2018年04月23日更新

超現実的黎明トーキョーバイタルヘイヴン

  • 難易度:★★★★|
  • 人数:4人~6人|
  • プレイ時間:5~6時間(ボイスセッション)

 4月東京、異様に早いインフルエンザの流行により、辿々しい春の訪れとなった。
 2ヶ月前、Vチューバープロダクション社長が、旧友を銀座の真ん中で刺殺する事件を起こした。異様な事件だが、彼はやっていないと繰り返す。
 その違和を疑問に思った異常犯罪評論家である『河内航太』は、事件の真相を共に求めて欲しいと相談に上がった。
「この東京にはまだ、黒の部分が残っている」

 事件を求める毎に起こる、『常川舞』の消失、謎の仮面人物、突然の攻撃。それは1つの黒に収束し、蔓延し、増殖し、現実を超えた仮想に侵食されて行く。

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【はじめに】

 6作目になります。痛いタイトルですが、スリラー系クトゥルフシナリオです(笑)『超次元ゲイム・ネプテゥーヌ』っぽいタイトルにしたかった。
 巷でバーチャルユーチューバーが流行っており、尚且つ私もVチューバー大好きですので、絡ませたようなシナリオを作ろうかと思い立ちました。『にじさんじ』さんやらを巡回する位はえぇ、大好きです(笑)
 Vチューバーなんやら言いますが、『ドクター・フー』の話をモチーフにした内容です。人格も顔形も設定も何もかもがキャラクターに置き換えられるVチューバーをホラーテイストに染めたかった。まぁ、決められたキャラクター設定と中の人の隠しきれない個性とのギャップが良いんですが。

 私事になりまして失礼しましたが(笑)そんなVチューバーをクトゥルフにして、スリラーにまで持ち上げた作品ですと、申し上げておきます。また今回は、私の拙作の1つ『モリアーティ教授の夢』の解決編とも便宜上、させていただきますが、PLがプレイしておらずとも回せるようには作っています。ただKPとしてシナリオを読むにあたっては、このモリアーティ教授の夢を知っている前提で話を進めていますので、重大なネタバレとなる恐れがあります。それだけ、注意事項として述べておきます。
 長々と述べましたが、今作も何卒。

【キーパー向け情報】

 時期は4月半ば。今年はインフルエンザが早々に流行しており、辿々しい春の訪れとなっていた。
 日本のYouTube界隈では、『バーチャルユーチューバー』が流行している。モーションキャプチャーで配信者の動き、表情をデータ化し、予め用意されている3Dモデルに組み込む事で、そのモデルたるアバターが現実世界の配信者と連動し、なりきって動画を配信すると言う、まさに近未来的とも言える最新鋭エンターテイメントだ。
 1つの超新星が黎明となり、それは憧れを作り、その憧れは更なる憧れを生み、既に50、100の有志がVチューバーとして活動している、全国的なネットブームメントになっていた。

 東京都吉祥寺町に住むCGデザイナーの『樽菱 久(たるびし ひさし)』は、Vチューバー志望の人々やプロダクションからの依頼でアバターを作ると言う仕事をこなしていた。ある日、彼の元に『JAMS(ジャムズ)』と名乗る人物から依頼が届き、彼はJAMS宛に可愛いらしい少女型のアバターを作った。アバターを届けたその直後、先方より動画が届き、驚きながらも見た彼は恐るべき光景を目の当たりにしてしまう。何と、作ったばかりのアバターが意思を持ち、人格を持って、樽菱に語りかけるのだ。
「ねぇ、私を連れてって」

 JAMSの正体は、電磁生命体となった神話生物『ハスターリク』だ。そして、顛末を起こしたのが『鹿島 時音(かしま ときね)』と言う電子工学士だ。彼女はハスターリクよる大規模なサイバーテロ並びにバイオテロを計画していた。
 鹿島は『モリアーティ教授の夢』で活動していた爆弾テロ集団メアリの一員であり、機械系統を担当していた技術者だったが、単発的で局限的な爆弾テロでは満足いかず、広範囲的かつ無差別的な細菌生物によるバイオテロを夢想していた。ハンドルネームのJAMSは『James』から来ている。

 彼女は社会に対して狂気的とも言える恨みがあった。彼女には10年前、『愛花(あいか)』と言う名の妹がいたが、愛花の中学校でイジメ自殺が起きた時、首謀者探しの中で何故か友人であった愛花が槍玉に上がり(恐らく、本物の首謀者たちが口裏を合わせたか)、責められた事を苦に自殺した。もっと言えば、事態を早く鎮静化したい学校側と、信じ込み排斥するクラスメイト、更には囃し立てたいメディアに攻撃され、最終的にはネットにも顔写真や本名、住所も盗撮写真も家族写真も晒されたからだ。しかも自殺した瞬間、メディアも学校側も黙り込み、イジメ問題は忘却された。
 以降、鹿島は「愛花は社会に殺された」と考えるようになり、特に彼女を追い詰めた最大の要因であるメディアとネットに対しては復讐心を燃やした。学校や首謀者たち、クラスメイトよりも怒りを抱いた理由は、何も関係がない上に面識も顔も知らない赤の他人たちが、勝手に問題を荒らし回り面白おかしく伝播させた挙句、何事も無いかのようにスパッと忘れた点だろう。また彼女は、首謀者に対しては自ら手を下す気でいるが、女手では物理的な復讐は難しいと考え、決心が付かないまま首謀者らの卒業を迎えさせてしまった。

 事件後、日本の情報社会そのものの破壊を考えるようになり、電子工学の専門家として働く一方、彼女は『010(ゼロワンゼロ)』と言うハッカーとして活動し、企業の機密文書や他人の生活を晒してはばら撒き、撹乱した。しかしそれでも世間を揺るがすにしては大河の一滴にしかならず、大量の人間が悶え苦しみ、後悔し、社会根本までをも破壊するようなやり方を思案するようになる。メアリへは電子工学の技術と社会への怨恨を買われて参入したが、彼はメディアやネット文化に対する復讐が元になっており、爆弾テロなんかはただ、その双方を喜ばす為のエンターテイメントに他ならないと考えていた。

 その最中、彼女のその復讐心を『ゾス=オムモグ』が面白がり、『ハスターリク』の召喚を伝授した。ハスターリクは神話生物でもあり、強力な細菌生物でもある。ハスターリクが蔓延した結果が、中世のペストやインフルエンザの大流行なのだ。現代ならばエボラ熱や癌にも化ける事が可能であり、つまりは『死の感染症を蔓延させる生物』なのだ。
 ハスターリクの存在を認知した鹿島はすぐさまにメアリを脱退し、召喚をしようとしたのだが、ゾス=オムモグは異質な類のハスターリクの召喚を伝授していた。召喚士もろとも無差別に蔓延し、その時代の人間にとって厄介或いは死に至るような病を蔓延させるハスターリクなのだが、この種類は思念強く鹿島に寄生し、彼女の脳に潜んだ。脳に潜んだハスターリクは病原体に化けず、彼女に「我らの身体を作れ。さもなくば貴様の身体を我が身体とする」と命じた。

 鹿島は『バーチャルユーチューバー』に目を付け、擬似的にネットワーク上で身体を形成し、演じる技術からハスターリクを電磁生命体にする方法を考案する。この方法を考えつく要因かつ実用を可能にしたのは、彼女が『モリアーティ教授の夢』の事件後に入手した『人格変換装置』であり、これは生身の人間に作った性格を打ち込み人間そのものを変える「Vチューバーの逆」とも言える代物だった。彼女は早速、行動を起こし、樽菱にアバターを作らせ、更に改造した人格変換装置もとい、『精神置換装置』を使用してハスターリクを電磁生命体としてインターネットに転送し、アバターに入り込ませる事に成功。

 また、ネットワーク上のデータを飛び、その先にいる人間へとパソコンやスマートフォンなどの液晶画面を通過し、ハスターリクの欠片を撒き散らす事も出来た。結果、アバターであるハスターリクを見た樽菱は感染し、インフルエンザとなった。しかもハスターリクは集中的に彼へ感染させ、樽菱は一気に重篤化し死亡した。そのままインフルエンザウィルスと化したハスターリクは樽菱の家から広がり、吉祥寺町に局所的な流行を起こした。樽菱以外の感染者は従来のインフルエンザ症状しか現れなかったが、事態知った鹿島は「これがもし、消えたはずの天然痘だったらどうだったか。日本じゃあり得ないペストやエボラ熱だったらどうだったか。社会は大混乱となる」と考え、サイバーテロとバイオテロを合体させた『生命の避難所(バイタルヘイヴン)計画』を考案する。しかし従順と言う訳ではないハスターリクに保険の為、でデータ化した彼を消去するプログラム『La Peste(ラ・ペステ)』を忍ばせた上で手を組んだ。

 このハスターリクの新たな身体であるアバター『えまーじぇんしー』を使ってネット民を中心に忘れられた感染症のパンデミックを起こし、メアリには成し遂げられなかった日本を震撼させる阿鼻叫喚の惨憺を作り上げようと画策する。

 鹿島は手始めに、妹を死に追いやった当時の中学校の教師陣とクラスメイトなどのメールアドレスを把握している者へえまーじぇんしーを送り付け、インフルエンザに感染させた。ハッカーとして培った技術を使ったのだ。ハスターリクも鹿島のやり方をいたく気に入り、彼女の野望を叶えてやろうと協力する。そもそもウィルス体であるハスターリクは「繁殖し、増殖する」目的が第1であり、利益があった。
 この感染で死に至った者もいるだろうし、或いは難を逃れた者もいるだろう。感染症の種類はハスターリクの意思であり鹿島は口を出せないが、このインフルエンザの感染は宣戦布告だ。彼女は盛り上がりを見せているVチューバー世界に有名プロダクション『VION』の専属チューバーとしてえまーじぇんしーを参入させ、知名度を上げる。その間彼女は『JAMS』として首謀者らに直接手を下しに行く。首謀者の1人、『橘 樹(たちばな いつき)』は彼によって人格変換装置のスペアで人殺しの人格をいれられ、仲間を殺してしまう。今の彼女には殺人に躊躇はなく、冷酷な暗殺者と化したのだ。
 えまーじぇんしーのばら撒いたハスターリクの欠片はすぐに病原体にならず、潜伏可能だ。Vチューバーとして有名になり、多くの人間が生放送の彼女を見れば見るほど感染者が増える。そこで一気に感染症を引き起こし、混乱を巻き起こそうとするのだ。

 現実ではJAMSが首謀者らを追い詰め、ネット上ではえまーじぇんしーが罠を張り巡らせる。2つの狂気が、新宿の新たな闇となるのだ。


『設定につきまして』
 今回は、前年7月に投稿した自作シナリオ『モリアーティ教授の夢』の1年後或いは数年後の話となっております。【はじめに】でも申した通り、プレイしてもしなくても問題は無いようには仕上げていますが、善処願います。
 またNPCの中には、私の過去のシナリオに登場した者が2名登場しますが、導入の過程でPCと知り合い等としていれば問題はありませんし、今作は他者への好感度が展開を左右すると言った要素は考慮しておりません。職業についても「何が良い、何が悪い」は考えておりません、あくまでPC陣の雰囲気に合わせてKPを務めてもらえますと幸いです。

【登場人物】

『鹿島 時音』かしま ときね
 大企業のプログラマー並びにエンジニアだが、社会への怨恨から復讐鬼と化す。昔は『ゼロワンゼロ』と言う名でハッカーをしていたので、その筋の人間からは天才と讃えられている。
 長髪を振り乱し、黒い帽子とスーツ、更にはペストマスクを装着している愉快犯的な不気味で男みたいな風貌をしているが、中身は眠たそうな目が特徴の痩せた女。振り乱していた長髪は帽子のツバに付けられた物で、本当の髪はショートだ。彼はメアリに参入している最中でも、会社に勤続していたのだ。
 現実世界で妹を死に追いやった首謀者らを『JAMS』として追い詰め、傍らでVチューバーえまーじぇんしーを『異邦人P』としてプロデュースしている。ハスターリクによる大量殺戮を実行に移そうとする残虐で非道徳的な性格であるが、常川を死んだ妹と見立てたり、子供はバイオテロの対象外としようとする等、慈愛じみた線引きがある。


『橘 樹』たちばな いつき
 Vチューバー業界に目を向け、企画とプロデュースを行うベンチャー企業『VION(ヴィオン)』の若き社長。有名なVチューバーを多数抱える事務所として名を馳せ、起業家として成功しているかのように見えたが、鹿島によって殺人鬼の人格を一時的に埋め込まれた事により中学同窓会後に殺人を犯し、指名手配されてしまう。彼は自分がやっていないと信じており、助けを求めて縋り付いた金村に売られ、逮捕される。
 10年前、中学生の時に鹿島の妹である愛花をスケープゴートにした張本人だが、性格は優しく熱血漢な好青年。


『金村 焔』かねむら ほむら
 VIONで専務を担当する男。今回の騒動で会社のブランドに傷が付く事を恐れており、多方面への説明と謝罪会見に忙殺されている。大きく信用が落ちた中で、鹿島が(マッチポンプとしてだが)問題を解消してくれた事に多大な恩義を感じている。
 VIONのブランドを引き戻すような新人として、『えまーじぇんしー』を採用してしまう。
 彼も橘と同じ中学校を出ており、橘のスケープゴート計画に乗った首謀者の1人だ。


