[形式]クローズド
[推奨人数]1~4人
[所要時間]4~10時間
[推奨技能]探索に使える技能全部
《備考》
メタ視点がテーマなので非常に好みの分かれる内容。
メタ内容が好きなPLを選ぶか、少々のネタバレになるが事前にPLに確認を取ることを勧める。
探索者が住む世界(通称「クトゥルフ神話TRPGの世界」)の外側に、探索者に干渉する存在が住んでいる。
ディーラー(=KP)、プレイヤー(=PL)、ライター(=シナリオ製作者)だ。
そして彼らの糸を引いているのが、「神託の巫女」を名乗るイシス(マレウス参照)。
ライターはイシスより、探索者の世界に起きている怪異について啓示(=シナリオフック)を受け、その解決のための道筋を作成する魔術師である。
プレイヤーは、その怪異を解決できる適正(=推奨技能)を持つ配役(=PC)を怪異にぶつける監督の役割を果たす。そして探索者に怪異の解決をさせる。
そうして世界は廻ってきたのだ。
探索者はそういった真実を知らされるため、イシスの居城に召喚される。
どうして探索者は真実を知らされることになるのか?
それは探索者に希望を与えるためなのだ。
どんな陰惨な物語が待っていようとも、ライターとディーラーはたった一つのルールに縛られる。
「シナリオはゲームに供するものである」
「故に、それは挑戦者側に必ず勝てる見込みがあるものでなければならない」
なればどんな絶望の中にも何かの道がある。イシスは探索者にそれを伝えようとしている。
目を覚ますと探索者は薄暗い部屋にいる。
持ち物はない。
見回せば雑然とした物置になっており、使われてない感じがするのにヤケに綺麗だ。
モノ以外には扉が一つだけあった。
いきなり知らない場所に飛ばされてSANチェック(1/1d2)
ここでは1つだけアーティファクトではない持ち物を見つけて持っていける。
武器でも仕事道具でも、操作できるなら戦車でもいい。
探し終わったら扉に入ると廊下に出る。
真っ直ぐ伸びる石造りの冷たい廊下だ。その先には扉が見える。
壁の殴り書きを見つける。先達がいたらしい。
たくさんの怪異に遭ったことがある。
だからこそ彼女の言い分には頷ける部分もあった。
そのひとつが、まるで真実に導くように置かれたメモやデータファイルの数々だ。
人は感情を書き付けると落ち着くもんだからとか思っていたが、本当に物を書く余裕のない場面でのメモは、言われてみたら不思議なものだった。
そこに誰かのお節介が介在したのか。
《目星》に成功すると、小さな走り書きを見つける。
余裕を無くして書けなかったメモは、とある人々がその感情を読み取り代筆することがある。
私たちなら、それができる。
わざわざネットに繋がるデータファイルを選ぶのも、逆に一般人ならたどり着けない場所に紙でメモを残すのも。
全部キミたち、探索する者へのメッセージを残したいからだ。
部屋は広く入り組んで、立体迷路になっている。
真っ直ぐ行った通路の先に次の扉があるが、鍵がかかり開かない。
ここでは迷路のどこかに鍵があり、手持ちの技能で扉を開ける。
◎目星で鍵を探す
◎迷路をナビゲートで歩く
◎登攀や跳躍で迷路の壁を登って鍵を探す
◎鍵開けをする(鍵穴があり鍵開けが有効)
などトンチで攻略すること。
この建物には同じような真っ直ぐで冷たい廊下しかないらしい。
壁の殴り書きを見つける。先達がいたらしい。
どうしてわざわざ代筆なんかして俺たちを導くのかと尋ねたら。
そうしないとゲームは成り立たないんだと彼女は言う。
ゲームという言葉に怪訝な顔をしたら、彼女はこう教えてくれた。
怪異に世界の外側から解決の道筋を引き、俺たちに代理で解決させるのが、彼らの遊びなんだと。
《目星》で見つかる走り書き
思い当たることはないかな?
偶然怪異に遭ったはずのメンバーが、たまたま同じような、都合の良い得意分野を持っていた、という経験に。
それには資格のある君たちが選ばれ、怪異に放り込まれているという理由がある。
数奇な運命でしょ?
