あなたたちはいつものように象牙のバラ通りで身を寄せ合いながら目を覚ます。周りを見渡せば隊商が馬車を走らせ、住人達は白い漆喰が塗られた大きな家に併設された露店を巡り歩いている。見上げれば魔力でつくられた薄暗い人工光は動かず、常にこの街を照らし続けている。続けて視線を地面に下ろせば一度も整備されていないにも関わらず擦り減ったり壊れたあとのない縞瑪瑙(オニキス)の床が目に入る。何も変わらない日常がまた始まった。
ここはドリームランドのセレファイス、時間の概念が存在しない街。不老不死の住民達があらゆる外部刺激から隔絶され、何の目的もなくただ生き続けている。そんな平和で怠惰な理想郷だ。
現在のクトゥルフ神話TRPGにおいて、ドリームランドを舞台としたシナリオは以下の問題点を抱えています。
○シナリオ制作側のドリームランドへの知見が少ないため、ドリームランドが舞台ではなくてもよいシナリオが多いことやあやふやな世界観のままシナリオが進行してしまうこと
○サプリメントやネット上の情報不足によってプレイヤーがドリームランドという世界へ没入しにくいこと
そのため、本シナリオは解像度の高いドリームランドの世界観を有したうえでドリームランドという舞台を探索するだけの理由を持ち合わせているものを目指して制作しました。ドリームランドの世界観を破壊しないために登場するNPCと街の情報は出来るだけ改変せず、「クトゥルフ神話TRPG ラブクラフトの幻夢境」を引用しています。
更に、ドリームランドを十分に楽しんでもらうため難易度は出来るだけ下げる方向で設定しています。KPとして回す際は最後の儀式で決断するとことが肝となりますので甘めの采配を心がけるようお願いします。
株式会社アークライトから二次創作に関するガイドラインについて発表されておりましたが、現時点ではっきりと理解できていないため問題があればご指摘をお願いします。
後編については修正を行った後、投稿を行います
ドリームランド全体の地図 → 48、49P
ガク → 50P
セレファイス → 51P、53P
セレファイスの地図 → 52P
タナール丘陵、ナラクサ川、入るにあたわざる都市に → 53P
イッビクスの話に出てくる巨大な街(水没都市)、セラニアン → 61P
入るにあたわざる都市で起こった歴史について(大いなる環状列石を参考にしました)、カダテロン → 67P
クッパル=ノムボ → 68P
アラン山の氷彫刻家 →83P
イッビクス → 84P
クラネス王 → 86P
スニド → 88P
セレファイスの猫の族長、ソーセンス → 89P
つり目の商人、良からぬ評判の →89P、90P
ナス=ホルタースの大神官 → 90P
ハラグリム → 92P
ヴーニス → 99P
シャンタク鳥 → 110P
食屍鬼 → 111P
魔女の木 → 126P
夜鬼 → 127P
ストゥード → 141P、142P
ナス=ホルタース → 143P、144P
ノーデンス → 145P
ドリームランドの武器とアーマー → 249P
セレファイスの街並みとセレネル海の奥に見える西側大陸
ソーセンスのインコ
羊肉市場
ニューコーンウォール
シナリオ名:ヨビカエリ
シナリオ形式:シティシナリオ
舞台:ドリームランド
時代: 中世ヨーロッパ程度の文明レベル
プレイ時間:14時間(前編8時間、後編6時間)
貴方達はドリームランドで物乞いや日雇い、狩りなど安定しない方法で日銭を得ながら生活しているいわゆるストリートチルドレンだ。ふと、今日は大きな稼ぎが得たいと思った。
①名前は氏名ではなくカタカナで名だけとしてください。
②職業は公式サプリメント、『ラブクラフトの幻夢境』の244ページを参考に設定してください。ただし、ストリートチルドレンが可能な職業にしてください。
③精神的な障害はなしとしてください。
④出身地はセレファイスとしてください。
⑤性別は自由に決めて良いです。
⑥年齢は不詳としてください。
⑦探索者は6歳〜15歳を目安に作成してください。(年齢は不詳ですが見た目や中身が6歳〜15歳程度と設定してくださいという意味です。)
⑧ドリームランドでは魔法が普及しており、生活の一部として使用されています。そのため、日々の生活に使用可能な魔法はKPの許可があれば習得してよいです。また、冒険者として魔法使いを生業としている者は特例として戦闘系の呪文を習得してすることを許可します。
⑨本作では耐久力、SAN値が非常に重要になります。出来るだけ高い値をお勧めします。
⑩初期所有ジュエルは探索者毎に50000+1D5×10000J(60000~100000J)とします。
⑪ハンドアウト
あなたたちは過去に遡れば遡るほど記憶が曇っている。また、貧困や飢餓が存在しないセレファイスでなぜストリートチルドレンとして生活しているのか、そのような疑問は口にしてはならない。
《図書館》《夢見》《ナビゲート》《説得》《心理学》遠距離の戦闘技能
家族対象のバスツアーに参加した探索者達は不幸にも横転し勢いのままガードレールを突き破って山中に落下した。更に燃料に引火し炎上する車内で探索者は即死を免れたが、探索者の家族全員は即死した。意識が無くなった探索者はドリームランドにストリートチルドレンとして送り込まれ、子供を守ろうとする親の魂は集合体となり1体の巨大なサイクロプスとして送り込まれた。
ドリームランドは覚醒の世界とは時間は流れが異なっている。本シナリオではセレファイスは時間が停止しており、セレファイスから離れた場所ではゆっくりまたは急速に時間が進む設定になっている。それゆえ覚醒の世界では生死を彷徨う一瞬だが、ドリームランドでは数か月~数十年が既に経過しており、探索者は自らが覚醒の世界の住民であることを忘れるほどに馴染んでしまっている。
そんな中、大きな稼ぎを目的に街の外へ出た探索者達は故郷(覚醒世界)へ帰りたいと願うサイクロプスに出会う。探索者達は故郷への帰り道を模索する中で心優しい巨人を送り届けたいと考えるようになる。
夜鬼の襲撃を潜り抜け、サイクロプスが囮になる最終局面では自分達が覚醒世界の住人であることを思い出す。探索者達はサイクロプスを助けに行き共倒れになるか、サイクロプスを置いて覚醒世界に戻るかの選択をすることになる。
セレファイスで大きな稼ぎの話を探す
巨大な魔石の噂を聞きアラン山へ行く
サイクロプスと邂逅し、セレファイスへ帰還する
サイクロプス迎撃事件が発生する
セレファイスに戻り、クラネス王からサイクロプスの故郷(覚醒世界)への扉について聞く
ガクを経由して覚醒世界への扉に行くための準備をする
夜鬼による襲撃によってセレファイスを脱出する
サイクロプス【探索者の親の集合体】
STR 30 CON 80 SIZ 80 INT 4 POW 20 DEX 6 APP 5
耐久力 80
ダメージボーナス:+6D6
装甲:物理攻撃は1ダメージとなる(5ダメージ以下は無効)
正気度喪失:サイクロプスを見て失う正気度ポイントは1/1D6
攻撃
1:〈こぶし〉 40% ダメージ 1D6+DB
2:〈キック〉 30% ダメージ 2D6+DB
3:〈噛みつき〉 40% ダメージ 1D6+DB+組み付き
〈プロフィール〉
本シナリオにおける最重要NPC。サイクロプスは探索者の両親が死んだ魂の集合体である。冒頭にあったようにバスツアーの落下事故により火の海に包まれた探索者の両親は先にドリームランドに旅立った子供の体を命がけでバスの外へと逃がそうとした(即死してなお肉体は動き続けていた)。力尽きた両親の魂は墜落現場の近くに存在したドリームランドへと繋がる扉へと吸い込まれていった。入るにあたわざる都市の扉からドリームランドへと入った両親達は大量のグールへと襲い掛かられたが、子供を助けなければならないという同一の意識は魂を融合させ、巨大なサイクロプスとなった。だが、多くの人間が寄り集まったものは自我を失い、知性をも失った。結果として巨大な体に地球に帰ること、子供を助けることという2つの意識のみが残った。食屍鬼と夜鬼をすり潰しながら、命からがらセレファイス方面へと逃げたサイクロプスは力尽き体を回復させるために巨大な岩石に擬態し、数年に及ぶ休眠状態へと移行した。これがシナリオ中に出てくる巨大な魔力反応のある岩石である。探索者が近づくと、存在を感じ取り復活する。こういった背景があるため、食屍鬼と夜鬼には強い憎悪を抱かれており、夜鬼に捜索されている。
