2016年7月末。梅雨も明け、久方ぶりの夏の気配に一喜一憂する時期の京都。ある日、とある女子大生が相談を持ち掛けた。
「私の祖父の、遺言の真意を知りたい」
殺人をしたと言う祖父の遺言と、怪しい宗教団体、更には怯える浮浪者……全ては23年前のとある事件が始まりだったのだ。
長い長い狂気の夏が始まる。
長めのシティ系シナリオです。やる分にはまぁまぁ楽しめるかとは思いますが、キーパーさんの負担がデカいシナリオです。また、処女作故に宜しくどうも。
*Boothにて、この作品を7版リメイクした『心臓と麒麟』を有料頒布中です。
ウェルミスの心臓
うぇるみすのしんぞう
心臓の鼓動は、昔のまま。
本シナリオを一読して頂き、誠に有り難う御座います。このシナリオは京都を中心とはしていますが、現地情報が無くてもカバー出来る内容となっています。また長編で、キーパーにとってもプレイヤーにとっても情報量の多いシナリオとなっている為、初心者向けとは言い難いですと、予め申し上げておきます。
シナリオ末尾には【TOPIX】が御座います。シナリオ本編中では語られないであろう物語のバックボーンを用意しています。
長々と失礼しました、何卒どうも。
1993年4月8日木曜日。東京都吉祥寺本町に住まう『枝咲 恵(えださき めぐみ)』が何者かによって心臓を抉られ殺害され、更には6歳の娘『枝咲 冬香(ふゆか)』が誘拐され行方不明と言う凄惨な事件が起こる。犯人は当時60歳だった塗装技能士『小土井 萩乃丞(こどい はぎのすけ)』と、当時20歳で大学二回生だった『兎塚 栄治(とつか えいじ)』、『霧島 武(きりしま たけし)』の三人である。三人は、カルト団体『深淵』の信者だ。
殺された恵は元々深淵のメンバーであった。だが深淵は表向きの姿であり、一部の信者しか知らない狂気の『妖蛆信仰(ようしょしんこう)』の存在を知ってしまう。妖蛆信仰は蛆虫とニャルラトホテプを信仰する教団であり、それらを知ってしまった恵は恐怖から深淵を脱退したのだ。しかし、当時深淵と妖蛆信仰を束ねていた『紅 美智子(くれない みちこ)』は彼女の脱退した訳を看破していた。
その後恵は『枝咲 次郎』と出会い、彼の住まう東京へ行き、結婚。娘も生まれた。だが紅は、彼女の家を特定して刺客を差し向け、口封じの為に無慈悲にも殺害してしまったのだ。更に娘の冬香を誘拐した理由は、殺人よりもおぞましい。
紅の正体は、江戸時代より冒涜的な精神転移を繰り返し、170年以上も生き長らえて来た悪魔の魔術師『社 ちね』と言う女性だ。社は、戦国末期にキリスト教の裏でひっそりと布教された『妖蛆信仰』を信仰する一族の姫君であり、一族で唯一『禁術』を会得した人物である。紅もとい社はその禁術を使用し、幼い冬香の体を乗っ取ってしまったのだ。冬香誘拐の理由は、自身の体にする事だった。
事件後、夫の次郎は妻を殺害され娘も攫われた上に、警察の取り調べやマスコミの激しい取材から神経衰弱と人間不信に陥り、勤めていた銀行を辞職して奈良県の実家へ戻ってしまった。そして事件は未解決のまま、23年を迎える。
2016年、癌で亡くなる直前だった小土井は、自分の孫娘に事件の懺悔と告白を残す。これが、長い長い狂気の夏の始まりとなるのだ。
2016年7月末。梅雨も明け、久方ぶりの夏の始まりに一喜一憂する頃の京都が本シナリオの舞台である。
また本シナリオは、NPCに対しての印象の良さも結末に関係する。探索者は味方を助け、逆に味方の危険な行動を咎める事もしなければならないだろう。全てを見捨て、自分一人でやると言うのも勿論良いが、そのような探索者に対しての結末は知れた物だろう。無論、そのような事がないようにと祈る。
シナリオのキーパーソンとして、若本天音と言う女性がいる。彼女を守る事も、最良の結末への道だ。
発端として、若本天音の相談から始まる。
『若本 天音』わかもと あまね
京都府左京区の機根大学(架空の大学)の心理学科に通う大学一回生。艶のある黒髪に端整な顔立ちな京女。性格は気弱で、大学も親に決められて入ったように、意思力が弱い。理想を押し付ける両親に対し、愛されていないのではと孤独感を抱いており、無償の愛情をくれる祖父母を非常に慕っている。特にお爺ちゃん子で、亡くなった時は三ヶ月悲しみに暮れていた。同時に、祖父の奇妙な遺言の真意を知りたいとも考えるようになる。
彼女は妖蛆信仰を脱退した小土井に対する報復として、社に『ヴールの印』を付けられている。つまり、彼女は誰よりも社に惹かれやすく、クトゥルフ神話呪文にかかりやすい体質となっている。
キーパーは、彼女を徹底して気弱く演じる事。探索者の決定には賛否問わず、従わせる。だが、何に対しても引っ込み思案にしては探索者の情が現れないので、探索者たちのヒーラーになったり、行き詰まる探索者たちに若本の提案と言う形でヒントを与えたり等、存在意義を与えておこう。
『枝咲 次郎』えださき じろう
頬が痩け、白髪混じりの長髪を後頭部で束ね、覇気のない目が特徴的な廃れた風貌の男。33歳の時に吉祥寺事件で妻を殺され、娘を誘拐されており、犯人への恨みと情けない自分への嫌悪を抱きながら生きて来た。事件後、精神を病んだ彼は社会へ見切りを付け帰郷、実家である奈良県天理市のイチゴ農家を継いだ。現在は両親も亡くなり、人付き合いもせず、趣味もなく、一人ぼっちでイチゴの栽培を続けている。
恵への愛は消えておらず、今でも結婚指輪をはめ、結婚記念日の時に妻から貰った万年筆を愛用しており、再婚もしていない。また誘拐された娘、冬香の生存を信じている。
『河内 航太』かわち こうた
東京都杉並区に住まう、異常犯罪評論家であり、ノンフィクション作家。41歳の時に発生した吉祥寺事件について書籍『悪辣』を出版した。次郎とは親身になって取材をしていたので、非常に信頼されている。その他マスコミへ過剰な取材の自粛を求めたり、彼自身もメディアへの露出を控えたり等、作家としての枠を超えて出来る限り次郎の味方になった。しかしマスコミの報道は止まることを知らず、次郎を犯人扱いする等一線を超えた報道をした他、間に受けた警察からの取り調べが行われてしまい、次郎は東京を去る事となる。彼はそれをずっと悔いている。
現在でも講演会で吉祥寺事件を議題に挙げたり、事件を風化させないようにと精力的に活動していたが、3年前にヘルニアは患ってからは杖無しで歩けない体となってしまう。
『兎塚 栄治』とつか えいじ
何年も洗っていないバリバリに固まった板のような髪と、鼻を突く体臭が不快感を催させる、見るからにホームレスの男。京都各地を転々とし、ボランティアの炊き出しや残飯漁りでその日その日を食い繋いでいる。
正体は23年前の吉祥寺事件の実行犯。親の期待に添えない自分に虚無感を抱いていた心の拠り所として、深淵に心酔していた。神と崇める紅の命令を二つ返事で引き受けて殺人をやってのけたのだが、元々の小心な性格が彼に膨大な罪悪感を与え、狂気の寸前まで陥る。冬香を連れて京都に戻った後は、功績を認められて妖蛆信仰入りを果たしたのだが、そこで紅の正体とおぞましい精神転移儀式を目撃してしまい発狂。狂気の行くままにその場を脱出し、妖蛆信仰の口封じを恐れてホームレスとして、隠れて生きて来た。
23年前は大学生で、大阪府民だった。今でも大阪府では行方不明者のリストに載っており、高齢になる両親と31歳になる妹が彼の帰りを待っている。
『霧島 武』きりしま たけし
恰幅の良い風貌と、口髭が魅力的な紳士風の男。京都ではそれなりに有名な人物で、『霧島貿易』の社長である。銃砲所持許可証を所持しており、オープンシーズンは狩猟に出かけている。慈善団体に多額の寄付をする深淵を賞賛し、自身も入信している。
しかし、その正体は23年前の吉祥寺事件実行犯の一人。それも殺人を率先して行い、罪悪感さえ抱いていないサイコパスだ。事件後に妖蛆信仰入りしてからは、裏切り者や秘密を知った者への報復、拷問、洗脳、深淵信者へのマインドコントロール等ありとあらゆる悪行に手を染めている。社からはどの信者よりも信頼されており、呪文を教わって幾つか使えるようになっている。
兎塚とは同じ大学で、兎塚を深淵に引き入れたのも彼である。元々は加虐思考の自分に思い悩んでいた真面目な学生であったが、深淵に心酔してからは悩まなくなった。その加虐思考こそ、社に求められていたからである。
『社 ちね』やしろ ちね
1863年より冒涜的な精神転移を続け、現在まで生き長らえて来た魔術師。元々は近畿の一帯を治めていた社家の姫君であったが、元々一族で信仰していた妖蛆信仰の中で、不死と他者の美貌への義望から『禁術』に手を染めた。
禁術とは、信仰対象の妖蛆を自身の体内に寄生させ、魂と一体化させると言うおぞましい物だ。体内の蛆虫が自身の魂だと言う特性を利用し、自身から他者へ蛆虫を移す事による精神転移が可能となる。社はこの禁術を使い、20歳以前の若く美しく生娘の体を乗っ取って延命を続けたのだ。また40歳頃から禁術を始めたせいか、40歳以上の人間とは精神転移出来ず、乗っ取った肉体も40歳が限界となった。延命の為には乗っ取った人間の肉体が40歳を迎える前に新たな若い体を用意しなければならない。
今回は23年前に小土井に攫わせた冬香の体を乗っ取っており、魂の消滅した本人に代わって成長している。その体で彼女はニャルラトホテプと遭遇し、妖蛆信仰の最終目標である『宇宙真理(アザトースとの接触)の到達』を執り行うつもりだ。最も、彼女は宇宙真理がアザトースである事は知らないのだが、宇宙真理の到達が人類の幸福だと本気で信じている。
