷惑はかけられないからな。お前はどうする?俺と一緒に来るか?」
「 (空白のページ) 」
「ありがとう。残り少ない命だた、お前にやろう。俺が死んだら、お前は本の中に戻れ。
一緒に棺の中に入れてやろう」
「 (空白のページ) 」
「ああ、そうしよう。約束だ」
※日付は白の部屋の後〜姉崎死亡日の間である。
また、この時にシーカーを追って部屋の奥まで行くと、アドゥムブラリ本体と遭遇する。
*アドゥムブラリ本体【SANチェック】1d6/1d20
<部屋の突き当たりは、周囲のめまぐるしい景色とは打って変わって真っ黒に塗りつぶされていた。
まるで全ての時間と景色の逝き着く先であるかのように、周囲の色はその箇所で失われていく。
だが探索者たちは、その闇からどこか生温い、絡みつくような息遣いを感じるだろう。
そして気づくだろう、見ているだけで窒息しそうなほどの漆黒の、その中央から幾千本もの細長い触手が伸びていることを。
それは生きた墨汁の筆致のようにざらざらした繊維質で、まるで探索者の喉元を撫でるように、
足首にゆるりと巻きついては離れる海藻のように、緩慢な動きで動き回っているのだった>
STR: - / CON:14 / POW:18 / DEX:11
APP: - / SIZ:28 / INT:15
耐久:- (撃破不可) / MP:18 / db:なし
[戦闘] 【繊維状突起:30 1d6STR & 1d6CON】
シーカーとの戦闘から撤退した場合
再び黒の部屋を訪れないと、紙束を入手することができない。
『イステの唄』を渡してしまっている場合も、再度黒の部屋を探索する必要がある。
□2回目以降の黒の部屋
2回目以降に訪れると、姉崎・シーカーはいなくなっている。
初回でシーカーを退散させ、紙束を入手している場合は特に探索箇所は無い。
シーカーに敗走した場合は、部屋の突き当たり、アドゥムブラリ本体の足元に紙束が落ちている。シーカーが再び姿を見せることはない。
□携帯電話の情報(黒の部屋)
[灰色の部屋]で携帯電話を入手した後に訪れると、下記の情報が出てくる。
・携帯電話の日付がバグっている。
・現在の時間までのすべてのデータ・やりとりを確認できる。
・[灰色の部屋]に加えて、下記のやりとりを確認できる。
・ライングループ1(姉崎葬式後)
PC1「葬儀の間にも伝えたとおりです。この本は私がもっておく、いつか必要になるときがくると思うから」
「私もそう思います」「了解です、なにかあったら連絡してください」
・ライングループ2(シナリオ開始直前)
PC1「今日、街で姉崎さんを見ました。何を言っているかわからないでしょうが、画像のとおりです」
「おそらく奴が戻ってきている」
「やばいな」
PC1「どうにかしないと。協力してくれるか? 次の日曜、例のカフェに来れる?」
「わかりました。PC1さん、例の本はまだ持っていますか? もう一度読み直しましょう」
※最終フェイズに突入する条件は「KP情報/部屋移動と数字上昇のシステム」を参照。
最終フェイズは戦闘シーン扱いとなるため、限られた行動数で適切に動く必要がある。
ベストエンドでのクリア条件は、「アドゥムブラリが入った『イステの唄』を、姉崎ヨウの棺の中に入れる」こと。
ただし『イステの唄』を破壊している場合は、この時点で既にベストエンドに到達することは不可能となる。
その場合、生還するためには【回避】に成功し続ける必要がある。
□最終フェイズの戦闘イベント
・[はじまりの部屋]にて、「カチッ」という音をきく。(着火音)
・これ以降、白、灰色、黒の全ての扉が閉ざされる。
1ターン目
・ターン開始直後、後方の扉が開き、台がスライドして部屋を出て行く。こちらの扉から探索者が外に出ることはできない。
・このターンのみ、台のあとにアドゥムブラリの文字を発見することができる。
☆友人Aの約束
