背景

禁書〈偽りの出会いと別れ〉は、人の精神や記憶に干渉し、人間関係を失敗させる魔法災厄を引き起こします。
この〈禁書〉は六分儀市に住む3人の学生、小沢イロハ、長嶋ウキチ、鳩山フランソワーズに憑依しました。
イロハに憑依した〈別れ〉は、彼女から幼馴染の手塚スバルに関する記憶を奪います。
スバルはイロハに片思いをしていますが、この状態で告白しても、当然振られるでしょう。
ウキチとフランソワーズは付き合っています。ウキチに憑依した〈偽り〉は彼のフランソワーズへの
恋心をイロハへの恋心へ書き換え、その結果ウキチはイロハに浮気をしようとします。
フランソワーズに憑依した〈出会い〉は彼女に「ウキチを手元に置いておきたい」という願いを植え付け、
その結果彼女はウキチを監禁します。神社の結界は〈出会い〉によってつくられたものです。

舞台

主な舞台は六分儀市です。東雲中学、東雲高校、東雲神社などが描かれます。通常のシーン表を使います。
このシナリオでは、下記の専用の運命変転表を使用します。
1:不和 2:挫折 3:憎悪 4:記憶喪失 5:暴走 6:ヤンデレ

導入

3種類の導入があります。スバルをシナリオアンカーにするPCをPC①、ウキチをシナリオアンカーにするPCをPC②、
フランソワーズをシナリオアンカーにするPCをPC③と記します。
PCとそれぞれのシナリオアンカーは、セッション開始時点ですでに面識がある状態です。

シーン1「フランソワーズはイライラ」

PC③が、イライラしているフランソワーズを目撃するシーンです。

ある日の夕方、下校中のフランソワーズが、不機嫌そうな顔で石を蹴飛ばしながら、道を歩いています。

会話例
「何よ！　……ああ、PC③か、ごめんなさい」
「いえ……ちょっと、とても不愉快な場面を見てしまったの」
「思いの外、感情が昂ってしまったわ。明後日の縁日では売り子をするのに、いけないわね」
「心配してくれるのかしら？　ありがとう、でも、これはわたくしたちの問題だから」

「鳩山　フランソワーズ」のハンドアウトを公開してください。
PC③はフランソワーズに運命を1点獲得します。属性は任意です。その後、魔力決定を行います。

シーン2「来ないウキチ」

シーン1の翌日のシーンです。
PC②はウキチと一緒に映画を見に行く約束をしていましたが、約束の時間になっても彼は現れません。
早くしないと映画が始まってしまう、とPC②がいら立ってきたころ、ウキチから電話がかかってきます。

会話例
「PC②か！？　すまん、今日はいけそうにない！」
「というか、助けてくれ！　フランが……うわああああ」

ウキチの叫びとともに、電話が切れます。
電話をかけ直すと、「お掛けになった電話は、電源が入っていないか、電波の届かないところにある……」というお決まりのフレーズが返ってきます。

「長嶋　ウキチ」のハンドアウトを公開してください。
PC②はウキチに運命を1点獲得します。属性は任意です。その後、魔力決定を行います。

シーン3「スバルの決意」

シーン2の数日後のシーンです。
PC①はスバルに話しておきたいことがあると言われます。

会話例
「俺さ……やろうとしてることがあるんだ」
「うまくいくかは分からないけど、やらずに後悔するのは嫌だから」
「うまくいってもいかなくても、PC①に報告はするよ」

「手塚　スバル」のハンドアウトを公開してください。
PC①はスバルに運命を1点獲得します。属性は任意です。その後、魔力決定を行います。

シーン4「大法典からの命」

PCたちが合流するシーンです。
〈大法典〉支部である市立図書館に呼び出され、戸口の魔法使い、影原文子から命が下されます。

会話例
「六分儀市北部に禁書の反応が検知されました」
「起こっている魔法災厄は精神災厄……人の精神や記憶を変化させるものです」
「この手のものは、魔法によるものかどうかが判別しにくいため、気が付いたときには広範囲に影響が及んでいたというケースが、過去に何度もあります」
「そのため、やはり今回も早期の解決が求められます」
「それと、今回の事件と関係があるかは分かりませんが」
「東雲神社に結界が張られているのが確認されました」

「東雲神社」のハンドアウトを公開してください。結界のルールについて簡単に説明するとよいでしょう。

メインフェイズに移ります。リミットが2であること、サイクル終了時に〈断章〉の憑依深度が上昇することをPLに伝えてください。

メインフェイズ

マスターシーン1「邪魔者は排除」

第2サイクルにて、PCが1人行動済みになったとき、〈出会い〉が回収されていなければ発生します。

PCたちの前に、フランソワーズが現れます。彼女は長い髪をかきあげながら、威勢よくPCたちに宣戦布告します。

会話例
「わたくしとウキチさんの恋路は、何者にも阻ませませんわ！」
「さあ、どなたから消してやろうかしら！」
「消されたい方は、前に出なさいな！」

まだ公開されていなければ、フランソワーズの【秘密】を公開してください。
PCの代表は、《流れ》で判定してください。成功すると、〈出会い〉に魔法戦を仕掛ける、もしくはこの場からPC全員で逃げられます。
失敗すると、〈出会い〉が代表に魔法戦を仕掛けます。

マスターシーン2「告白:成功」

メインフェイズ終了時、〈別れ〉が回収されていれば発生します。
スバルは東雲高校の校門から出てきたイロハに、告白します。

「イロハさん！　お、俺……イロハさんが好きです！　付き合ってください！」
イロハは目を丸くして、頬を掻きながら返事をします。
「え、え！？　あー……ごめん、びっくりしちゃった」
「んーと……スバルくんのことは、大切な友達……親友だと思ってるし、だから、恋人とか、そんなことは考えたことがなかったけど」
「私も、スバルくんと一緒に過ごす時間は、心地いいから」
「いいよ。付き合おっか」