でも、争うチャンスすら与えられずに怪異に喰われる有象無象となら、どちらが幸せかな。
真っ直ぐ行った先に扉があるが、鍵がかかっており開かない。
床には大量の紙片が散らばっている。
読むと「フェルマーの最終定理」だとか、「RNA」だとか、難しそうな単語を使った問題が書いてある。
また部屋の真ん中には、穴埋め問題の書いた宝箱がある。
ここでは好きな知識技能を合計PC数回成功させれば、宝箱から鍵を出して先に進める。
(知識技能でクイズを解いて、出た答えを穴埋め問題に入れていくという演出。)
失敗してもペナルティはないが、間違ったワードを書いてしまいビリビリトラップが発動する仕掛けにしてもいいだろう。
同じような廊下が続く。
壁の殴り書きを見つける。先達がいたらしい。
何度も同じ人間と怪異に巻き込まれること。
裏に関係を望む誰かの意思があれば確かに納得だ。
なんて思えば、運命を握る誰かを恨む筋合いはある。そう告げられた。
とはいえ彼らは、恣意はあれど俺たちを守ろうとしてるのは確からしい。
怪異に投げ込んでいながら勝手だよねと、彼女は言う。
俺がどう思うかは、あえて言わないことにしよう。
だが俺たちが彼らをどう思うかくらいは、好きにさせてほしいと思うんだ。
好んで恨まれたいわけじゃないだろう?
《目星》で見つかる走り書き
実のところ怪異には世相がある。
昔は謎解き密室が好まれた。
あと、世界をひっくり返しかねない怪異が、何故か二人ぽっちの人間に構い立てたり(ただそこにいただけかもしれないけど)
最近は人に言えない秘密を持ってる人が好まれる。
そんな観客の好みに振り回される世界も人間も、たまったもんじゃないと思うんだけどな。
部屋に入ると、左右にごちゃごちゃと物が積み上がり、狭い部屋だった。
奥に扉が見える。しかしその前を真っ黒な液体が満たしている。
液体は探索者達の来訪に合わせてぐにゅぐにゅと持ち上がり、生きているのだとわかる。
気味悪さにSANチェック(1/1d10)
ここは原ショゴス(データが必要ならマレウス・モンストロルムを参照)をどんな手段でもいいから回避し、奥の部屋に行ければよい。
戦闘技能は三回成功すれば押しのけて通れるし、両脇のゴミ山を使って登攀や跳躍で向こうに渡るのもいい。
失敗したら捕まって1d2ダメージを受ける。
ダメージで死亡・回復できない行動不能が起きた場合は、その探索者だけエンディング2へ。
この先の扉は装飾がされ、前までの扉と異質に思う。
壁の殴り書きを見つける。先達がいたらしい。
どんな人間も神には、いや、神に至らない怪物にすら叶わない。
神だって倒せるという自負なんかとんだ思い違いだ。
しかし倒せなくても、抵抗はできる。生き延びることはできる。
これは思い違いなんかじゃなく、俺たちはそういう星の下に生まれている。
《目星》
怪異を生き延びる可能性を見つけられる資格を私達はプレイヤー(キャラ)と呼んでいる。
そしてその資格を与える私達もプレイヤーだ。
君たちだから生き延びられる。どんな絶望の中にも道がある。
…私達は君たちを導くplayerだけど、諦めないでと君たちに祈るprayerかもしれない。
この部屋はがらんとしており奥に扉があるだけだ。
扉の前には神秘的なオーラを湛えた女性が佇んでいる。
「おめでとう探索者よ。君達は真実に辿り着いた」
女性は手を鳴らして探索者を出迎える。
女性との会話。話の流れに合わせて以下の情報を出す。
ほかKPの裁量で質問の回答を補完していい。
▼女性は誰?
イリスというこの世界の神の1人。
▼神である証拠は?
銃で撃ち抜くなり首を絞めるなりすればいい。死なないから。
▼ここは?
イリスの住む領域ということになっている。
自分が探索者をここに呼んだ。
▼「なっている」?
自分も招ばれた身だから、本当はそうじゃないかもしれない。
ただ存在が馴染むのは確かなので、あながち間違ってないと思う。
▼どうして呼んだ?
伝えたいことがあったから。
▼帰りたいんだけど
自分の背後の扉から帰れる。勝手に帰ってくれていい。
▼話があるだけならわざわざ苦しめる真似しなくてよくない?
この試練もしたい話に関わってくる。
▼壁の落書きを書いたのは誰?
