2024年01月03日更新

血濡娘の牢獄島

  • 難易度:★★★★|
  • 人数:4人~8人|
  • プレイ時間:5~6時間(ボイスセッション)

 青森県、渡島大島の近く、日本海の沖合にある忘れられた島、『鏑島』。その島は戦時中、『鏑大獄舎』と呼ばれる巨大監獄が建てられた絶海の孤島であり、古い地元住民は『牢獄島』と呼んだ。

 その島へ、顔の知らない父親の痕跡を探して欲しいと話す元外交官の老人の依頼を受け、探索者は調査をする事になったが……1人の青年の持つ因縁が引き金となり、忘れられた島の残酷な秘密が明るみになって行く。
 探索者はそれぞれの目的を持って、警官隊の調査に同行する形で島に向かう。

 紅い鮮血の呪いに、淡い情愛が交錯する。おはよう鏑大獄舎。

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血濡娘の牢獄島
ちぬれむすめのろうごくじま

因縁も怨念も、隠して狂恋。

【はじめに】

 アーガットベアです、今作で4作目に入ります。大規模な物を作りたく思い、このシナリオを書かせていただきました。
 今回は4つの導入を用意し、「牢獄島」と呼ばれるある無人島を調査する事に。前半は青森市内、後半は廃墟の牢獄がある島を探索します。
 絶海の孤島をメインとし、様々な立場が動く様は劇場版の「相棒」、また陰険な血の繋がりによる因縁や鍾乳洞の探索は「八つ墓村」よりアイディアを受けた限りです(笑)
 警察や学者の探索チーム、監獄に潜む邪悪たちなど、かなり幅の広い立場のNPCが登場します故に、やはりKPに優しくないシナリオですが、是非ともプレイして貰えましたのなら幸いです。

 長々と失礼しました、今回も何卒。


『推薦技能』
・目星
・聞き耳
・信用
・忍び歩き
・隠れる
・投擲

『推薦職業』
・警察官
・軍人(自衛官)
・学者

【キーパー向け情報】

 青森県沖にある立入禁止の無人島「鏑島(かぶらじま)」は、大正時代より巨大な牢獄の建つ脱出不可能の島であり、『牢獄島』と呼ばれていた。巨大牢獄は「鏑大獄舎」と名付けられ、重犯罪を犯した囚人を本土と隔離する為に造られたのだ。しかし1941年より勃発した太平洋戦争下、鏑大獄舎へは戦争を反対する人間を輸送するようになり、最早当時の日本にとって都合の悪い人間を老若男女問わず一箇所に固め、拷問するような場所と化した。

 そんな時、看守長となった「小諏訪 勝守(こずわ かつもり)」は秘密宗教『藍暴教(あいぼうきょう)』の信者かつ司祭であった。藍暴教は藍の尊(みこと)と呼ばれる神を信仰する宗教だが、その藍の尊とは「アイホート」を示す。戦前に入り込んだアイホート信教が日本に隠れ住み着いたものだ。
 小諏訪は囚人で溢れている鏑大獄舎の看守長となった事を良い事に、同じ藍暴教の信者で看守を構成。誰も口出ししない状況下で、無差別に選んだ囚人を生贄としてアイホートを呼び込もうとする悍ましい儀式を行い始めた。

 アイホートは自身の雛を宿らせる儀式を行わせ、その生贄を小諏訪たちは捧げる見返りとして様々な知識を与えた。雛を宿した囚人は狂気に陥った後、成長したアイホートの雛が身体を食い破る事で壮絶な死を遂げる。
 囚人たちは小諏訪の凶行とアイホートへの恐怖に怯えるも、彼の独裁状態と化した監獄では誰の助けも求める事が出来ずに一人、また一人と生贄に捧げられると言う絶望的な状況に追い込まれたのだ。そもそも吹き溜まりとして造られたこの島へは食料配給の船の船員以外は来ず、有力人物の介入は絶対にありはしない。

 結局、3年で獄内囚人112名が生贄に捧げられ、鏑大獄舎は雛が闊歩する狂気の世界と化した。その大量の雛が一つに固まり、人間の少女の形を取った。所謂、「アイホートの後裔」が発生したのだ。少女は「ハイヴ」と名乗り、囚人を遊びで殺す残虐さから新たな恐怖を生み出した。

 そんな折に1945年に終戦。戦争を反対し、不当に逮捕された者の無罪が言い渡され、牢獄からの出所が許される。しかしそういった者らが全員獄中死と言う小諏訪の苦し紛れな報告に疑問が挙げられ、GHQの指示の下とうとう政府の視察団がやって来る事に。焦った小諏訪はアイホートに助けを懇願するが、生贄を供給出来ない男だと見限ったアイホートはハイヴに、小諏訪らを使った余興を命じさせた。それは小諏訪らに雛が寄生して脳を犯し、人間同士で争わせるものだ。
 小諏訪らに寄生した雛は彼らを狂人へと変え、視察団に襲いかからせる。視察団の半数が殺害され、逃げ帰った者らの要請で警察が武装して上陸。鏑大獄舎にて籠城戦を行った小諏訪らとの戦闘が始まる。10日間の戦闘の末、食料が尽きているハズなのにしつこく粘り続ける小諏訪らに疑問を抱きつつも、とうとう動きが消えた事を見計らい警察が突入した。だが、その獄中の惨状に戦慄する事に。

 小諏訪らは残った囚人全員を殺して食して10日間を生き延びていたのだ。だが食い尽くした後に空腹に耐えられず、仲間内で食う食われるの獣のような戦闘が行われていた。その事実は、当時参加していた警察官に長きに渡る悪夢として精神を蝕んだ。
 この悍ましい「鏑島事件」は戦後復興の妨げとなる混乱を作るとし、秘匿される事になり、事件参加者には緘口令が敷かれた上で1948年に牢獄島は立入を禁じられて無人島となる。
 最初はこの事件の秘匿の為であったが、政府内の官僚が変わる毎に記憶は薄れ、現在は「暗礁が多い為に寄港禁止」と言う事になっている。
 また、事件後に獄舎内の探査がされてはいた。鏑大獄舎は離島である点と、艦隊の補給地点としての利用も視野に入れられていた為に、大量の武器・火薬・弾薬・燃料が存在すると見られていたのだが、発見されず、施設の再利用も成されずに結局放置された。実は武器や燃料などの存在は本当であり、小諏訪が鍾乳洞を元に秘密に作った地下室に全てが隠されている。

 散々楽しんだアイホートは事件のほとぼりが冷めた頃に次なる生贄を求めるべく、藍暴教の信者へテレパシーを送り、無人島となったこの島への集結を命じる。そして本土から人を攫わせ、犠牲者を増やして行ったのだ。
 ハイヴは事件時、門からアイホートの迷宮に隠れていたものの15年後に島へ戻り、信者らに世話されながら、時に信者や生贄を殺して遊んでいる。色素の無い白い肌を血を濡らして浜辺を歩いた様が漁師の目に入り、都市伝説「牢獄島の血まみれ娘」となって現在まで語られる事となった。

 そして現在、信者は世代を入れ替わりを続け、現在も生贄をアイホートへ供給し続けていた。忘れられた島、牢獄島は藍暴教の聖地と化していたのだ。
 そんなある日、島の近くを通りかかった漁師たちが「上陸禁止の島なのに人間がいる」と警察に通報。通報は初めてでは無く何件も報告されており、青森県警はこの忌まわしき島へ調査に乗り出した。

 一方、青森市内ではこの藍暴教に付け狙われている青年がいた。彼の曽祖父は、小諏訪勝守と言う事なのだ。小諏訪は獄舎内で、「白石 凛花(しらいし りんか」と言う女性を、アイホートの信仰に反して愛していたのだ。問題なのは、小諏訪は彼女を守りたい余りにアイホートの雛を死滅させる呪文を編み出し、それを手順を白石に御守りとして渡したのだ。それは世代を渡り、子孫である「永綱 遠時(ながつな えんじ)」に渡される。

【プレイヤー向け情報】

 今回のシナリオは絶海の孤島あるいは、青森市の二つが舞台となる。探索者は様々な思惑を抱えて、二つのルートそれぞれを別の立場から動き回るのだ。
 廃墟だらけの無人島には、思いもよらない邪悪と因縁が待ち受けている。探索者は他のプレイヤーやNPCと団結し、島の秘密を明かす事と、あるいは敵の追跡を逃れなければならない。

【登場人物】

「鏑島同行者」
『汐見 辰雄』しおみ たつお
 青森県警に在籍する捜査五課課長。署内でもかなりのベテランで、定年間近だが何処か老いを感じさせない燻し銀めいた貫禄を持っている。
 鏑島へは以前よりきな臭さを感じており、違法上陸者の調査に県警が乗り出した事で現場指揮を任されたものの、前日に藍暴教の襲撃事件の際に負傷し担当を外されてしまう。
 豪快で不器用で、所謂、昭和的な活力に満ちた性格をしている。勘に優れ、数多の修羅場を越えてきた経験から市内捜査にあたる探索者をバックアップしてくれるだろう。柔道の有段者でもあり、近付く者ならどんな大男でも投げ飛ばす猛者。


『榎田 東児』えのきだ とうじ
 青森県内の大学院講師で、海洋学者。日本有数の無人島である鏑島へ数人の助手らと共に特別な許可の下で、島周辺の海洋生物の生態調査に来た。彼の友人が県内の有力者であり、そのツテで特別許可を得た。
 体力もあり、海洋生物のみならず地理や博物学に堪能であり、鏑島での探索者達のブレインとして動いてくれるだろう。



「青森市内の協力者」
『南 我一郎』みなみ がいちろう
 本歳74になる元外交官の老人。現在は生まれ故郷である青森県むつ市で隠居している。戦時中に生まれたが、父は戦争に反対したとして捕まり、戦後に鏑大獄舎で獄中死した事を知った繋がりがある。
 その後は苦学の末に東京大学に入学、卒業し政界へ。外交官として60年間働き続けた傍ら、突然閉鎖の道を辿った鏑大獄舎の隠された過去が気になっていた。今回、青森県警が鏑島へ違法上陸者調査に乗り出した事を聞きつけ、老いた自分の代わりに知人の探索者へ調査を依頼する。
 彼は幼少期を、前々作のシナリオの舞台である大分県「落堂町」で過ごしており、鋭い六感を持っていた彼はロイガーの存在を無意識に感じ取り続けていた。その為非常に勘が鋭くなっており、シティを探索する探索者へ的確なアドバイスをしてくれる。


『松枝 現』まつえ げん
 青森県警資料課の課長。彼の祖父も警官であり、彼が生まれる前に鏑島事件に出動していた。そしてそこで狂気を目の当たりにし、死ぬまで精神を病んでいる。
 原因である事件については緘口令に従い話して貰えなかったが、母からぽつりと聞いた鏑島の話に強い興味を持っていた。
 鏑島に関係のある親族を持っていると言う共通点からか、南とは知り合い。


『永綱 遠時』ながつな えんじ
 青森市に住む青年。市内の図書館で司書として働いている。元は白石だが、10年前に母が再婚した事で永綱を名乗っている。
 彼の曽祖母「白石凛花」は小諏訪の愛人であり、血筋で言うと小諏訪の曽孫と言う関係だ。白石凛花は戦争反対論者として白石家より勘当され、「滝本」と言う適当な苗字で収監されている。家系図も変えられており、彼女は白石家の遠縁とされている。
 一年前に彼の素性を藍暴教の人間に嗅ぎ回られている。彼らは小諏訪の血筋を探しているのだ。彼は藍暴教に追われる立場となる。
 何故追われているかと言えば、彼の曽祖母には小諏訪が密かに教えた「雛殺しの呪い」が込められたお守りを待っているからだ。



「犠牲者」
『小山 景』おやま けい
 1ヶ月前に拉致された男。アイホートの生贄には捧げられず、ハイヴに他の4人と共に逃がされ、捕まれば殺される「ハイヴの遊び」のターゲットにされる。島を逃げ回り、極限状態の中で何とか生き延びていたが、島に来た警官隊と合流しようとした所で殺害される。


『清水 葉』しみず よう
 探索者が収監される3日前に拉致された男。夜間パトロールのバイト中だった為、制服のままだ。懐中電灯を幾つか持っており、探索者が獄舎を探索する際の光となる。
 序盤でトエルモに連れられ、生贄に捧げられる。


『首藤 信』すどう しん
 榎田の探査チームの一員でリーダーであり、彼の教え子である大学院生。鏑大獄舎の噂を知っており、今回の探査は思っても見なかった機会であったが、探索者と共に獄舎に浸入した際にトエルモに追われ、殺害される。



「藍暴教」
『柳下 信雄』やなぎしも のぶお
 藍暴教の現在の司祭。爛々と光る目が特徴の狂信者。
 元は証券マンとして上場企業に勤めていたが、司祭となってからは鏑島に篭り、ハイヴの世話役と儀式の進行役をしている。ハイヴに両足を捧げているので、車椅子で獄舎を移動している。
 生贄の見返りとしてアイホートから幾つかの呪文を会得しており、動けない代わりに呪文で敵を攻撃する。また人肉食を行う。彼の持つ呪文は「深淵の息」「アイホートとの接触」「生命の察知」「肉体の保護」「被害をそらす」「無欠の投擲」「幽体の剃刀」。


『トエルモ・バードマン』
 藍暴教の現在の副司祭。目を見張る程の大男で、生贄候補が逃げ出さないよう獄舎を巡回している。ハイヴには左目を捧げており、空っぽの眼窩に小型の懐中電灯を埋め込んだりしている。その上で普段は複数の目が規則正しい配列で描かれた、気味の悪いマスクを被っている。
 怪力の持ち主で、成人男性を軽々と持ち上げられる。普段は鏑島にいるが、生贄を確保するに当たって本土に赴く時もある。柳下同様、人肉食を行う。長年人肉食を行なっているからか顎は強靭に、歯は鋭く剥き出され、人間に噛み付き喰い千切る事も可能だ。
 彼はイギリス国籍の元軍人で、アイホートの信奉者。邪教信者だとバレて除隊させられた所、アイホートの御告げで来日し、漁船を盗んで鏑島に来た。
 アイホートの呪文で身体が強化されており、銃弾を受けても物ともしない頑丈な身体を手に入れている。


『ハイヴ』
 鏑島で藍暴教を牛耳る少女。正体はアイホートの雛の集合体が人間の姿を取ったもので、信者たちよりカツラや化粧を施されて人間と見紛ってしまう程。
 血色が失せた死人のように青白い肌と、常にニタニタ笑った表情が狂気を醸し出している。
 通常は鏑島で動物や生贄、信者たちを殺戮したりして遊んでいる。しかし自ら進んで身体の一部を捧げた柳下とトエルモは襲わない。時々生贄を獄舎外に逃がしては追い詰め、殺戮する「遊び」をしている。
 一見すれば人間の少女にしか見えないが、注意深く観察すれば皮膚の表面が微かに蠢いている事に気付ける。

【シナリオ】

 途中からルートが分岐する為、まずキーパーは誰を鏑大獄舎に送るか決めておく。途中、藍暴教に拉致され鏑大獄舎に収監される事になるからだ。この件はプレイヤーにルートを提示せず、サプライズを含めて分岐させる事。事前にPCの情報を把握しておき、技量や気質を考慮した上でも構わない。ただしプロローグ時点で鏑大獄舎ルートの探索者は最大2名のみだ。後にもう数名、参入する。
 プロローグとして鏑大獄舎で目覚める所から始まる。それが済めば「青森市にて」で時間を戻し、シティ調査を経てから、選ばれたPCは拉致され鏑大獄舎内の探索をする。残りのメンバーは調査隊経由で鏑島に入り、鏑大獄舎を探し出す事となる。
 また鏑大獄舎ルートの探索者は、一切の所持品が排除される。獄舎ルートに挑む探索者は、後にある「南導入探索者」と「永綱導入探索者」だ。

《おはよう鏑大獄舎》

『錆びた牢屋の中』
 探索者は鏑大獄舎内から始まる。目を覚ましても真っ暗だ、それは暗闇の中にいるからだと気付いた所で、懐中電灯の光が飛び込む。一切名乗る事はないが、彼が「清水葉」で警官に似た制服を着ているが、警官では無く企業の夜間警備員の制服だと気付ける。
 光に灯された部屋の中を見渡すと、荒廃したコンクリート造りの、錆びた牢屋の中だと分かる。突如としてこのような状況に陥った探索者は【正気度 0/1D4】を行う。

 狼狽える探索者に清水は「落ち着け、声を出すな。寿命を縮めるぞ」と忠告する。彼に対しここが何処かを聞いても分からだろうが、以下に該当する質問なら受け付けてくれる。


・どうしてこうなった。
「深い理由は分からないが、俺らは拉致されたらしいぜ。俺も夜間警備中に後ろからバコン、だ。俺は3日目だが、あんたは昨日運ばれたんだ」


・誰の仕業か。
「イカれた野郎め! とてつもない大男だ。変なマスクを着けた奴。そいつは度々ここに、俺らを監視しに来るんだ」


・他に人はいるのか。
「あんたの前に3人いた……が、この2日で大男にどっか連れて行かれた。一回抵抗したが、大男はビクともしない。あれはもう、車でしか轢き殺せねぇだろってな程のバケモンだ」