『河内 航太』かわち こうた
 異常犯罪の専門家として、アドバイスを警察にするほどの著名な学者。悍ましく、残酷な事件に関しては遺族のみならず加害者家族への配慮を多方面に促し、プライバシーを考慮した上で事件を風化させないように関連本を執筆する人格者でもある。ヘルニアを患ってから、杖無しでは歩けない身体になっている。
 橘の事件に関して疑問を抱いており、真相を究明すべく探索者と行動を共にする。『ウェルミスの心臓』の後、人智に及ばない宇宙的な存在を認知しており、あり得ない事象を信じてくれる。


『常川 舞』つねかわ まう
 中学生の少女だが、神憑りなハッキング技術を持っており、ハンドルネーム『dance』として数多の企業の機密文書や監視カメラ映像などを手に入れ、ネット掲示板に流していた伝説のハッカー。仕事で多忙な両親への反抗故の行動だった。
 現在は『モリアーティ教授の夢』での出来事にこりて引退しているが、danceとして暴れ回っていた時に憧れていた天才ハッカー『ゼロワンゼロ』が協力を求めて来た為に葛藤している。
 アニメ、ゲームに関しての知識が一般常識より膨大なオタクであり、最近はVチューバーにお熱。


『えまーじぇんしー』
 群青色のお下げ髪とキャスケット帽に、軍服のようなデザインの衣装、モーションキャプチャー技術が高くコロコロ変わる可愛らしい表情のアバターが定評。また、天然じみたトークが話題となっている、VIONの大型新人であり、人気Vチューバー。『異邦人P』と言う人物が動画を投稿したり、上手く宣伝をしたりしており、彼女の人気に一役買っている。
 正体は鹿島によってネット上で身体を手に入れた神話生物『ハスターリク』であり、Vチューバーえまーじぇんしーとして活動する「彼女」は鹿島が作った人格であり、本当の人格たる「彼」は繁殖と増殖、生物の蹂躙を目的とする冷酷な存在だ。
 ハスターリクは電脳世界内で変異し、画面の向こうにいる人間へ自身の欠片を飛ばし、病気にさせる生物兵器となっていた。早過ぎるインフルエンザの流行は、ハスターリクの仕業だ。彼はファンの人間が増えた段階で生放送を開始し、一気に感染、増殖して様々な感染症へ侵してやろうと画策している。彼がハスターリクとしての人格で語りかける場合、えまーじぇんしーのアバターは真っ黒になり、数多の目が浮き出る。
 欠片を飛ばせるのは、彼が認知する場合のみで、生放送以外の動画には適応されない。故に、生放送の転載動画が嫌い。

【プレイヤー向け情報】

 今回は、4月半ばの東京がメインとなる。今年の4月はインフルエンザが早めの流行を見せており、花粉症と相まってやや辿々しい春の訪れとなってしまっている。
 さて、東京に限らず日本全国でヴァーチャルユーチューバーが賑わいを見せている事はご存知だろうか。モーションキャプチャー等の最新VR技術を使用した、近未来的なエンターテイメントだ。今回はその、Vチューバーに焦点が定められたシナリオであると、示しておく。エンターテイメントの光の裏に潜む巨悪が、東京を恐怖に陥れようとしている。

『モリアーティ教授の夢』をプレイ済みプレイヤー向け
 今回はモリアーティ教授の夢の1年後に当たる。あの恐ろしい事件の残滓が、再び眠らない街で力を貯め続けている。今回は便宜上、モリアーティ教授の夢、解決編とさせていただく。

《導入》

 4月中旬の日曜日が始まりだ。河内と行動を共にするかで、このシナリオの進行は分岐する。
 探索者は全員、今朝のニュースから以下の情報をあらかじめ得ている。


・殺人容疑で行方を追っていた逃走犯の『橘樹(25)』が昨晩、確保された。橘容疑者はVチューバープロダクションである『VION』の代表取締役であったが、事件後に専務の『金村焔(25)』氏に保護を求めたが、その金村氏が警察に通報し、待ち合わせ場所に待機させた所を逮捕された。
 橘容疑者は中学同窓会の後、当時クラスメイトだった『前田理沙(まえだ りさ)』さんを刺殺し、そのまま逃亡した為に行方を追っていた。銀座の歩道上での犯行であり、目撃者は20人に及ぶ。


・東京都内でインフルエンザが流行している。大抵は夏の終わりから秋にかけて流行の兆しが現れるのが一般的だが、今年は花粉症と共に既に都内200人以上の人が感染しており、5校で学級閉鎖が行われている。新学期が始まる時期の学級閉鎖ならびに、新社会人たちの初勤務が慌ただしくなる等、想定外の流行に影響が出始めている。専門家の知見では、今年は暖かくなる時期が遅く空気の乾燥も著しかった事、更には急な気温変化で免疫力が低下していた事が原因ではないかと分析している。


 探索者が橘の起こした事件や、彼について聞くのであれば、以下の情報も開示しても良い。


『橘樹』
 慶應義塾大学を卒業後はIT企業に就職したが、去年に辞職し、ヴァーチャルユーチューバープロダクション『VION』を立ち上げた。元々熱心なネット民だった彼は『キズナアイ』の存在を知り、システムエンジニアだった旧友の金村焔を誘ったのが始まり。精密なキャプチャー技術と、個性豊かなVチューバーを数多く抱え、東京ビックサイトでのファンイベントを行うなど躍進を続け、現在の年収は1500万円に登るほどの成功を収める。
 当初『virtual・on』と言う会社名で進めたが、定款で商号を書く時に長ったらしく面倒と考えて『VION』と縮めた。


『橘樹の事件』
 中学時代の同級生らと銀座で同窓会を開催し、かなり酔った状態だったと言う。トイレを借りに店に入った後、出て来て突然に前田理沙を持っていたナイフで刺殺した。二次会途中の同窓生らや、行き交う通行人などが目撃者として証言している事から、彼の犯行で間違いはない。
 殺害後、呆然とする人々を押し退け、逃走した。


『VION』
 ヴァーチャルユーチューバーをプロデュースする、プロダクション並びにイベント企画会社。アプリの作成、グッズの販売なども自社で行っている。VION発のVチューバーとして「琥珀ネネ」「ランデブーマン」「西園寺コトハ」と言った、平均チャンネル登録者数10万人の有名Vチューバーをプロデュースしている。
 二ヶ月前に社長の橘樹が殺人容疑で指名手配された上に逃走していた為に会社のブランドが一気に下がったと思われたが、その橘樹の確保に一役買った点や、元専務で時期社長の金村が「自社の責任は、自社で償う」と言った発言から信用を取り戻した。


 以上の情報を知った上で、以下の導入に入る。導入は3つだ。


『VIONファン故に』
 探索者はVION所属のVチューバーのファンであり、今回の騒動を気にし、事件後初のファンイベントに参加する。日本の最新が集まる渋谷区の大ホールで行われたイベントでは、グッズの販売会やリアルタイムVRチャット、更にはスクリーン越しの交流会、それ以外では有志のコスプレ会等、ブランド低下を心配された後にしては大盛況であった。
 イベント最中、時期社長の小太りながら清潔感のある男、金村が登場し、「この度は皆様をお騒がせし、誠に申し訳ありませんでした」と改めて謝罪をする。長い話が続いた後、金村は「今回はまた、新たなVチューバーをお披露目いたします」と言い、スクリーンにその新しいVチューバー『えまーじぇんしー』が初登場する。

「エマージェンシー! 初登場です、ご注意ください!」
 この可愛らしく手を振り、挨拶し、会場を沸かせる大型新人えまーじぇんしーこそが、鹿島が作り上げた電脳化ハスターリクだ。関係者には別の人物が他所で操作していると思わせ、実際はネット上のハスターリクが鹿島の作った人格に沿って自分で動いている。探索者は【目星】か【コンピュータ】に成功で、表情や動作と言ったそのあまりに高精度なモーションキャプチャー技術に驚く事だろう。
 ハスターリクであるえまーじぇんしーを生放送で見た場合、その欠片が蔓延してしまう為、探索者や会場にいる者全てがこの瞬間、感染した事になる。【CON×4】に失敗で、翌日インフルエンザを患い、1週間ほどイベントに参加が出来なくなる。

 金村はえまーじぇんしーを前に、「今後とも、VIONは発展を続け、皆様を楽しませる事が償いだと思っております。今日はお集まりいただき、感謝いたします、これからもVIONを何卒、ご愛顧ください」と言って締める。探索者が金村に注目していると、舞台横で有能そうなキャリアウーマン風の中年女性と固い握手を交わしている事に気付ける。【心理学】に成功すると金村が多大な感謝している事に気付けるだろう。その女こそが今シナリオの黒幕たる『鹿島時音』で、金村には『坂見(さかみ)』と名乗っている。

 鹿島は橘に「仲間だ、助けてあげる」と吹聴し、同時に金村に「橘に電話するように言った。警察に言いなさい」と伝達。結果として橘は捕まり、警察に連絡をした金村には責任を果たしたとして会社のブランド低下を抑える効果が付随する。マッチポンプとして動いた鹿島だが、まんまと騙された金村は彼女を信用しきっている訳だ。



『河内航太の事件簿』
 探索者は異常犯罪評論家の『河内航太』と知り合いであり、彼の呼びかけに応じて新宿区四谷のカフェで待ち合わせる。四谷は地価が高く、何処か堅苦しいイメージがあるが、実際はカフェや飲食店が多く学生やサラリーマンの憩いの場所として親しまれている。本日は日曜日の為、やはり学生が多い。
 河内は『ウェルミスの心臓』に登場したNPCであり、その時のPCならば彼と深く交流しているハズなので、知り合った経緯は容易だろう。
 それ以外だとしても、警察や探偵や学者と言った職業の人ならば友人かもしれないし、或いは叔父や遠縁と言った親類としての交流があったのかもしれない。兎に角何かの理由付けで、彼と知り合いである事にして欲しい。

 河内はヘルニアを患っており、杖をついて探索者たちの前に現れる。穏やかな笑みを浮かべ、品のあるスーツを着た老紳士だ。河内は探索者と挨拶をした後に、早速議題に入った。

「2ヶ月前の事件を覚えていますか? 銀座で、橘樹さんが犯した事件ですよ。警察の方が私に意見を求めて来たので当時の状況を把握しているのですが、どうしても腑に落ちない点が3つありまして。

 1つ、何故、突然なのか。当時、橘氏は酔っており、久し振りに旧友たちと出会ったとあって非常に上機嫌であったそうで。なのにトイレから帰った瞬間、路上でいきなり無感情的に殺人を犯したのです。奇妙だと思いませんか?

 2つ、動機は何なのか。被害者の前田氏とはかなり久し振りに会う人で、酒の席では険悪な様子もなかった。それに殺したいほどに憎い相手ならば、何故、皆が集まる同窓会を実行日に選んだのでしょうか。同窓会後でも人通りの少ない場所に2人きりで出会い、周囲の目を除いた上で実行しようと思わないのでしょうか。何故、二次会の行きしな、皆が肩を組んで歩いてる時を狙ったのでしょう。

 3つ、そもそもナイフを何故持っていたのか。当時、橘氏の服装はスーツとコートだったそうですが、刃渡り10センチのナイフを隠し持ち続けるには些か厳しい服装です。コートも上着も、同窓会中は店に預けていたそうですので、隠せません。荷物は財布のみで、持ち運ぶカバンも無し……突然、借りた店のトイレから戻れば手に握っていたのですよ。店からコッソリ持ち出すのも不可能です。

 私は以上の疑問を投げかけましたが、何せ目撃者が20名もいた今事件ですし、ナイフの指紋も一致。証拠十分で橘氏の有罪は確定でした。だが、やはり腑に落ちない! 殺人を犯すにしては状況に齟齬だらけです! それに当の橘氏はずっと無罪を言い続けていました。
 お願いしたいのです、私と共に真相を明かしませんか? どうにもこの事件、裏があるように思えて仕方がないのです」

 探索者がどう調べれば良いかと質問したならば、彼は「橘氏は頻りにこう訴えていました。『変な仮面の人物とトイレで会った瞬間に気を失い、ハッとしたら血だらけのナイフを持って多摩川の河川敷に立っていた』と。トイレを借りた店で、彼は何かを見た事は確かです。そこを調査しましょう」と提案してくれる。
 河内自身の考えを聞くならば、「もし、催眠術のような物で橘氏が操られていたとしたら……いえ、真面目な話ですよ。実際インドネシアでは催眠術をかけて被害者から金品を差し出させて強奪する事件の報告が多々ありますし、先進国でも女性に催眠術をかけて暴行を加えると言った痛ましい事件が起きています。橘氏を催眠術にかけ、ナイフを持たせ、前田氏を殺害しろと命じたのなら……少しオカルトっぽいですか? 催眠術ならば私の疑問を全て解決出来るのですが……」と話してくれる。
 実際、河内の見解は的を得ており、鹿島は人格変換装置で一時的に橘の人格を冷酷な殺人鬼にへと弄ったのだ。


『let's dance time』
 探索者は『常川舞』と知人である。『モリアーティ教授の夢』をプレイしたPCならば知り合った理由は簡単だし、どう言った人間かも知っているハズだ。
 それ以外ならば姪っ子やら友人の子どもとしておこう。彼女の事はハッカーとは知らず、「人間嫌いのコンピュータ中毒者」としか知らない。
 探索者は千代田区にある神田明神(或いは神田神社)にお参りに来ている。神田明神は商売や仕事運、更には勝負運のご利益で有名であり、古来は徳川家康が関ヶ原の戦いの前に必勝祈願として参拝に来た由緒ある神社だ。探索者はここに観光がてらお参りに来たか、最近では『ラブライブ』の聖地としても有名である為、それを目的に来た事でも良い。

