街の雰囲気を楽しみつつの軽めのシティーアドベンチャーです。
魔動死骸区で奈落の魔域が連続発生している原因の調査・解決が目的となります。
このシナリオは、初期作成のPC3~5人用に作成されています。
※魔動死骸区:犯罪と麻薬のはびこる治安の悪い街。ルールブックp382
※奈落の魔域:野外に突然発生するダンジョン。ルールブックp377
PCたちは魔動死骸区ではちょっと荒事になれてる人(≒冒険者)もしくは他の町から届け物を運んできた冒険者。
たまり場にしている酒場もしくは荷物の届け先の酒場で謎の少女(=盗賊ギルドの頭の末娘ミレーネ)からある事件(?)の解決を依頼される。
彼女は「最近街中で頻発するシャロウアビスが、人為的なものではないか」と疑い、その原因を突き止め犯人を捕まえてほしい、という。
実はこのシャロウアビス連続発生は、使用した人間をシャロウアビス発生装置にしてしまう麻薬により引き起こされたものである。
麻薬を売っているのはギルドのメンバーであるヤマネコのリカント、"早業の"リオルだが、実はオーガが彼の心臓を食い入れ替わっている。
シャロウアビス発生地点をめぐり、麻薬のことを聞いて調査し、最終的にオーガの拠点である倉庫を探り当てて突入・討伐すればシナリオはクリアとなる。
街の雰囲気を出すためのものなので、適宜変更してかまわない。
"はきだめの"魔動死骸区(ルールブック1、382ページ)
・治安が悪い
・冒険者ギルドは機能していない。盗賊ギルドがゆるく支配している感じ。
・守りの剣はないです。
・PCたちは少々腕が立ち荒事にも慣れていて、そういった仕事を引き受けたりすることもある。仕事の話が持ち込まれるような知る人ぞ知る酒場があり、PCたちは行きつけにしている。
酒場が行うのは紹介まで、具体的な話は当人同士でやってもらうことになっている。
・酒場のマスターは情報通であり依頼人の裏どりとかも(ある程度以上のものは金は必要だが)やってくれる。
依頼人→紹介料→酒場の主人←情報料←PCたち
←紹介←← →裏どり→
・最近、「街中で奈落の魔域が発生している」と噂になっている。
・酒場でたまってたら少女と男が来て仕事を持ちかける。
[描写]
ここは"はきだめの"魔動死骸区。夢を追って、あるいは何かに追われて逃げ込んだ者の吹き溜まり。
酒場「箒とチリトリ」亭の窓からは、不定期に煙を上げる魔動巨兵の残骸が見える。
店内にはあなたたちと頬に傷のある髭の店主の他は誰もいない。
適当なところでイベント起こすので、適当にしゃべっててください。
(PCたちのおしゃべりタイム、話題がなければNPCで「最近街中で奈落の魔域が発生しているという噂がある」話を振る)
ではそうしていると、店の戸がギィと開き入ってくる人影が2つ。小柄な方と大柄な方、どちらもフードを目深にかぶっている。
小柄な方が店主と話をして、それからあなたたちの方にやってくる。
「ねえ、あなたたち。わたしのために仕事をしてくれる気はある?」
声からすると女、それもかなり若い。少女と言ってもよいかもしれない。
大柄な方は彼女の背後にぴったりとつき、隙を見せない様子だ。
さて、どう反応しますか?
