10年前、とある海辺の街のとある家で起きた殺人事件。犯人は母親、被害者は父親。
一家心中として片付いた事件が徐々に風化していった十年後、PLが海辺に遊びに来た。
一家になにがあったのか?
初めて制作しました。やんわりと生暖かい目でご覧ください。
『海還り』という言葉はゲームの『SIREN』からとりました。タイトルからどんな神話生物が出てくるか予想がつくかもしれないので、伏せた方がいいかもしれないです。
推奨技能
〈目星〉〈図書館〉〈聞き耳〉〈信用〉〈言いくるめ〉〈説得〉〈精神分析〉
概要
10年前、とある海辺の街のとある家で起きた殺人事件。犯人は母親、被害者は父親。
一家心中として片付いた事件が徐々に風化していった十年後、PLが海辺に遊びに来た。
海
全力で遊んでいる最中、妙な視線を感じた。
〈目星〉〈聞き耳〉
遠くの方で、地元の老婆であろう人が自分たちを険しそうな顔で見ている。
『この海で遊ぶとは、罰当たりな...』
老婆はすぐに去ってしまう。
その後、帰ろうとするとPL全員が海の遠くに人型のような影を見る。影はすぐに消えてしまった。
道中
泊まる宿屋へ帰る途中、空き地となった場所に一人佇む青年を見かける。
青年はPLに気付きそのまま何も言わずに立ち去るが、ポケットから一枚の雑誌記事が落ちる。
『雑誌記事』
10年前に起こった一家心中事件。
犯人は母親紗子であり、父親幸治の首を包丁で切りつけた後、自身も包丁で首を切り自殺した旨が書かれ、下品な推論が書かれている。
また、長女祥子の行方がわからなくなっている。
〈アイディア〉〈目星〉
雑誌の写真からこの空き地が現場だとわかる。
宿屋・夕飯時
夕食時、女将さんと会話ができる。
今は海で遊ぶ人がいるが、昔は恐ろしくて海など泳げなかった。などと話すが、雑誌記事を見た女将さんが、眉を潜めてどこかに行き、代わりにおしゃべりな中居さんが声を潜めて話す。
犯人である母親はここの地元の人間で、女将さんと友人。未だに母親が犯人だとは思っていない。実は明日が事件のあった日である。
息子がいたはずだが、遠い親戚に引き取られた。
宿屋・深夜
宿屋の入り口で、女将さんが一枚の写真をぼんやりと眺めている。
女将さんは目を少し赤く腫らしている。
写真は、幼い少女二人組が写っている。
女将さんと会話が可能。
お客さんだから対応は丁寧だが、雑誌記事を持っているのを見られてるので不審がる。
〈信用〉〈説得〉〈言いくるめ〉を成功させると重い口を開いてくれる。
質問は3回まで。
『写真について』
自分と紗子が中学生くらいの時に撮った写真。自分たちは親友だった。
『女将さんについて』
このみという名前で、この宿が実家。紗子とは幼馴染であった。
『10年前の事件について』
紗子が事件を起こしたことが未だに信じられない。けれど、凶器の包丁からは紗子と夫の幸治の指紋が出ている。
息子の浩介くんは、事件のあった翌朝、浜辺で見つかった。
『紗子について』
気立てのいい、家族思いの女性だった。事件後は夫側の親戚から骨壺を拒否されて無縁仏としてこの地に葬られている。
『この街について』
漁業が盛んであるが、特に年寄りはあまり海に近づこうとしない。ここ10年の間、魚が獲れなかったことはない。
『その他の質問』
わからないと答えるか、適当に答えましょう。
質問後、女将はPLたちの前から去ろうとします。PL全員に〈聞き耳〉をさせる。
成功→「あの子は、海に還ったのかしら?」
夢
目が覚めると、どこかのリビングルーム。
薄暗い中、ソファとテーブル、椅子にダイニングキッチンが確認できる。
テレビが砂嵐を映していたが、突然、ニュースが流れる。
ニュース内容は海辺の街でおきた殺人事件について。
〈目星〉〈聞き耳〉〈アイディア〉
画質、音質ともに悪く、ニュースキャスターの衣装や化粧がやや古めかしく感じる。
