●カルマ
アドベンチャーパート開始時に公開されるカルマは1つです。
『森を探索する』
目覚めた場所から1歩も動かないなどの極端なことをしない限り、自動的に達成されます。
●目覚め
セッションはドールたちの目覚めから開始されます。まずは次の文章を読み上げてください。
「君たちは、冷たく湿った土の上で目を覚ました。そこは、毒々しい極彩の植物が周囲を埋める森の中だ。見たこともないほど大きくて奇怪な虫が、茂みに逃げ込んでいくのが見える。空は暗く黄色い雲に覆われていて、日光は差し込まず、鳥も飛んでいない。頭はズキズキと痛み、自分が何者なのかさえよく思い出せない。思い出せるのは、名前とわずかな記憶のカケラだけだ。すぐ近くには、同じように混乱している少女(たち)がいる」
ここで、ドールたちに自己紹介をさせましょう。その後、互いに未練を獲得します。
このシナリオにおいて姉妹は、アンデッドについての基礎知識を持ち、世界が滅んだことを知っているとします。
●ナナとの遭遇
「君たちは、ジャリジャリという足音が近づいてきていることに気づく。近づいてきたのは、質素なボロボロの服を着た幼い少女だ。彼女はガスマスクのようなものをつけていて、水の入ったペットボトルを持っている。腕や脚には擦り傷がいくつもあって、血が滲んでいる」
彼女は武器を持っておらず、体には特殊な器官も移植されておらず、機械化もされていません。また、彼女は敵対的なそぶりを見せません。
この少女を見たあなたたちは、奇妙な違和感を覚えます。
全員に行動判定(修正±0)をさせてください。ネクロマンシーや医学に関する記憶のカケラが使用できます。
成功すると、彼女がアンデッドではない、生きた人間であることに気づきます。狂気判定(修正+1)をさせてください。
ナナは、以下のように姉妹に声をかけます。
「わ、私、ナナって言うの。お姉ちゃんたちは?」
「ね、ねえ、お姉ちゃんたち、困ってない?」
「ナナ、安全な場所知ってるよ。だからね、お姉ちゃんたち、連れて行ってあげる」
「え、遠慮しなくていいって! ナナを信じてよ!」
姉妹がナナの申し出を断っても、ナナは執拗に姉妹を連れていこうとします。
それでもなおナナについていこうとしないなら、ナナは泣き出してその場から離れます。姉妹全員に狂気判定(修正+1)をさせてください。
『探索』に進んでください。
望むなら、ナナに対して未練を獲得できます。その場合は中立者への未練表を振ってください。
ナナは姉妹と会話しながら、森の奥へと進んでいきます。会話例を以下に並べておきます。
・ほんとうにこの道であっているの?
「あ、合ってるよ! 大丈夫、大丈夫だから!」
「この先に、シェルターがあるの。その中は、安全な場所だから」
「あれ、おかしいな……こんなに遠かったっけ……」
・どうして生きているの?
「ど、どうしてって言われても……お姉ちゃんたちは、生きてないの?」
「え、そ、そうなの? そうなんだ……」
「あんでっど? よく分からないけど、生き返ったってこと?」
「ナナは、生きてるよ。お兄ちゃんも、お母さんも生きてる」
・どうしてガスマスクをつけているの?
「外の空気はよごれてるからって、お母さんからもらったの」
「このお水も、お母さんがくれたんだよ」
・どうしてこんな森に?