 探索者が境内を歩いていると、ジーパンとパーカーと言う地味な服装で、アニメキャラの描かれたバッチが付いたキャップのみ存在感を放っている妙な少女が目に入るだろう。彼女が天才ハッカーdanceこと常川舞だ。
 常川は鹿島にハッキングされ、彼女から匿名のメールを送られ、神田明神で待ち合わせするように呼び出されたのだ。常川はゼロワンゼロからのメールだとはまだ知らないが、並の企業より厳重にセキュリティを敷いた自身のパソコンへハッキングされた事に驚いている。

 探索者は常川を知っているので、彼女に近付き何をしているのか聞くだろう。人間嫌いの常川は露骨に嫌な顔をするが、探索者を用心棒にしようと考え直して説明してくれる。

「このメールを見て。今朝、送られて来た匿名メール。捨てアドレスっぽくて、探知は無理だわ。ほら、『神田明神で待て』とある。あたしのパソコンをハッキングするなんて上等、どんな顔か見てやるわ。しかし何で今日なのよ、VIONのイベントがあったのに! もう終わる頃じゃない!」
 すると常川だけではなく、探索者にも鹿島からのメールが届く。匿名のメールで、常川と探索者は同時にメールを見る事になる。
「君たちの姿は確認した。以後、宜しく。@010」
 そして添付ファイルには、先程喋っていた所からメールを見るまでの自分たちの姿が動画として撮られていた。その方向へ目を向けると、白い車が急発進するのを確認。【写真術】に成功すると、ナンバープレート「多摩ナンバー、20-16」を写真に収められる。車種は「スズキ・アルト」だ。車に乗っているのは勿論、鹿島であり、常川の言った通りVIONイベント後なので難なく来れたのだ。彼女は探索者や常川を確認したならさっさと退散する。因みにこの車は死んだ樽菱の物を拝借している。

 常川は以前、マホロバ社から人格変換装置のデータを奪っており、更には装置へのデータ変換も成し遂げていた。その高度な技術に着目し、彼女の技術を使用してテレビ電波をジャックして貰い、えまーじぇんしーライヴを生中継させ、ゴールデンタイムによる全国民的なパンデミックを起こすつもりだ。

 何故、常川なのかと言えば、彼女の奥底にある孤立意識を看破しており、更には思春期で若く不安定な時期の子どもの方が大人を説得するより簡単だと気付いているからだ。それは、先ほどのメールに「@010」と付け加えている点も含む。
 常川はハッカーとしての鹿島「ゼロワンゼロ」に憧れており、この数字の羅列で何者かが分かったのだ。探索者はメールを眺める常川に【心理学】を行うと、酷く動揺している事を確認出来る。
 彼女にメールの差出人について聞いても「無名なハッカー」と白ばくれるだろう。探索者が【コンピュータ】に成功で「伝説のハッカー、ゼロワンゼロ」を思い出す。日本の初期ネット時代(2ちゃんねる黄金期かつ、おもしろFlashの時代だろうか)に暴れ回り、セキュリティの脆弱さを証明させたハッカーだ。

《銀座で警官ごっこ》

 導入後、河内の導入から入った探索者のみ続行して続けられるが、他の導入の探索者も参加して良い事にする。
 河内の案内により、四谷から銀座へ探索者たちは赴く。銀座は言わずもがな、日本屈指の繁華街であり、高級百貨店や宝石店、オーダーメイドスーツの仕立て屋に五つ星レストラン等のイメージだろうか。しかし大半はブティックや電化製品量販店、比較的安価なカフェと言った店の為、一概にセレブ街と言う訳ではなく「買い物場所の定番」な雰囲気で間違いない。

 特に今日は日曜日であり、銀座中央通りは一定期間中の日曜日の昼から夕方までは歩行者天国となっている。お一人様から友人連れ、家族連れ、夫婦、カップル、観光客と様々な人でごった返している。
 事件はこの中央通り沿いにある高級和菓子屋『龍燈(りゅうとう)』の前で起きた。橘は大変な甘党で、この和菓子屋の常連で店主と顔馴染みだった為、トイレだけ貸して貰える事を許されたのだ。探索者は河内に連れられ、初老の店主と話が可能だ。

 店主に橘の印象を聞くならば「話上手の聞き上手、朗らかな優しい人。酒癖は少し悪いが、暴力は決して振らない人だから信じられない」と語る。また、当時については「入った時は私に丁寧にお願いしてお手洗いに入ったのに、帰りは挨拶もせず、ズンズンと歩いて出て行ったからおかしいと思った。まさか人を刺すとは思わなかった」と振り返る。
【信用】に成功すると、トイレから出た時の彼を語ってくれる。
「ギョッとしたよ。目がどんよりとして、無表情で……一瞬、別人だと思ったほどだった。入った時と全然違うんだ」

 また、彼の前にトイレに入った人間はいたかについて聞いても、「奥に食事席があるが、そんな長居する人はいなかったし、お手洗いに篭った人がいたならばすぐに分かるからあり得ない。そもそも監視カメラを警察が確認されているし、ずっといたお客さんはいないハズ。裏口には休憩中の店員がいたし、侵入も出来ない」と答えるだろう。

 キーパー向けに解説するが、鹿島は彼が銀座に沢山の行き着けがある事を把握しており、休日はそのどれかに行く事も知っていた。更に言えば同窓会を行う日も把握した上で、「仲間連れと向かうであろう店」を分析しており、その場所が龍燈だったので急遽裏口から侵入し、男装して接触したのだ。裏口にいた店員を人格変換装置で「鹿島を同僚」だと刷り込み、制服である割烹着に着替えてからトイレに入ったのだ。
 監視カメラ映像は得意のハッキングで自分の箇所を飛ばしたのだ。

 探索者が裏口にいた従業員を指摘すると、店主はその店員を呼び出すだろう。店員は「誰もいなかったですよ」と振り返るし、【心理学】に成功すれば寧ろ本当の事だとしか知れないだろう。しかし【信用】に成功した場合、探索者にこっそりと「実は、途中の記憶がないんですよ。ボンヤリしていると時間が過ぎ去るスピードが早く感じるのは良くありますが、裏口で缶コーヒーを飲んでいたと思ったら15分経過していてなんて、ありますかね」と不安を吐露する。
【精神分析】に成功すると、「そう言えば、男を見たような……表で事件が起きた時、サラリーマン風の男を見たような……裏口は滅多に人が来ないんで、妙だなと思ったんですが……帽子を深々と被った、痩せた男でした」と、元の人格に戻った瞬間の事を思い出してくれる。彼は服装から、男性と勘違いしているのだが。



『見解』
 歩行者天国時のみ設置されているベンチに腰掛け、店で聞いた内容を整理する。突然、人が変わったように殺人を犯した橘に違和感が出るハズだ。
 ベンチに探索者らが議論なり推理なりをしているのならば、【幸運】に成功で隣のベンチに座っていた人が話しかける。なんと、事件時現場にいた目撃者の1人だったのだ。
 その人は当時の様子を語ってくれる。
「いきなり目の前で人が殺されたのだから、そりゃ驚いたが……それよりも驚いたのは犯人のナイフ捌きだ。殺された女性に近付いた瞬間、一瞬で懐からナイフを取り出して顔を切ったんだ! それに女性が怯んだ隙に心臓目掛けて突いたんだ。ここまでたった5秒もなかったと思うよ! そしてその場の人間が反応する前に、凄い速さで逃げたんだ。まるで映画の、暗殺者のような手際の良さだった」

 昨日まで一般企業の社長だった人間が、裏で殺しの訓練をしていたとは考え難いだろう。
 新たな疑問が浮上した所で、時刻は夕方6時に差し掛かり、歩行者天国が終了を迎える。河内はまた明日、「VIONさんに話を伺いましょう」と告げ、次の休日である土曜日に会う事を約束した。

《ネットオーシャン》

 その日の夜、ネットでは沢山のVチューバーによるライヴが行われていたり、或いは有名Vチューバーの動画投稿があったりと盛り上がっているだろう。
 探索者がインターネットで、思い思いのVチューバーを見れるようにしよう。その中で「えまーじぇんしー」と宣言した探索者のみ、彼女の自己紹介動画を見る事が出来る(撮り下ろした物なので、感染はない)。
「エマージェンシー! 初めまして! VION所属の新人、えまーじぇんしーです!」
 画面の向こうで可愛らしい手を振り、若干天然の入った語り口は視聴者を射止めている。VIONが大型新人と紹介した事もあり、既にチャンネル登録者数は3万人を超えていた。彼女は土曜日に行うライヴの予告や、これからの活動についての抱負を語った後に動画は終了。

 また、【コンピュータ】か【幸運】に成功すると、ネット掲示板が騒ついている事に気がつくだろう。なんと、天才ハッカー『dance』が復活したのだ。danceを常川だと知っている探索者は動揺し、明日にでも彼女に会うとするだろう。ネット掲示板には、「日本中を驚かせる事をするよ」と書き込まれていた。


『dancing in the dark』
 探索者が急遽、翌日にも常川の元に訪れるのなら、学校帰りの彼女と遭遇する。常川はバツの悪そうな顔をして探索者を避けようとするが、少し追い掛ければすぐ捕まえられる。
 常川は「みんな、アタシの技術ばかり見る。能力ばかり見る。誰もその向こうの、あたし自身を見やしないのよ。親も先生も誰も彼も、でも……いや、もういいわ。帰る」と一方的に話してはまた逃げようとするが、【説得】に成功すると態度を少し軟化させ、「安心して。またデカい企業に侵入したりしないから」と呟き、今度こそ探索者から立ち去る。

 その翌日に、常川は忽然と姿を消してしまう。彼女の孤独心に漬け込んだ鹿島が、常川とコンタクトを取って説得し、信用させたのだ。言えども鹿島は常川を自身の妹に照らし合わせた為、それが優しげな態度に出ていた。
 元々ゼロワンゼロとして憧れていた相手だった事と、鹿島から聞かされた妹の自殺の話を聞いて信じた常川は翌日、学校に行く振りをして鹿島と接触し、彼女の家へ行った。そこで彼女は人格変換装置の事実やえまーじぇんしーの正体を伏せられた上で、「危険なのはネットでは無く、もはや電波もだ。全国的な電波ジャックを行う。あの時、妹を自殺に追いやったメディアを崩壊させてやる」と言う計画を聞かされる。だが「犯罪はもう勘弁」と考え嫌がった彼女に鹿島は、人格変換装置を使ったのだ。


『where is the dance?』
 彼女が消えた翌日から、両親によって捜索願が出されるだろう。彼女と知り合いの探索者に両親は「あの子を探して欲しい」と頼まれるほど、2人はかなり参っている状態だ。
 探索者が学校や近隣住民に話を伺っても、知らぬ存ぜぬだろう。

 彼女の家は秋葉原にある一等マンションだ。秋葉原はオタクを象徴する言葉『アキバ系』ともある通り、電気街としてIT関連量販店の密集に付随する形で、アニメや漫画、果ては音楽やゲームと言ったサブカルチャーの聖地である。常川の家は万世橋の向こう側にある為、家を出て暫く歩けばカラフルな看板が並ぶ、電気街に辿り着けるだろう。
 何か手掛かりはないかと探索者がこの街に来たのなら、【幸運】に成功で彼女の目撃者に当たる。目撃者は「痩せた、スーツ姿の人と歩いていた。何か話していたが……IT系の専門用語ばかりで何言ってんのか分からなかった」と証言する。人物については「帽子を深々と被って、俯き顔だから良く見えなかった。男か女かも分からなかったよ」と言う。

《VION本社へ》

 河内と探索の約束をした者は、来たる土曜日に台場に集合する。通称『お台場』で有名な港区の街であり、フジテレビとレインボーブリッジが一様に眺められる、東京観光地で一番メジャーなエンタメ街だ。VIONの本社もここ、お台場に存在している。
 河内とは東京テレポート駅で合流し、早速本社へ向かう。VION本社は、海沿いの街と言うイメージに擬えたかのような白を基調とした、地中海沿いを思わせる清楚感溢れる外装だ。河内が事前にアポイントを取っていた為、探索者らは現社長である金村焔と会える。

 金村はやや小太りの男だが、顔だけげっそりとしている分は今回の事件の後処理に忙殺されていた様を想像出来る。
 金村は探索者らから、以下の質問を受け付けられる。


・橘樹はどんな人物だったか
「元々、私は橘君に誘われて、この会社を設立しました。人を魅了する力があって、この人なら付いていけるって思わせるリーダーシップがある男でした。まさか、殺人を犯すなんて……それも、前田を……」


・どんな関係だったか
「僕たちは中学校からの友人です。あの日、私は新たなプロジェクトがあって同窓会に行けなかったのですが、行かなくてよかったのか駄目だったのか……」


・動機は
「それが、全く心当たりがなくて……前田と橘は中学を出て、高校を卒業した辺りから全然会っていませんし、話題にもならなかったから。本当に、同窓会で8年振りくらいに出会ったのです」


・どう橘樹を捕まえたのか
「あっちから電話があったのです。『俺は無罪だ、殺したなんて間違いだ。兎に角、話がしたい』と。正直、私は色々と考えましたが、結局は警察の方に相談し、協力して逮捕させる事に致しました」


