2022年02月11日更新

サマーキャンプ アット イエローレイク Summer camp at the Yellow Lake

  • 難易度:★★|
  • 人数:3人~4人|
  • プレイ時間:3~4時間(ボイスセッション)

あらすじ:
アメリカの長い長い夏休み、サマーキャンプに預けられた子どもたち(探索者)が体験する、特別なひと夏の出来事。
それは、無邪気な冒険と呼ぶには余りにも恐ろしいものだった…

舞台:現代(1990年代)アメリカ
必要な本:クトゥルフ神話TRPG(6版)
分類:ジュブナイルホラー
推奨技能:一般的な探索技能(目星など)、図書館

小学生PCでプレイする、RP重視のジュブナイルホラーです。
ひと夏の冒険と成長、交流を楽しんでください。
キャラクター設定に関わるHOあり。

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ストック

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あらすじ

アメリカの長い長い夏休み、サマーキャンプに預けられた子どもたち(探索者)が体験する、特別なひと夏の出来事。
それは、無邪気な冒険と呼ぶには余りにも恐ろしいものだった…

シナリオ情報

PL人数目安:3~4人
プレイ時間目安:3~4時間(ボイセ)
舞台:現代(1990年代)アメリカ
必要な本:クトゥルフ神話TRPG(6版)
分類:ジュブナイルホラー
推奨技能:一般的な探索技能(目星など)、図書館

キャラクターメイキングについて

プレイヤーの年齢・職業は小学5年生(Elementary School 5th Grade)固定です。
それぞれの卓のハウスルールや2010サプリ等を参考に年少のキャラクターを創造してください。
しっかり探索し推理すれば戦闘は避けられるシナリオなので、フィジカルな能力値が年齢相応に
低くても多くの場合は問題ありません。
舞台がアメリカなので国籍はアメリカ推奨ですが、海外からの参加者でもOKです。
その場合、親が海外の教育を取り入れたい等の理由で通わせているといった現実的な理由を付けるとよいでしょう。
探索者達は同じコテージに泊まり行動を共にするチームになるため、コミュニケーションは十全にとれるようにすることをお勧めします。
また、各探索者にはキャラクター作成前にそれぞれの恐怖の対象やトラウマを記したHOを渡し、
それに基づくバックボーンを持つキャラクターを創造してもらいましょう。
HO1:貴方は普段通っている小学校で友人を作ることに苦労している
HO2:貴方は家庭内の不和に悩んでいる
HO3:貴方は片想いの相手に嫌われることを恐れている
HO4:貴方は虫に非常な恐怖心を抱いている ※4人いる場合の追加分

NPC・エネミー情報

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○NPC カウンセラーの大学生 ステラ・ジョーンズ(21) 女性

STR 6 CON 14 POW 6 DEX 16 APP 15 SIZ 15 INT 15 EDU 15
SAN 30 幸運 30 アイデア 75 知識 75 耐久力 15 MP 6 DB 0
技能(主要):〈精神分析〉81 〈応急手当〉50
 
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○NPC いじめっ子 ビル・リチャードソン(11) 男子

STR 14 CON 12 POW 9 DEX 7 APP 6 SIZ 14 INT 8 EDU 4
SAN 45 幸運 45 アイデア 40 知識 20 耐久力 13 MP 9 DB +1D4
技能(主要):〈水泳〉30 〈武道(カラテ)〉16  〈歴史〉 15
 
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○NPC サマーキャンプの先生(黒幕) マテオ・ムーア(35) 男性

STR 13 CON 13 POW 10 DEX 8 APP 13 SIZ 16 INT 11 EDU 20
SAN 50(正気度:10) 幸運:50 アイデア 55 知識 100 耐久力 15 MP 10
職技 400 趣技 110 DB +1D4
技能(主要):〈オカルト〉85 〈クトゥルフ神話〉5 〈心理学〉75
 