「ナナね、シェルターの中に住んでたの」
「だけど、私とお兄ちゃん、追い出されちゃったの……」
「みんな急に、私たちのこと嫌いになったみたいで……」
「なんでなのかな……」
ある程度会話をしたら、全員に行動判定(修正±0)をさせてください。人間関係に関する記憶のカケラが使えます。
成功したドールは、ナナが何か隠し事をしていると確信します。問い詰めると、ナナは明らかに挙動不審になるものの、認めはしません。
●探索
「さて、森の中を進む君たちは、様々な情景を見て、心が揺れ動くだろう」
姉妹それぞれに行動判定(修正±0)をさせてください。パーツや記憶は使えません。判定値に応じ、『森の中で……表』(箱庭p.55)にある精神的作用を受けます。全員一斉に判定させて、同じ目が出た場合はまとめて処理するとよいでしょう。
また、判定値に応じて以下のカケラを手に入れます
1:【捕食(α-33)】 2:【動く死体(73)】 3:【手をつなぐ(62)】 4:【蟲(94)】 5:【土の匂い(40)】
6:【水(37)】 7:【蟲愛でる(α-61)】 8:【なでなで(α-35)】 9:【抱擁(β-68)】 10:【花園(11)】
11以上:【故郷(35)】
表の処理が一通り終わったら、『稚拙な罠』に進みます。
ただし、ナナに同行していなければ、『無残な死体』に進みます。
●稚拙な罠
「しばらくの間歩いていると、コンクリートの小屋のような建物を見つける。少しばかり亀裂が入っているものの、崩壊はしていない。正面に金属製の分厚い扉がある」
「ふと、ナナが(任意のドール)のもとへ駆け寄り、細い両腕で横へと突き飛ばす」
誰かが扉を調査すると宣言したら、そのドールを突き飛ばせばよいでしょう。
突き飛ばされたドールに行動判定(修正+2、脚部の移動・移動妨害マニューバ使用可)をさせてください。失敗すると、そのドールは落とし穴に腰まで嵌ってしまいます。成功すると、その場に踏みとどまります。
落とし穴に落とせたなら、ナナは他のドールも突き飛ばそうとしますが、判定不要で踏みとどまれます。不意をつかない限り、人間がアンデッドを突き飛ばすなど不可能です。
直後、ずるずるといった物音とともに、無数の蛇をまとわせたような異形の少女、サイケヒドラが奥から現れます。ナナは
「わ、私、言われた通り、代わりの子を連れてきたよ!」
「だから、お兄ちゃんを返して!」
と言います。
サイケヒドラは「あははは! あなたのろますぎるわ。だから、これは罰よ」と言い、姉妹とナナに向けて長い腕で背後を指し示します。
そこでは、ヘビトンボの群れが少年の死体を貪り喰っています。
それを見たナナは絹を裂くような悲痛な叫び声をあげます。
姉妹全員に狂気判定(修正-1)をさせてください。
ナナがわめきながら、サイケヒドラへ向かってよろよろと走り出します。
バトルパートに移行します。
●無残な死体
「しばらくの間歩いていると、コンクリートの小屋のような建物を見つける。少しばかり亀裂が入っているものの、崩壊はしていない。正面に金属製の分厚い扉がある」
ずるずるといった物音とともに、無数の蛇をまとわせたような異形の少女、サイケヒドラが何かを引きずりながら奥から現れます。彼女の体と融合している食肉植物が、引きずられているものに喰いついています。それは……ナナの死体です。ナナの腹を破り、内臓を貪っています。
サイケヒドラの背後では、ヘビトンボの群れが少年の死体を貪り、食い千切っています。
姉妹全員に狂気判定(修正-2)をさせてください。
サイケヒドラは
「あらあら、やっと餌が来たわ……でも、遅すぎたわね」
「まあでも、せっかくのご馳走を、残すのも勿体ないわね」
と言い、姉妹たちに襲いかかります。
バトルパートに移行します。
カルマ:『ナナを死なせない』(ナナに同行しなかった場合はカルマなし)
勝利条件:『敵を全滅させる』
敵配置は下記の通りです。サイケヒドラとナナのデータは最後に載せています。
PL2人 悪意点19
奈落:ヘビトンボ
地獄:サイケヒドラ
煉獄:
花園:ナナ