・持ち物は。
「腕時計があるんだ。これで日数を数えていた。あとはライターとこの懐中電灯だけ。電池切れを延ばす為に蝋燭を使っていたが、昨日に切らしてしまった。ケータイとか持っていたが、気が付いた時には没収されていたようだ」


・出る方法は。
「そんなのあったらとっくに出ている! ここは窓も無いし、錆びがあるとは言え檻も頑丈だ。とても出られない」


・大男について。
「ありゃ、人間じゃねぇよ……人間の身体をしたバケモンだ。そいつは身体から腐った肉の臭いを散らして、変なマスクを着けて1日に数回ここを見回りに来る。いいか、抵抗なんてするなよ? 飛びかかった奴がいたが、そいつはその大男に首を折られて死んだからな」


 探索者は清水に頼むのなら、懐中電灯を少しだけ貸してもらえる。牢屋内を照らしてみたなら、窓が無く、幾つかの牢屋が存在する、まるで監獄のような場所だと分かる。【考古学】に成功したならば、荒れ具体から見て放置から70年は経過しており、そして人間の管理はされていないと分かる。

 牢の鍵だけは比較的新しく、そして分厚い錠がかけられている。牢屋は古いとは言え強引にこじ開けようとしてもビクともしない程に頑丈で、錠も同様だ。鍵開けならば可能かもしれないが、まずその道具さえ無い事を明示しておこう。

 脱出はどうしても不可能だと思った時、床に這って何かを探している清水に気付ける。話を聞くと彼は懐中電灯で床を照らせと命令する。
 曰く、蝋燭を探しているそうで、「ここだけで6つの蝋燭が見つけられたんだ。使いさしの短い物だが」と説明する。何故、蝋燭が必要かを聞くと彼は粘土を見せる。
 凹んだ、汚れた小さい粘土だが、中心部の凹みに蝋が詰められている事に気付け、それは鍵のような形をしていると分かる。

「これは前にいた探偵の物で、そいつの提案で作った蝋の鍵だ。この粘土を持って、誰かを連れに来た大男に飛びかかるフリで腰にぶら下げてある鍵に押し付けて型を作ったんだよ。その型を蝋燭の蝋で固めて、合鍵を作ろうって寸法だ。そこまでは良かったんだが、探偵が大男に鉈で斬られて殺されたんだよ」
【アイディア】か【人類学】に成功すると、彼が物憂げにある一点へ視線を送っている事が分かる。それを目で追えば、床にベットリと乾いた血が広がっている様を見てしまう。その場所で彼の言った探偵の男は死んだのだ。探索者はショックから【正気度 1/1D4】を行う。
 つまりこの型はその探偵の遺物でもあり、脱出の手立てであるという事だ。

 探索者は【目星】に成功すると、床からそれなりの長さの蝋燭を見つけられる。清水はすぐ、その蝋燭に火を灯して蝋を落とし、鍵を完成させようとする。
 鍵の完成までは【2D6+2分】の時間がかかるが、3分後に大男が現れる。



『マスクの大男』
 蝋による合鍵造りに勤しむ途中、突然清水が蝋燭を吹き消し「隠せ!」と命令する。【聞き耳】に成功すると、鈍い足音が聞こえて来る。
 足音はのっそりのっそり大きくなり、止まったかと思えば扉の軋む開閉音が響き渡る。清水が「ここかよ」と呟いたと同時に、暗い牢屋の中で一筋の人工の明かりが現れる。それは上下に揺れながら闇を裂き、探索者たちのいる牢屋を照らした。その光を放つのは、ブラウンのトレンチコートを纏った大男だ。

 大男の身長は2メートルもあり、強靭な筋肉も相まって重機械のようにも見える。顔には後頭部まで覆ったフルマスクを着けており、右、中央、左の部位に渡って上下に渡るように目が連なっているデザインだ。そして人間として当たり前の位置にある目だけは視界を確保する為の覗き穴として、本物の目がキョロキョロと動いているが、左目からは光が放たれている。
 そんな狂気を孕んだこの存在を見た探索者は【正気度 1/1D4】を行う。

 この大男こそが藍暴教の副司祭であるトエルモであり、怪力かつ元英国海軍故に常人が決して叶う相手では無い。また腰には大きな鉈を携えており、激昂させれば真っ二つに切断されるだろう。
 今の彼は眼球を捧げて空洞になった左眼窩に小型懐中電灯を埋め込んで、行動している。

 清水は鍵を探索者の懐にそっと仕舞い込む。探索者が彼の様子を【心理学】で見ると、覚悟を決めている様子だと気付ける。
 トエルモに連行される者は古い人から順番の為、この流れだと連れて行かれるのは自分だと察したのだ。
 その通りで、トエルモは懐から収容者のリストを取り出すと、「シミズ・ヨウ」と凍えるような低い声で呻き、彼を指差すだろう。
 探索者はこの時【母国語(日本語)】或いは、探索者が外国人ならば【ほかの言語(日本語)】でロールをし、成功したのなら、大男のイントネーションが些か辿々しく思え、彼は日本人では無いのではと気付ける。

 トエルモは鍵を使って解錠し、牢屋内に入ったと同時に清水が懐中電灯を振り上げ突っ込む。しかし抵抗も虚しく腕を払われ懐中電灯を手放し、それでも殴りかかる清水を流して太い右腕だけで首を絞め上げ気絶させる。探索者は武道に心得のある者か、【人類学】に成功すると大男の動きは明らかに計算された対人格闘技の流れだと分かる。
 この時にトエルモに挑んだとしても、全て受け流されてしまう上に回避不能のスタン攻撃を受けてしまう。あまりにしつこく来る場合は鉈で切られ【1D6】の怪我を負うか、最悪ネックツイストを食らってロストさせられる。出口に逃げようとしても捕まってしまい、不可能だ。
 トエルモは気絶させた清水を抱え、再び錠を閉めてから退室する。



『蝋の鍵』
 清水の連行後、彼が落として行った懐中電灯とライターを拾える。ライターで再び蝋燭に火を灯せば鍵造りが続行される。
 ダイスで決めた時間になれば、蝋の鍵が完成する。錠の鍵穴に差し込んで回せば解錠されるが、引き抜く時にポキリと折れ、使えなくなる。
 前述の通りライターと懐中電灯が拾える、コレが無くては電気の通っていない鏑大獄舎を散策する事は不可能だ。
 そしてライターは、最終局面でガソリンに火を放ち、不死身のトエルモを倒す事の出来る重大アイテムなので、必ず探索者に拾わせてどちらかに持たせておこう。
 また牢屋から出た時に【目星】に成功すると、折れた牢屋の鉄棒を手に入れる事が出来る、仮初めながら武器になるだろう。

 鍵の完成時間が7分以内の場合、廊下に出た時にトエルモに襲われる人間を目の当たりにする。場所は延々と続く暗い廊下の一番奥にある突き当たりで、トエルモの左目から放たれる懐中電灯の明かりに照らされて壁際に追い詰められている。清水をまだ抱えている状態なので別の人間だと分かる。
 トエルモは怯えて壁を背に絶望する人間目掛け、鉈を振り下ろして殺害すると、何事も無いように曲がり角へ消えて行く。曲がり角を進んだ後、激しいシャッターの閉まる音が鳴り響く。
 その様を見た探索者は【正気度 1/1D4】を行う。また殺される瞬間に人間は「た、助けてください、(南導入の探索者の名前)さん!」と叫ぶ声が聞ける。

 トエルモが消えた後は死体の確認が可能だ、鍵の完成時間が7分以上の場合は死体確認イベントのみ可能で、確認した時点で【正気度 1/1D4】を行う。
 死体の服装は探険向けのカジュアルな服で、見た感じはかなり若い青年だ。この人物は後にBルートの探索者と行動を共にする「首藤」だ。
 首藤の死体は頭部から心臓に渡って一直線に断切された無惨な死に様ではあるが、足にはナイフが突き刺さっている事に気付ける。トエルモは彼の足にナイフを投げて機動力を奪った後に殺したのだ。抜けば武器として使用可能だ。
 トエルモが歩いて行った進行方向を見ると、シャッターが閉められ、どうしても開けられない。廊下の反対側から探索をするべきだと考えるだろう。
 そこまで行った所で、青森市イベントへ視点が変わる。

《青森市にて》

 時系列として、鏑大獄舎へ清水が拉致される前日、プロローグの探索者がまだ拉致されていない時。つまりは4日前だ(きっちり、4日前である事は伝えておく)。
 こちらのルートの探索者は、青森県に来ていた。警察関係者なら青森県警に異動でも良いし、学者関係なら榎田に会いに来た事でも良い。警察関係者、学者関係者ならば以下の導入が該当される。また、探索者2名に関しては2つの導入を用意している。「とある元外交官の依頼」と「とある図書館司書の相談」に探索者を配置したのなら、残り2つの職業導入は行わなくても構わない。
 その他の探索者については青森旅行か出張か住んでいるか何かの適当な理由を付けて導入を検討して貰いたい。以降、南導入をA、警官導入をB、学者導入をC、永綱導入をDと表現し、関連イベントに印付けておく。また、永綱導入の探索者はプロローグの探索者としておこう。


『とある元外交官の依頼』(A)
 探索者1名は「南我一郎」と言う元外交官の老人に呼ばれ、煌びやかなネオンを放つ夜の青森観光物産館アスパムとベイブリッジを眺められる料亭に来ていた。ここで呼び出される探索者は、鏑大獄舎ルートに選んだPC以外の者にする事。キャラクターが政治関係者か警察関係者は立場的に難しいが、記者や探検家ならば是非この導入にするべきだ。
 南は74の老人であるが腰は曲がっておらず、髭も整えられて静かな口調の老紳士だ。
 夜景を眺めつつ、南に話を切り出される。南の話は鏑島の大まかな説明と、探索者の興味を惹く役目も含んであるので読み上げて貰いたい。

「君は、鏑島と呼ばれる島は知っておるかね? 渡島大島(おしまおおしま)の更に沖合にある島だ。知らないであろう、無理も無い。私もあまり知らない島だからな」

 探索者はここで【心理学】に成功すると、南は何が回想をし、懐かしむような表情である事に気付ける。彼の父は鏑大獄舎で獄中死したので、それを思い出しているのだ。

「その鏑島、暗礁が多いのなんので上陸禁止であるが、何でも上陸者の疑いがあるそうでな。明後日には青森県警が調査する手筈。そこでお願いと言うのは、君に私の個人的に調べた内容を、その調査に同行して確認して貰いたい」
 キチンと謝礼も出すと探索者に願い出る南だが、理由について聞くと鏑島の所以を語ってくれる。

「鏑島は、その昔大正中期には牢獄島と呼ばれていたそうで、実際そこには鏑大獄舎と言う離島の牢獄があったそうだ。何度も改修された程の規模であったが、かの太平洋戦争後にGHQの達しで解体されたそうな。先に述べた通り暗礁が多く、囚人を運ぶにも食料を運ぶにも船と暗礁を避ける技術も必要でコストが悪いと言うのが原因のようだが」

 そして探索者へは調査の理由として、「実は古い資料に、鏑大獄舎は解体されず現存しているともある。更に鏑大獄舎内は離島である為に非常時の防衛設備が整えられており、今も旧日本軍の銃火器や火薬、終戦間際では艦隊の中継地とする計画もあり船の燃料などが大量に眠っているらしいとも。今回の調査では島の中までは行かない予定で、私が信頼する君に特例として調べて貰いたい」と述べる。

 南は「引退した私の頼みだから、完全に個人的なもの。ここを調査しようにも、在任中は多忙だったし、今からでは老い過ぎてしまった。もし旧日本軍の遺物があるとしたら大いなる発見だろう」と、好奇心からだと語るが、【心理学】に成功するとやはり、何か懐かしむような追憶の表情を浮かべている事に気付く。
 探索者が深く聞いたり、【信用】に成功すると自身の過去を語ってくれる。

「私は陸奥湾を隔てた、むつ市で生まれた。私の父は、戦時中にこの島に収監されたらしい。当時の私は乳飲み子で、物心ついた時から父の顔は知らない。写真も一度撮ったそうだが、母曰くその写真は何処かに行ってしまったらしい。戦時中の日本では戦争反対派は徹底的に弾圧され、私の父『南 秀吉(ひできち)』もそうだった。
 父の逮捕後に母と私は陸奥に居づらくなり、遠くの知人を頼って大分の落堂町に住む事になった。終戦後、戦争反対者は釈放される事となった頃、まだ見ぬ父を母と共に待った結果は、父は終戦の1年前に獄中死していたと言う電報のみ。
 遺骨も遺品も無く、遺体の行き場も記録されておらず実質は行方不明も同然。母は鏑大獄舎に談判しようとしたが、何故かすぐに鏑大獄舎は封鎖され、島は立入禁止となった。
 今回の調査はまさに、我が父の面影に触れられる最大の機会なのだ。獄舎に私の父の記憶があるハズなのだ。そして父は何処へ、獄舎で何があったのか。それを私は、死んだ母に代わって知りたい」

 彼は鏑大獄舎には何かがあると、勘だとして確信めいて話すが、探索者と彼に関係があるのなら南の勘は恐ろしい程優れている事を知っているだろう。落堂町のロイガーによって培った第六感は、彼に鋭い洞察力と勘を与えたのだ。

 その後は南と語らいながら料亭の料理に舌鼓を打ち、1日目は終了する。



『警察の準備』(B)
 探索者が警察関係者がいるのなら、こちらの導入に入る。上陸禁止の無人島に上陸者の疑いがあり、その無人島へ2日後に調査隊を送る事になった。その件についての集会が夜に始まったのだ。探索者は助っ人として、或いは管轄の警察官、或いは異動先の青森県警での初仕事として参加する事になる。
 こちらで参加する探索者には、事前集会にて以下の情報が前以て伝えられる。


・無人島の名前は鏑島。かつては本土と隔離された牢獄「鏑大獄舎」が存在し、牢獄島とも呼ばれている。今も地元の高齢者は島の事を牢獄島と呼んでいる。戦時中だけで120名の囚人を収監していた記録もある。


・鏑島は1948年11月14日、終戦の3年後に閉鎖された。原因として暗礁が多く、当時も囚人護送船が難破事故を何度も起こしており、現在でも近海にて漁船の難破が度々起こる。過去に15隻が難破し、内4隻がこの海域で行方不明となっている。行方不明の漁船の名前は「東尋(とうじん)丸」「哀楽丸」「應仁(おうにん)丸」「第八洛陽(らくよう)丸」。


・今回の通報は地元の漁師で、島から離れて50メートル辺りから、一隻の船が巧みに暗礁を避けて島に行く所を見た、或いは焚火の煙が上がっているのを見たと言うものだ。これまでに何度か同様の通報があった。密漁の疑いか、暴力団関係者による死体遺棄等の可能性もある。いずれにしても法規違反だ。


・近隣の港から船が出たと言う記録は無く、認可の記録も無い。よって地元の漁師たちである可能性は極めて低い。


 この情報の中にあった行方不明の難破船は藍暴教の船と接触し、襲われてしまった。その船は現在、鏑島の裏に隠されている。
 また彼らは何処から船を出しているかについては、夜な夜な港に入り、密かに出航寄港をしている。港の管理人の一人が藍暴教の信者で、そう言った違法行為が可能なのだ。


 探索者はこの時、現場責任を任された捜査五課課長の『汐見辰雄』と話す事が出来る。暴力団関係者の可能性があるとして、組織犯罪に関した捜査を行う五課が担当するのだ。
 汐見は前から島に対してきな臭さを感じており、今回の捜査には意欲的だ。話しかけた探索者に対し、資料課に向かうから付いてくるかと聞いて来る。理由を聞くなら「牢獄島には不可解な噂があるそうだ。詳しい奴がいるから話を聞きに行く」と告げる。探索者が付いて行くならば、資料課に行き、課長の『松枝現』と会う事が出来る。松枝は汐見と知り合いで、牢獄島の伝説について話してくれる。

 曰く牢獄島は囚人達の怨念が彷徨っていると、それらしい伝説が聞かされるが、勿論汐見や松枝がそれを信じている訳は無く、「大量殺戮があったらしい」と言う話だ。詳しく話を聞くのなら、以下の情報が聞かされる。


 牢獄島は本土より遠くの孤島にある為に、閉鎖空間であった。本土との繋がりは日に三度の供給船のみで、かつ獄舎の管理は看守に委ねられていた。つまり島の王は当時の看守長である『小諏訪勝守』だった。
 当時は太平洋戦争末期であり、一般的な犯罪者含めて戦争反対者も送られ、当時の政府としては囚人が死のうが生きようがどっちでも良く思われており、囚人一人一人の名簿記載や報告が全く行われなかった。孤島の為、脱獄の危険も無かった。