○エネミー 名状し難きもの ハスター

STR 120 CON 200 POW 35 DEX 30 SIZ 100 INT 15
移動 20/飛行 50 耐久力 150 DB +13D6
武器:触肢/かぎ爪 100% 死
装甲:30ポイントの厚くてウロコがありゴムのような弾力のあるダブダブの皮膚
呪文:〈黄金の蜂蜜酒の製法〉、すべての〈招来〉および〈接触〉の呪文、〈ビヤーキーの召喚/従属〉、そのほかKPが適切と思う呪文

記述について

〈~~~〉:技能など
(~~~~):各イベントに隠された意味など。基本的にはKPのみ把握する情報。

導入:1日目夜、コテージにて

舞台は1990年代アメリカ、季節は夏。
自然豊かなアヨット湖(Lake Ayot)湖畔で行われる1週間のサマーキャンプに参加する小学生の貴方(探索者)は、
水泳や乗馬といった様々なアクティビティが書かれたスケジュール表に目を輝かせるでしょう。
あるいは、親の判断で嫌々ながらも預けられて憂鬱と不安に塞いでいるかもしれません。
同じコテージに泊まる仲間となった同年代の子ども達と共に日程表を見ていた貴方は、
その最後に書かれた全員参加の出し物である演劇に目が留まります。
その演劇の名は「黄昏の王国」。
その名に謎の胸騒ぎを覚えつつも、サマーキャンプ初日の夜は更けていくのでした。
 
顔を合わせた初日の朝に参加する子どもたち全員(名無しNPC含む、合計30人程度)の自己紹介タイムがあったため、
同じコテージの仲間たち3~4人(探索者達)もお互いの名前は把握していますが、
それ以上は初日夜のコテージ内でのRPで互いに自己紹介を行うとよいでしょう。
頃合いを見て、同じコテージに泊まり子どもたちを監督する○NPC 大学生のステラが就寝を促します。
(以降のアクティビティにおいては放任でかまいません。彼女は主にコテージにて子どもたちを監督し、相談に乗る係です)

周辺地図

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フェイズ1:2日目

昼 スケジュール:水泳(必須)、ボート(選択)、ハイキング(選択)
※水泳+上記選択2つより1つ、任意のアクティビティをチーム全体で選びます。
 

・水泳

泳いでいる全員〈幸運〉判定
失敗:水泳中、何かに足を掴まれたように感じる 〈正気度〉喪失 0/1
    (=ハリ湖に封じられたハスターの影響が暗示となって表れています)
成功:幸運にも水泳のコツをつかみ、〈水泳〉技能5%上昇

 

・ボート

突如として吹き出した風に流されて湖の小島に漂着してしまいます。
そこで、木に彫られた2つの謎の印を発見します(=黄色の印)
これらを見ることで〈正気度〉喪失0/1D6
失敗の場合、次に眠る際に再びSANチェックを行い、失敗すれば悪夢(後述)を見て1喪失。
成功するか狂気に陥るまでの間、悪夢は続きます。
島から戻る場合、〈操縦〉か〈幸運〉判定で成功を出す必要があります。
失敗すればキャンプサイトから離れた岸にたどり着いてしまい、戻るために長距離を歩きます。
加えて夕食にありつくことが出来ないため、耐久力を-1(後述の野外炊飯イベントカット)

 

・ハイキング

キャンプサイト近隣の林の中を散策し自然観察をする探索者達。
道中で全員〈目星〉
成功:林の中で古い屋敷の廃墟を見つけます。
屋根や壁は崩れ、僅かに基礎や支柱が残るのみなので見取り図はありません。
しかし、よく見ると何かを崇拝していた痕跡があります。
詳しく調べると瓦礫の中からボロボロの薄く、黒い装丁の本を発見。
(=これは戯曲「黄衣の王」です)
表紙には謎の印(黄色の印)があり、見ることで〈正気度〉喪失0/1D6
失敗の場合、次に眠る際に再びSANチェックを行い、失敗すれば悪夢を見て1喪失。
成功するか狂気に陥るまでの間、悪夢は続きます。
この本は小学生が読み解くには難解ですが、〈図書館〉と〈母国語〉の組み合わせロールで
その内容を少し知ることができます。
●〈図書館〉〈母国語〉のどちらか一方のみ成功した場合、
 「一人の人間が王となり、成り上がるも傲慢により身を亡ぼす様を描いた戯曲である」ことがわかります。
 +〈正気度〉喪失  1D3/1D6+1、〈クトゥルフ神話〉+2%(理解度低のため)
●〈図書館〉〈母国語〉両方が成功した場合、上記の情報に加えて、
 「黄色の印に追加で術を施すことで、印の近くを離れた人間にも影響を及ぼすことができる」という謎の呪術の情報を得ます。
 +〈正気度〉喪失  1/1D3、〈クトゥルフ神話〉+4%
加えて読み進めるごとに体調不良・天候悪化などが起こり、これを読み通すことは破滅を意味すると悟ります。
また、柱の残骸に彫られた二つの謎の印も発見します(=黄色の印)
これらを見ることで〈正気度〉喪失0/1D6
失敗の場合、次に眠る際に再びSANチェックを行い、失敗すれば悪夢(後述)を見て1喪失。
成功するか狂気に陥るまでの間、悪夢は続きます。