導入に入る前に、探索者の数に応じて上手く二分割して欲しい。導入1を一方に、そして導入2をもう一方に任せるようにする。双方の探索者は知人でも他人でも構わないが、他人としたら上手い合流点を探さねばならないだろう。
先に行われるのは、導入1からだ。
『導入1』
探索者たちは、若本天音に呼ばれ、相談を受ける事になる。こちらの探索者は気弱な彼女が相談出来る程度の親しい間柄の方が、導入も今後の展開も容易に進むだろう。また、友人でなくとも大学教授でも良いだろう。
若本は神妙な面持ちで、話を切り出す。今年3月、大学入学を控えた彼女に悲劇が訪れる。彼女の祖父、小土井萩乃丞が亡くなったのだ。若本は祖父を慕っており、度々お見舞いに行っていた。亡くなる前日、帰り際の彼女に対して彼は呟くように言葉を綴った。
「わしは……83年間生きて来た。だが、わしは必ずや地獄に落ちるだろう。23年前、わしは人を殺した……そして、その人の娘さんを誘拐して……愚かな事をした、その頃のわしはある宗教に縋っていた……」
彼は呆然とする若本に対して、震えた体を自身の腕で抱きながら、もう一言呟いた。
「逃げなくてはならない、天音……お前が、選ばれたのだ」
それが彼の遺言となった。彼女が質問する前に小土井は容態が急変、ナースコールで招集された医師や看護師が駆け付けて面会中断。翌日、帰らぬ人となった。
それから3ヶ月余り悲しみに暮れていたが、小土井の最後の言葉が気掛かりとなる。勿論、彼女は優しい祖父がそんな事する訳がないとは思っているが、「逃げなくてはならない」が心に引っ掛かり、意を決して調査を開始したのだ。
「祖父の言葉の、真意を知りたい」
ここで探索者は色々と質問する筈だが、小土井は近所付き合いは少ないものの優しい人で、殺人なんてする人とは思えないと繰り返し答えておこう。ここで探索者が小土井を殺人者呼ばわりした言動を取るのなら、若本の反感を買うだろう。
事件については、図書館で調べるのなら【図書館】に成功してプレイヤー情報1が手に入る。【コンピューター】で成功し、スマートフォンで調べるのも手だ。また、当時日本を震撼させた事件であった為、35歳(当時12歳)以上の探索者がいる場合は【アイディア】でも手に入る。
プレイヤー情報1『吉祥寺殺人事件と枝咲冬香誘拐事件』
1993年4月8日木曜日、残虐的な事件が起こる。東京都吉祥寺に住む枝咲家にて、夫の留守中に何者かが侵入し、妻の恵さんを殺害したのだ。また娘である冬香ちゃんが行方不明となり、犯人が誘拐したのではと考えられている。有力な目撃情報はなく、指紋といった証拠も見つからず、捜査は難航している状態だ。
目撃情報の中には、人影が複数、枝咲家の前でたむろしていたと言う物もあり、複数犯ではないかと様々な可能性から捜査に当たる。
探索者にはまず、小土井の家を調べさせなければならない。探索者が聞くのなら、「昔は神棚を自室に置いて拝んでいて、私も真似していた。でも小学生五年生の時に取り払って押し入れに押し込んでしまった」事や、「たまに机の前でぼんやりしていた時があって、こっそり近付いて脅かしていた」と言った、小土井に対して気になる行動を若本の思い出話として列挙してやると、探索者の興味を引くだろう。探索者が小土井宅へ行く気になったのなら、翌日向かう事となる。
『導入2』
こちらの探索者は鴨川近辺を歩いている事とする。すると、一人のホームレスらしき人物が話しかけてくる。
「今度こそ終末だぁ!なぁあんたたち、酒はないか?5ヶ月も飲めてねぇんだ、死ぬ前に飲んでおきてぇんだよ!」
探索者はこの男に対し、不快感を抱くだろう。この男は兎塚栄治だが、初対面の彼らに対して「田中たけし」やら「山田太郎」と言った適当な偽名を使う。【心理学】に成功したのなら、偽名である事を看破出来るが、兎塚は頑なに否定する。彼は深淵の報復を何よりも恐れており、正体がバレないよう見窄らしい格好をして偽名を使用しているのだ。
また【目星】に成功すると、彼は腰に警棒をぶら下げている事が分かる。本人曰く警官からパクった物で、護身用にしていると自慢気に語るだろう。
探索者がもしアルコール類を持っているのならそれを渡せばいい。所持品に無い場合は【幸運】を振らせるのも良い。兎塚は大喜びで感謝するだろう。逆に渡さないのなら舌打ちをし、スゴスゴと退散する。持っていないが、探索者が買いに行く、金を恵む素振りを見せたのなら突然しおらしくなり、「いいよいいよ」と断りを入れる。元々は謙虚な性格なので、申し訳なさを感じたのだ。
やる事をやり終えたのなら兎塚はさっさと退散するだろう。ここで彼に恩義を与えておくのなら、後々優位な事が起こる。
小土井の家は伏見稲荷にある。あまり大きいとは言えない家なので、若本は二人だけ連れて行ける旨を説明するだろう。現在この家は小土井の妻で、若本の祖母である梅代(うめよ)が猫と一緒に住んでいる。
梅代から得られる情報は少ないだろう、彼女は深淵の存在を知らないからだ。それでも小土井が「9年前までは定期的に友人と遊びに行っていた」事が知れる。それ以外では神棚の事などがあるが、若本以上の情報は期待出来ないだろう。
あまり小土井の事を根掘り葉掘り聞こう物なら、若本から反感を買ってしまう。逆に小土井への哀悼の意を示すのなら、好感を抱かれる。
小土井の部屋は六畳程の和室。中心に小さな机があり、部屋の隅には本棚がある。神棚が入っていると言う押し入れもある。梅代は「今更部屋一つ使えなくなっても何ともない」と言っており、掃除はするがこの部屋をそのままにしていた。
『机』
机は膝丈までの物であり、畳に座って机の下で足を伸ばすタイプの物。机の傍らには小さな物入れがあり、カッターやボンド等、小さな工具が入っている。
物入れは三つの引き出しがあり、上は工具、真ん中は筆記用具を入れている。しかし一番下だけはハンカチ一枚だけがポツンと入っていた。ハンカチには『September 24』と刺繍されている。【目星】に成功したのなら、そのハンカチは長い間使われていない、絹のハンカチだと気付ける。
また【知識】に成功するか、探索者に中年の人物がいるのなら、そのハンカチは記念日に渡すような質の高い物だと分かる。若本や梅代に聞いても、二人共初めて見たと言うだろう。ハンカチは若本が保管する。
また、『睡蓮の印のバッジ』も見つかる。
『本棚』
本棚と言えども、大体腰までの大きさなので、ロールするまでも無くどんな本があるかは分かる。種類は歴史に関した物が多い。【歴史】に成功したのなら、全部の書物が江戸末期の物であり、大昔ここら一帯を治めていた『社家』の箇所に付箋がされている事が分かる。流し読み程度読むのなら、プレイヤー情報2が手に入る。
プレイヤー情報2『社家年表』
出町柳から祇園にかけての小一帯を治めていた社家は、1483年から続く由緒正しき家系であった。江戸時代後も、紀州徳川家近くを任される程は、江戸幕府にとって信頼されていた大名と言える。
小土井は歴史好きではあるが、神社や城には行かなかったらしい。彼の信仰の中心は、妖蛆信仰ただ一つだったからだ。
また、本を捲るとメモ用紙が一枚ひらりと落ちる。『心臓が全てだ、心臓には壁がない』と書かれた。筆跡は小土井の物らしい。
『押し入れ』
問題の押し入れを開くと、上段には小土井の服などが仕舞われている。下段は物置となっており、奥に神棚が置かれていた。
神棚を取り出す時、【幸運】に成功したのなら一枚のパンフレットが出て来る。拾った探索者は、プレイヤー情報3が手に入る。
プレイヤー情報3『宇宙真理教 深淵』
宇宙は広大、未知なる力に満ちています。それは慈愛であり、幸福であり。我々も膨大な宇宙の力を受け入れ、悩みも苦痛も全て溶け込ませてみては如何でしょうか。
是非、集会にご参加下さい。代表者との対話も可能です。
場所、京都駅前西村ビル一階
深淵については若本も梅代も聞かない。【知識】に成功したのなら、昔から京都で布教活動をする宗教団体だと分かるだろう。気になる所だが、今からでは集会に参加出来ない。
取り出した神棚は神社の拝殿を縮小したような、至って普通の物だ。何か無いかといじっていたり、【目星】で成功したのなら屋根の部分が開くと言う妙な造りである事に気が付ける。中からは手の平サイズの、へその緒を入れておくような古く小さな木箱が発見出来る。中には乾涸びた物が入っていた。【目星】に成功したのならそれは、へその緒にしては小さい事に気が付ける。【生物学】に成功したなら、それは昆虫の幼虫体に似た形だなと見える。そう見えただけなので、正気度のロールはない。
中に入っていたのは、社の分身でもある蛆虫の死体だ。23年前に妖蛆信仰入りした時に親愛と忠誠の証として、彼女から貰い受けた物だったのだ。小土井は信仰を脱した時、信仰する必要が無くなった為、神棚を下ろした。
木箱を見た若本は、異様な好奇で確認しようとする。彼女は社にヴールの印を付けられており、無意識的に社に惹かれる体質となっている。その為、社の分身の蛆虫に死体とは言え、惹かれているのだ。その木箱を持っていたいとも言い出すだろう。
若本の友人や教授等、彼女の性格を知っている探索者は、物に執着しない彼女がここまで興味を示すなんて珍しい、と違和感を抱くだろう。