 島の王となった小諏訪は、囚人たちを恐怖政治の下に置き、奴隷のように扱った噂がある。と言うのは、戦後に鏑大獄舎からの釈放者の話題が全く無かったからであり、小諏訪は他の看守と共に囚人を私刑にして喜び、全員を惨殺したのではと、思われている。
 戦後に小諏訪らがどうなったのかは分からないが、供給で受けた油や火薬、武器を島の何処かに隠しているらしい。囚人の決起と事態の発覚を恐れた故の処置だった。


 汐見らは、これらの話を信じた者があの島に行ったのではと読んでいる。しかし、信憑性の低いこんな話で、暗礁犇く危険な沖合に船を出そうと考える者は一握りだろうとも指摘する。
 更に松枝は「そもそもこの話は、鏑大獄舎のあらましを知っている人間以外は知りようもない噂。地元の古い人間ですら牢獄島の事をあまり知らない。ひょっとすれば、親族か誰かが鏑島と関係のある人物なのかもしれない」と告げる。

 探索者が【信用】に成功すると、松枝に対して「何故、牢獄島の事を調査しているのか」を聞ける。

 松枝は「個人的な思いが強い」とした上で、「私の祖父も戦中から戦後にかけての警官だった。父親が早くに亡くなり、私を身籠っていた母は祖父母の家に住んでいた。祖父は仕事中あるいは夜中に飛び起きては、急に過呼吸を引き起こしていた。近所の人は、昔は勇敢で健康的な人だったと言っていたから、私が生まれる前に何か辛い出来事に遭遇したのだろう。祖父については母も祖母も本人も何が起きたかについて教えてくれなかったが、たまに祖父を慰めていた母と祖母が『鏑島に行かなければこんな事に』と呟いていたんだよ。私は思った、祖父は鏑島で何かを見たのだと。しかし鏑島に関する文献は獄舎完成時の新聞しか存在せず、ここの資料でやっと小諏訪勝守の名前と、名簿記載や報告が全く無かった事が分かったんだ。あの島には何かが隠され、封印されている気がする。だから今回の調査はチャンスでもある」と話してくれる。

 松枝の祖父は戦後に起きた小諏訪らの獄舎籠城事件の鎮圧隊として派遣されたが、人肉食の痕跡がある獄舎内の様子を見てトラウマを抱えてしまったのだ。その後獄舎の事件については戦後復興の妨げになると言う判断で隠匿され、警官隊やその親族への緘口令が敷かれた。

 別れ際、汐見より探索者へ仕事を言い渡される。「あの島に関係のある者の親族を探して欲しい。あんな島に行くのは、あの島に何かしら因縁のある奴だ。無人島と言えどあんな沖合に暴力団が行く訳ない。相当、島に入れ込んでいる者に違いないな。刑事としての勘だが」と説明する。
 考えられる近親者として、松枝のように親族が鏑島に行ったと思われる者、当時の看守や囚人の親族だろう。汐見はこの仕事についての資料を明日に渡すとして、今日は切り2日後に回る。



『鏑島生態調査隊』(C)
 探索者が大学院生、或いは何らかの教授である場合はこちらの導入となる。
 探索者は『榎田東児』に呼ばれ、葛籠大学院(架空の大学院)にある彼の研究室に赴く。榎田は海洋学者であり、最近は陸奥湾や日本海の海洋生物を調査している。彼に呼ばれた理由は、近々特別な許可の下で鏑島近海の調査をする事になり、その同行に誘われたからだ。彼から鏑島の話を聞いたとしても「昔、大きな牢獄があったらしいが、利便性の問題で閉鎖されたそうな。別に鉱床やらの資源のある島とは言えないので産業も栄えず、無人島になっている」と一般的な鏑島の話しか言わないだろう。

 閉鎖され近海すら侵入禁止な鏑島に、近々島へ調査がされると言う事で、それにあやかる形で許可を取り付けたそうだ。彼には県内の有力者の友人がいる為、条件付きとは言え調査隊が組めたのだ。彼は「多分、戦後以来ここを調査するのは初めてではないか」と、2日後を楽しみにしている。
 探索者が鏑島について【オカルト】に成功すると、以下の都市伝説を思い出せる。


・鏑島こと牢獄島は、今も旧日本軍の兵器や燃料が隠されている。当時の看守が敗戦を察知し、戦後に破産する事を恐れ、元手にしようと支給品の火器などを島に隠した。しかし彼が病死した為に発掘されず、今も島に眠っている。


・鏑島の浜辺で、血に塗れた女の子が歩いている。囚人と看守の間に出来た子どもで、看守は隠して育てていたが、看守長に発覚してしまう。妄想の過ぎた看守長であり、自身の評価に関わると思い込んだ故にその子どもを浜辺に連れ込み殺してしまった。その霊が夜な夜な浜辺を歩き、両親を探している。


・鏑島は、今も獄中死した囚人の霊が存在しており、道連れを欲している。近くの海に来た船を捕らえ、あの世に引きずり込んでいる。


 オカルトロールに失敗でも、【知識】か【ナビゲート】、或いは探索者が青森県出身者であれば自動的に「鏑島は様々な都市伝説の飛び交う絶海の孤島で、70年余も立ち入りが禁止されている島だ」と言う事を思い出せる。
 彼曰く、島には上陸せず近海を航行する予定である為、島の調査には参加しない事になっている。しかしこのルートも、事件に巻き込まれる形で島に入る事となる。



『とある図書館司書の相談』(D)
 探索者は図書館司書「永綱遠時」の知人であり、観光のついで彼に会いに青森県へ来た設定だ。この導入の探索者は後半で藍暴教に連れ去られ、鏑大獄舎ルートに行く。この導入を受ける人数は1人〜2名が適切だ。

 永綱は探索者を呼び、アスパム内を巡りながら相談を持ちかける。
「一年前より僕の近辺で、僕の事が誰かに探られているんだ」と話す。曰く、職場の図書館に「永綱遠時と言う男はここで働いているか?」と聞いた男がいた事や、近所の友人に「何処に住んでいるか?」と問いただす女がいた事などを話してくれる。それ以外にも近所の住人や住んでいるマンションの管理会社、通っていた大学にまで捜査の手が及んでいる事を話す。恐ろしいのは、捜索者の姿は若かったり老いていたり、男だったり女だったり、身なりが綺麗だったりホームレスみたいだったりなど、誰も印象が一致していない点だ。つまり不特定多数の人間が、一丸となって彼の事をアレコレ探っている訳だ。

 警察に相談したお陰で市役所やその他の場所での彼の情報流出のブロックして貰い、その上で聞かれた人間へ情報提供の依頼をするなど数人の正体が分かったが、どれも知らない人間であり、何故か警察が特定したすぐ後に行方を眩ましている。市役所、警察内部にも藍暴教の人間がおり、情報が筒抜けなのだ。

 それからは不審者の情報が途絶えたが、最近になってまた出現しだしたとの事。警察が立ち回ってくれているお陰で今は安心だが、こんなのがずっと続くと職場に迷惑がかかると気に病んでいる。
 そこまで話した所で、「明日、何処か遊びに行かないか」と誘う。市内の穴場を紹介するし、行きつけのバーで一杯奢る事を提示する(探索者が未成年ならお洒落なレストランでも良い)。
 この時に【心理学】で成功すると、彼の中に強い不安とストレスがある事を見抜ける。実の所、やや神経質な彼は気分を紛らしたいのだ。

 話が済むと、明日の昼にアスパム前の広場で待ち合わせする約束をしてから、解散する。解散後に【アイディア】に成功すると、人混みの中から数人の鋭い視線が突き刺さっている事に気付ける。誰の目かは分からないが、言い様のない不安に苛まれ【正気度 1/1D3】を行う。

《街を行く》

 2日目に入り、それぞれの導入の目的に沿って行動が開始される。ただし、シティイベントに関しては警察官導入と南の依頼導入からの探索者のみ発生し、学者導入の者は不参加だ。永綱導入の者へは強制的なイベントが発生する。
 警察官イベントは警察官導入のみに発生し、調査イベントは南導入の者に適応される。イベント横にあるアルファベットで、関連する探索者を適用対象としてもらいたい。


『警察官イベント』(B)
「汐見の調査依頼」
 警察官導入を受けた者は汐見に呼ばれ、例の関係者捜索の情報を貰える。彼が提示したのは、「最近、ここに駆け込んで来ているこの青年だ。この青年の身元を確認した際に、偶然分かった事なんだが」と、資料を提示する。


『青森市内在住、永綱遠時』
・青森市立図書館の司書。1ヶ月前より不特定多数の不審者から身元を不正に調べられる被害を被っている。現在は落ち着いたようだが、不審者の数も動機も不明であり、予期せぬ事態を警戒しなければならない。

・永綱と言う苗字は10年前からの物で、旧名は「白石」。

・70年前に戦争反対を支持したとして、「滝本凛花(たきもとりんか)」と言う女性が鏑大獄舎に収監されていた。この女性は白石家の遠縁に当たる。ただ収監後の顛末は分からず、戦後無事釈放されたか獄中死したかは記録に無い。

・祖父の白石重吾(じゅうご)は謎の失踪を遂げている。46の時に仕事に行ったきり、そのまま消えている。行方は現在に至るまで判明していない。重吾の失踪後、白石家は一度宮城県に移り、母の白石冴(さえ)が東京都内に住んだ。東京で一度結婚したが、遠時の出生後に夫が死去。それを機に実家に戻り、数年後に夫の永綱大志(たいし)と再婚。その後は青森市内に住んでいる。


 彼は滝本と永綱に血の繋がりは薄いだろうとした上で、「鏑大獄舎に収監されていた者の親戚が、今この時に謎の集団に探られている。何かあるような気がしてならない」と言う。

 KP向けに説明をすると、逮捕された事で絶縁され、遠縁扱いの末に母親の旧名である滝本を名乗った凛花は、獄舎内で小諏訪と恋に落ちる。アイホートに逆らってまで彼女を生かしたいと考えた小諏訪は、密かに編み出した「雛殺しの呪文」を紙にしたため渡した。そして1948年の悲劇前日に獄舎から逃がし、彼女は警察官に引き渡され本土に帰る。本土に帰った後は白石家と復縁したが、この時既に小諏訪の子を身籠っており、「重吾」として出産。彼にお守りとして、呪文が書かれた紙を渡していた。
 それが藍暴教には「忌まわしき護符」として判明し、その紙を消去しようと重吾を島へ連れ込み殺害するが、紙は既に娘の冴に譲られていた後。再調査中に白石家は引っ越してしまい有耶無耶になる。だが最近になり、巡り巡ってその「お守り」を相続する遠時を探し当てたのだ。

 汐見は探索者に、「この永綱遠時の動向を探って貰いたい。彼は何かを知っているし、その何かを探られている。事情聴取として任意同行させても構わない」と告げる。


「古い資料」
 警察関係者の探索者がここに来ると、松枝が呼び止める。何でも、戦後間も無い資料を他の署から取り寄せたとの事だ。松枝は南と親しく、彼の依頼を受けて調査していたのだ。
 松枝の資料は余りに古く、なかなか読みにくいと言う。【日本語】のロールで成功すると、資料の内容は『鏑大獄舎への視察について 1948年度』と書かれている事は分かるが、紙の劣化も相まってそれ以外を読むのは厳しい。松枝は知人に専門家がいるので頼んでみると、解読を請け負ってくれる。
 この資料の内容はまさに、全囚人獄中死と言う理解不明な内容の報告書に対して、GHQ指示で行われた鏑大獄舎視察の計画書だ。


「不可解な失踪」
 生活安全課に来た時、【幸運】に成功で資料整理中の知り合いの警官に会える。話によると「最近、変な消え方をした行方不明者が妙に多いんですよ」と行方不明者たちの資料を開きつつ説明してくれる。
 一部を除き、殆どの人間が藍暴教に連れ去られた者だ。探索者は【目星】か【アイディア】に成功する事で、比較的最近に消えた2人に気付ける。


『清水葉』26歳男性
 警備会社勤務。企業ビルの深夜巡回中に消息を絶つ。捜索願の受理は昨日、失踪は2日前。現在、目撃情報は無し。本人は心身共に健康であり、自身の判断で消える理由が無く、事件性が高い。

『小山景』31歳男性
 ゲーム開発会社勤務の技術者。営業先から会社への帰路で消息を絶つ。失踪から1ヶ月経過。現在、目撃情報は無し。営業先からの帰路であり、仕事中の身の上で消える理由はない。途中で何らかの事件に巻き込まれた可能性が高い。


 どちらも現在、牢獄島に囚われている者だ。


「永綱遠時への聴取」
 探索者が街中で【幸運】に成功すると、永綱遠時が永綱導入の探索者らと街を歩いている姿を目撃出来る。探索者は【追跡】に成功で尾行するも良し、話しかけて聴取するも良しだ。
 尾行の場合、永綱導入の探索者の【目星】と【追跡】での抵抗ロールを行い、競り負ければ勘付かれてしまう。尾行に成功し続けた場合、永綱らが藍暴教に襲撃された場合に参戦可能だ。

 聴取の場合、【信用】に成功で「そう言えば、不審者に僕の事を聞かれた友人が言っていましたが、お守りがどうとか」と話してくれる。お守りの事を聞くのならもう一度【信用】に成功しなければならない。失敗したとしても、永綱導入の探索者が機転を利かせて「話して欲しい」と頼んだのならロール不要で聞き出せる。
「何だか代々貰い受ける、古いお守りなんです。母親からいつも持ち歩くように言われていましたが、まぁあまり持ち歩かないですね。何で不審者がそれに事について知っているのか、凄く不気味でして」
 お守りを見せて欲しいと言っても、「後日また、持って行きます」と断り、今は友人たちと街を巡りたいと言って離れてしまう。同行を求めたい場合はやはり、永綱導入の探索者の機転によるだろう。



『調査イベント』(A・C)
 主に南導入からの探索者専用イベントであるが、もし学者導入の探索者が暇そうならば、「鏑島について興味が湧いた」として調査させても構わない。ただ、調査中は永綱導入の探索者とは合流させないようにして欲しい。


「図書館」(A・C)
 探索者は鏑大獄舎についての知識を得ようと、図書館に向かうかもしれない。【図書館】を3回ロールし、成功に応じて以下の資料が手に入る。


図書館ロール、1回目成功
『牢獄島の噂』2000年の考察本
 鏑大獄舎の閉鎖の陰に、大量虐殺事件の噂が潜んでいる。当時の看守らが、絶海の孤島と言う閉鎖空間内で実権を握った事で、囚人たちに対して傲慢な態度を取るようになり、最後には私刑さえ行われた。この噂の原因として、当時の看守長が全員獄中死の報告書を作成した事にあるが、戦後における行政混乱の中で報告書が正しく受理されなかった可能性が高い。


図書館ロール、2回目成功
『鏑大獄舎の経緯』2008年の概説本
 大正時代、脱出不可能な孤島に牢獄を構えると言う、当時軍事刑務所として運営されていたアメリカのアルカトラズ島監獄に倣って2年をかけて建設された。最もアルカトラズ島と違い、島まるごとを監獄にした訳では無く、あくまで島の中心に巨大な獄舎を構えているのみ。しかしそれでも本土から離された島で、例え牢獄を脱出したとしても出られず、実質的に脱獄は不可能と言う島一つが巨大な監獄と言う造りには変わりない。
 経緯として、従来の監獄での脱獄が頻繁に起きていた事につき、このような監獄が必要だとされた件に尽きる。


図書館ロール、3回目成功
『戦時中の鏑大獄舎』2011年の歴史本
 主に暴力犯罪、知能犯罪で裁かれた囚人で集められた。しかし太平洋戦争が泥沼化して来ると、政治犯として戦争反対支持者が集められるようになり、都合の悪い人間を本土から遠去ける目的に変わりつつあった。また島の場所が韓国並びにロシアに近く、襲撃を警戒して多くの武器と看守が配備された。
 戦後、GHQの判断により、監獄としては優秀ではあるが、「本土からあまりにも遠い」「暗礁が多く、運送が危険」と言う点と巨大故のコスト的な問題から閉鎖に追い込まれた。


全部成功
『閉鎖の陰にあるもの』1997年のオカルト本
 コスト削減にしては、2年かけて作った巨大な監獄を丸ごと捨てるとはあまりに無駄。海が厳しいのなら、ヘリポートを作れば空から上陸可能であるし、冷戦を迎えるアメリカとしてはロシアに近いこの島へ基地を構える事だって可能だった。それを全て投げて閉鎖に踏み切った点、何かしら二度と使用出来ないような要因があったのだろうか。