復活してからは、身を挺してでも探索者達を守るけなげな巨人としてロールプレイをしよう。
イッビクス【波止場の気分屋】
STR 14 CON 16 SIZ 12 INT 16 POW 14 DEX 17 APP 10 EDU 8
正気度 72 耐久力 14
ダメージボーナス:+1D4
攻撃
1:〈ボートフック〉 56% ダメージ 1D6+2+DB
2:〈こぶし〉 75% ダメージ 1D3+DB
技能
経理 59% 値切り 73% 登攀 80% ナビゲート 69% 操縦(ボート) 93% 目星94%
居場所:波止場
〈プロフィール〉
イッビクスは皺だらけの細いが強靭な老人で、鋭い緑の目をしていて頭はツルツルに禿げている。彼は出港するあらゆる船を認識出来る。有名な女嫌いで女性が同席していても、好意的な態度で話すことはない。彼は非常に控えめな男性であり、深酒を憎悪する。彼は毎日ラムを同じ量だけ飲んで一日を始め、また終わらせる。
本シナリオでは、実は酒を愛しておりあまり人目に付かない場所(自宅など)であれば昼間でも酒を飲む意外とお茶目な設定とする。そのため探索者がラム酒をチラつかせればイッビクスは機嫌を良くし、波止場の部下達に仕事を続けるように命じると自宅に探索者を連れ込んでラム酒を飲みながら話を聞いてくれる。
ソーセンス【鳥市場の巨漢】
STR 8 CON 12 SIZ 20 INT 15 POW 17 DEX 7 APP 12 EDU 12
正気度 81 耐久力 8
技能
値切り 99% 言いくるめ 68% 説得 62%
呪文
水晶の世界 ゆらめく炎 生きているX 固定
居場所:歌う鳥市場
〈プロフィール〉
セレファイスで一番デブな巨体のソーセンスが経営している。声の美しい小鳥を育て、繊細な柳の小枝で編んだ鳥籠に入れて世界中に出荷している。音楽が大好きで、訓練した鳥たちが合唱する調和の取れた声を聞いている姿がよく見られる。
ナス=ホルタースの大神官【信心深い高齢の大神官】
STR 12 CON 10 SIZ 11 INT 18 POW 29 DEX 9 APP 13 EDU 22
正気度 48 耐久力 11
技能
考古学 19% 芸術(歌唱) 65% クトゥルフ神話 50% 夢の知識 77% 地質学 45% 博物学 45% オカルト 89% 説得 93%
呪文
ブループの召喚/従属 ランプ=イモリの召喚/従属 神格との接触/ナス=ホルタース 水晶の世界 タスのエメラルドの投げ矢 炎の障壁 鉄の心 カタリエンの熱波 フェインの疲労 タスのラヴェンダー球 生けるX 熾天使の栄光 麻痺の突風 ソーレンの白い網
居場所:トルコ石の神殿
〈プロフィール〉
ナス=ホルタースの大神官は、セレファイスに暮らす誰よりも神々についてよく知っている。この大神官の礼拝はナス=ホルタース神にささげるものが中心となるが、その他の神々に捧げる祈祷文や儀式も沢山知っている。彼はアタルとほとんど同じくらいに賢い人間で神々のカルトについては広い知識を持っている。本シナリオではサイクロプスの治癒のために登場するが、探索者と交流を持つことはない。
セレファイスの猫の族長【穏やかなセレファイスのマスコットキャラ】
STR 2 CON 14 SIZ 2 INT 15 POW 16 DEX 38 APP 11
耐久力 8
ダメージボーナス:-1D6
攻撃
1:〈噛みつき〉 75% ダメージ 1D6+DB
2:〈かぎ爪〉 80% ダメージ 1D6+1+DB
3:〈引き裂き〉 70% ダメージ 3D3+DB
技能
芸術(戦術) 75% 夢の知識 70% 隠れる 65% 聞き耳 75% 忍び歩き 80% 目星 70%
呪文:全ての猫と同様、宇宙を通って跳躍出来る
居場所:羊肉市場
〈プロフィール〉
口癖は「ンニャ~。」興奮した時も出るらしい。
ハラグリム【冷徹なセレファイスの守護騎士】
STR 14 CON 14 SIZ 14 INT 12 POW 13 DEX 11 APP 13 EDU 9
正気度 70 耐久力 14
ダメージボーナス:+1D4
装甲:9ポイントの磨かれたプレートアーマーと詰め物
攻撃
1:〈ランス〉 85% ダメージ 1D10+1+3D6
2:〈騎士のソード〉 73% ダメージ 1D10+1+DB
3:〈メイス〉 60% ダメージ 1D10+DB
技能
応急手当 45% 乗馬 87% 投擲 48% 追跡 61%
居場所:七十の歓喜の宮殿
〈プロフィール〉
ハラグリムはクラネス王の主要な騎士の一人である。彼は昔クラネス王を探す旅に出て、王をセレファイスに連れ戻し、ずっと統治させた人々の一人だ。ハラグリムの刀は水晶と同じくらい透明な金属で出来ており、彼の鉛のこん棒はライオンの頭部の形に彫刻されている。彼の刀には魔術の力があり臆病者が鞘から抜くことは出来ない。ハラグリムは厳格で、クラネスに猛烈な忠誠を誓っている。彼はセレファイスで誰よりも勇敢でたくましい騎士の一人であると考えられている。
本シナリオでは探索者に対してあまり良い感情は抱いていない。彼にとってはセレファイスの統治が一番の責務であり、探索者のことは目の上のたんこぶと思っている。そのためサイクロプスがセレファイスに近づいてきたとき、探索者がいるのを承知で騎士に矢を放たせた。
クラネス王【心優しいセレファイスの王】
STR 17 CON 18 SIZ 11 INT 17 POW 34 DEX 15 APP 15 EDU 20
正気度 55 耐久力 15
ダメージボーナス:+1D4
攻撃
1:ロングソード 92% ダメージ 1D8+1+DB
技能
値切り 67% クトゥルフ神話 44% 夢見 99% 夢の知識 94% 言いくるめ 64% 隠れる 66% 聞き耳 68% 博物学 58% ナビゲート 61% 説得 94% 操縦(ボート) 45% 操縦(空のガリオン) 60% 乗馬 86% 忍び歩き 56% 水泳 63%
呪文
ランプ=イモリの召喚/従属 シェイドの召喚/従属 金色の滝 水晶の世界 いなし タスのエメラルドの投げ矢 正三角のついたて ヒッシュのレースのカーテン フェインの疲労 マレンカモンの印象的噴出 不透明の壁 不可視になる 熾天使の栄光 スロスの信念の人 青緑の風 遠距離旅行の渦巻
〈プロフィール〉
クラネス王は今まで存在した中で最も偉大な夢見る人だろう。ごく若いときにドリームランドを発見し、自分の夢の中でセレファイスの都市を創造した。今ではオオス=ナルガイの地全土と、雲に覆われたセラニアンの都市の王になっている。覚醒の世界で彼は、麻薬にとりつかれた抜け殻のような人間になっていた。かつては裕福で壮健であったのに、ドリームランドを探求するあまり、そうなってしまったのだ。覚醒の世界で死を迎えた彼は、ドリームランドのセレファイスの王になった。セレファイスで何十年も幸せに暮らしていたが、今は生まれ故郷のコーンウォールに対する郷愁に苦しんでいる。そしてセレファイスの近くに、故郷コーンウォールによく似た村を作った。
冒険好きの夢見る人として、クラネスは地球のドリームランド以外の様々な世界も広く旅行をして歩いた。アザトースの玉座まで行って、何の変わりもなく正気で戻ってきた夢見る人は、彼一人だ。ランドルフ・カーターとクラネス王は親しい友人同士である。