小土井宅捜索のメンバーとは別の、参加出来なかったメンバーはこちらのイベントが起こる。道を歩いていると、『宇宙真理教深淵』の勧誘員が「悩み事はございませんか?」と言って集会所へ勧誘して来る。探索者は断る事も自由だが、他のメンバーより早く深淵と謁見出来る。
『集会所』
京都駅前の昭和風な四階建ての古いビルが、宇宙真理教深淵の集会所である。一階が集会所で、二階は『霧島貿易京都駅前支部』と言う会社がある。三階と四階は空いている。
集会所は、受付で名前を記入したら中に入る事が出来る。広いホールに、パイプ椅子が三十脚程度置かれており、全て前方の演説台と向かい合わせとなっている。壁にはサイケデリックな絵が飾られ、奥に『対話室』とラベルの貼られた扉がある。社は説法の後、ここで信者や新参者と共に一対一で対話する時間を設けている。現時点で【聞き耳】を使ったのなら、対話室の向こうに誰かいると分かる。神崎が準備しているのだ。
暫く座って待っていれば、信者たちが入り、三十脚の椅子はあっと言う間に埋まる。【目星】で成功したのなら、年齢層は20〜40と、比較的若い年代の人が多いと気付ける。会社や大学の昼休みの合間に来ている程で、人気振りが伺える。信者に話を聞いたり、【聞き耳】に成功したのなら「悪夢が治った」やら「神崎さんは素晴らしい」と言った声が聞ける。
暫くしたら、対話室から代表者が出て来るだろう。
『神崎由花』
宇宙真理教深淵の代表者は神崎由花(かんざき ゆか)と名乗る女性だ。清楚な風で、笑顔が可愛らしいスレンダーの美女。正直このような、宗教団体を率いている姿は似合っていないようにも見える。この神崎由花こそ、枝咲冬香の体を乗っ取った非情の魔術師、社ちねである。6歳の時に乗っ取られ、現在は29歳だが、本人は33歳と水増しして詐称している。
「皆様、本日はお忙しい中お集まり頂き、誠に感謝申し上げます」
神崎はまず、恭しくお辞儀をして丁寧に挨拶をすると、それから説法に入る。
「広大な宇宙に、何があるのかと考えた事はございませんか。宇宙には空気が無く、まさに無と言う言葉が当て嵌まる空間だとは思われますが、それは違います。地球には酸素で満ちているように、宇宙空間には不可視のエネルギーが満ちているのです。我々はその力を吸い込む能力を有していないのです。この力を享受する事こそ、疲弊して行く我々の生命力を高め、毎日の活力へと繋がるのです」
説法はそれから十分続き、「皆様に、宇宙の加護あれ」で締める。信者たちからは拍手が沸き起こり、中には席から立ちながら拍手する者もいる。
探索者の中には集会中にも関わらず、彼女の説法に疑問を提示するものもいるだろう。すると一斉に信者たちからのガヤが上がり、追い出そうと掴み掛かって来る。まるで暴徒のような彼らに探索者は【正気度】0/1d3をしなければならない。
しかし、彼らを制したのは神崎だった。神崎は探索者に「お話、しませんか?」と言ってそのまま対話室に誘い込むだろう。
『対話会』
説法が終了すると早速、神崎との対話会が開始される。普通なら1d6+10分の時間がかかり、四十分以上かかるのなら神崎の事情が入り、対話出来なくなる。だが【幸運】に成功すると新参者である探索者に気が付き、優先してくれる。
この対話会に参加した探索者は、彼女の使う呪文の一つ『悪夢』の毒牙にやられてしまう。悪夢の呪文には相手の名前が必要になるが、それを受付で名前を書かせる事により掌握したのだ。もし探索者が偽名を使ったのなら、社ちねで【心理学】をロールし、成功したら探索者の偽名に気が付き追求出来るようにしよう。失敗した場合は、悪夢の呪文がかけられなくなる。
対話会は、至って普通の世間話。趣味の話に人間関係等、自身が率いる宗教の話にはノータッチだ。【アイディア】に成功したのなら、彼女の話すたわい無い言葉一つ一つに魅力を感じ始め、【正気度】0/1d3をしなければならない。長々と十分程度喋った後、本題を彼女は切り出した。
「宇宙人は信じておられまして? オカルトの話ではないです、科学的な根拠もありますのよ。地球から何光年離れたところ所に、地球と環境が類似した惑星が見つかったではありませんか。地球でこれだけの生命が誕生したのですし、その惑星でも生命が誕生しない訳がないじゃないですか……あぁ、わたくしが言いたいのは宇宙人の有無ではなくて、生命の誕生でして。生命は生まれたからには意味があります……痛みは自分の体を守る為にありますし、汗は体温を下げる為に滲み出て来るように、物事には必ず意味があると思います。人の体の意味は医師が教えて下さりますし、行動原理は心理学者が教えて下さります。でも、生命の意味は誰も知らないのです……その意味を知る存在は、地球にはいないのです。生命の無い世界の存在にしか、分かりはしないのですよ」
この時に【母国語(日本語)】に成功すると、彼女の語り口が何だか、俳句を詠むかのように古風な抑揚を帯びている事に気が付ける。語る内に熱が入り、昔の社が出て来ているのだ。
彼女はそこまで喋ると、腕時計を眺めて「すいません、今日は急用がありますのでお暇させて頂きます」と謝罪し、あの愛らしい笑顔のまま外で待っていた車に乗り込み何処かへ行ってしまう。この時、腕時計について探索者が何か聞いた時だけ、「クォークの腕時計ですわ。古いタイプですけど」と言う。
対話会を受けた探索者は、悪夢にかかってしまっている。
『悪夢』
社が新参者にかける呪いである。悪夢を毎晩のように見せて疲弊させ、深淵に来る事で一旦悪夢を止める。繰り返せば、「ここに来たから悪夢が無くなったんだ」と思い込ませ、深淵にのめり込ませる事が可能となるのだ。
対象の探索者は毎晩悪夢を見て、【正気度】を1d3減らして起き上がる日々が続く。悪夢の内容は覚えていない。
悪夢を止める対策は、深淵に参加するしかない。この状態で参加すれば、参加するごとに社の魔性に当てられ、【正気度】を0/1d4でロールしなければならなくなるが、ロールの成功失敗を問わず、悪夢は三日間だけストップする。
また、他の探索者が【精神分析】をした場合、1d6日かけた懸命な分析の末に悪夢の内容が判明する。その場合、プレイヤー情報4を入手出来る。
プレイヤー情報4『悪夢の内容』
気が付くと、暗い所にいた。地面はゴツゴツとしており、天井から下垂体のように下へ突き出た岩が沢山ある。ここはどうやら、鍾乳洞のようだ。
突然、明かりが灯った。洞窟に立て掛けられた松明に火が点いたのだ。視界がまともになった先で、自分の周りを複数の人間が取り囲んでいた。
服装はバラバラで、スーツ姿の人もいればTシャツ姿の人もいるし、ワンピースの人もいればリクルートスーツ姿の人もいたりと、性別も服装も統一されていない。しかし、頭に被った黒い頭巾だけは、全員統一されていた。皆、頭巾に空けられた穴から燃えるような視線を流し込んでいた。
すると、黒い靄が自分の目の前に姿を現した。靄は不定形ながらも人の姿を無理矢理維持するかのように蠢いていた。靄は一歩一歩自分に近付き、纏わり付いて来たのだ。体の自由が無くなり、視界が再び暗闇の中へ沈んで行く。
最後に見えたのは、貪るような理性なき眼差しだった。
悪夢の内容は、社が行う冒涜的な精神転移の儀式を表現した物だ。彼女は妖蛆信仰の信者と共に秘密の地下洞窟にて儀式を執り行っているのだ。
『二回目以降の深淵』
二回目からは、殆どダイジェストのように集会をして構わない。探索者は悪夢が消えたと言った信者の言葉を思い出し、再び赴く筈だ。また、小土井の家でパンフレットを見つけた探索者も、若本を連れて参加するだろう。
神崎は若本を見つけると、さりげなく注目する。次の体の予定者が向こうからやって来た事に驚きと共に喜びを感じたのだ。【心理学】に成功したのなら、神崎が若本に反応している事に気が付けるものの、彼女から接触はしない。それは、若本に付けたヴールの印がある限り、自分の所へは必ず来ると言う絶対的な自信によるものだ。
先述の通り、若本は神崎もとい社に感化されやすい体質となっている。集会の後、「私、あの人好きかも」と発言したり、対話会に参加しようとしたりするだろう。悪夢の事を警戒している探索者なら止める筈だが、行かせてしまっても彼女に社は手を出さない。
もし探索者が、悪夢の原因がここだと言い張るのであれば「あなたが宇宙のエネルギーを受領しつつあるのです。でも体が慣れていないのです、運動不足の時の筋肉痛のようなもの。ここに通う事で、訓練になります」と押し切られる。
京都の街を散策する時に、下記のイベントを発生させる。タイミングはキーパーの裁量に任せるとする。
また『図書館にて』『木箱の正体』のみは、若本がいなければ発生しないイベントで、『行方不明者』は『兎塚栄治の狂気』の後でなければならない。
『木箱の正体』
若本の持つ木箱の中の乾涸びた物。ふと、木箱が動き出した気がし、若本と探索者が覗き込むと、芋虫のような物が中で蠢いている事に気付く。若本は驚き、木箱を落とすものの、中の物は乾涸びた物だけだった。
探索者はそれを見て驚いたので、【正気度】ロール0/1d3をする。
『兎塚栄治の狂気』
街を散策中、路地裏でチンピラ三人に絡まれている男を発見する。男はホームレス風の人物、兎塚だ。探索者が首を突っ込んだり突っ込まなくても、兎塚は探索者の所まで走って巻き込むだろう。因みにチンピラに絡まれている理由は、ただ肩が当たっただけだ。
チンピラは激昂し、探索者たちに襲い掛かる。兎塚も警棒を握って、探索者に加勢する。
『VS.チンピラ三人』
