2024年03月01日更新

【CoCシナリオ】ヨビカエリ(後編)~覚醒世界を夢見て~

  • 難易度:|
  • 人数:4人~4人|
  • プレイ時間:5~6時間(ボイスセッション)

前編にてセレファイスを襲撃され、住む場所を失った探索者はガクと入るにあたわざる都市を目指して旅を始めた。探索者は無事辿り着くことが出来るのか。
(下書き保存中に誤って投稿してしまったためまだ編集中です)

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ストック

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コメント

目次

画像集
探索の流れ
登場NPCおよび神話生物
導入
シナリオ本編
ガク
入るにあたわざる都市へ
クライマックスフェイズ
エンディング
報酬
シナリオ終了後のプレイヤーへの解説
シナリオタイトルに込めた意味

画像集

スニドの指名手配書(サプリメント88Pのスニドの挿絵を貼り付けてください。パワポで線だけ抜いて透過させると完成します。)
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ガクの地図
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エンディング用画像
事故当日の記事(全員死亡)
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事故当日の記事(1人生還)
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事故当日の記事(2人生還)
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事故当日の記事(3人生還)
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事故当日の記事(4人生還)
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事故から1週間の記事(1人生還)
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事故から1週間の記事(2人生還)
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事故から1週間の記事(3人生還)
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事故から1週間の記事(4人生還)
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探索の流れ

アラン山とタナール丘陵の間を抜ける
禁断の地の横を通りガクで休憩
ガクを発ち入るにあたわざる都市へ
夜鬼と戦闘し、サイクロプスを置いて覚醒世界に戻るかサイクロプスを助けようとして共に死ぬかの選択をする

登場NPCおよび神話生物

ヴーニス
STR 22 CON 16 SIZ 26 POW 10 DEX 7
耐久力 22
ダメージボーナス:+2D6
攻撃
1:〈噛みつき〉 75% ダメージ 1D6+DB
2:〈締め付け〉 50% ダメージ 1D6
装甲:5ポイントの丈夫な皮
技能:回避 14% 聞き耳 50%
正気度喪失:ヴーニスを見て失う正気度ポイントは1/1D6
〈プロフィール〉
ヴーニスは水陸両性の肉食クリーチャーで、全体の色はあせたピンクかくすんだ黄色で、ところどころに灰色のイボがついている。頭はサンショウウオに似ていて、色の薄い飛び出した目と長くて唇のない顎をしている。水かきのついた前脚には、穴を掘るための頑丈なかぎ爪がついている。前脚のついている位置から下の方はだんだん細くなり、長くてかたい、先の丸くなった尾で終わっている。巨大なミミズのような横うねのある体で、後ろ脚はない。
ヴーニスはドリームランドの湿地帯での厄介者だ。食欲旺盛で、恐れを知らない存在なのだ。中には地面のすぐ下に水びたしの曲がりくねった迷路のようなトンネルを掘るヴーニスもいる。エサをとるときにはその穴や池から飛び出し、犠牲者を捕まえて引きずり込む。犠牲者となるのは、ロバや人間だ。犠牲者を捕まえるときには〈締め付け〉を行う。ヴーニスの巨大ミミズのような体と尾に巻き付かれてしまった犠牲者は1ラウンドに1D6ポイントのダメージを失っていく。

スロブルビキク
STR 7 CON 10 SIZ 7 POW 10 DEX 14
耐久力 9
ダメージボーナス:-1D4
攻撃
1:〈枝角〉 40% ダメージ 1D6+2+DB
2:〈キック〉 20% ダメージ 1D4+DB
呪文
自由自在に見えなくなることが出来る。
技能
回避 50%
〈プロフィール〉
スロブルビキクは、中央ドリームランドの森林と密林に生息する小さなシカのようなクリーチャーである。彼らには、小さな枝角があるが、捕食者から身を守る主な方法は、自由自在に透明になる能力である。これによって彼らは追われることなく逃げることが出来る。透明になるには1MPのコストがかかり、〈POW〉分間続く。スロブルビキクが乱暴に衝撃を与えられた場合、この不可視状態は取り消される。追いつめられる場合にだけ、スロブルビキクは攻撃を仕掛ける。

魔女の木
葉の生えていない木で、生物が近くに来た場合枝を動かして追い払う。もしその生物が小さければ、枝で掴んで放り投げる。

スニド
STR 12 CON 12 SIZ 11 INT 15 POW 14 DEX 19 APP 11 EDU 0
正気度 60 耐久力 12
ダメージボーナス:0
装甲:0
攻撃
1:〈シミター〉 80% ダメージ 1D8+1
技能
回避 38% 心理学40% 値切り 70% 登攀 75% 隠す 95% クトゥルフ神話 5% 夢の知識 60% 隠れる 99% 聞き耳 90% 鍵開け 99% すり 99% 乗馬 65% 忍び歩き 99% 目星 85%
〈プロフィール〉
おそらくスニドはドリームランド全体で最も偉大な泥棒である。彼の行為は伝説の領域になり、彼の名前が言及されるときはいつも、商人は自分の商品に神経質な目を向けるようになった。彼は大昔にクッパル=ノムボにあったゴルトスの都市に住んでいた暗き放浪者と呼ばれる人々である。他の暗き放浪者と同じように彼の顔は浅黒く、彼の装いは砂漠での居住に適している。スニドの技能は彼の欲望にのみ適応している。
本シナリオでは六王国を放浪し、伝説の大盗賊として名を馳せていたスニドだったが遂にドリームランド西部のクッパル=ノムボにて捕らえられた。もたらした被害と己の欲望に忠実な犯行を加味し、情状酌量の余地なしとして全財産の没収と処刑を言い渡されたスニドだったが、せめて命だけでも守ろうとその技術を駆使して脱獄を行った。自分に有利な地形である砂漠の広がった西側には追手がかかると踏んだスニドは敢えて東側へと逃げることを選択し、セレファイス行きの船に忍び込むことで海を渡ることに成功した。更に東へ逃げるために、スニドは身分を偽りガク行きの隊商に紛れ込んで危険な道程を踏破した。更に夜鬼や食屍鬼、盗賊によって不安定な状況に陥っていたガクに辿り着いた彼は付け入る隙があると踏み、自身を捕まえるための追手を始末するためにガクを利用することを考えた。
まず、近辺を根城にしている盗賊と技術提供とよりよい実入りの保証を餌に結託した。更に、食屍鬼と仲間になる合言葉を知っていたスニドは同盟を組んでいる夜鬼も含めて味方につけた。軍勢を率いたスニドは1人での放浪の旅を止め、自身の安寧を保つためにガクの住民を脅しガクに入り込んだ人間を夜に忍び込んでは処理させていた。そのためガクからの香辛料が隊商によって届かなくなったのだ。村人はやってくる人々を殺すことに対する罪悪感に苛まれ、スニドに対する貢物によって自身の生活も困窮した。遂に耐えきれなくなった者はガクを出てユスの修道院やアラン山へと逃げだしたが、情報漏洩阻止のため大抵のものは盗賊や食屍鬼、夜鬼によって捕らえられ命を落とした。運と体力のあったものは逃げ出せたが、アラン山に対しての情報をほとんど持っていなかったガクの住人は自由を求めて氷漬けになり死んだ。

ログテック
STR 6 CON 7 SIZ 11 INT 14 POW 15 DEX 6 APP 14 EDU 21
正気度 60 耐久力 9
〈プロフィール〉
彼は光沢のある絹とエキゾチックな香辛料で栄えていたガクの村長である。かつては200名ほどの村人がおり、農産業が発展していたがスニドが率いていた賊の集団により村を制圧されてしまった。隊商を宿におびき寄せて食屍鬼の餌とし、高価な品物はスニドによって接収され続けた。このようにスニドの欲望を満たし、クッパル=ノムボから来る刺客(ほとんどが刺客ではないが)の処理を行っていたが精神的・肉体的に耐えられない者は自害するか逃亡を図り、賊に狩り殺されていた。また、村長は親族を人質に取られていたため率先してスニドに貢献していたが、村のために今まで尽くしてきたのを知っていた村人たちは反対することが出来ずにいた。仮に反対したところで、スニドにそういった情報が漏洩すれば殺されることは目に見えていたため搾取される日々から抜け出せずにいた。
シナリオ中では来訪者が子供であったため自ら手にかけることに強い嫌悪感を示した村人によって強い反対を受けた。また、村の経営が限界であることを誰よりも感じていた村長は人質に取られていた親族を犠牲にしてでも村人を逃がす決断を行う。