本シナリオでは、夜鬼と食屍鬼の棲む入るにあたわざる都市の覚醒世界との扉の存在を知っている。探索者達が現実の身体が死亡寸前で発狂状態であることを悟ったため、直近の記憶しか残らないように記憶を曇らせた。探索者が覚醒世界に戻れば死亡する可能性が高いと考えているため、誠実なクラネスは扉について詳しく説明し危険なことを伝えたうえで時の進まないセレファイスに残らせようとする。だが、わずかな間でも覚醒世界へ帰れるのであれば誰よりもその気持ちが強いクラネス王は助力してくれるかもしれない。また、クラネス王は覚醒の世界については探索者が記憶を蘇らせないように直接的には言わず、基本的にはサイクロプスの故郷というように話す。ここはロールプレイに関わってくるため、うっかり覚醒の世界と言ってしまわないように気を付けよう。
夜鬼
STR 11 CON 11 SIZ 14 INT 4 POW 11 DEX 13
耐久力 12
ダメージボーナス:0
装甲:2ポイントの皮膚
攻撃
1:〈組付き〉 30% ダメージ くすぐるために押さえつける
2:〈くすぐり〉 30% ダメージ 1D6+1ラウンドの間動けない
技能
隠れる 90% 忍び歩き 90%
呪文:ドリームランドの夜鬼は炎を用いた攻撃の呪文を使用することが出来る。ダメージ(対象に引火し、ダメージ1D4)
正気度喪失:夜鬼を見て失う正気度ポイントは0/1D6
〈プロフィール〉
夜鬼はノーデンスに仕えているドリームランドのクリーチャーである。ノーデンスのためにすることの中には、侵入者を捕まえて連れ去り、想像できるうちの最も陰惨で恐ろしい場所へドンと落として置き去りにするということも含まれている。犠牲者はそのまま死んでしまう。彼らはドリームランドのさまざまなところにある寂しい場所に巣くっていて、夜になると出てくる。太古の時代には覚醒の世界にも住んでいたし、今でも住んでいるかもしれない。それほど知性のある生き物ではないが、ある種の言語は理解できるし、ある種のオカルト的な種族とは仲良くしている。夜鬼は犠牲者にこっそりと忍び寄る。そして武器をつかみ取ってしまうことによって優位に立つのである。
対象が強い相手で会った場合には、〈組付き〉するために2匹以上の夜鬼がSTRを出し合う場合もある。夜鬼がくすぐるのは、すでに〈組付き〉されている相手に対してだけである。
本シナリオではレン高原に住む食屍鬼と夜鬼が数の増加を理由に土地の広いドリームランド東部に移動し、入るにあたわざる都市の周辺を拠点としている。この入るにあたわざる都市へ侵入しようとした者は夜鬼によって捕らえられ都市の中に落とされ食屍鬼の犠牲となる。また、入るにあたわざる都市の内部には覚醒世界への扉があり時折覚醒世界から人間がやってくるが、この扉から入ってきたものはほとんどが食屍鬼の犠牲となる。
シナリオ開始時点では、覚醒世界と繋がる扉からやってきたサイクロプスによって甚大な被害を受けたため、強烈な憎悪を持っている。セレファイスの騎士に矢で射抜かれ、流れたサイクロプスの血を夜間巡回中の夜鬼が嗅ぎ取り、多くの夜鬼を呼ぶために叫び続けセレファイスを襲撃する。更にエンディングではサイクロプスに襲い掛かり、甲高い叫び声で探索者を恐怖に陥れる。
食屍鬼
STR 17 CON 13 SIZ 13 INT 13 POW 13 DEX 13
耐久力 13
ダメージボーナス:+1D4
装甲:火器と飛び道具はロールで出た値の半分のダメージを与える。
1:〈鉤爪〉 30% ダメージ 1D6+DB
2:〈噛みつき〉 30% ダメージ 1D6+牙でいたぶる(1D4)
〈プロフィール〉
食屍鬼はゴムのような弾力のある皮膚を持つ恐ろしい亜人間型の怪物である。ヒヅメ状に割れた足、犬に似た顔、鉤爪を備えている。早口で、泣くような声と形容される独特の話し方をする。また多くの場合は墓地に住んでいるが、本シナリオではレン高原から夜鬼と共に移住し、コロニーをつくった食屍鬼が探索者に襲い掛かる。
シナリオ開始時点では、覚醒世界と繋がる扉からやってきたサイクロプスによって甚大な被害を受けたため、夜鬼と同じく強烈な憎悪を持っている。
あなたたちはいつものように道路の上で身を寄せ合いながら目を覚ます。周りを見渡せば隊商が馬車を走らせ、住人達は白い漆喰が塗られた大きな家に併設された露店を巡り歩いている。見上げれば魔力でつくられた薄暗い人工光は動かず、常にこの街を照らし続けている。続けて視線を地面に下ろせば一度も整備されていないにも関わらず擦り減ったり壊れたあとのない縞瑪瑙(オニキス)の床が目に入る。何も変わらない日常がまた始まった。あなたたちは眠い目を擦りながら立ち上がり、今日の稼ぎを探しに出るだろう。
ここはドリームランドのセレファイス、時間の概念が存在しない街。不老不死の住民達があらゆる外部刺激から隔絶され、何の目的もなくただ生き続けている。そんな平和で怠惰な理想郷だ。
○ドリームランド
ドリームランドは覚醒世界(現実世界)に住む我々人類が見る夢によって支えられている。つまり人間や夢を見る生物が死に絶えればドリームランドも消滅する。
○セレファイス
ドリームランドに存在する都市の一つ。最も主たる特徴は時間が進まないということである。この都市は偉大なるクラネス王によって創造され、統治されている。また、大理石で出来た防壁によって四方を囲まれており、道路は縞瑪瑙(オニキスと読む。全体的に黒く艶があり、非常に細い白い線で縞模様を見せる)と呼ばれる素材で出来た宝石で舗装されている。
○セレファイスで使用されている通貨
神話生物や獣を討伐して得られる魔力の籠った宝石を通貨として使用している。主に騎士が討伐するため、増え続ける宝石を貿易品として魔術研究を行っているカダテロンへと引き渡し、全体量を調整している。冒険者や流れ者などの国が管理していない職種の者が討伐した場合は職工が加工することで通貨として使用出来る。これはセレファイスを脅かすものを討伐する事で平和を維持したことへの対価である。ただ、不変不朽を享受したいセレファイスの住民がセレファイスの門を出て神話生物を討伐しに行くのは稀である。
○セレファイスの国民性や生活様式について
宝石が通貨として使用されているが、進歩や変化を望まないセレファイスの住人は取引や研究に疎い。物々交換をすることもあれば、余っているものを分けたりすることもあるため貿易も含めて取引下手なことが多い。カモにできるためセレファイスと貿易をしたいと申し出る都市は未だに多くある。貴重な宝石をカダテロンに渡しているのはそういった背景もある。カダテロンとの貿易で得られた魔法の知識は選別されて生活用の魔法が住民の手に渡る。そのため、火を起こしたり飲用の僅かな量の水を出したりする程度であれば魔法で済まされることが多く、魔法技術と科学技術は他の都市と比べてあまり進歩していない。(科学技術レベルは中世ヨーロッパ程度と考えて良い)
このようにやや歪な価値観のセレファイス人にはひとつだけ譲れないものがある。それは恩だ。もし恩を受けて返さない者がいればその者はクラネス王に伝えられ、一生セレファイスから追放されるだろう。これはチップ、つまり少額のお金で解決しても良い。
服装は麻あるいは毛織物の服が多く、紡績技術はあまり発展していないため着心地の良いものはあまりないだろう。ただし、ナス=ホルタースの神官用の重要な服などは長寿の服織りが丁寧に織った緻密な衣装を凝らしたものになっている。
○ナス=ホルタース
ナス=ホルタースはセレファイスで信仰されている神である。ナス=ホルタースはブロンドの髪と瞳のない銀の目を持つ、漆黒の肌の人間の姿をしている。彼は馬に乗り、いつもライオンを連れている。きめ細やかな意匠の銀製の鎖鎧を着け、空色の絹で織られた前の開いたローブを着て、黒オパールの付いた金の冠を被っている。彼はすぐに腹を立て、仲間の神とすら口論をするが、崇拝者には割と何を言われても我慢するし怒らない。
○カダテロン
ドリームランドの都市の一つ。カダテロンにはドリームランド大図書館の入り口の一つがある。ドリームランドにおける学術の中心地となっており、最も優れたカダテロン魔法学校がある。また、貿易が盛んな地としても有名でドリームランドのあらゆる船がカダテロンの港に品物を積んでやってくる。
