2018年04月14日更新

夢で逢瀬いたしましょう

  • 難易度:★★|
  • 人数:1人~2人|
  • プレイ時間:1時間(ボイスセッション)

PLは1人から2人。1時間程度で終わるショートシナリオです。
あなたは自宅で眠りに落ち目覚めると、自宅ではないどこか別の空間にいた。
困惑するあなたの傍には全身黒の衣装で身を固めた謎の男が1人。どうやら、その男はあなたが元の世界に戻れるよう手伝ってくれるらしい。
謎の空間で起きた事件を黒衣の男と解決せよ。

ところで、シャーロックホームズって小説を読んだ方ならご存知かと思いますが、
彼が事件の真相を語る時って、「」を2~3Pくらい存分に使って自分の推理をまくしたてますよね。
いえ、別にそれがどうってことはないですし、私自身、シャーロックホームズシリーズは大好きです。

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クトゥルフ神話TRPG
シナリオ 外伝
「夢で逢瀬いたしましょう」

1:基本情報
対応人数:1人~2人
プレイ時間:1時間半
推奨技能:医学、隠れる、隠す、聞き耳
時代設定:現代日本(2011年ごろ)

シナリオ特徴:
 本シナリオは、PLの夢の中で行われる。そのため、PL(プレイヤー。以下PL)が2人以上いる場合は、PLのうち誰か1人の夢の中に他PLが入り込んでしまう形を取るといいだろう。(当然全てのPLが眠りについているという前提がある。PL全員が夢を見ている状況で、誰か1人の夢の中に全員の夢が統合されて、結果的に全員が同じ夢を見ている、同じ夢の中にいるという導入から始まる)
 PLは夢の中で起きる様々な謎を解き、夢の中から脱出しなければならない。さもなくば、PLが夢から目覚めることは決してないのだから。
 KP(キーパー)は劇中に登場する人物である細身の男アドルフを利用して、PLたちを導いてあげるといいだろう。

2:導入A
 あなたは1日の活動に追われ、身体は鉛のように重く、精神は疲弊しきっている。月の光と少しばかりの電灯の明かりだけが、すっかり静まり返った街道を照らしている。
 重たい足を引きずってやっとのことで自宅へ帰り、流れるがままにソファへ身体を投げ捨てる。ソファは投げ捨てられた鉛の身体を包み込むかのようにして受け止め、あなたを微睡の中へ引きずりこもうとする。
 明日への準備もあるし、風呂にだって入らねばならない。しかしそれらのことなど、この強い微睡の前では細事に過ぎぬと、あなたは誘われるまま泥のように眠った。