2人の感情に呼応して発生した魔素が、アンカーとの縁を通じて流れ込んできます。
スバルかイロハをアンカーにしているPCは、歌の魔素を1個獲得します。
2人ともアンカーにしていたら、2個獲得します。

マスターシーン3「告白:失敗」

メインフェイズ終了時、〈別れ〉が回収されていなければ発生します。

スバルは東雲高校の校門から出てきたイロハに、告白します。
「イロハさん！　お、俺……イロハさんが好きです！　付き合ってください！」
しかし、イロハはそっけなく返します。
「は？　あんた誰よ」
「知らない男子にいきなり告られて、OKするわけないでしょ」
「さよなら」

スバルはひどくショックを受けます。「不和」の不幸に見舞われたと扱います。

その他のイベント

各サイクル終了時、未回収の〈断章〉の憑依深度が1点上昇します。
東雲神社の【秘密】が公開されると、ウキチの【秘密】が調査できるようになります。
イロハから〈別れ〉を回収すると、彼女はスバルに関する記憶を取り戻します。
ウキチから〈偽り〉を回収すると、フランソワーズへの恋心を取り戻し、彼女に謝罪します。
フランソワーズから〈出会い〉を回収すると、ウキチに対する独占欲が収まり、彼を手当てします。

クライマックスフェイズ

PCたちに、影原から連絡が入ります。

会話例
「影原です。状況はどうなっていますか？」
「こちらは準備が整いました。これより、封印儀式を行いますので、図書館まで戻ってください」

図書館の奥の一室に、〈大法典〉の魔法使い数人が集まっています。
床には円と五芒星からなる魔法陣が描かれ、薄く光っています。
魔法使いが呪文を唱えると、〈断章〉が魔法陣の中央に転移し、それらが融合して、〈禁書〉が実体化します。
禁書〈偽りの出会いと別れ〉の外見は、脈打つごとに色が変わる巨大な心臓です。

集団戦を行ってください。〈禁書〉の領域は「闇」です。
【友人】が剥奪されていなければ、フランソワーズをアンカーにしています。

結末

〈禁書〉の封印に成功すると、魔法災厄は終結します。人々はしばらくの間、人間関係の修復に努めることでしょう。
〈禁書〉の封印に失敗すると、魔法災厄は世界中に広がり、ある国家元首の失言をきっかけに、国際関係が緊張していきます。

ハンドアウト

手塚　スバル

人物
東雲中学校3年生。何かを決意したらしく、思いつめた表情をしている。

秘密
彼は幼馴染の小沢イロハに片思いをしている。
先日、イロハから部活のOBに言い寄られたという話を聞き、もたもたしているとチャンスを逸すると感じて、東雲神社に恋愛成就のお守りを買いに行っていた。
その時に対応してくれた売り子さんが、妙に機嫌が良いように感じた。
ともあれ、近々彼はイロハに想いを伝えるつもりだ。
ハンドアウト「小沢　イロハ」を公開する。

小沢　イロハ

人物
東雲高校2年生。気が強く、はっきりものを言う。剣道部に所属にしているが、戦績はパッとしない。

秘密
彼女には断章〈別れ〉が憑依している。〈別れ〉は彼女から幼馴染のスバルに関する記憶を奪った。

〈別れ〉
初期憑依深度:1
攻:4 防:2 根:3
魔力:6
蔵書:【忘却】【支配】
特技:《涙》《裏切り》(領域:歌)

長嶋　ウキチ

人物
六分儀大学1年生。高校から剣道を始めて、大学でも続けている。
PC②に助けを求めてきた。現在音信不通。
彼を見つけるまで、【秘密】は調査できない。

秘密
彼には断章〈偽り〉が憑依している。〈偽り〉は彼のフランソワーズへの恋心を、イロハへの恋心に書き換えた。
そして、高校時代の後輩のイロハを口説いていたところをフランソワーズに目撃された。
結果、PC②と約束をしていた日に、フランソワーズに襲撃され、拉致され、監禁された。

〈偽り〉
初期憑依深度:1
攻:3 防:3 根:3
魔力:6-1
蔵書:【改竄】【異境召喚】
特技:《異界》(領域:星)

鳩山　フランソワーズ

人物
東雲高校3年生で、図書委員長を務める。東雲神社の娘で、縁日のときは売り子もする。
何やら、とても不愉快なことがあったらしいが……？

秘密
彼女は恋人のウキチが浮気しようとしている現場を目撃した。
そのとき断章〈出会い〉に憑依され、ウキチを手元に置いておきたいという願いを植え付けられる。

〈出会い〉
初期憑依深度:2
攻:2 防:4 根:3
魔力:6
蔵書:【教唆】【友人】【同調】
特技:《歪み》(領域:闇)
関係:鳩山　フランソワーズ(2・支配)

なお、運命変転の処理はプライズの獲得より先に行われる。

東雲神社

場所
古い神社。毎月1日に縁日が開かれる。お守りには、恋愛成就の効果があると噂されている。
結界が張られており、魔法使いは境内に入れない。初期結界強度は2である。
このハンドアウトは調査できない。結界が破壊されると、【秘密】が公開される。

秘密
社務所の一室で、猿轡をかまされたウキチが、ガムテープで椅子に縛り付けられていた。彼は虚ろな目をしており、手足には痣もある。