○ドリームランド大図書館
カダテロンなど様々な場所に魔術的な入り口がある。巨大な円形の石造建築物で、本でいっぱいの52本の廊下が放射状に延びている。ただし、セレファイスに存在するのはドリームランド大図書館の分館であり、魔術的な建築物ではない。分館はクラネス王がドリームランド大図書館に似せて作ったものであり、カダテロンから輸入した魔術書が並べられている。
セレファイスでの生活
探索者が地図は?と言った段階でまずセレファイスの地図を渡す。探索者は直近の1ヶ月の記憶であれば思い出すことが出来るが、思い出すにも一苦労するという設定である。探索者がここに行きたいという話をした場合、そこについての簡易的な情報が開示される。また、NPCは探索者のことを神が遣わした子と信じており(覚醒世界の住人ということは知らない)、数か月~数十年の間住んでいるのもあってシナリオ開始時点でそれなりの好感度を有しており、値切りなどの交渉も+補正をかけて良い。
宝石市場
【思い出し情報】
緑の宝石市場、紫の宝石市場、赤い宝石市場などがある。宝石市場にはカダテロンの技術を用いて作られた魔道具が売っている。交渉して値引きをすれば30%OFFで購入することが出来る。ただし、値切りに成功していなければ何らかの恩返しが必要である。
【探索情報】
○任意のMPが込められたエルダーサインの刻印されたお守り MP1につき2000J
○任意の耐久力分のダメージを軽減するエルダーサインの刻印された 耐久力1につき5000J
○探索者の望む魔道具(効果によってKPが価格を決めて良い。)
臨海地区(波止場)
【思い出し情報】
臨海地区は『柱通り』によって南北に分かれている。
セレファイス行きの空飛ぶガリオン船やガレー船が発着する港。セレファイスはリナールやカダテロンなどと盛んに貿易を行なっており、重要な経済の拠点となっている。ここにはセレファイスの波止場監督であるイッビクスという老人がいる。
【シナリオに関してNPCが所有する情報】
波止場の元締めであるイッビクスに会いに行けば、ぶっきらぼうな態度で探索者を出迎える。
「あぁん?また坊主どもか、何しにきたぁ。」
探索者についてイッビクスは特に興味がない。そのため何度も尋ねれば面倒くさそうな態度に変わっていくだろう。ただし、ラム酒を渡すとなれば話は別だ。彼はラム酒が好きなため、ラム酒をチラつかせれば少々機嫌が良くなり舌も饒舌になるかもしれない。
○アラン山について
『俺は海の人間だから陸地のことはわかんねぇ。だが、旅人から聞いた話じゃあ山に登ったら神ですら氷漬けになって死ぬって話だ。クラネス王もあの山の頂上に登るのは昔から禁じてる。死にたくなけりゃあ登らんこった。』
○稼ぐ方法について
『海で一発あててぇなら、船を襲う鳥でも街でも、その街を食らうバケモンでもぶっ飛ばしな。それができねぇなら真面目に働くことだ。』
○鳥について
『シャンタク鳥って聞いたことねぇか?神の遣いなんて言われちゃいるが、ただのケダモンだ。あんなおっかねぇ奴に襲われたらたまったもんじゃねえ。だが、魔石は大きいと思うぜ。』
歌う鳥市場
【思い出し情報】
ソーセンスというデブが美しい小鳥を飼っている。彼は鳥とごはんのことになると目を輝かせるが、それ以外はほとんど興味がない。
【探索情報】
禁書庫に行った後、ここに来るとイベントが解放される。
「お前達~!大丈夫かぁ!?顔色が悪いんだなぁ~!そこに座るんだなぁ!」
青い顔をした探索者はソーセンスに促されるまま椅子に座る。ソーセンスはそのまま座るようにジェスチャーをすると息を切らしながら鳥かごを運び、探索者を囲むように並べ始める。よし、と息を整えるとソーセンスは
「ヒュ~♪ヒュ~♪」
と軽快に口笛を吹く。その音を合図に、探索者の周りに並べられた鳥たちが非常に透き通った綺麗な音色でリズムを刻み始める。その音楽はまるで胎児を包み込む母親の胎盤のように柔らかく、温かいものだった。探索者は1D10の正気度を回復する。
探索者は回復した正気度1につき1000Jを支払わなければならない。
【シナリオに関してNPCが所有する情報】
禁書庫に行く前、探索者には僅かな情報しか与えない。見返りとしては大量の食糧が妥当なところである。
「シャンタク鳥の皮なら~珍しいからいくらでも買い取ってあげるんだなぁ。だ~が~。と~~~っても危険な奴だからあまりお勧めはしないんだなぁ~。」
「俺は外の世界についてはあまり知らないし、シャンタク鳥なんて見かけることはないから詳しいことは言えないんだなぁ~。クラネス王なら何か知っているかもしれないけども~。」
トルコ石の神殿
【思い出し情報】
セレファイスの中心にある神殿で、1万歳以上の80人のナス=ホルタースの神官が勤めている。また、カダテロンから貿易品として納められた魔術書の数々が並べられた『ドリームランド大図書館』の分館が併設されている。この魔術書を閲覧・規制・管理することもナス=ホルタースに祈ることに次いで重要な業務である。
【探索情報】
神殿内部は行き先が左右に分かれており、左に進むと神官が祈りを捧げる本殿となっており、右に進むとドリームランド大図書館の分館へと繋がっている。本殿には何人もの神官がおり、図書館には老人の司書が1人居るのみである。セレファイスの住民が入り、閲覧を許可されているのは生活用の魔法が書かれた魔術書と僅かな技術書である。奥に進むと閲覧禁止の魔術書などが格納されている禁書庫がある。ここに進もうとすると司書に『あまり禁書庫には近づかないようにしなさい』と窘められる。
この禁書庫の扉はクラネス王が異世界と繋がる扉と銀の鍵の仕組みを紐解き、簡易的な原理のみで作ったものである。そのため禁書庫に入るには司書の目をごまかすために何らかの足止めをしたうえで、銀の鍵と銀の鍵の使い方が必要になる。
【禁書庫で得られる情報】
〈図書館〉に成功しなければ、禁書に記載されている余分な情報を読み込んでしまう。失敗するたびに1/1D3の正気度を喪失し、なんらかの呪文を習得する。また、クトゥルフ神話技能を1D3習得する。
図書館に成功した場合1D7を行い、出目に応じた情報を得ることが出来る。なお、正気度喪失とクトゥルフ神話技能の習得判定を行った者のみがこの知識を所有し、恩恵を得ることが出来る。そのため魔導書を読み込んだ探索者にのみ~~についての知識を所持品に加えるように伝えること。ただし、知識の共有と称して他の探索者から知識を伝え、同様の判定を行えば知識を共有できるものとする。
〈図書館〉に成功した場合に得ることができる情報
○1夜鬼について
夜鬼はノーデンスに仕えているドリームランドのクリーチャーである。ノーデンスのためにすることの中には、侵入者を捕まえて連れ去り、想像できるうちの最も陰惨で恐ろしい場所へドンと落として置き去りにするということも含まれている。犠牲者はそのまま死んでしまう。彼らはドリームランドのさまざまなところにある寂しい場所に巣くっていて、夜になると出てくる。
効果
夜鬼から受けるダメージを1軽減し、夜鬼に与えるダメージを1増加する。(落下ダメージや炎も含む。)
知識の所有判定
貴方達は当然のごとく書かれているクリーチャーの悍ましい絵と、その説明文について読み、理解をした。脳を揺さぶるような情報の海の衝撃は体を下り、強烈な吐き気を催した。また、本当にサイクロプスを案内するならば自分たちがその犠牲者となるかもしれないという恐怖に1/1D6の正気度を喪失する。また、夜鬼についての知識とクトゥルフ神話技能を1D6獲得する。
○2食屍鬼について
食屍鬼はゴムのような弾力のある皮膚を持つ恐ろしい亜人間型の怪物である。ヒヅメ状に割れた足、犬に似た顔、鉤爪を備えている。早口で、泣くような声と形容される独特の話し方をする。また多くの場合は墓地に住んでいる。
効果
食屍鬼から受けるダメージを1軽減し、食屍鬼に与えるダメージを1増加する。
知識の所有判定
1/1D6の正気度を喪失する。食屍鬼についての知識とクトゥルフ神話技能を1D6獲得する。