 
夜 スケジュール:劇の読み合わせ、野外炊飯

・野外炊飯

探索者達がチームで炊飯をしていると、NPC いじめっ子のビルとその取り巻きと遭遇します。
「ネクラ坊やたちは家に帰んな」等とからんできますが、大学生のステラが仲裁し引き下がります。
PLにはここでは料理RPやその後のキャンプファイヤー(踊ったり)RPを楽しんで頂きたいと思います。

・劇の読み合わせ

役を決め、前半第一幕を読み合わせます。
KPダイス 1Dn(n=探索者数)等で、探索者の一人には王様役を割り振ります。
(=最終日にバッドエンドを迎えた場合、ハスターの依り代となります)
その他の探索者は王の側にいる大臣や神官です。
物語の内容は古代風の架空の王国の興亡を描いた歴史ファンタジーであり、
第一幕は卑しい出自の主人公が高貴な色である黄色を纏うようになるまでの出世物語です。
ハイキングにて黒い本を発見し読んだ場合、その内容とこの劇が似ているように感じます。

 
コテージに戻り眠りにつくと、演劇で王様役に選ばれた探索者に確定で悪夢が襲い掛かります。
●悪夢の内容
黄昏の光に包まれるバルコニーで佇む王(自分)の眼前で城下町が燃え盛り、民衆が激しく自分をなじる声が響きます。
すると、自分の身体が突如として膨れ上がり、骨のない巨大な肉塊と化して崩れるバルコニーごと眼下の民衆や町を圧し潰します。
(=ハスターの依り代となる未来予知的悪夢)
この様なおぞましい夢を見てしまった探索者は〈正気度〉喪失 0/1D2
 
王様役以外でも、黄色の印を見て正気度喪失した探索者は悪夢を見ます。
事前に配布したHOのトラウマに基づく恐怖が現れた悪夢です。
●それぞれの悪夢の内容
・HO1(友人が作れない):友人が作れないどころか、世界中の人から嫌われ罵倒される
・HO2(家庭内不和に悩む):一家離散し、住む場所も無くしてしまう
・HO3(好きな子に嫌われたくない):片想いがバレ、相手にふられて自死を選ぶ
・HO4(虫が怖い):ありとあらゆる虫に覆い尽くされ、身体を食い尽くされる
これらの夢には、共通して現れる者がいます。
それは黄色い服を身にまとい、頭が向日葵の花になっている子どもの姿をしています。
この人物は、悪夢を見るたびに夢の中で探索者に近付いてきます。
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(=ムーア少年+黄衣の王(花弁でフードを模したデザイン)ハスターの影響を受け精神汚染されたムーア先生の、
  過去のトラウマが濃厚な時期の姿を借りた黄衣の王が探索者を追い詰める)

フェイズ2:3~6日目

※3~6日は、以下の内容を1日のセットとして4回繰り返して下さい。
昼 スケジュール:ボート(選択)、ハイキング(選択)、乗馬(選択)、座学(選択)
※一日に選べる昼スケジュールは上記から2つまで、グループで同じ行動をします。
 
