2022年10月05日更新

六分儀市の笛吹き男

  • 難易度:★★★|
  • 人数:3人~3人|
  • プレイ時間:6~7時間(ボイスセッション)

あらすじ
真夜中にどこからともなく、オカリナを吹く少年が現れ、子供たちは音色に誘われるかのように少年についていく。
大人たちが声をかけても反応はなく、そればかりか大人たちは何もないところで突然溺れる。
魔法使いたちは、連れ去られた子供たちを助け出せるか?


推奨階梯:3 PL数:3 リミット:3
基本ルールブックだけで遊べます。
未テストプレイなので注意。

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トレーラー

澄んだ音色が夜の街に響き渡る。
美しい旋律に合わせて、子供たちは微睡みながら行進する。
無粋な大人に邪魔はさせない、そんな奴らは溺れてしまえ。
ああ、だけど気を付けて。だってその音楽は、滅びへとつながっている。

背景

辰巳トジルこと、書籍卿「滅びの導火線」は、世界の終わりを見ることを切望しています。
しかし、〈大法典〉が守護する人界を滅ぼすことは、決して容易ではありません。
そこで彼は、すでに滅亡に向かいつつある異境、「終末世界」へ行くことを計画します。
「虚」の感染を防ぐためには、虹玉が必要です。
彼は想像力に溢れる子供たちを材料に、虹玉を作ることにしました。
自身が支配する小さな異境でその準備をしつつ、息子のレンに〈断章〉を憑依させ、材料を集めさせます。

舞台

舞台は春の六分儀市と書籍卿が作った異境です。通常のシーン表と迷宮世界シーン表を使います。
運命変転表は通常のものを使用します。

導入

シーン1「笛吹き男」

マスターシーンです。PCは登場できません。

描写
ある春の日の真夜中。ヨルガオ団地前の交差点に、1人の少年が立っています。
彼はポケットからオレンジ色のオカリナを取り出し、ゆったりとした民謡を奏でながら、歩き出します。
しばらくすると、団地から10人ほどの子供たちがふらふらとした足取りで出てきます。
彼らはオカリナを吹く少年の後ろに1列に並び、彼についていきます。
ほどなくして、団地から1人の青年が走ってきます。彼は列の最後尾にいる少女に声をかけますが、
反応は返ってきません。
声をかけ続けていると、突然青年は喉元を押さえて苦しみだします。
青年は震える手で携帯を取り出し、119番にかけ、地面に倒れこみます。
子供たちは青年に目もくれずに、歩き去っていきました。

「笛吹き男」のハンドアウトを公開します。

GM向け注釈
少年は辰巳レン、青年は松田マサル、少女は松田タエです。

シーン2「任務通達」

PCたちが、六分儀市立図書館で影原文子から〈禁書〉回収を命令されるシーンです。

会話例
「六分儀市で、2つの魔法災厄が起きています」
「1つは、子供たちの失踪」
「オカリナを吹く少年にふらふらとついていき、そのまま戻ってこない、という事件が起きています」
「もう1つは、水もない地上で溺れること」
「これらはいずれも、ドイツの伝承から生まれた禁書〈終焉を奏でる武者〉によるものと思われます」
「今回の任務は、この〈禁書〉の回収です」
「まずは、被害者を調べるとよいでしょう」

「松田 マサル」「松田 タエ」のハンドアウトを公開します。
PCたちは笛吹き男、マサル、タエのいずれかに運命を1点獲得します。重複してもかまいません。
その後、魔力決定を行います。

メインフェイズに移ります。リミットが3であること、1サイクルごとに憑依深度が上昇すること、
このシナリオでは未公開ハンドアウトは調査できないことをPLに伝えてください。

メインフェイズ

マスターシーン「若き医者」

第1サイクル開始時に挿入されます。

描写
1人の若い医者がカルテを持って、大部屋に入ります。
そこは、地上で溺れるという怪現象によって運び込まれた患者が集められている部屋です。
彼らはみな命に別状はないものの、意識を取り戻しません。
「……まだ目を覚まさない、か」
「だが……この奇妙な症状を解き明かすことができれば」
「ぼくの出世も、一歩近づくことになるだろう。ふふ……」
彼は静かに笑いながら、カルテに経過を書き込み、部屋を後にします。

