[形式]クローズド
[推奨人数]1人(タイマン)
[所要時間]2~4時間
[推奨技能]図書館
[ロスト]KPC探索者双方にロスト可能性あり
不幸にも「探し求める者」に見つかりアドゥムブラリの住む次元に送られてしまったKPC。
「こんなことでPCとさよならしたくない」
助けを求める声が流れ星を通じてバーストへと届く。
バーストは使いの猫をPCに遣わして助けに向かわせる。
・黒猫、白猫
探索者と常に行動を共にするのが黒猫。
冒頭にのみ登場するのが白猫。
黒猫は男性とも女性ともつかないトゲの無い滑らかな声を発する。
どちらも、猫を司る旧き神「バースト」の使いの猫。
黄色いキャッツアイはバーストの魔除けの力の篭った石で、アドゥムブラリの精神攻撃に対する「精神分析」の効果を果たす。
・KPC
探索者と仲の良い者を推奨。
エンディング付近まで姿を見せないのでお話シナリオにはならないかもしれない。
・アドゥムブラリ(マレウスP15)
平面世界に生きる神話生物。
影のように平面に住み物理的な干渉は無効化される。
自らの世界に犠牲者の精神を投影するための手下を連れており、KPCは運悪くその手下に捕まってしまった存在。
このままアドゥムブラリに捕まると犠牲者は体液を吸い取られ干からびた遺体となる。
探索者が迷い込むのもアドゥムブラリの住む次元。
真夜中、街が寝静まった頃。
探索者は自宅で眠りについていましたが、窓を叩く音に目を覚まします。
窓を開くと、1匹の黒猫が器用にベランダに登り、窓を叩いていたようです。
何事かと黒猫を見るとその猫は口を開きます。
「起きて、付いてきて、キミの大切な人が危ない」
探索者は猫が人の言葉を発したことに驚きつつ、しかしその猫が言った言葉に妙な信頼性があって、それを信じようとする自分に気づきます。
SANチェック 0/1
探索者は無意識のうちに猫に従い外に出ることになります。
猫は探索者を連れ、探索者の知人であるKPCの家の前へとやってきます。
KPCの部屋の窓が開いており、そこに白猫が鎮座しているのが分かるでしょう。
白猫がやったのかは分かりませんが部屋の窓に縄梯子がかかっています。
黒猫は器用に縄梯子を登り探索者へついてくるよう促すでしょう。
(※KPCの家が高層マンション設定の場合は、素直にエレベーターから部屋にむかってください。)
KPCの家に入ろうとした時、探索者は「KPCの部屋が、いやに暗く中が見えないほどだ」ということに気づきます。
それでも中に入ると、探索者は急に浮遊感を覚えるでしょう。
暗闇を落ちる中、探索者は縋るようなKPCの声を耳にするでしょう。
「----はなれたくない。」
探索者は閉じていた目を開きます。
そこは天井も大地も暗闇のような漆黒に包まれており、ぽっかりと天井に空いた穴に、忘れられたかのようにゆらゆらと縄はしごがぶら下がっています。
周囲にはそれ以外に何もなく、じっと見つめていると黒に飲まれてしまいそう。
探索者はどう見ても他人の部屋の中とは思えない謎の空間に驚くでしょう。
SANチェック 0/1
探索者が周囲を見渡していると、突然探索者の背中に何か硬いものが投げ込まれる感覚を感じます。
地面に落ちたそれを見るならば、丸い石のようなモノだと分かるでしょう。
拾い上げると、それは黄色い石で石の中に三日月型の模様があります。
それはほのかに暖かくぼんやりとした光を放っています。
この石に対して「博物学」「知識-10」が振れます。
成功で、これは「キャッツアイ」という宝石であるとわかります。
貴方が縄はしごを上り次の部屋に入ると、そこは小さな食堂でした。
ふわりと立ち込める香りは、甘く煮込まれたポタージュ。
目を引くのはパリッと香ばしく焼かれたチキンステーキや、ホクホクのじゃがいもで作られたポテトサラダ、透き通った色とりどりのドリンク、机の微かな動きにつるんと揺れる果実たっぷりのババロア。
鮮やかな食卓の向こうには、笑顔のKPCが座っていたのでした。
KPCと会話を交わさせてください。
「久しぶりですね、会えてうれしいです」
「私が危ない?まさかそんなこと、夢でも見たんですか」
「今日は探索者と楽しいひと時が過ごしたくて、料理を用意したんです」
「えへへ……喜んでくれたら私も嬉しいな」
など探索者との再会を喜ぶ内容が良いでしょう。
会話がひと段落したタイミングで次のイベントが発生します。
ポタリと、雫が垂れるような音。
何事かとあたりを見回したとき探索者はその空間が溶けはじめているのに気づきます。
どろどろと、キャンバスから絵の具が溶けていくように空間はとろけて、真っ黒に染まります。
ずるりと黒く細長いものが現れ、KPCの胴体をつかみます。
その細長くどす黒いものにはよく見ると瞳がついており、異様な場所に現れたちぐはぐな瞳は不快感をあおります。
そこにいた誰の意思も汲むことなく、ただ無情にその細長いものは掴んだものをとろけた景色の中へと引きずって姿を消します。
「夢うつつでくるくるおいしそう そろそろいただきますの時間だね。
どうせもうどうでもいいでしょ?二度と会えないあの子なんて。
だから美味しいそのもやもや全部 ちょうだい?ちょうだい?」
やがて、足元もどろりと液体になり、抜けてしまいます。
浮遊感に包まれる中、探索者は現実を改めて突きつけられるでしょう。
