2018年10月05日更新

【10分CoC】代償を求める男

  • 難易度:★★★|
  • 人数:1人~1人|
  • プレイ時間:1時間(テキストセッション)

※オフセ10分~15分、オンセ1時間程度のシナリオです。
※GM1人PL1人でさくっと遊ぶことが想定されています。

探索者は、気分転換に、少し離れた場所の低いマイナーな山に1人で登山に来ていました。
すると、突然天候が急変し、空は暗くなり、雷が落ちます。
思わず目を閉じた探索者が恐る恐る目をあけて見たものは、身の丈10Mはある巨人の姿でした!

しかしそれは、一瞬で消えます。
幻覚だったのでしょうか? それとも……。

物語に隠された秘密はきっと、探索者の、そしてKPの想像を超えた問題を内包しています。
---
年始に相応しい、壮大かつ、爽やかで寂しいシナリオを目指しました。

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ストック

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コメント

■導入

探索者は、気分転換に、少し離れた場所のマイナーな山に1人で登山に来ていました。
登山コースとしての整地はあまりされていませんが、低い山で、それほど危険もありません。ちょっとしたハイキングや森林浴の延長のような気分で楽しめます。

周囲には登山客はおらず、探索者は自然をじゅうぶんに楽しむことができました。
さて、いつ帰ろうか……と考えている、その時。急に、周囲が暗くなりました。
いつの間にか重い雲で覆われていた空はごろごろと鳴り、今にも雷雨となりそうです。
天候は調べてきましたが、山の天気は変わりやすいもの。
急いでリュックサックから雨具を引っ張り出そうとした探索者の目前に、雷とともに、地鳴りをたてて何か巨大なものが落ちてきました!

しばらくは、その衝撃でまともに物を見る事さえできませんでした。
しかしやっと視界を取り戻した時、探索者は信じられないものを見ました。
それは、ぐったりと地面に横たわる、10M程の巨人でした。

あらすじ&真相

巨人の正体は、ギリシア創世神話の登場人物「プロメテウス」です。
人間に食料と火を与えた罪で、永遠に鷲に内臓を啄まれ続ける苦痛に耐えています。
彼は不死者ですから、死ぬこともできません。

創世から気の遠くなるほどの年月を苦痛の中で過ごしたプロメテウスは、「本当に人間は自分が守るべきものだったのか」という疑問を抱きはじめています。
そして、それについての判断を、行きずりの人間……探索者で、試そうとしています。

プロメテウスは探索者の友人に姿を変え、彼を観察します。
人間は、永遠の苦痛に耐えて守るべき善であるのか。それとも、それに値しないのか。
彼が探索者に価値を見出したのならば、プロメテウスは納得して、喜んで苦痛へとたちもどります。
しかし彼が探索者に絶望したならば、プロメテウスは人間を見捨て、この世から希望の炎は失われるでしょう。

つまり、探索者は、ランダムに選ばれた「人間の代表」なのです。

■■■進行①

巨人……かと思いましたが、よく見ると目の前に倒れていたのは探索者の友人「小名田」です。
普段ならSANcが必要な不可思議な現象ですが、何故か危険はないと確信でき、それどころか普段より落ち着いた気分でいます。

(※KP情報:これはプロメテウスが探索者とより親密に喋ることができるよう、咄嗟に探索者の近しい物の姿をとった形です。探索者に親友や恋人がいた場合、小名田ではなくそちらに変身させてください。)
(※KP情報:SANcがないのは、プロメテウスの神性によるものです。プロメテウスはこの時点では人間を愛する心を失っていない為、周囲の心を落ち着かせるカリスマを発揮しています。なるべく探索者の安心させ、信頼を得るよう、怪しいところのないように振舞ってください。)
(※KP情報:小名田に扮したプロメテウスは、本来神話生物である為基本的にすべての技能がカンストしていますが、この時点では正体を明かさない為に人間のふりをしています。KPは小名田に技能判定の必要が発生し次第、適当にダイスを振って成否を決定してください。「適当に」が難しければ、事前に小名田のステータスを作成し、それに準じてください。)

■■■進行②

探索者が小名田に質問しても、有用な情報は得られません。
これはプロメテウスが意図的にはぐらかしている為です。
探索者が望むなら以下の2~3の質問や判定を行い、頃合いを見て進行③に進んでください。

〇どうしてここに?
「何もわからない。気が付いたらここにいた」(※KP情報:演技です。)