○3ヴーニスについて
ヴーニスは水陸両生の肉食クリーチャーで全体の色はあせたピンクか、くすんだ黄色でありところどころに灰色のイボがついている。頭はサンショウウオに似ていて、色の薄い飛び出した目と長くて唇のない顎をしている。ヴーニスはドリームランドのあらゆる湿地や沼地などに潜んでおり、食欲旺盛で恐れを知らない存在である。獲物を取るときには水面から鼻だけを出して獲物が近づくのを待ち、池から飛び出して捕まえて引きずり込む
効果
探索者がヴーニスによる襲撃イベントを引いた場合、KPから〈アイデア〉を振らせ、成功した場合水中にいる生き物がヴーニスだと気づく。(この効果はヴーニスがイベントで出てきたときに適用するため、効果は伏せておいてよい。)
知識の所有判定
1/1D6の正気度を喪失する。ヴーニスについての知識とクトゥルフ神話技能を1D6獲得する。
○4シャンタク鳥について
シャンタク鳥は洞穴に巣を作る。翼は霜と硝石にまみれている。シャンタク鳥は夜鬼を極端に恐れていて、彼らに会うとすぐに退散してしまう。かつては様々な地域で見られたが、現在は夜鬼の勢力拡大に追われて北へ北へと居住区を移している。また、獲物を見つけると岩を空中から落として弱ったところに襲い掛かる。脚は強靭で、刃物のごとく鋭く、犠牲者を切り刻んでしまうことだろう。彼らに襲われたくなければ、より小さな洞穴で夜を明かすと良い。
効果
探索者が禁断の地を縦断するとき、KPは探索者がシャンタク鳥の姿を発見し、ここがシャンタク鳥の居住区であることに気づく。シャンタク鳥による襲撃で正解を選択する可能性が上がるだろう。(この効果はシャンタク鳥がイベントで出てきたときに適用するため、効果は伏せておいてよい。)
知識の所有判定
→1/1D6の正気度を喪失する。シャンタク鳥についての知識とクトゥルフ神話技能を1D6獲得する。
○5アラン山について
セレファイスから北上するとたどり着ける山。アラン山の頂上は年中雪に覆われ、雪が溶けることはない。ふもとに近い山腹は銀杏の林で覆われている。アラン山は他の山と同様、人間が登ることは禁止されている。一般に山の頂上では神が舞うため、聖域として侵入が禁止されているがアラン山には神ですら恐れて登らない。山の頂上には一人の男が住んでいる。その男に会ってしまうと、男は氷像を作り始める。それは出会った者の氷像で、出来上がった部分に対応するように犠牲者の体は動かなくなり、最後には全身が氷像となる。それは神も例外ではなく、氷漬けになって死ぬ。
効果
特に有益な効果はないが、頂上に登っていたらロストしていたことに気づくだろう。
知識の所有判定
→1/1D6の正気度を喪失する。アラン山についての知識とクトゥルフ神話技能を1D6獲得する。
○6禁断の地について
火山、火の湖、名もない異様なクリーチャーに満ちた地獄のような場所。この地には常に炎が吹き荒れており、近づくだけでも炎の球や融けた岩が降ってきて危険である。また、洞窟が多いためかシャンタク鳥の棲みかとなっており、旅人が襲われることも少なくない。
効果
禁断の地を旅する場合のナビゲートに対する+20%の補正が発生する。
知識の所有判定
→1/1D6の正気度を喪失する。禁断の地についての知識とクトゥルフ神話技能を1D6獲得する。
○7入るにあたわざる都市について
アザトースの分体がドリームランドを喰らおうと侵食してきたところを多くの魔術師が力を合わせて食い止めた跡地。今ではその残滓に惹かれ多くのクリーチャーが棲みかにしている。中に入って出てきた者は一人として記録されていない。
効果
入るにあたわざる都市まで旅する場合のナビゲートに対する+20%の補正が発生する。
知識の所有判定
→1D3/1D10の正気度を喪失する。入るにあたわざる都市についての知識とクトゥルフ神話技能を1D6獲得する。
〈図書館〉に失敗した場合に得ることができる情報
<<追跡>>(1回目の失敗で習得することができる)
効果:思い浮かべた対象や、なんらかの痕跡をつけた対象がどの方向にいるかある程度分かる呪文
コスト:SAN値を1D3、MPを1D3消費する
<<夜鬼の召喚・従属>>(2回目の失敗で習得することができる)
効果:夜鬼を召喚し、従わせることができる。夜鬼が顕現できるのは12時間である。
コスト:SAN値を1D6、MPを1D6消費する
<<任意の呪文>>(3回目の失敗から習得することができる)
探索者が望む呪文を習得してよい。
羊肉市場
【思い出し情報】
セレファイスの猫の族長という威厳のあるマルタ猫が住んでいる。色々な知識を持っているらしく、興味を持った人間には知識を授けるらしい。コーンウォール産の魚が好き。
【探索情報】
羊肉市場には野原を越えてやってきた隊商や海を越えてやってきた貿易船が持ってきた食物が売ってあるが、時間の進まないセレファイスでは農業や畜産による自給自足の生活が不可能なため、食物の価値はそれなりに高くなっている。(だからといって裕福なセレファイスは問題にならないが。) この区画は家畜、鶏、魚、敷物などの区画に分けられており、食物が腐らないことから保存技術の概念がほとんどないため、他の都市と比べると粗雑に並べられている。
○1食 200J
○新鮮なお魚 → 100J セレファイスで取れた魚。美味しい。
○ガクの香辛料 → 30000J ガクから持ち込まれた香辛料。最近は値上がりが激しい。
○ラム酒 → 2000J 普通のラム酒。少々癖があるが美味しい。
○蜂蜜酒 → 1000J 即時に5MP回復する 1日に1本までしか飲むことはできない
○高級蜂蜜酒 → 3000J 即時に10MP回復する 1日に1本までしか飲むことはできない
また、MPの回復手段としては休息も含まれる。
○12時間の時間経過 → MPを最大値の半分回復する
マルタ猫はいろいろな知識を持っているため探索者が聞きたいことはある程度教えてくれる。この辺はクラネス王と同等の知識を持っているということで良い。
【シナリオに関してNPCが所有する情報】
猫の族長に会いに来た探索者にはこのように語りかける。
「またニャにかあったかニャ~。久しぶりだニャ~。元気してたかニャ~。ンニャ~。」
食料は頻繁に買いに来るので、クラネス王から言いつけられていた距離をおくようにという命令を一瞬忘れたために”また”と言ってしまっている。
○巨大な魔石の噂
アラン山の麓に巨大ニャ岩があるそうニャ。とんでもない魔力反応があったそうで、一時話題にニャっておったが、アラン山の深くは立ち入り禁止にニャっておるからそもそもヒトは寄り付かんのニャ。ニャかに入っていると言われている大きニャ魔石を取り出そうとしたのはほとんどが少数の旅人ニャ~~~。ンニャ~!ニャ~もその魔石が欲しいと思ってるニャ~。ニャにか分かったら教えてほしいニャ~。
また、探索者が詳しく尋ねた場合、猫の族長は心当たりについて答える。ただし、猫の族長は気に入った者としか話すことがないため人脈は案外狭く、単に知識が豊富なため噂については必ずしも正しい情報を持っているわけではない。
「ストゥードという玉ニェぎのようニャ形をした石像の神がいて、そいつは活動期と休眠期があるニャ~。休眠期は簡単に壊せるはずニャんだけども、単に旅人のやる気がなかったのか硬かったのか良くわからないのニャ~。」
○銀の鍵について
「あ~その鍵は知ってるニャ~。でもクラネス王からは言うなって言われてるニャ~。ごめんニャ。知りたかったら、クラネス王に聞くといいニャ。」
セレファイスの騎士たちの家
【思い出し情報】
たくましく厳格な騎士の一人であるハラグリムを筆頭にセレファイスを守護する騎士が住んでいる。騎士たちは葦毛の馬に乗り、奇妙な模様が刺繍された金糸織りの袖なしの上着を着ている。ここに用事はなさそうだ。
七十の歓喜の宮殿
【思い出し情報】
クラネス王の宮殿。金色の袖なしの上着を着た騎士たちが勤めている。ここに用事はなさそうだ。
ニュー・コーンウォール
【思い出し情報】