導入

探索者達は燃え盛るセレファイスを背に、震える足を引き摺りながらガクへと向かう。サイクロプスへ向けられた強烈な殺意、クラネス王とハラグリムの思惑。今では全て理解する術を失った。更に仲良くしてくれた族長やイッビクスといった元締め達の笑顔をもう二度と見ることはできないだろう。疑問や後悔、恐怖が混じりあってぐるぐると考え込んでしまう。そんななか、無言で歩き続ける探索者に声をかけるものがいた。
『どっぢにいげばいいだか?』
上から聞こえた声に、探索者は足を止めて見上げる。視界には不安そうな、しかし包み込むような優しい声で問いかける大きな心優しい巨人が映った。そうだ。後ろに道はないかもしれないが、前に道標ならある。セレファイスで犠牲を払ってでも調べたことは無駄ではなかった。僅かではあるが目的地に辿り着ける可能性が上がった。しかも万が一何者かに襲われてもまた、サイクロプスが助けてくれるだろう。そういった自信と希望と打算がサイクロプスの一声で湧き上がってきた。探索者達は目を見合わせ、笑顔を取り戻す。
『こっちだよ』
そう、にこやかに返すだけの余裕が出来た。

シナリオ本編

ナビゲートに成功した場合、2日間分の距離を進んだ判定とする。
ナビゲートに失敗した場合、1日間分の距離を進んだ判定とする。
合計で10日間進んだ場合、次のエリアに行くことが出来る。
アラン山とタナール丘陵の間で発生するイベント(〈ナビゲート〉に補正はない)
〈ナビゲート〉成功時

① イレク=ヴァドからセレファイスへ向かうという旅人と出会う。セレファイスが焼けたという情報などを伝えれば、親切にしてくれた探索者に魔よけのお守りをくれるだろう。この商人は良からぬ評判のつり目の商人である。
② ナラクサ川の水で出来た池を発見する。また、別の人の馬車が池の隣にあるようだ。探索者はここで〈目星〉を振ってよい。成功した場合、馬車は放置されてからそれなりに時間がたっているようだ。馬を繋いでおくための紐もちぎれている。更に池の端に大きな凹みと引きずられた跡を見つけることが出来る。また、清らかな水で休憩した探索者は耐久力とSAN値を1D3回複する。
③ タナール丘陵に清らかな雨が降り注ぐ。久しく感じたことのない感覚が探索者を包む。SAN値を1D3回復する。
④ 食料調達をしようと、牽引してくれたサイクロプスを休憩させるために置いていき探索者は近場を散策した。ここで探索者は〈追跡〉を振ってよい。木の間からシカの群れを発見した。探索者の一人は鳥を狩れそうな任意の遠距離戦闘技能を1回振る。
→成功した場合、以下の描写に移る。
探索者は呼吸を整えてシカに狙いを定める。群れの中で餌に夢中で微動だにしない獲物に攻撃を放った。狙い通り、攻撃は探索者の獲物に命中し大きくのけぞった。しかし、獲物の悲鳴に反応して周囲の群れが透明になり、消え去った!その光景を見ていた探索者は0/1の正気度を喪失する。
また、攻撃を命中させた獲物(スロブルビキク)は透明化していないので、攻撃を続けて耐久力を0にすれば24食を獲得することが出来る。

→失敗した場合、以下の描写に移る。
探索者は呼吸を整えてシカに狙いを定める。群れの中で餌に夢中で微動だにしない獲物に攻撃を放った。だが、その攻撃は狙いから逸れ、当たることなく群れの中を通り過ぎて行った。横を通り過ぎた攻撃の風切り音に反応したのか、シカの群れは大きく動き出すと同時に透明となって、消え去った!その光景を見ていた探索者は0/1の正気度を喪失する。
また、獲物(スロブルビキク)は透明化しているので、探索者は何も得ることが出来ない。

〈ナビゲート〉失敗時
① セレファイスを襲撃した夜鬼が背後から襲い掛かってくる。夜鬼3匹との戦闘になる。
② 探索者は円形の広場に出た。真ん中にポツリと葉のない木が立っている。周りには雑草の類は生えておらず、一定の距離を置いて木が生えている。探索者はここでどのように過ごすかRPを行う。もし、この魔女の木の下で眠ろうとすれば夜に持ち上げられた探索者は高所から投げ飛ばされる。
③ 探索者は〈知識〉を振る。成功した場合、薬草地帯に入り込んだことが分かる。更に探索者が望む技能のうち〈薬学〉〈化学〉〈医学〉〈夢の知識〉をKPはシークレットで振る。技能に成功するたびに、作製した薬に効果が付与される。この薬は応急手当で回復出来なかった耐久力にも使用可能である。
〈薬学〉→1D3回復する 〈化学〉→1回復する 〈医学〉→1回復する 〈夢の知識〉→耐久力に加え、SAN値を回復する 1つでも技能がファンブルした場合、効果が裏返る。
④ 探索者はぬかるんだ場所を歩いていた。足取りは重く、中々前に進むことができない。探索者はここで〈幸運〉を振る。失敗したものはぬかるみにハマってしまい、窒息ロールを行う。

5日以上進んだ場合、強制イベントが発生する
ナラクサ川の水で出来た池を発見する。清らかな水で休憩した探索者は耐久力とSAN値を1回複する。また、探索者が休憩しているとワニの鼻のようなものが水面に浮かんでいるのを見つける。(ここからRP)探索者が何か居そうだなどと発言した場合、「なにかいるだか?」とサイクロプスが顔を近づける。これは獲物を狙っているヴーニスであり、基本的にはサイクロプスが近づく可能性が最も高いが探索者が近づくなどの不用意な発言をした場合は探索者に襲い掛かる。

禁断の地を通過するルートで発生するイベント(〈ナビゲート〉に-20%の補正)
〈ナビゲート〉成功時
① 酷い悪路が続いている。しかし、周りを見渡しても通れそうなところは他になさそうだ。探索者は岩肌を掴みながら前に進む。ここで探索者は〈目星〉を振る。成功した場合、地面に落ちていた1枚の羊皮紙を発見する。表には何も書いてなかったが、裏返すと男の似顔絵が書いてあるようだ。
→スニドの指名手配書を獲得する。
スニドの指名手配書にはこのように書かれている
・この盗賊に見覚えはありますか?
・スニド
・この男に貴重品を見せないでください
・生死は問いません
指名手配書と思われるその羊皮紙には強調されるように書き込んであった。更に細々とした文字に目を通すと、以下の情報を得ることができる。
特徴:ゴルトスの出身のため肌が黒い。シミターの腕に覚えがある。物を盗むことに関する知識に長けている。
② 高低差の少ない穏やかな場所を歩いている。見渡しもよく開放的だ。ここで探索者は〈目星〉を振る。成功した場合、遠くにある丘陵から何者かの視線を感じる。だが、視線の主を見つけることは出来なかった。
③ 傾斜がなく開けた場所に辿り着いた。ここなら夜も快適に過ごせそうだ。よく見るとここは隊商が良く使う場所なのか、石が丁寧に積まれておりベッドや椅子のようになっている。また、薪をくべれば直ぐに火をつけられそうな焚火の跡もある。更にタナール丘陵から流れる小川もあるようだ。水のせせらぎが聞こえる。探索者は久しぶりに心地よい眠りについた。SAN値を1D3回復する。
④ 探索者達は牧草で生い茂った土地を踏みしめていた。どうやらここは気候的に穏やかで安全な場所のようだ。ここで探索者は〈目星〉を振る。成功した場合、探索者は野生の鳥の群れが飛んでいるのに気づくだろう。探索者は巨大なサイクロプスを一旦遠ざけて、狩りを行ってよい。鳥を狩れそうな任意の遠距離戦闘技能を3回振り、成功するたびに3食を獲得する。