ニュース内容も相まって10年前のニュースが流れていることに気づく。
SANチェック 0/1d3
全体に〈目星〉
テーブルに部屋の間取りがある。
一階に玄関、リビング、風呂場。
二階に四人家族それぞれの部屋がある。
窓があるが、外側からガムテープで見えないように目張りされている。
ダイニングキッチン
〈目星〉
包丁が一丁ないことに気づく。
玄関
鍵を開けても扉は開かない。靴棚がある。
〈目星〉
玄関には三足靴があり、女性用男性用、子供用男児の靴がある。
靴棚のなかには、新品の女子供用の靴がある。
風呂場
脱衣所に入ったときに強烈な違和感を感じる。
風呂場の入り口は閉ざされている。
全員〈聞き耳〉
誰かがお風呂に入っている音がする。
風呂場の入り口が開く。
そこには誰もいない。
SANチェック 0/1
〈目星〉
風呂場に必要な鏡がないことに気づく。
また、浴槽に魚のような鱗と貝殻のペンダントが落ちている。
『魚のような鱗』
〈目星〉
大きな薄黄緑色をしており、なかなかかたい。
〈生物学〉
鱗の種類としては硬鱗であるが、人間サイズの鱗であることがわかる。
『貝殻のペンダント』
〈目星〉
貝殻に薄くKからSへ、と書かれている。
階段
幸せそうな家族写真が壁に掛けられている。
〈アイディア〉〈目星〉
子供の成長順にかけられた四人の家族写真だが、ある日を境に長女の姿がなくなり、父と母、長男の3人の写真しかなくなる。
4つの部屋
それぞれ幸治、妙子、祥子、浩介の名前が書かれたネームプレートがかけられている。
最初は浩介の部屋しかあかない。
浩介の部屋
〈聞き耳〉
人がいる気配がする。
なにやらごそごそと動き回っているようだ。
なかに入ると、空き地にいた青年が立っていた。
青年はPLの姿に驚き、不審な目を向けながらも浩介と名乗り、この家の長男だったと答える。
〈信用〉〈説得〉〈言いくるめ〉を使用すると警戒を解いてくれる。
更に貝殻のペンダントを渡すと嬉しそうにお礼を言ってくれる。
『10年前の事件について』
事件のあった深夜、大きな物音で目を覚ました。怯えていると姉が部屋に入ってきて、海へ散歩へ行こうと言ってくれた。
海へと歩いている間、自分は姉の後ろ姿ばかりを見ていたが、繋いでいる手が妙に滑っていたのを覚えている。
海についた時、姉は自分が贈った貝殻のペンダントを家に置いてきてしまったことに慌てたが、いつか海に流して欲しいと頼み自分が止める間もなく海の中へ消えてしまった。
その後のことはよく覚えてないが、両親が死んだため遠い親戚の家で育った。
ふと、姉との約束を思い出しこの地に帰ってきた。
『姉について』
とても綺麗で自慢の姉。しかし、海で溺れてからは家にひきこもるようになった。
海を怖がることなく、どこか恋しそうにしていたので貝殻のペンダントを贈った。
不思議と姉の顔をよく覚えていない。
『母について』
姉がひきこもるまでは優しい人だった。姉がひきこもってからは神経質になり、姉に会わせてはくれず姉の部屋に外から鍵をつけた。
それでも父を殺したとは考えられない。
『父について』
躾に厳しかったが、家族を大事にしていた。母の姉に対する神経質さに驚いていた。事件の数日前からどこか落ち着かなかった。
以降、浩介が仲間になります。
浩介の部屋にはなにもないです。
幸治の部屋
〈聞き耳〉
どこか気の狂ったひきつった笑い声が小さく聞こえる。
浩介から父の声だと言われる。
浩介がいる場合、ドアが開く。もちろん誰もいない。
SANチェック 0/1
本棚と机と椅子、ベッドがある。
部屋全体〈目星〉
カーテンが気になり、カーテンを開けると窓一面に赤い文字で『あのこじゃない』と書かれている。
SANチェック 0/1
本棚〈図書館〉
海関連、特に魚に関するの本が多いことに気づく。
ここで鱗を調べると〈生物学〉で調べた結果と同じ情報が得られる。