セレファイスの東門の先には『海辺のコーンウォール』がある。ここにはセレファイスの王であり、偉大な夢見る人でもあるクラネス王がいるらしい。たしか、香辛料が好きだったはずだ。
【探索情報】
海辺のコーンウォールは田舎の漁村といった風貌をしている。金髪に青い瞳をもち彫りの深い顔立ち、更には白い肌でがっちりとした体はまるでヨーロッパ風の人間のようである。彼らは船を持ち、魚をとって生活をしているようだ。小さな居住区を進んでいくと、やがて宗教的な雰囲気の石畳や壁が見え始め、内側には教会のような建物が建築されているのが分かる。中に入っていくと、トルコ石の神殿とはまた違った格好をした神官がいる。彼らは探索者を見ると合掌をし、去っていく。
【シナリオに関してNPCが所有する情報】
「おお、久しいね(探索者1)君、(探索者2)君、(探索者3)君、(探索者4)君。今日は何をしに来たのかな?」
クラネス王はこのシナリオにおいてほとんどの情報を所有している。彼との会話が最も情報的に有意義なものになるだろう。唯一知らないのはサイクロプスが夜鬼と食屍鬼の集団に憎悪を持たれていることと探索者とサイクロプスが親子関係であることくらいである。
また、セレファイスに留めておいたほうがよいが、セレファイスに永遠に居住させるのも良くないと思っているクラネス王は歯切れの悪い言い方で探索者をセレファイスに留めようとする。
【クラネス王のセリフ例】
「君たちはまだ子供なんだから、無理をする必要はないんだよ。」
「私は今まで沢山の冒険をしてきたが、中には見るだけでも今までの生活が出来ないようになるような怪物もいる。サイクロプス君の気持ちもわかるが、セレファイスで面倒を見るからしばらくここにいてもいいんじゃないか?」
また、SAN値が減ると思われるような内容については話を渋るが、〈説得〉に成功すれば聞き出すことが出来る。(この場合、クラネス王は出来る限りショッキングな内容にならないように話してくれるためSANチェックは1/1D3でよい)
「あまり、気持ちのいい話ではないんだが、どうしても聞きたいというんだね?」
クラネス王は多くの知識を有しているが、クラネス王は多忙なため何度も会うことはできない。シナリオ中に会えるのは2度までであり、KPの裁量で質問は3つ程度で話を切り上げるといい。
「私はこれでも忙しいからね、何度も会うことは出来ないがどうしても知恵を借りたくなったら来ると良い」
○稼ぐ方法について
「ジュエルを稼ぎたいのなら、羊肉市場に行って蜂蜜酒に魔力を込めるのが一番手っ取り早いんじゃないか?あそこは確か1MPあたり50Jで買い取ってくれるはずだ。」
○巨大な魔石の噂
「あぁ、その噂は私も聞いたことがある。魔力の反応があるということは、恐らくアーティファクトか何らかのクリーチャーが休眠期に入ったものだとは思うが、何かあったら危険だから別の稼ぎを考えたほうがいいんじゃないか?」
○サイクロプスの故郷への行き方について(覚醒世界への扉について)
「まず、最も安全なルートから説明しよう。ハテグ=クラ山にある扉だ。これはセレファイスの波止場からガリオン船でウルタールまで行き、スカイ川にかかる石橋を通ってあやかしの森を越え、川に沿って西に行けばズーグ族に襲われるが最も安全にサイクロプス君が故郷に帰る扉に辿り着ける。しかし、サイクロプス君を船で送り届けるのはそもそも無理だ。乗れる船がない。そうなると次に近いのはタナール丘陵になる。しかし、タナール丘陵はクリーチャーが多すぎて専門的な知識がないとまともに歩き回ることも難しい。サイクロプス君の力があればある程度撃退できないこともないが、力押しだけではどうにもできないクリーチャーもいる。更に扉が多すぎて好きなところに行けるかどうかは、運頼みなところもある。私もタナール丘陵には良く行くが、何度も死にかけたよ。何が起こるか分かったものではないから、出来ればこのルートもやめておいたほうがいい。3番目に近い扉。これが今の君たちには最も現実的なルートなんだが、これも出来れば行ってほしくはない。地図でいうところの真東に大きな荒野があって、その中心に入るにあたわざる都市があるんだが中には大量の食屍鬼が棲んでいて、周りには夜鬼が大量に飛んでいる。君たちがサイクロプス君を案内して、持っている銀の鍵を渡し、サイクロプス君が蹴散らすことが出来れば侵入して中にある扉から行けるとは思うが。。。わざわざそんな無茶をやる必要はないと思うよ。私は。」
探索者はセレファイス周辺の地図を獲得する。
○銀の鍵について
「君たちが持っている銀の鍵だよ。」
というと、疑問に思うよりも早く探索者の中の一人が手元に何かがあるのを感じる。銀の鍵についてクラネス王に尋ねるならば〈説得〉に成功しなければ聞き出すことは出来ない。
「その鍵を扉に向けて3回、このように12時の方向から3時の方向へ捻って戻すと(と言いながらクラネス王は実際にやって見せる)その儀式を行った者自身とその者と物理的に接触している者は扉を通じて別の世界へ行くことが出来る。」
これにより、銀の鍵と銀の鍵の使い方を獲得する。
クラネス王に教えてもらった儀式の内容を纏めると以下のようになる。
・銀の扉の前で、3回12時の方向から3時の方向へ捻って戻す。
・銀の扉を注視する必要があり、目を離してはならない。
・儀式へ参加したい者は鍵を捻っている者と肌で直接接触していなければならない。
・儀式は引継ぎが可能で、最初から参加していた者は鍵を受け取ることで続きを行うことが出来る。
セレファイスを出て、サイクロプスに邂逅する(NPCから絶対にアラン山の万年雪が残る雪線を越えてはならないと忠告をしておくこと。)
探索者はアラン山へ行くためにセレファイスの青銅の門をくぐった。両脇には金色の鎧に身を包んだ騎士が1人ずつ立っており、セレファイスの警備をしているようだった。彼らは門から出てきた探索者に気づくと、慣れた手つきでエルダーサインを結んだ。(ドリームランドでは無事を祈るときにエルダーサインを結ぶ)
アラン山までの道のりはそう遠いものではなく、徒歩で3日といったところである。だが、2日目の道中で探索者は周囲に何かの気配を感じた。〈目星〉を行う。成功した場合、探索者は遠くに狼の番を見つけるだろう。探索者が望むのであれば狩りを行うことが可能で、2匹とも耐久力を全損させることが出来れば2D3万Jに相当する魔石と毛皮を獲得することが出来る。更に40食分の食料を得ることが出来る。
セレファイスから近いこともあって獣も少なく無事にアラン山の麓までたどり着く。セレファイスで聞いた噂を頼りに探索者はアラン山を登っていた。アラン山は銀杏の林で覆われているが、この付近も時間が進んでいないのか銀杏の葉や実はほとんど落ちていないようだ。いくらか獣や人間の痕跡があり、その生傷が痛々しく木に刻まれているのに気づくだろう。ここで探索者は《聞き耳》を振る。成功した探索者は助けを求める声を聞く。
「たすけ・・・」
その声は弱弱しいもので、注意を払っていなければ音が聞こえる事すらなかっただろう。探索者はもう少し上の方からその声が聞こえたことが分かる。
探索者が段差を少し登ると、広場のようなところに巨大な岩がありその岩にもたれかかるように男が座っていた。
「こんなはずじゃなかったんだべ・・・!おいらは自由になりたかっただけだったんだべ!」
ここで探索者は〈目星〉を振ってもよい。成功した場合、以下のことが分かる。
・男の周りには砕けた氷が散らばっている。
・男の腕を見ると手首から先は氷になっている。
「自由なかったんだべ!上に行ったら氷漬けにされて死ぬだけだべ!」
と彼は喚いている。
暫く彼と話しをしていると、彼の体は徐々に下から氷漬けになっていることに気づく。
そんな中、男がもたれかかっていた岩が「バクン!」という音を立てた。次第に巨大な岩は連続的に、まるで生き物が脈を打つかのように「バクン!バクン!バクン!」と身体に衝撃を感じるほど強いものになっていく。そして徐々に岩は熱を帯び始め、遂には動き出した!