〈ナビゲート〉失敗時
① 探索者は火山弾や焼け焦げた獣が転がっている岩肌を進んでいる。ここで探索者に対して巨大な火の球が上空から落ちてくる。禁断の地についての知識を所持している場合、注意を常に払っていたとして回避することが出来る。所持していない場合は他のプレイやによる注意喚起が間に合うかどうか、〈DEX×5〉を振る。失敗した場合は1D4ダメージを受ける。また、全員炎に対する恐怖で0/1の正気度を喪失する。
② 探索者達は背の高い木で覆われた林の中を進んでいた。サイクロプスに上から道のりを確認してみるが、サイクロプスも遠くは見えないらしく困っているようだ。一応、馬車が走れる程度の幅はあるので、歩く分には困らないが方角が怪しいというのはなんとも気分を落ち込ませるようだ。探索者はそれなりのペースを維持しながら歩いていく。何か目印でもあれば、そう思った矢先に探索者はへし折れた木とひしゃげた馬車を発見する。まき散らされて固まった血痕が地面に無数に落ちており、何か争った形跡がある。だが、死体の類は全くなく、食料になりそうなものや金目のものもなさそうだ。この状況について詳しく調べたい探索者は〈追跡〉を振ってよい。成功した場合、探索者は馬車に乗っていたであろう人間たちの痕跡を読み取ることが出来る。馬車の大きさから見て乗っていたのはおよそ3人から5人。しかし、馬の足跡やタイヤ痕が多いためこの馬車は何者かに追われていた可能性が高い。また、馬車から何方向かに血痕が続いており大量の血痕が残っているところで痕跡は途絶えていた。更に途中途中で刃物によって切り傷が付けられた木がいくつか存在していた。周囲を調べれば調べるほど、自分たちもこのような目にあってしまうのではないか、そういった不安に包まれる。探索者は正気度喪失1/1D3を行う。
③ 探索者は二手に分かれる獣道でガクの方角に近そうな方向を選択した。だが、進むたびに獣道はくねくねと曲がり、思った方向に進むことは出来なかった。焦りと苛立ちからか、足元が不注意になってしまった探索者は〈POW〉×5を行う。成功した場合は普段通りに歩くことが出来るが、失敗した場合は1D6の高さから滑り落ちる。

5日以上進んだ場合、強制イベントが発生する
探索者は上空で飛んでいる何匹かの鳥が気になった。獲物を狙うかのような目を探索者に向けてぐるぐると旋回していた。夜になっても鳴き声が聞こえる。寝込みを襲われるのではないかという恐怖が探索者を包み込む。さて、今夜はどこで休憩しようか。探索者は寝床を探しながら歩き続けた。ここで探索者は以下の中から寝床を選択する。
A→上から見づらい林の中
B→寝ずの番で警戒をすればいつでも対処できそうな開けた場所
C→鳥が入りづらそうな洞窟
もし探索者がAまたはBを選択した場合、以下のイベントが発生する。

A→ざわざわと肌寒い風が草木を揺らしている。恐怖を覚えない程度の小さな焚火の前に手をかざし、暖を取りながら転がっている枝を取っては薪としてくべていく。ちょうど手に収まって握りこみやすい枝を見つけた。薪は足りているようだし、暇つぶしに何か絵でも描こうか。そう思って下を向く。あーでもない、こーでもないと土に線を引いてはグシャグシャに消した。こんなに絵の才能なかったっけ。あ、そういえばそろそろ自分の番が終わるから隣の奴を起こして交代しよう。
B→ざわざわと肌寒い風が雑草を揺らしている。恐怖を覚えない程度の小さな焚火の前に手をかざし、暖を取りながら上空の星々を眺める。大きさがまばらなそれらを数えきるのにそう時間はかからなかった。なおもパチパチと弾ける薪の音に耳を傾けながら探索者は心を落ち着かせる。そろそろ自分の番が終わるから隣の奴を起こして交代しよう。

AB→そう思って体を揺らそうとした時。凄まじい風切り音と共に上から巨大な何かが降ってきた!ここで探索者は〈幸運〉を振る。失敗した探索者は1D4を行い、出目に合わせて四肢を失う。
1→右腕 2→左腕 3→右足 4→左足
腕を失った探索者はSIZを2、DEXを2減少させる。更に片腕で不可能な技能(弓など)の技能値を0%にする。また片腕では困難な技能(登攀など)の技能値を適宜減少させる。

禁断の地を通過し終えた探索者に発生するイベント
太陽が地平線から昇るのはこれで20回目だろうか、鬱蒼とした山岳地帯を抜けて探索者達はようやく道らしい道を発見した。とはいってもそれは田舎道で舗装されたものではなく、人や馬車が繰り返し通ることで踏み固められたもののようだ。だが、今までの岩場やぬかるみに比べれば歩きやすいもので同時にこの先に人の住処がある証拠でもあった。足取りは軽く、もうすぐガクで一休みすることが出来ると気持ちも楽になっていく。数時間も歩き続ければ畑が目に入る。背の低いものから高いものまで区画分けされ、秩序立って生えている。だが、あまり手入れはされていないようで中には枯れているものもあるようだ。
ここで探索者は〈夢の知識〉を振って良い。成功した探索者は、これが乾燥させる前のガク特産の香辛料であることがわかる。
探索者が畦道を進むと人影が見えた。
『ば、バケモンだ~!!』
農作業をしていたと思われる男性が腰を抜かして慌てている。
『オデ、オデはナニモシナイダヨ!』
とサイクロプスは遠巻きに伝えるが、耳に入っていないようだ。

探索者はこの男(リチャード)に近づいて話をすることができる。ただし、リチャードはガクの村人であったが寝返ってスニド側についた人物である。2日目の夜に村の会議に参加するが、抜け出してスニドに情報を渡す。彼は倫理的な面は持ち合わせているが、自分自身のことが最優先であるため、保身的な動きをする。そのため流石に子供を手にかけるのは心苦しい気持ちが少々とサイクロプスというバケモノがいるという状況に対して動揺し、取り敢えず帰そうとする。

「ガクにきたんだべかぁ、子供はあぶねっから早く帰ったほうがいいべぇ。」
「いんまはな、グールが村さやっできてぇ人攫われちまってっから香辛料育てるんも運ぶんも人が足りてないんだべ。」
「アザトホスに行くんだべか?!絶対にやめるんだべ、あっこさ行って帰ってきたもんいないべ」
彼に宿について尋ねると少々口籠る。〈説得〉に成功するか、(泊るための代価はあるとして)金目のもの・魔術的なものをちらつかせると彼は口を開く。(スニドへの献上品を確認したため)
「あっちさ宿あるけんどもそんのでっけえにいちゃんは入れねぇど。どうしても泊まりてぇ言うんならおいらが先行って伝えとくけんども」

ある程度彼と話すと、彼は暫く待っていてくれと言ってどこかへ行ってしまう。探索者達は畑しかない場所で置いてけぼりになり、ただひたすら待つことしか出来なかった。かなり時間が過ぎ、もうすぐ陽が沈むといったところで男が戻ってきた。
「泊まって良いそうだべ~」
〈心理学〉に成功すると、そう探索者に伝えた男は言葉とは裏腹にやや沈んだ顔をしていることがわかる。
これはスニドに探索者を連れてくるように命じられたため従っているが、これから子供を殺すことに対する罪悪感と本当にサイクロプスを連れて行って大丈夫なのかという不安に駆られているためである。
男は探索者を連れて再び戻ってきた方向に歩き始める。
「おめぇたちが泊まるのは良いけんども、そのでけぇにいちゃんは動けねぇように縛らせて欲しいんだと」
これに了承した場合、探索者はガクに宿泊が可能になる。
了承出来ない場合はガクでのイベントを飛ばしてそのまま入るにあたわざる都市に向かうことになる。

