2024年03月14日更新

イキサキ

  • 難易度:★★|
  • 人数:1人~3人|
  • プレイ時間:1~2時間(ボイスセッション)

美術家の展覧会に来た探索者が異空間に閉じ込められる、クローズドの短いシナリオです。
初心者が初めて書いたシナリオですので、不明瞭な点や説明の前後はご容赦ください。

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ストック

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【導入】

「私の友人が展覧会をやっているんです。よかったら一緒に観に行きませんか?」
知人と共に紹介された美術家達の展覧会へやってきた探索者。白で統一された展示スペースには、絵画、彫刻、鋳金等、多くの作品が展示されており、多くの人の目を楽しませている。知人と作品をゆっくり観て回っていると、大きな立体作品に目を奪われた。
それは、若い女性を原寸大で型どったような人形で、真っ白なものと真っ黒なものが、同じ姿で並んで椅子に座っている。
「凄い、まるで生きているようだ」
そう言って人形をまじまじと見つめる知人を横目に、タイトルを確認しようと足元のプレートへ目をやった、その時。
意識的にしたものではない。何の意識もせずどのタイミングかで瞬きをしたその瞬間、目の前の景色が今までと違ったものになっていた。
そこは作品が並んだ展示スペースではなく、ただただ白いだけの狭く寂しい部屋になっていた。その中央にあの真っ白な人形が佇んでいた、1体だけで。
何度か瞬きをしたり目を擦ったりしてみても、目の前の光景が戻ることはなかった。
まるで白昼夢の中にいるようだが、ハッキリとした意識がそれを否定する。
奇妙な体験をした探索者はSANチェック 0/1

『周囲の情報』
〇部屋全体に「目星」・・・辺りを見回すと、そこは何もかもが真っ白で統一された部屋で、照明器具がないにも関わらず明るい。四角い十畳ほどの広さの中央に白い椅子に腰かけた、あの白い人形が座っている。その人形は若く美しい女性の姿をしており、造形だけ見れば人間と見紛うほど見事な姿をしている。目を閉じているため、まるで眠っているようにも見える。
四方の壁にはそれぞれドアがある。

〇人形に「目星」…人形をよく見てみると、膝に乗せられ軽く握られた手の中に小さな白いメモを見つけることができた。メモには白い紙で「いらっしゃいお客様。さぁ、わたしを選んで」と書かれている。

〇椅子に「目星」…椅子の背もたれの裏側に小さく「ダマサレルナ」と文字が掘られている。

〇ドアに「目星」…人形の正面のドアには「この先は『いのち』。彼女が眠りから覚める」
人形から見て右手のドアには「この先は『こころ』。彼女の大事なものがある」
人形から見て左手のドアには「この先は『ことば』。彼女の声がしまってある」
人形の真後ろのドアには「この先は『うんめい』。彼女の未来がある」

【探索】

それぞれのドアに鍵はかかっておらず、ドアノブをひねれば簡単に開けることができる。

『いのちのドア』

ドアを開けるとその先はまた真っ白な部屋だった。中央に小さな丸テーブル、その上に空のハート形の瓶と「探索者の人数分の」半透明な赤い液体の入った瓶が置かれている。
〇テーブルorハートの瓶に「目星」…ハートの瓶の下に白いメモが見つかる。メモには「これは彼女のいのち。彼女に返してあげて」と書かれている。
〇赤い液体の瓶に「目星」…この瓶にはラベルが貼ってあり、それぞれに探索者の名前が書いてある。
※KP情報…メモは黒いインクで書かれている。液体の入った瓶は、それぞれが探索者の寿命。中身を瓶の外に出すとその瓶の名前の探索者の寿命が減る。全てなくなったらロスト。中身を出さなければ害はない。

空のハートの瓶を白い人形のもとへ持っていき、手の上に置いてやるとゆっくりと瞼を開く。青い瞳が探索者の姿を捉えると、人形だったものはにこりと笑った。(声を解放していなければ白い人形は話すことは出来ない)

※白い人形は自らの意思で動くことが出来るが、黒い部屋には入る事は出来ない。(正体がバレるため)探索者が頼めば簡単な行動は可能だが、ダイスロールを伴う行動はとれない。

『こころのドア』

ドアを開けるとそこは真っ黒な広い部屋で黒い本棚がずらりと並べられている。本の背表紙は有色で、部屋と見比べると褪せた色合いでもカラフルに感じてしまうだろう。

〇部屋全体に「目星」・・・ここも照明器具がなく白い部屋に比べると薄暗いが、部屋全体が見渡せる程度の明るさはある。部屋は暫く人の出入りがなかったかのように薄く埃を被っており、他の部屋に比べて現実味を感じさせた。
床をよく見ると埃の上に薄らと往復分の足跡のようなものがある。