少女(=ミレーネ)はPCたちに依頼の話をする。以下のセリフを使ってもよい。
「マスター。この人たちに何か飲み物を。好きなものを頼んでちょうだい」
「最近、奈落の魔域が街中で発生しているのは知ってる?」
「今週に入ってから3回。それまではこの街中で発生したことなんて一度もなかった……おかしいと思わない?」
「私は何か原因があると思ってる。だからそれを調べてほしいの」
(怪しいとか名乗れと言われたら)
「それもそうね」とフードを外します。
12か3くらいの人間の少女です。
「私はミレーネ。これでいいかしら」
大柄な男が「……お嬢」と咎めますが
ミレーネは「カルロ、礼儀は大事よ。頼みごとをしているのはこちらなんだから」といった感じ。
ここで何か彼女たちについて知っているか判定してみましょう。
[2d+知力B]:目標値11、盗賊ギルドにコネがある人(ありそうだと思ったらつけてよい)は+4
成功した人は「盗賊ギルドの頭にはかわいがっている娘がいて、名前をミレーネという」ことを知っています。
(盗賊ギルドの頭の娘かと聞かれたら)
「もしそうだとしても、ここではただのミレーネよ」にっこり笑って言います。
依頼内容:3回のシャロウアビスの発生原因の解明と、原因の排除
報酬:手付として500G、原因を突き止めたら1500G、解決できたらさらに1500G
(全体に対しての報酬。4人用のため適宜調整してください)
その他:連絡はこの酒場を通して行う。
・シャロウアビス発生地点3つと発生日時
・調査できる場所をいくつか提示しておき、行ってもらう。PCからの提案も積極的に取り入れるとよい。
[以下PL提示用]
こちらから提示するのは以下の通り。提案も歓迎。
・シャロウアビス発生地点1:スラム街の路上・一週間前
・シャロウアビス発生地点2:ボロの集合住宅の街娼の部屋・3日前
・シャロウアビス発生地点3:若者のたまり場になっている廃屋・昨夜
・別の酒場
・盗賊ギルド(聞きたいことを具体的に絞ってから行くことをお勧めします)
・酒場の情報屋に役に立ちそうなことを聞く(相応の銀貨が必要です/調査が面倒な人用)
[ここまで]
・朽葉通り(キーワード:朽葉通り、もしくは治安悪そうなところに行きたいと言ったら)
・朽葉通りの売人(売人の話を聞いたら)
・アジト(アジトの場所を聞き出したら)
キーワード
「左耳が欠けたヤマネコのリカント」
「新種の麻薬」
「朽葉通りの売人」
「人さらい」
情報リスト(GM用)
・発生地点には「麻薬を使っている人」がいた。
・最近新種の麻薬が流行している。
・左耳の欠けたヤマネコのリカントが奈落の魔域発生地点の近くで目撃されている。
・左耳の欠けたヤマネコのリカントは盗賊ギルドのメンバーだったが、2週間ほど前から姿を見せず、上納金も滞納しているためギルドが行方を捜している。
・路地裏に売人がいる。合言葉を言えば売ってくれる。脅せばヤマネコのリカントに命令されていることがわかる。
・薬を買ったやつのあとをつけて居所を調べているグラスランナーの斥候がいる。
・新種の麻薬を使っていた人がさらわれている
・アジトの場所
[描写]
雑多な人間が行きかい、あちこちにぼろをまとった乞食が座り込んでいる。
地面が球形にえぐれている場所があり、おそらく奈落の魔域の跡だろう。
(特にPLから提案がなければそのへんの乞食に話を聞くことになる)
「話が聞きたいって?……そうだねぇ、ちょっと旦那方のご慈悲をいただけるとね、うれしいんだが……」
→銀貨の数枚も握らせてやれば話しだします。
「そこにはドムっていうクズ拾いがいたんだけどね。夜中にあいつの悲鳴で目が覚めてみたらこのざまさ。あれから全然見てねえし、たぶん飲み込まれちまったんだろうな…。最近よくクスリでぼーっとしてたし、逃げられなかったんだろう」
「クスリの出どころ?だいたいそういうのは朽葉通りの裏だね」
「他にクスリをやってるやつに聞けばいい。ここにはそんな奴は山ほどいるが、俺が知ってるんだとあっちの角のあいつに、それから一つ向こうの筋のあいつに……いやしかし、そういえばあいつら最近見ねえな……人さらいにでもさらわれちまったかな?」
・朽葉通り……いわゆる暗黒街の中心。盗賊ギルドの本部もそこにある。
2階建てのアパート、その2階の角部屋がすっぽりと大穴になっている。
隣の部屋の戸を叩くと、いかにも寝起きの不機嫌な女が出てくる。恰好からするに水商売の女のようだ。
「何よ、うるさいわね……」
「あ、あんたたち誰?何?強盗?お、お金なんてないわよ」(武装しているPCたちを見て)
武器とか持ってるのでおびえてるみたいです。
脅しつけるなり、話をするなり、10Gくらい渡すなりすれば話をしてくれます。