〇事前に何かおかしいことをしたり、されたりしていなかったか?
「なかったと思う。心当たりはない」(※KP情報:演技です。)

〇小名田のスマホ等に連絡をとり、本人確認をしようとした場合
繋がりません。(※KP情報:プロメテウスの力です)

〇本当に小名田本人か疑い、小名田しか知らない質問をした場合
すべて適切な返答を行います。(※KP情報:プロメテウスの力です)

■技能判定
〇判定のない範囲での情報
小名田は、山登りをしに来たとは思えない普段着です。

〇小名田に目星や説得等の判定
判定前に、得られる情報はないと伝えて下さい。

〇心理学
基本的に失敗します。「隠していることは何もなさそうだ」と伝えて下さい。(※KP情報:プロメテウスの力です)
クリティカルだった場合のみ、「一瞬、小名田は君が見たことのない表情をした。何か隠しているようだ」と伝えて下さい。
また、探索者が素晴らしいRPをした場合等、KPがふさわしいと判断し、なおかつ判定に成功していた場合は、KP裁量で何らかの情報を与えて下さい。

〇天候の変化や周囲に関する「目星」や「知識」系の技能
先ほどの雷は自然現象ではないのだと感じます。
気が付けば、あれほど暗かった周囲は、もうすっかり晴れ、平穏そのものです。

〇その他判定
基本的に、得られる情報はありません。小名田は「疲れたから帰ろう」と主張します。
素晴らしいアイデアや鋭い質問があれば、KP裁量で、ふさわしい情報を出してください。
ただし、この時点ではなるべく情報は抑えた方が良いでしょう。

KPは、小名田(プロメテウス)が心を打たれた=優しさを感じたと思ったならば、【1ptをシナリオメモに加算してください】。

■■■進行③

ギャア……ギャア……と、しわがれた鳥の鳴き声が聞こえてきます。

それは大きすぎる羽音と共にあっという間に迫ってきて、小名田を狙います。
一羽の巨大な、爛れた皮膚と汚らわしい涎、腐敗を放つ嘴を持った醜悪な鷲でした。
鳴き声は可聴粋を越える、高く低く乱れきった、嫌悪感を催すものです。

探索者は【1/1d4のSANcです。】

小名田は「ひっ」と悲鳴をあげ、探索者に訴えます。(※KP情報:演技です。)
「た……助けてくれ!」

小名田を見捨てて逃げるのならば、エンディング①へ移行してください。

小名田と共に逃げるのならば、DEX×5(もしくはKPがふさわしいと判断した技能)で判定してください。
また、【1ptをシナリオメモに加算してください】。

成功ならば、無傷で逃げる事ができます。進行④へ進んでください。
失敗ならば、途中で岩肌の急斜面から転がり落ちることになります。1d4のダメージを負って、進行④へ進んで下さい。
(※KPは、成功、失敗にかかわらず、PCが小名田を助ける選択をした場合は【1pt】をシナリオメモに加算してください)

■■■進行④

「ありがとう」と小名田は言います。
「お前も死ぬところだったのに、何故、助けてくれたんだ?」

(※ここでPCが小名田(プロメテウス)の心を打つようないい感じのことを言った場合、KPは、その台詞に応じて【1~3pt】をシナリオメモに加算してください。
良いRPには1pt、熱意あるRPの場合は2pt、これは素晴らしすぎると感じたRPには3ptが基準です。
3ptは滅多に与えられないものとお考えください)

会話が終わると、ギャア……と、またあの厭な鳴き声が聞こえてきます。
小名田は怯え、「どこか身を隠せるところを探しながら、ふもとを目指そう」と提案してきます。
進行⑤へ進んで下さい。

〇質問や技能判定の結果は基本的に進行②で行われたものと同じです。
しかし、KPは状況に応じて、プラスボーナス等で情報を与えても構いません。
変化する判定&新たに可能になる判定は以下です。

〇心理学
成功すると、小名田が時々探索者を試すような目をすることに気づきます。
しかし探索者は、何故かそれを不快に思いません。
(※KP情報:人間を愛するべきか否か、プロメテウス自身も迷っているからであり、悪意からの試験ではないからです。)

〇追跡、隠れる、コンピューター(スマホ地図検索)判定等、その他サバイバル判定
成功:スムーズに歩くことができました。進行⑤に進んで下さい。
失敗:すっかり道に迷い、疲れ切ってしまいました。疲労により1点のダメージを受け、進行⑤に進んで下さい。

