大分県豊後大野市、『落堂町』。人口の減少は進むものの、落堂温泉が旅行客を呼ぶ活気のある町。この町では珍しい物が二つある。
一つは、冬に行う雛流し『落堂祭』。もう一つは『麒麟を信仰する神社』。
そして奇妙な事も一つ……この町の周辺では、良く人が行方不明になるらしい。
*Boothにて、この作品を7版リメイクした『心臓と麒麟』を有料頒布中です。
麒麟のいる街
きりんのいるまち
いないのにいる、見えるのに遠い。
まずは一読、感謝致します。二作目ですが、どうぞ宜しく。
前回は京都を舞台としましたが、今回は趣向を変えた大分県の田舎町を舞台とします。勿論、架空の町であります故、キーパー様のお好きな様に改変して貰いましても十分通じる内容となっております。今回は日本の風土に入り混じるクトゥルフ神話と言う事で、『クトゥルフ神話2015』を参考した内容とさせて頂きました。
前作『ウェルミスの心臓』共々、色々と負担かつ時間のかかる初心者には優しくない内容となっております(笑)まぁ、何卒どうも。
今回のシナリオでは『ロイガー』が登場しますが、こちらのロイガーは双子の方では無く『ロイガー族』の方ですので、留意願います。また祭りの最中に起こる事件と言うなら『ひぐらしの鳴く頃に』をリスペクトした内容でもありますとも申し上げておきます。リスペクトであり、丸コピではありませんので悪しからず。失礼しました。
大分県豊後大野市のほぼ郊外にある町、『落堂町(らくどうちょう)』。この町には平安時代より、二体の『ロイガー』が巣食っている。
元々は眞勝村(まかつむら)と呼ばれ、現在は1976年に合併して共に落堂町となっているが、合併前の隣村である慧斗村(けいとむら)とは対立関係にあった。万病に効くと言われる秘湯を巡った争いである。秘湯は現在、落堂温泉として観光名所となっている。
江戸中期の頃に秘湯が見つかり、最初は両村共に使用していたが慧斗村が独占。同時期に流行病(インフルエンザ)が起こり、眞勝村は半数の村民が死んだにも関わらず、慧斗村には被害がなかった為に秘湯が病を打ち消すと考えられた。
実際は眞勝村は行商の休憩処であった為、旅人経由で感染した故に被害が甚大だっただけである。結果として眞勝村は秘湯奪還を目指し、慧斗村へ攻撃をしたり等を繰り返した。だが流行病で疲弊した村が慧斗村に勝てるハズもなく、惨敗。
報復に慧斗村が眞勝村を滅ぼしにかかろうとした1810年『麒麟』が来訪し、慧斗の者を撃退する。麒麟とは『ロイガー』の顕現体であり、何が彼らをそうさせたのか日本にやって来たのだ。
ロイガーは眞勝村を守る代わりに、一年に一度に童男童女の生贄を最低五人は要求した。若い精神力はロイガーの趣向に合うようだ。
方法は生贄となった者を山奥の御堂に閉じ込めさせ、一週間放置する。その間ロイガーは生贄の精神力を吸引し、精神崩壊の手前で死なさず、一週間いたぶり精神力を糧とするのだ。生贄は一週間後に御堂から出されるが、発狂と衰弱状態で数日の命だ。そのような冒涜的儀式をロイガーの言い付けにより村の大多数には知らせず、当時の実力者であった者らの『暗部』が何も知らない子供を攫っては強制的に生贄にする。その他の村人には、麒麟の伝承だけが広がった。
また暗部はロイガーの気紛れに似た教示で、呪術を会得した。これは恨めしい人物に見立てた『ヒトガタ』を呪詛を込めて川に流したのなら完了する。
川上が眞勝で、川下が慧斗だった為、眞勝から流れたヒトガタは慧斗へ流れ着く。するとヒトガタは翌日に意思を持って動き出し、その人物を遠くから眺め出す。特に危害のない呪術だが、本人はヒトガタが自分を監視していると感じて精神的に不安定となり、そこに漬け込んだロイガーが精神力を吸引する事で発狂死させた。不可視の生物たるロイガーの精神力吸引の為、原因はその呪術だと思い込まれたのだ。一年に一度慧斗では誰かが狂い死ぬと言う事態が発生して『眞勝の呪い』として恐怖する。
最初の内は抵抗していた慧斗だが、報復の為に眞勝へ行けば不可視のロイガーに襲われ、だからと言えど我慢すればヒトガタがやって来て一年に一人ずつ発狂死する状況に耐え切れず、命には変えられないとして秘湯の明け渡しを持ち掛けた。1851年の事だ。
それからは眞勝村が秘湯を独占し、代わりに呪いの儀式を取り止めたが、この呪いの儀式を眞勝村民たちには『冬の雛流し』としてカモフラージュしていた為に、祭りとして皮肉にも親しまれている。またロイガーを麒麟として崇め、生贄を攫っては『裏祭』にて毎年捧げている。
その後、大政奉還を経て明治に入り、廃藩置県等の日本改革の最中に、眞勝村と慧斗村は併合され、現在の落堂町となった。
現在も落堂町では冒涜的な生贄儀式が行われる。江戸時代の暗部が家業として代々受け継ぎ、子孫たちである暗部が何も知らぬ人間を生贄として誘拐し、儀式を毎年行なっているのだ。実はロイガーは生贄だけでは無く、村の人間からも精神エネルギーを吸引しており、奴隷にしていたのだ。こうする事により、自身の存在が伝承上で風化する事を防いでいた。
少子高齢化が進む落堂町は、町の人間を生贄にするより他県や秘湯を求めにやって来た旅行者等を数名誘拐して生贄にするようになった。12月27日の雛流しにて儀式を行うのだ。そしてこの儀式の秘密を守る為に、逃げ出した生贄は止むを得ず町に出る前に殺害する。
また暗部に勘付いた者が町内にいる場合には捕まえ、御堂に軟禁しロイガーの糧にするか、呪いの儀式で精神弱者にしてこれまたロイガーに襲わせる。一度ロイガーが標的に定めたのなら、何処へ行っても精神を吸引される体質となるのだ。
因みに現在まで、眞勝と接触したロイガーは一体のみだったので、暗部さえ二体いる事実は誰も知らないが、ロイガーと初めて接触した者の描いた『眞勝伝承』にてもう一体の存在を思わせるような絵がある。
舞台は大分県豊後大野市にある架空の町、落堂町である。探索者は導入からスタートし、様々な立場の人々に関わる事となる。人によって得られる情報が変わる為、探索者が一つの場所に固まるよりも分散して調査した方が良いだろう。
また、NPCへの好感度が展開を左右する内容でもあるとも言っておく。
『國枝 見代』くにえだ みよ
好感度の対象人物。
無口な女性で、何かに怯えるような弱々しい印象を与える。彼女は第六感の優れた者で、幼少期から無意識ながらも落堂町を囲うロイガーの存在に勘付いており、漠然とした恐怖を抱えて生きている。無口であるが、根暗と言う訳では無く青年会のメンバーとは良く遊びに行っている。図書館司書を目指し、別府大学で勉学に励む。
場合によっては死亡してしまう。
『小野田 清』おのだ きよし
好感度の対象人物。
青年会を率いる青年。柔道を嗜んでおり図体が良く、素朴な青年。立命館に通っている落堂町きっての秀才でもある。國枝とは幼馴染で、気弱な彼女を青年会に引き入れたのも彼である。また國枝に好意を抱いている為、彼女に何かあれば躍起になるだろう。
『矢川 聖樹』やがわ せいじゅ
茶髪に染め、軟派な雰囲気の青年。見た目に対し、面倒見の良い好青年で、ヘヤースタイリストを目指している。木下ら『マカツ』の密会を偶然にも盗み聞き、生贄の儀式を知ってしまった。逃げる時に暮に見付かって捕縛されて御堂に連れ込まれ、ロイガーの餌食にさせられた。祭りの前日に行方不明となり、祭りの前日に衰弱死した状態で川岸にいる無残な姿で発見されたものの、遺体が姿を消す。
『矢川 寧』やがわ ねい
聖樹の十二歳下の妹。お兄ちゃん子のようで、兄の聖樹から離れない程。かなりじゃじゃ馬。聖樹行方不明時からは泣いてばかりとなってしまう。六歳なので、今回の儀式のターゲットに選出される。
場合によっては死亡してしまう。
『冬羽根 牧子』ふゆばね まきこ
旅館の「冬羽根屋」の娘で、従業員。彼女も母に憧れており、女将を目指して自宅で修業中の身。大人しくお淑やかな女将さんと言うイメージにはそぐわないが、誰とも打ち解けられる快活さと明るさを併せ持つ女性。
場合によっては死亡してしまう。
『富永 典明』とみなが のりあき
ZTTの個性的な隊長。ダリに憧れていると言わんばかりのガイゼン髭が特徴的。本職はオカルト雑誌編集者。ツチノコ捜索35年で、ツチノコの里と言われる岐阜の東白川村には「いない」と断言している程、全国のツチノコスポットを隊員と練り歩いている。大阪生まれで、強引な所もあるが仲間思い。
場合によっては死亡してしまう。
『今野 憲昭』いまの のりあき
好感度の対象人物。
ZTTの副隊長。隊長の富永と名前の読みが同じな為、オカルトマニアからは「ダブルノリアキ」として有名。本職は京都の食品会社勤務で、独身。富永共々、仲間思い。
『小鳥遊 弁太郎』たかなし べんたろう
ZTTのニューフェイス。龍谷大学に通う青年で、インターネットに強く、ZTTの情報担当。ホームページの管理人。今回、落堂町への捜索遠征を提案したのも彼。
実は10歳の頃に、落堂町へ旅行に行った20歳の伯母が行方不明となっており、ツチノコ探しの別途として調べていた。
しかし麒麟神社の隠し扉を見つけてしまい、そこにある人骨を見て逃げる。マカツにそれが判明して『ヒトガタの追跡』の標的にされ、気の弱い彼はヒトガタの存在に動揺し、「段々と近付いて来ている」と錯覚・錯乱。そこをロイガーに付け込まれて精神力を奪われ、祭りの前日に発狂死してしまう。
『喜多村 雅美』きたむら まさみ
好感度の対象人物。
眼鏡をかけてボサボサの髪の毛の、見るからに書生さん風貌な若き幻想作家の男性。代表作は『夢死』で、この作品で泉鏡花文学賞を受賞して以来、数々の賞を受賞しており「鬼才喜多村」と呼ばれられている。七年前に結婚していたが、妻が一年後に明人を癌の最中に出産した後に他界。現在は男寡。一人息子の明人を男手一つで育て、また気弱で幼稚園からイジメられている明人の為を思い、作品の取材に旅行として連れている。
明人に何かあるのなら、探索者に対しても容赦しないだろう。
『喜多村 明人』きたむら めいひと
好感度の対象人物。
中性的な顔立ちの小学校一年生で、雅美の息子。言葉数が少なく、大人しい性格なのでクラスメートにイジメられている。優しい父親以外には懐かないが、母親の愛を無意識に欲しており、優しい女性には心を開き、甘える。
父親譲りの感受性の高さが影響か、ロイガーの存在を漠然とだが感じ取っており、落堂町にいる間はずっとビクビクしている。
場合によっては死亡してしまう。
『西尾 隆二』にしお りゅうじ
コートを羽織り、キャップを深々と被る怪しい男。正体は六年前に落堂町で行方不明となった妻を探し続ける、別府市内のトラックドライバー。六年前の同じ時期に旅行に来た時に妻が、秘密を知ったが故に攫われ殺されたのだ。
再び赴いた訳は、意を決して『永戸探偵事務所』で探偵を雇ったものの、その探偵が「落堂町に調査に行く」と言ったっきり消息を絶った為、落堂町に何かがあると踏み独自に調査に来たのだ。
場合によっては死亡してしまう。
『士屋 当麻』しや とうま
別府出身で、京都に下宿して龍谷大学農学部に通う青年。今は冬休みを利用して里帰りしている。アニメ好きで、落堂町がアニメ「ピルグリム」の聖地となったと言う訳で聖地巡礼に来た。高校時の友人二人を引き連れてやって来たが、町に来た時に山へ入った友人二人が帰って来ないと案じている。
彼は落堂町の歴史に詳しく、重要情報を提供してくれる人物だ。
完全にシナリオ中の狂言回し的人物であり、落堂町について話してはくれるが、事なかれ主義なので調査には協力しないだろう。
『木下 煎助』きのした せんすけ
麒麟神社の神主。厳つい顔をしているが、誰よりも町の将来を心配している。正体は、落堂町暗部を率いる頭。木下家は代々、生贄儀式の祭司を行う家系であり、彼自身も父から受け継ぎ、四十歳から毎年毎年儀式をして来た。ロイガーから少なからず精神エネルギーを奪われており、奴隷となっているのだ。
今年、ロイガーは十人以上の生贄を突如要求した為に、暗部を操って人間を誘拐している。
『暮 悦史』くれ えつし
三十代半ばの男。マンションの一室に住み、工場で働いている。正体は暗部屈指の冷酷な男で、儀式とロイガーの正体に気付いた者を秘密裏に拐い、生贄として捧げて来た一族の末裔。また、ロイガーから『ヒトガタの操作』を会得された一族の末裔でもあり、彼もそれを継承している。
体術も嗜んでおり、ロイガーに気付いた上で気絶させて御堂に運ぶ事もお手の物。また、ロイガーが精神エネルギーを生贄だけでは無く自分たちからも少しずつ吸引している事に気付いており、利用するなら利用してやろうと企てている。
『中村 泰道』なかむら やすみち
ネックウォーマーを首に巻いた、初老の男。
大分市内にある『永戸探偵事務所』の探偵。西尾が雇った探偵『糸井 仁(いとい ひとし)』が行方不明となり、その探偵の行方を巡って個人で調査していた。町を散策し、聞き回っている所を探索者と遭遇するだろう。
何とか暗部の尻尾は掴んだものの、悟られた為に捕まり、御堂に閉じ込められる。