全部失敗
『牢獄島概説』2018年の雑誌コラム
 鏑大獄舎は大正時代に建てられた監獄である。かなり広大で、多い時には千人強の囚人が収監されていたそうだ。
 また牢獄島については、森が圧倒的面積を占めており、獄舎までの通路以外で森に入れば遭難してしまう程に鬱蒼としている。鏑島の名前の由来としては、丁度島の形が鏑矢の鏃に似ている為にその名がついたとされている。


「南の協力」(A)
 南から電話が入り、「青森県警に知り合いがいる。面白い資料が手に入ったから来て欲しいと連絡があった。鏑大獄舎についての事だ、行ってみてはどうかね?」と勧められる。知り合いとは、資料課の松枝の事だ。更に「今朝、良い物を古い資料館から見つけたよ。その知り合いに預けたから、受け取ってくれ」と教えてくれる。
 探索者が県警に着くと、戦後の物かつ秘匿価値が低い物であるとして、資料を見せてくれる。この資料は警察官イベントの『古い資料』と同じ物だ。
 松枝と南は何故知り合いなのかと聞くと、「私の祖父は……祖父は戦中にかけての警官だったが……そして何かしらの理由で戦後すぐの鏑大獄舎に行ったそうだ。そして南さんのお父さんも、あの島に行ったっきり帰る事はなかった。僕ら、あの島に因縁がある者として話が合い、知り合いになったんだ」と話してくれる。

 この時に【精神分析】か【説得】に成功すると、松枝から古い記憶を呼び起こす事が出来る。
「そう言えば私の祖父が……いつも夜中に飛び起きた時、呟いていたんだ。『鬼だ。悪鬼があの監獄にいたんだ。人を喰っていた』と。何か、鏑大獄舎で見たのだろうか。鬼と形容出来る何かを……」
 松枝の祖父は、追い詰められ食糧が枯渇し、仲間や囚人を食べる看守たちを見てしまったのだ。
 最後に松枝は探索者へ、複写された地図を渡す。それは鏑島の、特に港から獄舎への道を記した地図であり、南が今朝に発見して彼に預けたのだ。


「牢獄島の血塗れ女」(A・C)
 探索者が【インターネット】に成功すると、ネットの海で鏑島の都市伝説について知れる。


『牢獄島の血塗れ女』
 鏑島の浜辺で目撃された、血まみれの女の子。目撃談は近くまで来た漁師たちが殆どだが、目撃情報はかなり少ない。
 白いワンピースを纏い、肌も月光に照らされる程の病的な白さ。しかしどれも、真紅の血で塗れており、ケタケタ笑っているかのように身体を震わしていた。また別の噂によれば、血塗れ女の目撃談が出た後、不可解な失踪を遂げる者が現れるそうな。
 最近の目撃談は2日前で、同時に島に上陸しようとする船も別に目撃されている。2日前の目撃談は、島の岸壁の上に佇んでいる様だ。


 血塗れ女とは、アイホートの後裔であるハイヴで、遊びと称して生贄を逃し、見つけては殺すと言う悍ましい事を行なっているのだ。



『観光チャート』(D)
 永綱導入からの探索者専用シナリオチャートだ。チャート自体は3つのみだが、段々とエスカレートして行き、最後の3つ目で佳境に入る。このチャートは、他の導入から入った探索者を入れてはならない。


「安易な安心」
 探索者は青森市内を案内すると言う永綱の提案に賛同し、彼とまず会う事から始まる。昨晩と同じアスパム前の広場で待ち合わせる。暫くすれば永綱がやって来て、彼と共に町巡りが始まるだろう。
 この時点では別に何も起きない、彼の行き着けのカフェに行ったり、開催されている物産展を見に行くも良しだ。探索者に好きにロールプレイさせるのも良いだろう。


「不穏な空気」(B→D)
 このイベントは、警官導入の探索者が事情聴取を行い、妙に余所余所しい空気になった所で始まる。また、警官導入の探索者がいない場合は、NPCでKP自身が警官となり事情聴取させ、「永綱遠時への聴取」を擬似的に行う事。この時のNPCを汐見にしても構わない。事情聴取イベント時に「曽祖母からのお守り」の事を聞き出された後に探索者が個人的に聞くと、「お守りをくれた人の名前、凛花って言うんですよ。お守りの裏に書いてあるんです。凛とする花。昔にしたら凄くハイカラな名前ですよね」と紹介してくれる。また、「変な話ですが、悪い物にお守りを投げつけたら良いって、教えられているんです」とも言う。
 この時に【アイディア】を振り、成功してしまった探索者はまた視線を感じ、不安から【正気度 0/1D3】を行う。視線を不気味に思った探索者はそこから急遽離れるだろう。その時に視線は消える。


「恐怖の強襲」(A・B参加可)
 時間は夜を迎え、永綱行き着けのバーで飲み、千鳥足の帰路についている。永綱は相当酔っており、日頃の不安とストレスが積み重なっている事が分かるだろう。
 彼の家へ送る最中、人通りの少ない道で探索者は無表情な10人程の集団に突然囲まれる。探索者は【正気度 1/1D4】を行うと、背後にいた者らに羽交い締めされる。その間に永綱は押さえ付けられ荷物を弄られてしまう。この集団が藍暴教の信者たちだ。
 彼らは目当てのお守りが無い事に憤慨し、「言え。忌まわしき護符は何処にある! アレはこの世にあってはならない!」と問い詰める。この時、尾行に成功した警官導入の探索者か、調査イベントの探索者らが偶然現れる。何かしら第三者の介入を行う事。

 人の目に焦った信者たちは、手ぶらな5人を戦闘員として襲わせる。
【VS 藍暴教信者5人】
 戦闘中、探索者は【聞き耳】に成功で、彼らの内数人から磯の香りがする事に気付ける(聞き耳は嗅覚属性としての利用も可能)。また【目星】に成功で、足が濡れている事にも気付けるだろう。船に乗っていた証だ。

 3ターンの後、通報を受けた警官数人と汐見が急行し、汐見が柔道で信者たちを投げ飛ばし、確保したお陰で永綱が解放される。泡を食った彼らは「こいつらは貸しだ! 必ずまた現れてやる!」と叫び、何と確保された信者が持っていた爆弾で自爆。この自爆に、信者に捕まっている探索者以外は【幸運】か【回避】をロールし、失敗の場合は自爆に巻き込まれ【ダメージ 1D6】を行う。回避成功の場合はノーダメージで良いが、幸運成功では【ダメージ 1D3】となる。このような残酷な自爆をいとも容易く行う彼らに戦慄し、場にいた探索者全員【正気度 1/1D6】を行う。

 その間、爆煙と混乱のどさくさに紛れ、探索者を気絶させ連れたまま彼らは消える。この時、1人の信者を押さえ付けていた汐見は負傷してしまう。

《行方知らず》

 事件後、現場は確保されて他の警官隊がごった返している。自爆した信者は死亡し、確保に当たっていた警官数名が重傷を負ってしまった。汐見も火傷と深傷を負い、搬送される。
 探索者らは保護され、怪我をした者は【1D4】の回復が行われる。

 また、すぐに検問が敷かれたが、朝になってもとうとう彼らは見つからなかった。メディアは一斉に報道したが、「爆発事件」として自爆と言う事実は伏せられた。
 関わった探索者らは一旦、県警に移る。松枝から汐見の現状を説明され、犯人グループは捕まっていない旨を伝えられる。「鏑島の不審船との関連もあるので、調査は行われる予定だ」といった後、その場を離れる。
 この時、永綱は「奴ら、海から来たんだ。磯潮の匂いがしたし、足が濡れていた。船に乗っていたんだ! 僕の知人に漁師の人がいるから分かるんだ!」と訴える。また、松枝の発言から「鏑島から来たのでは」と推測する。
 彼は攫われた探索者が助かるかどうか気を揉み、そして油断しきっていた事を悔やみ、同時に疑問に思うだろう。「何故、お守りを狙っているのか」と。お守りの事を聞かれると、「母から貰ったお守りで、身に付けておけば厄災を除けると持たされていた。母は祖母から貰ったと言っていたから、家宝のような物なのかな。何にせよ、あいつらは何故か僕のお守りを狙っている」と話す。
 ここからは暫く、永綱の出番は無いが後半、彼の知人の漁師に頼み、汐見と共に鏑島へと意を決してやって来る。

 お守りの中身やどう言う物かは「分からない」と話し、「何処にでもあるような物、神社でも買えるような物。凄く古く、色褪せているけど」と詳細に思い出す。
 ここで警官導入の探索者以外は2日目の行動を終了する。



『事件現場』
 警官導入の探索者は、夜間遅くに自爆襲撃事件の現場に行く。四散した信者の死体は既に回収されており、検査官によれば「死体の損壊があまりにも酷く、個人の特定は難しい。データベースに前科の記録があれば良いが、無かったなら身元不明死体だ」との事だ。

 現場は酷い有様で血が散乱しており、警官であれど探索者が死体に不慣れであるのなら【正気度 1/1D4】を行う。現場で【目星】に成功すると、自爆者の服の切れ端が見つかる。その切れ端には『藍暴』と書かれている。藍暴教の印が偶然、残っていたのだ。
 また検査官から「使用された爆弾が、知らない構造なんです」と聞かされる。【幸運】に成功で爆発物に詳しい検査官と話が出来、「聞いてくださいよ! 自爆用に使われた爆弾は、前時代の物ですよ。十年式手榴弾(てりゅうだん)、大日本帝国陸軍が使っていた物です。いや、現代の物と比べたら古臭く、かと言って手作り爆弾にしては精密なんですよ。なんでこんな、化石のような爆弾持っているんだ!」と報告される。藍暴教は牢獄島に大量に隠された爆弾や火器を装備しているのだ。


『古い資料の結果』
 出発前に松枝から、「古い資料」の時の物を専門家に翻訳して貰った結果を伝えられる。何でも1948年に、一度多くの警官隊と政府の高官が島に調査団を編成したらしいとの事だ。参加者の名簿もあり、彼はそこから自分の祖父の名前を見付けた。
 松枝は、やはり祖父はあの島に行ったらしいが、何故こんな大掛かりな調査が行われたのかは分からないとし、「全体的な報告書は……もう無いだろうか。こう言うのは大抵、金庫に入れているべきだろうが」とぼやく。事件後にトエルモが手に入れた物ならば、鏑大獄舎の金庫に存在する。

《調査開始》

 事件から一夜明けると、朝早く予定通りに鏑島への調査が行われる。警察官18名、島へ二隻の船を出す海上警備隊員5名、榎田や首藤含む生態調査隊6名による航行だ。現場を指揮するハズだった汐見は負傷し、治療の為、別の刑事2名が指揮に当たり、合計31名+探索者と言う規模だ。
 この中で海上警備隊の1人が藍暴教徒であり、無線で仲間に内情を知らせ続ける。藍暴教はこの調査隊でさえもアイホートに捧げる生贄にしようと考えており、最終的には船の難破による不幸な事故に仕立て上げようとしている。

 参加探索者は警官導入、南導入、学者導入の者が一堂に会する。永綱導入の探索者はこのまま、鏑大獄舎での行動が始まるだろう。
 鏑島は船で1時間も先の沖合にある島で、切り立った崖と鬱蒼と茂る森が来る者を拒むかのように浮かんでいる。近海は暗礁があるとの事で、特に慎重に航行し、島が見えて15分後に、昔使われていた港からやっと上陸出来る。榎田の調査隊も準備を進める為、一度寄港し、全探索者が鏑島に立つ。ここから各々の目的で別れ、警官たちは浜辺の見回りに(B)、南から命を受けた探索者は護衛の警官4人と共に鏑大獄舎へ(A)、海洋生物調査に来た探索者は機械系統の調子を図る為に港で待機する(C)。


『警察隊の調査』(B)
 14名の警察隊は上陸者の痕跡を探す為、長靴を履き浜辺を捜索する。浜辺を捜索中、【目星】に成功すると、離れた箇所に警察隊の物は違う下足痕が発見出来る。小さめのサンダルで、森から出たり入ったりを繰り返していたようだ。その痕はまさに、小山を探すハイヴの物だ。
 警察の認識は、森の中から何者かが海を監視していたのだろうとした。やはり不法上陸者はいたと判断され、森の中への調査が提案される。ここで浜辺の調査か、森の中の調査かが選べ、イベントが分岐する。


「浜辺」
 浜辺での捜査を継続する警官NPCは4名。流木や、本土から流れて来たゴミが打ち上げられており、とても重要な情報は見つかりそうにない。
 対して浜の奥は岸壁が聳え、そこから先はどうにも進めない。引き返そうとした時【目星】に成功すると、岸壁近くの海面から突き出ている岩礁に違和感を覚えるだろう。

 近付き、目を凝らして見るならば、岩礁の上に人が倒れている様が分かるだろう。探索者は船を寄越して貰うか、【跳躍】か【登攀】に成功で岩礁に立てる。倒れていた人間は中年の女性で、頭部を硬い岩礁に叩き付けられ息絶えていた。左頭部は完全に陥没し、無残な有様だ。死体をある程度見慣れている捜査一課ならば別だが、探索者が死体に慣れていない者ならば【正気度 1/1D4】を行う。
 この時に【医学】に成功すると、死後2日は経過していると分かり、【アイディア】に成功で岸壁の上から落とされたのではと推測出来る。ただ、この岸壁を登るにはかなりの労力が必要であり、空を飛ぶかトカゲでもない限り不可能だと察知出来る。

 この女性もハイヴの遊び相手となってしまい、島を逃げ回った挙句に捕まってしまったのだ。ハイヴは残虐な死を与えてやりたいが為に、蜘蛛のように這えるアイホートの雛たちの特性を使って岸壁を女性を運んだまま登り、突き落としたのだ。調査イベントにあった「牢獄島の血塗れ女」の目撃談は、まさにこの時の目撃談だったのだ。
 しかし食料としても見ていた彼女は、女性の腹部を食っており、探索者が【目星】に成功で腹の肉が無い事に気付き、服を捲れば食い千切られた痕を発見出来る。これにはどんなベテラン刑事でも【正気度 1/1D4】を行う。


「森」
 不法上陸者の存在が危惧される為、10名とやや多めの捜査官が当てられる。何十年も人の手が入っていないとあって鬱蒼とし、木々を掻き分けるのに手一杯だ。
 探索者は【聞き耳】に成功すると、警官隊の物とは違う、ガサガサと草葉を揺らす音が聞こえて来るだろう。そして音は警官隊目掛けて突っ込んで来ているとも分かる。探索者達が警戒している時、「助けて!」と叫びながら警官に抱き着く男性が現れた。
 男性はボロボロになったワイシャツとズボンを着ており、幾日も風呂に入っていないのか、身体が酷く汚れている。満足に栄養も摂っていないようで、顔色から栄養失調の気配が伺える。この男こそ1ヶ月前に攫われた『小山景』であり、青森市内の警官探索者用イベント「不可解な失踪」を確認している探索者はすぐに彼だと分かるだろう。【心理学】に成功すると、本人は発狂寸前とも言える鬼気迫る雰囲気を醸し出しており、異常な怯えを現在もしていると分かる。

 事情を聞こうとすると「助かった! いや、助けてくれ! 近くにいるんだ、奴が! 見たんだ! 奴を殺してくれ!」と喚き立てる。奴が誰かとは、完全に錯乱状態に陥った彼に聞けるハズもないが、【精神分析】か【説得】で少し落ち着けさせ、話を聞き出せる。

「変な奴らに、攫われたんだ! そいつらは森の奥の建物にいる! 僕は、そいつらを束ねる奴に追われているんだ! 怪物なんだよ、人間じゃない! 噂に聞く『血塗れ娘』だ!」

 暫くすると彼の表情が消える。【心理学】に成功で、彼の目の奥に激しい恐怖が宿っている事に気付ける。途端に辺り一帯の草が揺れ、多くの何かに囲まれていると察知する。探索者は【正気度 0/1D4】を行う。
 草が揺れている箇所に突っ込んでも何もなく、何も見えない。草のざわつきは激しさを増して行き、まるで暴風の中にいるような程になる。それでも何もいないのだ。小山は狂ったようにがなり立て、「警察なんだろ、助けてくれよ!! 僕が死んだら、今度はお前らなんだぞ!?」と叫ぶ。瞬間彼は突然倒れたかと思うと、悲鳴をあげながら何かに森の中へ引き摺り戻される。その力は強靭であり、小山の手を掴んでも振り払われてしまう。そのまま掴んでいたのなら彼と共に森へ引き摺り込まれ、【幸運】に成功して偶然手が離れない限り、ハイヴの攻撃の巻き添えを喰らって【ダメージ 1D10】を負う事になる。この際、暗い森の中で何かに噛まれた痛みと、身体中から血を吹き出して死ぬ小山の姿を見て【正気度 1D4/1D6】を行う。

 小山が引き摺り込まれた後、森の中から彼の断末魔が鳴り響き、鮮血が激しく飛び散り、深緑の森を染め上げた。その様を見たなら【正気度 1/1D4】を行う。
 異常事態に遭遇した所で、一旦南導入組と学者導入組に移る。