下記の特定の条件★を満たさない限り天候は日増しに悪くなるため、
影響を受けるアクティビティがあります(ボート、ハイキング、乗馬)
特定の条件★達成数
0:1日ごとに天候に影響を受ける技能の成功率 ―7%、
1:1日ごとに天候に影響を受ける技能の成功率 ―5%
2:1日ごとに天候に影響を受ける技能の成功率 ―2%
3:技能成功率変化なし
 

・ボート

湖の中央に小島が見えます。
その小島へ向かうにはボートに乗ったうち、誰か1人でもいいので〈操縦〉or〈幸運〉成功が必要です。
フェイズ1=2日目の場合と同じく、そこにある木には2つの謎の印(黄色の印)があります。
さらに調べる場合、〈目星〉成功:その印の中でも、うねりながら放射状に広がった3-n画がわずかに黄色く発光していることに気付きます。
(特定の条件★を満たしている数によって光る画数が変わります。満たした条件★数=n)
(=これは遠隔で影響力を及ぼす能力がエンチャントされた黄色の印です。
   アレンジされたものとはいえ、戯曲「黄衣の王」に関わった探索者はそこに込められた魔力の光を見ることが出来ます)
印を傷つけると 特定の条件★を1つ達成、印の光る画数が1つ減ります。

・ハイキング

2日目に訪れていなければ、フェイズ1と同じ処理。
訪れていれば迷うことなく廃墟へ向かうことができます。
そこには黒い本以外にも支柱の一本に同じ黄色の印があり、3-n画が発光しています。
(特定の条件★を満たしている数によって光る画数が変わります。満たした条件★数=n)
この印を傷つければ特定の条件★を1つ達成、印の光る画数が1つ減ります。
黒い本の処理はフェイズ1と同じです。
この書は読み進めるたびに天候が悪化し、最後まで読むと激しい嵐に見舞われます。
この状態で帰るには〈幸運〉/2の成功が必須。失敗すれば遭難し消耗してしまい耐久力 -1
 &林か廃墟で一晩過ごすこととなります(翌朝、少し天候が良くなった時間を見計らってロール無しでコテージまで帰ることができます)
また、廃墟内での〈目星〉の成功で、一冊の手帳を発見することができます。
その手帳の持ち主の欄には「マテオ・ムーア」と書かれており、簡単な日記も兼ねています。
飛ばし飛ばしに書かれたその内容は以下の通りです。
    1月某日 今年はアヨット湖のサマーキャンプを担当することになった。雪が解けたら下見に行かなければ。
    4月某日 アヨット湖は想像以上に美しい場所だ。
            これなら、子どもたちものびのびとサマーバケーションにいい思い出を作ることが出来るだろう。
    5月某日 湖の周囲を探索していると、古い石碑や廃墟のようなものまで見つかった。
            危険が無いか見て回っていると、一冊の古い本を見つけた。
            放射線マークのような、?マークのような不思議な模様が書かれていた。
            周りをよく見てみると、同じ模様が刻まれている柱があった。
            なぜか、それを見てからというものの、忘れていた恐ろしい記憶が蘇りそうになっていると感じる。
    5月某日 あの廃墟に入って以来、悪夢が僕を責めさいなむ。そして思い出してしまった。
            自分が子どもの頃受けていた仕打ちを。あいつらは何の理由もなしに、僕をターゲットにして集団でいじめた。
            なぜあの時死ななかったのか、今も不思議でならない。記憶の強度は日増しに強まっていく。
            おかしくなりそうだ。いっそ、過去の自分を消せたなら……
    6月某日 最高の案を思い付いた!過去には戻れないが、今の子どもたちも自分と同じように苦しむ者が多くいて、
            その逆に苦しめる者もいる。その差を埋めたい。
            なら、その子どもたちにかかる苦痛・恐怖を最大値におしなべて引き上げることが平等を生むことにならないだろうか?
            そして、かつての自分が ――みじめな自分が埋もれる位の苦痛の総数を積み上げれば、相対的に僕は救われる。
    7月某日 出来た。頭の中で響く声に従って、あの古い本の戯曲をアレンジした、子ども向けの台本だ。
            これこそ、僕を苦しめたちっぽけな青春を等しく地獄に変える奇跡の舞台だ。
            愛され、期待された子どもたちの顔が歪む様が目に浮かぶ……いじめという名の暴力の被害者も、
            加害者も皆等しく強大な力のもとで……その時、初めて僕は救われるのだ。