このシナリオでは、落堂町と呼ばれる架空の町が舞台となる。人口は5千人で、かぼすの農家が点在する。豊後大野市の郊外とは言え、ビルがある程度は都会の様相のある町。元は眞勝村と慧斗村で、合併して落堂町と一括りにされた。落堂温泉が有名で、そこを求めに来る温泉客も多い。現在は少子高齢化の影響で人口が減少傾向にあり、三つの学校が既に廃校となってしまっている。
この町にはロイガーが潜み、町内の人間から死なない程度に精神エネルギーを奪い、一年に一度暗部の『マカツ』が連れて来る子供たちからは一気に吸引して力を蓄える。そのマカツの連中からも並々と吸引し、奴隷にしている。
ロイガーに生贄を捧げる御堂は町の東方にある隠れ山『風牙山(ふうがやま)』にある。風牙山は普通の名も無き山に、暗部のみが名前を付けている場合で、そこに御堂があり儀式がなるなど誰も分からない。
真逆の西方にあるは『蓋寝山(ふたねやま)』の頂上にある『麒麟神社』がマカツの密会場であり、蓋寝山からは『止木川(とまりぎがわ)』が流れてその河川敷で雛流しの祭りが12月27日に開催される。
また町の北西部にある『慧斗神社』には、慧斗村の人々の文献が隠されており、長年かけて考案された『ロイガー顕現の呪い』が記された文献がある。
更に『ルルイエ異本』の一部分だけを写した『縷煙城移画(るえんじょういが)』がある。これは出島経由で渡って来た中国の書物を慧斗村の地主が入手したもので、記述にあったロイガーが眞勝の麒麟では無いかと考え、翻訳しロイガー顕現の呪いを編み出す。だがルルイエの事を一部とは言え触れてしまったが故に、精神に異常を来して呪いの事を書いた書物を隠して自殺してしまう。縷煙城移画は地主の死とともに売り出され、最終的には暮悦史が手に入れて現在は暮の家の物置に放置されている。暮悦史はロイガーから主権を奪わんと、この本の翻訳に勤しんでいた。
時間感覚にしては、12月25日の夕方に到着し、前夜祭がある26日に事件が起こり、27日にスパートをかけてその後日28日までの四日間がスケジュールだ。勿論キーパーは日数を短縮しても良いし、延長しても良い。
導入に関しては、様々な方法がある。それぞれを挙げ、探索者に立場を選ばせる。合流点として、旅館や祭りの場等が理想的だ。導入の仕方は色々とある。
「導入1・友人の誘い」
青年会の聖樹が探索者の友人或いは親戚であり、前々から「落堂祭に来ないか」と誘われており、年末近くで暇が出来たのでやって来た。落堂町にやって来た探索者は待ち合わせの三重町駅前で聖樹の迎えを待つ。暫く待てば車に乗って聖樹が送迎にあがり、数十分車を走らせて落堂町に到着する流れだ。
「導入2・ZTT」
落堂町はツチノコの目撃情報が多々あり、調査に来た「全力でツチノコ捕まえる連合」通称「ZTT」のメンバー或いは誘いでやって来た。ZTTは全員で6人で、フェリーで神戸港から別府港に行き、バスに乗って別府駅から乗り継いで到着。かなりの長旅の為、隊長の富永以外は旅館に着くなりぶっ倒れる。ツチノコ捜索を明朝に持ち越し、自由時間が与えられた。
「導入3・旅行客」
大分観光の最中、または万病に効くと言う落堂温泉を求めて。或いは祭りを見に来た客に、アニメの聖地巡礼としてやって来た等、誰かに誘われた訳ではないフリーの旅行者。祭りのメインは雛流しであるが、青年会による前夜祭を楽しみに26日にやって来ている。
また豊後大野市には観光名所も多々あり、それらを兼ねて長めに宿泊日程を立てている。
探索者たちは旅館「冬羽根屋」に到着した所だ。四回建ての大きな旅館で、趣きある日本家屋。温泉は勿論、落堂温泉で、御土産も充実している。旅館には取材に来た喜多村親子、妻の消えた理由を探しに来た西尾、アニメ聖地巡礼に来た士屋と、ZTTのメンバー6人が団体客で宿泊している。
旅館前にある歓迎看板には『喜多村様・士屋様御一行・全力でツチノコを捕まえる連合様御一行、歓迎いたします』と宿泊者の名前が書き連ねられている。西尾だけは二日目なので消されている。
落堂町については、女将か従業員に話を伺う事が出来る。「落堂祭は明日ですので、準備に大忙しです」と祭りに関して話してくれる。何の祭りかと聞くと「雛流しですよ」と詳細に説明が渡る。そこまで聞いたなら青年会が作ったパンフレットがあると、『プレイヤー情報1』を入手出来る。
『プレイヤー情報1・落堂祭』
来たる12月27日、一年に一度で豊後大野市でも指折りな規模を誇る落堂祭が開催します!
落堂祭は、全国で散見される雛流しのお祭り。普通雛流しは、雛人形の元となった行事であり春先に行われるのが一般的ですが、落堂祭は年の暮れに行う事が特徴に挙げられます。一年の穢れを年の暮れに一気に流そうと言う考えからして、堅実な大分県民の県民性が現れているとも言えます(笑)
会場は止木川河川敷。26日は青年会主催として前夜祭を午後5時から行います。露店も催しております、是非ともご参加くださいませ!
落堂町青年会
雛流し或いは落堂祭について調べてみたいのなら、【図書館】及び【コンピュータ】で調べる事が出来る。どちらかを調べるかで、『プレイヤー情報2』か『プレイヤー情報3』が手に入る。
『プレイヤー情報2・雛流し』
日本の伝承、伝統に見られる一種の民族行事。雛流しまたは、流し雛と呼ばれる。現在でも鳥取県用瀬市、和歌山県淡嶋神社などで行われている。歴史としては『源氏物語』にも記述されるほどに古く、更に言えば雛流しに用いられる人形の前身である『ヒトガタ』が奈良時代の年代で発見され、かなり歴史の古い行事であると言われる。
一般的には『祓い人形に自身の厄を乗せて流し、身を清める』と言った考えから行われるが、本来は木の板で作られたヒトガタに呪詛を書いて流し、敵側の人間を呪うと言う呪術的な側面の行事であった。
言うまでもなく、雛人形の原型となった行事。
『プレイヤー情報3・落堂祭』
大分県豊後大野市落堂町で行われる祭り。形式としては雛流しの祭りである。相違点として春先に行われる雛流しが年末に行われる。
江戸時代より続く行事で、本来は落堂町として併合される前にあった『眞勝村』の行事であった。
また落堂町について調べるのなら、ロールに必要なく「眞勝村と慧斗村が明治に合併して現在の落堂町となった」と分かる。
『喜多村親子』
雅美に出会った時、【知識】か【図書館】に成功すると、彼が有名な幻想作家の喜多村だと気付け、話を伺うのなら「取材に来た」事を聞ける。また、彼の背後に隠れる明人の事を尋ねると「息子だ」と聞ける。
【アイディア】に成功すると、彼は六年前に妻を亡くしている事を思い出せる。探索者が女性で尚且つ、【幸運】に成功すると、明人から興味を抱かれる。探索者に母親を重ねたのだろう、握手してくれる程には近付いてくれる。すると雅美からは「この子が他人に近付くなんて珍しい!」と喜ばれるだろう。その場合に限り、「次の作品は雛流しをテーマにしたい」と言い、雛流しのうんちくを語ってくれる。この場合でも『プレイヤー情報2』が手に入る。
『西尾隆二』
不気味な風貌で旅館から出て来る所を目撃出来る。話を聞こうとしてもぶっきらぼうに跳ね除けて出て行く。
追跡をしても構わないが、町をぶらぶら歩いた後、二時間で旅館に戻る。この行為は探索者が町を散策中にも目撃出来る。ただこの時に【目星】に成功したのなら、旅行と言うよりも視察しているような印象に気が付けるだろう。
もし従業員に話を伺うのなら、【言いくるめ】で情報を聞ける。二日前から泊まっている事と、時たまに先程のように目的無く町を歩いている事が分かる。【幸運】に成功したなら、話を聞いた従業員は以前も見た事があると話してくれる。詳細は忘れてしまっているが。
『士屋当麻』
御土産屋を吟味している所で遭遇出来る。
『鳥天煎餅・かぼすサブレ・かぼす飴・九州限定明太子ポッキー・梨味ガム・別府のたまご(ホワイトチョコレート)』のどれかを買おうかと迷っており、探索者を見つけると「誰か異性に渡すとしたらどれが良いか」と尋ねて来る。
これは心理学好きな彼による心理テストで、探索者が選んだ結果で
「異性と聞いて、誰を連想しましたね?あなたはその人の事を『煎餅は尊敬する人・サブレは友人・飴は片思いの人・ポッキーは甘えられる人・ガムは不思議な人・チョコは身体だけの人』と思っているぜい」
と言い付ける。
探索者が面白がる、または当惑する等の反応に関わらず、士屋は「心理学好きの悪い癖」としてお詫びし、何かを奢ってくれる。
話をするのなら、「別府出身だけど今は京都の龍谷大学での勉学の為に下宿し、今は里帰り」である事と、「この町はアニメ『ピルグリム』の聖地だ」と言う事が聞ける。ピルグリムは日本各地のパワースポットを巡る日常系アニメである。何処がパワースポットかと聞くと、『慧斗神社』だと教えてくれる。ただ、今から行っても閉まっているから名物のおみくじは引けないし意味無いとも忠告する。
また、【信用】に成功したなら、友人二人が蓋寝山に行ったっきりで帰らない、『松嶋と田中』と名前を言って、見付けたら教えて欲しいとお願いをする。電話番号を聞くのなら、もう一度【信用】に成功したら士屋は自分の電話番号を教えてくれる。
『今野憲昭』
サングラスをかけて、探検隊のような服装をした男が自販機の前におり、「困った困った」と繰り返している。曰く、自販機にお金を入れてボタンを押しても品が出ないと聞ける。探索者が従業員を呼びに行くか、自販機を叩くなりしてみたり出来る。前者の場合は従業員が謝罪し、入れた分のお金を返金してくれる。後者の場合は【幸運】に成功する事で自販機が正常化し、更にはジュースが三本も出て来る。
いずれかの方法で、お金かジュースかを手に入れたのなら、今野は喜んで自己紹介をしてくれる。今野憲昭はZTTの副隊長である事と、ツチノコを捕まえに落堂町へ来た事と、自分合わせて6人で来たが神戸からフェリーでの長旅だったので隊長と自分以外は旅館に着くなり寝てしまった、ここが雪山なら死んでいた、と身の上話をしてくれる。
また探索者に、旅館から出て蓋寝山に行くのなら隊長がいるハズなので、呼んで来て欲しいと言う。見た目を聞くなら、「私と同じ服装と、髭が面白いからすぐに分かる。私の名前を出して、帰って来て欲しいと言えばいい」と頼み込む。やってくれたのなら美味しいものでも奢るし、面白い話をしてやれると報酬も提示する。
【オカルト】に成功したなら、今野はオカルトマニア界隈で有名な『ダブルノリアキ』の今野憲昭だと気付く。隊長の富永典明とのペアで、オカルト雑誌では特集もされる程の人気者である。
『青年会』
聖樹に誘われた者、或いは落堂祭の下見に行けば祭りの準備をしている青年会やその他の人々と出会う事が出来る。青年会の主要メンバーである『小野田・冬羽根』の二人に会える。探索者に気が付くと「祭りは明日ですよ」と小野田に言われるだろう。
探索者が矢川の知り合いか、そうでないなら【幸運】か【信用】で冬羽根に「旅行者の方ですか?」と声をかけられる。探索者がツチノコの事を聞けば冬羽根は笑いながら「蓋寝山にいるって聞きますね」と言う。
冬羽根は探索者の宿泊する冬羽根屋のオーナーの娘だ。そこに宿泊していると言えば喜んでくれるだろうし、その様子を見た小野田も探索者に好感を抱くだろう。
聖樹の事を聞くか、ある程度探索者を信用したのなら「あいつなかなか帰って来ないな。祭りの用具を取りに行った時に、蓋寝山の麒麟神社にケータイ忘れたとか言って取りに行ったっきり。二時間も前だ」とぼやく。探索者が山へ行こうとするなら、「ついでに探して来て欲しいです。夕刻の麒麟神社からの景色は絶景ですよ」と丁寧な口調で頼む。
『國枝見代と矢川寧』
祭り会場から出た所で、二人の女性が買い出しから帰って来る所に出会う。片方は大学生で、もう片方は小学生だ。國枝と寧である。
すれ違うだけなら【聞き耳】で、國枝が「今日は何だか、朝から誰かに見られている気がする」と聞ける。ロイガーの存在を第六感が感じ取っているのだ。
話し掛けるのなら、人見知りな國枝であるので、主に快活な寧の話が主体だ。寧は探索者に「何処の人?」と聞き、出身が大分県外の人間なら「どの辺? 方言喋れる?」とどんどん質問をする。國枝は申し訳無さそうにしているが、【心理学】に成功すると頻りにキョロキョロとして、何かに怯えているような仕草をしている事に気付く。
聞いてみた所で「何でもないですよ?」とはぐらかす。
探索者が聖樹と友人関係なら、寧は兄の事を聞いて来るし、國枝も友人の友人である探索者に興味を示すかもしれない。その時に聖樹の居場所について聞くと、國枝は「麒麟神社かもしれませんが私、あまりあそこには行きたくないので良く分かりません」と話す。【信用】に成功し、どうしてなのかを聞いたのなら「何と言うか……雰囲気が苦手なんですよ。それにあそこ、神隠しの噂もありますし、不気味です」と言う。寧は麒麟神社を遊び場にしていると気に入っているが、ロイガーの気配が強い神社は彼女にとって辛い場所なのだ。
『富永典明』
富永は蓋寝山の辺りを散策し、調査している。まるで探検隊のような服装に、サルバドール・ダリのような髭の目立つ男性だ。独り言をブツブツと言っており、【聞き耳】に成功すると「ツチノコがいるなぁ。ここにツチノコはいるなぁ。そんな気がするなぁ。探すぞぉ」と彼のツチノコへの執着が聞ける。