PL3人 悪意点28
奈落:ヘビトンボ×2
地獄:サイケヒドラ
煉獄:ラフレシア
花園:ナナ
PL4人 悪意点37
奈落:ヘビトンボ×2
地獄:サイケヒドラ、ラフレシア、ヘビトンボ
煉獄:ラフレシア
花園:ナナ
●NCの戦略
ヘビトンボは最初のラピッドタイミングで【よぶんなはね】を使い、【はね】で楽園方向に2移動しましょう。【おおあご】でナナを攻撃します。
ラフレシアは射程範囲内の姉妹を攻撃します。姉妹が移動しようとしたら、すかさず【捕縛触手】を使いましょう。
ナナは【よろめく】で地獄へいこうとします。地獄までたどり着けたら、【わめき声】をサイケヒドラに使います(もちろん何の効果ももたらしません)。
サイケヒドラは、まず【悪意の芽】で射程内の姉妹のナナへの未練を嫌悪に書き換えましょう。【知覚混乱】による妨害も忘れずに。攻撃よりも嫌がらせに徹しましょう。
ナナとヘビトンボの行動ルーチンは、戦闘開始時に開示するとよいでしょう。
・ナナが生存した場合
ナナは泣きながら、姉妹に縋ります。
「ねえ、お姉ちゃんたちみたいに、お兄ちゃんを生き返らせてよぉ……」
「できないの? じゃあ、ナナを死なせて……。ナナも、お兄ちゃんのところに行く……」
ネクロマンシー技術を持っているドールがいれば、お兄ちゃんを生き返らせようとするかもしれません。しかしその死体はすでにヘビトンボに貪られたうえ、自我次元接触座標も分からないため、今この場で蘇らせることは不可能です。
お兄ちゃんの肉片を埋葬するのもよいでしょう。
建物についてナナに訊ねれば、自分が追い出されたシェルターだと答えます(背景参照)。
なお、シェルターの破壊は無謀な試みといえるでしょう。PLが強く望むなら攻撃マニューバで行動判定させてもよいですが、たとえ大成功したとしても、亀裂がわずかに深くなるだけです。
ナナをこのあとどうするか決めたらセッションは終了です。寵愛点を渡してください。
なお、ナナを望み通り死なせたとしても、『ナナを死なせない』はバトルパートでのカルマなので、失敗したことにはなりません。
・ナナが死亡した場合
あとに残るのはもの言わぬ屍のみです。ナナを埋葬するのもよいでしょう。今後どうするかを決めたらセッションは終了です。寵愛点を渡してください。
森の中にあるコンクリートの小屋は、わずかな人類の生き残りが生活しているシェルターです。ナナとお兄ちゃんは、そこで暮らしていました。
しかしある時、森にサイケヒドラがやってきます。頑丈なシェルターを破壊することはできなかったものの、ESPによる干渉が可能だと気付いた彼女は、【悪意の芽】を放ち、シェルター内の人間にその中の誰かを強く嫌悪させます。
それは内乱を起こし、多くの場合、嫌悪の対象は追放されます。今回は、ナナとお兄ちゃんが嫌悪の対象となってしまったのです。
彼女は追い出された人間を、ヘビトンボに与えるご馳走としています。もちろん、彼女自身の加虐嗜好を満たすためというのもありますが。
今回は気まぐれに、「代わりの餌を連れてきたら、あなたたちは食べないでいてあげる」とナナに言い、ナナにほかの獲物を連れてこさせました。もちろん、誰を連れてこようとケチをつけて、2人も新たな獲物も餌にするつもりでした。
また彼女は森の全域に【知覚混乱】を放ち、迷い込んだ者の方向感覚・距離感覚を狂わせます。このためナナはシェルターへドールを連れていく際に、時間がかかってしまいました。なお、サイケヒドラを倒さずに森の外へ出ることは困難です。
●エネミーデータ
サイケヒドラはヒドラの頭部に【悪意の芽】【知覚混乱】を追加したもの。
ナナ|レギオン
(悪意)タイミング【マニューバ】コスト/射程:効果
( 1 )アクション【よろめく】3 /自身:移動1
(0.5)ジャッジ 【止まらぬ震え】2 /0 :支援1
(1.5)アクション【わめき声】3 /0 :精神攻撃1
数 :1/1匹
悪意:1 最大行動値:8
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