あの幸せな空間は、みんなみんな、夢だったのだと。KPCは、ここには居ないのだと。
SANチェック 1/1d4
二階から落下したPCは<跳躍>またはをふります。
失敗すると部屋から落下した際に受け身に失敗し、HPが-1d3されます。
部屋2は崩壊し、消えてしまいますが、会話中に先に部屋を出ていた黒猫が、上の階までの縄梯子をかけてくれています。
縄はしごを上り、三階に向かうことが出来ます。
探索者は縄はしごを上ります。
すると真っ黒な空間をランプがうすく照らしており、最初の部屋よりも明るく感じます。
この部屋の床には本がうず高く積まれており、本の山の向こうには上(四階)に向かう縄はしごが見えます。
「目星」「図書館」が振れます。
失敗した場合は「幸運」で代用しても良いでしょう。
・「図書館」
宝石についての本の中から、以下の記述を見つけます。
猫の目のような模様を持つキャッツアイという宝石は、古代より魔除けが出来るお守りとして利用されてきた。
特に輝きが強いキャッツアイには、人を愛す猫の神様の加護が宿っているのだとか。
・「目星」
手書きのメモ書きが見つかります。
人の住まぬ異次元には平面に住む吸血鬼が蠢いている。
彼らは人を狙い、刺客を通して犠牲者を自分の次元に連れ込む。
犠牲者が吸血鬼に見つかると、奇妙な斑点の浮かんだ干からびた死体にされてしまうが、その前に彼らを覚醒の世界に呼び戻せれば、助かることもある。
探索者は縄はしごを上ります。
するとそこは最初の部屋と同じく、黒く暗い部屋でした。
しかしそこに浮かび上がるように佇んでいたのは、鎖に縛られ、地べたに怯えた表情で座り込んでいたKPCでした。
そして、その部屋には大きな違和感がひとつ、ありました。
それはパッと見た感じ、どろりと淀んだタールだと思われましたが、明らかに探索者達が地球上で知るどの生物とも異なる、恐ろしい見た目をしているでしょう。
……体の一部でこれなら、本体はどれほどおぞましいものだろうか?
想像に恐怖心が掻き立てられ、探索者たちは体の芯が冷えていくような心地がするでしょう。
壁を伝い、這い寄るあれに飲まれれば、間違いなく死が訪れてしまうと直感します。
SANチェック0/1d6
ここでの一時的狂気は、自殺/殺人癖・気絶・フェティッシュなど、行動不能・影に自発的に触れかねないものを除外して選択してください。
しかし貴方は間に合いました。
その黒い生物が辿り着く前に貴方は行動を起こせるでしょう。
・「目星」またはKPCを詳しく調べる宣言
KPCを縛る鎖に丸いくぼみがあり、探索者の持つキャッツアイと大きさや形が近いことが分かります。
・「聞き耳」
じりじり気配が迫り一刻も早く片を付けないと恐ろしいことになるだろうことが分かります。
・どろどろしたタールのような生物に触れる
探索者がその生物に触れたとき、ぞわりとした感覚に襲われます。
それから、急な脱力感。
咄嗟に手を離しますが、探索者は何か体力のようなものを大きくこの生物に奪われたのではないかと気づきます。
STRとCONをそれぞれ-1d3してください。
このダメージはアドゥムブラリの吸血による体液の損失が原因のため、シナリオクリア後、一か月に1ポイントのペースで回復します。
STRが無くなると行動できなくなり、CONが無くなると生命力を失い死亡します。
どちらにせよ、探索者はこの空間に囚われてロストとなります。
・キャッツアイをKPCが捕まった鎖へはめこむ
エンディングへ移行します。
・キャッツアイをタールのような生物に投げる
その生物はキャッツアイから逃げるように身体を動かします。
投げた後のキャッツアイは危険を冒さずに拾いなおすことが出来ます。
行動が無ければ黒猫を使って誘導したり「アイデア」で閃いてもらいましょう。
探索者が鎖にキャッツアイをはめ込むと、鎖はキャッツアイの触れた場所から腐り落ちるようにボロボロと崩れ落ちていきます。
それと同時に探索者の足元も覚束なくなることにすぐ気づくでしょう。
床が、この空間全体が揺れていると感じます。
どこからともなくぴしりぴしりと音が響いています。
この黒の空間自体に、徐々に裂け目が広がっていました。
ぱきり。
やがて貴方達を包む闇が砕け散り、そこにあったのは広大な夜の星。
ベールのように優しく、その星空は貴方達を包み込み、やがて夜空の海に貴方たちは沈んでいき、貴方達はいつの間にか意識を失うでしょう。
意識を手放す直前、探索者は視界の隅に金色の流れ星を見たような気がしました。
気が付くと、探索者はKPCの部屋のベッドの前に立っていました。
KPCはベッドの上でひどく汗をかき、うなされていたようですが、探索者の到着と同時に目を覚まします。
「来てくれたんですね……!」
「突然、見知らぬ男が家にやってきて、私を贄にするなんて言って。そしたら意識が遠くなって、暗い夢に囚われてしまったんです」
「だけど死にたくなかった、貴方に会えなくなるのが嫌だった、だから、流れ星に『助けてください』って願いを込めたんです。空、星がすっごい綺麗で。届く気がしたので」
まだ苦しそうにしてますが、KPCはそう事情を語るでしょう。
KPCは病院へと運ばれることになります。
ですが大ごとにはならず、退院もすぐに果たせるでしょう。
流れ星に乗った願いを受け取った探索者は、あの夜の呪いから、KPCを救うことが出来たのです。
★SAN報酬
生還 1d6