探索者が話しかけると、ツチノコは素早いやら、オオアオジタトカゲがツチノコの正体とか言う奴は食われろやら、滋賀県近江八幡は怪しい、岐阜の東白川村はツチノコの里と言うけどいやしないと、ツチノコの事しか言わない。
今野に頼まれているのなら、彼の名前を出して旅館に戻って欲しい旨を伝えると、お礼を告げてさっさと退散する。この時点で彼を帰らさずに放置するなら麒麟神社で再会し、来ていた小鳥遊に連れられて帰還する。
『中村泰道』
探索者が町を散策中、彼らに聞き込みをするだろう。「この町で『糸井仁』さんと言う人がいなくなったのですが、何か知りませんか」
探索者は勿論、知らないと言うだろう。その場合に謝って去ろうとする所に【信用】で成功したのなら、詳細を教えてくれる。
「私は探偵です。大分市内の永戸探偵事務所の中村泰道と言います。私が探しているのは、仕事仲間の糸井でして、二年前に男性が糸井に落堂町の捜査を依頼しまして、その糸井が一年前から行方不明になったんです。私はその彼を探しに来た訳ですよ」
勿論、自分の目的は話してくれるが、「依頼主は誰か」等プライバシーに関した事は言わない。【図書館】で成功したのなら、糸井消失の詳細が載った新聞記事である『プレイヤー情報4』が手に入る。
『プレイヤー情報4・糸井仁』
2016年8月3日、大分市内在住の糸井仁さん(43歳)が消息を絶つ事件が発生した。糸井さんは探偵業をしており、依頼調査の最中であったとの事。事件の発覚は、糸井さんの勤める探偵事務所へ報告の電話が来ず、そのまま一週間経過した為に発覚。糸井さんは消失前、落堂町に赴いていた。
五年前に同所近辺で行方不明となった女性の夫から、捜索の依頼を一年前から請け負っており、「尻尾掴んだ」と言って町へ出掛けた事を最後に行方が分からなくなっている。
警察は、糸井さんが何らかの事件に巻き込まれたものとして落堂町周辺を念頭に調査している。
現段階で分かった事は無いので、知っている事は聞けないが、【信用】成功か、「何故今ごろになって調査しているのか」と質問した場合に「この町の隣町で一年前、糸井の消えた同時期に子供が二人行方不明となっている。偶然とは思えない」と述べてくれるだろう。最後は「言いふらさないで欲しい」と釘を刺し、さっさと撤収する。
町の名所の一つとして紹介されるのが、蓋寝山の頂上にある麒麟神社。狛犬の代わりに麒麟を形取った石像が建てられている、あまり見ない形の神社だ。麓から山道を行くと、30分で頂上に辿り着く。町を見下ろせる絶景スポットでもあるのだ。
神社へと上る階段の途中で、ツナギを着た作業員風の男性とすれ違う。この人物が『暮』だが、秘密を知った聖樹を捕らえて味方に御堂へ送らせた後に神社の施錠に来ただけで、特別探索者に何かする訳ではない。ただの通行人程度で良い。
夕方とだけあって人はいないが、パーカーを着た青年に会える。ZTTの小鳥遊だ。小鳥遊は賽銭箱の裏を見たり、神社をウロチョロしたりと怪しい行動をしているが、探索者に気付くと「こんばんは」と小さく挨拶する。
彼は幼い頃にいなくなった叔母が、ここへ来ていた事を怪しみ、少し調査していたのだった。探索者が聞くなら「ZTTの小鳥遊で、ツチノコの調査をしておりました」と言う。
聖樹の事を聞くなら「矢川と言う人物は知らないけど男性ならさっき一人、神社の裏から出て来た。ツナギを着た人。僕は20分前に来たばかり」と答えてくれる。ツナギを着た男は探索者がすれ違った暮の事。【アイディア】に成功したなら、その人物は寺の関係者と言うより工場の技師のようだと違和感に気付く。
神社は何処にでもある造りだ。妙な点として、麒麟の像が狛犬の代わりに本殿の前に佇んでいる事と、窓などが無い蔵がある事だ。探索者が良く麒麟の像を見るのなら【知識】か【博物学】に成功すると、爬虫類のような特徴のある麒麟だと気付く事が出来る。
本来の麒麟は牛や馬等の哺乳類生物の融合体のような生物なので、イメージに合わないのだ。また神社の裏手にも回れるが、施錠されており入る事は出来ない。蔵に関しても同様だが、鍵開けしようものなら小鳥遊に注意される。
また賽銭箱の下には隠し扉があり、地下室がある。そこには、犠牲者の遺骨が並べられている。ロイガーの餌食となった者たちこそが、御神体なのだ。蔵は、死体を骨になるまで隠す場所である。
小鳥遊は探索者の存在を理由にして、神社を去ろうとする。【心理学】に成功するなら、異様に強い信念を持っていると分かる。それはツチノコに向けてか別の事かは探索者に委ねておく。
しかし小鳥遊は探索者が帰るまで木の陰にでも隠れている。探索者が旅館に帰っても、先にいるハズの彼がいない。隊長を連れ帰ったのなら、一度旅館に戻り、また神社へ行く。
夜中の旅館では、以下のイベントが行われる。主に町に伝わる不穏な噂や現象に近付く機会でもあり、旅館の人々の抱く違和感に探索者は怪訝な感情を抱く事だろう。
『報酬』
今野から頼まれていた、富永を呼び出しを完遂させていたのなら、彼から旅館近くにある焼肉屋で焼肉を奢られながら、オカルトな面白い話を聞かせて貰える。
「ツチノコが出る蓋寝山は、神隠しの山と言われていてな、過去五人の人間が山に行ったっきり戻らなかったって噂があんですよ。江戸時代の頃は落堂町は二つの村で、眞勝村と慧斗村と言う場所やった。蓋寝山は丁度、二つの村の境目であり、仲が悪かった双方の小競り合いが起きていたのもそこ。死者も出ていたそうな。今も、眞勝か慧斗の人間が死後も彷徨っており、山で出会った人間を相手の村の人間だと思い込んで殺すそうな。そんな噂があるから神主さんも、夕方になったらさっさと山を降りて自宅に帰るんさ」
探索者が彼の話に興味を示すものなら、「知ってますかね? 落堂町周辺の行方不明者の割合、なかなか高いんですよ。落堂町は大分のバミューダトライアングルって訳でしてね? 成る程、こんな不思議地帯ならツチノコもいるに違いない」と言う事も話してくれる。【歴史】に成功したなら、眞勝と慧斗は落堂温泉の源泉を巡り対立していた事が思い出せる。最終的には慧斗が独占したようだが、江戸末期に突如として眞勝に与えたと言う奇妙な経歴がある。
『士屋当麻、再び』
探索者が風呂内または風呂上がりの時に、話し掛けて来る。「お風呂、身体の何処から洗いますけ?」
探索者が答えると「『足からの人は自信過剰、腕からの人は寂しがり屋、頭からの人は裏表ある性格、胸かお腹からの人は神経質』ですぜ」と心理テストを行う。心理テストの後はお詫びとして町の都市伝説を語ってくれる。
「落堂町には一つの都市伝説がありましてねぇ。なんとこの町で、夜な夜な人間を遠目から観察し、呪い殺す『暗夜目(あやめ)』と言う妖怪が出るそうな。邪視を持っている、元々は慧斗からの妖怪なんスがね、合併で落堂町の都市伝説と化したっちゅー訳でさ。ジーッと遠くから人間を見つめて、見つめられた人間は長くないと」
また彼は、探索者に頼んだ友人二人がいたかどうかの話に関して「まだ帰らない」と漏らす。もしや何処か良い場所でも見つけたのだろうかとブツブツ呟き、このまま帰らないのなら三人分の宿泊料を払う羽目になるから勘弁願うと項垂れる。
この時点で士屋の友人は聖樹の捕縛を目撃した為に共に捕まり、御堂に閉じ込められている。勿論こんな事は知る由もないが。
『西尾の苛立ち』
旅館の喫煙室でタバコをふかしている所を目撃出来る。【目星】に成功したなら、灰皿いっぱいに吸い殻が積まれている事に気付ける。また【聞き耳】に成功したなら、「眠れねぇ。全然眠れねぇ」と愚痴を零していると分かるだろう。ロイガーからの小規模ながらな精神力吸引を受けたようで、熟睡出来ていないようだ。
探索者が様子を伺っている所に気が付くと、さっさと喫煙室から出て部屋に戻ってしまう。
『深夜の明人』
探索者をランダムに選び、寝付けない事にして起こしてやる。眠気待ちがてら部屋を出たなら廊下を歩く喜多村の息子、明人の存在に気付ける。探索者が声を掛けると身体を震わし、怯えながら振り返る。興味を持たれた探索者以外は【幸運】に成功しないと逃げられてしまう。成功したならどうしたかと話が聞ける。
「部屋にいると何かが見ている気がする、不安」と言って辺りを見渡しビクビクとする。【心理学】に成功したなら本当に怯えている事が分かり、探索者の背後をチラチラと見ていると気付く。
振り返った時、旅館の棚に飾られていた蹴鞠が一人でに落ちる所を目撃する。聖樹らから精神力を吸引したロイガーが調子を確かめる為に超能力を無差別に飛ばしたのだ。それを見た探索者は【正気度 0/1d3】をしなければならない。
怯える彼を宥めて安心させられたのなら、彼は探索者に懐くだろう。特に女性探索者に対してなら、写真でしか見た事のない母親に探索者を被せる事だろう。後は彼を部屋に帰らせられたのなら良い。
『小鳥遊の異変』
同じく深夜に行われる。旅館出口前のメインエントランスで、ソファの上で肩を抱いて震える小鳥遊を発見出来るだろう。探索者が近付き、話を伺うと「あいつはまだ、外にいるのか? 僕を見ているのか? 耐えられない、夕方からずっと見ているんだ」と震え声で呟くばかり。
【説得】か【信用】に成功したなら、「部屋の窓からずっとこっちを見るんだ。カーテンを閉めても視線を感じるんだ。部屋に戻りたくない。夢じゃない」と続けて呟く。
【アイディア】に成功すると、背後に視線を感じる。探索者が振り返るのなら、旅館出口のガラス戸の向こうからこちらを覗く、黒い子供のような人影を発見する。見てしまった探索者は【正気度 0/1d3】をしなければならない。
人影は探索者に気付かれ、咄嗟に宵闇に身を隠す。追おうとしても、出口は施錠されており追えない。気付けばソファの上にいた小鳥遊がいなくなっている。
矢川の消失、小鳥遊の異変が徐々にこの町の不気味さを探索者に示すだろう。前夜祭までは主に、矢川の行方について考察する。そして祭りでの矢川の死体発見・消失に、小鳥遊の発狂・衰弱死がシナリオのターニングポイントとなる。好感度対象NPCとの関係を詰める事も目的となる。
旅館の朝。ZTTはツチノコ探しを始動、喜多村親子は慧斗神社へ、そして西尾は妻の行方を求めて本格的に動く。
『ZTTの異変』
旅館のメインエントランスに行くと、出発準備の整ったZTTメンバーに遭遇する。ハイテンション気味な富永に、冷静に計画を伝える今野の姿が分かるだろう。
話しかければ富永が「昨日は良く眠れんかった。いや、良く寝たが眠った気にならん」とぼやかれる。
【目星】に成功したなら、メンバーの中に小鳥遊がいない事に気付く。それを聞くと今野から「小鳥遊か。何だか調子が悪そうでな」と説明する。【心理学】に成功したのなら何か、口籠っていると気付き、【言いくるめ】に成功したなら今野は観念して小声で教えてくれる。
「いいか? コトユーはな……あぁ、コトユーってのは小鳥遊の事ね。コトユー、調子が悪いってもんじゃねぇ、異常なんだ。朝起きれば部屋の隅で泣いているし、理由を聞いても『そこにいるそこにいる』と気が狂ったように呟くんですわ。勿論、何もいなかったけどね。連れて行こうとすると寝やがるし、言っても聞かんのでねそのままにしといたんで。気が弱いとは知っていたが……悪夢でも見たか?」
困った様子の今野だが、急かす富永に呼ばれて出発する。行き先は蓋寝山のようだ。
『西尾の読む新聞』
同じくメインエントランスには、椅子に座り売店で購入した新聞を読んでいる西尾の姿があった。新聞を読み、舌打ちをした後でテーブルに新聞を放置したまま自分の部屋に戻った。【心理学】に成功したなら、失望の念が見える。
放置された新聞は【図書館】に成功したなら、とある記事に目が行くだろう。『プレイヤー情報5』として提示する。
『プレイヤー情報5・行方不明者』
一昨日より、由布院に宿泊していた博多在住の山本理沙ちゃん(8歳)が行方不明となる事件が発生する。理沙ちゃんは家族と別府市に向かう準備の最中、旅館前で遊んでいた時に突然消えたとの事。
目撃情報はあり、身長170センチ程の黒いジャンパーを着た痩せ型の人物に連れられる様子が目撃されている。警察は目撃情報を元に捜査を開始し、由布院全域を対象に捜索をすると発表した。
西尾は今回の事件は自分の妻の消失と関係あるのではと予想し、そしてみすみす攫わせた自治体に失望していたのだ。
夕方五時からの祭りである為、まだ屋台はやってはいないが、様々な屋台が立ち並んでおり、準備に追われている人々が見える。
しかし中央の広場にて、青年会が集まっている様が確認出来、女の子が泣いているとも分かる。近付くと、他のメンバーの中で小野田が電話をかけ、國枝はオロオロとしている様子に出くわすだろう。昨日からいない聖樹が帰ってこないのだ。そして泣いている女の子は『矢川 寧』で、聖樹の妹である。
『小野田の心配』
彼が何度も電話をかけているのは、勿論聖樹に対してである。昨日より何度もかけているが、一切出ないと心配しているのだ。「もしかして、山で不慮の事故でも」と、探しに行こうとしている。
詳しく話を伺おうとしても、異常事態に部外者を巻き込もうとはしないだろう。【説得】か【信用】に成功したなら、逸る彼を落ち着かせる事が出来る。小野田は「蓋寝山は遭難するような山ではないが、傾斜の激しい所がある。だけど、神社から上り下りする程度では遭遇しないハズだが」と不信がる。彼は探索者に好感を持つだろう。