・何故、貴方に電話をしたのか
「自分で言うのも何ですが、私は彼に信頼されていたからでしょうか。今思えば、指名手配中なのに突然、私に電話をするなんて、血迷ったとしか思えないのですがね」


 また、最初の質問で「それも、前田を……」と言った辺りで【心理学】に成功すると、彼は何か隠しているような素振りをしている事に気付けるだろう。これについては、【信用】に成功したとしても「中学時代、付き合っていた二人でしたので。今思っても、殺害する理由が分かりません」とだけ留めておこう。殺された前田も、自分と同じスケープゴート計画の賛同者だった為、彼の中に「まさか」と思わせる要因があったからだ。

 また、河内の方から「橘氏は、誰かと会っていたとかは?」と質問する。これに対しては「立ち上げたばかりの会社なんで、仕事の付き合い以外ではあまり」と話すだろう。そこで彼は思い出したように、「樽菱久と言うCGデザイナーと仲が良かったです。モーションキャプチャーのアドバイスや、Vチューバーに関しての知識を教えて貰っていたと話していました。私も一度会った事あります、痩せ型の真面目そうな男性でした」と話す。
 ここでは探索者にミスリードを与える為、「痩せ型の男」を強調させておこう。実際の樽菱はえまーじぇんしーを作った後、その最初の犠牲者となって自宅で死亡している。

 樽菱の住所などを聞こうとしても、「さぁ、主に橘と親交が深いものでして。名刺が残っていれば良いのですが、今から探すとなるとかなりかかりますね」と困り果てた表情を見せる。彼は次の週までには名刺を見つけ、住所を教える事を約束してくれる。


『自由の女神の下で』
 VIONを出た後、河内らはフジテレビ前にある自由の女神像の下で休憩を取る。調べれば調べるほど橘の凶行に疑問が出て来るが、河内を含めてここで1分程度議論をさせておこう。
 ある程度、議論が白熱している時、探索者たちの前にカップルが立ち塞がった。奇妙に思っていると、手元からナイフを取り出して河内と探索者1人を不意打ちする。これを【回避】か【武道】で受け流すならばノーダメージで済むが、失敗した場合は【1D4+2】のダメージを負う。河内にも同様の事が発生するが、探索者はダメージを庇ったり、【DEX×3】で彼を押して強制回避させる事も可能だ。
 そして探索者は、突如として強襲された事により【正気度 1/1D4】を行う。


『VS 人格統制暗殺者』
    男    女
STR  14    12
CON  11    10
SIZ  13    11
POW  11    13
DEX  10    15
db  +1D4    0
耐久力  15   15
回避  45    45
武器:キック、75% ダメージ・1D6+db
ナイフ、65% ダメージ・1D4+2+db
技能:武道(CQC)、70% マーシャルアーツ、32%


 この2人は普通のカップルだが、橘の件を捜査している人がいる事を金村が鹿島に話し(陰謀による物ではなく、世間話の一環だが)、脅す為に(あわよくば殺す為に)差し向けた者だ。人格変換装置によって非情で言葉を発さない暗殺者となっており、【武道】か【人類学】に成功なら、彼らの動きは何年も訓練された兵士の対人格闘術に則られていると気が付けるだろう。
 探索者は1ラウンドの後、【目星】か【アイディア】で、探索者たちより上に建てられたロフトから見下ろす謎の人物に気が付けるだろう。その人物は黒いスーツに身を包み、帽子を被り、ペストマスクを着用している痩せた男っぽい服装の人物だ。探索者は驚きから、【正気度 0/1D3】を行う。その男もとい女こそが、鹿島時音だ。

 鹿島は探索者の様子を図ると共に、人格統制による戦闘能力を測定しているのだ。彼女の持つ小型人格変換装置は、モリアーティ教授の夢の時のβ版にあたり、持続性がない。その為鹿島は、この人格変換装置を改良して行くつもりだ。
 探索者らが暗殺者に襲われている様を眺めつつ、撤退をしようとする。もし探索者が4ラウンド以内に暗殺者を倒したのなら、撤退途中の鹿島を【追跡】に成功で追え、最後は車に乗られて逃げられてしまう。だが【写真術】に成功で、常川の時と同様「多摩ナンバー、20-16」と「白のスズキ・アルト」が記録出来る。写真術に失敗したとしても、スズキ・アルトである事は確認可能だ。

 戦闘後、気絶から覚めた暗殺者は元の人格に戻っており、困惑している。【心理学】に成功すると、さっきとはまるで別人のように狼狽えている事が分かる。
 河内の助言もあって、警察には引き渡されない。「やはり、橘氏は操られていた! 何らかの力で! あの不気味な人物が犯人だろう!……この東京にはまだ、黒の部分が残っている!」


『電気街の老紳士』
 常川側の探索者は、再び電気街を散策している頃だろう。時刻は定時である17時であり、土曜日ともあって電気街は人でごった返している。
 探索者が歩いていると、このポップアップな街には少し合わないような、杖をついた銀座が似合う服装の老人がビルから出た所に遭遇する。この老人は河内であり、樽菱の件を調査していたのだ。そして老人の出て来たビルは、樽菱が働いていたクリエイター事務所である。
 探索者は老人もとい河内に興味を抱いたのなら、彼に話しかける事が可能だ。「ある事件を追っていましてね。そうだ! あなた、このビルのクリエイター事務所で働いていた、CGデザイナーの樽菱久さんをご存知ですか?」
 探索者は【知識】か【コンピュータ】に成功で、「ゲームキャラクターや、Vチューバー用のアバターを作っているデザイナー」である事を思い出せる。

 河内は「今はこの事務所を出て独立なさっているそうですが」と続けた後、「何か気になる事とか、関連する事がありましたら、こちらまで」と名刺を渡してから、その探索者らと別れる。

《流行にご用心》

 インフルエンザの流行が瞬く間に猛威を振るい出し、都内では爆発的なパンデミックを防ぐ為、マスク着用を促し、また大規模な集会やイベントを見送るように警告した。それが反映したかのように、次の週の休日は人通りが異様に少ない。
 探索者は常川の行方を捜したり、謎のペストマスクの正体を探ろうとするだろう。


『樽菱久』
 襲撃されてから1週間が経過した為、探索者の怪我は【1D6】回復している。
 樽菱の住所は、金村が名刺を見つけて教えてくれるか、河内が前の職場から聞き出したりしてくれる。しかし河内は急用が出来たと言って、この日は参加はしない。この時河内は橘の弁護士や刑務所に掛け合い、面会の機会を作っているのだ。
 探索者は与えられた樽菱の現住所の情報を元に、向かう事になる。場所は「多摩地域、武蔵野市、吉祥寺南町5丁目」だ。【知識】か【医学】に成功で、インフルエンザの被害が特に酷い地域だと思い出せる。

 吉祥寺と言えば「東京で住みたい町」の話題で槍玉に上がる町だが、この辺りは漫画家やイラストレーターが多く住んでおり、それを含めてサブカルチャーにも造詣が深い町でもある。その他、ライブハウスも多く、下北沢と並んでバンドマンの聖地の1つでもあるのだ。
 探索者が書かれた住所に向かうと、一件のマンションに着く。お洒落なマンションであるが、不機嫌そうな表情の大家に気が付くだろう。【信用】で大家に話を伺うと、「304号室の人は今月の家賃を滞納している。会おうとしても鍵かかっていない」とぼやかれる。304号室の人間こそ、樽菱の部屋なのだ。
 304号室に入る前に、近くの月極駐車場を見る事が出来るが、そこには例の「多摩ナンバー 20-16」「スズキのアルト」が駐車されていた。大家に聞くなら、その車は樽菱の物だと証言してくれる。「車は良く出て行っている為、居るは居るハズ」とも話してくれる。

 探索者が304号室に向かっても、やはり鍵がかかっている。【鍵開け】も可能だが、大家に訳を話して開けて貰った方が良いだろう。
 扉を開けた瞬間、強い腐臭が中から飛び出し、驚きから探索者は【正気度 0/1D3】を行う。それでも中に突入すると、蝿のたかった個室で、付けっ放しのパソコンを前に悶絶顔で死亡している樽菱を発見する。蛆が湧き、目眩を催す腐臭と言う凄惨な現場に、探索者は【正気度 1/1D10】を行うこと。

 樽菱の死体に【医学】を行うと、彼には外傷は無く、腫れたリンパ腺からしてウィルス性病原体による病死だと判断出来る。樽菱はここで、ハスターリクの最初の犠牲者となってしまい、多量のウィルスで一気に感染、悪化したインフルエンザで死んだのだ。そしてその残留したウィルスは東京の空気に流れ、流行を引き起こした。
 ここで探索者は【CON×4】に成功しなければ、ハスターリクの欠片であるインフルエンザに感染してしまう。すぐに影響は出ないが、翌日に症状が発生し、明日の探索に参加出来なくなってしまう。
 もし全員がロールに失敗した場合は、ここにいる探索者以外の者にするか、1人だけランダムに選んで強行させるかにしても良い。

 探索者は警察に通報する前に、彼のパソコンを調査出来る。付けっ放しのパソコンは、メールの確認画面で停止しており、宛先『JAMS』から動画が添付されたメールだと分かるが、その動画は何故か破損していた。
 他に一件、『JAMS』の名のメールを発見したが、鹿島はハッキングを施し、全て文字化けされて読む事が出来ない。【コンピュータ】に成功で、文字化けの翻訳が可能だ。


 今回、様々なアバターを作られている樽菱様に依頼をしたく、通信させていただきました。私、VION所属のジャムズと申します。社長の橘氏の紹介で、メールを送りました。
 キャラクターですが、可愛らしい女の子をイメージしています。どのような服、どのような顔立ちかは樽菱様に委ねます、どうか1ヶ月以内にお願い出来ますか?


 この頃から鹿島は橘と偽名を使ってコネクションを作っており、後に金村や橘に聞いても「坂見に紹介した」と言うだろう。
 それ以外で部屋内に調べる価値のあるものは無いが、【目星】に成功すると、誰かが何度か浸入している形跡がある事に気が付けるだろう。鹿島は樽菱の死後、彼の部屋から車のキーやデータを奪い、何度か浸入していたのだ。


『dance dance dance』
 常川失踪から、2週間が経過した。今も目撃情報は無く、過ぎるだけの時間に焦燥感が現れる時期だろうか。常川の母親は酷く参っており、毎日泣いて過ごしているらしい。
 探索者はこの2週間、東京中の色々な場所を探し続けていたが、品川区を歩いている時、【幸運】に成功の上で【目星】に成功すると、コンビニで変装して買い物をする常川を看破出来る。しかし常川に話しかけても、彼女は「誰ですか?」と言う。常川は彼女の人格変換装置で、人格を変えられていたのだ。【心理学】に成功すると、探索者を忘れているのみならず、性格そのものが変わっている事に気が付けるだろう。今の彼女は、『鹿島愛花』だ。
 探索者が無理矢理にでも常川を連れ戻そうとしたら、彼女は逃走を図る。【追跡】か【DEX×3】で追いかける事が可能だ。

 常川に追い付くと、突如彼女は苦しみ出し、「自分でも影響されやすい人間ってのは分かるわ。でも、どうしようも無いのよ!」と告げる。人格が一時的に戻ったのだ。彼女は鹿島に同情の念を抱いた結果、このような状態になった事を自嘲しているのだ。

 続けて「単刀直入に言うけど、早く止めないとまずいわよ……あの、あいつを」と話してくれるだろう。探索者が取り敢えず常川を両親の元に戻そうと近付くだろうが、そのタイミングで3人の会社員風の男性が探索者に襲いかかる。驚きから、【正気度 0/1D4】を行うこと。
 その会社員も、鹿島の人格変換装置によるものであり、常川を連れ戻しに来た探索者を妨害する。その間、常川の背後に車が停まり、呆然とする彼女を人格変換装置を打ち込み気絶させて去って行く。運転するのはペストマスクを被った人物だ。

 この時も【写真術】に成功で「品川 75-19」を、失敗でも【知識】で「トヨタ・プリウス」だと分かる。この車は、VION本社に停めっぱなしだった橘の物を借りている。


「人格統制暗殺者」
    A    B    C
STR  12    14   11
CON  13    13   10
SIZ  14    12    11
POW  9    11    13
DEX  12    11    15
db  +1D4   +1D4   0
耐久力  15   14   16
回避  45    45   45
武器:キック、80% ダメージ・1D6+db
ナイフ、70% ダメージ・1D4+2+db
技能:武道(CQC)、70% マーシャルアーツ、32%


 気絶させれば、彼らは素の人格を取り戻し、困惑する。【心理学】でもその様子が伺えるだろう。探索者は常川が立っていた場所に、紙が落ちている事に気が付ける。そこには「i aM dAnCe。部屋の机の下」と書かれている。MとAとCだけが大文字であり、彼女の持っているパソコンの1つに「MacBook」を指している。これはパスワードなのだ。常川は自身の意思で鹿島に会いに行く時、何かのイレギュラーの保険として、情報を置いていたのだ。

 探索者が常川の家に行くと、デスクトップのパソコンとは別に、机の下に隠されたノートパソコンである、MacBookを発見出来る。早速そこにパスワードを打ち込むとウィンドウ画面が表示され、ポツンと1つだけ置かれたファイルに目が向く。