足跡を追う→部屋の奥の一角で足跡は止まっている。足跡の前の本棚には重圧な本に混じってこの場に似つかわしくない白いノートと赤いノートが1冊ずつ並んでいた。

白いノートを読む→日付はないが、日記のような内容。
「また誰か来た。今度はあの子とあたし、どっちを選ぶんだろう」
「今回はあの子が選ばれた」
「あの子があたしを羨んでる」
「あの子があたしを憎んでる。でもあたしはあの子と離れる事は出来ない」
「あの子とは仲良く出来ないのかな」
筆跡は女性のもので、「あの子」とのことを気に掛ける心情が綴ってあった。ノートを捲っていくと、途中で空白のページが続き、数ページ捲るとまた日記が再開されたが筆跡は乱れていた。
「やられた!これはあの客の仕業?」
「ここは息苦しい。でも出られない」
「あの子が眠ってしまったみたいだ。あの子が来ないとあたしは出られない」
日記はここで終わっている。

赤いノートを読む→筆跡がバラバラのメモのような内容。
「白い子は口も態度も悪い!黒い子はあんなに素直でいい子なのに」
「あいつは白いのについてったけど、俺は黒いのについていく」
「天国か地獄か?」
「一番下の引き出しは開けない方がいいらしい」
「あの黒いの、感じ悪い。白いのについていく」

赤いノートの最後のページが糊で付けられたようにくっついて開くことができない。
DEX×5に成功で破かずにページを開くことができる。
ページを開くとべっとりと赤いインクが塗られており、そのインクでページがくっついてしまっていたのだとわかる。.
ページを開くことに成功したら「アイデア」・・・成功でこのインクはまるで血のようだと感じてしまう。まるで故意に血を塗りつけたような、そう思っていると真っ赤だったインクの色が赤黒く変色した。そう、それこそ乾燥した血液のように。SANチェック1/1d2
最期のページを読む→赤いインクで「白は天国いき、黒は地獄いき」
※「いき」は「行き」ではない。漢字で書くと「白は天国逝き、黒は地獄生き」となり、黒が生存というヒントとなる。

※白のノートで黒の彼女(当時は白)が「やられた!」と書いたところで二人の部屋が入れ替わり、現実へ追い返す役の白は黒へ。あの世へ導く黒は白へ色が変わった。

※足跡を見つけられなければ図書館や目星でノートを探すことが出来るが、かなり時間が掛かる。(経過時間は任意)

※この部屋は「生き地獄」の黒の彼女の部屋。時間を感じさせる為に現実味があるようになっている。
本は読もうとしても殆どが外国語で読めない。何なら魔導書のレプリカでも混ぜて探索者を脅かしてもよい。だが、ここにある本は現実に持ち出すことは出来ない。

『ことばのドア』

この部屋も『いのちのドア』と同じような白い部屋。部屋の中央には引き出しが三つの真っ白なチェストがぽつんと置いてある。

〇チェストに「目星」・・・チェストの上にメモを見つける
メモ→「一番上はあなたの声、真中は彼女の声、一番下はあなたの●●」

チェストの引き出しを開ける
一番上→引き出しの底に「いきたい?それは彼女に伝えて」と書いてある
真中→何も入っていない ※この引き出しを開けると白の人形が話せるようになる
一番下→入っていたのはあなたの「悲鳴」。開けた引き出しの中からムーンビーストが出現する。ムンビの初撃を躱せたか「幸運」。更にSANチェック。部屋を出れば追っては来ない。

白い人形の声が解放されると白い人形は自己紹介を始める。
「声を見つけてくれてありがとう」

白い人形は以下の情報を保持している。
・自分は案内人であること
・苦しいことの無い、優しいところへ連れて行くことが役目であること
・案内人はもう1人いて、そちらが案内する先は地獄だということ

『うんめいのドア』

白い人形はこの部屋には入りたくないと外で待機している。
中に入ると造りは白い人形が居た部屋と全く同じだが、そこは全てが真っ黒で塗り潰されたような空間。その中央にはやはり黒い椅子と、椅子に行儀悪く腰掛けた白い人形と瓜二つの黒い人形がいた。黒い人形は真っ赤な瞳でこちらをギロりと睨みつけた。
「何しに来た、いい年して迷子のグズども。用がないなら出ていけ」
容姿こそ白い人形と同じだが、口調や態度はまるで反対の黒い人形は、出て行けとは言うがその場から動くつもりはないようだ。