3:導入B
 はたして眠りの中から目覚めると、そこは勝手知る自室ではなかった。辺りを見渡すと四方には灰色の壁、見上げると、曲線を描くやはり灰色の天井が視界に入る。その天井からは大きな電球が吊り下がっており、淡い光が部屋を照らしている。その密室ともいえる空間には扉のような出口は見合たらず、部屋の中には自分たちの他にも4人の人間が困惑した様子で、あるいは泣きそうな面持ちで辺りを見回していた。
 性別も服装もバラバラな人たちをなんとなしに眺めていると、次に全身黒の衣装で身を包んだ細身の男が目に入る。
 細身の男はまず、自らの身体を信じられないものでも見るかのように凝視した後、何か得心いったのか、自らの身体から目を離し、次に辺りを見渡した。
 その黒く冷徹な視線は、あらゆる悪事を見逃さんとし、遍く全ての秘密を暴くかのようだった。
 細身の男は部屋の隅からその細部に至るまで視線を巡らせた後、何かがつっかかったような難しい表情を浮かべ、腕をくんだまま目を瞑ってしまった。
 不思議な人もいるものだと、さて、これからどう動くべきか決めかねていた時、天井に点っていた唯一の明かりが突然消えてしまう。
 部屋にいる何人かの人間はそれだけでパニックを起こしてしまい、明るかった視界が急に暗くなったせいで目が暗闇に慣れないこともあってか、パニックは部屋中に伝染していき、やがてパンデミックを引き起こす。
 女性の出鱈目に高い悲鳴、男性の落ち着かない息遣いが部屋を満たした。
 その他にも、何かを何処かへ打ち付けるような鈍い打撃音、男性の苦痛に満ちた声、誰かが倒れる音が入り混じる。
 そんな気でも狂いそうな混沌とした時間が永遠に続くかと思われたが、はたして部屋の照明は再び灯りを取り戻した。
 突然に網膜を襲う光に耐えきれず瞼をきゅっと瞑るが、部屋で何が起きたのか確認しなければならない。
 目を傷めないようにゆっくりと瞼を開くと、そこには信じられない光景が広がっていた。
 視界に飛び込んできたのは、部屋の中央に見せしめのように転がる男性の死体。頭からは夥しい量の血が広がり、それはさながら赤い絵の具を流し込まれた池のようだった。白い野球のユニフォームは赤黒く染まり、死体の傍には野球のバットが転がっている。
 死体を見たエプロン姿の主婦風の女性が甲高い悲鳴を上げた。さきほどの暗闇で悲鳴をあげていたのはこの女性だろう。こう何度も立て続けに叫ばれるとなんとも不愉快なものだ。主婦風の女性はひとしきり騒ぎ立てると、ついには両手で顔を覆い隠して膝をつき泣き出した。どうにも感情のコントロールが上手くいかない人種らしい。
 一方で隣の細身の男はというと、臆すことなく死体の傍へ近づくと、どこから取り出したのか虫眼鏡のような小さいレンズでしきりに死体を観察し始めた。
 彼は血の臭いを嗅いでは口笛を吹き、傷跡をレンズで調べては笑い出した。
 彼は一通り死体を調べ終えて満足したのか、口元を笑いがこらえきれないと言った風に歪めながら元いた場所に戻ってきた。
 その瞬間である。
 再び部屋の照明が絶たれたと思うと、がこんと機械が稼働するような音が響き、今度はすぐに照明の光が点ったのだ。
 立て続けに照明が点滅したため、目がちかちかする。少しばかりの目眩が襲い、身体がよろめきそうになるが、細身の男が支えてくれたため倒れずに済んだ。
 男に礼を述べると、彼は「なんでもないさ。それよりもさっき死体があったところをご覧。」と言った。
 言われた通り死体があった場所を見ると、信じられないことに死体が血痕とバット、それに野球のボールを残して消えている。
 一体何が起こったのか、思わずつぶやくと、彼は「簡単そのものさ。こんな児戯にも等しい出来事、説明するまでもないのだよ。」と、まるで事の真相が見えているかのように応えた。
 見も知らずの密室で起きた殺人に、消えた死体。傍には何もかもを見通しているがごとく話す謎の細身の男。一体この部屋は何処で、彼は何者なのか。そしてここでは何が起きているというのか。

4:探索開始
 密室で起きた殺人事件を細身の男と解決しなければならない。彼は自らをアドルフと名乗った。
(PLは自由に部屋の中を調べていいが、PLがNPCの名前を全て把握したら、次のイベントに飛ぶこと)
NPC情報
・武田 信人(たけだ のぶひと)
最初の被害者。野球の道具一式を持っていた男性。彼のユニフォームには武田信人の名が刺繍されていたらしいことをアドルフから聞ける。

・椎名 育(しいな そだち)
専業主婦の女性。感情のコントロールに乏しく、すぐに癇癪を起こすようだ。名前を聞けば怖がりながらも教えてくれるだろう。簡単な裁縫セットを持っているようだ。