ガク

ガクはかじり跡のあるキメラの骨が散らばる砂漠の近くにある内陸の小さな村である。ガクは光沢のある絹とエキゾチックな香辛料の産地として良く知られている。探索者は20日間の道程を乗り越え、ようやく第一の目的地であるガクへと辿り着いた。男に案内された場所はどうやら宿場町のようだ。一本の道に沿って家が立ち並んでいる。また、サイクロプスのことを聞いて、皆待っていたのだろうか。数十名の村人が入り口で待っていた。
「ほ、ほんどにバケモンがきたどぉ!」
村人は各々が怯えたように叫び、腰をついた。が、流石に話を事前に聞いていたからか、何名かの村人は武装状態で構えていた。しばらくすると村人の中から年老いた男性が探索者に歩み寄ってくる。
「ワシがこの村の村長をやっとる、ログテックだべ。よう、こんなところまできたべや。ぎょうはもう遅いからすぐ寝でぇ、明日準備すればいいべ。だけんども、そこおおぎいお連れさんはあばれねよに縛ってもいいが?」
探索者が承諾しない場合、サイクロプスは笑顔で「大丈夫だよ、おでが我慢するからみんなは休むだよ」と承諾を促す。
ここで探索者が〈心理学〉〈目星〉〈戦闘技能〉などの村人を観察する技能に成功した場合、怯えている村人はやせ細っており、明らかに必要量の食事を摂取できていないことが分かる。また、武装した人間は身体つきもよく身のこなしも軽そうな動きをしていることが分かる。

宿屋にて(1日目の夜)
探索者はログテックに案内され、宿に招かれる。ガクの家も陸続きということもあって、セレファイスに似た様式の家であった。白い漆喰で塗られた壁に、探索者達はどことなく安心感を覚える。裕福なセレファイスとは違い、内装は落ち着いた色合いである。
「すごしまっどけ、すぐ飯つぐるがんな。」
ログテックはそう言うと、台所に入り鼻に刺さるような匂いの香辛料を砕いて混ぜ始めた。並行して鍋には畑で取れたであろう小さな豆と根菜類に加え僅かばかりの干し肉を入れて炒めているようだ。その後パウダー状になった香辛料を鍋に入れ、鍋の中で和えるようにしてかき混ぜていく。最後に水を入れて蓋をして煮込むと、気化したスープの匂いが部屋全体に充満した。更にログテックはどうやら焼いていたらしい白い布のようなものを窯のなかから取り出して探索者の前へと並べていく。パンにしては非常に薄く、およそ10cmはある円形である。どうやらスープの方も煮込み終わったようで、お椀に注がれてくる。スープと言っても水っぽくはなく、ほとんど蒸発しているようだ。
「こっちがカリで、この薄いんがチャパティだべ。カリをチャパティで掴んで食んだべ」
探索者達は鼻から抜けるガクの香辛料の香りと、豊富な栄養を含んだ食事にありついた。SAN値を1D6回復する。

探索者が夜起きて行動することを選択した場合、以下のような描写を行う。
探索者は〈POW×1〉を試みてよい。
→クリティカルした場合
貴方は混濁した意識から抜けだすことに成功した。体の自由は利く。五感もおかしいところはない。もし寝ている場合でも自分なら動くことが出来るだろう。

→成功した場合
貴方は混濁した意識から抜けだすことに成功した。だが体の自由が利かない。五感はある程度効くことが確認できたが、このまま眠るか周囲に意識を集中する程度しかできないだろう。
→意識を集中させることを選んだ場合、探索者は侵入者の気配に気づくことが出来る。暗くて良く見えないが、ガサゴソと小さな音がする。音の方向から考えて、侵入者は荷物を漁っているのだろう。順番に全員分の荷物を漁ると、侵入者は部屋を出て行った。

→失敗した場合
あなたは温かい食事をとり、心地よい眠気を感じた。その眠気は抗いようもないほど強く、自然と瞼が落ちてゆく。外に出ようと扉の近くまで動いたところであなたの意識は途切れた。

ガク2日目
探索者は深い眠りから目覚める。
ログテックは既に起床しているようで、朝食を作っていた。「おぎだべか。はやがっだなぁ。アザトホスさいくんだべか?んだら、飯食って村んなか見でいぐべ。夜から出発しでもあぶねっから、今日もここで寝で行くといいべ。」

ログテックの宿で調べられる部屋は【ログテックの私室】【宿泊部屋】【キッチン】である。
宿泊部屋
荷物に対して〈目星〉などを行うと、荷物が漁られている形跡があることに気づく。ただし、中身が出来るだけ動かないよう慎重に漁られていたと感じるだろう。
宿として借りた部屋に〈目星〉をおこなってもおかしなところは特にない。

ログテックの私室
部屋がいくつかある。夫婦用の部屋が2つと子供用の部屋が1つあるようだ。夫婦用の部屋は1つ使用されている形跡があるが、もう2つの部屋は埃をかぶっており、長い間使用されていないことが分かる。

キッチン
キッチンで目に付くものは大量の食器である。探索者が使用したと思われる食器は綺麗に洗われているが、棚や棚の中の食器にはやや埃が溜まっていることが分かる。

ログテックとの会話
何故畑は荒れているのか?
「最近村を捨てて出ていくわけぇもんが多いんだべ。おかげで畑さ見にいぐ奴ら減っぢまって、荒れてんだべ。」
家族はどこにいるのか?
「やんちゃな娘と孫がおっでなぁ…ある日夫さ連れて突然旅に出たんだべ」

DEEN’S雑貨店
雑貨店を訪れると肌の黒い男が探索者を出迎える。(探索者が無防備にも指名手配書を隠す宣言を行っていなかった場合、スニドは指名手配書の
〈アイデア〉に成功すると探索者は彼の顔がスニドの指名手配書とそっくりであることに思い至る。
ここで探索者は〈CON×3〉またはポーカーフェイスを行うための〈心理学〉などの技能を行う。失敗した探索者に対して、スニドは〈心理学〉を行う。

・食料 100J 不作のためやや高い。
・ガクの香辛料 5000J
・ガクのお守り 10000J 耐久力と正気度喪失が発生した場合、1個につき1HPまたは1SAN低減することが出来る。ただし、使用は1回につき1個までとする。


やつれた村人が農作業を行っており、武装した村人が畑の中を巡回している。
村人に話を聞くか〈知識〉〈薬学〉〈夢の知識〉などに成功することで、手入れしている植物が主食となる小麦ばかりであることが分かる。

サイクロプスとの会話
サイクロプスは縛られた状態で武装した村人との交流を行っているため暫くしてから会話を行うと、情報を引き出すことが出来る。
・探索者はどこから来たのか?
白くてキラキラした街から来たと答えた
・探索者はどういう目的でガクに来たのか?
自分を故郷に送り届けるのが目的であり、ここで休憩するためであると答えた
・探索者はこの街で何をするか他には言っていなかったか?(もし探索者がガクとスニドを紐づけて喋っていた場合、サイクロプスはそのことを村人に伝える。そのためKPはスニドとガクについての発言を注意して聞いておくこと)

また、サイクロプスを縛り付けている鎖に関してはスニドが魔術の込められた強靭な鎖のため解錠を試みることは出来ない。

宿屋にて(2回目の夜)
ログテックはいつも通り外部からの客人を眠らせ、食屍鬼の餌食とするために昏倒作用のある香辛料を配合し料理に仕込んでいる。そのため、探索者は深夜に異変に気付いて起き上がるために〈POW〉×5を行う。成功した探索者はドタバタとした地鳴り音で起きる。慌てて起きて外に出ようとした探索者は更に〈隠れる〉〈目星〉のどちらかを行う。成功した場合、明らかに監視の目が複数あることに気づく。
しばらくして冷静になった探索者は外の騒音が消え、代わりに隣の部屋からひそひそと声が聞こえるのに気づいた。部屋に入らずに内容を聞き取るには〈聞き耳〉を行う必要がある。
「今回は子供だべ!子供さ殺すなんてできねべよ。。。」
「やつらあのでけぇバケモン逃がしてたべ!馬ぁ使って何人か村ん外さ出てたの俺ぁみたべ!」
「あいづらも馬もいねし、逃げるなら今しかないべや。」
また、〈アイデア〉に成功した探索者は先ほどの地鳴りがサイクロプスの走る音のようだったと感じるだろう。