 ファイルを開くと、そこには『人格変換装置』の鹿島の見解と、9年前の記事が発見出来る。更には相田郁の両親の住所まである。


『人格変換装置β版』
 神経学者「鞍骨 佐(くらぼね たすく)」の論を元に、マホロバ社で開発した装置の、小型版の試作機。人格変換作用は永続的では無く短時間的で、セーブも不可。しかし電気を打ち込んですぐに変換が行われる為、緊急時に備えられる。
 完成版は「畠中 甲(はたなか きのえ)」が持っているが、報告は無く、設計図もない。自力で完成させる他はない。


『筒木中学校、イジメ自殺』
 筒木中学校にて、三年生の女子生徒がイジメを苦に自殺する事件が発生した。イジメの首謀者に関しては、クラスメイトの証言から1人の生徒が浮上し、学校側で追求される見通しだ。

『筒中のイジメ自殺、首謀者判明!』
 筒木中学校で行われたイジメ自殺、断じて許される事ではない。本誌は徹底取材の元、首謀者と思われる女子生徒を突き止めた!
 首謀者A.Kは自殺した生徒に、酷いイジメをしていたと、クラスメイトの1人I.Tは証言した。また、肉体的に痛め付けていた事をR.Mは証言し、次々にクラスメイトから証言が飛び出している。しかし首謀者A.Kは事実を認めていない。


PS.あたしが調べといたよ。死んだ女子中学生の名前は『相田 郁(あいだ いく)』。家族は葛飾区に住んでいる。以後、よろ。by.dance


 この筒木中学校こそ、橘や金村らの母校であり、イジメの首謀者として槍玉に挙げられている生徒こそが、鹿島の妹である愛花だ。A.Kとは鹿島愛花、I.Tが橘樹、R.Mが殺された前田理沙だ。
 探索者は後日、この筒木中学校に向かっても良いし、河内の名刺から彼とコンタクトを取っても良い。

《東京を歩く》

 翌日は、東京を自由に回る事が可能だ。ある程度のミッションとして、『橘と面会する』と『相田郁の家族に会う』の2つがあるが、以下に書くのはそれ以外のイベントだ。探索者には「橘と筒木中学校の関連を探ること、或いは一度行った場所に再び赴くこと」を目的として提示しておこう。


『筒木中学校、イジメ自殺』
 この事件の概説は、【コンピュータ】で調べるか、【図書館】で調べる事が可能だ。9年前に起きたもので、被害者を複数の女子生徒が精神的、肉体的に痛め付け、それを苦に被害者が自殺を図ってしまった事件だ。この事件はまだ続きがあり、首謀者として糾弾された女子生徒も学校側やメディアの追求に精神を病み、自殺をしたと言う失態が起きていた。
 学校側の謝罪や、メディアの沈黙もあって、事態は1年後に沈静化した。


『河内から見た筒木中学校事件』
 探索者が警察の情勢に詳しい河内に、当時の事を伺うのならば、彼は「何故そんな話を」を質問するだろう。消えた常川の事からパソコンの情報の事をまとめてPCが話したのなら自動的に話してくれるが、難しい場合は【信用】か【言いくるめ】に成功で話してくれるだろう。

「あの事件、聞いた話ですが……イジメの首謀者と言われていた女の子は全くの無関係で、寧ろ自殺した子の親友だったらしいのですよ。酷い話です、何処から流れた噂をメディアは疑う事もせず、少女を犯人としてある事ない事連日書き連ねたものですから。それを苦に親友の後追い自殺を……と言う真相ですな。全く、嘆かわしい事です」


『龍燈の監視カメラ』
 探索者が再び銀座の龍燈に赴くのなら、監視カメラを見させて貰う事が可能だ。店主は「一応、警察には渡しているが、何も手掛かりはないよ」と断った上だが、映像を見ながら【アイディア】に成功すると、橘がトイレに入った辺りから2度、不自然な映像の飛び方に気が付けるだろう。
 ここの監視カメラは、動く存在がいない間の映像を自動的にカットするように設定されているのだが、橘がトイレに入った時と出た後とで、客や店員が動いているフロアの映像丸ごと全体的に時間が飛んだのだ。探索者は何者かによって、映像が切られたのではと推理出来る。


『橘や金村の経歴』
 VIONの関係や、橘の同窓会が開かれた店に【信用】に成功の上で問い合わせると、二人の出身中学校が判明する。二人の中学校こそ筒木中学校であった。これに関しては金村にも聞くことが可能だが、彼はスケープゴート計画の件で、中学時代の話には神経質になるだろう。完全に信頼しきった鹿島に漏らしてしまうかもしれない。そうなると鹿島は更に探索者たちを警戒するだろう。


『その他の同級生』
 同窓会が開かれた銀座の店に伺うと、【幸運】に成功で当時担当していた店員に会える。店員は「確か、2名の方がインフルエンザで亡くなったと話題にしていましたよ。今時、インフルエンザで亡くなるなんて、珍しいと言った内容です」と話す。
 これについて金村に聞いたり、後に橘から聞くのなら、樽菱が亡くなった日とほぼ近い日に2人もインフルエンザにかかっていた事を話してくれるだろう。ハスターリクの協力を得た鹿島は、中学校時代の復讐相手らにハスターリクを送り付けたのだ。しかし効果はマチマチで、樽菱同様に多量かつ急激な病状で亡くなった者もいれば、ごく少量のウィルスに感染して症状が出るまで時間がかかった者もいる。或いは問題の無かった者も。
 言えど、これは鹿島にとって宣戦布告のような物であるが。詳しい話を聞くなら、やはり『JAMS』と言う匿名人物のメールを開けた事が語られる。


『えまーじぇんしーチャンネル』
 ネットでは、えまーじぇんしーの動画で話題になっている。彼女は突如、「3週間後に大規模なライブを行う」と宣言した。詳細は未定だが、多くのファンや同志たるVチューバーからは「短期間ながら精力的」と賞賛の声が上がっている。彼女のプロデューサーである異邦人Pからは「ご期待ください」と一言ツイッターで呟かれていた。


『super dance』
 突如、逆探知不可のアドレスで、常川からメールがやって来る。内容は「えまーじぇんしーに注意」とだけ。彼女はえまーじぇんしーと鹿島の関係に気が付き、2人の関係を怪しんだのだ。探索者がえまーじぇんしーについて調べてみるのなら、【コンピュータ】に成功で、ネット掲示板にて「えまーじぇんしーのアバター、この間死んだ樽菱久の作品だよな?」と言う噂を発見出来る。彼の過去作品を見るのなら、確かに作風は似ていた。

《橘との面会》

 探索者は時間が来ると、河内の迎えと共に、彼が拘留されている刑務所に赴けるだろう。面会室に現れた橘は、写真で見た姿より酷く窶れて荒み、一見すれば別人に見えた事だろう。
 現れた橘に河内は「弁護士と連携し、事件の究明を行なっています。まずは質問に答えてください」と説明する。


・『当時の状況』
「よく分からない……酔っていたってのもあるが……トイレに入って、仮面の人物に出会ったと思ったら、血塗れのナイフを待って多摩川の河川敷に立っていたんだ……その仮面の人物の姿は覚えているんだ……姿は龍燈の店員の制服だった……仮面はカラスのような……そうだ、ペスト医師のようなマスクだった」


・『樽菱久について』
「彼も病死……? 実は僕の友人が2人、インフルエンザで亡くなったんだ……クソッ! 一体どう言う事なんだ! 彼とは仕事上のパートナーでもあり、友人だったのに!」


・『金村について』
「会社や世間を思えば、警察に連絡するのが普通だろう……いや、僕もなんで土壇場で金村を頼ったのだろうか……実は、派遣社員で坂見と言うシステムエンジニアの女性がいてね、彼女から頼れと言われたのだが……まぁ、僕を捕まえさせる為の策と言う訳か……」


 あらかた探索者からの質問が終えたなら、河内から犯人もとい、「操作者」の心当たりを伺ってみる。ここまで探索者に植え付けられている仮面の男の印象は、痩せたスーツの人物だ。彼は顔を顰めて熟考するが、そんな人物に心当たりはない事を告げるだろう。

 また、この時点で筒木中学校の件を話すと、【心理学】で酷く動揺している様を暴ける。それを指摘しても、今は何も話してくれないだろう。しつこく探索者が追求するようなら、面会時間終了を知らせる。河内のアドバイスとして、「彼は何か、事件の事を知っていますね。一先ず、この相田郁さんについて調べてみませんか」と提示してくれる。

《相田郁の遺族》

 常川が指定した住所や、相田郁について調べたい探索者が筒木中学校にて【言いくるめ】か何かで住所を聞き出すと、両親が住んでいる家に辿り着ける。葛飾区の閑静な住宅街だ。
 遺族を訪ねたとしても、正当な理由がなければ当時の事を話しては貰えないだろう。「橘樹の事件と関連がある」と言った旨を伝えるか、まどろっこしいのなら【信用】【説得】に成功で話して貰える。
 相田郁は大人しい生徒で、それが災いしてイジメの対象となったらしい。イジメは想像を絶するほどの酷さで、死亡後の彼女の身体には痣や火傷痕があったそうだ。

 その後、学校側の調査で首謀者が判明したが、両親は全く納得しなかったらしい。何故なら首謀者として提示されたのは1人だけの上、郁の大親友であった女子生徒だったからだ。この時に両親の口から「鹿島愛花」の名前が出て来る。
 彼女はイジメの首謀者ではないと信じていたが、学校側やメディアはそれで押し通したばかりに、愛花さえも自殺させてしまった事を相田の両親は深く後悔しているのだ。

 探索者はその、鹿島愛花の家を訪ねる事が可能だが、家族は「事件後に引越されて、今は廃屋になっている」と言う。一応、住所は教えて貰えるだろう。

《鹿島家》

 探索者は鹿島の生家を見つけなければならない。それについては現在の筒木中学校で【言いくるめ】で聞き出すか、相田郁の両親に伺うかだ。家自体は相田郁の家からそんなに遠くはないが、事件後に家族は引っ越し、家は(自殺者が出ているので事故物件となっているのか)買い手がつかずボロくなっている事を知れる。

 辿り着く頃には夕方になっている。鹿島の生家は元から古い家のようで、9年の歳月で酷くオンボロになっていた。『立入禁止』とあるが、無視して乗り込む事が可能だし、一応管理会社に問い合わせてからでも構わない。
 家の中は、当たり前だが家具一つ無く、溜まった埃と窓から射す夕陽のみだ。家自体も大きくなく、一階立ての精々3LDKだろうか。しかし部屋の中で、ベッドと学習机が置かれた部屋があった。それは鹿島愛花の部屋で、家族は彼女のベッドやら机と言った大きな物は持って行くのを諦めたのだろう。

 机の引き出しを開け【幸運】に成功すると、机に張り付き、取り残された家族写真を発見出来る。愛花の七五三前撮りなのか、一家全員で写った写真だ。両親の膝の上に座るのが、3歳辺りの愛花だと分かるが、横に立っている小学生くらいの少女の姿が発見出来る。この少女こそ、当時13歳であり、今回の黒幕たる鹿島時音だ。

 探索者が【アイディア】に成功すると、家の窓から道路を見れば、車が停まっている事に気が付ける。「品川 75-19」の「トヨタ・プリウス」、ここの探索者に「dance dance dance」に参加した者がいない場合はナンバーや車種でピンと来ないとは思うが、橘の車を借りて鹿島がやって来たのだ。


『廃屋の戦争』
 鹿島は、探索者らをマークしており、彼らの動向を疑っていたのだ。そして車に乗せていた『人格統制暗殺者』で強襲する。
 暗殺者たちは窓や扉を突き破り、なんと銃を構えている。鹿島は警察官に人格変換装置を施したのだ。確かに暗殺者たちは警察官の制服を着ている。

 入って来て早々、彼らは発砲を行う。探索者は【回避】か【幸運】に成功しなければ、銃弾の餌食となり【1D10】のダメージを負う。


『人格統制暗殺者・警官』
    A  B   C
STR  12  15  11
CON  13  12  16
SIZ   13  13  13
POW  13  12  11
DEX  16  10  12
耐久力 12  13  14
回避  50  40  45
db  +1D4 +1D4 +1D4
武器:拳銃、60% ダメージ・1D10
こぶし、80% ダメージ・1D3+db
キック、70% ダメージ・1D6+db
組み付き、45% ダメージ・特殊
技能:目星、80% 隠れる、30% 追跡、75% 忍び歩き、45%


 この敵は銃を持っている上、鍛えられた警官がベースだ。正面から相手をするのは非常に危険であり、逃走か奇襲が必要となる。逃走の場合、【武器技能】を使って窓を壊し、窓枠を乗り越え、【DEX×4】で逃走しなければならない。奇襲の場合は【隠れる】で家内に身を潜め、暗殺者の隙を突いて攻撃する事でスタンさせるように立ち回れる。
 居場所がバレている場合は【回避】で遮蔽物に隠れる事が可能だ。

 ただし、探索者が3ラウンド程度、家内で耐え切っている場合は、ペストマスクの鹿島が家に入り、懐かしそうに物色している様を観察出来る。その時に加工された声で「人間は花だ。花は死者を飾る。お前ら含め、全ての人間を捧げてやるぞ」と宣告する。この時に鹿島へ攻撃を加えようとしても、暗殺者たちが阻止するだろうし、その隙に退散する。