『鏑大獄舎へ』(A)
 南の依頼を受けている探索者は、護衛として4名の警官に連れられながら鏑大獄舎を目指す。ただ、好奇心から大学院生の「首藤」も参加し、参加NPCは5名だ。調査イベントの「南の協力」にて探索者は地図のコピーを手に入れているハズなので、それを道標として進む。
 獄舎への道は、長らく使用されていない為に獣道となってはいるが、何とか分かる程度には進めるだろう。しかし、【地質学】か【人類学】、【博物学】に成功すると、何十年も使用されていないにしては道が残っている事に疑問が浮かぶだろう。定期的に誰かがこの道を使っているのではと、不法上陸者の話も相まって若干の不安が生じ、【正気度 0/1D3】を行う。藍暴教の人間がこの道を使っているので、辛うじて獣道が残っているのだ。これらのロールは探索者が失敗しても、首藤の知識として提示させても良い。

 道なりに進むと、とうとう鏑大獄舎を発見出来る。泥濘の酷い湿地を錆びた橋で回避し、その先にある葛の巻き付いた門を抜けると、壁に囲われ、シンメトリーに造られた3階建ての巨大な建物が眼前に広がる。これが鏑大獄舎だ。
 かつて国旗が掲げられていたであろう旗立が寂しく立つ広場を中心に、本舎、第1支舎、第2支舎が並べられ、本舎裏に第3支舎がある。それら全てが渡り廊下で繋げられている。全体的な広さは160平方メートルに及ぶ。特に本舎はアルカトラズ島を模倣されているだけに、一つの箱のような建物の無骨な造りは圧巻だ。経年劣化しているとは言え、何処と無く漂う禍々しさは確かに刑務所であった事を物語っている。

 入り口は本舎のみにあり、第1〜第3支舎に関しては裏口があるものの、すぐに気付けないだろう。内装については後に鏑大獄舎の全体像を書き表すとする。
 まず探索者は本舎の入り口からロビーに入るだろう。3階層まで見える吹き抜けの先、割れたガラス天井から光が注ぎ込まれた、一見不気味ながらも退廃的な幻想感を醸し出す内装だ。しかしその時、目の前にボトリと何かが落とされる。それはズタズタに切り裂かれ息絶えたウミネコである。探索者は【正気度 0/1D3】を行う。
 自然死とはまず思えないウミネコの有様に、何者かがこの獄舎にいると察知し、警官の1人が冷静に外へ出る事を進める。「不法上陸者の根城かもしれません、こんな馬鹿馬鹿しい手で我々を脅かし、逃げさせようとしているのでしょう。無線で応援を呼びます」と言い、無線を繋ぐ。無線の先は港の船だが、傍受した瞬間に聞こえたのは悲鳴だった。

 探索者はノイズの激しい無線からの声を、【聞き耳】で何とか聞き取れるだろう。「助けてくれ! こいつら、武装を……!」と聞こえた後、激しい銃声が響き、次に爆音がした後に無線は止まった。探索者は突拍子のない出来事から【正気度 1/1D4】を行う。

 異常事態に、警官達は一度戻るべきだと言う。「何が起きているのか分からん! それにここは危険だ! どうにも奴ら、我々を逃がしたいみたいだ!」と叫び、入り口に戻った警官1人だが、突然その警官の頭部が、死角から飛び出た太い腕に掴まれ、間髪入れずに床に叩きつけられ気絶する。
 暗闇から、不気味なマスクの大男トエルモが登場し、目の中の懐中電灯で探索者らを照らす。【正気度 1/1D6】を行う。
 更に吹き抜けから見える2階、3階のフロアから合計8名の藍暴教徒が顔を出し、小銃の口が向けられる。【知識】か【博物学】に成功で、彼らの銃は「三八式歩兵銃」と言う、旧日本軍の武器だと気付けるだろう。

 トエルモは探索者らを指差し、「逃がし、たい、のではない。逃が、さない、のだ」と片言で綴り、「1人、たりとも。殺すか、捧げるか、だ。こんな、風に」と言った後、まだ息があった足元の警官を踏み付け殺害する。同時に教徒らが射撃を始め、警官2名がやられる。照準がしっかりしている様からして、狙撃隊はそれなりに訓練を受けているとも気付けるだろう。探索者は【回避】か【幸運】で銃の雨を避けなければならない。失敗すれば、【ダメージ 1D6】を受ける事となる。唯一生き残った警官は首藤と探索者を獄舎の奥へ誘導し、拳銃で応戦する。

 探索者は誘導に従い、首藤と共に獄舎の奥へ逃げるべきだが、まだ残ろうとする場合は、警官の銃弾を胸や肩、足に受けても平然と近付くトエルモの姿に【正気度 1/1D4】を行うだろう。トエルモは巨体に似つかわない俊敏さで警官と間合いを詰めると、拳銃をはたき落とし、その警官を掴んで持ち上げる。持ち上げた状態で吹き抜けの下へ運び、身動きの取れない警官をトエルモごと、教徒は銃弾を浴びせた。警官は死亡したがトエルモは何ともなく、警官を投げ捨てた後にまた探索者らに詰め寄る。
 残っていた場合はその時点で、警官の拳銃を入手して、獄舎に入った所で学者ルートへ。



『港の戦争』(B・C)
 港は教徒らに奇襲され、船が一隻爆破される。突然の出来事に探索者らは【正気度 1/1D6】を行う。彼らの記憶として、同行した海上警備隊員の1人が密告者で、その者の発砲を口火に襲撃された訳だ。ここの探索者らは何とか生き延び、榎田と3名の警官と共に森の中へ逃げた所だ。浜辺を捜査していた警官探索者がいれば、それもここに移るだろう。
 もう一隻の船は占領され、応援を呼ぶ無線機を奪われてしまった。途方に暮れる中、榎田は「広い洞窟があるハズだ。確か、地図があったろう?」と言い、警官から受け取った地図を見る。「この島はまさに、鍾乳洞が成り立つ環境に適した地理だ! ならば、島の中程に洞窟がある。推定だが、広大な鍾乳洞があるハズだ。そこに身を隠そう」と提案する。森の中にいても、頻りに索敵を行う教徒らに見つかるのは時間の問題であり、彼の提案に乗る事となる。

 探索者らはここから、洞窟を探しに動く事となる。【忍び歩き】か【隠れる】に成功しなければならず、失敗すれば教徒側のロールが発生し、【目星】に成功してしまうと発見されてしまう。発見されると彼らは発砲する為、【回避】をしなければならないが、最初の1回は警官1名が囮として応戦し、彼らの犠牲で事無きを得られる。その時【信用】に成功すると、警官は探索者らに拳銃を渡してくれる。
 それ以降発見されると、回避失敗で【ダメージ 1D6】を食らってしまう。ダメージの有無に関わらず、一度発砲されると再度隠れる事が出来る。これを5ラウンド続けた後に、洞窟へ辿り着く事が出来るだろう。
 洞窟内は確かに広大で、どうやら巨大な鍾乳洞と繋がっているようだ。「これは公式な捜査だ。僕らとの通話が切れた事で本土から応援が必ず来るハズだ。それまで隠れなければ」と榎田は言い、鍾乳洞へ隠れる事に。
 鍾乳洞内は何と、鏑大獄舎の地下と繋がっており、そして隠された島の秘密もここに眠っているのだ。
 鍾乳洞入り口の影に潜むが、その時近くで悲鳴が響く。森の中でハイヴに襲撃されている警官隊のものだ。

《島の怪物たち》

『ハイヴ』(B)
 視点は森の捜査をしていた探索者らと警官隊に再度戻る。あまりに悍ましい光景に怯え、逃げ出す警官隊だが、続いて4名の警官が一気に倒れ、引き摺られて行く。彼らは一箇所の茂みに集められ、突然静かになる。次に茂みから現れたのは、10歳前後の少女だ。血塗れのワンピースを着た、黒い髪の少女で、肌が病的に白く表情は常にニヤニヤとしている不気味な存在だ。状況も状況であり、普通の少女、それどころか人間かさえも疑うだろう。この少女こそが、藍暴教を従える者であり、アイホートの雛の集合体であるハイヴだ。

 ハイヴは探索者や警官隊を見渡した後、「私、血を見るのが大好き」と言った瞬間、引き摺られた警官達が寄せ集められているであろう彼女の背後の茂みから、まるで花火のように鮮血が散らばった。ハイヴはそれを浴びてケタケタ笑っている。
 こんな状況に怯え、警官らは我先に逃走を始めるが、ハイヴの姿がまた茂みに隠れた瞬間に1人1人また引き摺られて行き、茂みの中で血を撒き散らす。この時に【目星】に成功すると、白い小さな物が草木を高速で移動していると気付ける、それも多くの物だ。見てしまった探索者は【正気度 1/1D4】を行う。ハイヴが分裂し、アイホートの雛の姿で移動しているのだ。

 探索者もとうとうハイヴに足を捕まれ引き摺られて行くが、それを進行方向で待ち構えていた警官2人が木の棒で叩き、探索者を救う。榎田らと鍾乳洞に逃げた警官だ。彼らの指令に従い、鍾乳洞の方へ走る事になる。この際、2名の警官が囮となるが、ハイヴに殺される前に教徒らに捕縛され、アイホートの生贄として連行されてしまう。


『獄舎の中で』(A)
 探索者と首藤は教徒らの攻撃と、不死身のトエルモの追跡を逃れるべく獄舎を直走る。管理棟を抜け、監獄棟に入ると一気に暗くなる為、首藤から懐中電灯を貰い受け、それで進んで行く事になる。探索者は【目星】に成功すると、監獄棟の壁の至る所に弾痕がある事に気付けるだろう。1948年の藍暴教と警官隊の攻防の痕がまだ残っているのだ。
 更に【幸運】に成功で、足元に空の薬莢が散乱している事にも気付けるだろうし、こびり付いた血の痕も見受けられる。【アイディア】に成功で、激しい戦闘がここで行われたのではと推測出来るだろう。

 道なりに進めど、全く光に辿り着けない。その時、首藤が「あっ!」と小さな悲鳴をあげ、探索者に壁を見るように指示する。そこには夥しいほどの目が赤い塗料で描かれており、あまりの気味の悪さに【正気度 0/1D3】を行う。この時に【医学】か【博物学】に成功すると、これは塗料ではなく人間の血ではないかと気付ける。
 その絵に対し【目星】に成功すると、天井に書かれた大きな文字に気付けるだろう。天井には大きく「あいぼう」の文字が書かれている。

 絵が醸し出す雰囲気に耐え切れなくなり、首藤が離れた瞬間、今度は大きく悲鳴をあげる。彼の目線の先にはいつの間にいたのか、トエルモが迫って来ていたのだ。パニックに陥った首藤は逃げる途中で探索者と逸れてしまう。ここでプロローグの終盤の場面に繋がり、清水を連行した後にトエルモは首藤を見つけてしまう。探索者は彼を探そうとしたが、見つけた矢先に追い詰められた首藤が殺される姿を目撃、【正気度 1/1D4】をロールする。
 次に背後の探索者に気付いたトエルモは清水を担ぎつつ、目の中の懐中電灯で照らし、シャッターを自分の腕で降ろして拉致された探索者と合流出来ないようにしてから追跡を開始する。

《鏑大獄舎内イベント》

 ここからは鏑大獄舎に囚われている探索者と、島の鍾乳洞に身を隠す探索者とで分岐する。まずは鏑大獄舎のルートからだ。鏑大獄舎は以下の部屋が探索可能であり、KPはこれを元に地図を作成しても良いかもしれない。また、この時点でそれぞれの探索者がいる位置は、南導入の探索者は身を隠す為に本舎内の「隠れ場所」のどれかにいる。
 そして永綱導入の探索者は本舎3階にいるが、2階に降りる道はシャッターで封鎖された為、必然的に第2支舎に行く事となる。本舎2階の裏より第3舎へ行ける渡り廊下があるが、ここは頑丈に施錠されており、この獄舎内イベント中は突破不可能だ。獄舎内イベントは、本舎の人間は鍵を探しに看守長室に辿り着けるまでの間だ。一応、第2支舎の探索者は「小諏訪の手紙」を見つけるまでがイベントの流れだが、本舎の探索者がイベントを終えてしまったのなら強制的に終了する。この手紙を見つけるか見つけないかが、エンディングの分岐点だ。

 探索者中、KPは探索者が2回の行動毎に【1D100】でダイスを振り、【60】より下回った値の場合、トエルモか他の教徒が探索者に近付いて来る。探索者が先に気づくかは【アイディア】か【聞き耳】で振らせ、成功の場合は「隠れ場所」に潜むか、【隠れる】で身を隠せるチャンスを与えられる。騒動した場合は戦闘となるが、最も勝てる見込みは薄い為、【DEX×5】に成功したなら逃走に成功出来る事にする。逃走成功の場合、探索者の現在位置から離れた場所に強制移動しなくてはならないし、その先に敵が待ち受けているかは【幸運】の成功の有無による。


『鏑大獄舎・本舎』
 本舎は主に、看守の寄宿舎でもあり、囚人は兎も角官僚を出迎えるメインエントランスでもある。入り口は吹き抜けのあるロビーになっており、そこから真っ直ぐ進み監獄棟とを隔離する鉄門を超えれば、牢が続く陰湿な場所となる。中央に据えた監獄棟を寄宿棟や事務所で囲うような造りになっている為、監獄棟は窓が無く、監獄棟自体がまるで巨大な檻のような風となっている。監獄棟から出入りする鉄門は各階に6つあり、【幸運】に成功で教徒が見張っていない事を確認しなければ出る事も入る事も出来ない。
 また窓は木の板や鉄板で全て硬く封印されており、そこから外に出る事は出来ないだろう。

 至る所にある「隠れ場所」は、探索者が隠れる事が可能で、ここに入れば何のロールも必要無く藍暴教徒やトエルモの追跡を免れる事が出来る。ただし長く閉じこもってはいずれ見つかるだろう。隠れ場所内で見つかってしまった場合、背後に逃げ場所がないので探索者と敵との【STR対抗ロール】に委ねられる。勝利の場合は逃げられるが、敗北の場合は撃たれるか刺されるかで、強制的にロストとなってしまう。


「ロビー」
 1階入り口のすぐ先にある、鏑大獄舎のメインエントランス。官僚を出迎える為、それなりに御誂え向けな出来栄えに造られている。白が基調ながらもホテルのエントランスのような感じだ。最も現在は荒廃し、その面影は無いが。
 序盤は武装した教徒が見回っており、入り口から逃げようとするならば一斉射撃を受けて【ダメージ 2D6】を受ける事になる。
 ロビーから2階、3階に上がる階段が存在し、監獄棟へは正面の管理室を超えた所にある鉄門から行ける。ここは孤島の牢獄の為、来訪者の存在は視野に入れておらず、面会室は無い。
 管理室から寄宿舎、事務所へ行ける。第1舎、第2舎、第3舎への渡り廊下は3階から行けるが、第1舎の渡り廊下は崩落している為、行く事が出来ない。


「管理室」
 囚人が唯一外界との出入りが可能な鉄門を見張る部屋。昔の警官の警棒が手に入る。中に大きな金庫があり、開けるには2階の看守長室にある鍵が必要だ。中にあるのは鏑島事件に関した資料である。鍵の場所は、「金庫の鍵は看守長が持つべき。看守長室に保管せよ」と言う注意書きから、看守長室にあると分かる。
 また、南導入の探索者なら管理室にある囚人名簿から、南の父親である「南秀吉」の名を見つける事が出来る。彼は3階の牢屋「333」にいる。
 この時【目星】に成功すると、比較的新しい資料が机の上にあると気付ける。開けばそれは、全てが英語の物だが、『トエルモ・バードマン』と言う男の身分証であった。【知識】に成功すると、これは英国海軍の物だと分かる。【ほかの言語(英語)】に成功すると、「カルトを信奉し、危険な思考を持っているとされ、除隊」とある。


「牢屋」
 1階と2階の牢獄棟内には、約50部屋の牢屋が存在しており、どこも縦長の部屋で出入り口は一つの強固な檻扉のみ。そこに4人分のベッドがあり、奥にあるトイレは共用だ。現在は藍暴教が拉致した人間の収監場所となっており、【目星】に成功で「死にたく無い」「逃げろ」と彼らの嘆き節が刻まれた壁を見る事が出来る。目星に成功した上で【幸運】に成功すると、その刻み文字の中で「ハイヴに気を付けろ」と言う文字を発見出来る。【生物学】か英語圏の探索者に限定して【知識】に成功で、蜂の巣を意味する「ビーハイヴ」に代表される「hive」、群衆や集まりを意味する英語であると知れる。
「隠れ場所……ベッドの下」