探索者が部屋に乗り込むと村人たちは狼狽し、説明を始める。
「なんで、起きてきたべ!?村長飯に毒いれでながっだべか!?」
「きかれてたべか。。。おめら子供やけんど、薄々わかっとるべ?こん村はあいづらに支配されてんだ。」
「俺だちもう限界だ!こん子ら連れて一緒に逃げるべ!」
ガク脱出計画を練っていた住民達は村長の意見に同意する。多くは長距離の逃走が不可能な妻子持ちである。だが、人数が多い分散り散りに逃げ出せば多くは脱出できると考えた。だが、ここで問題が発生する。
「おい、さっきまでいたリチャードはどこいったべ!」「やっぱあいつ裏切ったんだべぇ!」
騒ぎ始めた村人にログテックは落ち着くようにと諫める。
「家族に夜逃げの準備はさせたべ?ゆっくり家に戻ってバレんように逃げるんだべ…この村がこうなったんも全部ワシのせいじゃ…あやつの邪悪を見抜けんかったワシのせいじゃ…もう死んでも償いきれんほど村人を殺してしもうた」
「おさ、おさも一緒に逃げるべ!」
『ワシがおったら、足手まといだべ。ワシは妻子を人質に取られておる。家族全員首揃えて村に命差し出す覚悟だぁ。はよぉいげ!』
男たちは家から飛び出し、音を出来る限り消しながら近くに隠していた家族の元へ戻る。男と共に物を詰め込んだ台車やバックパックを持ってきた女と子供が集まってくる。
「いげいげいげ!」
掠れた声で村人だけに届くようにログテックは叫ぶ。エルダーサインを結び、手を振った。村人たちも皆エルダーサインを結び、溢れ出す涙を堪えながら大通りを走り始めた。土煙をあげながら必死に村の外へ外へと向かっていく。
「もしあいづらが来でも捕まるのがすくなぐなるように分かれて逃げるべ!体弱いやづわぁユスの修道院の方さいげぇ!動けるやつぁ大回りしでぇリナールのほうさ逃げるべ!」
村人は僅かな希望を掴もうと、分かれて逃げることを選択した。これでようやく彼らの支配から逃げることが出来る!と。
だが、その逃走計画は目の前に現れた武装した村人によって即座に止められることとなった。まずい逃げなくては!と、後ろを振り返るが、すでに背後にもならず者たちは集結しており、挟み撃ちをされる形となっていた。先ほどまでの空気とは一転してここまでか、と絶望に満ちた表情を浮かべた村人たちはストンと、膝から崩れ落ち泣き出す者も続出した。
ならず者はじりじりと村人ににじりより、もう少しで彼らの刃物が届くといったところまで迫ったところで、前方の中心に立ち慣れた手つきでシミターを構えた肌の黒い男もとい、スニドは芝居がかった仰々しい話し方で村人を威圧し始めた。
「ログテックよぉ、大人しく俺のために働くって話は忘れちまったのか?勘弁してくれ、この村が壊れたら俺はどこで生活していけばいいんだよ!なあ!レン高原にでも行って来いって言いてぇのか?!」
彼は苛立ちを露にしながらそう吐き捨てる。続けてスニドが何か言いかけた時、村人の背後から声がかかる。
「後生だべ、もう殺すんはやめでぐれぇ!ワシを殺してもうどっがいでぐれぇ!」
ログテックは顔をグシャグシャにして、足を引きずりながらならず者の列を押しのけてスニドの前まで進んでいく。
「はぁ、俺が差し出されたものにはなぁ興味が無いってわかってねえのか。おい、この爺縛っておけ。こいつの目の前で全員殺してやれ。」
「糞がぁ!悪魔め!お前だけは$’%#+>」
とならず者は言葉にならない声をあげながら必死に抵抗するログテックを地面に押し付け、持っていた鎖で縛り始める。他のならず者はスニドの顔色を窺っているようだ。

村人虐殺イベント
村人が50人存在し、ならず者は30人である。
サイクロプスを呼び戻す探索者は〈DEX×2〉を成功するまで行う。失敗するたびに探索者は1D6を行い、出た目の数だけ村人が死亡する。
村人と同じくならず者に囲まれている探索者は先制攻撃を行うことが出来る。更に、ならず者の集まりは〈回避〉を行わないものとする。探索者の与ダメージを合計していき、10ダメージごとにならず者が1人殺害出来るものとし、5人殺害するごとに村人の損失人数を1D6→1D5→1D4・・・と軽減することが出来る。また、探索者はラウンド終了毎に〈幸運〉を行い、失敗した場合探索者にならず者の凶刃が届く。〈回避〉またはなんらかの受け流し技能に失敗した場合、1D6のダメージを受ける。更に〈幸運〉にファンブルした場合はスニドのシミターによって直接攻撃され、1D8+1のダメージを受ける。

ならず者追撃イベント
〈DEX×1〉に成功した場合、サイクロプスを呼び戻した探索者が村に戻ってくる。
探索者の奮闘もむなしく、ならず者の凶刃になすすべなく痩せこけた村人倒れ伏していく。ならず者もかろうじて数を減らすことは出来ているが、焼け石に水程度だ。あと数分もすれば探索者も含めて全員の命が絶たれる。もはや何に縋ってよいのかすらわからずに探索者達は持てる限りの力を尽くしていた。
「やめでぐれぇ!」「おがぁをころさないでぇ!」
阿鼻叫喚の中、突如として皆が僅かに地面の揺れを感じた。ドドドッ・・・と聞いたことのある地響きだ。次第に揺れは強くなり、探索者達は確信する。サイクロプスが帰ってきた!
「もどっできただよぉぉ!!」
ここから探索者達はRPを行う。ならず者を殺してくれという状態になった場合、ならず者追撃イベントが始まる。

サイクロプスは明確な殺意を持ってならず者に歩み寄り、巨大なこぶしを振り下ろした!
ならず者は固まっていたため回避運動を行うことが出来ず、5名が鈍い音と共にひしゃげた。圧倒的な暴力に晒されたならず者はいままでの勢いを失い、逃走を始めた。

探索者は先ほどと同じく、判定を続ける。ただし、ならず者からの反撃はないため〈幸運〉や〈回避〉は行わなくて良い。また、ラウンド開始時に〈アイデア〉を行い成功した探索者はスニドが見えないことに気づく。スニドが消えたことに気づいた探索者は〈追跡〉を行う。成功した探索者は逃走中のスニドを発見することが出来る。スニドは卑劣にもならず者を盾にするため、全てのならず者を殺害してからになる。

スニド追撃イベント
・スニドが逃走を始めてから10+1D3ラウンド後にスニドは探索者の前からいなくなる。
・探索者はスニドにダメージを与えるためにいくつかの方法が考えられる。遠距離系の攻撃技能、神話生物を使役しての追撃(DEXが人間よりはるかに大きい場合は追いつくことに成功し、近接攻撃を仕掛けることが出来る)、魔術的な攻撃など
・スニドが〈回避〉を行う。彼は俊敏で器用なため全ての攻撃に対して〈回避〉を行うことが出来る。
・スニドが耐久力を半損し気絶ロールにした場合、または耐久力が2以下となり気絶または死亡した場合スニドは動きを止めるため確保することが出来る。
・スニドは用意周到な男だ。地面を走って追撃する探索者は〈目星〉〈追跡〉をラウンド終了時に行い、全員が失敗した場合罠に引っかかり1ラウンドのロストが発生する。また、この時ファンブルした探索者がいた場合、追加で全員に1D3ダメージが発生する。

ならず者・スニド全滅後
舞い上がった土煙が流れ出した血液と溢れ出した内臓にまじりあい、グロテスクな塊を作っている。動かなくなった死体にそれはへばりつき、死体を死体たらしめていた。生き残った者はその骸に縋りつき、徐々に冷たくなっていくことを受け入れられないようだった。
うめき声と泣き声だけが村に響き渡っている。探索者はしばらく呆然としながらその光景を目に焼き付けることしかできなかった。これが全て己の判断と行為による結果であることを冷静になって受け止めた探索者は1D6/1D10の正気度を喪失する。

ここから戦後処理は探索者のRPに全て任せる。村人はならず者を制圧した探索者に全て従い、捕縛したであろう一部のならず者の処理も一任する。もしかしたらリチャードもそれに含まれているかもしれない。

僅かばかりの村人が残ったガクで探索者は目を覚ます。眠い目を擦りながら良い匂いがする方へ行くと、ログテックが台所で調理をしていた。
「あんだらおぎだべか。もうすぐ飯でぎっがら、もうすごしまっでぐれ」
暫く待っているとすり潰した豆と香辛料の効いた刺激の強いスープが机の上に並べられる。朝から飲むのは少しばかり胃に負担がかかるかもしれない。
「もうアザトホスばいくべ?ガクのごとわすれねよに、こんぐれしかねぇけんど香辛料と飯もっでいげ。おめらに救ってもらっだ村、なぐならんよに絶対復興させてみせるべ。ほんどにありがどな」