《VION再突入》

 探索者は金村が今回の件に関わっていると感じたのなら、VIONに向かっても良い。VIONに着いた時、本社前に「品川ナンバー75-19のプリウス」を発見可能だ。
 定時なのか本社内に人はおらず、閑散としている。だが入り口に鍵がかかっていないのは妙だろう。探索者が急いで社長室に辿り着くのなら、机に突っ伏し呻き声を上げる、金村の姿を発見する。探索者は【正気度 1/1D6】を行うこと。
 そして【医学】か【生物学】に成功すると、この金村の症状はインフルエンザだと分かる。鹿島はVIONのYouTubeアカウントやサーバー等を牛耳った為、薄々勘付き、調査を始めた彼をえまーじぇんしーを使って殺害しようとしたのだ。


『探索』
 救急車を呼ぶなりの処置を施した後、社長室を見てみるのなら、手掛かりになる物は複数ある。まず、パソコンには『坂見(異邦人P)』からの業務メールがあり、破損した添付ファイルが開かれたままである事が分かる。探索者は樽菱の件を鑑み、何かを見た事で金村は死んだのではと考えられる。
 また、社長室内のファイルを【図書館】で見るのなら、プロデュースしているVチューバーの経歴書(夢の無い話だが、中の人の経歴書)が発見出来る。様々なアバターの中の人の経歴がズラッとあるが、えまーじぇんしーのみ誰もいない状態である。備考欄には「異邦人Pからの映像提供」とある。

 探索者が社長室の机を調べてみるのなら、金村の手書きで『世田谷区、アズール木場617号室』の文字。ここが、鹿島の隠れ家だ。
 救急車が来ればVIONは閉鎖され、探索者らも感染しないように注射を打たれるだろう。

《世田谷区アズール木場》

 翌日、探索者は河内と共に行動する。世田谷区にある、ごく一般的なマンションだ。探索者は617号室に向かう事になる。
 部屋の名札を見たとしても、抜き取られているようで誰が家主か分からない。管理会社に電話するのならば「鹿島時音さん」の名が判明する。

 部屋の外で聞き耳を立てたとしても、不気味なほど静まり返っているとしか分からない。意を決して部屋の中に入れば、ベッドの上で眠る少女の姿を発見。それは探索者らに常川と思わせ、近付けさせる罠であった。
 河内が保護に入ろうとすると、ベッド横のデスクに置いてあるパソコンの電源がひとりでに点灯し、そこに映ったえまーじぇんしーを見た河内が突然倒れ臥す。河内に近付くと、酷い高熱を出し、急激にリンパ腺が腫れている事が分かる。【医学】に成功ならばインフルエンザに罹っていると判断出来るだろう。
 画面の向こうのえまーじぇんしーに、突如発症した河内の姿を見て、【正気度 1/1D10】を行う。

 えまーじぇんしーは「エマージェンシー! 記録的パンデミックにご注意くださーい!」と言った後、あの可愛らしいアバターが身体から黒く染まり、その黒い箇所に無数の目がパチリパチリと開き出す。冒涜的な目はランダムに選んだ探索者1人を睨み、えまーじぇんしーの【POW】と探索者の【CON】とで対抗ロールを行い、失敗の場合はインフルエンザを罹患し、【1D6】のダメージと【正気度 1/1D6】を行い、スタンとなる。
 えまーじぇんしーもとい、ハスターリクは次の標的を定めようとした所で、探索者が【DEX×4】に成功するとパソコンのケーブルを引き抜き、電源を強制的に切る事が可能だ。武器技能での破壊も可能だが、その場合は後に提示する情報が見れなくなるだろう。


『鹿島の部屋』
 マンションは1LDKの、なかなか良い部屋だ。部屋は生活用品の他、圧倒的にIT関連の書籍やパソコンが占めている。探索者が来る事は読まれていたのか、鹿島に関する物はこの場に無いだろう。ただ、化粧品や女性用の下着と言った物からして、女性だとは判明出来る。
 一旦切ったパソコンを起動すれば、えまーじぇんしーはいなくなり、一般的なデスクトップ画面に移る。そこから、以下の情報が手に入る。


『人格変換装置について』
 この装置は、身体能力の向上と本能的な脳内の情報処理能力を弄る事は可能だが、頭脳における知的能力向上の試みは失敗した。つまり、強い戦士を作る事は可能であるが、頭脳的な天才を作る事は不可能と言う事だ。守護兵を率いられるものの、頭脳労働者を作るのは期待出来そうにない。あの『データ・モリアーティ』でさえも偶然の産物であり、再現不可だ。

 目下、プログラマーやハッカーは性格のみを弄った上で、既存の能力を使わす事になる。当てはこのdanceもとい常川舞だ。あの子に似ている、少女だ。


『project・emergency』
 あの石像の存在、『ゾス・オムモグ』が遣わしたこの生物を使用し、全てを崩壊させてやる。常川舞が数週間かけて作ったプログラムを人格変換装置に移植。これを機械そのものに流し込めば全てが終わる。
 計画につき、警官数人を護衛兵として率いる。しかし、えまーじぇんしーには、子供は対象外と伝えたのだが、従うのだろうか。得体の知れない生物だ、最悪の場合に備え『La Peste(ラ・ペステ)』を極秘裏に持っておく。


 また【コンピュータ】に成功で、もう一つの日記をデータから引き出す事が出来る。


 思えば『メアリ』の連中は、社会の崩壊を目指していた割に単発的で愉快犯的な爆破テロしかしていない。広域かつ同時多発、そして確実な方法を模索しようとしなかった。私には合わなかった。


 鹿島は必要な物を持って自分の車であるワゴンに乗り、計画の完遂を画策している。


『少女の証言』
 少女は鹿島に眠らされ、連れ去られた一般人だ。彼女を気絶から起こして事情を伺うと、「知らない男を見た」と言う。他に伺うのならば、気絶する直前に「ナイトータチューに感謝だな」と言った声を聞いたと証言する。
【知識】か【人類学】に成功で、ナイトータチューとは『内藤多仲(ないとう たちゅう)』の事だと分かる。彼は戦後に活躍した設計士であり、今の耐震構造建築の礎を築いた『架構建築耐震構造論』で有名な人物だと分かる。更にはあの、「東京タワー」の設計士でもある。

 鹿島は、東京スカイツリーによって主力な電波塔としての役目を終えた東京タワーを再度使用し、電波ジャックを行おうとしているのだ。

《明らかにする》

 翌日、インフルエンザを患った河内は探索者に手を貸す事は出来ない。また、他に患った探索者がいれば、このイベントに参加は出来ない。
 探索者は東京タワー近辺や、都内の飛び回るだろうが、鹿島らは見つからないだろう。今回は何を調査すれば良いのかではなく、誰に会えるかとなる。この調査パートは、4日かけて行われる。


『金村焔の抵抗』
 インフルエンザが重篤化し、隔離の上面会拒絶状態ではある。しかし彼のいる病院に来たのなら、金村搬送時に探索者と面識を得た医師から、本人からの伝言を伝えられる。
「アレは、社内にいると言っていました」

 えまーじぇんしーは、VIONのサーバー内でその時を待っているのだ。


『9年目の懺悔』
 一度面会した探索者なら、弁護士に連絡の上で再び面会が可能だろう。面会時、相田郁の両親の話、鹿島愛花は首謀者ではない見解、金村までもインフルエンザで危篤状態にまで陥った事を伝えてやれば、彼は観念して「相田の家族や、その他の人々に言わない事」を約束させ、真相を話す。

「……当時のイジメの真の首謀者は、僕です。両親は勉強成績進路とうるさく、そのストレスを相田郁にぶつけていた。他に10人も彼女をイジメていて、その中にインフルエンザで死んだ2人、前田理沙、金村もいた……でも自殺して、親にバレるのが怖かった僕らはクラスメイトを全員巻き込んで、その相田郁の親友だった鹿島愛花を首謀者に仕立て上げたんだ。

 その子も自殺した時、僕は不眠症に陥るくらい後悔したが、それによって沈静化して、安心もした。でも強い罪悪感があって、それを消したいばかりに勉学に励んで、ここまで来たんだ。しかし今回の件で僕は、思い知ったよ……相田と鹿島の怨念でも現れたと思ったほどに。偶然と思えるだろうか? 計画の賛同者が、3人も短期間で死んだのだから……」

 更に橘は、「相田か鹿島の家族の、復讐だろうか」と考える。鹿島の家族関係について聞くと、彼は思い出したように呟くだろう。
「そう言えば……鹿島は良く、相田に姉の自慢をしていたような……私より数倍賢くて、パソコンの上手い姉が……」


『遺族方の追慕』
 相田郁の両親に、橘から聞いた鹿島愛花の姉について聞くと、「愛花ちゃんは良くその人の話をしていた。9年前の日本としては珍しい、システムエンジニアだった……当時はあまりネットに疎いからわからなかったけど、ハッキングが得意って言っていた」と話してくれる。
 両親に橘から聞いた真相を話すべきではないだろう。話してしまった場合、【心理学】で復讐の念が現れていると確認でき、【説得】に成功しなければバッドエンディング『9年目故に』が起こってしまう。


『怒髪天の一撃』
 ここは、「モリアーティ教授の夢」をプレイかつ、「鞍骨佐」が生きている場合に起こるイベントだ。探索者は人格変換装置が一枚噛んでいる事実から、勾留中の彼と面会が可能である。

「人格変換装置だが、アレはデータの挿入装置でもある。使い用によっては、電子機器へのデータ挿入も可能なんだ。当時行おうとは思わなかったが、今ならば仮説が立てられる。装置に人格をプログラミングしたのならば……電子回路に人格を与える事が出来る。
 しかしそれでも、明確な意思と生命が無ければ成り立たない。人格は結局、プログラムだ。それからの展開は、高次元的な脳がなければ不可能なんだ」

 彼は自分の撒いた種とは言え怒りに燃え、探索者に『人格変換解除装置』の場所をこっそりと教える。監視官に気付かれない教え方は、唇を動かすだけの物である為、【目星-10】のロールに成功したならば「葛飾の貸しガレージ6」と告げている事に気が付けるだろう。
 葛飾の貸しガレージ場に行くと、鞍骨の私物を譲り受けたと言う、彼の助手だった男性がおり、彼に事情を話すと「この機械かな。先生は、これを持っていて欲しいと言っていましたが」と、人格変換解除装置を探索者に譲ってくれる。
 この装置があれば、鹿島の作った人格統制者を簡単に正気に戻す事が出来る。

《Vチューバーデビュー》

 探索者は金村の話から、再びVION本社へ赴く事となる。倒れた金村の事もあり、中は騒然としているが、【言いくるめ】や【信用】で中に通して貰える事が可能だ。或いは【変装】で社員になりきっても良いし、【幸運】でバレずに済むかもしれない。
 事務室が大忙しの割に、奥の収録室は閑散としている。収録室には大画面のディスプレイがあり、その前にはモーションキャプチャーと、VR用のヘッドギアが置かれている。ヘッドギアを被り、モーションキャプチャーで動きをデータ化して、画面上のアバターを動かす仕組みだ。

 探索者がある一室に入ると、突然消灯し、ディスプレイが勝手に点く。画面には、「こっちにおいで」と文字が並んでいる。つまり、ヘッドギアを被ってモーションキャプチャーの前に立ち、VR空間上で何かを起こすつもりなのだろう。
 探索者1人のみがそれを行う事。ヘッドギアを被ると、その向こうに「えまーじぇんしー」が登場する。他の探索者には、ディスプレイ上でアバター1体がえまーじぇんしーと向かい合わせに座っている光景が見る事が出来る。しかし声はヘッドギアに付属するスピーカーから流れる為、他の探索者には聞こえない。探索者らは驚きから、【正気度 1/1D6】を行うこと。

「良い天気だね、人間。私が手を貸している人間は、あなたたちを凄く警戒していたよ。
 私が何をしたいか、教えてあげるよ! 私の名前は、えまーじぇんしーじゃなくて、『ハスターリク』。ただのウィルスに、人格が宿ったのが私。
 私は繁殖し、増殖するだけ。その結果が、今の東京のインフルエンザ大流行だよね。アレ、樽菱久に感染したのが起爆剤だったんだ。凄い感染力でしょ?