そこへZTTが偶然近くに来る。今野との好感度が高い場合は探索者に気付き、話を聞いてくれる。矢川が蓋寝山で消えた旨を聞いたなら、「自分らも蓋寝山に行く所だ」として、「ツチノコついでに探してやる」と承諾してくれる。
ZTTに気づかれなかった場合、探索者は小野田たちと蓋寝山を探す事になる。
その場合は【ナビゲート】か【幸運】を使用して『聖樹のスマートフォン』が発見出来る。ZTTが捜索を請け負った場合はロールの必要なく、暫くしたらこれを持って探索者の元へ赴くだろう。勿論、ZTTが捜索する場合でも探索者は同行出来る。探索者が同行の場合は、麒麟神社に行き、神主である『木下煎助』と会える。
聖樹のスマートフォンにはロックが掛かっている。【コンピュータ】に成功か、パスワードを知っているであろう聖樹の妹の寧や、友人の小野田に頼むのも手だ。ロックが解除された場合、『キヨ、助けてくれ、殺される。この町は、何かがいるんだ。いやいるんじゃない、ずっと潜んでいたんだ。俺たちの……』と、未送信メールが確認出来る。
『國枝の心配』
オロオロする彼女に【心理学】に成功すれば、彼女は慌てていると言うより怯えて挙動不審になっているのではと分かる。
以前に國枝と話した事のある探索者以外は【信用】に成功で、小声ながらも怯える理由を教えてくれる。
「この時期になると、何かの気配が強まるのです。ここからは遠い所ですけど、強まるのです。不気味で仕方ない……私の気のせいかと思いますけど、毎年の事なんで」
真剣に彼女の話に向き合い、労いの言葉をかけられたのなら、國枝の好感度は上がるだろう。逆にからかったり、馬鹿馬鹿しいと打ち切れば、彼女を悲しませる事となるだろう。
また、兄が消えて強い悲しみに打ちひしがれているのは妹の寧だろうか。彼女を励ましたり等したのなら、小野田と國枝の両方から好感を持たれるだろう。
麒麟神社に再訪すれば、祭りの準備を行う人々の中で、指示をしている神主の木下に遭遇する。やや腰の曲がった、背の高い人物だ。話を伺うのなら、快く承諾してくれる、一見すれば優しげな老人である。
聖樹がいない事を伝え、見ていないかと尋ねてみても、彼はシラを切るだろう。【心理学】に成功すると、何かを隠している事に気付く。そこを追求した場合は、「いや、ワシも確信が持てない話ですが……聖樹君と思われる人が、山の中に入って行く所を見たんですよ。遠目からなんで、聖樹君かどうかは分からないのですが、何かから逃げている様子だったが……聖樹君だろうか」と言う。
勿論、暗部の指導者である彼が知らない訳はない。彼が密会の場面を目撃した聖樹に気付いて捕らえ、風牙山の御堂に閉じ込めたのだ。
聞き終わった時、昨日すれ違った暮が準備の事について木下に聞きに来る。昨日に麒麟神社へ赴いた探索者は、【アイディア】に成功したなら階段ですれ違った男だと気付ける。彼は何かと聞くのなら「神社の手伝いをしてくれる暮さん」と紹介される。
彼にも聖樹の居場所を聞いても「分からない」としか答えない。【心理学】に成功しても、彼のポーカーフェイスが悟らせてくれないだろう。クリティカルで成功した場合に限り、何かを知っている感じだと分かる。それを追求しようとした時、暮は仕事に戻るだろう。また、暮の事を他者に聞くなら、「元は弓道部で弓矢が上手いし、銃所持の許可書も持っている」と教えてくれる。
慧斗神社は、『ピルグリム』と言うアニメの影響で巡礼者が増加している。ここは主に縁結びの神社であり、パワースポットとして地元の人からも親しまれている場所でもある。特におみくじは当たると評判だ。
おみくじに関してはキーパーの好きな風にすれば良い。例えば【幸運】に成功し、幸運の技能値より幾らか離れていれば大吉、近ければ小吉、外せば凶でファンブルは大凶とすれば良い。内容もアドリブで構わない。
『喜多村親子』
神社を取材している雅美と明人に遭遇する。面識のある探索者に対しては、向こうから話しかけて来てくれる。
アニメの影響で人気があるが、見る所は外観では無く中にあると言う。曰く、「慧斗村の文献が神社の中に奉納されているらしい。
何故奉納されているかと言われれば、おぞましい禁書らしいからだ」と話してくれる。彼に親愛を抱かれている場合は、トイレに行くので明人を見ていて欲しいと頼まれる。
明人に対して【心理学】を行うと、まだ何かに怯えている様子を見せている。十分に信頼されている探索者に対しての場合に限り、彼は胸の内を明かしてくれる。彼も國枝と同じく、何かが確かに存在する恐ろしさに苛まれていた。
探索者が一言落ち着けてあげれば、明人に更に信頼され、帰って来た雅美にも好感を抱かれるだろう。
『士屋当麻の再来』
神社のおみくじ売りの前に、士屋がいた。彼は見知った探索者を見ると、案の定心理テストを仕掛けて来る。
「神社に絵馬が奉納されてある。内容は次の内のどれ? 玉の輿に乗れるように。仕事が上手く行くように。縁を切れるように。好きな人を手に入れられますように」
探索者が四つの内の一つを選ぶと、これは心の健康度を測るもので
「『玉の輿は他力本願だが、普通に健康。仕事が上手く行くは、お願いを前向きに考えているのでかなり健康。縁切りは、何はともあれ縁を切る事を考えているので健康ではない。好きな人を手に入れるは、手に入れると言うニュアンスの重さからして独占欲強く、かなり健康ではない』とあります」
と自慢気に言う。そしてお詫びにまたうんちくを話してくれる。
「麒麟神社と慧斗神社は、距離は離れているものの互いに意味のある神社でしてね。江戸時代、併合する前の村であった、眞勝村と慧斗村は秘湯を巡り争っていたそうな。すると、眞勝は麒麟を信仰し始め、慧斗を呪おうとした。対して慧斗はその力を鎮める為に呪術師を頼り、呪いに対抗したとの事。麒麟の呪いを慧斗は打ち消す術を探していたとの事ですな」
また彼も雅美と同じく、中には禁書が隠されてあると語っており、その禁書こそが眞勝の麒麟に対抗する術だと語っている。
昼に入り、旅館に帰った時が異変の始まりである。旅館に戻った時、騒つく声に気が付くだろう。その声の方に行くと、ある一室の前で従業員や客が集まって何かを話し合っている。その時、部屋の中から狂気的な叫び声が響く。【聞き耳】に成功すると、小鳥遊と面識がある探索者に限り、声の主は小鳥遊であると気付く。
探索者は知り合いである旨を伝えたのなら、中にいた男性従業員に連れられて部屋に入れられるだろう。中には、布団のシーツをビリビリに破く程に強く身体を痙攣させる小鳥遊の姿だ。狂人の光景を見た探索者は【正気度 0/1d3】をする。
探索者は彼に近付くと、狂った声で「ずっとずっと、見ていたんだ! こいつはずっと僕を見ていたんだ!」と窓を指差し叫ぶ。続けて「この町には何かいるんだ! そいつがずっと僕を包むんだ!」と叫ぶ。探索者が【説得】か【精神分析】に成功すると、彼は一瞬正気に戻った表情になり、探索者の耳元で囁く。
「助けて……ぼ、僕はあの時、麒麟神社で見たんだよ……に、人間の……!」
その言葉を最後に、彼は白目を剥いて倒れ、動かなくなる。【医学】に成功すると、彼は心肺停止を起こしていると気付き、良く見れば身体が痩せており、何ヶ月も食事を摂っていないような程に衰弱していると判断出来る。
人間の凄まじい狂死場面を目撃した探索者は【正気度 1/1d4】、小鳥遊の友人か間近で死の場面を見た探索者は【正気度 1/1d6】をする。
後は呼ばれた救急車に運搬され、病院に彼は運ばれる。暫くするとZTTのメンバーらが帰還し、今野は狼狽の様子で探索者に「コトヨーは、コトヨーは何があったんだ!?」と聞いて来る。小鳥遊の非業の死を伝えたのなら、今野は「訳がわからない、昨日は元気だったのに!」と動揺するだろう。隊長である富永は「一先ず、我が隊員の側で語りかけてくれた事を感謝する」と探索者にお礼を述べてから病院へとメンバーと共に向かう。
『西尾が動く』
旅館に戻ると突然、西尾が探索者に近付き「あの男、何か言っていたか?」と問い詰める。探索者がロールの失敗で麒麟神社の事を聞かされていない場合でも、西尾は「蓋寝山に、関係あるだろ?」と聞く。探索者が何を言っても神社に何かあると察知し、旅館の外に出て行く。
西尾は大々的に麒麟神社付近を捜索するが、それが原因でマカツに勘付かれ、ヒトガタを差し向けられる。前夜祭の後、荒れる彼と遭遇する『西尾の決死』が起こる。
『旅館の人々』
情報収集をするなら、場に居た従業員などに話を聞くのが良い。話を聞くと「昨日から変な人だった。昨日の夕方頃に、泣きながら旅館に帰って来ました」と、麒麟神社から逃げ帰る彼の様子が挙げられる。
【幸運】に成功で、旅行客の一人が彼と帰りしなに蓋寝山付近でぶつかったと言い、「あの神社だ! あの神社で叔母が消えたんだ! 叔母さんは神社に行っていたんだ!」と訴えられなと思い出す。【図書館】に成功すると、地元の図書館でそれと思わしき新聞が発見され、『プレイヤー情報6』が手に入る。
『プレイヤー情報6・小鳥遊真子、行方不明』
2007年12月18日、兵庫県姫路市在住の小鳥遊 真子(たかなし まなこ)さん(20歳)が豊後大野市落堂町で行方不明となる事件が発生した。小鳥遊さんは落堂町へ旅行に来ており、他に友人三人が同行していた。友人によると、夕陽の写真を撮る為に麒麟神社へ向かうと言ったきり、帰って来なかったとの事。その時間、麒麟神社は人がおらず、小鳥遊さんは本当に神社へ向かったかは不明である。
住人からは蓋寝山の麓に見慣れない白いワゴンが停められていた、黒い服を着た怪しい男を見た等の情報があり、警察はこの情報を元に捜査をしている。
これらの情報を集めたのなら、探索者は蓋寝山・麒麟神社に疑惑を向け、突撃する者もいるだろう。しかし神社は祭りの準備で大勢の人がおり、一時立ち入り禁止となる。夕方になると蛻の殻となるが、探そうものなら神社を見張っていた暗部の人間に見つかり、ヒトガタの呪いをかけられてしまう。
『ヒトガタの呪い』
もし探索者が暗部である暮や木下の前で「神社が怪しい」と言った事を言ってしまったり、蓋寝山や神社近くをウロウロと見回る等の目立つような調査をした場合、ロイガーの秘密を知られる前にヒトガタを送り、探索者を驚かせようとするだろう。
この呪いは、暗部に気付かれた二時間後に発生し、昼夜問わず人通りの無い時、遠くの方から小さな黒い人影に付け回される。それだけだが、それを見た探索者は不安から【正気度 0/1d3】をしなければならず、目撃した所でロイガーの精神力吸引が開始される。そうなると探索者にはゲーム内時間一時間につき【1d3】ポイントのマジック・ポイントを減少させ続けなければならない。
マジック・ポイントが無くなれば言わずもがな、探索者は気絶し、一時間後ごとに1ポイントを復活させる。初期値の半分まで回復したら【正気度 1/3】の減少と共に気絶から戻って来れるが、マジック・ポイントの減少も復活する。
ヒトガタの呪いを解くにはヒトガタが逃げる前に捕まえて破壊しなければならないが、それをするには二人以上の探索者が必要となるだろう。呪いの対象である探索者が囮で、もう一人の探索者がヒトガタに【忍び歩き】で成功して近付き、破壊する方法だ。一人で行うのなら、石を【投擲】で成功して、ヒトガタにぶつけて破壊する方法も可。ヒトガタは耐久力6で、ダメージが入ったなら簡単に破壊出来る。
夕方五時になると、行方不明の聖樹に小鳥遊の狂死と言う不穏な空気の中で青年会主催の落堂祭前夜祭が止木川河川敷で催される。冬の祭りとは言え屋台は多く、流石にカキ氷屋は無いものの綿飴やタコせんべい等の定番な物から鳥天に、寒空の下なので甘酒や豚汁等のホットな屋台もある。なかなか本格的な祭りだ。
祭りには殆どのNPCが集結しており、様々な情報を保持している。
『小野田と國枝』
水餃子屋で屋台をしている所で出会う。結局聖樹は見つからず、警察に届けを出した事を伝える。
小野田はまた蓋寝山に探しに行くと言っており、早々と山へ向かう。國枝は「あの山は危ないのに」とぼやく。
話を伺うのなら、「あの山、昔から苦手。でも苦手なのは私だけじゃなくて、母も祖母も嫌いだった。変な視線を感じるし、気味が悪い」と怯えている。山の事について聞いた時のみ、彼女は伝承を教えてくれる。
「昔、眞勝と慧斗と別れていた時は、二つの村は仲が悪かった。それも、しばしば衝突があって死者もあった程らしいのです。その、慧斗の死者を埋めたのが蓋寝山……怨念とか、昔から言われているんですよ。あそこには何でも麒麟が降り立った場所だとか……図書館に行けば『眞勝伝承』って資料がありまして、そこに麒麟が降り立った様子が当時の絵で描かれていますよ」
國枝の言う通り図書館に行けば、ロールの必要なく『眞勝伝承』を発見出来る。蓋寝山に降り立った一体の麒麟の様子が描かれた絵があるが、絵画系統の【芸術】に成功したなら、麒麟の足が四本では無く良く見れば八本であり、一体ではなく二体が縦に並べた形で描かれているのではと気付く。
また、蓋寝山は『風牙山』と呼ばれていたとも書かれている。麒麟と初めて接触した人間は『木下権兵衛(ごんべえ)』と言う地主で、現在麒麟神社の神主をしている木下煎助の先祖であると分かる。