チンピラを返り討ちにしたのなら、兎塚から強く感謝されるだろう。名乗る名前はやはり偽名だが、兎塚と出会った探索者がいてもいなくても、以前とは違う偽名を使う。兎塚を知る探索者なら「前と名前が違う」と指摘し、問い詰める事も出来る。
【心理学】に成功すると、彼が表情は取り繕っても酷く怯えている事に気が付ける。【信用】か【説得】をするのなら、この怯える男を安心させる事が出来るだろう。最初に会った時に好印象を与えていれば、ロールの必要はない。勿論、やはり本名は言わないのだが、彼らに意味深長な忠告をする。
「深淵には行ったか?行くんじゃねぇぞ……さっきそこで勧誘してんのを見たが……それにビビっていたらさっきのボンクラとぶつかっちまったって訳だ……あの、イカレ集団め!」
探索者が彼と深淵との関係を聞くと、兎塚はいきなり震え出し、独り言のようにぶつぶつ呟き出す。
「あそこは地獄の入口や……入ったもんは、鬼に食われんだ……あぁくそっ! 思い出すな思い出すな!……奴らは近々動き出す……2007年の時は失敗したらしいが、今度こそ……今度こそ……」
ここで【母国語】に成功したのなら、彼の言葉のイントネーションが京都と言うより大阪弁寄りだと言う事に気が付ける。
彼の震えは強くなり、最終的には発狂したかのように「うわぁぁぁ!? 許してくれぇ! こうなるとは思っていなかったんやぁ!!」と叫んで突然逃げ出した。彼はすぐに人混みに紛れて消えてしまうが、【追跡】に成功したのなら逃げる彼を止める事が出来る。しかし止めた探索者の顔を見て、探索者が男性なら「俺は、俺は、ドス黒い罪を降ろしたい……霧島ぁ!」と叫び、探索者が女性なら「あぁ……こんな事なら、君を逃してやれたのに……」と懺悔し、糸が切れたかのように気絶する。彼の悲痛な狂気を目の当たりにした探索者は、【正気度】ロールで0/1d3を減少させる。
その後彼は救急搬送され、近くの病院に入院させられる。彼は吉祥寺事件のトラウマが蘇り、狂気に陥ったのだ。最初に恵と冬香に謝罪し、その後は探索者を霧島武または冬香だと錯覚した。
『霧島武との遭遇』
街を歩いている最中、落し物を探している男に遭遇する。優しそうな紳士で、大事なバッジを落としてしまったと言っている。
キーパーは、探索者がロールを希望するのなら結果に応じて見つけられるようにしても良いが、適切なタイミングで自動的に見つかるようにする事。
バッジは、睡蓮を形取ったデザインで、小土井の家にあった物と同種。弁護士や政治家の人が付ける士業バッジに似た物だ。【知識】か【歴史】に成功したのなら、家紋のようなデザインだと気付けて、士業バッジにこのようなデザインの物はないと分かる。
男は見つけてくれた探索者たちに感謝をし、名前を名乗るだろう。
彼の名前は『霧島武』で、小土井と兎塚に続き、吉祥寺事件実行犯の最後の一人である。罪悪感に苛まれた前者二人とは違い、彼はそのような感情が欠如している。敬愛する社の為なら何だってこなす、冷酷な狂信者だ。
先程のバッジはまさに、妖蛆信仰の信者である証明バッジで、睡蓮は社家の家紋であった。バッジの事を聞いても彼は「ヴィクトリア時代のロンドンは紳士クラブがありましてね、そんな感じの集まりですよ」とはぐらかす。もしも探索者に銃砲所持許可証を持っている者がいるのなら、彼もその許可証を持っていて、オープンシーズンは狩猟をしていると言う事を思い出す。しかし、バッジなんてしないのだが。
霧島は探索者たちに、深淵の事について話し出す。【知識】に成功したのなら、彼は霧島貿易の社長で、京都ではそれなりに有名な人だと気付ける。また、深淵信者を公言している事も分かる。
「深淵には行かれましたかな? あそこは素晴らしい団体です。信者の奉納金の殆どを慈善団体に寄付していますし、ナショナルトラスト運動にも参加しています。震災があれば、被災地にお金を寄付する程、人道的で徳の高い団体です。宗教と言えばきな臭いイメージですが、深淵だけは別格。あれ程社会貢献に秀でた団体はそうそう無いですよ」
彼の言っている事は誇張されていない。探索者が慈善団体に確認してみたのなら、どの団体も口々に深淵を賞賛する。社はお金にはあまり執着しておらず、生活費と運営費さえ手に入れば、奉納金の8割を寄付に回している。こうする事で社会からの目も受容的になり、妖蛆信仰の隠れ蓑を厚く出来るからだ。
霧島は見つけてくれたお礼として、深淵のパンフレット(小土井宅で入手していない場合は、プライヤー情報3を公開する)と綺麗な指輪を渡す。指輪に【博物学】か【知識】で成功するのなら、サファイアの0.3カロットだと分かる。【目星】に成功したなら、指輪の裏側に『1989』と彫られた文字がある事に気が付ける。霧島は「買ったけど、あまり身に付けないから」と言って授与してくれる。
これは、霧島たちが事件を起こした時に恵から盗んだ物だ。霧島が記念として、それぞれに配布したのだ。小土井にはハンカチ、兎塚には腕時計で、自分には指輪。兎塚に関しては脱退の際の発狂時に落とし、神崎が使用している。
そのような証拠品を今探索者に渡すと言う事は、絶対に捕まらないと言う自信があるからだろう。
もし深淵関係者だとしても、小土井や兎塚の事を聞いてしまった場合、彼に動揺と共に強い警戒心を抱かせる事になる。一先ず「知らない人ですね」と言って惚けるが、【心理学】に成功したのなら、彼は敵意を向けている事に気が付ける。
ここで彼に警戒心を持たせたのなら「その人が何ですか?」とさりげなく聞き出そうとする。別れた後は、妖蛆信仰信者を派遣して監視させるような事もするだろう。探索者には良いタイミングで「誰かの視線がずっとする」として【正気度】ロール0/1d4をする事になる。
そうなってしまった時、最終局面で襲撃を予想されており、罠を仕掛けるだろう。
『図書館にて』
若本の提案で図書館に行く事になる。23年前の事件の情報を集めに来たのだ。若本はここで、吉祥寺事件の関連書籍を見つけて探索者たちに見せるだろう。プレイヤー情報5が手に入る。
プレイヤー情報5『悪辣(あくらつ)』
1993年4月、東京都吉祥寺本町の閑静な住宅街で、残酷かつ卑劣な事件が起こった。ここに住まう枝咲恵さんが何者かに殺され、娘の冬香ちゃんが誘拐されたのだ。
時間は23時過ぎ。主人は残業をしており、その日は帰りが遅れていた。帰宅ラッシュもとうに終わり、木曜日と言う事もあって人通りは全くなかった。犯人はその時を見計らい、犯行に及んだ。
犯人はまず、裏口をピッキングで開き、リビングにいた恵さんを殺害する。心臓を抉ると言う常軌を逸した殺害方法だったが、悲鳴は無かったそうだ。そして、寝ていた冬香ちゃんを誘拐し、何処かへ連れ去ったのだ。
この卑劣な犯人は、何を考えていたのか、恵さんの私物を三つだけ持って行った。結婚記念日に夫から貰った二つの贈り物、誕生日プレゼントの腕時計。犯人は枝咲家の平穏と共に、恵さんの命と共に、冬香ちゃんの未来と共に……思い出まで奪ったのだ。冷酷残忍、その犯人は今もこの社会に何食わぬ顔で、溶け込んでいるのだ。
何か情報を掴んでいる方がいらっしゃるのであれば、本の末尾にある私の事務所へご一報を願います。
書籍には家族の写真があるが、夫の顔はプライバシーに配慮してか使用されておらず、恵の顔と冬香の顔の写真が載せられている。しかし、集合写真を拡大したもので解像度が低く、更に白黒の為、見ても神崎に面影があるとは気付けない。
また、探索者自身が【図書館】に成功した時、小土井が調べていた社家に関した書籍が手に入る。プレイヤー6を公開する。
プレイヤー情報6『片宮の社』
社家は戦国時代初期、下剋上によって成り上がった一族である。家紋は浄土の花である睡蓮をあしらっており、仏教を厚く信仰していた。
織田、豊臣、徳川の三英傑にそれぞれ仕え、世渡り上手であると言える。大坂の陣ではそれなりの戦果を挙げており、江戸幕府が開かれた時、紀州徳川家のすぐ側を統治させられた等信用された大名でもあった。主に、祇園から出町柳にかけてを支配し、『片宮藩』と呼ばれていた。
鎖国の頃はキリシタンを疑われたものの、何処よりも熱のある弾圧を行い、疑いを払拭する。だが、大政奉還後は明治政府に反発し、戊辰戦争にて対峙するものの敗れ、社家の歴史は終焉を迎える事となった。
社家の記録は、後々の神崎の正体に関しての伏線である。何かあるな、と思わせ振る程度で良い。
また、探索者がまだ勤勉に図書館を散策するのであれば【幸運】成功で、とある記事が手に入る。これをプレイヤー情報7として公開する。
プレイヤー情報7『不可解な消失』
2007年11月19日、京都府亀岡市に住む『井出 風斗(いで かぜと)』さん食品会社勤務37歳が、奇妙な言葉を残した翌日に行方不明となる事件が発生する。
井出さんは18日、自宅へ取り乱しながら帰宅。妻が事情を聞くも、「耐えられない、殺される」と伝えた。妻は彼を宥めて落ち着かせようとするが、井出さんは怯えて自室に籠もってしまう。そして翌日、部屋から忽然と姿を消してしまった。
京都府警は失踪届けを受理。暴力団と関係があったのではないかとして、捜査している。
この記事にいる井出風斗は、2007年に行われた妖蛆信仰のニャルラトホテプとの接触儀式にて、気分の高揚した社が口から蛆虫を出した。比較的妖蛆信仰入りしたての彼は彼女の真の姿を目にしておらず、怯えて逃げ出してしまった。教団の集会にしか現れないニャルラトホテプは、集会に一人欠けてしまった故に現れなかった。