 私は、このえまーじぇんしーとして他人のパソコンに入り込んで、ディスプレイ越しにウィルスを散布出来るの。でも、私を生で見なきゃ駄目、ただの動画や、ライヴ転載動画じゃ無理。だから私は、日本規模の大大大ライヴを開催するの。皆がテレビを見るゴールデンタイムの時間帯とネット放送をジャックするの。そうすれば、ネット外の人間にも私が増殖出来る!
 でも、あの人間は全国規模のインフルエンザ流行かつ、子どもに手を出さないように言う。つまらないよね、私は最強なの。あの子が思っている以上の事をしてやるわ」


 すると、えまーじぇんしーの身体がどんどん黒ずんで行く。探索者らを感染させる気なのだ。【アイディア】に成功でいち早く気付いた、VR中の探索者以外の者はディスプレイを壊したり、ヘッドギアを無理矢理取ったりして感染を回避出来る。黒ずんだえまーじぇんしーに浮き出た数多の目を見てしまった探索者らは、【CON×4】に失敗した場合にインフルエンザにかかってしまう。以降、行動は可能だが、全ての技能にマイナス補正が入ってしまう。

 そして去り際のえまーじぇんしーは、「1週間後、せいぜい抵抗しなさいな」とだけ呟く。
 何故、彼女が探索者らに情報を漏らしているかは、鹿島の待つ消去プログラム『La Peste』を危惧しており、探索者らに邪魔をさせる事でプログラムを打ち込まれる危険性を解除しようと考えているからだ。ハスターリクは感染した人間に寄生して身体を乗っ取る事が出来、探索者らが鹿島に集中している隙にハスターリクはハスターリクで計画を進めようと画策しているのだ。

《東京タワーにて》

 東京スカイツリーが主力な電波塔となった後、東京タワーは一部のラジオ放送と、スカイツリー沈黙時の予備として、電波塔としては現在も現役である。イルミネーションや商店施設、四季折々のイベントや大展望台など、東京の代表観光名所としての立ち位置は今も不動だ。
 探索者は1週間後の土曜日、東京タワーに鹿島らが来ると予見し、待ち構えるだろう。インフルエンザの流行も沈静化し、賑わいを見せていた。
 鹿島らはゴールデンタイム(19時〜22時)を狙う為、日中は現れない。深夜までの間、探索者は東京タワー内で以下のイベントが行える。


『インフォメーション』
 東京タワー内のインフォメーションにて、何処に電波送信設備があるのかなどを聞ける。電波送信設備は150mにある大展望台(メインデッキ)の、関係者以外立ち入り禁止の階段を下った先にあるとの事だ。


『河内より』
 今も入院中の河内より、電話がかかる。アドバイスではなく探索者が何をしているか、敵の目的は何かを根掘り葉掘り聞きに来る(根を掘るは分かるが、葉堀りってのは何だ)。
 探索者は河内に全てを説明しても良いし、彼を労わり敢えて告げなくても良い。しかしここで説明した場合、後の展開に大きな助けを与えてくれる。後のイベントでは、探索者が敵に追われながらメインデッキへの階段を登るムーブメントがあるが、そこで河内は早々に警視庁の知人を説得してヘリで助けに来てくれる。
 説明せずとも彼は東京タワーの異変を察知し、ヘリを出して貰うが、階段を駆け上がるイベントには間に合わない。


『フットタウン』
 東京タワー直下にある商店施設で地下1階を含めた全6階。様々な店が構えてある。探索者が時間を潰す目的で、フットタウンをぶらついているのならば、【アイディア】に成功で誰かの強い視線を感じる事が出来る。
 そして【目星】に成功すると、女性と手を繋いで歩く少女の姿を見れる。鹿島は常川を愛花にして、つかの間の観光を楽しんでいたのだ。少女を見た探索者が常川を知っているのならば、顔は良く見えなかったが全体的な雰囲気が常川と酷似していると気付けるだろう。
 探索者がその相手を捕まえようもしても、人混みに消えてしまう。


『ライヴタイム』
 えまーじぇんしーチャンネルを覗くと、今日のライヴは20時に行うとの事だ。この時間の前後に鹿島らは動くだろうと探索者は読める。


『メインデッキ』
 大人900円の入場料を払えば入れる、150mにある展望台だ。エレベーターから行けるが、物好きはフットタウン屋上より休日限定で解放されている600段もある階段から行く人もいる。ここには展望カフェもあり、貸し出しされる望遠鏡を使ったり、ゆったり東京の街を見下ろせる。更に上にあるトップデッキは事前予約のツアーでしか入らない為、普通に来るならばここが主な展望台となる。ここから見下ろしても鹿島を見つけられる訳はない。

「モリアーティ教授の夢」をプレイし、廣末を元に戻せた場合、このイベントが起こる。
 展望台から東京を見下ろしていると、隣に人が来て、嗄れた声でこう告げる。「見下ろす視点は変わらないが、街は生き物の進化のように変わる。変わり続けるからこそ、街は街として続く。それは移り行く、時代と言う変遷の証明だ。
 探索者、面白い事を教えてやるぞ。奴らの数は10人、今ここにいる従業員も含まれる。そして、仮面を剥いだとしても真実とは限らないと忠告してやる。犯人は、潜んでいる」
 ハッと探索者が声の主を見ると、そこには東京を眺める若い夫婦、廣末潔だった。残留思念程度となったモリアーティが少しだけ権限し、敵の数と、ペストマスクは鹿島が用意したフェイクだと伝えたのだ。

《ゴールデンタイムラバー》

 時刻は夜に差しかかり、19時半となる。ニュース、特番、バラエティ、ドラマ、映画、アニメとテレビ番組は大賑わいの時間帯だ。東京タワーはライトアップされ、綺麗な朱色を乱反射させている。遠くに見える東京スカイツリーも同様で、赤と青の双極の光が東京を照らしているのだ。

 探索者は東京タワーの三箇所で待機出来る。『フットタウン内』『メインデッキ内』『芝公園』だ。待機場所によって、起こるイベントは変わるが、時系列は「芝公園→フットタウン→メインデッキ」で行うこと。ただ、メインデッキでのイベントは《dance emergency》まで後回しとなり、ここでは主に芝公園とフットタウン待機の探索者のイベントとなる。


『夜桜・オン・メアリ』
 探索者が芝公園で待機している。この時期の芝公園は夜桜が綺麗で、時間帯に関わらず人が大勢詰め掛けている。待機中、東京タワー方面へ向かう怪しいバンを発見出来る。そこへ向かおうとした瞬間、芝公園のあちこちで爆発が発生。騒然とする公園内で、パニック状態の群衆が押し合いへし合いで逃げ惑う中で、【アイディア】か【武道】に成功した時、群衆に混じりナイフで探索者を刺そうとする者に勘付ける。【回避】に成功しなければ、【1D6】のダメージを負う。探索者は驚きから、【正気度 0/1D4】を行う。

 夜桜散る中で、探索者らの前に現れたのは、鹿島が人格変換を施した人間3人だ。彼らには、鹿島が要注意人物として指定している探索者を殺害するようにされている。もし、鹿島に勘付かれるような行動を取っていない探索者がいる場合は、対象から除かれる。


『人格統制暗殺者』
    A  B   C
STR  14  12  13
CON  11  14  14
SIZ   12  12  12
POW  14  10  10
DEX  13  16  11
耐久力 14  13  13
回避  45  45  45
db  +1D4  0 +1D4
武器:ナイフ、76% ダメージ・1D6+db
こぶし、80% ダメージ・1D3+db


 5ラウンド以内に戦闘に勝つ、或いは誰か1人でも逃走に成功した場合、探索者はメインデッキ行きのエレベーターに乗ろうとするペストマスクの人物に齧りつける。

 しかし待機していたボディーガードの人格を形成された男女によって引き剥がされてしまうが、触感としての【聞き耳】に成功した場合、ペストマスクの身体は男性の物だと気付ける。本物の黒幕、鹿島時音は既にメインデッキに潜んでいる。


『人格統制ボディーガード』
    男  女
STR  16  12
CON  14  12
SIZ   14  13
POW  14  10
DEX  10  16
耐久力 16  13
回避  55  40
db  +1D4 +1D4
武器:こぶし、80% ダメージ・1D3+db
キック、70% ダメージ・1D6+db
組み付き、50% ダメージ・特殊
技能:マーシャルアーツ、40% 武道(柔道)、55%


 ペストマスクはエレベーターで登ってしまう。このボディーガードらとは、3ラウンド耐えきったのなら、フットタウン待機の探索者が合流に来てくれる。
 また、ペストマスクに間に合わなくても、乗り捨てられたバンの中を見る事が出来る。中はパソコンやサーバーと、IT環境が整えられており、【目星】に成功で忘れられた拳銃が手に入れられる。拳銃の種類は『SIGザウエルP220』だ。弾数は【1D6+2発】手に入る。


『ガンズ・オブ・スパム』
 フットタウン内に銃を持ったテロリストを引き連れ、ペストマスクが登場する。テロリストとなった警官5人が、フットタウン内の人々を無差別に射撃している。この光景を見て探索者は、【正気度 1/1D8】を行うこと。しかし【アイディア】に成功すると、子どもや子連れの家族は見逃している事に気が付けるだろう。もし探索者の中に16歳以下の者がいる場合は、テロリストの攻撃対象から外れるだろう。


『人格統制テロリスト』
    A  B   C   D   E
STR  13  13  14   10  12
CON  13  10  13   12  16
SIZ   14  12  12   14  12
POW  12  11  14   10  15
DEX  10  14  12   10  16
耐久力 13  15  13   14  16
回避  45  40  40   40  50
db  +1D4  0 +1D4   0  0
武器:拳銃、60% ダメージ・1D10
キック、70% ダメージ・1D6+db
組み付き、45% ダメージ・特殊


 この集団は銃を所持しており、尚且つ人数も多い。探索者は【隠れる】と【忍び歩き】、【ナビゲート】や【幸運】を駆使して隠密に突破しなければならない。見つかったとしても、フットタウン内は遮蔽物が多い為、【回避】や【隠れる】にプラス補正を付けてロールさせても構わない。
 4ラウンド耐え忍べば、彼らが巡回するエリアを抜けて、エレベーター前の探索者らと合流可能だ。だがエレベーターはペストマスクを上に乗せた瞬間に機能停止し、探索者らは屋上の階段からメインデッキへ向かう事となる。


『龍・驤・破破破』
 探索者はフットタウン屋上の階段から、メインデッキを目指す。しかし登っている間に探索者らに気付いた『人格統制テロリスト』が攻撃を仕掛けてくるだろうし、倒し損ねたのならば『人格統制ボディーガード』や『人格統制暗殺者』も追跡して来る。
 探索者はテロリストらの銃弾を掻い潜り、迫るボディーガードや暗殺者を相手取りながら突き進まなければならない。

 探索者らは1ラウンド毎にボディーガードと暗殺者との【DEX対抗ロール】を行う。対抗ロールに競り負ければ、対象の敵が探索者に追い付き、攻撃を仕掛けて来るだろう。また、テロリストからは2ラウンドに1度一斉射撃が行われ、射撃ロールに成功したテロリストは探索者に鉛玉を浴びせられるだろう。銃弾1発成功につき、ダイスで選ばれた探索者は【回避】か【隠れる】で弾をかわせる。失敗の場合は【1D6】のダメージを負う。

 これらを繰り返して6ラウンドを越えれば、メインデッキに到着。扉の鍵を閉じ、敵を遮断出来る。
 この時、前のイベントで河内に説明をした場合、3ラウンドで状況の危機を感じた彼が警視庁のヘリに乗って助けに来る。ヘリのライトに敵が怯んでいる隙に、探索者はメインデッキへ急行出来るだろう。

《dance emergency》

 メインデッキに探索者がいる頃、展望台の窓や床にプロジェクションマッピングが施され、東京の夜景に宇宙が広がる幻想的な空間となっていた。所謂、拡張現実と言う物だ。
 探索者が待っている間は芝公園やフットタウンの異変の情報は届いておらず、至って穏やかなムードのままイベントは遂行されている。

 探索者がプロジェクションマッピングに映し出された、擬似宇宙を眺めていると、女性が1人探索者に話しかけて来る。この女性こそが、鹿島時音だ。
 鹿島は探索者に近付き、「あの、(探索者の名前)さん、ですよね? え、えっと、あそこの女の子に呼んで来て欲しいって頼まれて……」とオドオドと話す。彼女の指差す先には、ぼんやり東京の夜景を眺める常川が立っていた。鹿島は近づいた探索者を、常川近くで待機する人格統制を行った従業員に奇襲させようと画策している。
 探索者が常川に近付いた際、近くに立っていた従業員が隠し持っていたナイフを探索者に突き立てようと襲いかかる。奇襲の為、回避不能で【1D8】を食らう事となるが、その前に【アイディア】に成功する事で、【回避+10】で避けられるチャンスが与えられる。驚きから、【正気度 1/1D4】を行うこと。
 奇襲後は他の客らが取り押さえる。

 さて、この時に探索者が導入を『VIONファン故に』で初めていた場合、金村と握手をしていた女性ではないかと気付く事が出来る。或いはモリアーティから忠告を受けた探索者ならば不審に思える。彼女に問うと「VIONの社員」と嘘を吐くが、【心理学】で看破出来る。これ以上は無理だと判断した鹿島は探索者から逃げようとするが、追うと奇襲を待っていた従業員が探索者に立ちはだかる。


『人格統制従業員』
STR.13 CON.12 SIZ.12
POW.14 DEX.16
耐久力:12
db:+1D4
武器:ナイフ、67% ダメージ・1D6+db
こぶし、80% ダメージ・1D3+db


 この従業員は、1ラウンドを越えれば勇敢な他の客らが取り押さえられる。


『出張えまーじぇんしー』
 事態が沈静化した後、立ったままの常川(中身は愛花の人格だが)に近付くと、「お姉ちゃんは、あんな事をしない。お姉ちゃんを止めて」と告げてから、気絶する。
 瞬間、プロジェクションマッピングの映像に不具合が発生。映像が全てえまーじぇんしーに移り変わり、その場にいる者全てを重篤化インフルエンザに感染させる。探索者も例外ではなく、【幸運】か【CON×4】に成功しなければ感染し、全ての技能値にマイナス補正が入ってしまうだろう。探索者は【正気度 1/1D8】を行うこと。

 感染を免れた場合、映像を投影するプロジェクターを破壊する事でえまーじぇんしーの毒牙から逃れられる。そのタイミングでエレベーターから、ペストマスクがやって来る。ペストマスクは加工された声で「標高はたった150mだ。だが、ここが一番天国に近い。私の『生命の避難所(バイタルヘイヴン)』はこのメインデッキで完成する。身体なき者に、超越せし肉体を」と宣言。電波送信設備の方へ赴くだろう。
 探索者は【DEX×4】か【追跡】でペストマスクを捕まえられ、その仮面を剥がす事が出来る。失敗の場合でも、戦闘に持ち込められる。