・アドルフ
全身黒の衣装で身を包んだ細身の男。虫眼鏡のようなレンズに巻尺を持っている。
事の真相を掴んでいるようだが、かたくなに真相を話したがらない。

・小野原 啓(おのはら けい)
部屋の隅でじっと辺りをきょろきょろしている作業着を着た土方職の男。男性に名を尋ねれば名前を教えてくれるし、尋ねなくても作業着の胸元には名前が刺繍されている。仕事に使うのか、ペンチとバールを持っている。
武田の死体に関すること
・床に広がる血液
医学に成功すれば「この血液は本物の血ではない。いわゆる血糊。」であることがわかる。それ以外の技能では詳しい情報はでないだろう。
・バット
見るとバットには血がついていることがわかる。
・ボール
なんの変哲もない野球ボールだ。
イベント
・PLがNPCの名前を全員分把握した時に発生させる
突然部屋の照明が消えて、がこんという機械音がする。しばらくすると何かを打ち付けるような音と女性のうめき声が聞こえる。その後再びがこんという機械音がすると、部屋に照明が点く。
部屋には椎名育が頭から血を流して死んでいる。
椎名育の死体を調べようとすると、再び部屋の照明が落ちて、がこんという機械音がする。何かをずるずると引きずる音が聞こえ、しばらくすると、がこんという機械音がして照明が点くが、部屋には椎名育の死体がない。
 その後は椎名の血液に関して調べることができるが、医学に成功しなければ情報は出ない。
医学に成功すれば「椎名の血は本物の血である」ことがわかる。
 PLが一通り探索したら、タイミングを見計らって照明を落とす。その後は今までと同じく、がこんという機械音がした後に、何かを叩きつける音が聞こえ、しばらくすると機械音がする。
(聞き耳→何かをずるずると引きずる音)
照明が点くと、部屋には血の付いたバールとペンチが転がっており、小野原の姿はない。
 血の付いたバールとペンチは、医学に成功すると「バールとペンチについた血液は血糊」であることがわかる。
血が付いた床
・目星に成功すると、その床には2m×2mほどの正方形い切れ目があり、武田の血液が切れ目で途切れていることがわかる。回転式の床のようだが、開くことは出来無いようだ。
(もしPLが、血の付いた床の上から動かない、または塞ぐといった行為に出た時は、回転式の床を部屋に他にもいくつかあることにしてもいい)
アドルフが教えてくれるヒント(PLが推理につまずいたり、技能に失敗しすぎて情報を得られなかった時に、適宜ヒントを与えること)
・最初の被害者である武田の血の広がりが床の切れ目で不自然に途切れている。
・椎名育の血は紛れもない本物。
・武田に脈はなかった。
・武田の血は血糊である。
・小野原が落としたであろうバールとペンチに付着した血液は血糊。
(PLにヒントの目星がついたか聞いて、ついたと答えたなら「犯人証明」へと進むこと)

◆犯人証明
「君、どうするね。どうやらこの空間にいる私は、君に真相を話す事ができないようだ。人々が思い描く私という人物は、なかなかに真相を話したがらない人間だという解釈なのだろう。しかし確かにその解釈は、私のそれと一致している。こんなことならば、私が簡単に真相を打ち明けては、世間が私という人物も普通の人間なのだと認めてしまう。だからおいそれと真相を明かすわけにはいかないのだ、などといった旨の言葉を紡ぐのではなかったな。」
 アドルフは意味不明なことを呟くように言うと、部屋を見渡しながら更に言葉を重ねる。
「ここで殺人を犯している・・もっとも知能犯とは程遠い間抜けなのだが、とにかくその殺人犯を突き止めぬことには、この空間から脱出することは叶わないようだ。」
 あなたは選択に迫られる。この密室で誰が殺人を犯しているのか答えねばならない。
 「さあ、もう解っているはずなのだ。揃うべきパズルのピースは全て揃っているのだ。いや、これはパズルですらない簡単なことだ。私からは真相が言えないみたいだから、君から犯人の名を言ってやるのだ。さあ、名探偵が犯人をつきとめたときの決まり文句を言ってやれ。」
(ここでPLに犯人の名を言いあててもらう。決まり文句はなんでもいい。とにかく武田信人の名を言い当てれば問題ない。犯人の名を間違えて言い当てた場合は、「犯人不証明」へ)