儀式の失敗に激昂した社は、井出の殺害を指示。霧島と二人ばかりの信者を向かわせ、深夜に侵入。部屋の中で井出を絞殺する。その後、彼の死体を持ち出したのだ。
『行方不明者』
駅前を歩いている時、【幸運】成功で起こる。行方不明者のポスターが偶然、目に止まる。ポスターは大阪市で23年間も行方不明になっている人物だ。年月が今調べている事件の日と近く、気になったのだ。
1993年の4月12日に、突然姿を消した。家族曰く、友達の家に泊まりに行ったものの、そのまま行方不明となったそうだ。兎塚を知っている探索者にその【アイディア】をロールさせて、成功したならそのポスターの写真の人物が、あのホームレスと似ている事に気が付くだろう。
貼られているポスターの人物は、兎塚栄治だった。
『謎の人物』
悪夢を見ている探索者のみに発生するイベント。道を歩いていると、見知らぬ人物(男性か女性かは自由)に呼び止められ、全身をジロジロと見られる。そして去り際に「あなた結構、苦労しているんですね」とだけ言う。
この人物はなんと、『ニャルラトホテプ』の人間体の化身なのだ。探索者が悪夢の呪文にかかっている事に興味を示したのだ。
探索者は言いようも無い不安に駆られ、【正気度】ロール0/1d3をする。
ある程度情報を集めれば、『吉祥寺事件』の存在と小土井、更には深淵の存在とが薄ぼんやりと繋がり出すだろう。
図書館の『悪辣』にあった番号から、著者の事務所へ電話すると、受付が電話に応答する。出版から20年経過しているが、著者の河内はこの受付をずっと残していたのだ。
受付に事件についての事を話すと、この事件に並々ならぬ思いを持っている河内はすぐに食い付くだろう。彼はヘルニアを患ってから外出が減ってしまっているので、家にいる事が多くなっている。
保留中のメロディーが止まった後、電話から尊厳な老人の声が聞こえて来る。彼が、河内航太だ。
河内はまず、事件について知っている事を聞く。探索者が正直に「事件と関係のあると思われる人物が、京都にいる。今は亡くなったが、遺言で吉祥寺事件に関係した事を残している」と言ったのなら、河内から興味を持たれるだろう。探索者があやふやな受け答えをしたなら、【信用】を振らせれば良い。
彼は「電話越しではなんだ、直接会おうではありませんか。お名前をお願いします。待ち合わせ出来ますかな?」と、持ち掛けて来る。探索者が適当な待ち合わせ場所を確保したのなら、河内は翌日にでも新幹線に乗ってやって来るだろう。
『待ち合わせ』
翌日、8月1日。待ち合わせ場所で待っていると、杖を突きながら歩く、髭を生やした好々爺がやって来るだろう。彼は会釈し、探索者の名前を聞く。本人だと確認したのなら早速、近場のカフェか何処かで対話が出来る。
河内は初めに、「知っている事をお聞かせ下さい」と聞く。探索者はこれまでの経緯を話すだろう。すると河内は次に「遺言で残すのなら嘘はない筈です。彼は何かを知っているようですな。所で、彼の家で何か見付けていませんか?」と聞く。
探索者は小土井宅での事を列挙するが、ハンカチの事を話した時に河内は反応する。「もしかして、セプテンバー24と刺繍されていては?」と言うだろう。探索者は正直にそうだと言えば、彼は椅子から転げ落ちないばかりに仰天する。
犯人によって盗まれた物の中にある『結婚記念日の贈り物』の一つとは、そのハンカチだったのだ。若本が同行しているのなら、ハンカチを見せられる。
勘の良い探索者なら、指輪も見せるだろう。すると、それも盗品の一つだとたまげる。河内は探索者たちに協力を仰ぐだろう。
探索者を信用した河内は、この報告を『夫の枝咲次郎』にしたいと言う。彼は今、奈良に住んでいると分かる。
しかしながら枝咲次郎は、過去の出来事で人間嫌いになっているらしく、大勢で行くのは悪いと断る。河内と若本と、もう二人程度の探索者が好ましい。残りのメンバーには、深淵の動向に注意して貰っておこう。
河内はすぐにでも奈良へ急行しようとする。23年間、今日ほどの有力情報は無かったと興奮気味だ。
奈良へは電車か、車なら良いだろう。【運転(車)】のロールに成功したなら、一時間で到着出来る。【ナビゲート】が成功するならもっと早く着く。電車なら二時間程度かかる。
駅は天理駅で降りる。枝咲次郎は奈良県天理市出身で、23年前に仕事を辞めてからは実家のイチゴ農家を継いでいるそうだ。
河内は事件当時より次郎に親身になって協力しており、人を避ける現在の彼も河内だけは恩義を忘れておらず、信頼しているのだ。
『枝咲次郎』
彼は天理市の郊外にある農家で、一人で暮らしている。今はイチゴはオフシーズン中だが、オンシーズンに備えて苗を育てている。
彼の家は一階建ての古い家屋。庭に、イチゴとは別の、個人用に栽培している野菜畑があり、裏手のビニールハウスがイチゴ畑だ。一時間半以上かけて来たのなら、彼は買い出しに出掛けており、不在である。彼は20分後に帰って来る。
それより早く着いたのなら、彼はイチゴ畑でイチゴの世話をしている所と遭遇出来る。まず、痩せぎすのその男は探索者たちを見て鬱陶しげな表情を見せるものの、河内の姿を見ると曲がっていた腰を伸ばした。彼が23年前の吉祥寺事件当事者、枝咲次郎である。
「……河内さん、お久しぶりですね。腰の方は平気ですか?……所でそいつらは何です?」
次郎は23年前の悲劇と、好奇心でしか事件を見てくれない社会に絶望し、信頼する人間以外はぞんざいに扱うだろう。「事件の情報提供者だ。彼女(若本)の祖父が、事件に関与しているかもしれない」と、河内か探索者からの口から説明されたのなら、次郎は激しく反応する。【心理学】に成功したなら、彼は若本に敵意を向けていると分かる。
若本の祖父が、と聞いた彼は彼女に近付き、鬼気迫る表情で詰め寄るだろう。「お前のジジイが、俺の家族を殺したのか!?」と怒り散らし、若本を取り乱させる。
探索者は若本の前へ立ち塞がり、宥めなければならない。【言いくるめ】か【説得】に成功したなら彼を止められるし、【組み付き】で止めるのなら次郎のSTRと探索者のSTRで抵抗ロールをしなければならない。一回止めたのなら、河内が宥めてくれる。短絡的に喧嘩に持ち込んでしまったのなら、次郎は探索者を信用しなくなるだろう。
逆に若本をそのままにしたなら、裏切られたと思われ、彼女を悲しませる事になる。
兎に角、激昂する彼を止めなければならない。
彼を宥めたと言え、落ち着いたとは言えず、怯える若本を睨み付けている。探索者が経緯を話したとしても、「何であっちが後悔してんだよ……こっちは全てを壊されたんだぞ!? 冬香は何処だ、冬香は!」と火に油を注ぐ結果となる。
項垂れる次郎に、河内は若本にハンカチを出すように進める。彼はそのハンカチを見たのなら探索者から引ったくり、その場で泣き崩れる。23年越しに手元に帰って来た彼女の遺品を前に、感極まったのだ。
次郎は「他に無かったのか……サファイアの指輪と、クォークの腕時計……」と呟く。探索者が霧島から貰った指輪を見せて、「霧島から貰った」と言うと、「容疑者は一人じゃないのか?」と話を聞く気になってくれる。
探索者は嘘を言う必要はなく、小土井と深淵の関係を話せば良い。また、霧島と兎塚の事を話せば、次郎は納得してくれる。
「冬香はそこにいるのかもしれない」と、深淵に乗り込む決意を固めるのだ。ここで警察に頼む事も手だが、京都にいる探索者が大変な事になる。
河内たちが奈良に向かった時に、深淵の動向を探る為に残った探索者は張り込みをしているだろう。しかし妖蛆信仰は探索者の気配に気付いており、深淵の特に社に心酔している信者に襲わせるだろう。
見回りをしていた四人の信者が、探索者を発見次第に不意打ちを仕掛ける。探索者が【聞き耳】に成功したのなら、彼らの気配に気付き、不意打ちを避けられる。不意打ちを受けてしまったのなら、1d5のダメージを受けた後に、信者と戦闘になる。
『VS.深淵信者四人』
戦闘は4ターンの後に、全探索者が突如、悲鳴もあげられない程の苦痛に襲われる。探索者は【正気度】ロール1/1d6をする。
何と、霧島が不意打ちを仕掛けたのだ。彼は不意打ちで『破壊』の呪文を使用し、探索者を一時的苦痛に陥れたのだ。霧島はサディスティックな笑みを浮かべ、信者たちに無抵抗な探索者を気絶させる。
探索者たちが目を覚ますと、体を椅子に括り付けられた状態にされていた。彼らは『深淵本部』の二階にある、拷問室にいる。
『霧島の拷問』
探索者を捕まえた霧島は、老若男女関係なく、徹底的に痛めつけて拷問をする。彼らが聞きたい内容は、「我々について嗅ぎ回っているようだが、何故だ? そして何処から聞き出した?」「何を知っている」である。霧島は一方的に【木刀】のロールをして、探索者を一人一人を痛め付ける。もし探索者が今までの経緯を全て喋ってしまったのなら、霧島を極限まで警戒させ、本部周辺に多くの深淵信者たちを見回りさせるだろう。
奈良県に行った事を話したのならルートを特定され、襲撃させるだろう。ただし、話した探索者だけは拷問の手が止められる。
→奈良にいる事を言った場合は。
奈良の探索者たちは次郎を同行させた帰り道で襲撃される。電車なら乗り換えの駅で襲撃し、車なら道路上で襲われる。車での場合は『クトゥルフTRPGルールブックp.328』のカーチェイスルールを適応するのも面白いが、通常は警察に扮して探索者の車を止め、不意打ちすると言ったものだ。