『ペストマスク(偽物)』
STR.12 CON.14 SIZ.12
DEX.15 POW.10
db:0
耐久力:10
回避:40
武器:護身棒、70% ダメージ・1D8
キック:75% ダメージ・1D6


 だがマスクの下はサラリーマン風の冴えない男であり、身体を探ってもパソコン所かスマートフォンさえ無い。人格変換装置も同様だ。その背後で、気絶する常川を人質に取った鹿島時音がとうとう正体を表す。


『鹿島時音』
 常川の首元にナイフを突き付け、勝ち誇った表情で立つ鹿島が目に入る。彼女は探索者らに「初めまして、私が鹿島時音です」とやけに丁寧な口調で話しかけるだろう。
「私の目的は社会への反逆、メディアの撹乱、そして実験よ。そのマスクの男はただのフェイクでした。
 私の事を調べていたのなら分かるでしょ、9年前の事件と愛花の事を。愛花はメディアの餌にされ、社会のオモチャにされた……殺されたも同然よ。あの晩、罪から逃れた橘に、人格変換を施して殺人鬼にしてやりました。何も知らない罪をかけられる苦しみを、知ったでしょうね。

 では、あなたたちに紹介します。私、鹿島時音もとい、ゼロワンゼロもとい、JAMSもとい、異邦人Pプレゼンツ、えまーじぇんしーダンスを全国生配信しますわ」


 彼女の取り出したスマートフォンには、えまーじぇんしーが佇んでいた。感染を警戒し、身構えるであろう探索者の前で突然、鹿島が苦しみ出し、倒れてしまう。彼女もまた、インフルエンザに感染したようだ。狼狽える鹿島の側で、同じく重篤化したインフルエンザで苦しんでいた一般人らが立ち上がり、不気味な笑みを浮かべ始めた。
 感染させた一般人らに、ハスターリクが寄生して操っているのだ。探索者らは【正気度 1/1D8】を行うこと。
 ハスターリクに寄生された一般人らは一斉に「君らが彼女を妨害する意思を見せなければ、ここでプロジェクションマッピングをハッキングして私を出すだなんてしなかったろうね。良くやってくれた、後は我々がやるよ」と告げる。一般人の内1人が鹿島の懐から『La Peste』が入った改造スマホを取り出して破壊し、データーインポート用のえまーじぇんしー転移装置を取り出した。

 探索者は止めようとするだろうが、他の感染者を操って妨害する。邪魔者はいないと見たハスターリクは意気揚々と、電波送信設備の方へと向かう。
 そのタイミングで、階段を登りきった探索者らが合流する。

《三丁目の東雲》

 探索者は押し寄せるハスターリクの分身を退けて、電波送信設備へ行かねばならない。しかし分身体は単純な行動しか出来ない為、本体が離れた後は動きが遅鈍となり、突破出来る。突破した時、気絶していた常川が起きて探索者へ「バックアップは必要でしょ」と言って、La Pesteが入った別の改造スマホを2つ取り出すだろう。

 La Pesteの説明として、「これは、えまーじぇんしーが電波化している時に効果を発揮するプログラム。つまり、奴が準備中の隙にこれを送り込めば、転送前に殺せるわ……ただし、アレの近くにいてね……或いは電波体になったのなら、このスマホの拡張パーツをぶつければ良いかも。んじゃ、よろ」とだけ告げて再び気絶する。やり方は普通のメール送信と同じ要領でLa Pesteを送れるのだが、ある程度ハスターリクとの距離が必要だ。


『ペスト』
 La Pesteを得た探索者は、電波送信設備の方へ急行するだろう。しかし再び、ハスターリクの分身が探索者の前に立ちはだかる。


『ハスターリクの分身』
    A  B   C   E   D
STR  10  11  14   12  14
CON  10  12  16  15   11
SIZ   13  12  10  14  10
POW  11  12  16  10   12
DEX  12  14  13  11   16
耐久力 12  13  14  15   12
回避  30  50  45  30  50
db   0  0   0  +1D4  0
武器:拳銃、こぶし、85% ダメージ・1D3+db
キック、80% ダメージ・1D6+db
噛み付き、55% ダメージ・1D4+db(CON×4に成功しなければインフルエンザとなり、全ての技能値に-5補正)


 相手取るには時間がかかる。ここは数人の探索者が立ちはだかり、食い止めるべきだろう。電波送信設備に着くと、ハスターリク本体が操っていた一般人は倒れており、送信機が起動している事に気が付ける。ハスターリクは既に電波体となり、準備態勢に入っているようだ。

 電波体となったハスターリクは上へ上へと登って行く。探索者はトップデッキに向かわねばならない。エレベーターが沈黙状態の為、河内の連れて来たヘリに乗らなければならない。途中のイベントで何もしていない場合、ここで初めて河内がやって来る。
 作業員用の出入り口から、危険だが外に出る事が出来る。そのまま333m目掛け、ヘリが上昇する。


『マウンテントップ・チェイス』
 アンテナの配線を駆け巡る、青白い光が見えるだろう。ハスターリクの電波体が可視化出来るのだ。発光体は上へ上へと登り、アンテナから放たれようとしている。

 ヘリは発光体に近寄ろうとするが、複雑に入り組んだ骨組みが特徴の東京タワーだ、かなり難しいだろう。そこで探索者は、ヘリ内で3分間【コンピュータ】或いは【INT×3】のロールを行わなければならない。1回成功する毎に上手いタイミングでLa Pesteが送り込め、失敗の場合はハスターリクとの距離を図り切れず、送信失敗となる。成功した回数によって、エンディングが変わる。
 成功達成回数は7回だ。3分間中なら1人ずつ交代で何度でもロール可能だが、ファンブルが出た場合は10秒のタイムロス。クリティカルの場合は、1度に2回分の成功となる。


 或いは、ヘリが近付いた瞬間、【跳躍】で飛び移り、直接発光体に機械をぶつける方法だ。ヘリの距離を【1D10】で決めて、1〜3の間は補正無し、4〜6の間は跳躍に+5補正、7〜9の間は+10、10の場合は×2の補正が付けられる。
 リスクは高いが成功すれば、1発で成功出来る。ただし失敗の場合は再び【幸運】に成功して、何とか骨組みにしがみつかなければならない。しがみついた状態ならば、【登攀】で発光体に近付き、また【跳躍】ロールのチャンスが与えられる。
 もし、先の幸運に失敗の場合は、【1D10】のダメージを負う上、スタン状態となる。

《結末》

『BAD END』
 ハスターリクを止められなかった場合。
 ハスターリクの電波体は送信してしまい、発光するその電波が夜空に広がり消えた。途端、ネットのみならず家々のテレビや、渋谷や新宿の大型ビジョンにえまーじぇんしーが現れる。
「エマージェンシー! エマージェンシー! パンデミックにご注意ください!」
 それを見た人々は、老若男女問わず、激しい苦痛に襲われた。ペスト、エボラ熱、結核、インフルエンザ……そして消えたはずの天然痘。

 それらが日本中に蔓延し、死者は数千や数万じゃ測れない数に登り、感染者は未曾有の拡大を続けた。阿鼻叫喚のお茶の間にて響くのは、えまーじぇんしーの楽しげな笑い声だけだった。
 探索者は【正気度 1D20/1D100】を行うこと。
「パンデミックテレビ」


『GOOD END』
 7回成功の場合。
 お茶の間のテレビが一瞬、ブラックアウトした後、えまーじぇんしーが現れる。しかしそのえまーじぇんしーは無表情で、まるで魂のない人形の姿で人々を見つめていた。そのえまーじぇんしーに、ハスターリクの存在はない。ただ不気味な現象だった。
 探索者は人々を救えた安堵から、【正気度 1D6+2】が手に入る。
「海賊ホウソー」


『BEAUTIFUL END』
 跳躍により直接ぶつけた場合。
 送信中に死んだハスターリクの光は、アンテナから大砲のように放たれ、夜空に雪のように散った。ポリゴンショックのような光は東京の空全域に飛び、歴史に残る電波妨害を醸し出した。しかし、誰もスマートフォンやテレビ、ネットを見ようとしなかった。夜空はまるで黎明を迎えたかのように白く染まり、マリンスノーのような光が降り注ぐ、異様ながら幻想的な光景が広がっていたからだ。

 光は1時間後に消失、電波妨害も回復した。この現象は、世界の学者によって議論が交わされるが、探索者たち以外はこの正体に辿り着けはしないだろう。
 探索者はGOOD ENDの報酬に加え、【正気度 1D10+2】を回復出来る。
「ホワイトハザード」

《エンディング》

『全て終わり』
 GOOD・BEAUTIFUL END後。
 一度メインデッキに戻ると、インフルエンザから回復したが、まだ気絶状態の鹿島時音を、何故か常川が抱き締めている光景に遭遇する。探索者が話しかけると彼女はハッとして、「こいつに埋め込まれた人格がまだ影響している」と一気に離れるが、常川の表情には何処か安堵が含まれていた。
 倒れている鹿島の表情は何処か、穏やかだった。

 その後、人格変換装置は探索者の手によって破壊され、鹿島は河内の連れて来た警察に身柄を確保された。このβ版が実質最後の装置であり、鞍骨の消去装置さえ壊したのならば、人格変換装置はこの世から消えた。
 治療の後に人格変換装置による非倫理的な所業と、かつて爆弾テロ組織メアリに所属していた事実から重い罪に問われるだろう。だが彼女は、常川の事も9年前の事件の真相を一言も喋らなかった。諦めなのかは分からない。もしかしたら、妹となった常川から何かを諭されたいたかもしれない。
 対して常川は、年上の女性探索者に妙に甘えるようになり、家族にも何処か素直になったようだ。彼女の父親は「反抗期が終わった」と嬉し涙を流したそうだ。

 橘は結果、無罪を言い渡され、再びVION社長の座に戻る。世間の目はどうなのか分からないが、彼はまだまだ金村と共にコンテンツを提供して行くつもりだ。今日も個性的で元気一杯のVIONメンバーが、人々を楽しませているだろう。

 鹿島の行った人格変換装置により、知らずの内に加害者となった者、犠牲者、東京タワージャック……大きく傷付いた東京だが、探索者は時代と共に街が変わって行き、いずれ癒されて行くのだろうと夢想するのだろう。


『9年目故に』
 橘が釈放したその数日後、彼は相田郁の遺族に殺害されてしまう。探索者の話を聞き、復讐心に燃えた彼らは、橘を殺害してしまった。そして遺族は警察に捕まる。
 探索者は罪悪感から、【正気度 1D10】を減らしてもらう。

【NPC】

鹿島時音(36)、純粋なる復讐者
STR.10 CON.12 SIZ.13 INT.16
POW.10 DEX.14 APP.12 EDU.19
耐久力:17
db:0
武器:キック、60% ダメージ・1D6
ナイフ、80% ダメージ・1D4+2
技能:言いくるめ、70% 運転、62% 回避、50% 機械修理、55% コンピュータ、100% 信用、77% 心理学、40% 電子工学、90% 変装、85%


橘樹(25)、若き起業家
STR.13 CON.15 SIZ.12 INT.16
POW.12 DEX.10 APP.14 EDU.17
正気度:43 耐久力:14
db:+1d4
武器:こぶし、80% ダメージ・1D3+db
頭突き、71% ダメージ・1D4+db
技能:経理、80% コンピュータ、80% 説得、80% 信用、71% ナビゲート、90% 法律、85% 目星、50%


金村焔(25)、苦労人の専務
STR.10 CON.15 SIZ.12 INT.15
POW.11 DEX.10 APP.10 EDU.17
正気度:50 耐久力:14
db:0
技能:化学、60% 隠す、80% 聞き耳、70% 経理、90% コンピュータ、67% 信用、55% 追跡、86% 法律、70%


常川舞(15)、天才ハッカー
STR.10 CON.12 SIZ.10 INT.18
POW.15 DEX.16 APP.15 EDU.10
正気度:60 耐久力:13
db:+0
武器:こぶし、65% ダメージ・1D3
キック、80% ダメージ・1D6
催涙スプレー、90% ダメージ・特殊
技能:オカルト、70% 聞き耳、58% 回避、50% コンピュータ、100% 電気修理、40% 電子工学、90% アニメ、100%


河内航太(67)、真相を追う学者
STR.10 CON.15 SIZ.14 INT.17
POW.13 DEX.5 APP.13 EDU.22
正気度:65 耐久力:15
db:+0
武器:杖、40% ダメージ・1D6
技能:信用、90% 人類学、80 説得、73 博物学、65 心理学、90% 犯罪学、90% 図書館、65%

《TOPIX》

 消去プログラム『La Peste』と、鹿島が名乗っていた『異邦人』は、どちらも『アルベールカミュ』の小説である。不条理とヒューマニズムについて描かれた作品で、鹿島はその作風に共感し、彼の作品をこよなく愛していた。そんな彼女とハスターリクとの出会いは、ある意味で必然だったのかもしれない。

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 クトゥルフTRPGが大の好き好きであります、どうも、アーガットベア、或いはアガベ監督です。映画みたいなCoCシナリオを書くの好きっ子。オバケと呼ばれたい今日この頃。  ご連絡に関しては、URL辿ってTwitterより。感想貰えると嬉しいです。

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