探索者がログテックとしゃべっていると、家の中に生き残った村人が入ってくる。」
「あんだらは恩人だ!せめでこれだけでももらっでいっでぐれ!」
「飯くわねえぐれえ慣れてんだ!あいつら殺しでぐれでありがどな!」
大量殺人という行為に対して返ってきた反応が強烈な感謝という歪な状況に探索者は心の中に拭い切れない何かが残るかもしれない。だが、好意を無下にすることは出来ないだろう。探索者は120食を獲得する。
「アザトホスいぐんなら俺が道教えるべ!」
更に、探索者に対して道を教えると村人が申し出る。これによって探索者はガクから入るにあたわざる都市までの道程を短縮することが出来る。

入るにあたわざる都市へ

ガクから入るにあたわざる都市までのルートで発生するイベント(〈ナビゲート〉に-40%の補正)ただし、ガクでのイベントを通過している場合は成功→3日、失敗1日として換算する。
〈ナビゲート〉成功時
① 探索者は刺激臭のする場所を歩いていた。先ほどから濃い雲が湧き出している場所があるようだ。何があるのだろうと、強い興味に惹かれた探索者達はそちらの方へ歩いてゆく。刺激臭は煙に近づくに連れて次第に強くなっていき、遂にその原因にたどり着いた。それは源泉であった。煮えたぎる巨大な湖からモクモクと蒸気が湧き出しており硫黄の臭いが漂っている。もう少し離れた場所に行けば温度も下がり、入れそうな場所がありそうだ。ここで探索者は〈ナビゲート〉に+20%して振ってよい。成功した場合、入るのに適切な湯地に辿り着くことができる。ドリームランドの未知なる湯地で休憩した探索者は1D6の正気度を回復する。
② 突然、上空から巨大な生物な生物が落ちてくる。グシャっと大きな音を立てて頭から地面に叩きつけられたそれは、シャンタク鳥であった。探索者は1/1D3の正気度を喪失する。ここで探索者は〈生物学〉の半分か〈クトゥルフ神話〉で振って良い。成功した場合、シャンタク鳥の素材と魔石をいくつか入手でき、体内から卵を取り出すことができる。更に、36食を獲得することができる。
③ 探索者はガクの住人に教えてもらった通りの道を進むことが出来た。サイクロプスと同じくらい巨大な柱状の岩が円を描くように5本屹立している。地面を見ると何らかの塗料で円が描かれ、円に接するように五芒星が書かれている。その接点にこの5本の岩が意図的に立てられているようだ。〈クトゥルフ神話〉に成功した場合、これは古代の強力な魔術師が長期間にわたって魔術的な塗料にマジックポイントを込めた非常に強固な結界であることがわかる。低位の神格程度であればこの中で安全に過ごせるだろう。探索者は一時的に心の安寧を取り戻すことが出来た。1D6の正気度を回復する。

〈ナビゲート〉失敗時
① 探索者達は先に地平線のみが映る平野を進んでいた。時折、寄りかかれそうな程度の岩が転がっており、僅かばかりの植物が地を這うように伸びているのが目に入る。あまりにも目印がなく本当にこの方向であっているのか不安になる。あてもなく東へ進んでいた探索者だったが、徐々に鼻に付く異臭を感じ始めた。前に進むごとに臭いに対する嫌悪感は強まるが、その先にあるものに抱く興味を捨てきることが出来なかった。まず目についたのは大きな岩に刻まれた印だ。(探索者が食屍鬼についての知識を所持している場合、これが食屍鬼のキャンプの印であるということが分かるため入ってはならず、退却を選択することが可能になる。その場合、以下の処理は発生しない。)さらに奥に進んでいくと、ガタガタの歯形が残っている骨や何らかの腐りかけの内臓がまとめて山積みになっている。周りにはバラバラに千切られた人間の体が円を描くように並べられており、女の長い髪の毛と血まみれの衣類で縛られている。探索者はこの悍ましい光景に思わず眩暈と吐き気を催す。1/1D3の正気度を喪失する。また、探索者はいつの間にか現れていた5匹の化け物に気づく。おおよそ形は人間に近いが、足の間接は逆を向いており手は長く、指の関節は人間よりも多く存在していた。体表はちりじりの毛でおおわれており、犬のような顔に埋め込まれた小さな目がこちらを舐めるように見ていた。人の形をした怪物を目撃した探索者は1/1D6の正気度を失う。この食屍鬼はキャンプの番をしているため、しばらく探索者についてくるが何もしなければサイクロプスにおじけづいて手を出してこないので逃げることが出来る。
② 砂嵐が探索者を襲う。サイクロプスが風よけになってくれているのである程度防げてはいるが、前が見えないため中々前に進むことができない。今いる場所も把握しづらくなってしまった。次の〈ナビゲート〉に-20%の補正をかける。
③ 連日の悪路で体調を崩してしまう。〈応急手当〉か〈医学〉に成功した場合、すぐに回復する。失敗した場合、風邪をこじらせるため次のイベントが終了するまで技能を使用することができなくなる。
④ 雷雨に襲われる。激しい雨で体温が下がり体力を消耗し、何度も落ちる雷に精神的疲労も感じることだろう。耐久力を1減少させる。この耐久力は応急手当てで回復することはできない。
⑤ 小高い丘を見つけた。あの高さなら周りを見渡すことが出来そうだ。探索者達は上へ上へと進んでいく。荒れた固い土地で植物や岩も少なく、傾斜を除けば歩きやすかった。軽い足取りで探索者達は丘の上まで辿り着くことができた。見晴らしがよいため、いつもより遠くが見える。ここで探索者は〈目星〉を振る。成功した場合、丘の上に立つ小さな小屋を見つける。探索者が小屋をのぞき込むと、中はどうやら簡易的な基地になっているようだ。ありふれた剣や盾、鎧が転がっている。探索者は任意の装備をいくつか獲得してよい。
武器 → 任意の物 アーマー → リングメイル(5HP) シールド → 2HP(手が空いている必要がある)

クライマックスフェイズ

セレファイスを発ち、アラン山の山麓とタナール丘陵の間を潜りぬけ、禁断の地を横目に香辛料の街ガクで休憩した探索者達は心優しい巨人、サイクロプスとついに入るにあたわざる都市へと辿り着いた。物陰に隠れ、遠目から目的地を見る。セレファイス王から聞いていた通り、都市はこの地を飲み込まんとするほどに巨大で禍々しさすら感じる巨大なクリーチャーのアギトが砂の中から突き出すように生えていた。周りにはセレファイスを襲撃した、忌々しいあの黒い化け物がおよそ数十体飛び回っていた。あの化け物に捕まってしまえば、サイクロプスはともかく探索者達はひとたまりもないだろう。覚悟を決めて唾を飲み込み、ゆっくりと深呼吸をする。探索者達が物陰から出ようとしたとき
「みんだ、ここまでづれてぎでぐれであでぃがとだ。。。(皆、ここまで連れてきてくれてありがとう)ごごがらは一人でいげるだよ。。。(ここからは一人で行けるよ)」
と声をかけ、立ち上がる。
ここで、探索者はセレファイスに戻るか、サイクロプスについていくかを決めることが出来る。また、探索者が望むなら物陰から見続けてもよいし他の選択肢をとってもよい。
探索者が各々の方針を決めたならば、ここからクライマックスフェイズに入る。
焼きつくされたセレファイスに戻るまたはドリームランドを旅するという選択を行った探索者はC.ENDとなる。
その他の探索者はこのままシナリオ継続となる。
探索者達はサイクロプスの後ろをついてゆく。歩き始めてすぐ、化け物はサイクロプスの巨体に気づきこちらを伺うように上空を旋回し始める。しばらくぐるぐると飛んでいた化け物の群れのうち一匹が興奮したように高音の叫び声を発した。
「ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!」
すると、呼応するように
「ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!」「ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!」「ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!ホォーゥッ!」
と皆がけたたましい叫び声を繰り返し始めた!精神を逆なでし、生存本能を覚醒させる強烈な殺意を伴った怪物の叫び声は探索者に恐怖を植え付けた!今にも逃げ出したくなるような怪物の群れに立ち向かわねばならないという状況に陥った探索者は1D3/1D8の正気度を喪失する。