探索者は深淵支部への前哨戦として、『VS.深淵信者四人』を相手にする事となる。
拷問の時間は一時間程度で終わる。
凄惨な拷問に探索者は【正気度】ロール0/1d10をしなければならない。しかし、何も喋らなかった鋼の精神力を持つ探索者だけは、0/1d3減少で十分だ。
それからは時間が一時間かかるにつれ、マジックポイントを1d10減少させる。探索者が奈良への行程を手間取ったり、次郎との齟齬があったのなら時間がかかるだろう。
霧島は、奈良で次郎と話を済ませたタイミングで探索者の電話を使い、彼らに宣戦布告をする。彼らを京都駅前の深淵支部に来させるだろう。また、「警察に連絡してみろ、こいつらを殺すぞ」とも脅す。万が一だが、探索者が何の策も講じずに警察を呼んだのなら、拷問室の哀れな探索者は心臓を刺されて即死する。
『兎塚の決起』
ここまででもし、兎塚からの好感度が高い探索者が拷問室にいる場合は、拷問終了後一時間で彼が窓から侵入し、助けに来てくれる。兎塚は逃走を促すが、探索者が本部に残って探索すると意思を表示したのなら、「木屋町通りに呼んでくれ、そこは深淵の手が無い地域だ。そこで、オレと合流させてここへ案内させる」と一人出て行く。ただし、マジックポイント枯渇で意識不明の者と、耐久力が危うい者は強制的に連れ出される。
残った探索者はそのまま、本部の捜索に入る。
『霧島貿易京都駅前支部』
奈良にいる探索者たちは霧島に呼び出され、深淵京都駅前支部に向かう。『兎塚の決起』が発生している状態なら、このイベントをスキップして『兎塚の告白』に移行出来る。
深淵支部は開いていない。しかし、二階の霧島貿易の扉は誘うように開いている。【聞き耳】か【目星】を成功していないのであれば、探索者は深淵信者たちから不意打ちを食らう。
『VS.深淵信者四人』
信者をやっつけたのなら、信者に問い詰められる。行動理由は「神崎様の為」だが、【心理学】に成功したなら彼らの恐怖を見つけられ、それを追求すると「霧島様が恐ろしい。従わないと、殺される」と泣き縋る。
攫われた探索者たちは何処かと聞くと、「大文字山の山荘である本部」と言う。
また、部屋内を調べたのなら、霧島の『銃特許許可証』が発見出来、保管用の空のバッグも見つかる。霧島は銃を持っている。【知識】に成功したら、それはショットガン用だと分かる。
ある程度話を聞き、見切りを付けたのなら支部の外に出る。『兎塚の決起』を起こしていないのなら、ここで探索者は兎塚との再会となる。
『兎塚の告白』
兎塚は、探索者たちが事件について奔走している事を知り、トラウマの再発で発狂寸前だった。病院に入院中、霧島が見舞いに来たのだ。「俺たちの安心は隠される事で成り立っている。それを暴く不届き者がいる、心当たりは?」と問われたと言う。兎塚は勿論、ないと答えると、霧島はつまらなそうにその場を後にしたと言う。霧島は、兎塚は社会的地位のない狂人だと思っているので、報復はしない。
霧島は社長で、自分は浮浪者。同じ境遇だったのに何でこんな惨めな事をしなくてはならないのかと、この時に気付かされ、罪を認める為に病院を抜け出し、探索者を探していたそうだ。【心理学】で成功したなら、彼の真っ直ぐな意思が感じ取れるだろう。
彼に枝咲次郎を紹介するなら、『枝咲』と言う名字で察してくれるだろう。それでも勇気を出して、事件時の事を話してくれる。
23年前、深淵にハマっていた事から始まり、当時の代表者である紅の命令に、心酔していた自分はそれに従って吉祥寺の事件を小土井と霧島の三人で行った事まで全てだ。
彼の告白を前に、若本は小土井の所業にショックを受け、次郎は激昂して殺しにかからんばかりに兎塚に襲いかかる。
探索者は地面にへたり込んだ若本を慰めなくてはならないし、怒りに燃える次郎を止めなくてはならない。「今は彼の話に耳を貸す時だ」「話してくれた事には意味がある筈だ」と言った要点を伝えて、河内と共に宥める必要がある。
事件の話が済むと、兎塚は深淵の正体、妖蛆信仰を暴露する。枝咲恵は元深淵信者で、妖蛆信仰の存在に勘付いて脱退した為に、報復されたのだと言う。
この妖蛆信仰の「本部の地下では、思い出すも恐ろしい儀式が行われている。超現実的な話だが、奴らは『暗黒のファラオ』を信仰している」と言う。【オカルト】に成功したなら、黒きファラオとは『ニャルラトホテプ』の化身であると分かる。まことしやかにオカルト界隈で囁かれる、都市伝説を思い出したのだ。
最後に兎塚は「今日、最後の儀式が始まる。そうなると、京都は犠牲者で溢れかえる」と戦々恐々として語り終える。だが、社の事や冬香の居場所を聞くと、体が痙攣し、過呼吸を引き起こす。垣間見た狂気の瞬間は、トラウマと言うのも生易しい程の傷を心に付けたのだ。
神崎の姿こそ成長した冬香の姿であり、社が蛆虫で乗っ取った事、ニャルラトホテプを呼んでアザトース接触の呪文を教示して貰う事、これらの事は体が拒絶反応を示すかのように喋れないのだ。【精神分析】に成功したのなら、辛うじて「う、うじ……や、や、やし……」と言うが、絶対に喋れない。
ともあれ、深淵こと妖蛆信仰は何かを始め、京都に対して恐ろしい事をすると分かった。河内は「警察に協力を仰ぐ」として一旦離脱し、探索者たちはとうとうラストステージへ赴く事となる。
深淵本部は上京区大文字山にある、ひと気の少ない山奥の山荘に存在する。時は既に夕刻に入り、人はもう来ないだろう。実はこの場所は代々、社家が世間に隠れて儀式を行っていた秘密の鍾乳洞が存在しており、それは本部の地下にある。
もし『兎塚の決起』で先に探索を始めた探索者がいる場合、一通り調べさせて地下まで行く所まで一気にさせると良い。
尚、拷問時に探索者たちの事を話した場合は、本部周辺に見張りを付けられており、これから来る探索者たちは再び『深淵信者四人』と戦闘しなければならない。
『本棚』
本棚には一貫して『社家』に関係した書籍ばかりが並べられている。本を一冊開いたのなら、文章の所々に墨が塗られ『ここは間違い』と、訂正されているのが見れる。本物を見て来た社家の姫として、訂正箇所を見つけていたのだ。
また、【図書館】か【目星】に成功したら、それらの本の中に旧約聖書が置かれている事に気付ける。旧約聖書には付箋が付けられており、哀歌三章十三節目『彼はその箙(えびら)の矢をわたしの心臓に打ち込まれた。』にアンダーラインが引かれている。
『リビング』
リビングはログハウス風の、丸太造りの部屋。目立つ物は、暖炉とその上の壁に立て掛けられた睡蓮の掛け軸。【歴史】に成功したなら、それは社家の家紋であると分かる。
霧島のバッジを確認した事のある者なら、バッジの模様と同じだと気付ける。
ここで、【幸運】に成功すると、テーブルの裏に何かがある事に気付ける。それは何と、拳銃だ。【知識】か【拳銃】に成功したなら、それは『ノーリンコT-54』で、日本ではまず入手出来ない拳銃だと分かる。銃刀法違反には触法するが、探索者は二人分この拳銃を持てる。バレなきゃ犯罪じゃあねぇんだぜ。
これは、霧島が中国マフィアを通じて手に入れた物で、今回の儀式の際に妖蛆信仰信者のみに護身用として持たせている。
最後に【目星】成功か、暖炉を調べた時か、兎塚が同行している時に暖炉の底が開くようになっている事に気が付き、地下鍾乳洞へ行ける。ただし兎塚は入口を前に恐怖から気絶してしまい、一時離脱する。
『神崎の部屋』
神崎の部屋は鍵がかかっている。【鍵開け】で開けるか、扉のSTR8に対して探索者のSTRで抵抗ロールに成功してこじ開けるかが可能。
中は執務室な感じのする配置。業務机と椅子が置かれ、本棚が並んでいる(『本棚』の項目を参照)。
業務机の上には、謎の布袋がある。この袋は社が実験的に使用した『グリ=グリに魔力を付与する』で、彼女の魔力が込められた袋である。これを持ったまま念じれば探索者は、1POW・1d4の正気度・3マジックポイントを代償に、全技能に5ポイントのボーナスが付随される。好奇心旺盛な探索者が袋の中を見たのなら、生け贄として入れられた狐の肉塊を見てしまい、【正気度】ロール0/1d2をする。袋の使い方は、持った時に直感として分かる。
また、持っている者は霧島の呪文攻撃を一切食らわない特典も付いている。しかし、オーナーである社の呪文は食らってしまうが。
そして【目星】に成功したら、霧島の報告書が引き出しから発見出来る。そこには、中国マフィアからノーリンコを購入した事が書かれ、信者に持たせたと綴られている。
『拷問室』
『兎塚の決起』が起きていない場合は、ここで捕まった探索者たちを救出出来る。探索者が狂気状態や気絶状態に陥っている場合には、すぐさま介抱してやる必要がある。
探索者たちは、暖炉を経由して地下へと下って行く。確かに中は暗いが、壁に松明を据え付けられているので視界は確保出来る。
ゴツゴツした地面に、垂れ下がった鐘乳石。社の悪夢がかけられている探索者は、この場所に既視感を覚えて衝撃となり、【正気度】ロール0/1d4をする。
鍾乳洞に降り立ち、進んだ所で若本から小さな悲鳴があがる。持っていたあの、乾涸びた物が入った木箱が一人でに彼女の腕を離れたからだ。
探索者が箱を開けると、かなり大きな『蛆虫』が体を激しくくねらせている様子が目に入る。開いた探索者は【正気度】ロール0/1d3をして、箱を手放す。落ちた箱を再度見ても、中身には何も入っていない。
社の一部である妖蛆が、彼女に近付いた為に生命力を取り戻したのだ。
『奇襲か突撃か』