「隣の部屋のこと?ああ、ちょうど4日前だっけ、このくらいの時間にめきめき音がしたから出てきてみたら黒い穴になってたの。いつの間にか消えてたけど、まあ誰かが壊したんじゃない?」
「住んでたのはあたしとおんなじで売りやってる子だったわね。顔はわりかしかわいかったわよ。頭の方は麻薬のやりすぎでパーだったけど」
「そういえばあの黒い穴が出る前の日、新しいやつを『お客さんからもらった』とか言ってたわね」
「そのお客?……うーん、どうだったかなぁ……あとちょっとで思い出せそうなんだけどなぁ……(チラッチラッ」
脅すなり、金を握らせるなりご自由にどうぞ。
「ああ、思い出した。ヤマネコのリカントよ。左耳が裂けてた」
彼のことを知っているか[冒険者+知力:目標値15]で振ってもかまいません。盗賊ギルドにコネがある人は+4修正がつきます。
→"早業の"リオル。盗賊ギルドのメンバーで、投げナイフを好んで使う。麻薬を何より嫌っていることで有名。
[描写]
何年も前にあった火事で焼け焦げ崩れ、今にも全壊しそうな廃屋がある。少し離れたところに民家があるが、ここ自体は普段誰も近づかないような場所だ。
そっと廃屋の中を覗き込むと、直径5m程の黒い球体──奈落の魔域──が見える。
酒瓶やタバコの吸い殻に混じって数人分の衣服が脱ぎ散らかされており、ここで何が行われていたのかはまあ、想像できることだろう。
中はリゾート地みたいな感じになっていて、白い建物、大きなプール、広い芝生でBBQ……みたいな感じです。セレブが夏のバカンスに行く別荘をイメージしてください。
白い建物の中に入ると、ソファに座った若い男が半裸の女を2人はべらせています。
男はそこそこ端正な顔立ちですが、表情がクソっぽいためにすべてが台無しになっています。
※男はこの廃屋で麻薬パーティーをしていた若者たちのリーダーであるアラン、女たちはそのパーティーの参加者です。
「なんだよ、お前ら。ん?女を連れてきたのか?ふーん、結構美人じゃん」
「なんだよ、お前ら。男に用はねえから帰りな」
ヘラヘラと笑っています。
ぶん殴る、話をするなど行動を起こしたら、ナメクジのような魔神に変身する。
例)殴った、もしくは殴ろうとした場合
→「ああ?やる気か?……うう…あああああ!」
苦しみうめき声をあげたかと思うと、彼はナメクジのような魔神に変身します。女は「キャー」とか言って逃げる。
[戦闘]
4_デモンスラグ
分類:魔神 知能:動物並み 知覚:五感 反応:敵対的 穢れ:0
言語:なし
生息地:奈落の魔域 知名度/弱点値:12/15 弱点:魔法ダメージ+2
先制値:10 移動速度:5/ー 生命抵抗力:6 (13) 精神抵抗力:5 (12)
体当たり 命中:6(13)打撃点:2d+4 回避:4(11)防護点:2 HP:38 MP:14
特殊能力
☑大暴れ
近接攻撃可能なキャラクターを任意に3体まで選び、それらに体当たりの攻撃を行います。
この能力は連続した手番には使えません。
戦利品
自動:悪魔の血(100G/赤A)
2~10:アビスシャード(200G/ー)
11~:アビスシャード(200G/ー)×1d
解説
奈落の魔域内に現れた"不完全な"魔神です。
その姿は斬り落とされたタコの足のようにも、粘液に包まれたナメクジのようにも見えます。
撃破すると奈落の魔域は崩壊する。
廃屋では毎晩素行の良くない若者たちが集まり騒いでいる。
昨日の夜も彼らの「パーティー」が開かれていたが、突然静かになったかと思うと悲鳴が聞こえ、若者が一人駆け出して行った。
その若者はタリムという名で、中級住宅街に住んでいる。
「酒やドラッグを持ち込んで騒いでる、ろくでもないやつらだよ」
いかにも気の弱そうな少年です。
「ひっ……」
「えっと…昨日の、夜のことですか」
「僕ら、いつもあそこで"パーティー"をしてたんです」
「昨日はアランが…僕らのまとめ役みたいなものかな、新しいタバコを持ってきたっていうので、みんなでそれを吸いました。しばらくそうやって楽しんでたんですけど……突然アランの身体が真っ黒い何かに包まれて、みんなも飲み込まれてしまって…」
「僕は離れてたので飲み込まれなかったんです。それで、何とか逃げ出しました」
「タバコの入手先…?アランは、朽葉通りでもらったと言ってました」
「ぼ、僕は知りません。だって、だってアランが持ってきたんですよ。あんな危ないものだなんて僕は知らなかったんですから」
・新種の麻薬について:盗賊ギルドとは関係ない。強い薬を安く売られると盗賊ギルドとしては困っている。
・ヤマネコのリカント/"早業の"リオルについて:左耳の欠けたヤマネコのリカント、"早業の"リオルは盗賊ギルドのメンバーだったが、2週間ほど前から姿を見せず、上納金も滞納しているためギルドは彼の行方を捜している。