・乗馬

2日間かけて行うことで乗り方を教わり、以降は自由に遠乗りが出来ます。
最初の2日間の練習で乗馬技能に+10%
自由に乗れるようになった後に林の奥まで進むと、馬がためらうような気にするような視線を林のさらに奥に向けます。
そちらへ行くと朽ち果てた石碑のようなものがあり、謎の印(黄色の印)が1つ刻まれています。
3-n画が黄色く発光しているその印は、石をぶつける等で簡単に打ち砕かれることでしょう。
(特定の条件★を満たしている数によって光る画数が変わります。満たした特定の条件★数=n)
印を傷つけることで特定の条件★を1つ達成、印の光る画数が1つ減ります。

・座学

キャンプサイト施設内の図書館と教室を使い自由に勉強できます。
サマーキャンプ全体の責任者・指導者であるムーア先生がおり、話を聞くことも出来ます。
●〈図書館〉成功:アヨット湖周辺の言い伝えについての本を発見します。内容は以下の通りです。
            昔、この周辺に黄色い布を全身に巻き付けた集団が移り住んできた。
            彼らは彼らの信仰を持ち、元から住んでいる原住民と度々衝突した。
            彼らは奇妙にうねる線を3本組み合わせた印を住居や木立の至る所に刻み、その前で呪文を唱えた。
            すると、対立していた原住民の中から彼らに同調する者が現れた。
            その者が属していた部族は天災や疫病といった災厄に見舞われ、同調した当人を除き滅び去ったという。
            それと時を同じくして、集団の内部で呪術的な演劇が行われたというが確たる証拠は残されていない。
            その演劇を主導したのは同調した原住民であるとも言われている。
            後に当地を開拓した白人の開拓団によって黄衣の集団も追いやられ、僅かに残った廃墟や木々の傷跡にその面影を残すのみである。
●先生に話を聞く:雑談の中に
                ◎少年期にいじめられていたこと
                ◎演劇の台本はムーア先生が書いたこと
                ◎最近どこかで日記を兼ねた手帳を無くしたこと
                ◎明るく振る舞うがどこか空虚な様子、本心が別にある
         ことをそれとなく織り込む(3つ目は〈心理学〉成功情報でも可)
         (=ムーア先生はシナリオ開始前に偶々この地に残る黄色の印を目にし、
          幼少期のいじめというトラウマを抉られてしまっています。
          印から離れてもその黄色の光は抉られた心に深く染み入り、いつしか
          「過去の自分を否定したい=過去の自分と同年代の子どもたちを傷つけ、痛めつけることでその代わりとしたい」
          と歪んでしまいました。そのため、サマーキャンプの先生という立場を利用し、
          廃墟で見つけた災厄を呼び起こす戯曲をアレンジして子どもたちに上演させようと考えています)

 
夜 スケジュール:野外炊飯or施設提供の夕食(一日おきに変更)、劇の練習

・夕食

ステラ達大学生やムーア先生の目を気にしてか、初日以降ビルがこの時間に直接ちょっかいをかけてくることは無くなりました。
しかし、その陰険な眼差しは絶えず探索者達のグループに注がれています。

・劇の練習

2日目は後半である第二幕の通し読み、以降は立ち稽古となります。
第二幕の内容は、晴れて王となった主人公がやがて周囲に置いた神官に担ぎ上げられ暴君となり、
民衆から反乱を起こされて黄昏の光の中で生涯を終えるというものです。
短期間で完成させるためにセリフが少ないのもありますが、それでも不自然なほど子どもたちは皆スムーズに練習に打ち込んでいます。
しかし、時折熱狂的に民衆や神官を演じすぎたためか倒れる子が出始める。その数は日を追うごとに増えていきます。
それでもムーア先生は暑さのせいと断じ、休ませるのみでそれ以上の対策を取らず着々と劇の準備をしていきます。
普段なら出し物等に積極的に協力しないであろうビルが、熱心に先生の手伝いをしています。
(そのことに気が付くのは早くとも5日目となります)
その目には異様な熱気がこもり、黄色くよどんだ白目に赤々と糸くずのような血管が走っています。
(=ビルも黄色の印の遠隔作用を強く受け始めていることの証拠です)
特定の条件★をクリアするごとに子どもたちの異様な熱狂は治まり、通常の練習の様子に戻っていきます。
(特定の条件★を1つクリアする=10人位の子どもが正気に戻る、といった形で表現してもよいでしょう)
先生とビルだけはその様子を焦るように見つめていますが……