少し進み、【聞き耳】に成功したのなら前方に人の声が聞こえる事に気が付ける。向こうは気付いた様子が無い。聞こえた内容は、「にゃる、しゅたん……にゃる、がしゃんな……」と、延々に囁かれた声だ。これは、ニャルラトホテプの儀式の呪文だ。
探索者はここで、こっそり近付き奇襲をするか、それとも猪突猛進に突撃するかの二択を選択出来る。
奇襲の場合、【忍び歩き】に三度成功しなければならない。失敗しても【幸運】を振って成功したら、事なかれを得る事が出来る。その先にいる黒頭巾で顔を隠した『妖蛆信仰信者五人』に奇襲を仕掛けられ、奇襲に参加した探索者の数に応じて、同数の信者を戦闘不能に出来る。
しかし、霧島の警戒心を高めさせてしまっていた場合は、奇襲時にする技能は全て10ポイント減らした数値でロールしなければならないし、突撃すれば信者が伏兵となっており、逆に不意打ちを食らう羽目になる。
『VS.妖蛆信仰信者五人』
妖蛆信仰信者は、霧島より支給されたノーリンコを所持している。儀式を邪魔する者には、彼らは無感情的に引き金が引けるのだ。普通の人間ではなく、暗殺者集団を相手取る心意気で挑まなくてはならない。
『ニャルラトホテプ』
信者を退け、洞窟の奥へ行けば、拓けた所へ到着する。そこには信者と同じ頭巾を被ったショットガンを構えた霧島と跪く神崎……その前には京都の街で悪夢にかかった探索者が出会った、謎の人物が立っている。
その人物こそニャルラトホテプで、探索者たちより一歩早く、神崎に『宇宙真理の召喚(アザトースとの接触)』の呪文を伝授した後だ。人間体であるので正気度の喪失は無い。
ニャルラトホテプは探索者と戦う気はない。人類の狂乱と破滅を楽しみにしながら、鍾乳洞奥にあるもう一つの出口から外へ出て行く。万が一、探索者がニャルラトホテプに挑むものなら襲いかかるだろう。無論、そんな事は無いほうが良いので、若本になって「手を出さない方がいい。何か、危ない」と言って忠告をしておこう。
アザトースの召喚方法を知った社は、早速実践に移る。儀式は野外でなくてはならないので、彼女も出口へと向かおうとするだろう。阻止しようとする探索者を、霧島が立ち塞がり一喝する。
「貴様らは正に、我々の偉大なる行いの邪魔をしている! 人類は幸福となれるのだ! それが何故、分からんのだ!」
霧島は伏せていた残りの妖蛆信仰信者五人を呼び出し、探索者の排除を図る。
この戦闘は、5ラウンドの後に次の展開へ移行する。
『転移の儀式』
霧島たちの猛攻を切り抜け、ランダムに選んだ探索者一人と次郎と若本が、彼女の前に躍り出る。思い通りにならない事態に歯噛みする彼女だが、次郎と若本の存在を見てケタケタと笑い出す。次郎が「娘は何処だ! 知らんなんて言わせんぞ!」と叫ぶと、社は頭巾を外す。
彼女の顔を見て次郎は、怒りの表情から当惑の表情へ変わる。彼には分かるのだ、社の精神体で成長しているとは言え、そこに立っているのは冬香だ。
すると社はその状態で、「ただいま、お父さん」と囁く。次郎は23年振りの再会の感動と困惑に動揺し、行動不能となる。同時に、若本が虚ろな目で社に一歩一歩近付き始めた。『精神的従属』の呪文をかけられたのだ。
社は両手を広げて、新たな体を受け入れようとする。「この体は些か、使い過ぎちゃった。新たな体にしなきゃ、宇宙の真理に辿り着けない」と、若本を呼ぶ。探索者からは、若本の首のうなじにあるヴールの印が目に入る。
「この子、小土井さんのお孫さんでしょ? あの人はお馬鹿な人。たかだか、殺人の罪悪感とお孫さんへの情に揺さぶられて、わたくしから去ろうとしたのですもの。でも彼は大いに役に立ってくれたから、殺さないでいてあげたわ。引き換えに、お孫さんはわたくしが貰うつもりでしたけど? 9年前に印を付けたの、わたくしの呪文が効きやすくなる印を」
探索者は若本を止めようとするだろうが、それを何と次郎が立ち塞がった。「冬香は……冬香は生きていたんだ……は、はは……生きていたんだ!」と、心因反応を起こしている。
再びそこで、他の探索者と霧島らとの戦闘が再開される。こちらは3ラウンドの後、場面転換する。もしその間に倒した場合は、一人の探索者が社に突撃出来る。
『社ちね』
探索者が次郎を振り切るには、彼との戦闘に勝たなくてはならないが、その間に展開は進む。
突然、社が狂笑をあげる。彼女の眼球の隙間や口から、おびただしい数の蛆虫が待ち切れないと言わんばかりに飛び出したのだ。その光景を見た探索者全員は、【正気度】ロール1/1d10をする。
「さぁ! こっちへ! こっちへ来て! わたくしの天音!」と蛆虫が纏わりつく左手を差し出す。しかし、若本との好感度が高い場合に【説得】に成功すると、彼女は社の呪文を押し切り、足を止める。または、兎塚との好感度が高い場合、彼がとうとう勇気を出し、社へタックルをかまして阻止する。
それらがない場合は、探索者が次郎とSTRで抵抗ロールをしなければならないか、提案されれば【幸運】で成功し、霧島たちの猛攻を抜けて突撃する機会を与えても良い。【精神分析】で次郎を説得するのも良い。
全て失敗に終わった時、若本は社に抱かれ、蛆虫を寄生させられ精神転移されるだろう。これを見たなら、【正気度】ロール1d6/1d20をする。
社の精神転移儀式が失敗に終わった時、彼女は怒り、醜い本性を晒し、探索者全員を皆殺しにしようとする。
「なぜ故に妾に楯突くかぁ!? 妾は、妾は『社のちね』! この時を170年余待ち侘びていたと言うのに!! この矮小なる愚者共がぁ!!」
彼女の全身からは、食い破るように無数の蛆虫が這い出てくる。美しかった見た目は面影もなく、肉体部分は蕩けるように爛れて行く。その姿を見たなら、次郎は地面にへたり込み、狂ったように叫ぶ。「殺してくれぇぇぇ!! こいつは、冬香じゃない!!」
探索者は社ちねと、残った妖蛆信仰の者らと最終決戦に持ち込まれる。
『VS.社ちね、妖蛆顕現体』
まず、先の展開で兎塚か誰かが転移儀式を阻止した場合、社はその者の首を絞め、1d6のダメージを与える。これは、他の探索者が阻止しなければ毎ターン行われる。
しかし、彼女を怯ませは出来るが、攻撃によるダメージは呪文によって弱化されている。【目星】に成功すると、蛆虫たちの隙間から彼女の『心臓』が剥き出しになっている事に気が付く。また、本棚で『旧約聖書哀歌三章十三節』を読んだ者は、2ラウンド目で自動的に気が付ける。
探索者は心臓への攻撃をして、見事5以上のダメージを与えられたのなら、彼女を弱体化させられ、装甲を剥がせる。全身へ生命の鼓動を伝える心臓は、非常に大事な存在なのだ。
その時、拳銃などの中・遠距離武器で攻撃する場合のみ、技能ポイントの半分のロールでしなければならない。
『社の野望が成し遂げられる』
社は若本の体を奪って洞窟から出た場合、または探索者を全滅させた場合、アザトースを呼ぶ召喚の儀を完成させてしまう。突如として現れた、空を覆い尽くさんばかりの巨大な不定形な存在。それが出現した瞬間、ビルは崩れ、木々は枯れ、強烈な酸を含む雨が豪雨となって降り出すのだ。
アザトースは、宮殿から強制的に呼ばれた事に腹を立てている。形容も出来ないおぞましい声をあげ、偽足を地面に叩き付け、呪詛をばら撒くのだ。このような結末、社は知らない。これこそが、彼女の追い求めた『宇宙の真理』なのだ。
探索者はアザトースを前に、【正気度】ロール1d10/1d100を行う。例え一旦心が平常を保ったとしても、京都は、日本は、何の生命もいない死の大地となるだろう。日本だけで済んだのは、ニャルラトホテプのお陰だろうか。
【BAD END】
『野望の阻止』
社ちねを倒したのなら、彼女に纏わりつく蛆虫は次々に動きを止める。
「あぁぁ……宇宙の、真理がぁ……妾の、体がぁぁ……」
霧島や信者は彼女を前に、呆然と立っている。社は霧島を見て、「助けて……霧島……」と懇願するが、霧島は発狂、子供のように喚いて洞窟から逃げ出した。信者たちはその場に蹲り、「暗黒のファラオ万歳、ニャルラトホテプ万歳……くとぅるふ・ふたぐん……にゃるらとてっぷ・つがー……しゃめっしゅ…しゃめっしゅ……にゃるらとてっぷ・つがー……くとぅるふ・ふたぐん 」とブツブツ呟き、何もしなくなった。
全員に見放され、絶望の表情となる社。蛆虫は全匹死に絶え、残ったのは極限に痩せ衰えた老婆の死体。これが彼女の本来の姿だろうか。腕からはポロリと、腕時計が転がり落ちる。枝咲恵の盗まれた最後の遺品である、クォーツ腕時計だ。
洞窟の出口から赤い光が差し込む、パトランプだ。何処からともなくサイレンの音が鳴り響いている、河内の呼んだ警察隊も近い。
【HAPPY END】
精神的に乗り越えた探索者は、1d6の正気度を得られる。また、NPCに対して能動的に接していた者にはもう1d6が捧げられる。
この時に、【幸運】に成功か、洞窟から出る者があれば、ニャルラトホテプと対面する。
「我が主は、盲目で白痴。目の前の快楽を楽しむお方。たまには、この国を崩壊させる程度の運動は必要かと思っていたが……やれやれ、つまらないや」
ニャルラトホテプは京都の夜景を眺めている。探索者の存在に気付くと、夜景に照らされながら震える程に魅惑的な笑みを浮かべる。
「何の事やら、と思っているようだね。まぁ、とどのつまりは……宇宙の真理など、人間風情の矮小なる存在が知るべき事では無いって事。あの妖蛆の魔女は興味あったが、結局は人間、最後も人間。まぁ、暇潰しはもうお終いかね」