「悪崎 ツキヒコ」のハンドアウトを公開します。

マスターシーン「異境突入」

PCが魔法門の使用を宣言したときに、挿入されます。

描写
PCたちが魔法門をくぐると、そこは薄暗い建物の中でした。
窓はなく、通路は曲がりくねっていて、無数の扉が並んでいます。
少し歩くと、ある扉の向こうから、女の子のすすりなく声が聞こえてきます。
扉に手をかけると、背後から
「おっと……邪魔をしないでもらえるかな、〈大法典〉の魔法使いくん?」
という男の声がします。
「彼女、松田タエは作品制作の真っ最中でね」
「私のほうも、準備が整いつつある」
「もうすぐ世界の終わりが見れると思うと、子供のように胸を高鳴らせてしまうよ」
「おっと……しゃべりすぎてしまったな」
「とにかく、痛い目に遭いたくなければ、さっさと人界に帰るんだな」
そう告げると、彼は転移魔法で消えます。

「滅びの導火線」のハンドアウトを公開します。また、「松田 タエ」のハンドアウトが調査できるようになります。
この建物は「滅びの導火線」によって作られた異境であることをPLに伝えてください。
この異境の世界法則は「不干渉」「領域補正」です。シーン表は迷宮世界シーン表を使います。
これ以降のシーンでは、シーンプレイヤーに六分儀市と異境、どちらを舞台にするか尋ねてください。

GM向け注釈
ほかの連れ去られた子供たちは、虹玉作成の儀式用の部屋に磔にされています。
PCたちが探索しているときに、その部屋を見つけたことにしてもよいでしょう。
ただし、「滅びの導火線」を倒さなければ、彼らを救出することはできません。
タエは絵を描かなければいけないという思いに取りつかれており、PCが声をかけても
耳に入っていません。

マスターシーン「断章誕生」

第3サイクルで、PCが2人行動済みになったあとに挿入されます。

描写
タエは、朦朧としながらも、もう何枚目か分からない絵を描いています。
描くのをやめたら、お兄ちゃんが殺されてしまう――その思いで、必死に筆を振るっています。
しかし、幼い身体はすでに限界を迎えていました。
彼女は絵を仕上げると、筆を取り落とし、そのまま倒れて気絶します。
そして。
彼女がこれまでに描き上げた絵が、音もなく舞い上がり、1つに繋がります。
断章〈欲望〉の誕生です。

これ以降、といってもあと1手番しかありませんが、〈欲望〉に魔法戦を挑むことができるようになります。
〈欲望〉との魔法戦は、「滅びの導火線」が立ち会います。

予知夢シーン「虹玉作成」

第3サイクルでPCが全員行動済みになったあとに、「滅びの導火線」が行動不能か死亡でなく、〈欲望〉が回収されていなければ挿入されます。

描写
「滅びの導火線」はタエが絵を描いていた部屋に入ります。
「おお……素晴らしい。これなら、申し分ない」
彼は誕生した断章〈欲望〉に満足します。
倒れているタエを抱きかかえて、〈欲望〉とともに転移魔法で別の部屋に移動します。
そこは虹玉を作るための儀式を行う部屋です。
壁に何人もの子供たちが磔にされています。
「滅びの導火線」はタエも磔にして、部屋の隅に立ち、呪文を唱えます。
すると、磔にされていた子供たちの首が、ポロリポロリと落ち、部屋の中心へと転がります。
それらがぶつかると、ぐにゃりと歪んで融合し、1つの球体になります。
その球体を、断章〈欲望〉で覆います。
屍典「虹玉」の完成です。
「滅びの導火線」は高らかに笑います。

タエか「滅びの導火線」をアンカーにしているPCは、予知判定を行ってください。
誰かが判定に成功していれば、判定に失敗した、あるいは判定を行えなかったPCも
シーンに登場できます。
「滅びの導火線」との魔法戦を行ってください。
全員が予知判定に失敗する、あるいは魔法戦に敗北すると、予知夢が現実となります。
タエたちは死亡します。「滅びの導火線」は完成した虹玉とともに、終末世界へと旅立ちます。

クライマックスフェイズ

六分儀市立図書館で〈禁書〉の編纂を行います。
なお、〈欲望〉は〈終焉を奏でる武者〉の一部ではないため、〈欲望〉の特技や蔵書は修得していません。
〈禁書〉の領域は「歌」です。

結末

〈禁書〉の封印に成功すると、魔法災厄は終結します。入院していた患者たちは、意識を取り戻します。
屍典の材料にされていなければ、失踪していた子供たちも戸口の魔法使いにより救出されます。
〈禁書〉の封印に失敗すると、魔法災厄は世界中に広がります。さらに、新たな「笛吹き男」も現れることでしょう。
マサルを含む患者たちは突然容態が悪化し、その日のうちに死亡します。