フェイズ5:7日目

この日は昼から出し物のリハや仕上げを行います。
迎えに来た保護者の前で上演するのは日も落ちる18時からです。
コテージからもほど近い、湖畔に組まれた木製のステージで「黄昏の王国」は上演されます。

分岐① 光る黄色の印を全て破壊していた場合(特定の条件★達成数3)
→●グッドエンドへ
分岐② 光る黄色の印を1~2個破壊していた場合(特定の条件★達成数1~2)
探索者の説得次第で、ムーア先生は人の心を取り戻します。
(劇の内容に救いが無さすぎる、倒れゆく子どもたちを休ませないのはおかしい等)※〈説得〉等の技能でも可
確実なのは先生の過去に言及し、過去を埋め合わせるために傷つく子どもが増えるべきではないと言うことです。
→説得できれば●ノーマルエンド、説得できなければ●バッドエンドへ
分岐③ 光る黄色の印をひとつも破壊していない場合(特定の条件★達成数0)
日に日に強まった「黄昏の王国」への異様な熱狂は7日目にして最高潮を迎えます。
この段階になると、役を降りようものなら全員から非難されるため、探索者は演劇に参加せざるを得ないでしょう。
→●バッドエンドへ

エンディング

●グッドエンド

自らの内に残る黄色の印の影響を振り払い、ムーア先生が正気に戻ります。
劇の筋書きが途中から変更され、増長した主人公が反省し、賢君になり国を治めるエンドに。
宮殿に打ちこわしに入る市民の役だったビルは唯一見せ場が潰されて不満を訴えるが、目が覚めた取り巻きの少年に諭されて落ち着きます。
無事サマーキャンプの締めの演劇は幕を下ろし、子どもたちはそれぞれ成長し、一皮むけて帰路に付くことでしょう。
子どもたちの後ろ姿を見送りながら、ムーア先生はカウンセラーの大学生たちと共に優しく微笑んでいました。

 

●ノーマルエンド

サマーキャンプに来て初めて出会って団結した探索者達の説得により、ムーア先生は辛うじて正気を取り戻します。
しかし、自分のしようとしていたことの恐ろしさに気が付いた彼は、劇の台本を「黄衣の王」をなぞらないように変更すると
子どもたちに伝え、上演が始まってから姿を消してしまいます。
舞台も終わり、無事にサマーキャンプのすべての行事が終わったその時、そこにムーア先生の姿はありませんでした。
鏡面のように静まり返っていたアヨット湖の水面を波紋が乱しています。
それは、今しがた舞台が幕を下ろしたステージの裏手から一直線に湖に向かった人の足取りを写し取るように、湖中へと消えていきました……

 

●バッドエンド

舞台上に囚われるようにそれぞれの役を演じた探索者達は、舞台のクライマックスと共に自らの身体にも変化が現れたことに気が付きます。
主人公の王様役の探索者は、ベニヤで出来た張りぼてのバルコニーの陰で、足先からブヨブヨとしたウロコまみれの肉の塊に変質していきます。
あっという間に人間の姿を失ったその元探索者は小山のような大きさに膨れ上がり、観客である保護者もろとも周囲の人間を薙ぎ倒します。
子どもたちの死屍がうずたかく積まれたステージ上に拍手が鳴り響きました。
それは、完全に邪神に魂を売り渡したムーア先生と、心の残忍な部分が邪神と深く共鳴し精神を汚染されたビルの2人の拍手でした。
先生は傍らで馬鹿笑いを上げるビルの背中にそっと手を添えると、力いっぱい突き飛ばしました。
その先には、名状し難き邪神の、触れるものみな木っ端と化す荒れ狂う触肢がミキサーの刃のように振り回されています。
マテオ・ムーアは返り血に濡れた眼鏡を外すと、少年のような無邪気な笑みを浮かべました。
(探索者全員死亡)