『冬羽根と寧』
一緒に祭りを回っている二人の姿が目に入る。暗い表情の寧を連れて、必死に冬羽根が励ましているようだ。【説得】に成功すると、クヨクヨする寧を励ます事が出来る。
この時、「神社は今日は遅くまで神主さんいるし、夜景でも見に行こうよ」と冬羽根が寧を誘う。蓋寝山に危機感を持つ探索者なら、【言いくるめ】で行かせる事を阻止出来る。行かせてしまったのなら、生贄を欲するマカツによって寧が標的となり、冬羽根共々攫われてしまうのだ。
『喜多村明人』
一人で祭りを歩いている所に出くわす。話を伺うと、人混みが凄くて雅美とはぐれてしまったと言う。一緒に探してあげるなら、彼から好感を抱かれる。
祭りの中で歩く最中、彼はジィーッと一つの屋台を見ている。探索者と好感度が高いならタコせんべい屋、女性に限定して林檎飴屋を見る。探索者が買ってあげると、「一緒に食べよう」と誘う。
【幸運】に成功すると、雅美がやっとの事で見付けてくれる。彼からも好感を抱かれるだろう。雅美は探索者にお礼を言い、ある程度好感度が高いのなら「是非とも、次の作品の主人公にしたいもんだ!」と笑う。更に、「慧斗神社についてだけど、何でも麒麟の正体を暴こうと躍起になっていたそうで、変な術のやり方が載っているそうだよ。神主さんに言ってみたら、特別に明日開封してくれるとさ。どうだい?」と誘ってくれる。
ロイガーを顕現させる呪術がある本で、シナリオで最も重要な物だ。是非とも同行したい所。
『士屋当麻、去る』
祭りには士屋も来ている。士屋は探索者を見付けると、お得意の心理テストを出す。
「あなたは祭りの屋台を一つ担当します。何屋さんにしますか? 一つ、射的・輪投げ。二つ、綿飴。三つ、金魚掬い。四つ、焼きそば」
探索者が選ぶと、祭りは非日常の象徴で、これは周囲が迷惑しているあなたの子供っぽい行動を表した物である。
「『射的は、大きな声で喋るし自分の事しか喋らない人。綿飴は、甘えん坊の他人任せ。金魚掬いは、嫌な事から逃げている人。焼きそばは、腹が空くと不機嫌になる人』、ですぜ」
と言った後、溜め息を吐く。
友人二人は見つからず、しかも音信不通。祭りで行方不明者が出たと聞き、彼も届けを出したそうだ。あとは現地の警察に任せ、彼は明日の朝一に実家のある別府に戻るそうだ。聖地巡礼所ではない。
最後に「変な心理テストに付き合わして悪かったね。面白い話がある。麒麟が降り立ったのは蓋寝山って知ってるか? アレは違うんだ。実は、別の山に降りたのではないかって話。何でも、麒麟神社は麒麟を奉る所にしては御神体も無いし、寂しいんだとさ。別に、本当の麒麟神社があるって都市伝説」と話す。
それだけ言うと士屋は手を振り、祭りの人混みに消えて行く。士屋とはここまでであるが、キーパーの裁量によっては探索者の同行者として事件解決の仲間にしても良い。
『今野の憂鬱』
祭りの中で、病院に向かったハズのZTT副隊長の今野がぼんやり川を眺めている所に出くわす。話を聞くと、小鳥遊の訃報を鬱げに話す。隊長はショックで病院にて項垂れているそうだ。
しかし死因が衰弱死であり、あり得ないと訴える。昨日まで蓋寝山行く程は体力があったと、衰弱死を信じられない様子だ。「病院側はいじめがあったのかと聞いて来たが、冗談じゃないぞ! そんな殺伐としてちゃツチノコ探しに大分来れるか!」と怒鳴る。【説得】に成功すると、怒る彼を宥める事が出来、落ち着けてくれた探索者に好感を抱く。彼はこの後、麒麟神社に小鳥遊が言った事を思い出し、単独で蓋寝山に向かう。
失敗の場合は、怒る彼は踵を返して祭りを後にし、旅館に戻ってしまう。
ある程度祭りを楽しんでいた所、冬羽根が小野田たちの元に大慌てでやって来る所に出くわす。寧が消えたようで、狼狽えている。小野田は彼女を落ち着けさせて、探索者たちに「探して貰えませんか?」と申し出る。探索者一人一人に【幸運】を振らせ、成功した者だけ、寧が帽子を深く被った黒服の男と手を繋いで白いワゴンに乗る様を目撃する。
探索者が追うも、運転席には別の人間がいたようで、ワゴンは急発進して祭り会場から逃げ出す。ワゴンの向かう方角は蓋寝山の方角だと気付く。探索者は小野田等を味方につけても、発見者単身でも良いので、蓋寝山へと向かう事になる。
『今野の憂鬱』で説得に成功させた場合、蓋寝山の麓に立つ彼と遭遇する。話を聞いても、「ワゴンなんて来てない」と言う。【心理学】に成功しても、本当の事を言っている。彼は麒麟神社へ調査に行こうとしていたのだ。
蓋寝山を捜索し、キーパーはランダムに選んだ探索者一人だけ、山の麓を流れる川岸で聖樹と中村の死体を発見させる。見てしまった探索者は【正気度 1/1d4】を、聖樹の友人なら【正気度 1/1d6】をしなければならない。そして突如、背後からやって来た人物によって気絶させられてしまう。
他の探索者は【幸運】に成功で、蓋寝山近くの小屋に白いワゴンが停められている所を発見する。中を覗いても、誰もいない。ワゴンの中を調べると、寧のショルダーバッグが発見出来る。また【目星】に成功したら、小屋の近くの土にタイヤ痕を発見出来る。犯人はここで車を乗り換え、ワゴンの目撃情報をかき消したのだ。ナンバープレートも剥がされている上に、探索者がプレートを写真で収めていたとしても偽物であると分かる。また、車は山と真逆の方へ行っていた。
また【幸運】に成功で、気絶した探索者を発見出来る。その探索者のポケットには、新聞文字を切り貼りした手紙で『誰にも言うな。言ったら命は無い』と脅迫する内容がある。
その場所で【目星】に成功すると、川岸で手帳を見付ける。手帳は中村の物で、『プレイヤー情報7』として内容を伝える。
『プレイヤー情報7・中村の捜査メモ』
これが処分されず、誰か第三者の手に渡る事を祈る。私は捕まった。ミイラ取りがミイラになると言う事か。私は奴らの尻尾を掴んだんだ。
糸井は麒麟神社で、何かを見つけた。糸井は最後まで落堂町に執着し、特に蓋寝山の神隠し伝説に注目していた。糸井は麒麟神社で何かを見つけたんだ。
私は残念ながら見つけられなかったが、あの男め、あいつが神隠しの首謀者だ。とんでもない奴だ、麒麟の実在を信じていやがるんだ。奴は麒麟に生贄を捧げる儀式を現在も行なっていやがる!
俺は危険人物は神主かと思っていた。だが違った、神主ではない。あの『暮』と言う男だったんだ。
第三者に伝える。麒麟神社には何かがある。警察には伝えるな、この辺りの警察は行方不明者捜索に対して妙に消極的だろ? 内通者がいるんだ。伝えれば逆に、立場が危うい。
だがそれも、物的証拠があればの話だ。麒麟神社に確固たる証拠があれば、警察は否応無しに動かなければならない。危険だが、この町の為に動いて欲しい。奴らは雛流しの夜に…………
中村は『危険人物は神主ではない』と言ってはいるが、神主はシロでは無いとは言っていない。そこに探索者が注目したなら正解で、この後にある展開で有利になるだろう。
寧が誘拐されたその後に、探索者は祭り会場に戻るか、麒麟神社の探索に向かおうとするだろう。祭り会場に戻るのなら、脅迫文に従い小野田らに誘拐の事実を隠さねばならない。しかし好感度が高い場合は、國枝に隠し事を看破される。探索者が観念し、「蓋寝山にいるの?」と聞かれて真逆の方だと答えられたのなら、彼女は考える素振りを見せて「まさか……でも……」と躊躇した後、「関係あるかは分からないですけど、東方面、蓋寝山の丁度真逆で、山だらけの場所です。この時期になるとね、そこが一番怖く感じる」と教えてくれる。どう言う事かと言われても、彼女の漠然とした感覚の話であり、詳細は分からない。探索者は彼女に口外禁止させるか、小野田等の一部に言うかは任せる。
今野が同行している場合は探索者に、「今すぐ麒麟神社を探すべき」と急かす。麒麟神社に着いたのなら、木下が寺男たちと共に明日の雛流しに備えての業務をしている最中だろう。捜索しようにも、寺男が帰らせるので無理だ。【人類学】に成功すると、寺男たちの動きが妙に規律正しく、軍隊の集団行動のようにも見えるだろう。寺男たちは、マカツのメンバーであるのだ。
聖樹らの死体、寧の誘拐等の事件が発生し、いよいよ町に潜む怪しい空気が確定したものとなる。三日目の雛流し、この時に暗部は生贄を御堂に閉じ込め、儀式を始めるだろう。探索者は麒麟神社の正体からマカツを明るみに出し、風牙山を見つけ出す所まで行く。
際にはZTT、小野田と國枝、更には西尾や雅美の力が必要不可欠となる。探索者の行動によっては誰かが死んでしまう事になるので、慎重かつ大胆に事を行いたい所。流れとしては朝から昼にかけてマカツを特定し、夕方に最終決戦への準備を整え、雛流しの始まる夜にマカツとロイガーとの対決を行いたい。
『不穏な動き』
起きれば、旅館は騒然となっている。消えた聖樹と寧(分岐点によっては冬羽根牧子も)の捜索願を張り出していた。冬羽根は寧をみすみす誘拐させたとして罪悪感に襲われているだろう。探索者が【説得】か【信用】に成功したなら、彼女から「一週間前も隣町で双子の子も行方不明になったのです。私のいとこ達でした。同一犯の犯行でしょうか」と話してくれる。
そのタイミングで、前日に共に慧斗神社に行こうと誘われた探索者に、喜多村雅美から電話が来るだろう。「今から慧斗神社に向かうが、大丈夫か?」と聞く。行くのであれば、その探索者一人だけと分断させておこう。「貴重な文献だからね、あまり多くの人は入れられないよ」と雅美として注意喚起させておけば良い。
次にエントランスで、ZTTの富永隊長が外出しようとする。すると「ツチノコ探しではなく、クロを探しに行くのだ」と言う。ZTTメンバーか、今野と仲の良い探索者を優先して一人だけ強制的に「付いて来い! コトユーの無念を晴らすのだ!」と連れて行く。探索者が拒むのなら「頼む。私一人だけでどうにかなる案件ではない。だからと言えど、大勢は危険だ……それにメンバーは、コトユーの死で動揺している状態……訳は後で話す、あまり知られたくない事だ。来てくれまいか?」と言う。
残りの探索者は、旅館の廊下を歩いていると、西尾と遭遇する。いつもながらに無愛想な彼だが、【心理学】に成功で怯えている事に気がつく。彼はさっさとその場を抜けようとするが、窓辺の前で「クソが! それぐらいで俺がビビるか!」と、突然怒鳴り出す。
怒鳴った後、走り出して旅館を出て行くが、その時に窓から外を見ても何も無い。しかし、西尾が何かのメモ用紙を落として行った。
メモ用紙には『落堂町三丁目2-80』と住所らしきものが書かれていた。これは西尾が調べ上げた暮の住所で、彼はそこへ向かったのだ。
探索者がもし、西尾の部屋を調べたいのなら、彼の部屋番号を従業員を【言いくるめ】て教えて貰い、【鍵開け】で開錠しなければならない。部屋にはボストンバックがあり、中からは着替えに混じって『途中報告書 糸井仁』とある皺の寄った文書が発見される。『プレイヤー情報8』として提示。
『プレイヤー情報8・途中報告書 糸井仁』
2016年8月1日。一年に渡り調査させていただいた内容について、進展があったので報告する。落堂町にて、西尾花苗(かなえ)の消失に関連すると思われる人物を特定した。
男は木下煎助、65歳。落堂町蓋寝山頂上にある麒麟神社の神主である。この男、色々ときな臭い男だ。去年12月下旬、推定十名程の人間を呼び、何か会議のような事を行なっていた。全ての人間が神社関係者ではないと調べ上げた。そしてその会議の翌日、必ず近辺で子どもの誘拐事件が起こる。偶然とは思えない。
それ以降も不定期で会合を開いているが、その度に必ず近辺で人がいなくなる。何の話をしているかは不明、見張りの存在に警戒し、山の麓から彼らの出入りを調べていた。私も時に神社へ入り、調査をしている。何か、見られては困るものが隠している可能性がある。
今後の指標として、夜間に神社を調査する必要があると踏む。何か分かれば、調査報告書を送る。
西尾の部屋を調べられなかったのなら、後で西尾が持っている事にして探索者に見せる形にしても良い。部屋の中には『暮悦史』と書かれたメモ帳もあり、そこには『呪術師の家系の子孫。先祖からの習わしを現在も行なっているサイコ野郎』と書き殴られている。また『慧斗神社から目を付けられている。慧斗にはコイツに知られたくない物でもあるのか』とも書いてある。
探索者がメモ用紙の住所へ向かうなら、探索者一人をランダムで選び、【ナビゲート】か【幸運】かでロールさせる。
【ナビゲート】成功なら西尾到着前に付ける。
【幸運】成功なら西尾が暮を問い詰めている場面で到着。
通常通りなら、西尾の死体だけがある状況で到着。それぞれで探索者の起こすアクションも変わる。暮の家は一軒家で、先祖代々の呪術師の家系ともありそれなりに立派な家だ。
西尾より先に到着したなら、彼は驚きと共に激昂し、問い詰めるだろう。しかし、暮の家の影から覗くヒトガタを見て家の中に突入。ドアを開けると、暮が家にいない。裏口から逃走したようだ。西尾は探索者のせいで逃したと思い込み攻撃するが、【説得】に成功で宥められる。西尾は暮を追おうと裏口から外に出るが、【幸運】に成功で彼はメモ帳『暮悦史』を落として去ってしまう。その後彼は御堂に閉じ込められた状況で探索者と合流する。