「ヴォオォォォォオオオオオオ!!!!!!」
あまりの熱さに探索者は後退る。見上げれば、ゆっくりとその岩はヒト型に広がっていき、地に足をついて立ち上がった!その体躯は銀杏の木よりも高く、筋骨隆々で、顔と思われる部分には一つの巨大な目が埋め込まれていた。あまりにも巨大すぎる化け物が目の前にいるという事実に恐怖した探索者は1/1D6の正気度を喪失する。
ただし、サイクロプスは心優しい巨人のため、RPは優しく可愛く行おう。また、入るにあたわざる都市から逃げてきた時の記憶や、覚醒世界のことも忘れているのでその辺は注意すること。
「おで、おでは?」
「だれだで?みんな」
「おで、はやぐ、こきょうにがえらないど、いげないだた」
「つれていっでくれるだか?」
「ありがとうだ」
探索者と話しているうちにサイクロプスも落ち着いてきたのか、体温が下がり体表から蒸気を吹くほどではなくなったようだ。
また、この辺まで探索者が言及しなければ〈アイデア〉を振らせてよい。成功した場合、地面が濡れており、男がいないことに気づく。恐らく氷像になり、サイクロプスの体温で溶かされたとわかる。SANチェック1/1D3。(もし探索者が上に登ろうとした場合、本当に登りますか?と聞いたり、登っていくと山の頂上から逃げるように這いつくばった格好の氷像がいくつも、折り重なるようにして銀杏の林を埋め尽くすようになる。といった表現で探索者を追い払うとよい。)
セレファイスに戻り、サイクロプスが攻撃される
特に探索者が提案しなければ、サイクロプスは自ら探索者を運ぼうとする。そのため帰路は非常に早く、2日でセレファイスに戻ることが出来る。
また、ここから強制イベントに入る。
探索者はサイクロプスの肩の上や、腰などいろいろな場所にしがみついてセレファイスに帰還する。地響きような足音を立てるサイクロプスに獣は恐れおののいて全く近づいてこないようだ。2日間の道程で何も起こることなく探索者はセレファイスの近くまでたどり着くことが出来る。
セレファイスの防壁が見え、もうすぐといったところで探索者は〈目星〉を行う。成功した場合、探索者は防壁から矢がこちらめがけて発射されたのに気が付く。
このことをサイクロプスに伝えた場合、サイクロプスは慌て身を挺して探索者を守る。
「いでで!」
矢の本数を50発として1D30を行い、命中本数を決める。
ダメージロールは(命中本数)D8で行う。焦燥感を煽るため、ダメージは伝えてもよいが、どれだけダメージが入ってもこのイベントでサイクロプスが死ぬことはない。
続けて50発、50発、50発として計200発を放つ。
ヒュン!ブスッ!と放たれた矢のうちいくつかは確実にサイクロプスの肉体を貫き、ダメージを与えている。サイクロプスに庇われているため様子を見ることは出来ないが、流れ出た生暖かい血が探索者の上から滴り落ちてくる。
「大丈夫だか!いだぁい!おでみんな絶対まもるだ!」
暫く矢は降り注いでいたが、サイクロプスが声を発さなくなったあたりから勢いは止み次いで馬の足音が聞こえてきた。
「突撃ぃぃぃぃぃぃい!」
その声の主は、金色の鎧に身を包んだハラグリム隊長だった。このままではサイクロプスが殺されてしまう!
探索者はここから行動を行ってよい。
ハラグリムを説得すれば、サイクロプスをセレファイスに運び込み治療を行うことが出来る。しかしハラグリムはかなり強い殺意に溢れており、自力で説得を行うのは困難だろう。
【ハラグリムのセリフ例】
「止まれ!彼らを保護しろ!」
「子供は保護した。道を開けろ。私が殺る。」
「手を出してしまった以上、ここで殺しておかなければ後で何が起こるか分からない。」
「では、この怪物が安全だと信じろというのか?もしセレファイスでこいつが暴れたら確実に犠牲が出る。ここで殺す以外の選択肢はない。」
「まだ、死んでいない。いつでも殺せるように手足を鎖で縛っておけ。」
《説得》があまり成功せず、RPもあまりうまくいっていなければ、暫くして馬に乗った男が現れる。
ハラグラムが近づくと、サイクロプスは少し意識を取り戻したのか一言呟く。
「だ、大丈夫だっただか?・・・守れでよがっただか・・・」
ドン、と地に頭を落としてそう言い残したサイクロプスにハラグリムは刀身約1mのロングソードを鞘から抜き、探索者の制止を振り払いサイクロプスの首目掛けて振り下ろそうとする。
「ハラグリム!何があった!」
だが、遠くから聞こえたその声にハラグリムは剣を鞘に納めなおす。更にハラグリムと率いていた兵は全員が馬上の男に体を向けて膝を付く。
「はっ!王よ、セレファイスを襲う怪物を討伐している最中であります。この子供は怪物に襲われていたため、保護したのであります。」
「そうか、ハラグリムよ。よくやった。ここからは私に任せなさい。」
探索者達にも彼には見覚えがあった。このセレファイスを生み出した人物。クラネス王その人である。クラネス王は探索者達の話を親身になって聞く。矢が飛んできたときに身を挺して守ったなど、極めて理性的で温厚な性格であることを伝えることが出来れば、クラネス王はセレファイスの中心にあるトルコ石の神殿の前にサイクロプスを運ばせ、ナス=ホルタースの神官に話を通して治癒魔法をかけてもらうことが出来る。治癒魔法のおかげで丸1日もあればサイクロプスはほとんど回復する。
サイクロプスを解放する
サイクロプスをセレファイスに運び込み、2回目の朝を迎えた後探索者がトルコ石の神殿の前に行くと、回復し終わったサイクロプスが縛られた状態で横たわっている。周囲にはそれを監視しているハラグリムと暇をして眺めているセレファイスの住人がいる。
また、サイクロプスが探索者に気づくと
「大丈夫だっただか!守れてよかっただ!」
と探索者を気遣うような発言をする。
探索者がサイクロプスを解放するようにハラグリムに頼むとハラグリムは断固拒否する。
【ハラグリムのセリフ例】
「仮に解放したとしてこのセレファイスの中で暴れ出せば私が対処するまでに何人死ぬか分らんぞ。それを弁えていないわけではあるまい。」
「お前たちに友好的な態度を見せていたのは同意しよう。だが、私たちが行ったことはまだこいつは覚えているだろう。腹いせに暴れ出す可能性は大いに考えられる。」
「では、セレファイスに被害が及んだ場合、お前たちが責任を取るとでもいうのか?」
探索者が必死に説得を行った場合、セレファイスの住人は探索者に同意し軽いデモが発生する。ハラグリムはセレファイスの住人というよりもクラネス王が創造したセレファイスの街そのものを愛しているため、探索者に対するほどではないが住民に当たりが強いことが多く、不満を抱いている者は少なくない。そのため普段は変化というものが好きではないセレファイスの住民がハラグリムへの意趣返しのためにこのようなデモを行う。
【セレファイスの住人のセリフ例】
「放してやれよ!どうせ暴れたってお前が止められんだろ!」
「いっつも俺たちに強気な態度ばっか取りやがって!そんだけ偉そうにすんならそいつの面倒くらい見てみろよ!」
「そうだそうだ!」
「はーなーせ!はーなーせ!はーなーせ!はーなーせ!はーなーせ!はーなーせ!」
住民が全員離せコールを始めた段階でハラグリムは無言で抜剣する。住民は突然のことに驚いて大きく後退るが、振り上げた剣はサイクロプスを縛り上げていた鎖を断ち切るためのものであった。ハラグリムが剣を振るたびに巨大な金属の鎖が甲高い悲鳴を上げてちぎれていく。ものの数秒で傷つくことなくサイクロプスは自由を取り戻した。
「たすかっただよ!はなしてくれてありがとうだ!」
サイクロプスはハラグリムにお礼をいうと探索者からの指示がない限りトルコ石の前で大人しくする。
セレファイスが夜鬼に襲撃される
探索者がセレファイスを出発しようとした場合、
・夜間は危険なため
・図書館で得た知識による精神的ダメージを回復するため
などと理由をつけて探索者にセレファイスで一度夜を越させよう。
なお、それでもセレファイスを出ようとした場合はシナリオの設定上一度セレファイスに留まるようにプレイヤーに頼み込んで待ってもらおう。