机〈目星〉
日記が見つかる
『日記』
家にひきこもる娘を心配する旨と神経質になった妻に戸惑う旨が書かれている。
事件の数日前から、『あれは私の娘じゃない』『娘は海の中だ』『化物が、化物が家に...』などと常軌を逸した言葉がノート一面に書き連ねている。
最後のページには、『家族を守らなければ』と震えた字で書かれている。
紗子の部屋
〈聞き耳〉
女のすすり泣く声がする。
浩介から母の声だと言われる。
浩介がいる場合、ドアが開く。もちろん誰もいない。
SANチェック 0/1
本棚、机と椅子、ベッドがある。
本棚〈図書館〉
地元の郷土資料がある。中には紗子が幼い頃に制作した『海還りについて』と評された紙の本がある。
郷土資料
この地は昔、生贄を海に捧げる儀式を行い漁をおこなっていた。今は儀式をしてはいないものの、海を恐れ敬い漁師以外は海に近づかない。
机〈目星〉
アルファベッド錠のついた箱と日記を見つける。
アルファベッド錠は4つのアルファベッドを合わせることによってひらく。
『日記』
娘を海に近づけたことを後悔してもしきれない旨が書かれている。
娘は海で溺れてから日に日に魚人に近づき、海を渇望するようになった。夫と息子に娘の姿を見せたら発狂する恐れがあるため、娘は部屋へ閉じ込めた。娘のために家中の鏡を取り外した。
大事な家族を護りたいが、友のこのみは娘を諦めろと言ってくる。嫌だ、娘も諦めたくはない。どうにか娘を、人間に戻したい。
夫の様子がおかしい。娘の姿を見てしまったに違いない。間違いを犯す前に、彼を止めなければ。
『アルファベッド錠』
家族のアルファベッド。KSSK(幸治、紗子、祥子、浩介)で開く。
中には鍵が入っている。祥子の部屋のもの。
そして、一冊の古ぼけたノートが見つかる。
『海還りについて』
紗子とこのみが調べた研究ノート。このみは女将の名前。
昔、海から魚のような人間が現れた。魚人は豊漁を約束する代わりに子供を一人生贄に捧げる約束を村人と交わした。
村は豊漁で豊かになった。しかし、いつしか魚人との約束を覚えている者がいなくなり、生贄を捧げる儀式もやめてしまった。
ある日、村人の子供の体が魚のように鱗に覆われ海を恋しがり、やがて海の中へ消えてしまった。魚人の呪いに慌てた村人は儀式を行なったが、魚人になり海へ消える子供が跡を断たなかった。これを海還りという。
霊験あらたかな法師様に祈祷してもらい、ようやく海還りはやんだ。
以来、この土地の人間は海を恐れている。
祥子の部屋
〈聞き耳〉
なにも聞こえない。
鍵を使って中に入ると、荒れた室内が目に入る。ベッドに机に椅子。
ベッドの上には古ぼけたテレビが置かれている。
全体に〈目星〉
床の一部が血塗れになっていることに気づく。
SANチェック 0/1
机に〈目星〉
机の引き出しから、大量のノートが出てくる。どれも祥子が書いた日記のようだ。
『日記』
日記は両親とは違い、海で溺れる前のことが書かれている。
海で溺れる数日前、腕が妙にざらつき手が以前よりも大きくなっていることに気づく。
海で溺れた日から、妙に海が恋しくなり夢の中で偉大なる神へ祈りを捧げている。
母は自身をここに閉じ込めたが文句は言わない。変化していく容貌見せないために、母は家から鏡を撤去してくれた。
弟の浩介は、海に行けない私のために浜辺で拾った貝殻ペンダントにして贈ってくれた。とても嬉しい。例え人間でなくなっても、このペンダントさえあれば、幸せな日々を思い返すことができるだろう。
父が私の異変に気づき、おかしくなってしまった。父は近いうちに私を殺しにくるだろう。その時は、すべてを受け入れよう。
奥に置かれたベッドの上のテレビがパッとつき、10年前の映像が流れる。
『10年前の映像』
包丁を持って祥子の部屋に押し入る幸治。
驚く祥子だが、包丁を見て騒ぐことなく目を瞑る。