ハンドアウト

「笛吹き男」

人物
真夜中にどこからともなく現れる、オカリナを吹く少年。
その音色を聞いた子供の一部は、家からふらふらと出て、「笛吹き男」についていき、失踪する。
大人には影響はなく、子供も大半は影響がないようだ。

秘密
「笛吹き男」についていった子供たちには、音楽や図工、書写など芸術系の科目に秀でていたという共通点がある。その中には、芸術家が将来の夢という子供も多い。
「笛吹き男」の正体は、断章〈演奏〉に憑依された中学1年生、辰巳 レンである。

〈演奏〉
初期憑依深度:1
攻:3 防:3 根:3
魔力:6
蔵書:【感染】【角笛】
特技:《悪意》(領域:闇)

松田 マサル

人物
六分儀大学総合科学部1年生。
「笛吹き男」についていく妹のタエを追いかけているときに、魔法災厄に遭い、溺死しかけた。
現在は霧坂総合病院に入院している。意識はまだ戻らない。

秘密
彼は魔法災厄に遭う直前、「笛吹き男」が赤城山の方角へ子供たちを連れて向かっていたことを見ていた。
「赤城山」のハンドアウトが公開される。

松田 タエ

人物
東雲小学校6年生。マサルの妹。
絵を描くことが大好きで、コンクールで金賞をとったこともある。
その絵は市民会館に展示されている。
ある夜、「笛吹き男」についていき失踪した。
彼女を見つけるまで、秘密は調査できない。

秘密
彼女は芸術の神に祝福されており、鋭いインスピレーションによって生み出された絵には魔力がうっすらと宿る。
彼女は「滅びの導火線」に、兄の命を脅迫材料に絵を描くことを強要され、不眠不休で絵を描き続けている。
朦朧としながら、怨念とともに描かれた大量の絵は、〈断章〉に変化しつつある。
第3サイクルで、PCが2人行動済みになったあと、断章〈欲望〉が生まれる。

〈欲望〉
攻:3 防:3 根:3
魔力:6
蔵書:【無心】【夢網】
特技:《偶然》(領域:夢)

悪崎 ツキヒコ

人物
霧坂総合病院で勤務する若手内科医で、マサルの担当医。
マサルのほかにも、同じ魔法災厄に遭った患者を何人か診ている。

秘密
彼には断章〈終焉〉が憑依している。
彼は出世のために、珍しい症状の患者を診断したいと思っていた。
そのため、断章〈終焉〉の甘言に乗って、望みを叶えさせることと引き換えに憑依を許可した。

〈終焉〉
初期憑依深度:1
攻:4 防:2 根:3
魔力:6
蔵書:【虚針《海》】【消去】
特技:《海》(領域:星)

赤城山

場所
標高は50mに満たない小さな山。今は桜が満開だ。
行楽地として住民に親しまれている一方、山の奥には謎の工場や真っ黒な沼など、怪しげなものも存在する。

秘密
山奥の黒沼に、異境へつながる魔法門が設置されている。「笛吹き男」はこの魔法門を使用し、児童を異境へ連れ去ったのだ。
魔法門は、黒沼に憑依している断章〈武者〉が守護している。〈武者〉に勝利しなければ、使用することはできない。

〈武者〉
初期憑依深度:1
攻:2 防:4 根:3
魔力:6-1
蔵書:【血契召喚】【百禍】
特技:《勝利》(領域:歌)

「滅びの導火線」

人物
〈混血主義者〉の書籍卿。かりそめの名前は「辰巳 トジル」、レンの父親である。
赤城山の魔法門は、彼が設置したものだ。
世界の終わりを見ることが望み。

秘密
彼は世界の終わりを見るために、終末世界へ行こうとしている。
「虚」に患わないための「虹玉」の材料として、想像力が豊かで、芸術に秀でた子供たちを集めた。
第3サイクルでPCが全員行動済みになったあと、「夢」領域の断章があれば、彼は虹玉作成の儀式を執り行う。

「滅びの導火線」
攻撃力:4 防御力:3 根源力:3 魔力:6
特技:《衝撃》《狂気》《嵐》 領域:夢 魂の特技:《結末》 真の姿:炎の渦(攻撃強化)
蔵書:【緊急召喚】【騎士召喚《狂気》】【爆撃】【地雷《嵐》】【書刑】【攻則】
(【攻則】は適用済み)

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ネクロニカ、マギカロギア、インセインなど、暗い雰囲気のシステムが好き。鬱展開が好き。でも結末はハッピーエンドが好き。 拙作は自由に回してもらってかまいません。回すときは作者名を記載してください。 Twitterアカウント:@nek0mu5hi

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