西尾と暮が言い争っている最中に出くわしたのなら、家の外で【聞き耳】に成功で中から怒号が聞こえて来る事に気付く。探索者が家の門を抜けた所で西尾の怒号が止んだと気付く。
探索者が中に入ると、頭を抱えて倒れる西尾と金属バットを手に持つ暮の姿に遭遇する。暮は探索者を見ると逃げ出し、裏口に停められていた仲間の車に乗って逃走する。
探索者が裏口で待ち伏せを提案していたのなら、その仲間である『マカツ構成員 グループA』と戦闘させる。戦闘は、暮の逃走成功と共に終了し、車で逃げさせる。負傷している西尾だが、【医学】か【応急手当】に成功で意識を戻させられる。彼は探索者に恩義を感じ、自分の身の上と『プレイヤー情報8』を見せてくれるだろう。
西尾が死んだ後に付いたのなら、開きっぱなしのドアから頭から血を流して死亡している暮と遭遇するだろう。彼の死体を見た探索者は【正気度 1/1d4】をロールする。彼を【医学】で死因を見るなら、頭部を複数回鈍器か何かで殴り付け、撲殺したと分かる。彼の持ち物を見るなら『プレイヤー情報8』が手に入る。彼が死んだとあれば警察に連絡する必要があるだろうが、警察は探索者を怪しむだろうし、暮の家を調べる事も出来ない。
警察を呼ぶ前に家を捜索したいなら、指紋などに気を付けなくてはならない。捜索した探索者全員が【幸運】をロールし、成功した者は怪しまれない。
『暮の家』
西尾が居ても居らずとも、暮の家を調べる必要がある。暮は呪術師であり、呪術に関係した書物が入手出来る。彼の家の構造は、一階にリビングと彼の寝室、台所や風呂場がある。二階は物置になっているが、マカツに関係したような物は置いていないものの『縷煙城移画』がある。
暮の寝室では、『暮式呪術』と言う古い本が手に入り、【母国語(日本語)】か【オカルト】に成功で『ヒトガタに特殊な呪文と対象の人物の名を書き、川に流す事で意思を持ち、その者に付き纏う』と言う呪術であると分かる。そんな恐ろしい呪文がある事に対する驚きと不快感に【正気度 0/1d3】をする。
リビングのカレンダーには27日に丸が付けられ、昨日の日付には『神社にて供物を二つ』と書かれている。供物とは、死んだ聖樹と中村の死体の事だ。また【目星】に成功すると、ゴミ箱の中に丸められたコピー用紙に気が付く。広げると、『アイツを利用するには、慧斗神社に浸入しなければ』と、慧斗神社への浸入計画が書いてある。
二階は物置だが、殆どが本だ。【図書館】に成功すると、『縷煙城移画』が発見出来る。中身は中国語であるので、『外国語(中国語)』なら読められるが、その場合はルルイエの事を垣間見てしまった故に【正気度 1/1d6】をしなければならない。だが読めた探索者には、かつて縷煙城(ルルイエ)に侵攻した忌まわしき種族『ロイガー族』の存在を知り、【クトゥルフ神話】を4ポイント増加出来る。
また、物置探索中に【幸運】に成功したなら、『マカツ信条』と言う古書が手に入る。これはロイガーと遭遇した当時の記録で、【母国語(日本語)】に成功すると『プレイヤー情報9』が手に入る。
『プレイヤー情報9・マカツ信条』
年の暮れ、慧斗からの報復を前に、天上の世界より麒麟が降臨する。麒麟は神通力を行使し、慧斗の者らを嵐で吹き飛ばす。麒麟は眞勝の者らに、村の安全の約束として、童子の生贄を五人欲する。
我々、暗部は村民に悟られる事なくこれを遂行せねばなるまい。もし調べる者あればその者を麒麟に捧げ、その者が逃げるのであれば麒麟より賜りし呪術を使い、ヒトガタに追わせよ。
来たる12月27日、麒麟様が天より参られた神聖なる日である。予定通り、裏祭は開催する。
これを見た瞬間、物置の本が一人でに崩れ出すだろう。ロイガーの念力が偶然、衝突したのだ。探索者は【正気度 0/1d3】を行う。
リビングを捜索するなら、【目星】に成功で小物入れの上に綺麗なネックレスが発見出来る。このネックレスは聖樹の物で、探索者に聖樹の友人か、聖樹を見た事のある探索者が、聖樹の物であると気付ける。小物入れを調べるのなら中から、様々なアクセサリーが出て来て、小物入れの引き出しの底に『遺品』と書かれている事が分かる。彼は始末した人々の身に付けている物を保管しているのだ。
遺品、と言う事は、聖樹はもうこの世にいない。聖樹の死を悟った探索者は【正気度 0/1d4】をする。因みに寧の物は見付からず、彼女はまだ生きていると知れる。
また、【幸運】に成功で、ソファの下に挟まった紙が発見出来る。紙には震えた文字で「奴はガキ共だけじゃねぇ、俺たちからも。このままでは奴隷だ」と書かれた紙を入手出来る。暮はロイガーが自分たちからも吸引していると気付いたのだ。
雅美の誘いで慧斗神社に到着すると、明人と共に鳥居の下で待つ彼の姿がある。「女の子が行方不明とは、とても恐ろしいな。まだ明人と同じぐらいの年頃なのに。誘拐なら許せんな」と言った後、表情を変えて「まぁ兎も角、今日は古い書物を見せてくれるんだ。国宝レベルとまでは行かないが面白い物でね、慧斗を管理していた地主さんの書いた奇書らしいぞ」と、探索者を先導して神社へ歩き出す。
歩いている最中、【アイディア】か【心理学】に成功すると、明人の様子がいつもよりおかしく感じる。頻りに後ろを振り向いたり、辺りを目だけでキョロキョロ見渡したりと落ち着かない。【信用】に成功か、探索者が明人に十分懐かれている場合は「ずっとずっと、何か見ている」と言って、東の方を指差す。「あっちから誰か見ている」と言うが、参拝客はいるがこっちに注目している人間はいない。【目星】に成功すると、人に向けてでは無く遠くの景色に向けて指差していると気付く。
雅美に呼ばれ、待っていた住職に案内されると本殿の奥で取り出された書物が出される。住職が「江戸の末に慧斗を治めていた地主の『相田 小熊(あいだ おぐま)』が書いた本。何でも、中国から渡った本に影響されて書いたと言われていますが、この本の執筆後に小熊は自殺をしています」と解説してくれる。
住職が本を開くと、びっしりと埋め尽くされた文字の羅列が現れる。読めない程に細かく書かれているのだ。すると住職は「眞勝の守護神である麒麟を引き摺り出す術があります。しかしまぁ、試した者はいますが、何も起こりませんよ」と補足する。探索者か、雅美が術について聞くと、出来る訳がないと思っている住職は方法を教えてくれる。
「まず神木を切って麒麟に見立て、『雷牙(らいが)』と書くのですよ。それを念を込めて空に投げれば麒麟が現れるとあります。口酸っぱく言いますが、何も起こりませんよ?」
ここで、これを聞いた探索者は『ロイガー顕現の呪術』を会得出来る。住職の言う通り、木の板に雷牙と書いて、【POW 3】と【マジックポイント 4】と【正気度 1d6】を犠牲にして念を込めて投げると、自然のエネルギー体であるロイガーを白日の下に晒せる。
だが、これは投げた木の板がロイガーに衝突しなければならず、御堂に集結する二体のロイガーの気が濃くなった時を見計らって投げなければ意味がない。またこの術は、他者に教える事でも可能で、成功しなければただの木の板投げとも見える儀式だ。
神木については、住職も分からないそうだ。神木は風牙山にある神社の大木で、ロイガーの気に一番当てられた木だ。この術はロイガーのエネルギーを逆手に取った物でもあるのだ。
本の解説をして貰い、お礼をした後に雅美と明人と共に本殿の外へ出る。雅美は「軽く写真を撮影して来るよ」と言って、明人を預けて一旦離れる。その時に明人から「麒麟ってなにかな」と何気無い質問をされる。
その時に【聞き耳】に成功したら、鈍い音が聞こえて来る。探索者が見に行くなら、自宅から逃げて来た暮が、先程の住職をスタンガンで気絶させた光景を目の当たりにして【正気度 0/1d4】を減少させる。この時に暮は探索者の気配に気付いてしまうが、【隠れる】に成功でバレずに済む。バレずに済んだ場合は、暮が裏口を開けて本殿に侵入しようとする。聞き耳をロールするまでも無く、「開けよ……俺にはもう、後がねぇんだよ」と聞ける。彼はロイガーのエネルギー吸引が生贄だけでは無く、自分たちにも成されていると気付き、奴隷に堕ちる前に麒麟を手中に収めようと、一部の仲間内で画策していたのだ。
探索者が止めたり、明人と共に雅美を待ったり、助けを呼ぼうとした場合には、【アイディア】をロールさせ、成功した際には明人の気配が無い事に気付ける。明人は黒服の男(マカツの構成員)にスタンガンで気絶させられていた。探索者が男に攻撃を加えようとしたら、背後から暮や他の構成員によって不意打ちで気絶させられ、車に乗せられる。
最後には「仕方ねぇ。こいつらを捧げるぞ。丁度良い、こいつらには俺らの計画の人柱になって貰おうか」と暮の声が聞こえて、そのまま御堂に運ばれる。
探索者が富永と共に、再び蓋寝山までやって来る。富永は「コトユーは、病院で一回だけ息を吹き返したんだ。その時に私に、『麒麟神社の賽銭箱の下』と言ったんだ。コトユーは何か見てはならん物を見つけて、殺されたんだ」と言う。
神社に辿り着くまでには、富永と共に【忍び歩き】に三回成功しなければならない。仮に失敗しても、【幸運】に成功したなら気付かれずに済む。【ナビゲート】の技能に成功したなら、迂回ルートを見つけ出し、ロールの必要無くとも神社に辿り着ける。仮に忍び歩き、幸運共に失敗した場合は、木の陰から現れた、麒麟の面を着けた『マカツ構成員 グループB』との戦闘になる。この不気味な集団に囲まれた探索者は【正気度 0/1d4】をする。
戦闘は2ラウンドの後に更に5人の増援により中断、数に押し負け、富永と共に気絶させられる。もし探索者が【回避】の連続成功等、起点を効かせて逃げるのであれば逃しても良い。ただ、富永を置き去りにした罪悪感から【正気度 0/1d6】をする。その後その探索者は、蓋寝山の麓で探索者と落ち合う流れとなる。
神社に見付からず到着出来たなら、早速富永は賽銭箱の下を調べるだろう。賽銭箱を退かせば、下は空洞になっており、しかも人骨が所狭しと置かれている光景に遭遇、【正気度 1/1d6】をする。また、神社の蔵に【鍵開け】成功で侵入したなら、中から二人の男性(士屋の友人)と中村に聖樹の死体を発見し、これも【正気度 1/1d6】をする。蔵は完全密封で窓も無く、腐乱臭が漏れないようにされている。
衝撃的な光景を目の当たりにし、富永は後退りするものの、やって来たマカツの構成員に気絶させられる。探索者も逃げようとするなら賽銭箱の所なら拝殿から、蔵の前なら蔵の中から木下が現れ、不意打ちで探索者を組み伏せる。「まさかここの秘密を知るとは、捧げたあの男の遺言か? まぁ良い。喜べ、貴様らは麒麟様の糧となる」と言い残し、スタンガンで気絶させ、御堂へ運ばれる。
暮の家を調べた探索者に、雅美と國枝からの電話がやって来る。雅美は「君の仲間と息子がいない。慧斗神社に来てくれないか」と、國枝からは「貴方たちの友人さんと、ツチノコの人が神社に入って行ったのを見たって、小野田君が……兎に角、来て下さい。河川敷にいます」と双方共に緊急を要する連絡。
次に今野からも「隊長がいない。何か分からないか?」と電話が来る。探索者が要件を伝えると「私も河川敷に行く」と、向かう旨を伝えるだろう。この際には、雅美の方と、小野田らの方とで再び分割する事になるが、雅美を連れて河川敷に行くのなら探索者全員で挑める。
『喜多村雅美』
慧斗神社に着くと、狼狽える雅美の姿が見えて来る。「攫われたのだろうか。住職さんもいないようだ。どう言う事だよ」と自暴に浸っている。探索者が【説得】か、十分に彼から好感を得られている場合には、探索者の声で落ち着きを取り戻し、謝罪する。
現場には攫われた探索者の私物が一つ落ちているだけ。聞き込みをすると、一人の参拝客が「複数の男らがデカい袋を持って車に乗せていた」と証言してくれる。
また【幸運】に成功で、別の参拝客が「妙な車が、東の山の方に走って行ったトコを見た。縁起悪い所に行くなと思ったよ」と証言する。縁起悪いとは何かと聞くと、「昔からあそこは縁起悪いと言われておっての。山の麓でも遊ぶのならその日の夢見が悪くなるもんで、俺らは『悪夢峠』と呼んでいる」と教えてくれる。場所を聞くと、「行くような所じゃないがね。と言うか私有地だから入らないが」と念押しして教えてくれる。
そのまま探索者は雅美と共に向かうも、河川敷にて合流するも自由とする。時刻は既に夕方になっており、攫われた探索者やNPCから【マジックポイント 1d6】を減少させる。
『雛流し』
雛流しの準備が進められる河川敷で、小野田と國枝、今野が待っていた。小野田からは「山に二人が向かいましたが、もう一時間になります、降りて来ません。どうしたのですか?」と聞く。他の探索者は富永の様子が変な事は分かるものの、神社の事は知らないだろう。すると今野が「隊長は病院から帰った時に、『神社に何が』と呟いていた。神社に行ったのか」と思い出す。