ニャルラトホテプはそう言うと、一瞬だけ体に靄がかかったかと思いきや、『暗黒のファラオ』の姿になって消えてしまった。
この世界は謎だらけの面がある。だが、時には知ってはならない謎が確かに存在するのだ。宇宙の謎を知ろうとするなど、ちっぽけな人間にとって無謀は事なのだろうか。
【TRUE END】
探索者は、【HAPPY END】時の正気度回復ボーナスに付随し、1d6正気度の回復をしても良い。また、【クトゥルフ神話】技能を1d6得られる。
『NPCのその後』
若本は今回の一件で、祖父への未練を捨て去ったのかもしれない。しかし、彼女の中でも彼は確かに優しい祖父であり、自分を愛してくれたお爺ちゃんと言う事には変わり無い。未来を見据える彼女に、探索者は気の利いた言葉をかけてやろう。
兎塚はその後、警察へ自首をする。23年前の吉祥寺事件の犯人として、罪の精算を行うのだ。
この一件に日本は騒然となる。23年前の未解決事件が、23年間行方不明の男によって全てを語られるのである。彼には重い罰が言い渡されるだろうが、その心はとても清々しいものだろう。
共犯者の霧島は、京都市内にて子供のような喚き方をしている所を保護される。重度の精神退行が確認されたが、翌日に自ら舌を噛み切り、自殺する。
深淵は、社の死亡と兎塚の暴露によって悪評となり、解体される。しかし兎塚は決して、妖蛆信仰の事を話さなかった。
次郎は冬香の結末に、生存を信じていただけにショックを受けていた。暫くは精神的に不安定な時期が続いていたようだが、探索者との好感度が高ければ、探索者の励ましで笑顔が表れるようになる。「弔いはした。過去から、俺は解き放たれたんだ」。立ち直れる日も近いだろう。
『唯一なる9の年』
数秘術の世界では、『9』が非常に特別視される。それは、9こそが最後の数字であり、神秘に近い数字と言う位置付けだからだ。社は『2016年(2+0+1+6=9)』を選んだのは、そう言う理由からだ。
また、日数も『8月1日(8+1=9)』に儀式をしているが、別に1月8日でも2月6日でも良かった。実は8月1日は、社の初めての転移を行った日であり、彼女はここに拘りを見出していたのだ。
また、『2007年』も9の年であるが、勿論儀式を執り行った。しかし、一人の信者が怯え、儀式の最中に逃げ出したばかりに、集会にしか召喚されないニャルラトホテプが来なくなってしまい、失敗している。その人物こそ井出風斗であり、翌日には報復されている。
『吉祥寺事件の現場』
小土井らは裏口から侵入した時、恵と対面していた。彼女は、「深淵の……いえ、妖蛆の人たちね」と三人に聞く。この時彼らは妖蛆信仰の存在を知っておらず、「深淵の者だ。紅様の命により、貴様を殺す」と伝える。
恵はブルブルと震える。三人に怯えているのではない、「あぁ、何て事……あなたたちは踊らされているの……彼女は悪魔よ。お願い、こんな事は止めて。そこの二人は、まだ若いのでしょ?こんな事をしたら、必ず不幸な運命を辿る事になる……死ぬよりも辛い、不幸に」
恵は説得をしていたのだ。彼女の言葉を受け止めたのは、小土井と兎塚。だが、三人の中で一番心酔していた霧島は心臓を一突き、殺害する。
死に間際、彼女は懇願する。「お願い……冬香だけ……は……」
小土井と兎塚は動揺した。霧島は兎塚にナイフを渡ひ、「心臓を取れや」と命令する。心臓を抉ったのは兎塚だ、霧島への恐怖が強かった。
その後三人は冬香を催眠薬を嗅がせて眠らせ、ボストンバックに詰め込み京都へ帰還した。
『妖蛆信仰』
妖蛆信仰は、『妖蛆の秘密』を経典としていた暗黒宗教団だ。初代司祭が妖蛆による精神転移術を完成させ、100年を生きたそうだが、海を渡る時の船が沈没し、死亡。
しかし彼の術と信仰は続き、日本にも到来している。だがこう言う悪魔じみた宗教を忌み嫌う風潮は万国共通であり、国家転覆を狙っていた社のみが継承している。
若本天音(19)、気弱な女子大生
STR.8 CON.13 SIZ.10 INT.15
POW.11 DEX.12 APP.15 EDU.13
正気度:55 耐久力:12
db:+0
技能:応急手当、70 心理学、60 図書館55
忍び歩き、45
枝咲次郎(56)、孤独な傷心者
STR.13 CON.12 SIZ.15 INT.13
POW.10 DEX.13 APP.10 EDU.18
正気度:45 耐久力:14
db:+1d4
武器:こぶし、60・ダメージ1d3+db
キック、40・ダメージ1d6+db
小さい棍棒、55・ダメージ1d6+db
技能:運転(自動車)、60 経理、50
製作(イチゴ)、90
河内航太(64)、真相を追う作家
STR.10 CON.15 SIZ.14 INT.17
POW.13 DEX.5 APP.13 EDU.22
正気度:65 耐久力:15
db:+0
武器:こぶし、50・ダメージ1d3
技能:人類学、80 説得、73 博物学、65
兎塚栄治(43)、怯える逃亡者
STR.13 CON.12 SIZ.15 INT.14
POW.9 DEX.15 APP.9 EDU.19
正気度:45 耐久力:14
db:+1d4
武器:こぶし、50・ダメージ1d3+db
頭突き、60・ダメージ1d4+db
警棒、75・ダメージ1d6+db
技能:鍵開け、75 言いくるめ、60・値切り、40 生物学、50 オカルト、55
霧島武(43)、無慈悲のサイコパス
STR.17 CON.13 SIZ.14 INT.17
POW.13 DEX.10 APP.13 EDU.22
正気度:20 耐久力:14
db:+1d4
武器:こぶし、55 ダメージ・1d3+db
木刀、70 ダメージ・1d8+db
12ゲージショットガン(ポンプ) ダメージ・4d6/2d6/1d6+db
技能:隠す、80 心理学、60 物理学65
オカルト、75 歴史、50
呪文:破壊、悪夢、被害をそらす、ニャルラトホテプとの接触
社ちね、妖蛆の姫君
STR.8 CON.13 SIZ.15 INT.16
POW.14 DEX.10 APP.16 EDU.22
耐久力:14
db:+0
武器:こぶし、50 ダメージ・1d3
技能:目星、70 心理学、90 信用、75
クトゥルフ神話、10 芸術(サイケデリック)、75 説得、55
呪文:破壊、悪夢、被害をそらす、精神転移、グリ=グリに魔力を付与する、精神的従属、ヴールの印、生命の感知、記憶を曇らせる、ニャルラトホテプとの接触
社ちね、妖蛆顕現体
STR.18 CON.22 SIZ.17 INT.16
POW.20 DEX.5 APP.1 EDU.22
耐久力:20
db:+1d6
武器:こぶし、55・ダメージ1d3+db
首絞め、60・ダメージ0+db(組み付き付随)
噛み付き、50・ダメージ2d3+db
装甲:魔壁・耐久度20(心臓を攻撃された場合に排除)
技能:『社ちね、妖蛆の姫君』と同様
呪文:破壊、アザトースの招来、被害をそらす、視界を奪う、萎縮
チンピラ
1 2 3
STR 10 12 14
CON 13 12 13
SIZ 12 14 10
POW 11 14 13
DEX 8 16 10
耐久力: 13 13 12
db: +0 +1d4 +0
武器:こぶし、60・ダメージ1d3+db
キック、60・ダメージ1d6+db
技能:言いくるめ、50 法律、40 聞き耳、60
深淵信者
1 2 3 4
STR 12 13 10 14
CON 10 14 13 11
SIZ 13 13 14 12
POW 14 12 11 11
DEX 9 15 13 10
耐久力: 12 14 14 12
db: +1d4 +1d4 +0 +1d4
武器:こぶし、65・ダメージ1d3+db
キック、50・ダメージ1d6+db
ブラックジャック、55・ダメージ1d8+db
技能:オカルト、40 鍵開け、50 目星、60
妖蛆信仰信者
1 2 3 4 5
STR 15 12 18 13 12
CON 12 16 15 11 13
SIZ 11 13 11 15 14
POW 12 8 10 10 13
DEX 10 13 8 14 16
耐久力: 12 15 13 13 14
db: +1d4 +1d4 +1d4 +1d4 +1d4
武器:こぶし、60・ダメージ1d3+db
キック、50・ダメージ1d6+db
ノーリンコT-54、65・ダメージ1d6+1+db
技能:オカルト、60 心理学、50 目星、65
聞き耳、50
ニャルラトホテプ、這い寄る混沌
STR.12 CON.19 SIZ.11 INT.86
POW.100 DEX.20 APP.18
耐久力:15
ダメージボーナス:+0
武器:こぶし、100・ダメージ1d3
41口径リボルバー、100・ダメージ1d10
呪文:萎縮、アザトースの呪詛、アザトースの招来/退散、狂気の笛、黒い束縛
クトゥルフTRPGが大の好き好きであります、映画みたいなCoCシナリオを書くの好きな人。監督と呼ばれたい。 こちらにあるシナリオは全て、旧CoC6版を遵守しております。7版対応に関しては、このサイトでは視野に入れておりませんので、留意願います。 色々は、URL辿ってTwitterより。
https://twitter.com/ergotBear
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