「こちらこそ ありがとう わたしのともだち ともに燃えよう やくそくする」
・ターン終了時、台が上に棺を乗せて戻って来る。火葬台が部屋の中央に収まると、台の下から黒い影、アドゥムブラリが染み出してくる。
2ターン目以降
・ターン開始時にティンダロスの猟犬が部屋に出現。探索者たちを攻撃する。
※部屋が燃えているので、ティンダロスの膿汁の追加ダメージは発生しない。
・同時に部屋全体が着火し、「部屋が炎に包まれた場合」の処理(p.362)を行う。
・この部屋が火葬室であると探索者が気づいた瞬間、このままだと生きたまま焼かれること、逃げ出す道がないことに
【SANチェック】1d3/1d10
・アドゥムブラリは取り付くものを探して攻撃を行ってくる。
*アドゥムブラリ(影)【SANチェック】なし
STR:13 / DEX:11 / 耐久:-
[戦闘]【とりつく:100】
『イステの唄』が破損なしである場合は、『イステの唄』のみを対象にする。
『イステの唄』が破損/未所持の場合は、探索者を対象とする。回避を振ることは可能。
とりつく対象は一人まで。とりつかれた場合、探索者の全身に即座に青い斑紋が現れる。
・『イステの唄』を持って自らアドゥムブラリを回収に行く場合は自動成功となる。
・棺は釘を打ち付けて封をしているため、ただでは開けることができない。
【STR15との対抗】に成功、もしくはバール使用で開けることが可能。
またこの時に棺の中を覗き込んだ者は形の崩れた姉崎の死体を目にして【SANチェック】1/1d6。
□エンド分岐
①最終フェイズに入った時点でイステの唄を破損の無い状態で所持
はい→②へ
いいえ→④へ
②イステの唄にアドゥムブラリが入った
はい→③へ
いいえ→戦闘ターンを継続、HPが0になった場合はEND2へ
③イステの唄を姉崎の棺に入れた
はい→END1へ
いいえ→戦闘ターンを継続、HPが0になった場合はEND2へ
④PC, NPCのいずれかがアドゥムブラリにとりつかれた
はい→END3へ
いいえ→戦闘ターンを継続、HPが0になった場合はEND2へ
□END1 約束の完遂
ただちに現実へ戻ることとなる。HPは全回復しているが、失ったSTR, CON, POW等は回復しない。
『イステの唄』はどこにも無くなっている。
<アドゥムブラリの入った『イステの唄』を姉崎の棺に入れた瞬間、探索者の視界は白く染まる。
気づくと、探索者たちは馴染みのカフェで向かい合って座っていた。
昼下がりの日曜日。小気味良いジャズの音色に、ウェイターが注文を受けて往来する靴音が重なる。
目の前にあるのは、1年前、とある友人の葬儀の際に知り合ってから度々連絡をとるようになった知人の顔。
その相手も今しがた白昼夢から覚めた様子で、そろそろと周囲を見回している。
あなたたちは、姉崎の姿をとったシーカーの出現を目撃し、その対処を相談するためにここに集まったことを思い出すだろう。
だがそれと同時に、もうシーカーは現れないこと、アドゥムブラリは友人と共に炎に消えることができたのだということを知っている。
あなたたちは、たった今、それを見送ってきたのだ。その証拠に、持ってきたはずの『イステの唄』はどこにも無かった。
誰からともなく口を開き、例の友人のことをぽつぽつと語り始める。そして昔話に花が咲き、あなたたちはそのまま何事もなく
日曜の午後を過ごすことになるだろう。奇妙な体験はやがて記憶の彼方に去り、姉崎ヨウにまつわる一つの思い出として
静かにこころの中に仕舞い込まれていく。
陽が傾く頃になって、あなたたちは家路につく。良ければまた会おうと言葉をかわして、燃えるような西日と細い影の中を帰っていく。
明日からは、なんてことない日常が待っている>
□END2 白昼夢からの脱出
HPが0になるまで火葬室に居続けることとなる。
HPが0になった後は現実に戻ることができるが、生きたまま焼かれたことにより【SANチェック】1d3/1d10が入る。