探索者を庇うようにしてサイクロプスは入るにあたわざる都市に向かって前進を始めた。だが、想像以上に夜鬼の攻撃は激しくサイクロプスは徐々に体の自由を失っていく。
「ばぁ!は、はなせ!」
サイクロプスの必死な抵抗もむなしく、数の暴力に押し負け遂に体が宙に浮く。腕や足を振ろうにも無理矢理押さえつけられて身動きが取れないようだ。どんどん上空にサイクロプスの体は昇っていき、探索者が追いかける中高高度からアザトホスの中心めがけてサイクロプスが落とされてしまう。

探索者は墜落したサイクロプスを追いかけてアザトホスの入り口に辿り着いた。巨大なクリーチャーの顎で出来ているであろう壁は遠くで見るよりも高く聳え立っていた。周囲には食屍鬼が集めたであろう腐肉の鼻に刺さる匂いが充満し、思わず吐きそうになる。小走りで入り口を通り抜け、中を確認するとサイクロプスが食屍鬼によって囲まれ、攻撃されていた。

食屍鬼と戦闘しながら銀の扉の前までの移動
この戦闘はユドナリウムを想定しておりますので、ファイルが欲しい方はコメントにメールアドレスかなにか書いておいてください。

アザトホスの銀の扉前での儀式
探索者は巨大な銀の扉の前に立つと覚悟を決めて銀の鍵を強く握りこんだ。その時、探索者の記憶にかかっていたモヤが徐々に解け始めるのを感じた。
「オデはいいがらはやぐ逃げるだよ!」
背後から聞こえるサイクロプスの必死な声に妙な温かさを感じ、思わず振り返りそうになった。しかし、儀式を続けるためには振り向くことは出来ない。悔しいが、自力で歩くことが出来ない彼を引きずって扉の前まで連れてくる術は自分たちにはない。
「本当に鍵を捻りますか?振り返りますか?」
探索者は1度銀の鍵を銀の扉に向けて捻った。食屍鬼と夜鬼が潰れ、彼らの肉が千切り取られる音が聞こえる。本当はこの扉を越えるべきは彼ら達なのだ。本当ならば自分たちが身を挺して皆を故郷へと送るべきなのだ。
「本当に鍵を捻りますか?振り返りますか?」
探索者はもう1度銀の鍵を銀の扉に向けて捻った。鍵を持つ手が震える。どうしてもためらってしまう。このまま時間よ止まれと祈ってしまう。もう1度捻ってしまえば2度とパパとママに、会えなくなってしまうのだ。
「振り返るなぁあ!!!!」
何人もの声が背後から聞こえた気がした。
「本当に鍵を捻りますか?振り返りますか?」
3度鍵を捻った場合→A.ENDへ
振り返る選択を行った場合→B.ENDへ

エンディング

A.END 「ヨミガエリ」
探索者は振り返らずに銀の鍵を捻った。銀の扉はその儀式に呼応するように白い輝きを帯び始めた。徐々にその扉は開き始め、視界を塗り潰すほどの光量で探索者を包み込んだ。徐々に体は吸い込まれていき、意識は朦朧となっていく。扉の奥へと身体全体が吸い込まれたとき、扉の隙間から彼らが見えた。閉まりゆく扉の向こう側では笑顔のお父さんとお母さんが貴方を送り出すように手を振っていた。

探索者達は覚醒世界へと帰還した。病院で先生や警察から話を聞き、新聞やテレビで自分たちの状況を理解するだろう。家族が全員死亡したショックに1D6/1D20の正気度を喪失する。また、炎による正気度喪失+落下による正気度喪失の合計値をシナリオ終了後の耐久力から引き、-2に達した場合その探索者は病院で死亡扱いとする。

B.END 「ヨビカエリ」
探索者は自分を抑えきれず、叫び声をあげるサイクロプスの方へと振り返った。これまで幾度となく救われてきたのだ。自分たちもサイクロプスを救わなければ!探索者達は怪物に群がられるサイクロプスを何とか覚醒世界へ連れ帰ろうとしたが、それは犠牲者が増えるだけの選択だった。探索者もろとも化け物に飲み込まれていき、最後の力を振り絞ったサイクロプスに引き寄せられる。
「あんたはバカだねぇ。お父さんとお母さんなんて置いてけばよかったのに。本当に親不孝者だよ。先に行ってくるから、迷子にならないようにちゃんとついてくるんだよ」
そうかすかに聞こえた後、動かなくなったサイクロプスの胸の中で探索者は体を食いちぎられ、最期を迎えた。

C.END 「ドリームランドの旅人」
サイクロプスと旅路を別つことを決めた探索者は潜んでいた岩陰から故郷へ無事帰れることを祈りながら、一旦ガクへ戻ることを決めた。危険な思いはするかもしれないが、一度来た道だ。気を付けて引き返せば帰れるだろう。そう考えて、今回の旅を終わることとした。とてつもない疲労感から探索者は安全だと思われる場所で丸一日気絶するように眠りについた。体調を整えると探索者はガクへと引き返すために歩を進めることにした。話し相手もいないから、と今までの旅を思い出そうとした。あれ?自分はどこからここへ来たのだ?自分はタナール丘陵からやってきたはずだが、あそこに人は住めないはずだ。なんとなく記憶がぼやけて思い出せない。自分の故郷はどこだったのか?探索者は今までの旅の記憶が徐々に薄れていくことに不安を感じる。怖い。どこに帰ればよいのか分からない。探索者は故郷を求めてあてもなくドリームランドの旅を始めた。

報酬

覚醒世界へ生還した 1D20
両親とお別れをした 1D8
ガクを救った 1D10
スニドを殺害した 1D6
ドリームランドを楽しんだ 1D6

シナリオ終了後のプレイヤーへの解説

まずこのシナリオは、探索者の両親がスキー旅行に行こうというところから始まります。探索者の家族はそれぞれツアー会社と契約し、休暇を使ってツアーバスに乗ってスキー場まで行くこととなりました。そしてあなた達の家族は偶然同じバスに乗り込むこととなります。更にその日は非常に寒く、エンディングにもあるように不幸にも事故に遭います。このバス落下がトリガーとなって探索者はドリームランドへと送られます。というのも、若ければ若いほど人間はドリームランドに行きやすいという性質を持っています。これは理論的な考えがまだ未熟で、精神がドリームランドに適応しやすいためです。また、ドリームランドに行くことへの引き金の一つとして、高所からの落下があります。そのため、探索者の魂は神によって引き抜かれドリームランドへと送られました。送られた場所は時間の停止したセレファイスの神殿。神の考えることは分からないのでどうして送られたのかはわかりません。探索者はトルコ石の神殿に突然生まれ落ち、ナス=ホルタースの神官に囲まれながら、ただひたすらに『死んだ。お母さんもお父さんも自分も死んだ。会いたい。』と繰り返すのみでした。

みかねたクラネス王は彼らの記憶が徐々に曇るように呪文をかけました。具体的には1ヶ月程度すると記憶が思い出せなくなるような魔法です。この魔法によって落ち着いた探索者にクラネス王は何の援助もせず、セレファイスに住ませることにしました。何故なら、探索者が突然神殿に現れたことに対して神託が降りてこなかったからです。ドリームランドでは神が実在し、崇敬の対象であり覚醒世界よりもそれは身近なものです。もし探索者を傷つけて神の怒りに触れたり、探索者と仲良くなって神に嫉妬されれば国など一瞬で灰と化します。ドリームランドの住人は神を畏れながら生活しているのです。そのためクラネス王は詳しい理由は説明せずにセレファイスの住人に探索者とはある程度距離を置いて生活するように求めました。更に、探索者がセレファイスに愛着を持ち、神が必要と感じたときにセレファイスを捨てられるように不用意な援助を行うことを良しとしませんでした。

ここから実際のセッションは始まります。探索者は数ヶ月、数年、もしかしたら数十年住んでいたのかしれません。ですが、時は来ました。あなた達は彼らにセレファイスを捨てさせるために自らのキャラクターを創造したのです。強い自我を持ち始めた彼らは積極的にセレファイスで動き始めます。そして、岩の噂を聞きつけアラン山へと行きサイクロプスと出逢います。