「収監棟の浴場と食堂」
 1階と2階の収監棟内には、共用の浴場と食堂がある。浴場には何もないが、食堂は現在、藍暴教の調理室となっている。
 人肉食を行うトエルモと柳下、ハイヴがここで食事を行うのだ。つまり、アイホートの犠牲者となった者の死体が集められていると言う事だ。探索者は食堂に入った途端、強い腐臭を嗅ぎ付けてしまい【正気度 1/1D4】を行う。中に入れば今までと一線を画す血の痕に驚くだろう。中を調べるのなら、人間の骨や肉片が落ちている事に気付き、奴らは人を食べるのではと考え【正気度 1/1D6】を行う。
「隠れ場所……机の下、調理場」


「事務所」
 1階にある。看守達が事務作業を行う部屋で、本舎の西側にある。机が並び、油のないカンテラが落ちている。ここには万年筆やら警棒が放棄されており、それを拾って武器にする事も可能だ。この事務所の傍にある廊下に、2階へ続く階段がある。
「隠れ場所……机の下」

 ここで教徒から隠れられた場合、彼らの話を盗み聞き出来る。


「ハイヴ様は、お戯れに?」

「島に来た奴らを殺しに回っているが、司祭様は焦っておられる。捧げる贄が少なくなると」

「最終的には、船が難破して行方不明と言う事にするのだろう?」

「だからこそ、欠損のない死体は残しておきたい。海に流してそれが発見されれば、事件性のない事故死だって思わせられる。同志が海上警備隊員の一員だし、そいつだけを生存者として証言させれば終わりだ」

「今、この中を逃げている奴らはどうするんだ?」

「奴らは殺せと、副司祭様から言い付けられている。聖地を荒す者には死を与えん。と言う事は、死体と生贄の目処は立っていると言う事だろう」

「成る程。なら見付け次第、蜂の巣にしてやれば良いのだな」

「蜂の巣……あぁ、我々は女王に仕える幸福な蜂だ。死体は残せ、大事な資源だ」


 死体と生贄の目処とは、船が襲撃された際に4人、そして森の中で探索者を救う為に行動した2人の警官たちだ。


「寄宿舎」
 鏑大獄舎は離島にある為、看守達は必然的にこの島に篭り放しになる。その間の衣食住はここで満たす。寄宿舎は管理室の傍にあり、2階にもある。中は畳の敷かれた10畳程の部屋が複数あり、それぞれの部屋で看守が過ごす事となる。
 現在も同様に教徒達の住処となっており、彼らの書き置きが発見出来る。そこには「第3支舎、午前3時に儀式」とある。


「看守長室」
 2階の奥にある部屋が、小諏訪が執務を行っていた看守長室だ。鍵を取りに来たと言う明白な意思があるなら、管理室の金庫を開ける鍵が難無く手に入る。金庫を調べなければ、ここのイベントは起きないだろう。
 しかし、そこへ柳下がトエルモや教徒らを連れて登場し、探索者を気絶させてしまう。ここで、鏑獄舎の探索者のパートは終了だ。場面は、鍾乳洞にいる探索者らに移る。
「隠れ場所……執務席の下、クローゼット」


「誘拐者幽閉用牢屋 333」
 3階の牢屋は、藍暴教が本土から拉致した人間を収監する場所となっている。他の場所とは違い、動物を囲う檻のような物である。ここは戦争反対者や凶悪犯を拷問する為に用意された牢屋なのだ。その証拠として、様々な箇所に血の痕や傷が見受けられるだろう。【歴史】か【知識】に成功なら、戦時中と言う時代背景と当て嵌めて、その事に気付ける。
 中は完全に殺風景で、檻を開いても何を見ても目に付く物は無いだろう。

 また管理室で名簿を見て、南秀吉が333にいた事を知っている探索者は自動的にこの牢屋に来れる。333も同様の牢屋であり、彼が拷問されていた事は明白であろう。そう、彼の獄中死の真相は、拷問死なのだ。


『鏑大獄舎第2支舎』
 第2支舎は女性囚人の収監場所となっている。内部の構造はロビーと寄宿舎、拷問部屋が無い事以外は本舎とあまり変わらない。第2支舎の出入口も頑丈に閉じられており、脱出は不可だ。
 こちらの方にはトエルモは出現しないが、教徒が武装しつつ見回りをしている。


「管理室」
 机の上にある囚人名簿を見たのなら、「白石(滝本)凛花」と言う人名を見れる。この時、青森市内イベントの永綱導入にある調査チャート「不穏な空気」内で「凛花」の名前を永綱から聞いた者なら、すぐにピンと来るだろう。収監場所は「301号室」、3階の監獄だ。


「資料保管室」
 事務所とは逆の方にある部屋で、囚人の記録書が保管されている。事務所と同様、傍の廊下に2階へ続く階段がある。
 また、「部屋番号301号室」でのイベントを越した後は「滝本(白石)凛花」の資料を得られる。
 資料によると、彼女は1944年に戦争反対者の危険思想者として収監されている。ただ資料から小諏訪の手紙が出て来る。戦時中の手紙の為現代の人間が読むには知識が必要で、【母国語(日本語)】か【歴史】【人類学】で読む事が出来る。


 この手紙を読んで貰える事、或いはその手に渡る事は恐らく叶わぬ願いと承知の上、一縷の希望を賭けてしたため、残しておきます。
 私は世間一般では認められない、罪と行為をしてきた。それは貴女も知っているでしょう。しかし私は、これを信念とし、正しき行いとして実行して来た。変えようとも変えられない上、私も変えようとは思わない。貴女が菩薩を信じるように、私は「藍の尊」を信じているのだから。
 しかし、私は貴女を、信仰心とは違う愛を抱き、一瞬とは言え神に背く覚悟を決めてしまった。貴女が神の物になって欲しくないのです。

 どうか、貴女に授けた物は、隠していてください。それこそ、絶対的な力量に干渉が出来る唯一の物です。
 手紙に書くまでもなく、貴女はそれを大切にするでしょう。何故、こんな手紙を私は書いているのかは分からないが、貴女の「子」の手に渡る事を祈ります。
 小諏訪勝守


 探索者がこの手紙に辿り着いたのなら、数人の教徒に囲まれてしまい、最終局面までの待機となる。
 この手紙を見つけたか見つけないかで、エンディングが変更する。
「隠れ場所……本棚の裏、布の下」


「301号室」
 3階の監獄の一つであるここは、永綱の曽祖母である白石凛花がいた牢屋だ。形状は他の牢屋と変わらない。
 探索者は【目星】に成功すると、部屋の壁の切り目に何かが挟んである事に気付ける。取り出すとそれは手紙であり、それも蝋が塗られており劣化を遅らせるように工夫されていた物である。それは小諏訪の書いた手紙だ。蝋引きされているとは言え70年余りの歳月でかなり劣化が進み、読み難くなっている。
 そこで【図書館】か【考古学】に成功すると、ある程度読む事が出来る。


「戦争は終わりましたが、ここはじきに戦場となります。貴女のこの、部屋にだけ施錠をしました。部屋の奥に隠れ潜んでいてください。
 警官隊が来るまで孤独となる事が心苦しい所です。しかし警官隊が来れば強引にも開け、助けてくれるでしょう。その時、1階資料室に私の手紙を残しています。囚人身上資料の59枚目、貴女の書類欄に挟んでいます。もし、助けられここに戻る事があるのなら是非、手に取って貰いたい。そしてこの手紙を破棄して貰いたい。
 そして貴女に渡した御守りは、絶対に無くさず、受け継ぎなさい。神の子に対して投げつければ、倒す事が出来ます」


 彼女は1948年の警官隊と小諏訪藍暴教の戦闘中、鍵をかけられた牢屋に隠れていた。銃声と教徒達の狂声に怯えながら、小諏訪からのこの手紙と、貰った御守りを心の拠り所に生き長らえていたのだ。牢屋に施錠されていた為に教徒らの人肉食の犠牲者にならず、警官隊の助けで本土に帰れたのが流れだ。
 だが警官隊の行動が迅速であり、小諏訪の手紙を見る事なく帰らされてしまう。またこの手紙でさえも彼女は破る事が出来ずに蝋引きし、隠していた訳だ。最もその手紙さえも取り出す前に警官隊に救出されてしまったのだが。

《鏑島の秘宝》

 教徒やハイヴらの襲撃を逃れた探索者らと榎田は、鍾乳洞を進む事になる。入り口にいては見つかってしまう可能性があるからだ。
 この場面は、鏑大獄舎での探索が済んだ後に始まるが、長くなるようなら頻りに場面を転換して進めても良い。

 探索者は鍾乳洞を進む事になるが、道が分岐する場所がある。道自体は結局繋がるのだが、片方は何もなく、もう片方は藍暴教の犠牲者の骨塚に続いてしまう。また結局繋がる為、石などを使っての音の反響も意味もなさないだろう。
 探索者にどっちを選ぶか委ね、「右」と言うのなら骨塚へ、「左」と言うのなら何もない道を進む。探索者の数に余裕があるのなら、二手に分かれるのもアリだ。


『骨塚』
 探索者が道を行くと、人骨が散乱した場所に辿り着いてしまう。探索者は驚き、【正気度 1/1D4】を行う。人骨の数はあまりにも多く、ざっと百人は超えていると見える。探索者が【医学】か【目星】に成功すると、どの骨も頭部が砕けているか、肋骨部分が破裂しているかと分かる。頭部の砕けている死体は、アイホートの申し入れを受け入れなかったが為に、アイホートに頭部を強打され死亡した者。肋骨部分が破裂しているか死体は、アイホートの雛を受け入れ、孵してしまった者だ。肉や内臓は教徒らによって取り除かれてトエルモやハイヴ、柳下によって食され、骨だけはここに置かれるのだ。

 また探索者はこの骨塚で【アイディア】に成功すると、一部の骨は酷くボロボロである事に気付ける。それは動かない対象を齧る性質のあるアイホートの雛が、ここで犠牲者の骨を齧っていた痕跡だ。
 榎田が同行していたか、【生物学】に成功すると、痕からして何かの生物が齧ったものだと分かるが、齧歯類にしては歯型がきめ細やかであり、ネズミの物ではないと分かる。


『海蝕洞』
 鍾乳洞を進むと湖が出現し、それが塩水だと分かるとその先が海に繋がっていると分かる。【聞き耳】に成功すれば、確かに海の音が聞こえてくる。
 水脈を辿って進めば、海蝕洞に着く。しかし、そこから脱出は潮が激し過ぎ、泳いで行くのは無謀だろう。それに夕方に差し掛かっており、海が暗くなり始めており尚更危険である。それでも泳ごうとするのなら、海洋生物学者の榎田から「この辺りは鮫が出ます、やめましょうよ!」と止められるだろう。
 それよりも目に付いたのは、錆が浮いた四隻の漁船だろう。名前を見ると、東尋丸、哀楽丸、應仁丸、第八洛陽丸とあり、警察官イベントを進めた探索者ならそれが、行方不明の漁船であると気付けるだろう。船に燃料は無く、動かないので脱出には使用出来ないだろう。

 船内に入ってみるのなら、包丁や護身用棍棒などの武器になりそうな物が手に入る。【幸運】に成功すると、日誌が読める。


「東尋丸、航海日誌」
 2001年7月9日、鏑島付近まで行く。ここは良く魚がとれる。暗礁に注意されたし、島から半径40メートルには入らない。

……変な船に絡まれる。船自体は日本の漁船だが、出て来たのは外国人。操舵しているのは日本人の、恐らく同業者の男だし、若いのが数人いる。何かを叫びながらこの船に近付いて来る。許可を得て漁に来ているハズだが。

……今、この船は占領されている。抵抗した仲間の1人が撃ち殺された。島の海蝕洞に入って行く。


 彼らはその後、儀式に利用されたり、ハイヴの遊び相手になったりと、悲惨な結末を辿ってしまった。誰かは島の何処かに野晒しにされ、誰かはあの骨塚にいるのだろう。

 海蝕洞の傍からも、更に鍾乳洞は続いている。


『地下室』
 鍾乳洞を進むと突然、人工物である鉄の扉が目に飛び込んで来る。しかし扉に入ろうとした途端、鍵が開いて中から2人の見張りが出て来るだろう。
 見張りは探索者に気付いた途端に襲いかかるが、銃は持っておらず、それでも軍刀で武装はしている。
【VS 藍暴教見張り】
 現時点で探索者は警官達から拳銃を譲り受けたり、或いは船から包丁などの武器を得ている為、抵抗は可能だろう。

 ある程度体力を減らすか、気絶させるかで戦闘は終了する。動けない程に体力が減ったのなら、諦めて彼らは舌を噛み切って自殺する。例え生きたまま尋問しようとしても舌を噛み切って自殺するだろう。それを見たのなら、【正気度 1/1D4】を行う。
 気絶か死なせるかで見張りを撃破したのなら、その先の地下室に辿り着ける。

 地下室は鏑大獄舎の第3支舎内ロビーホールの真下にある。そこには大量の、前時代の武器があり、何と大砲まで存在する。ここがまさに、鏑島の秘宝であり、忘れられた武器だ。ここには軍刀もあるし、探索者の中に武器の使用に心得のある探索者がいる場合は、以下の武器を持っていける。


三八年式歩兵銃……初期命中率・25、ダメージ・2D6+1、射程・90m、1ラウンドの攻撃回数・2または連射、装弾数・5、耐久力・12、故障ナンバー・00


九四式拳銃……初期命中率・20、ダメージ・1D6+1、射程・10m、1ラウンドの攻撃回数・3、装弾数・6、耐久力・6、故障ナンバー・00


十年式手榴弾……投擲による命中、ダメージ・4D6/4m、基本射程・500m、使い捨て、故障ナンバー・99。尚、かなり年代が古い為、作動するかは【幸運】に委ねられる。


軍刀……初期命中率・5、ダメージ・1D8+db、基本射程はタッチ、耐久力・15。年代が古い為、脆弱性から故障ナンバー・99と設定しておく。


 銃弾は、探索者のポケットなどの収納機能や耐えられる重量から、【STR×3】か【SIZ×3】の弾数を持っていける。手榴弾は、メンバー内で2つだけだ。

 また、地下室内で【アイディア】に成功すると何かの気配に気付ける。その上で【目星】に成功すると、武器と武器との間を素早く通り過ぎる白い物が目に入る。探してもそれは見当たらないが、視線だけは感じる為、【正気度 0/1D3】を行う。アイホートの雛が探索者を見ており、ハイヴにテレパシーで伝えてしまったのだ。

《白日の下》

 時間帯は夜に差し掛かる。本舎を探索し、柳下らに連行された探索者は、縛られた状態で目を覚ます。
 そこは鏑大獄舎第3支舎の4階にある大講堂だ。中は無数のカンテラで照らされ、大きな目が描かれた幕が降りる壇上を前に、椅子に括られているのだ。辺りを見渡すと捕まった警官らが生きてはいるものの、血だらけで縛られているのが分かる。大講堂は傷や弾痕まみれの、まるで戦場跡のような風である事に気付ける。探索者は突然の出来事に【正気度 1/1D4】を行う。

 暫くすれば、トエルモに車椅子を押されて現れる、足のない不気味な男が探索者らを見つめる。【心理学】に成功すると、男からは理性が殆ど無く、強い狂気のみがある事に気付ける。彼が藍暴教の現司祭である柳下信雄だ。

 柳下はニヤリと笑うと、語り出す。
「君達は、今は死んだ事になっている。船が暗礁に当たって難破し、総員生死不明。私の仲間である海上警備隊員が唯一の生存者として船の破片にしがみ付いている所を漁船に救出され、この不幸な事故を報告するだろう。もう、誰も君らを助けには来ない。少なくとも、この瞬間はね。
 私は柳下信雄と申します。藍暴教の現司祭……そしてこいつが、副司祭のトエルモ・バードマンだ。彼は左目、私は足が無いのは、捧げたからだよ。身体の一部を捧げれば、ハイヴ様より寵愛が受けられる」

 幕が上がると、そこには巨大な門があった。その門こそ、アイホートの住まう迷宮とを繋ぐ物であり、魔術によって作られたのだ。この禍々しい門に対し、【アイディア】に成功した者はその禍々しさに充てられ、【正気度 1/1D6】を行う。

 柳下は続けて、「ここを見なさい。酷い有様だろう。ここは前司祭たる小諏訪勝守らが、食料の尽きた後に、信者同士で互いを食べ合う為に争った後。
 君達が開けようとした金庫の中には、戦後の日本政府によって隠匿された忌まわしい事件の真相資料があったのだ。辿り着いた記念に教えてやろう、この島に何があったのかを」