■■■進行⑤

運よく民家を見つけることができます!
小さいですがきちんと生活の気配のある丸太小屋です。地元のマタギの家でしょう。
明かりの灯ったそこへ近づいていくと、丁度主人が玄関から出てくるところでした。
主人に声をかけようとすると、またあの不快な鳴き声……「ギャア……ギャア……」という声が聞こえてきます。

その不浄な鷲は一直線に小名田へ襲い掛かり、彼の心臓を一突きにしました!
(※探索者が小名田を庇おうとすると、小名田はそれを突き飛ばします)
小名田は心臓を食い破られ、皮膚を食いちぎられ、無残な致死ダメージを受けます。
探索者には、この鷹は人が太刀打ちできるような存在ではないことを伝えてください。
それでも探索者が小名田を助けようとした場合、【2pt】をシナリオメモに加算してください。

しかし、小名田は死んでいませんでした。
胸の傷は修復していき、ごふっと血を吐いて起き上がります。
その様子を見てしまった探索者は【1d4/1d6のSANcです】

その様子を見ていたマタギ小屋の主人は、気味悪がって小屋に閉じこもります。
「そ……そいつは悪魔だ!!」
彼はそう言い残しました。
探索者が余程過激な手段をとらない限り(小屋を燃やすなど)主人は小屋から出てくることはありません。

探索者が非人道的な手段でマタギ小屋の主人を引きずり出した場合、エンディング①へ移行してください。

探索者が小名田を見捨て、逃げた場合、エンディング①へ移行してください。

それ以外の場合は、進行⑥へ移行してください。

■■■進行⑥

小名田は、語りかけられなければ何も語ろうとしません。
その胸の傷は、やがて完治します。みるみる治っていくその様を、小名田は隠そうとしません。

探索者が何も言わなければ、「ここから南に歩いて行けばすぐ町に出られるよ。行くといい。もう僕が小名田ではないと気づいているんだろう。早く。僕と一緒にいる限り、あの鳥が来る。今見たとおり、僕は大丈夫だから」と呟き、寂し気に立ち去ります。
それまでに獲得した【pt】に応じたエンディングへ移行してください。

探索者が小名田に働きかけたときの基本的なリアクションは以下です。
KPは、適切なタイミングでエンディングへ移行してください。

〇それまでの【pt】が3以下の場合(3ならOKです)
エンディング②へ進んで下さい。

〇心理学
これを振ろうとした時点で「話を聞きたい?」と、探索者をじっと見つめます。
KPは、心理学判定で彼探ることは不可能であり、何らかの説得系技能に成功しなければ彼から情報を引き出すことはできないと、探索者に伝えて下さい。

〇説得系技能
それまでの【pt】が4をこえていた場合、+20の判定を加えてください。
プロメテウスは正体を現します。エンディング③へ進んでください。
失敗の上に何もすることがなくなった場合は、エンディング④へ進んで下さい。

〇オカルト、図書館、コンピューター系情報収集技能
それまでの【pt】が3以下の場合、-10で判定です。
成功すれば、プロメテウスの正体を知る事ができます。
エンディング③へ進んでください。
失敗の上に何もすることがなくなった場合は、エンディング④へ進んで下さい。

■エンディング①

「これまでの苦痛は何だったのだ!」

小名田が叫びます。
「人間が、これ程までに愛を知らぬ生物だったとは」
それは、怒りというよりも後悔や苦渋に満ちた慟哭でした。

小名田の姿はみるみるうちに、オープニングで見た10M程の巨人に変わっていきます。
巨人はぼろぼろと泣きながら探索者を見下ろします。
「あなたを見て解った。人間は、私が守る価値のない存在であった。私は、間違ったのだ」
これだけ言い残すと、巨人はとんと跳躍し……その跳躍は高く高く、やがて巨人の姿は天に還り、見えなくなります。

……今後、神に見放された人類は、すみやかな滅びへ向かうことでしょう。
しかし、探索者に責任はありません。
この結末の責任は、探索者……いいえ、探索者含む「人間」を創り、これを愛そうとした愚かな巨人……創世の巨人「プロメテウス」の側にあります。

■エンディング②

小名田は探索者を強引に帰らせます。
探索者が小野田を強引に連れて行こうとしたり、小名田を追いかけて粘ろうとしても、彼はいつの間にか姿を消していました。

探索者が完全に小名田を見失ったことを確認すると、彼は正体を表します。
それは、オープニングで見た10M程の巨人でした。
その顔は苦渋に満ち、彼の悩みは一層深くなっていました。