祥子の姿は、人間というよりは魚人に近い姿に変わり果てていた。(深きものに近い姿)
幸治が包丁を振り上げたところで、背後から紗子が幸治にタックルし、包丁を取り上げる。
紗子は幸治を説得するが、幸治は聞く耳をもたず紗子に襲いかかる。その際、包丁が幸治の喉元に突き刺さり絶命する。
紗子は力なく座り込むが、すぐに泣いている祥子に浩介と海へ行くように伝える。
祥子と浩介が海へ向かうのを窓から見届け、祥子は自害した。
SANチェック 1d3/1d6
SANチェックが終わると、全員が窓の向こうから波の音と潮のかおりがすることに気づく。
カーテンを開けると、窓の外はこの街の砂浜と海が広がっていた。
窓の外へ出ると月明かりに照らされた海が見える。
海の中に何かがいる。敵意がないのか、じっとこちらを見ているのを感じる。
浩介が貝殻のペンダントを取り出し、海へと投げ入れる。
海から鱗にまみれた腕が伸び、貝殻のペンダントをキャッチした。
「ありがとう」
穏やかで優しい声がしたと思うと視界がぶれ、PLたちは目を覚ます。
エンディング
PLと浩介は祥子の墓を訪れていた。
祥子は事件を犯した犯人として、無縁仏として埋葬されている。
そこには女将がおり、浩介の姿を見て少し驚きながらも微笑んだ。
真相を知った浩介は、母も父と同じ墓へ眠らせるよう親戚を説得すると女将に告げ、女将はその言葉に嬉しそうに涙を流した。
『海辺の街について』
海辺の人間は過去、ダゴンまたは深きものに豊漁を願い、生贄を対価に差し出しました。
生贄が差し出されなくなったことで彼らは怒り狂い、村人たちには「己の子供が深きものになる」呪いをかけます。
それを霊験あらたかな法師が呪いと彼らを封じこめようとしますが、完璧ではなく十数年に一度、子供のなかから深きものになり海に潜ったまま帰らない子が現れます。
海還りについて、街の人たちは運の悪いことだと諦め、深きものになった子供を海へと送っています。
『紗子について』
紗子の血が由縁で長女の祥子は深きものへと変貌します。
紗子は祥子の変貌が、海で溺れたからだと考えていますが、海で溺れたことはあまり関係はありません。
紗子は、自分の血のせいだとは思いたくなく、曰く付きの海のせい、そこで溺れた祥子のせい、だと無意識に責任転嫁をしてしまいました。しかしこの責任転嫁がなければ、紗子は正気を失っていたのでなんとも言えません。
『祥子について』
祥子は、浩介から贈られた貝殻のペンダントが宝物でした。宝物だったので、浩介が約束を守ってくれるのを10年間、海の中で待ち続けていました。
海で遊ぶPLたちを地元の人間ではなく、事件に関して先入観をもたず、浩介の手助けをしてくれそうだと判断し、今回の探索に巻き込みました。
『幸治について』
祥子の姿を見てしまい、狂気を発症しました。誰かが精神分析をしていれば、10年前の事件は防げていたかもしれません。
妻の血筋、地元の因縁などなにも関係がないただただかわいそうな人。
『浩介について』
紗子の努力のお陰で、なにも知ることがなく祥子と関われた唯一の身内。
幸せな家庭しか覚えていなかったため、家族に起きた不幸をどこか他人事のように思っていました。
古本屋で見かけた陳腐な雑誌に載っていた事件記事を見かけ、姉との約束を思い出し地元に帰ってきました。
実は浜辺で貝殻を拾い、ペンダントを作っていました。
『女将について』
紗子から唯一、祥子の変貌を聞かされていました。しかし彼女も昔ながら地元の人間なので、祥子を海へ還すべきだと言っていました。以来、紗子とは会っていません。
事件から10年間、紗子への罪悪感と後悔で押しつぶされそうになっていた人。
エンディングで救われた人でもあります。
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