探索者が行こうとするなら、好感度の高いNPCが「行っては二の舞になる。あの山には、何かがいる」と止められる。すると【心理学】成功で國枝の様子が怯えたものとなった事に気付き、探索者は【信用】成功か、好感度が高い状態なら自動的に「今年もなの。東の方から、嫌な気配がするの」と話してくれる。今野は東の方と聞くと「もしや、『悪夢峠』? あそこは私有地だから入れないが、悪夢を見る山って有名でしたな」と話す。
小野田へ【心理学】に成功すると、言おうか言わまいか迷っている様子だ。【説得】か【信用】に成功か、十分に小野田からの好感度が高い状態なら自動的に「山の保有者って、木下さんですよ」と話す。更にその山は、代々に渡って木下さんの所で相続されて来た山である事も教えてくれる。以前に本人から自慢話として聞かされたようだ。
また、木下はいつも祭り開始まで来ず、祭りの役目を果たすとさっさと退散している等の情報も聞ける。もしや、誘拐犯は木下ではないかと疑うのだ。
探索者の意思が固まったのなら、東方の山へ行く事になる。今野は「辺りを調べるよ」と言って参加しないが、好感度が高い場合は後に隊員を引き連れてやって来てくれる。好感度が高い場合なら、小野田は探索者に車を貸してくれるし、國枝も山の前まで来てくれる。
その時に小野田は、「國枝の一族って、元々は慧斗村のイタコさんの末裔でしてね。こう言うスピリチュアルな事に一番近いのですよ。まぁ、それが理由で虐められていたり」と話してくれる。【オカルト】に成功で、イタコは東北で見られる降霊術師で、九州にいたとは珍しいと考え、何か呪術師的な側面があったのではと予想する。
その事を國枝に聞いてみるなら「何て事ないですよ。それに、私のご先祖様である『相田小熊』は悲惨な死を遂げたって言いますし、あまり由緒ある訳ではないです」と言う。彼女はロイガーを権限させる術の考案者、相田の子孫だったのだ。
車で飛ばして30分、徒歩なら一時間の所に小さな山々が見えて来て、目の前に『私有地につき立ち入り禁止』と置かれた古い看板がある場所で停車。既に暗くなっており、探索者は懐中電灯等が無ければ目星などの視覚を利用する技能にペナルティーが課せられる。
國枝は車の中にいるように小野田に言われ、探索者と小野田で突入する事になる。
落堂町の東に位置する山々で、木下の私有地として一般人は入れない山だ。この山の中腹には、木々に囲まれた隠れ神社『眞勝神社』があり、ここにある御堂で生贄の儀式を暗部は何年も何年も執り行って来たのだ。二体のロイガーはこの神社を中心に落堂町を見て、何も知らぬ人々や生贄から精神力を奪って生き長らえて来た。
山の麓には暮たちの車が停められており、中を調べると暮の『12ゲージショットガン(ポンプ)』が発見出来る。護身用に持って来たが、儀式中には無用の長物として置いていたのだ。ここは人が滅多に来ず、盗られる事は無いだろうとしていたのだ。
御堂にて攫われた探索者とNPCは、ここで目覚める。広い場所で、月明かりが細穴から漏れている以外は光源の無い場所だ。探索者と富永(いれば冬羽根と西尾)は携帯を所持したままで、液晶の光で闇を晴らす事が出来る。まずは閉じ込められたショックで【正気度 0/1d3】をする。
光を当てると、明人と寧、更には双子ともう一人の女の子と気絶状態の住職が発見出来る。もう一人の女の子は昨日行方不明の記事が出ていた理沙と、双子は一週間前から行方不明となっていた冬羽根のいとこの双子姉妹だ。他には分岐によって囚われたNPCがいる。特に理沙と双子の純恋(すみれ)と純夏(すみか)がかなり窶れていると分かる。【医学】に成功で、栄養失調により痩せ、物も言えない程に衰弱している、肉体的にも精神的にも疲弊していると分かる。
富永は「してやられた。まさか、神社全体がグルとは」と悔しがる。
御堂の中には何もあらず、冷たい木の床の上で、隅の方にうずくまる形で理沙と双子がいる。明人と寧は壁にもたれて膝を抱えて座っている。
その時にまた【マジックポイント 1d6】の減少を起こし、【アイディア】に成功で自分の身体から力が抜かれた事を実感出来る。察知した富永は「ここには、私らの他に、何かいるのか?」と恐怖する。もう一つの存在が仄めかされ、探索者は【正気度 0/1d4】をする。
ここからはゲーム内時間10分(目安として、探索者が二回行動した後)に対し、マジックポイントの減少ロールを御堂にいる者全員に行う。明人と寧は能力値欄を参照し、理沙と双子は【CON 10・マジックポイント 17・正気度 20】でロールをする。探索者やNPCのマジックポイントが0になると気絶し、【CON×5】のロールに成功しない限りは目覚める事が出来ず、【CON 1】が減少され続ける。CONの全消がキャラのロストとする為、探索者は御堂かは手掛かりを探し、場所を携帯で他の探索者に伝えなければならない。もし、御堂の中でNPCが死んだ場合は、次は自分かもしれないと言う恐怖が相乗して【正気度 1/1d6】をする。発狂した場合、【狂人の理解】を発動して手掛かりを自動的に見つけ出し、発狂前に富永や別の探索者に伝えられる。手掛かりに対して、捜索側のロールの成功が4つ噛み合ったなら眞勝神社が発見される。
ただし、『明人の決起』『西尾の憤怒』『狐の案内』の3つに関しては、探索者側のロール成功条件が満たされた場合に即座に眞勝神社へ到着する。
御堂の手掛かりは以下の通り。
『中村の遺言』
探索者が【目星】に成功で、床に彫られた文字を見つける事が出来る。「ここは山の中腹だ。そして、杉の元」と書かれている。捜索側は【ナビゲート】か【博物学】に成功で、山の中腹か杉の自生地点を特定出来る。
『木の腐敗』
探索者が【幸運】に成功で、壁の木が腐り、覗き穴程度の小さな穴が出来る。そこから覗けば、木々の隙間から町の夜景が見えており、落堂町が見下ろせる場所だと分かる。つまり落堂町側に向いた、高所だ。捜索側は【アイディア】か【ナビゲート】で場所を特定出来る。
『理沙の見た風景』
探索者が理沙対し、食べ物を与えるか【精神分析】成功で口を開いてくれる。
理沙は「車の中で起きて、窓から曲がった木を見た」と証言。捜索側の誰かが【博物学】成功なら松の木ではないかと分かり、自生出来そうな所を特定出来る。
『純恋と純夏の聞いた声』
理沙と同様の条件で口を開く。双子は「黒い服の人が『狐が集まりやがる』と言っていた」と証言。御堂の近くは狐の集会所であると分かる。捜索側の誰かが【生物学】に成功なら、山の中で狐が集まりやすい地点を特定出来る。
『寧の話』
寧が探索者の事を知っている場合にのみ。「車から降ろされた時に逃げようとしたが、逃げられなかった。しかもその時にブローチを落としてしまった」と証言。神社近くに彼女のブローチがある。捜索側は【幸運】に成功で、彼女のブローチを発見出来る。
『明人の決起』
明人の好感度が高い場合にのみ。この手掛かりが発動出来たなら、即座に場所が判明する。明人がもたれていた壁が、板で修復された跡があり、【STR 6】の抵抗ロールで外せる。かなり小さな穴だが、明人なら無理をすれば通れる穴。明人が勇気を出して外に出て、助けを呼びに行く。
獲物が逃げるとあって、ロイガーはマカツの構成員に指示を飛ばすかもしれない。明人の【幸運】のロール成功と、捜索側の【幸運】成功で、捕まる事なく他の探索者に辿り着ける。
『住職の知恵』
気絶している住職に【応急手当】に成功で(回復値は度外視)、気絶から起こせた場合に発生。御堂の造りは特殊で、まず仏壇とかも無い上に余りにも頑丈である事など聞ける。閉じ込める用途だけに特化しているのだろうと予想。また「月明かりがあると言う事は、拓けた所でしょうか」と言う。
捜索側は【アイディア】に成功で、木の少ない箇所を確認出来る。
『西尾の憤怒』
西尾が囚われている場合にのみ。捕まって怒る彼だが、「ただでは捕まらん」として、「車で運ばれている最中、少し開いていた窓から丸めたパンを三つ千切って落とした」と述べる。捜索側の探索者が【目星】に成功したなら、そのパンを発見出来、その後連続で2回【目星】に成功したなら、眞勝神社に辿り着く。
『冬羽根の証言』
冬羽根が囚われている場合にのみ。彼女は風を読む事が出来るようで、「今、西南から風が吹いていて、ここは風下」と言う。捜索側は【知識】に成功で、風向きから場所を特定出来る。
『狐の案内』
手掛かり『純恋と純夏の聞いた話』を手に入れた状態で、捜索側ロール成功失敗問わずに起こる手掛かり。捜索側が【幸運】に成功すると、狐を発見出来、【追跡】に成功で神社の場所まで行ける。ただし、辿り着けるのは【追跡】成功の者のみ。
『マカツの声』
御堂の探索者が【聞き耳】に成功で起こる。外からボソボソと「今日は冷えるな。崖だし、気を付けないと」とボヤきが聞ける。捜索側は【目星】か【地質学】で崖の場所を発見出来る。
木々に囲まれた廃れた神社が、ロイガーの潜む本物の麒麟神社『眞勝神社』である。拝殿は無く、本殿がだけがある。裏手は松の木の生える崖で、その上に生贄を捧げる場所である御堂が建てられている。本殿の前には大きな木があり、【知識】に成功でこれはこの神社の『神木』だと分かる。その神木の周りが、狐の集会所だ。狐は神木のエネルギーに、無意識に惹かれてやって来た訳だ。
捜索側の探索者たちが到着すると、隠れ潜むマカツの構成員が襲いかかるだろう。しかし、小野田と雅美の好感度が高い場合は、彼らが囮を請け負ってくれる。この場合、『マカツ構成員 グループB』との戦闘を避けて御堂に辿り着く。御堂には鍵が掛けられているが、【鍵開け】に成功か、【STR 6】の抵抗ロールで開けられる。開けられ、中にいた人々を助けた時、辺りにあった木々が一斉に揺れ始める。ロイガーのテレキネシスだ。そして助けた探索者に二体が一斉に吸引を行い、【CON×5】のロールに失敗で【マジックポイント 1d10】を減少させてしまう。吸引された探索者は驚きから、【正気度 1/1d4】をする。
探索者が【目星】か【アイディア】に成功すると、御堂の上に薄い靄がかかっている事に気付く。ロイガーが集結している上に、気が高ぶった影響で少し姿が見えているのだ。こんな異常現象を見た探索者は【正気度 1/1d6】をする。探索者は即座に何かがいると分かり攻撃をするが、当たらないだろう。探索者が『ロイガー顕現呪術』の事を思い出した場合、すぐに行動を移せる。
ロイガー顕現呪術用の木の板は、神木を引き剥がす必要がある。神木の木の皮を【STR 14】の抵抗ロールで剥がして手に入れられる。他のNPCや探索者と協力しても良い。
その間、ロイガーはテレキネシスで石や神社の装飾品を引き離し、妨害を図るだろう。探索者は術式を行う者と、ロイガーの囮とを引き受けなくてはならないが、西尾と富永がいる場合は彼らが囮を引き受ける。ロイガーの飛ばした物は【回避】で避けられるが、もし当たれば【ダメージ 1d4】で減少させる。
引き剥がした時に、マカツの構成員は異常事態に気付き、『マカツ構成員 グループC』が止めに入る。探索者に余裕があるなら、術式を行う探索者の壁となっても良い。術式を行う探索者は木の板に『雷牙』と書く作業が残っており、本殿で【幸運】に成功したら墨汁と筆が手に入る。國枝との好感度が高い場合は、彼女がやって来て筆ペンを貸して貰える。
國枝がやって来た場合、探索者がやっている事を見て「魔除けの術を知っているんですか?」と聞いて来る。彼女は祖母から、木の板に『雷牙』と書いて軒先きに吊るす魔除けを知っているのだ。彼女の家系では、相田の術式が魔除けとして残っていたのだ。「これなら私がやれます」と請け負ってくれる。探索者はそれを承諾すると、本当の方法を教えられる。
ごく普通の人間である探索者なら、ロイガーは一体しか引き摺り出せないが、慧斗の呪術師の子孫である彼女が行えば、ロイガーは二体とも引き摺り出す事が可能だ。
以上の事で術式を完成させると、身体からの力が木の板に流れ込む感覚になる。その状態で御堂の靄に向かって木の板を投げれば、ロイガーがその姿を現わすのだ。
術によって現れた存在は、およそ麒麟とは呼べない爬虫類に似た邪悪な生物と遭遇する。ロイガーを見た探索者は【正気度 1/1d6】をしなければならない。ロイガーは有機体として姿を現わし、御堂を押し潰すも、奴隷風情としか見ていない人間に引き摺り出された事による動揺を起こして行動を停止させる。
その時、本殿に潜んでいた暮が現れ、ロイガーに矢を放つ。矢が刺さったロイガーは(二体の場合は、二体とも)突如として暴れ出すのだ。矢には、暮の呪術が込められており、「やっとだ! やっと、麒麟をこの手に収められる! その矢にあるのは、暮家が百年に渡り練り上げた術が込められている! 生物の屈服だ!」と狂笑をあげる。しかし、ロイガーにその術は無意味であり、怒りを買ったロイガーに噛み付かれて死亡する。その時に近くにいる探索者は、【幸運】を振って失敗した場合、巻き添えを食らって【ダメージ 1d6】を減少させる。
暮が残酷に死んだ様を見て、探索者は【正気度 0/1d6】をする。ロイガーは怒りを爆発させ、溜め込んだエネルギーを使用して『大嵐』を起こそうとするだろう。木下は「麒麟様の顕現じゃ、麒麟様の顕現じゃ! 今に奇跡が起こるぞ! 皆の衆! 麒麟様を守るのじゃ!」と叫び、マカツ構成員を全て集結させて護衛する。『木下煎助』『マカツ構成員 グループC』並びに、『ロイガー』との戦いが始まる。その時に好感度の低いNPCは逃げてしまう。戦闘中、【幸運】に成功すると、暮の金属バットや手頃な石が手に入る。