HPは全回復しているが、失ったSTR, CON, POW等は回復しない。『イステの唄』はどこにも無くなっている。
<身体じゅうを炎が舐め、かげりゆく視界の中で紅い光が踊る。感覚の閾値を超えた熱と痛みに、あなたたちは意識を失うだろう。
気づくと、探索者たちは馴染みのカフェで向かい合って座っていた。
昼下がりの日曜日。小気味良いジャズの音色に、ウェイターが注文を受けて往来する靴音が重なる。
目の前にあるのは、1年前、とある友人の葬儀の際に知り合ってから度々連絡をとるようになった知人の顔。
その相手も今しがた白昼夢から覚めた様子で、そろそろと周囲を見回している。
不思議と、体に傷はなかった。――ああ、帰ってきたのか。
影のかたちをした悪魔、アドゥムブラリの退散に成功したことを知ったあなたたちは、ほっと胸をなでおろす。
奴は燃えたのだ。もう戻ってくることはないだろう。
あなたたちは、姉崎の姿をとったシーカーの出現を目撃し、その対処を相談するためにここに集まっていた。
その原因がなくなった今、どっと疲れが出たあなたたちは、そのままカフェで休憩を続けるかもしれないし、
早々に立ち去って眠りにつこうとするかもしれない。
これで良かったのだろうか――という思いが無いわけではない。しかし、今は命があってこそ。過去に縛られ、誰にも知られないところで
命を落とすよりはよほど良い。どのみち明日からは、日常が待っている。
そうして探索者たちは、ふたたびもといた場所へと帰っていくのであった>
□END3 吸血影の復讐
探索者はHPが0になるまで火葬室に居続けることとなる。
HPが0になった後は現実に戻ることができるが、生きたまま焼かれたことにより【SANチェック】1d3/1d10が入る。
HPは全回復しているが、失ったSTR, CON, POW等は回復しない。
またとりつかれた者は炭化した死体となっておりロスト。『イステの唄』はどこにも無くなっている。
<身体じゅうを炎が舐め、かげりゆく視界の中で紅い光が踊る。感覚の閾値を超えた熱と苦痛に、あなたたちは意識を失うだろう。
気づくと、あなた(生存PC)は馴染みのカフェで座っていた。
昼下がりの日曜日。小気味良いジャズの音色に、ウェイターが注文を受けて往来する靴音が重なる。
――ああ、帰ってきたのか。あるいは夢だったのかもしれない。
そう安堵するのも束の間、近くから鋭い叫び声が上がるのを耳にする。そういえば、ひどく焦げ臭い。
はっと目を上げると、目の前には一年前に知り合った友人――の、黒く炭化した焼死体があった。
ガシャンと食器の割れる音、椅子から落ち、外に逃げ出す客。カフェが一瞬にして混乱に陥る中、あなたは呆然と目の前の死体を眺める。
顔の皮膚は半ば溶け落ち、四肢の肉は剥落しかけ、一部骨をのぞかせている。その肉をよく見ると、微妙に焼け方の違いがあり、
斑模様を作っているのがわかった。
アドゥムブラリは焼けた。今後シーカーを生み出し、目の前に現れることはないだろう――そのことはぼんやりと理解するが、
二次元の吸血影は、復讐のために新たに友人一人を連れて行ったのだ。
遠くからサイレンが響いてくる。未だ夢の中にいるような心地のまま、あなたは目の前で起こる状況を眺めている。
これからどうなるのだろう。夢の中のこと、炎の中に消えた友人たちのことを、誰が信じてくれようか。
貴方の手元にも、焼死体の近くにも、もうどこにも『イステの唄』は無いのだ>
【SAN回復】
シナリオから生還 2d6
姉崎とアドゥムブラリの約束を完遂させる 1d6
アドゥムブラリ本体に遭遇 1d6
*アドゥムブラリ
二次元の吸血影。姉崎ヨウに寄生するも、彼にほだされ「友人」としての関係を築く。
小説家を志していた姉崎の真似をして、自らのかたちを使ってたどたどしいメッセージを描くことを覚えた。