探索者がいつも通り、象牙のバラ通りで身を寄せ合いながら翌日に向けて寝ようとしていると、上空から謎の声が聞こえ始めた。
「ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!」
すると、呼応するように
「ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!」「ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!」「ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!」
と徐々に声が強くなる。セレファイスの住民たちも何が起きているのか分からないといった顔で家から出てきては「うるさくて寝れやしねぇ」「鍛冶に集中できねぇだろうが!静かにしろ!」といった声が聞こえるようになる。だが、空を見上げた者はその悍ましい光景を目の当たりにする。いつも明るい空を、黒い化け物が埋め尽くすように飛んでいるのだ!しばらくその光景を眺めていると、ニューコーンウォールから早馬で来たであろうクラネス王がハラグリムを筆頭とする金色の袖なしの上着を着た騎士達とナス=ホルタースの神官と合流し、話し合いを始めた。他の騎士たちは既に臨戦態勢で待ち構えてはいるが、むやみにこちらから仕掛けるわけにもいかず膠着状態に陥っている。そんな中、より強い叫び声と共にセレファイスを守護する大理石の壁が次々に粉砕される。黒い化け物が全速力で壁に突っ込んだのだ!同時に門にはめ込まれた時間を止める巨大な宝石が壊れ、数万年ぶりにセレファイスの時が動き始めた。
「迎撃ぃぃぃい!!!」
クラネス王はセレファイス中に響かんばかりに叫んだ。だが、空を飛ぶ怪物に弓矢が当たるはずもなく、接近してきた怪物によって住民と騎士に関係なく空に持ち上げられ、即死するであろう高さから落とされる。不幸なものは逃げ場を失い、さまよっている間に落ちてきた者に巻き込まれて死んでいく。いくらかの化け物は魔術を覚えているのか、上空から巨大な炎の球を降らせている。一瞬でセレファイスは炎に包まれ、地獄と成り果てた。あまりにも凄惨な出来事に脳の処理が追い付かず、その場に立ち尽くしてしまう。探索者は1D3/1D8の正気度を喪失する。
クラネス王はエルダーサインや何らかの冒涜的な紋様を左手で描きながら魔術を行使し、飛んでいる化け物を打ち落とす。更には右手に強く握りこんだロングソードで、突っ込んできた化け物を斬り伏せる。それでもクラネス王には余裕があるのか、騎士に指示を出し、住民を庇うように歩き回るなか、ふと探索者達に気づいたのか声をかけてくる。
「ここに君たちの居場所はなくなった!東と南側は被害が大きい!北門から出て、どこか遠い別の場所に逃げるんだ!」
ここから探索者は行動することが出来る。ただし、セレファイスの外へ逃げるにはサイクロプスに担がれた状態で走ることで最短で3ラウンドかかる。また、覚醒世界の探索者の体は落下・炎上したバスの車内で焼かれ続けているため、夜鬼によって高所から落とされた場合、高所恐怖症を発症する。さらに身を焼くような巨大な炎に対する恐怖症を併発する。探索者は精神的な障害の欄に高所恐怖症・炎恐怖症を追加する。探索者は1ラウンドごとに炎に対する0/1の正気度喪失を行う。高所および炎によって失われた正気度はシナリオクリア時に肉体的なダメージとして加算されるためPLが各自メモを行っておくこと。炎の魔術を行使した時などは積極的に探索者にSANチェックを強要しよう。
セレファイスから脱出するために探索者は以下の順で処理を行う。3ラウンドこの処理を終えるとセレファイスを脱出することが出来る。
探索者は全員〈幸運〉を行う
成功した場合、探索者は1ラウンド分通過することが出来る。
失敗した場合、探索者は1D10を行いイベント表で出目に対応するイベントを行う。
セレファイスからの脱出時のイベント表
1 頭上から人間が落下する。1D4で直撃する探索者を決定し、《幸運》および《回避》の両方に失敗した場合1D6ダメージを受ける。また、目の前で人間が爆ぜる姿を目撃した探索者は1/1D3の正気度を喪失する。
2 そのまま通過することができる。
3 そのまま通過することができる。
4 黒い怪物に組みつかれる。化け物のSTRと探索者のSIZで対抗ロールを行い失敗した場合、探索者は落下ダメージ1D6の高さまで持ち上げられる。もう一度対抗ロールを行い、成功した場合は揉み合って落下し1D6のダメージを受ける。失敗した場合、落下ダメージ2D6の高さまで持ち上げられる。これは3D6まで続く。
5 そのまま通過することができる。
6 倒れてきた建物に巻き込まれる。《回避》を振り、失敗した探索者は1D6のダメージを受ける。
7 そのまま通過することができる。
8 そのまま通過することができる。
9 黒い怪物の炎が落ちてきて身を焼く。ダメージ1D4。また、炎に対する恐怖で0/1の正気度を喪失する。
10 そのまま通過することができる。
最後にセレファイスを脱出したサイクロプスを逃すまいと5体の夜鬼が探索者を襲う。
エンディングは後編の導入になります
○タナール丘陵について
オオス=ナルガイの全領域と、内陸部を隔てる丘陵地帯。この神秘的な丘陵はナラクサ川の源であり、多くの幻想的なクリーチャーの棲みかであると言われている。また、丘陵の奥深くには、覚醒の世界と夢の他の領域への、秘密の禁断の入り口があると噂されている。この入口は実際には、ドリームランドと覚醒の世界に横たわるとされ、他の領域にも接しているかもしれない、冥界への入り口である。
クラネス王はあらゆる世界に通じる扉があり、選択肢を間違えれば即死も免れないためタナール丘陵の奥地への立ち入りを古くより禁じている。そのためここからサイクロプスの故郷を目指すのは絶望的でおすすめはしないという風に伝えよう。また、様々なクリーチャーがいるため専門的な知識を持った状態でなければ足を踏み入れてすぐに力尽きることもありうるということも伝えると良いだろう。
魔よけのお守り → 禁断の地で発生する巨大火球落下イベントで炎によるダメージを0にする。
銀の鍵 → 扉を通るために必要な鍵
銀の鍵の使い方 → 扉を通るために必要な儀式の方法
食屍鬼についての知識 → 食屍鬼から受けるダメージを1軽減し、食屍鬼に与えるダメージを1増加する。
夜鬼についての知識 → 夜鬼から受けるダメージを1軽減し、夜鬼に与えるダメージを1増加する。
ヴーニスについての知識 → 探索者がヴーニスによる襲撃イベントを引いた場合、KPから〈アイデア〉を振らせ、成功した場合水中にいる生き物がヴーニスだと気づく。
シャンタク鳥についての知識 → 探索者が禁断の地を縦断するとき、KPは探索者がシャンタク鳥の姿を発見し、ここがシャンタク鳥の居住区であることに気づく。シャンタク鳥による襲撃で正解を選択する可能性が上がるだろう。
アラン山についての知識 → 特に有益な効果はないが、頂上に登っていたらロストしていたことに気づくだろう。
禁断の地についての知識 → 禁断の地を旅する場合のナビゲートに対する+20%の補正が発生する。
入るにあたわざる都市についての知識 → 入るにあたわざる都市まで旅する場合のナビゲートに対する+20%の補正が発生する。
セレファイス周辺の地図 → ナビゲートに成功し続けることで入るにあたわざる都市に辿り着くことが出来る。
生存してセレファイスを脱出した SAN値回復 1D10
ドリームランド大図書館の禁書庫に忍び込んだ SAN値回復 1D6
Twitter @shumiyouacc1 今後過去シナリオや新作シナリオをBOOTHを通じて頒布予定です。誤字脱字の訂正、読みやすさを意識した階層、キーパリングを円滑に行う上でこれまで作成してきたデータシートなどを付与することで有料にする予定です。シナリオを気に入ってくださった方は応援のほどよろしくお願いします。
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