また、今野と好感度が高い場合、戦闘1ラウンドの後にZTTメンバーを引き連れ、『必殺・ツチノコランチャー』を発射する。これは巨大な網弾で、ロイガーの攻撃技能に-5のペナルティーがかかる。更にZTTメンバーが木下とマカツ構成員に立ちはだかり、探索者がロイガーに集中出来るようにもなる。
ロイガーは10ラウンドの間に半分以下の体力になった場合、完全に日本から逃げ帰る。半分以下に出来なかった場合、ロイガーの術が完成して『バッドエンド』となる。
ロイガーを二体顕現出来た場合のみで、10ラウンドの間にロイガーを一体でも絶命出来た場合、発生させようとしたエネルギーが行き場を失って眞勝神社上空だけのスーパーセルが発生する。
その時、【DEX】が10以上の探索者は自動的に逃げられるが、それ以下の探索者は【幸運】に成功で逃げ切れる。失敗の場合は【ダメージ 1d10】を食らい、ファンブルの場合は即死してしまう。マカツ構成員や木下はそれに巻き込まれて全滅し、もう一体残ったロイガーは姿を消す。
『バッドエンド』
ロイガーの術が完成し、空が唸り声をあげる。豪風、大雷、土砂降りの雨。それは神社から山全体に、そして町を覆った。
突如発生したスーパーセル、それは町を飲み込み、破壊する。風は人と建物を飛ばし、雨は山を崩し、雷はこの破壊の様子を笑うかのよう。
スーパーセルは十分後に止まる。後に他方の人々が様子を見た時は、町は荒廃した大地となっている。まるでこの世の終末の様子。
ロイガーは何処ともなく去って行く。日本の何処かか、世界の何処かか。
『ハッピーエンド』
ロイガーを倒し切れず、『撃退』した場合のエンド。また、倒したとしても『術式の時点で一体しか引き摺り出せなかった場合』も含む。
ロイガーは咆哮をあげて、また身体を不可視にしてしまう。すると発生したスーパーセルが破裂するかのように消滅、風が刃となりマカツ構成員を全て切り裂いた。その様はまさに、カマイタチの如く。この時に【回避】または【幸運】に失敗すると、【ダメージ 1d6】が加わる。
一難去り、國枝から「消えた?」と声があがる。瞬間、マカツ構成員は悲鳴をあげて全員が崖から飛び降りる。残ったのは木下のみだ。
「麒麟か……なんと言う事だ。ワシは騙されていたのか」
木下は後退りし、探索者に背を向けて逃げるものの、やって来たZTTと今野によって捕獲される。「神社の下の死体に関して、お前は追求されるだろう」と、警察に明け渡される。山から見下ろした止木川にて、明かりが付く。雛流しが始まった。
『トゥルーエンド』
ロイガーを『二体顕現させた』上、『一体でも絶命させた場合』に起こるエンド。
発生したスーパーセルが山肌を抉り、豪風の嵐が眞勝神社を全て消し去った。それが収まったのは、1分後、気付けば静寂だけが残る。
探索者の足元に、本が落とされている。【母国語】に成功で読める。『麒麟は眞勝神社に落ちた大岩から誕生した。麒麟は、天より遣わされた存在なのだ』とある。そして、『麒麟は名をロイガーと言う』と言う記述。この本は、眞勝神社の中に隠された本であった。
何も無くなった神社の跡地に呆然と立つ人々。するとサイレンが麓から聞こえて来た。この異常事態に、警察が動き出したのだろう。
あの麒麟は、宇宙から来た存在だったのだ。何年も何十年も何百年もこの景色から人間を見下し、手駒にして来たのだ。
四日目は主に、エピローグとなっている。逃げたロイガーへの不安、死んだ者への追悼と生きる者たちの躍進等、後日談を交えてシナリオはクリアとなる。
小野田と國枝は聖樹の死体を麒麟神社から発見。今回の一件で、不幸な事だがもう同じ思いをする人が出ないであろうと、安心もあるらしい。妹の寧に関しては、今回の事や兄の死がとてつもないトラウマとなってしまっただろう。ケアをして行きたいと語る。國枝によれば、もう嫌な気配はしないと言う。
西尾は今回の一件で、妻の失踪の正体を知り、しかも根源を跳ね除けたとあって満足している。恐らく麒麟神社下に残されているであろう、妻の遺骨を持って故郷に帰りたいらしい。
ZTTは、仲間の死を受けて考える所はあるものの、「ツチノコ探しよりも良い物を知れた」と残し、大分を後にする。後日、小鳥遊の遺体が地元に来て、改めて執り行う葬式に参加する予定だそうだ。若い命が失われたとあって、理由はどうあれZTTは活動を休止するだろう。
雅美はロイガーの存在等に軽く興奮していたらしいが、「息子の不幸の原因なのに不謹慎」と言って、今回の一件を小説にするつもりは無いらしい。代わりに雛流しの夜に亡くなった妻の幻影を見た男が思い出を巡る物語を構想しているらしい。旅館を去り際、明人は笑顔で手を振った。
その後、麒麟神社からは白骨死体多数と、中村と聖樹の死体発見が警察によって発表される。白骨死体は、今まで近辺で消えた行方不明者のものと一致し、行方不明事件の犯人は木下であるとされた。木下が生きて捕まった場合、大分県警署長が協力者である事を暴露する。
衝撃的な事件の裏の冒涜的な闇、それが白日の下に晒されたものの、それらに勇敢に立ち向かった者らは語られる事はないだろう。
探索者はシナリオクリア報酬として、【正気度 1d10】が手に入る。また、御堂から救出した人間一人に応じて、正気度に【+5】が付与される。また、ロイガーの存在を知った為に【クトゥルフ神話+5】を入手出来る。
國枝見代 20歳、怯える司書志望
STR 10 CON 10 SIZ 11 INT 15 POW 11
DEX 16 APP 14 EDU 15 SAN 55
耐久力 16 db +0
技能:図書館 67%、博物学 55%、応急手当 60%
小野田清 21歳、秀才の好青年
STR 16 CON 14 SIZ 14 INT 16 POW 17
DEX 10 APP 15 EDU 15 SAN 85
耐久力 21 db +1d4
武器:こぶし 60%、ダメージ 1d3+db
キック 70%、ダメージ 1d6+db
組みつき 50%、ダメージ 特殊
技能:自動車の運転 45%、経理 55%、信用 60%、ナビゲート 50%
矢川寧 6歳、勝気なお転婆
STR 5 CON 10 SIZ 7 INT 10 POW 13
DEX 14 APP 15 EDU 4 SAN 40
耐久力 9 db -1d6
武器:キック 50%、ダメージ 1d6-db
冬羽根牧子 21歳、快活な女将見習い
STR 13 CON 12 SIZ 12 INT 15 POW 13
DEX 10 APP 12 EDU 13 SAN 65
耐久力 18 db +0
武器:こぶし 50%、ダメージ 1d3
技能:回避 60%、経理 55%、接客 67%、ナビゲート 60%
富永典明 53歳、変人な編集長
STR 14 CON 10 SIZ 13 INT 18 POW 13
DEX 15 APP 10 EDU 20 SAN 75
耐久力 17 db +1d4
武器:こぶし 50%、ダメージ 1d3+db
キック 66%、ダメージ 1d6+db
ツチノコ棒 70%、ダメージ 1d6+1+db
技能:値切り 80%、オカルト 74%、心理学 46%、ツチノコ学 95%
今野憲昭 37歳、真面目な編集者
STR 13 CON 14 SIZ 15 INT 15 POW 12
DEX 10 APP 12 EDU 17 SAN 60
耐久力 22 db +1d4
武器:こぶし 50%、ダメージ 1d3+db
ツチノコ棒 65%、ダメージ 1d6+1+db
ツチノコランチャー 85%、ダメージ 特殊
技能:人類学 70%、生物学 65%、信用 70%、ツチノコ学 90%
喜多村雅美 33歳、若き幻想小説家
STR 10 CON 10 SIZ 14 INT 19 POW 12
DEX 18 APP 15 EDU 19 SAN 55
耐久力 17 db +0
武器:こぶし 56%、ダメージ 1d3
頭突き 30%、ダメージ 1d4
メモ用ボールペン 50%、ダメージ 1d2
技能:図書館 70%、写真術 50%、心理学 57%、言いくるめ 80%、歴史 60%、小説執筆 95%
喜多村明人 6歳、引っ込み事案な息子
STR 8 CON 11 SIZ 6 INT 12 POW 14
DEX 8 APP 15 EDU 3 SAN 50
耐久力 15 db -1d4
武器:タックル 60%、ダメージ 1d6-db
技能:幸運 80%、忍び歩き 70%、甘える 90%
西尾隆二 35歳、謎を追う男
STR 15 CON 13 SIZ 13 INT 13 POW 13
DEX 12 APP 13 EDU 14 SAN 46
耐久力 20 db +1d4
武器:こぶし 70%、ダメージ 1d3+db
キック 50%、ダメージ 1d6+db
特殊警棒 70%、ダメージ 1d6+db
技能:自動車の運転 80%、追跡 60%、隠れる 55%、投擲 50%、回避 42%
士屋当麻 19歳、変わり者の巡礼者
STR 15 CON 10 SIZ 13 INT 12 POW 10
DEX 11 APP 16 EDU 12 SAN 50
耐久力 12 db +1d4
武器:キック 65%、ダメージ 1d6+db
組みつき 35%、ダメージ 特殊
技能:心理学 65%、目星 75%、説得 65%、オカルト 70%、図書館 50%
木下煎助 65歳、陰険な神主
STR 10 CON 11 SIZ 13 INT 17 POW 10
DEX 8 APP 9 EDU 15 SAN 25
耐久力 18 db +0
武器:燃えている松明 55%、ダメージ 1d6(負傷のスポットルール適応)
技能:博物学 60%、言いくるめ 70%、心理学 50%、歴史 80%、クトゥルフ神話 4%
暮悦史 34歳、残酷な呪術師
STR 15 CON 11 SIZ 16 INT 15 POW 15
DEX 13 APP 13 EDU 15 SAN 36
耐久力 19 db +1d4
武器:こぶし 50%、ダメージ 1d3+db
12ゲージショットガン(ポンプ)65% ダメージ 4d6/2d6/1d6
金属バット 55%、ダメージ 1d8+db
弓(弓道) 50%、ダメージ 1d6+1+db
技能:機械修理 60%、投擲 55%、追跡 70%、歴史 65%、忍び歩き 70%、クトゥルフ神話 7%
呪文:ヒトガタの追跡
ロイガー、落堂町の麒麟
1 2
STR 41 45
CON 32 23
SIZ 40 50
INT 20 15
POW 15 14
DEX 10 13
db +4d6 +5d6
耐久力 39 40
武器:かぎ爪 30%、ダメージ 1d6+db
噛み付き 50%、ダメージ 2d6+db
呪文:テレキネシス、精神力吸引、破滅の大嵐
マカツ構成員 グループA
1 2 3
STR 12 11 14
CON 15 14 12
SIZ 13 12 15
INT 12 11 14
POW 13 14 14
DEX 14 16 16
db +1d4 +0 +1d4
武器:こぶし 60%、ダメージ 1d3+db
キック 80%、ダメージ 1d6+db
特殊警棒 75%、ダメージ 1d6+db
スタンガン 60%、ダメージ スタン
技能:回避 55%、機械修理 60%、自動車の運転 70%、隠す 60%
マカツ構成員 グループB
1 2 3 4
STR 14 16 13 14
CON 10 15 11 12
SIZ 14 15 12 11
INT 15 13 12 14
POW 14 17 12 13
DEX 17 10 13 14
db +1d4 +1d4 +1d4 +1d4
武器:こぶし 60%、ダメージ 1d3+db
特殊警棒 60%、ダメージ1d6+db
組みつき 70%、ダメージ 特殊
技能:隠れる 80%、追跡 60%、忍び歩き 70%、回避 55%
マカツ構成員 グループC
1 2 3 4 5
STR 11 14 16 13 17
CON 15 10 12 12 14
SIZ 14 12 12 16 17
INT 12 14 16 17 14
POW 15 10 12 11 15
DEX 13 17 11 16 10
db +1d4 +1d4 +1d4 +1d4 +1d6
武器:こぶし 60%、ダメージ 1d3+db
特殊警棒 55%、ダメージ 1d6+db
短刀 70%、ダメージ 1d4+db
技能:回避 40%、目星 60%、隠れる 70%
クトゥルフTRPGが大の好き好きであります、映画みたいなCoCシナリオを書くの好きな人。監督と呼ばれたい。 こちらにあるシナリオは全て、旧CoC6版を遵守しております。7版対応に関しては、このサイトでは視野に入れておりませんので、留意願います。 色々は、URL辿ってTwitterより。
https://twitter.com/ergotBear
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