「確かに、今回サンプルとして観察した人間には、幾ばくかの、かすかな愛を見て取ることができた。
しかし、幾星霜の苦痛に耐えてまで、人間を護る意味はあったのだろうか」

巨人の頭上から、ギャア……ギャア……という鳴き声が聞こえます。
彼に苦痛を与え続けることを神に定められた、あの醜悪な巨鳥たちです。
巨人は腕を広げて鳥たちの拷問を受け入れます。
身体の痛みは、今の彼の苦悩、心の痛みを幾ばくか和らげてくれるでしょう。

巨人はこれからも苦しみ、悩み続けます。
しかし、探索者に責任はありません。
この結末の責任は、探索者……いいえ、探索者含む「人間」を創り、これを愛そうとした愚かな巨人……創世の巨人「プロメテウス」の側にあります。

■エンディング③

小名田の姿はみるみるうちに、オープニングで見た10M程の巨人に変わっていきます。
そして、身をかがめて探索者に微笑みかけます。

「まずは、これを言わせてほしい。ありがとう」
「私は、創世の巨人、プロメテウス。神に逆らい人間を創った罰として、神から永遠の苦痛を定められた者」
「あの鳥は私に苦痛を与えることが役割なのだ。邪悪な存在ではない」
「人間を創ってから長い長い間苦痛を受け続け、私の心に迷いが生じていた。」
「そうして、君に出会った。私は、試そうと思った。この、多くの間違いを犯す人間という種族は、は本当に私が守るべき存在なのかを」

そうして、探索者の瞳を見つめます。

「あなたの行いはとても愛にあふれていた。私は満たされた。人間は時に迷い、間違うが、善であり、私が守るべき存在なのだと」
「あなたの友人の姿を借りて試すような真似をしてしまって、すまなかった。それでは私は、本来いるべき場所へ還ろう」

これだけ言い残すと、巨人はとんと跳躍し……その跳躍は高く高く、やがて巨人の姿は天に還り、見えなくなります。
彼はこれからも、神の課した苦痛を味わい続けます。
しかし、その心は穏やかでしょう。その苦痛によって守られる「人間」は、彼の愛そのものだと、知っているからです。

■エンディング④

小名田は、ぽつりとつぶやきます。
「これだけは言わせてほしい。ありがとう」
「……あなたの友人の姿を借りて試すような真似をしてしまって、すまなかった。」

探索者が見た小名田の顔は、慈愛に満ちていました。
小名田は微笑んで、柔らかく言います。

「あなたは私の正体を知らない方が良い。これ以上関わらない方がいい。さあ、立ち去りなさい。」

その言葉には、優しくも抗いがたい力が込められていて、探索者は気が付くと彼の言葉に従い、彼を残して下山していました。
しかし、何か神聖で大きな存在に触れたという不思議な充足感が、探索者の心を満たしていました。

■コメント

クトゥルフ神話TRPGにギリシア神話を持ち出したシナリオです。
なので大いに世界観をぶっちぎっているかもしれません。
しかし「CoCの世界に別神話の解釈が許されるならこんな遊び方もできるかな」程度に思っていただければ幸いです。

エンディングや展開の改変は自由です。
人間がプロメテウスの苦痛に値する存在なのかどうか、その天秤をたまたま背負ってしまったひとりの探索者について思いを馳せていただければ幸いです。

KPは事前にプロメテウスについてさらっと学んでおくことを推奨します。

【こちらクリックでプロメテウスについてのwiki記事リンク】


■シナリオの取り扱いについて

※このシナリオは動画化フリーです。シナリオをそのまま遊んで頂いた場合はもちろん、一部改変しての動画化もご自由にどうぞ。その場合、コメント欄にてご一報頂けると幸いです。

※プレイ目的以外での本文のコピー・転載はご遠慮ください。


以上

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BraveLily 2018年03月16日

シナリオ遊ばせていただきました!
もしよろしければ僕達ブレイブリリーの主催するシナリオアンソロジーにご投稿していただけませんか?
短編でもしっかりしたシナリオを作られているので、ぜひ、と思いご連絡させて頂きました。

Twitterは@coc_mihiraki
ブログはhttps://cocmihiraki.wixsite.com/home
になります。

ご検討よろしくお願いします!

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Giraffe 2018年08月10日

長らくコメントにお返事できずまことに申し訳ありません。

当方諸事情により現在同人的な活動はしていないのですが
素敵な企画を心より応援申し上げます。

遊んで頂き、またお声をかけて頂いてまことにありがとうございました!

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