「武田信人・・!犯人はお前だ・・!」

「その通り!・・何、簡単なことだったろう?確かに、武田は最初の犠牲者であった。頭から血を流して脈もなかった。そして消える照明。次に照明が点いた時には、彼の死体は煙のように消えていた。そして次々に起こる死体消失。誰がやったのか?むろん武田信人その人さ!彼は最初、自らが最初の犠牲者であるかのように装ったのだ。これは彼の頭から広がった血痕が血糊であることから証明できる。本当に頭を何かで打ち付けられたのならば、本物の血が流れるはずだね?しかし彼の血痕は全て偽物、血糊であった。何故、わざわざ血糊を用意する必要があったのか。それは自らが死んだと偽装する為に他ならない!脈がなかったのに関しては、ボールを脇に強く挟んでいたのだろう。脇にボールか何かを挟むと、脈を図っても、まるで脈が止まったかのような反応になるのだが、それも死亡偽装の1つであったのさ。そして彼は照明が消えた時を見計らって回転式の床の下へと落ちた。その後は、また照明が落ちた時に回転式の床から這い出て、次々と犠牲者を出していっては回転式の床の下に運んだというわけだ。がこんという機械音はきっとそのためだろうね。最後に武田が犯人だと裏付けるもう1つの理由は、小野原のバールとペンチにある。これに付着していたものも血糊だったのだ。これに関してはしらじらしすぎる。わざとらしすぎる。おおかた、小野原が犯人であるかのように仕向けたかったのだろうが、浅知恵にしても度が過ぎる。」
 アドルフは聞き取りやすくはっきりとした声を部屋に響かせる。その時の彼の表情は、この時をながらく待っていたのだと言っているようだった。
 彼が一通りの真相をまくしたてるように語ると、空間が歪み始める。まるで船酔いしたみたいに気分が悪い。アドルフが心配そうにあなたに声をかけるのが聞こえるが、彼が何と言っているかも聞き取れなくなり、視界は霧がかったように霞んでいく。そしてとうとう、あなたは何が起きたのか思考する暇もなく意識を手放した。
 意識が途絶える瞬間、アドルフが何かを言った気がした。
 よく聞き取れなかったが、彼はきっとこう言っていたのだと思う。
「……お疲れ様、現代のワトスン君」

報酬
・伝説の探偵、その名残(消費アイテム。どうしてもわからない謎に直面した時、使用を宣言することで消費される。突如、頭の中に直接響く声により、謎が解ける)

◆犯人不証明
 言い当てるべき犯人の名を間違いだと気づいたのは、犯人だと思われる者の名を言った後に、アドルフが心底失望したような表情を見せた時だった。彼はほっそりした神経質そうな手のひらを顔面に当てながら、しきりに首を左右に振っている。
 それを見た時、取り返しのつかないことをしてしまったのだと、胸の奥から不安の波が押し寄せて、血の気が引いていくのがわかる。
 犯人の名を言い当てられなかったら何が起きるのか、その答えは刃の切れ味が教えてくれた。
 背中にどすと何かが刺さる音。次に波紋のように広がる激痛。感じたことのない痛みのせいか、額からは大量の汗が流れてくる。
痛い。 熱い。 寒い。 暗い。
 なるほど痛みとは生きている証だというが、その痛みさえ感じなくなったらそれは生きている照明にはならないのだろうか。現に私は、もはや痛みを感じない。それほどまでに痛覚を、思考を、意識を手放そうとしている。
 それは明確なる死。逃れられない運命であった。処刑台のギロチンはとっくに、この雁首へと振り下ろされていたのだ。死神はすっかりその魂を腕に包み込んで、地獄へ持ち帰ろうとしている。これが死。真っ暗で寒いし、それに寂しい。
BAD END

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基本的にはクトゥルフ神話TRPGのオリジナルシナリオを投稿します。シナリオはWordに書いてから、そのWordの文章をこちらのサイトへ貼り付けた後、編集する形を取っています。お気軽にフォロー、コメントしていただけると嬉しいです。各シナリオには簡易MAPがありますので、ご要望があればファイルを送信いたします。また、シナリオを印刷してセッションしたい、といった場合にもWordファイルを送信することが可能です。Twitterはじめました。よろしければ、フォローよろしくお願いいたします。Twitter→@sabano_misoni66 pixivにも生息しています→https://www.pixiv.net/member.php?id=30758338

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