 ここから先、柳下の口から鏑島事件の真相がこう明かされるだろう。
「戦時中、ここの看守長となった小諏訪勝守は、藍暴教の信者で看守陣を構え、独裁していた。囚人を藍の尊に捧げ、そして恩恵として数多の呪文を授かった。生贄を捧げる事と、余興として囚人を拷問したりと、ここは血と暴力の楽園として15年使われた。
 所が戦後、戦争反対者として捕まった者らの釈放が決まった。だが、その者らは全て拷問死したか、生贄として捧げられたかでいなかった。全員獄中死と言う報告に疑問を抱いたGHQは1948年に調査団を派遣した。この不手際に藍の尊の怒りを買った小諏訪らは、藍の尊によって狂わされ、調査団を皆殺しにした。
 その後は派遣された警官隊との交戦となり、10日間に渡り戦闘が続けられた。警官隊は疑問に思った、食料が少ないのに、何故こんなに保つのだろうか……10日後、突然音沙汰の止んだこの獄舎のこの場所に突入した所、彼らは互いを殺し合い自滅していた。辺りには食い散らかされた人間の死骸があったそうな。警官隊は気付いた、奴らは囚人を食っていたのだと、そしてそれさえも食べ尽くし、今度は仲間を食おうとしていたと。
 この事件は余りに衝撃的過ぎた、戦争復興に向かう日本の妨げとなると判断され、警官隊には緘口令を付けた上で事件は秘匿された。そう、これがこの島の秘密だよ」

 忘れられたこの場所を、次は15年前から新たな藍暴教徒が集い、再び聖地として復活させたと彼は告げた。そして今宵も、藍の尊の儀式を執り行うと宣言したのだ。
 柳下が呪文を詠唱すると、何と門が開き、中には巨大なトンネルが広がっていた。そんな光景はあり得る訳はなく、探索者は【正気度 1/1D6】を行う。このトンネルこそが、アイホートの住むイギリス、セヴァン谷の地下にある迷宮だ。まだアイホートは姿を見せていないが、じきに現れるだろう。

 しかし突然、柳下の顔が険しくなる。彼は呪文の「生命の察知」を行使し、地下にいる探索者らの存在に気が付いたのだ。彼はトエルモに残党狩りを命じた。


『雛の宿り主』
 場面は変わり、地下室にいる探索者に移る。地下室の入り口は隠し扉となっており、ロビーホールの片隅にある大鹿の首の標本裏から出られる。ロビーホールには今の所誰もいないので、安心して出られる。
 調べている途端に、出入口の扉を勢い良く開け、探索者らに襲いかかる男が現れる。探索者は戦闘に入ろうとするが、それを止めたのは第2支舎で探索を行っていた、永綱導入の探索者だ。
 ここでKPはその探索者の経緯として、探索中に教徒見つかったが殺されず、ここに連行されたが、暴れる男によって助けられ今に至る事を説明しておこう。そしてその男とは、一緒に囚われていた清水葉だ。

 清水はアイホートの雛を受け入れてしまい、雛により脳を壊されているのだ。途端に清水の容態は悪化し、蹲ったと同時に腹が裂かれ、中から蜘蛛のような小さな白い生物、アイホートの雛が飛び出す。探索者は【正気度 1/1D6】を行う。清水はそのまま生き絶え、生まれたばかりの雛は素早く、開け放たれた扉から逃げて行く。
 そして、入れ替わるように中に入って来たのがトエルモだ。トエルモには呪文により如何なる銃弾も効かないだろうし、元軍人であるばかりに手榴弾の回避も対人戦闘術も長けている。探索者が銃を撃てば身体が弾き、手榴弾を投げれば爆発前に蹴飛ばして回避するし、拳や軍刀で立ち向かえば容易く受け流され攻撃されるだろう。

「4階だ、4階で儀式を行う。邪魔をするな」
 圧倒的な強さを探索者に誇示した時、地下室に続く隠し扉から、汐見と永綱が現れる。


『怪物VS刑事』
 汐見はトエルモの前に躍り出ると、彼を投げ飛ばした。彼の右胸から背中にかけて包帯が巻かれており、病み上がりだと分かる。永綱の説明では、「船が難破したと聞いて、妙だと思ったんだ。居ても立っても居られなくなって、知人の漁師に電話で頼んでここに来たんだよ。その時にこの刑事さんが警察署に来ていて、話を聞かれて……でもまさか、同行するだなんて思わなかったよ」と、2人が来た経緯を話してくれる。汐見もまた島に対してきな臭さを感じており、そして難破事故の話でますます焦燥感を募らせやきもきしていた訳だ。

 更に、「松枝さんから、古い鏑島の地図を貰っていたんだ。何でも、南と言う人と一緒に見つけたらしくて。その地図で海蝕洞を見つけたんだ」と付け加える。
 物理攻撃には無敵のトエルモだが、それでも投げ飛ばされれば大きなタイムロスだ。汐見とトエルモが睨み合う間、探索者らに「先に行くんだ。何が何だか分からんが、まだ助けるべき人間がいるのだろ。もう警官だの一般市民だのは無粋だ。ここまでの生存能力を見越し、君達に救助を命じる。何をしても正当防衛としてやる。行くんだ」と告げる。彼はトエルモとやり合うつもりなのだ。

 探索者が汐見に加担したいのなら、【信用】か【説得】に成功した者のみ、戦闘に参加出来る。ただし全員が参加されては本末顛倒な為、永綱と共に4階へ救助に行くメンバーも決めなくてはならない。最も、銃弾だのが食らわないトエルモ相手の為、汐見の囮として動く事となる。しかしそれでも倒し切る事は叶わず、3ラウンドの後に深傷を負う汐見を強打して気絶させる。次に探索者に迫ろうとして来るので、今度こそは逃げなくてはならない。

《決死の階段》

 4階までの階段をひた走る事になるが、勿論道中が無事な訳がない。3階に入ろうとした時に武装した藍暴教の教徒が3人、待ち構えている。探索者は【DEX×5】のロールに成功したのなら、敵が完全に気付く前に不意打ちが可能となる。
 戦闘場所はソファやテーブル、扉の裏や壁など遮蔽物が多く、【隠れる】か【DEX×4】のロールに成功する事で、遮蔽物で敵の射撃を回避出来る。探索者らに戦闘能力が無い場合は、ここに隠れる事で次のイベントが進む。

 或いは戦闘が3ラウンド進んだ場合、突然窓を塞ぐ板や鉄板を吹き飛ばし、ハイヴが乱入する。【回避】か【隠れる】成功しなければ、ハイヴの不意打ちを食らう事になり、【ダメージ 1D6】をロールする。食らったとしても【武道】や【幸運】で受け身は取れ、【ダメージ 1D3】に半減出来る。
 またダメージを負った探索者は、一緒にくっ付いて来たアイホートの雛たちに身体を齧られ、【STR×5】に成功しない限り、【1D10分間】、1ポイント耐久力を齧り取られ続けてしまう。
 ハイヴの攻撃は探索者のみならず、教徒らにも襲いかかり、倒れ伏した教徒を良く観察しようとしたり、【目星】か【アイディア】に成功してしまうと、彼らの身体を無数のアイホートの雛が齧り尽くしている様を見てしまい【正気度 1/1D6】を行う。

 ハイヴは探索者を見つけると「お父様が来られるの。けどお腹が空いたの。少し腹ごしらえでもするわ」と言う。探索者は、白い肌が蠢いている事に気付き、彼女はあの白い蜘蛛のような生物の集合体だと気付いてしまい【正気度 1/1D6】を行う。
 ハイヴとの戦闘はまず無謀だ。彼女は身体の一部を雛に崩し、壁や天井を高速で這って翻弄する上に、弾を当てたとしても雛の集合体である彼女には効果がないだろう。

 ハイヴは自身の身体を分裂させ、単独で動く雛達を差し向け探索者を食い殺そうとする。【回避】に成功する事で雛の群れを躱せるが、当たれば【1D10分】の間、【STR×5】に成功しない限り1ポイント耐久力が減り続ける。2ラウンドの回避を行なった後に彼女から逃れる為、探索者達は永綱の誘導で3階大倉庫に入る扉に逃げる事が出来る。
 扉は鉄製の頑丈な物であり、施錠すればいくらハイヴだとしても突破は困難だろう。

《トエルモとの最終決戦》

 大倉庫内で【聞き耳】を嗅覚補助としての知覚要素で扱い、成功するとガソリンの強い匂いに気が付く。【目星】に成功すると倉庫の天井からガソリンがポタポタと落ちており、それがある一帯に染みを作っている。この倉庫の天井に、ガソリンのタンクが隠されているのだ。

 ハイヴは扉を叩いて押し破ろうとするが、突然音が止み、そのすぐ後に扉が追い付いたトエルモによって突破される。トエルモとの戦闘をしていた探索者がいる場合、この扉の前で追い詰められ、倉庫内の探索者らに助けられる事にしよう。

 トエルモは汐見との戦闘で酷く窶れ、滲んだ血が顔のマスクを染めている。彼は探索者らを4階へ上げない事を第一と考えて襲いかかる。
 その時、榎田が探索者に耳打ちで「ガソリンで燃やせまいか」と提案する。倉庫中心部に天井から漏れたガソリンが大きな染みを作っているのだ。探索者はトエルモを誘導しなければならない。
 方法としては、トエルモのヘイトを貯める為に【言いくるめ】で挑発する。或いは攻撃を続けると言った事で彼を誘導し、序盤でライターを拾った探索者が染みに向かって【投擲】でライターを放り込み火を放つ。失敗の場合は他の探索者がライターを【幸運】で拾い上げ直接染みに火を点ける他無い。

 途端にトエルモの足元に火が点き、それは靴、ズボンに急速に伝播して行き、トエルモの全身を包む。探索者がもし、投擲ではなく直接付けに行ったのなら少なからず服に燃え移り、【幸運】に成功か他の探索者が消さなければ【ダメージ 1D4】を負い続ける事になる。

 トエルモは全身が炎上し、苦痛の叫びをあげながらも探索者を捕らえんと、詰め寄る。しかし天井に穴が開き、ガソリンタンクの1つが彼の足元に落ちる。それにも火が燃え移り、トエルモを巻き込んで爆発する。この爆発によって、その場にいた探索者は【幸運】か【武道】の受け身にに成功しない限り、【ダメージ 1D5】を負う。
 不死身のトエルモも、とうとうここで息絶えたのだ。
 爆発炎上する3階にて、探索者やNPCを引き摺り出してくれたのは汐見だった。

《最上階の饗宴》

 視点はまた、拘束されている探索者へと戻る。激しい振動と爆発音が起こり、探索者は激しく倒れてしまう。その間も門の向こうより禍々しい気は強くなる一方だ。
 しかし柳下は非常に怒り、残っている2人の教徒に命じて3階にいる探索者の殺害を命じるが、そのタイミングで永綱、榎田、汐見と探索者が4階に突入し、ここで全探索者が合流する事になる。辿り着いた時、初めて門を見た探索者は【正気度 1/1D6】を行う。
 拘束されている探索者は救助可能であり、戦力となれる。しかし他の警官達は酷く衰弱しており、戦力にならないだろう。警官達を傍に寄せる為に、永綱と榎田が一旦抜ける。汐見と探索者での戦闘となる。
【VS柳下信雄、教徒2人】
 柳下はアイホートより授かった呪文を使い、探索者を攻め立てるだろう。投げナイフを投擲すれば、「無欠の投擲」により探索者を追尾して刺さるだろう。
 しかしそれでも、2人の教徒が先にやられた場合は一斉攻撃を前に押し切れなくなる。

 探索者が柳下らに勝利すると、再び永綱と榎田が合流する。息も絶え絶えな柳下に【心理学】を行うと、彼が永綱の存在に動揺している事に気が付く。
 心理学に成功した後に動揺している訳を聞くか、或いは永綱の御守りの事を覚えている探索者が質問するかで、彼は「忌まわしき、小諏訪勝守と白石凛花の末裔め! 呪われろ! 112の囚人によって生まれた神の子と、今に藍の尊……トエルモが『アイホート様』と呼ぶ御大が現れ、皆殺しにするだろう!」と呪詛を吐く。
 開かれた門を閉めなければならないと気付いた榎田は皆に命令し、門を閉めにかかる。門は、押せば少しずつ閉まるが、なかなか重く3人でも厳しい程だ。

「門を閉めるか! いいや間に合わん! しかし小諏訪の子孫よ! 貴様は、我らの儀式を破滅させる! 神の子殺しの……!」と言った所で、彼の腹が裂かれてアイホートの雛が10匹飛び出す。探索者は【正気度 1/1D4】を行う。

 死亡した柳下の死体を這った後、その雛は探索者らの足下を抜けて、大講堂の天窓に向かう。天窓の前で待っていると、それを突き破って登場したハイヴに吸収される。ハイヴは彼を「喋り過ぎ」と罵倒し、探索者らに襲いかかる。


『VSハイヴ』
 ここからはスピード勝負だ。探索者が10ラウンド内に門を閉めきらなければ、バッドエンドとなってしまう。門は4人以上で押し、【STR×5】で成功した探索者やNPCの数に応じてポイントが1点ずつ加算され行く(例えば、榎田と汐見が成功した上で、探索者2人も成功したら、4点だ)。そのポイントが15点に達した時に門が閉まる。倒れている警官の内、2人は【応急手当】か【医学】で復活可能であり、補助してくれる。
 だがその間、ハイヴは容赦無く探索者らに襲いかかるだろう。ハイヴは身体を分裂させ、探索者らに雛達で噛み付かせる。これに対して【回避】しなければ雛が齧り付き、【STR×5】に成功しない限り耐久力が1つずつ削られる。その状態でも門を押す事は可能だが、非常に厳しい状況だろう。
 また、雛を大量に差し向けて探索者らを引き摺り回そうともする。その場合はダメージは無いが、引き摺られている為に門を押す事が出来なくなってしまう。引き剥がす方法は【ハイヴのSTRと探索者のSTRでの対抗ロール】に加え、2ラウンド目は【幸運】で逃げられる。他の探索者は引き摺られている探索者を救う方法として、ハイヴを撃つか、引き摺っている雛を射撃か打撃で追い払うかだ。追い払う場合、【DEX×5】で追い付け、1ラウンド二回行動を特別に許可し、雛へ直接攻撃可能だ。

 それらが叶わず引き摺られ続けて3ラウンドに達した時、探索者はハイヴの下へ運ばれて行き、彼女の身体を構成する全部の雛に飲まれてしまう。最初の攻撃時は【正気度 2/1D8】を行い、その後【STR×5】に成功しない限り、耐久力が2ポイントずつ減って行く。探索者が銃を撃つなりで助ける事も可能だ。

 ハイヴの対処として、囮となって門を押すチームを援護する方法と、永綱の御守りがある。永綱の御守りにある『雛殺しの呪い』こそ、ハイヴを倒す唯一の方法である。
 御守りの使用は、御守りに何かしらの効果があると気付いた探索者に限定して、使用が認められる。アイディアロールによる提案は不可だ。
 探索者は永綱から御守りを貰うと、【アイディア】に成功で不思議な力が宿っている事に気付く。ハイヴに反応し、呪文が効力を得たのだ。方法として、永綱の教えと小諏訪の手紙から「投げつける或いは付ける」事だと気付いたのなら、探索者は【6マジック・ポイント】を消費した上で【投擲】でハイヴ目掛けて投げつける事が出来る。しかしハイヴも回避をするだろうし、もし回避されたのなら落ちたそれを拾い直し、またマジック・ポイントをかけなければならない。
 投擲で投げつけるか、御守りを持ったままハイヴの懐に【DEX×5】で突撃するかで、御守りの効果が発揮される。

 御守りがハイヴに触れた瞬間、御守りは彼女の中に飲まれて行き、そのパワーが伝播するように身体を構成する雛達の複数匹が死に絶え始める。ハイヴの行動が停止するのだ。それでも抵抗はするものの、彼女の全ての技能に【-10】の補正がつき、2ラウンド後にはとうとう悲鳴をあげながらバラバラになり、鬘と血濡れのワンピースを残して死に絶えた雛達の塊となってしまう。その塊の中に御守りもあるだろうが、取り出す暇はないだろう。


『あと少し』
 10ラウンドに入ってしまっても、残りポイントが3つであれば、ラストチャンスとしてアイホートとの押し切り勝負が始まる。閉まり始める扉を、アイホートは中から叩いて抉じ開けようとする。この時ふと、扉の隙間を見てしまうと、白いブヨブヨした物が広がり、それらには瞬きのしない無数の目が探索者を睨んでいる様を見てしまい、【正気度 1D6/2D6】を行うこと。狂気に陥ってしまった探索者は、門を押す事が出来ない。

 アイホートが出てこようと抵抗する中で、探索者らはNPC含めて【STR×4】をロールし、成功者の数が総員数の半数以上を超えたのなら扉を閉める事が出来る。つまり、NPC含めて6人いるとしたら、3人成功すれば閉められる。奇数の場合、5人ならば3人、7人なら4人だ。これに失敗した場合は、バッドエンドだ。

《おやすみ鏑大獄舎》

 結末として、『グッドエンド』、『ハッピーエンド』、『バッドエンド』、『カタストロフエンド』があり、グッドエンド・ハッピーエンド後に『オーメンエンディング』、『ノーマルエンディング』、『トゥルーエンディング』、『アフターエンディング』がある。それぞれで得られる報酬も変わる。