※黒い人形に話しかければ口は悪いが知っていることを話してくれるが、問にしか答えない。白い人形について問うと「あたしと真逆の姉妹だ」とだけ言う。

【トゥルーエンド】

黒い人形に「いきたい」と伝えると「本当に?」と返される。それに頷くとゆっくりと視界が黒く染まっていき、遠くで「それじゃあ帰りな、そこがあんたの居場所だ」と囁く声が聞こえて意識が落ちる。目を覚ますとそこは病院で、展覧会を観ている最中に突然倒れたという。生還。

【バッドエンド】

白い人形に「いきたい」と伝えると、白い人形は嬉しそうににっこりとほほ笑んで「それじゃあ、逝きましょうか」と言う。白い人形が手を差し出すと、あなたの腕が意思に反して勝手に動き、人形の手を取る。そしてゆっくりと視界が白く染まっていき、意識が遠のいていく。そこは苦痛も悲哀も何もない、全てから解放された世界。あなたは人生から解放された。ロスト。

【真相エンド】

抵抗する白い人形を黒い人形のいる部屋に連れ込む→白い人形は折れそうなほどに背を丸め、自分の顔を隠すように俯き低い声で呻くと、その真っ白かった姿はみるみる灰色がかり、ついには真っ黒へと変色した。服から伸びた張りのあった美しい手足は水分を失い急速に干からびていき、前に垂れた髪の隙間から覗く顔は双眼が落ち窪み、眼窩の奥は美しかった青い目を失ってただただ黒かった。白い人形が瞬く間に黒くミイラ化していく現象を目にした探索者はSANチェック1/1d6

「これが本来の姿。今までの姿はあたしの真似。さぁ、あたしに居場所を返しなよ」
そう黒い人形が言うと、ミイラとなった人形がしゃがれた悲鳴を上げて襲い掛かってくる。ミイラ化した人形との戦闘。

『ミイラ人形』ステータス
STR 15
CON 12
SIZ 10
INT 13
POW 7
DEX 9
耐久 11
DB +1d4
武器:噛み付き40%、ダメージ1d6+DB

※戦闘に黒い人形は参加しない。ミイラ人形の耐久を0にすれば戦闘終了。

ミイラ人形を倒した→ミイラとなった人形はぼろぼろと僅かな肉や皮を撒き散らしながら甲高い声で嗤い、床へ崩れ落ち、動かなくなった。醜悪な様相のそれを黒い人形が抱き上げると「さよなら、あたしの姉妹」と小さく囁いた。
すると黒い人形の姿が色が抜け落ちたように真っ白なものになり、ミイラになる前の人形とまるで同じ姿になっていた。ただ、その眼差しは鋭く、相変わらず不遜な態度をとる。
「あの子が起きる前に、帰してやるよ」
あなたの視界が暗転する。宙に浮くような感覚の後、意識は静かに落ちていった。
目を覚ますとそこは病院。展覧会を観ている最中に突然倒れたという。その手には小さなメモが握られていた。メモにはどこかで見た字で「おかえり」と書かれていた。生還。

【後日談】

あなたは途中になってしまっていた展覧会を友人と見直しに行くことにした。そこにはあの人形も同じように展示されていたが、瓜二つだったはずの白黒の人形は、白い人形が黒い骸骨を抱きかかえる作品へと変わっていた。作品が入れ替えられたのだろうか、あなたはそう友人に尋ねるが「最初からこういう作品だった」と返され、倒れる前の記憶が曖昧なのかと心配された。あの時確認できなかった作品タイトルのプレートに顔を寄せると、人形の作品タイトルには「生き先」と記されていた。

【人形の正体】

『白い人形(本来は黒)』・・・苦しいこと、嫌なことから解放してあげる、優しいところに連れて行ってあげると囁く天国(あの世)への案内役。部屋へ迷い込んだ人間が自ら「天国に行きたい」と思うように誘導していく。魅惑的な「死」をお客様へお届けするため、より印象のいい白色を持つ彼女の部屋と色を自分の黒と入れ替え、自らが天使であるかのように振る舞っていた。
黒い部屋に入ると白骨化し、本来の姿へと戻る。
客がが「いきたい」と言うと天国へ連れて行かれて現実でも死ぬ。

『黒い人形(本来は白)』・・・自分が案内する先には苦痛が多い、嫌なことばかりだとネガティブな発言が多いが、客が天国逝きにならないように助言もするツンデレ。天国への案内役である「あの子」のことは大切に思ってはいるが、喧嘩()もする。現実へ帰る(生きる)ことへの覚悟を問う。客が「いきたい」と言うと現実へ帰すことができる。

【報酬】

このシナリオを生還した・・・SAN回復1d6
ミイラ人形を倒した・・・SAN回復1d6

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クトゥルフ初心者。シナリオメモ書き程度のクオリティです。 ご利用はご自由にどうぞ。 何かございましたら、ご連絡はこちらまで→Twitter @saki_zaki200572

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