探索者の仲間と、その裏に潜む存在。このあと説明する。
質問タイムはこの後も設けるので、ほどほどのところで話を始める。
▽クトゥルフ神話TRPGの世界
「君達はこの世界のカラクリを知っているかな?」
「この世界には見えない、いや見てはならない怪物や邪神どもに溢れてる」
「そいつらの牙の目の前にいると知らずに人間はのうのう暮らしてるだけなんだよ」
「でも薄氷の上の平和を守っている連中がいてね」
「私達と君達だ」
▽シナリオライター
「私は世界の怪異の種を見通せて、そこに解決者を派遣できる」
「でも私一柱で全部潰しきるには足りないくらいに世界は怪異まみれでね」
「そこで別世界に住む、この世界を俯瞰できる存在に、助力をさせることにした」
「彼らに私が感知した怪異の情報を送り込むと、彼らは自分が思いついたかのように、怪異を潰すための対策を勝手に考えてくれるのさ」
「あちらの世界では、私の予知のことを、シナリオフックといったかな?」
▽プレイヤー
「怪異を潰す道のりができたら、次に怪異と戦える素質のある者をキャスティングし、書かれた筋書きに沿って歩かせる」
「キャスティングと誘導を担当するのは、君たちを見守る別世界の存在だ」
「あちらの世界では、素質のことを推奨技能って言ったかな?」
「そうして怪異の前に、同じような素質を持つ人間を集め、導きながら怪異の解決に当たらせる」
「ほら今回も、自分の得意技を使ってここまでたどり着いたろう?」
「そうやって彼らと私はこの世界を保っているのさ」
「たまに混沌の名を借りては権限を乱用し、人形遊びしてる奴もいるけどね」
「あいつら慈善活動じゃなくて、ゲームのつもりでこのキャスティングをやってるから」
▽探索者
「そうして怪異にあてられて生き延びるために戦うのが君たち探索者」
「探索者になった君たちは、次々やってくる怪異と死ぬまで戦う運命が結ばれる」
「でも、探索者でない人間は怪異に会ったとき、抵抗する余地もなく死ぬ運命だからね」
「そして君たちが立ち向かう怪異には、必ず怪異から生き延びる手段が存在する」
「人間ごときが手の出せない脅威に、こうして立ち向かえるんだ」
「幸運とも言えるだろうね」
▽どうしてこんな話をしたのか
「繰り返すがこれから君たちの人生には色んな怪異が待っている」
「だがこれはゲームだ」
「故に、それは挑戦者側に必ず勝てる見込みがあるものでなければならない」
「だからどんな絶望の中にも勝ち目はある、諦めないで戦ってほしい」
「回りくどい?ストレートに話してわかるわけないでしょこんなの」
ここまで話したらまた質問タイム。
気がすむまで話したらエンディングへ。
▼イリスと俯瞰者は違うのか
別の存在。そもそも住んでいる世界が違う。
▼世界を俯瞰できる存在?
神というには小さく、探索者達と変わらないただの人間。
しかし彼らはこちらの存在を認知し、干渉ができる。
妖精か悪魔みたいなもの。
▼混沌?
邪神のひとり。世界に邪悪と混乱をもたらすメッセンジャー。
▼怪異をなんとかなくせない?
人間の力ではまず無理じゃないだろうか。
▼ではイリスの力では?
それも難しい。数も質も向こうが多すぎる。
▼言ってることが理不尽では?
そもそも怪異が理不尽にやってくるのが悪い。イリスのせいではない。
▼怪異と死ぬまで戦いたくない
観衆の目を離れて余生を過ごし、天寿を全うする探索者もいる。
なので怪異と戦わずに過ごす道も存在するらしい。どうすればいいかまではわからない。
▼結局壁の落書きを書いたのは誰?
きっと探索者たちは知らない人間だし、これから会うこともないので、気にしなくていい。
▼世相って?
怪異の解決の筋道をシナリオというが、シナリオの書き方にはシナリオフックを受け取った人間の好みが出る。
その好みはあちらの世界の世相に左右されやすいのは確か。
《エンディング1》
イリスと話を終えたら、探索者は扉に入って帰ることができる。
扉に入ると、そこには各々の自宅の自室が広がっていた。ほかの探索者はいなくなっている。
目を瞬かせて思い出す。
そういえば寝る時間になったので、ベッド(布団)に潜ろうとしているところだった。
歩いている途中に寝落ちたのかもしれない。窓の外はもう真っ暗になっている。
探索者たちは寝なおそうと、ベッドに入り目を閉じた。
妙な記憶、翳された希望を心に留めるか否かは、自分たち次第だ。
生還報酬
SAN値 +1d6+1
クトゥルフ神話技能 +3
《エンディング2》
(途中で死亡した場合や諦めた場合はここへ。)
真っ暗になった視界がぱっと晴れる。視界に飛び込んだのは白いシーツだった。
探索者はベッドに突っ伏して寝落ちていたらしい。
さっきまで怖い夢を見ていた気がするが、いまいち思い出せない。
外を見れば昼過ぎの曇り空が見えた。寝すぎてしまったかもしれない。
何が起きていたかは、結局謎のままだった。
生還報酬
なし
このシナリオで起きたことをすべて忘れる
《エピローグ》
(※これはPLに直接開示。シナリオ内で描写しても、アフタートーク内でも構わない。)
「ハッピー・パパラルディの世界推論」と書かれたその本に触れて、イリスと呼ばれた神は云う。
「なんてね」
「私が言ったことが真実なら、私が言ったことは虚構になる」
「なぜならここにいるイリスもまた、誰かが呼び出した怪異であり、筋書きの上にいる存在だから」
「これは虚の名、ハッピー・パパラルディの名を借りた世界推論に過ぎない」
「だから信じなくてもいいし、信じてもいい」
「結局、君たちが見たいもの信じたいものが、この混沌の世界の真実になるのだから」
そうして、本が閉じられた。