今回は他次元への接触が可能という部分を拡大解釈し、時間的次元にも介入できることとした。
そのため探索者たちが過去へ戻ったりできるようになっており、同時にティンダロス案件にもなっている。
*シーカー
アドゥムブラリが生み出した存在で、目をつけた者をアドゥムブラリの次元へとつれてくる能力をもつ。
対象の種族の姿を完全に真似ることができ、本シナリオでは探索者たちを釣るために姉崎ヨウの姿をとった。
*イステの唄
英語で書かれたマイナーな魔導書。原題は『Song of Yste』。アドゥムブラリとそれに関係するものについて書かれている。
姉崎が持っていたものはアンティーク調の装丁がされており、一見すると昔の叙事詩かなにかのように見える。
革張りで真鍮のプレートとベルト、鍵がついている。なお、退散方法についての記載は無い。
*火葬
火葬には大きく分けて2種類があり、それぞれが台車式とロストル式と呼ばれている。
台車式とは鉄製の車輪がついた台の上に棺をのせてバーナーで焼く方法、ロストル式とは網の上に棺を乗せて焼く方法である。
日本はほとんどが台車式であり、悪臭が発生しづらい・遺骨が型崩れしづらいといった利点がある。
本シナリオで採用しているのも台車式火葬。
火葬温度はダイオキシンの発生しづらい800〜950度であり、これは台車式・ロストル式ともに同じである。
シナリオ内で日付を確認することによって重要な手がかりを得られる可能性があるため、各部屋に対応する時間については、あらかじめ詳細な日程を決めておいた方が良い。
-6. 姉崎ヨウが魔導書『イステの唄』を入手、アドゥムブラリに寄生される。
アドゥムブラリは姉崎を利用して餌となる人間を集めようとし、姉崎をすぐに殺すことをしなかった。
その結果、姉崎とアドゥムブラリは筆談を重ね、やがて友人ともいえるような関係を築く。
-5. 白の部屋の時間。この前後に探索者たちは姉崎の見舞いに訪れている。
-4. 衰弱した姉崎は自分以外にアドゥムブラリの被害が拡がるのをくいとめるため、アドゥムブラリに対して共に火葬されることを提案する。
アドゥムブラリはこれを承諾し、二人の約束となる。
-3. 姉崎が死亡し、PC1が遺品整理を手伝った際に『イステの唄』を発見。アドゥムブラリとシーカーの存在を知る。
-2. 灰色の部屋の時間。
姉崎の葬儀の日。この時にPC(NPC)たちは全員が知り合いとなる。
PC1はアドゥムブラリの再来に対処するために『イステの唄』の保管を決意。
なお姉崎の遺体は不可解な斑紋があるため病理解剖がはいり、葬儀場には無い。
-1. 始まりの部屋の時間。姉崎の火葬の当日であり、灰色の部屋の翌日。
0. 姉崎の死から一年が経過したころ、PC1が死亡したはずの姉崎の姿をみかける。
シーカーが対象に化けることができると知っているPC1は、他のPC(NPC)に連絡をとり、集合して対処を相談しようとする。
1. 全員が集合したところでシーカーの精神攻撃をうける。
探索者たちは姉崎死亡前の精神状態でアドゥムブラリのいる次元に放り込まれ、何が何やらという状態でシナリオがスタートする。
2.探索者は各部屋で情報収集(ティンダロスの猟犬との戦闘含む)をしながら、姉崎がすでに死亡していることと、
その原因となった神話生物のこと、自分たちが何をしたかについて記憶を取り戻していく。
3.最終的に、姉崎の約束、アドゥムブラリの約束を完遂させることで本シナリオはクリアとなる。
本シナリオを用いて遊ぶ・改変して遊ぶ・動画作成等の連絡は不要ですが、コメント等で教えてもらえると喜びます。
楽しんでいただければ嬉しいです!ありがとうございました!
※クレジット表記をお願いします。
※そのまま、または二次加工して無断で再配布および販売することを禁じます。
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