真相

このシナリオでは、シナリオ中で書いた資料や描写でほぼすべての真相が明らかになっています。
分かりやすいように出来事を時系列順に並べると
①昔(~18世紀)、アヨット湖周辺にどこからかハスターの信者たちが移住してくる。
②アメリカ原住民と対立するも、信者たちは印の魔力と呪術で対抗し彼らを取り込みつつ滅ぼす。
 この際上演された演劇は仏語が原語とされる「黄衣の王」のさらに原型であり、未知の言語で演じられていた。
③そこに後からやってきた白人開拓団が近代兵器と数の力で衰退しかかっていた教団を制圧。
 しかし教団の残した黄色の印はそのまま残された。
 後年になり、かつての教団と同じくハスターの信者である者が跡地に赴き、
 英訳された戯曲「黄衣の王」(1895年刊行)を廃墟に献上した。
④1970年代、ムーア少年、ひどいいじめに遭い、その時の記憶を封印し成長する。
⑤1990年代、大人になったムーア、アヨット湖のサマーキャンプの担当教師になる。
 下見に訪れた湖周辺で教団の廃墟を発見、戯曲「黄衣の王」と遠隔作用がエンチャされた黄色の印に遭遇。
 狂気に陥り、過去のトラウマを掘り返すというその作用により辛い記憶が蘇る。
⑥狂気に取りつかれたムーア、歪んだ理論で災いを呼ぶ戯曲「黄衣の王」の簡易版を
 サマーキャンプに訪れた子どもたちに演じさせることを決意。
⑦探索者達がサマーキャンプに参加する→シナリオ本編へ
といった風になります。
サマーキャンプには様々な子どもたちが参加しており、その中にはビルのように、かつてムーア少年をいじめたような意地悪い少年もいます。
また、探索者達はそれぞれ人には言いにくい悩みを抱えており、それを刺激されることに抵抗を覚えるでしょう。
ムーア先生は、そういったさまざまな背景を持つ個人としての子どもたちをおしなべて地獄のような状況に叩き落すことで、
かつてその底にいた自分を慰めるというねじれた解決法に辿り着いてしまったのです。
それは彼が独力で思い付いたことでは決してなく、辛い過去のトラウマを刺激し、
人を破壊へと駆り立てる禍々しい「黄色の印」と戯曲「黄衣の王」に触れてしまったことで生まれた発想です。
バッドエンドで出てくるハスターは、そのような地上の動きにつられて顕現するのであって、招来に応じたわけではないため、
アルデバランの地平線上に上る時期ではない夏でも現れることができます。

あとがき

こんにちは、茨です。クトゥルフ神話TRPG自作シナリオ2作目です。
このシナリオは、もともとは友人達との小旅行兼アナログゲーム合宿(某感染症対策は万全に行いながらの)に持ち込むため、
その時の現実のシチュエーションとリンクするように書いたものです。
季節は夏(8月を想定)、場所は湖畔、乗馬等のアクティビティを行うetc.の状況がそれです。
アヨット湖という耳慣れない地名は、ローマ字にして逆さから読んでみて下さい。
どこに小旅行に行ったか分かるはずです(どうでもいい知識)
それと、映画「IT」のような、ジュブナイル要素があり子どもRPのできる話をやってみたかったというものもあります。
しっかりホラーしつつも、少年少女のひと夏の思い出・団結や思春期周辺の悩み、成長といった物語を一期一会のセッションにおいて
作り上げていただければと思います。
また、ご自由にお遊びいただけますが、動画等にする場合はお知らせいただくと喜びます!
最後に、お読みいただきありがとうございました!


本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」

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小説や絵の一次創作作家活動をしています。 最近以前から計画していたTRPGシナリオの作成を始めました。 日々勉強ですが、当方のシナリオで楽しんでいただければ幸いです。 よろしくお願いいたします。

https://twitter.com/daydream_blanc

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