『戦闘後』
「カタストロフエンド」
 門は開け放たれ、アイホートが現れた上で、御守りでハイヴを殺していた場合。
 アイホートは自身の雛が殺される事に強い怒りを持ち、問答無用でその場にいる者全てを殺害して回る。NPCと探索者らを巨大な脚で踏み付け、或いは巨体で押し潰し、或いは腕で握り潰し、或いは嚙み殺し……これらの攻撃で1人の探索者以外を殺害する。残された1人は【正気度 1D10/1D100】を行なう。
 例え狂気を免れたとしても……狂気に陥っていた方が良いのかもしれないが……怒れるアイホートは探索者を無数の目で睨み付け、腕でその頭部を殴る。その一撃は頭蓋骨と脳を破壊し、探索者を一瞬で殺害した。
 後に島へ来た警官隊は、燃え盛る鏑大獄舎を前に成す術が無かった。全て、燃え尽きてしまったのだ。
【CATASTROHU・END『嵐の後』】


「バッドエンド」
 門は開け放たれ、アイホートが現れた上で、ハイヴが死んでいない場合。
 探索者の1人は気が付くと、開ききった門の前で倒れていた。気絶している皆の上を闊歩するは、巨大な生物、アイホートだ。探索者は【正気度 1D6/1D20】を行う。
 アイホートはハイヴを門の向こうに控えさせ、気が付いた探索者に近寄り、語りかける。
「選べ。宿すか、死か。有益な魂か、無駄な魂か」
 探索者が断れば、アイホートはその太い腕で探索者を殴り、頭蓋骨と脳を破壊し死に至らしめる。
 探索者が受け入れたのなら、アイホートは雛を埋め込む。同様な手順をこの場にいる者全てに行い、汐見、永綱は断ったが為に死んだ。

 朝日が昇り、警官隊が調査に来る。燃え盛る鏑大獄舎から、探索者は逃げ切っていたのだ。保護された探索者は警官達に担がれる途中、ふとその警官が腰にかけている拳銃に目が行くと同時に、強い殺人衝動が湧いた。アイホートの雛が、そう仕向けるのだ。
 調査報告には……錯乱状態に陥った生存者が警官から銃を奪い、乱射。正当防衛の為、全員が射殺されたとある。
【BAD・END『嵐の前』】


「グッドエンド」
 門は閉めたが、ハイヴが生きている場合。
 門が閉じた瞬間、それは霧のように消えた。それを見たハイヴは怒り狂うより先に絶望し、「絶対に、貴様らを、殺してやる!」と叫んだ後に身体を分裂させ逃げてしまう。
 ハイヴが逃げた理由は、下の階の火が広がっていたからだ。逃げ場を失った探索者だが、ヘリコプターの音が近付いて来る。青森県警の助けが来たのだ。ヘリコプターに乗っていた松枝が「いたぞ! 生きている!」と誘導し、救助が行われた。

 3階のガソリンに火が入り、途端に大爆発が起こる。それにより火の手は更に広がり、鏑大獄舎全体を覆った。
 探索者は生き延びた報酬として、1D6の正気度が手に入る。
【GOOD・END『怪物は死なず』】


「ハッピーエンド」
 門を閉めた上にハイヴも倒した場合に起こる。
 進行自体はグッドエンドからハイヴの下りを消去した物だが、ヘリコプターの中で松枝が1人の探索者に話しかけてくれる。
「大丈夫かい。良く、頑張ったもんだ……南さんに話して、救助隊を寄越して貰ったんだよ」
 鏑大獄舎は激しい爆発を起こし、地下に沈下した。地下倉庫の火薬に火が付いたのだろう。
「過去の呪いは、火にくべるのが一番だ」と、燃え盛る鏑大獄舎を見て彼は呟いた。
 探索者は生き延びた報酬として、2D6の正気度が手に入る。
【HAPPY・END『全ては終わり』】



『後日談』
「オーメンエンディング」
 グッドエンドの後。
 南の依頼を受けた探索者は、彼の元に来る。最初、彼から依頼の話をした料亭だ。
「今回の件、申し訳なかった。大変な事に巻き込まれたね。報告は聞いたよ……私の父は、拷問死されたのだな。いやしかし、妙なカルトの生贄に捧げられなかっただけマシかもしれない……後で調べたが、私の父は第1支舎に資料があるらしい。だがもう燃えてしまったな……写真があれば、顔を見てみたいが……いや、良い。私の父の事が知れたのだ、感謝しているよ」と話す。
 続けて、「地下鍾乳洞の骨塚の人骨は、全て回収したよ。勿論、島に放置された死体も……恐ろしい出来事だったな。しかし、戦前の武器庫もガソリン燃料も、全て吹き飛び無くなったそうだ。まぁ、そんな過去の遺物、とっとと消えた方が良かったろう」と話す。
 藍暴教がどう島を渡ったかについては、「彼らの仲間である漁師らを見つけた。此奴らが島に人を運んでいたようだ。まぁ、捕らえたからもう心配はない」と明かしてくれる。

 更に彼はハイヴについて言及する。「島は、今度こそ閉鎖するそうだ。報告によれば、危険な存在がいるとか。しかし、その後は100人規模の捜索が開始されたが……カルト信者の残党以外、女の子なんて見つからなかったが……君は、あそこで幻覚でも見たのではないか?」と聞く。
 ともあれ、今日は労いとして、豪勢に振舞ってくれる。探索者はそれらに舌鼓を打つが、不意に見た窓の下に、ニタニタ笑うハイヴがいた。探索者が愕然とした瞬間、汐見から電話だ。
「落ち着いて聞いてくれ! 永綱遠時と榎田博士が殺害された……! 全身、食われて……!」
 窓の下に、ハイヴはもういなかった。
【OMEN・ENDING『血濡娘の牢獄』】


「ノーマルエンディング」
 ハッピーエンドを迎えたが、小諏訪の手紙を見つけていない場合。
 オーメンエンディングから、ハイヴについての下りを消去。続いて、再入院した汐見の見舞いに来た松枝の話が入る。
「私の祖父は、この鏑島事件の鎮圧隊だったようだ。納得したよ……恐ろしい物を見たんだ。いや、これで祖父の事が知れたよ、有り難う」
 続いて、汐見が「奴らの仲間の1人が、地元の古い漁師だったんだ。道理で暗礁も抜けられたし、好きに海に出れたんだ。しかしあんな怪物が実際にいるとは。当分、眠れそうにないな」と笑いかける。彼は無理をした上にトエルモとの戦闘で更に無理をし、包帯まみれになっていた。「青森県民の包帯まみれおじさんですね」と笑う松枝に、汐見は苦笑いを見せた。

 次に汐見は「結局、奴らは何故、永綱遠時を狙ったんだ?」と話す。そこは分からない。
 探索者は、ハッピーエンドの報酬プラス、1D10の正気度が手に入る。
【NORMAL・ENDING『置いて来てしまった謎』】


「トゥルーエンディング」
 ハッピーエンドかつ、小諏訪の手紙を見つけた場合。オーメン、ノーマルエンディングから、ハイヴの件と汐見の質問の下りを消去する。そして、永綱遠時に呼ばれる。
「……僕の曽祖母が白石凛花で、曽祖父が小諏訪勝守……凄く複雑だな、あの事件の元凶が先祖だなんて……そして、小諏訪が先祖だったから助かっただなんて。白石凛花は大獄舎で小諏訪の子を身籠り、本土で産んだ。けど、お守りを狙う信者に襲われ、その子供が殺されたって事だろう。お守りはあの島で、多分燃えて消えたが、それでもう過去の因縁も消えたと思っているよ。あ、そう言えば、海蝕洞に放ったらかしにしてた漁師さんに怒られちゃって……ははは! 参ったよ!」
 探索者は青森県を去らねばならない。新幹線に入り、「また、遊びに来てよ! 楽しい所は沢山あるんだ!」と笑顔で手を振る永綱を後に、新幹線は走り出す。
 探索者はハッピーエンドの報酬プラス、2D10の正気度が手に入る。
【TRUE・ENDING『さよなら鏑大獄舎』】


「アフターエンディング」
 ノーマル、トゥルーエンディングを迎え上で、ランダムに選んだPL2人に【1D100】でダイスを振らせ、【1〜50】の間の出目が出た場合に発生。
 事件の二ヶ月後、榎田から探索者全員にメールが届く。
『遅いメール、堪忍して欲しい。あの日から僕は酷い悪夢に悩まされている。未来ある学生も死んでしまった、色んな人が死んでしまった。僕に罪はないにしろ、後悔と懺悔の日々を送っている。
 でも、このままでは駄目だ。そう思い、今は大西洋の海洋生物調査に行っているよ。論文はまだ公開出来ないけど、もう完成する。僕には腐っても、研究しかないからね。
 そう言えば、鍾乳洞の中で拾った写真があったんだ。誰だろう? 色々あり過ぎて忘れていたから、画像を添付するよ』
 それは、褪せた写真だった。子を身篭った妻と幸せそうに笑う夫の姿。下には、『南秀吉、南幸子』と名前があった。南の父親は、家族の写真を守り通したのだ。
 探索者はハッピーエンドとノーマル或いはトゥルーエンディングの報酬プラス、2D10+10の正気度が手に入る。
【AFTER・ENDING『拝啓、70年後の息子へ』】

【NPC】

永綱遠時(25)、因縁深い図書館司書
STR.10. CON.11 SIZ.12 INT.15
POW.10 DEX.13 APP.10 EDU.18
正気度:50 耐久力:17
db:+0
技能:回避、55% 応急手当、60% 聞き耳、55% 図書館、70% 博物学、50%
武器:キック、64% ダメージ・1D6
組み付き、50% ダメージ・特殊
棍棒、50% ダメージ・物による
ナイフ、45% ダメージ・物による


汐見辰雄(57)、昭和的な刑事
STR.13 CON.10 SIZ.14 INT.13
POW.12 DEX.11 APP.10 EDU.13
正気度:60 耐久力:17
db:+1D4
技能:回避、50% 運転(自動車)、70% 隠す、75% 信用、65% 説得、55% 法律、50% 目星、50% マーシャルアーツ、70%
武器:こぶし、70% ダメージ・1D3+db
キック、60% ダメージ・1D6+db
SIGザウエルP220(拳銃)、58% ダメージ・1D10
警棒、65% ダメージ・1D6+db
柔道(立ち技系)、80% ダメージ・特殊(クトゥルフ2010参照)


榎田東児(43)、冒険的な海洋学者
STR.9 CON.15 SIZ.12 INT.17
POW.8 DEX.12 APP.12 EDU.22
正気度:40 耐久力:19
db:+0
技能:回避、45% コンピューター、70% 忍び歩き、80% 生物学、96% 図書館、55% 博物学、60% 水泳、75%
武器:こぶし、70% ダメージ・1D3
棍棒、60% ダメージ・物による
ナイフ、50% ダメージ・物による


首藤信(22)、不幸な大学院生
STR.10 CON.11 SIZ.14 INT.17
POW.10 DEX.9 APP.15 EDU.20
正気度:45 耐久力:18
db:+0
技能:コンピューター、80% 写真術、50% 生物学、70% 登攀、80%
武器:こぶし、50% ダメージ・1D3


清水葉(25)、哀れな深夜警備員
STR.12 CON.10 SIZ.10 INT.14
POW.11 DEX.13 APP.12 EDU.13
正気度:32 耐久力:15
db:+0
技能:聞き耳、65% 製作(小物)、70%
武器:こぶし、50% ダメージ・1D3
キック、50% ダメージ・1D6


南我一郎(74)、賢明な元外交官
STR.9 CON.12 SIZ.12 INT.15
POW.9 DEX.6 APP.11 EDU.22
正気度:45 耐久力:18
db:+0
技能:言いくるめ、70% 経理、95% 信用、80% 心理学、70% 説得、80% 図書館、55% 法律、70%


松枝現(45)、頼れる資料課長
STR.12 CON.12 SIZ.13 INT.15
POW.9 DEX.12 APP.13 EDU.19
正気度:45 耐久力:19
db:+1D4
技能:応急手当、70% 聞き耳、55% 考古学、60% 人類学、55% 図書館、80% ナビゲート、74%


柳下信雄(55)、狂気の藍暴教司祭
STR.9 CON.9 SIZ.10 INT.15
POW.13 DEX.6 APP.5 EDU.20
耐久力:15 MP:13
db:+0
技能:信用、90% 心理学、70% クトゥルフ神話、10% 経理、78%、投擲、80%
武器:投げナイフ、(投擲) ダメージ・1D6
九四式拳銃、60% ダメージ・1D6+1
呪文:深淵の息、アイホートとの接触、生命の察知、被害をそらす、無欠の投擲、幽体の剃刀
装甲:肉体の保護が行われており、与えられるダメージを-2出来る。


トエルモ・バードマン(56)、邪眼の怪物
STR.13 CON.12 SIZ.14 INT.14
POW.13 DEX.10 APP.10 EDU.15
耐久力:20
db:+1D4
技能:回避、65% クトゥルフ神話、10% 忍び歩き、80% 追跡、75% ほかの言語(日本語)、65% 母国語(英語)、75% マーシャルアーツ、55%
武器:頭突き、65% ダメージ・1D4+db
大鉈、70% ダメージ・1D6+db
噛み付き、75% ダメージ・1D3+1+db(STR対抗で勝たない限り噛み付き続ける)
引きちぎり、55% ダメージ・2D6+2+db(噛み付きのまま2ラウンド入った後に使用可能)
CQC(立ち技系)、80% ダメージ・特殊(クトゥルフ2010参照)
装甲:アイホートの寵愛により、彼には如何なる物理攻撃が通じない。


ハイヴ、牢獄島の血濡娘
STR.18 CON.17 SIZ.8 INT.16
POW.18 DEX.14 APP.16
耐久力:21 回避:50%
db:+1D6
武器:分裂攻撃、70% ダメージ・相手が引き剝がさない限り、1ポイントずつ。
引き摺り攻撃、65% ダメージ・特殊
噛み付き、75% ダメージ・1D6+db


護衛の警官隊
   A   B   C   D
STR. 13  10   12   14
CON. 12  16   12   13
SIZ. 13  14   10   12
POW.13  12   14   11
DEX. 10  13   14   12
耐久力:13 14   12   12
db: +1D4 +1D4  +0  +1D4
技能:回避、40% 目星、50% 聞き耳、70% 信用、70%
武器:こぶし、60% ダメージ・1D3+db
キック、60% ダメージ・1D6+db
SIGザウエルP220、55% ダメージ・1D10
警棒、54% ダメージ・1D6+db


藍暴教徒5人
    A   B   C   D   E
STR. 12   13   14   10  10
CON. 10   12   14   9  13
SIZ.  10   11   12  11  10
POW. 12   7   10   12  14
DEX. 14  10    12  13   9
耐久力:10  12   13   11  11
db:  +0  +0  +1D4  +0   +0
技能:回避、50%、忍び歩き、50% 目星、38%
武器:こぶし、80% ダメージ・1D3+db
九四式拳銃、70% ダメージ・1D6+1
警棒、75% ダメージ・1D6+db


巡回する藍暴教徒
   A   B   C   D
STR. 11  13   12   13
CON. 13  10   13   11
SIZ. 12  16   10   10
POW. 12  14   14   13
DEX. 11  11   15   13
耐久力:12  13   14  14
db:  +0 +1D4  +0   +0
技能:回避、60% 目星、70% 聞き耳、65%
武器:こぶし、80% 1D3+db
九四式拳銃、70% 1D6+1
三八年式歩兵銃、65% ダメージ・2D6+1


見張り2人
   A   B
STR. 13   14
CON. 14   12
SIZ. 12   11
POW. 13   9
DEX. 14  15
耐久力:14  12
db: +1D4  +1D4
技能:回避、45% 目星、50% 聞き耳、50%
武器:こぶし、80% ダメージ・1D3+db
キック、75% ダメージ・1D6+db
軍刀、60% ダメージ・1D8+1+db


柳下の護衛の2人
   A   B
STR. 16  13
CON.12  14
SIZ. 14  10
POW. 9  13
DEX. 14  13
耐久力:15  15
db: +1D4  +0
技能:回避、55% 聞き耳、47%
武器:こぶし、90% ダメージ・1D3+db
キック、85% ダメージ・1D6+db
九四式拳銃、80% ダメージ・1D6+1
三八年式歩兵銃、75% ダメージ・2D6+1
軍刀、65% ダメージ・1D8+1+db

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 クトゥルフTRPGが大の好き好きであります、映画みたいなCoCシナリオを書くの好きな人。監督と呼ばれたい。  こちらにあるシナリオは全て、旧CoC6版を遵守しております。7版対応に関しては、このサイトでは視野に入れておりませんので、留意願います。  色々は、URL辿ってTwitterより。

https://twitter.com/ergotBear

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