・最近あった変わったことについて(ひとつ100G)
:人さらいが増えている。さらわれているのはスラム街のものが多い。不思議なことに子供はほとんどさらわれていない。
:盗賊ギルドのメンバーが一人、ギルドに報告せずに何か新しい商売を始めたらしい。
:→"早業の"リオル。ヤマネコのリカントで左耳が欠けている。投げナイフと麻薬嫌いで有名。
:新種の麻薬が流行している。朽葉通りの裏路地に売人がいて、とんでもなく安い値段で売られている。広めること自体が目的なのかもしれない。
昼間から飲んだくれている人で繁盛している。
酔っ払いが絡んでくる。以下絡み例。
「おうおう坊や/お嬢ちゃん。ここは子供が来るところじゃあねえぜ。帰ってママのおっぱいでも吸ってたらどうだ?」
「やあ、そこの美人のおねーさん。こっち来て飲んでかないかい?(肩に手をまわそうとする)」
一発かますか酒をおごると情報を話す。
男はヤバイ麻薬が流行っていることを教えてくれる。朽葉通りの売人がとんでもなく安い値段で売っていて、噂によるとかなりキツイ麻薬らしい。
裏路地で木箱のそばにボロに埋もれるようにして人が座り込んでいる。
欲しいというと売ってくれる。お値段は10G。
脅しつけるか100Gほどで買収すれば
・ヤマネコのリカントからこの麻薬を広めるように頼まれた。
・「安い値段でばらまいて広めろ」と言われている。
・連絡や補充に来るのは別の人物だが、それで良ければ会う場所は教えられる。
・麻薬を買った後その場から立ち去るなら[危険感知判定:目標値13]
成功するとグラスランナーの男に後をつけられていることがわかる。
・グラスランナーをとっちめて話を聞くと
「ここで麻薬を買って言ったやつの後をつけて、そいつのねぐらを報告すりゃあ1人当たり200Gくれるって言われたんだ」
頼まれた相手はやはりヤマネコのリカント。グラスランナーは売人とは面識なし。
・連絡に来るのは別の人物だが、それで良ければ会う場所は教えられる。
麻薬を調べるなら、[薬品学判定:目標値10] セージorレンジャー+知力
・多幸感を与え、幻覚を見せる
・魔神の血などが材料に含まれていて、複数回の服用により体が"奈落"との親和性を増していく。
・材料を混ぜるだけではなく、魔法的な効果もかけられている。
・服用を続ければ「魔神に変身する」「奈落の魔域を作る」効果があるかもしれない。
売人やグラスランナーに会いに来る連絡役を殴りつけるなり後をつけるなりすれば、
アジトに行くことができる。
アジトに突っ込んで戦闘
[描写]
倉庫の中はろうそくの頼りない明りで照らされ、木箱やタルが積まれているのがわかる。
タルの中の"何か"が時々動いてタルを揺らしている。
男が数人、麻薬をタバコに巻いたり、小分けにしてヒモでくくったりしており
その様子をヤマネコのリカントが眺めている。
彼らはあなた方に気が付きます。
「お客さんかなぁ?いきなり入ってきて挨拶もなしかい」
「それで?それがあんたらと何の関係があるんだ」
「後悔するなよ」
[戦闘]
戦闘準備:ヤマネコのリカントは筋骨隆々の角の生えた蛮族の姿になります。(レッサーオーガ)
レッサーオーガ1体と匪賊の雑兵×(PC人数-2)
倒した後調べるといろいろ出てくる。
・誰かから指令を受けていた手紙(交易共通語とドレイク語)
→「奈落の魔域発生の実験」を行うために薬の作り方を教える、「アビスへの通路を開く計画がある」ことが読み取れる。
ドレイク語が読めるなら、命令を出していた人物はディアボロカデットのイスデガと書かれている
・麻薬の材料である魔神の血(100G/赤A)とアビスシャード(PC人数)個
ミレーネが犯人を引き取って終了。
「助かったわ。これからも頼りにしてもいいかしら?」と次につなげてもよいだろう。
SW2.0をメインで書いていこうかと。 セッションに使う際の改変・調整は歓迎します。 改変したものの再公開も改変したことを書いていればおっけーです。
https://twitter.com/nananoha778
Comment
コメント失礼します。
ちょうど初期作成かつ魔動死骸区が舞台のシナリオを探していたのでとても助かります……!
こちらのシナリオは改変・調整の可否についての記載がないのですが、そういったことを行っても大丈夫でしょうか?
長い間ここを見ていなかったものでお返事できずすみません。
改変・調整などは自由に行っていただいて結構です。
自分用に書いたものを少し編集しただけなので、補足しないといけない部分も多々あるかと思いますので……。
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