冒頭で説明したようにバスは事故によって火の海に包まれました。探索者の両親は先にドリームランドに旅立った子供の体を命がけでバスの外へと逃がそうとしましたが、炎によって死亡しました。両親の魂は墜落現場の近くに偶然存在したドリームランドへと繋がる銀の扉へと吸い込まれていきました。そのため、探索者とはドリームランドへの入り方が異なります。そして入るにあたわざる都市の扉からドリームランドへと入った両親達は大量のグールに襲われますが、子供を助けなければならないという同一の意識が魂を融合させ、巨大で屈強なサイクロプスとなります。ですが、多くの人間が寄り集まったものは自我を失い、知性をも失いました。結果として巨大な肉体には「地球に帰ること・子供を助けること」という2つの意識のみが残りました。食屍鬼と夜鬼をすり潰しながら、命からがらセレファイス方面へと逃げたサイクロプスは力尽き体を回復させるために巨大な岩石に擬態し、数年に及ぶ休眠状態へと移行しました。これがシナリオ中に出てくる巨大な魔力反応のある岩石です。探索者が近づくと、存在を感じ取り復活するようになっています。こういった背景があるため、食屍鬼と夜鬼には強い憎悪を抱かれていて、夜鬼に捜索されているということです。

それでは、少し話が戻りますが探索者に出会うまでのサイクロプスの話をすることにします。探索者はサイクロプスとセレファイスに戻ることになります。ちなみに氷漬けになった男はガクから逃げ出した男です。セレファイスに戻った途端集中砲火にあったサイクロプスでしたが、あれは探索者がサイクロプスと共にいることを把握したうえでのハラグリムによる独断行為でした。セレファイスの守護が使命であるハラグリムは言ってしまえば腫れ物扱いの探索者の処遇について悩んでいました。何かあれば理由を付けて事故に見せかけて殺そうとするほどに。ですが、ハラグリムも人間です。一応はセレファイスの住人である彼らを殺そうとしたことを反省したうえ、崇拝しているクラネス王に咎められたため手を出さないことにしました。クラネス王と話し合い今後について、どうやら考えがあるらしいと思ったハラグリムは出来るだけ探索者に寄り添うようになります。(ややぶっきらぼうですが。)一方クラネス王はというと、サイクロプスに微塵も悪意を感じなかったことと、サイクロプス自体が神託なのではないかと考えからハラグリムには知ったような顔をして一旦セレファイスに運び込むことを決めます。このサイクロプスへの攻撃が実はセレファイス襲撃のトリガーとなっているのです。サイクロプスが大量に流した血を嗅いだドリームランドを巡回中の夜鬼が少しずつ情報共有を始めます。そして、わずか数日で周辺の夜鬼に情報共有がなされ、サイクロプスを探していた夜鬼達がセレファイスへと集まったのです。

ここからはクラネス王についての話になります。クラネス王は探索者が覚醒世界の住人だと一発で分かりました。何故なら身につけていた衣服があまりにも高等な技術で編まれた物だったからです。未来の覚醒世界の物だと確信したクラネス王はうっかり誰かが覚醒世界のことを探索者に言ってしまわないように服を剥ぎ取り、このことを黙っておきました。更に話を聞く限りでは探索者の身体はほとんど死体に近いであろうと推測します。もし探索者の発狂が解け、自我を取り戻したらその後の探索者に2パターンの不幸が降りかかると考えました。
1つ目はすでに身体が死んでいる場合。この場合、探索者は覚醒世界に戻ることができません。
2つ目は生きてはいるが、直ぐに死亡する場合。この場合、探索者は生きた身体を残したまま時間の進まないセレファイスにいるためこの状態が維持されます。

前者はクラネス王が陥っている状態です。彼は痛いほどこの辛さを知っています。後者ははもしかしたら覚醒世界へ帰ることができるかもしませんが、セレファイスから遠く離れれば時間が進み出すので下手をすれば旅の半ばで覚醒世界の身体が死ぬかもしれないし、もし帰れたとしても直ぐに死ぬかもしれないといういわば博打打ちの選択肢です。恐怖でセレファイスの外に出ることはできないでしょう。であれば、何も知らないまま平和にセレファイスで過ごすという選択肢もありなのではないかと考え、探索者の記憶を呪文で消すことにしました。1ヶ月の間に探索者の記憶は順調に消え、発狂も無事収まりました。自分と同じ思いをしなくてよかったと思ったクラネス王は神の御意向もあるので出来るだけ不干渉を貫き、セレファイスに在住させました。(クラネス王は心優しいので探索者の方から干渉した場合、無碍には扱いません)
ここから話を元に戻します。サイクロプスがセレファイスに到着してからですが、サイクロプスの扱いに困ったクラネス王はハラグリムに半ば押しつける形で危害を加えないことを条件づけることで扱いを一任しました。流石に戦闘面ではハラグリムの方が長けていますし、信用していました。更にクラネス王は一国の都市の王ですから1つのことに時間的リソースを消費するほど暇ではありません。(時間の進まないセレファイスで時間的リソースという表現はおかしいかもしれませんが)

そして、探索者が色々調べる中でサイクロプスの故郷を目指すという話が出たときハラグリムは目の上のたんこぶが消えると安堵しますが、ドリームランドでの旅が生半可ではないことを知っているため、助言を行います。一方クラネス王は2つの思いが同居します。探索者をセレファイスで平和に住まわせたい思いと、この旅が神からの神託であれば行かせなければならないという信仰心です。クラネス王の心は大いに揺れていました。そのため、探索者が情報収集のためクラネス王を訪ねた時、悍ましい情報や外に出て役に立つ情報を言い渋ったのです。
ここから時を進めて、前編の最後にセレファイスが夜鬼に襲われたときクラネス王はやはり神の怒りに触れたと思いました。サイクロプスを傷つけたことがトリガーだと気付いたのです。ですが、クラネス王はセレファイスが蹂躙されることに勿論悲しみこそしましたが怒りなどありませんでした。むしろ神の怒りに触れて、この程度で済んでよかったとさえ思っているでしょう。何しろニャルラトテップなどの上位の神格を想定していたので、少なくともドリームランドの存在自体を消滅させられる程度は考えていました。
また、探索者に対してはセレファイスの時が進み始めたため最早危険なセレファイスに留まっても仕方がないと追い出すために『ここに君達の居場所はない』と伝えます。記憶を曇らせた魔法を解く余裕もなければ、覚醒世界への帰還の可能性も殆ど閉ざされている探索者にせめて健やかに生きて欲しいとそう願っていたかもしれません。

その後は後編の通りですが、基本的には旅を楽しんでもらう程度に作ってあるので旅路の詳細については触れません。説明が必要なのはスニドについてと、ガクでの出来事についてになります。スニドはドリームランド全体で最も偉大な泥棒でした。彼の行為は伝説の領域になり、彼の名前が言及されるときはいつも、商人は自分の商品に神経質な目を向けるようになりました。彼は大昔にクッパル=ノムボにあったゴルトスの都市に住んでいた暗き放浪者と呼ばれる人々の血を継いでいます。他の暗き放浪者と同じように彼の顔は浅黒く、砂漠に適した服装を好んでいます。

本シナリオでは六王国を放浪し、伝説の大盗賊として名を馳せていたスニドでしたが遂にドリームランド西部のクッパル=ノムボにて捕らえられました。もたらした被害と己の欲望に忠実な犯行を加味して、情状酌量の余地なしとして全財産の没収と処刑を言い渡されたスニドでしたが、せめて命だけでも守ろうとその技術を駆使して脱獄を行いました。自分に有利な地形である砂漠の広がった西側には追手がかかると踏んだスニドは敢えて東側へと逃げることを選択し、セレファイス行きの船に忍び込むことで海を渡ることに成功しました。更に東へ逃げるために、スニドは身分を偽りガク行きの隊商に紛れ込んで危険な道程を踏破しました。更に夜鬼や食屍鬼、盗賊によって不安定な状況に陥っていたガクに辿り着いた彼は付け入る隙があると踏み、自身を捕まえるための追手を始末するためにガクを利用することを考えました。
まず、近辺を根城にしている盗賊と技術提供とよりよい実入りの保証を餌に結託しました。更に、食屍鬼と仲間になる合言葉を知っていたスニドは同盟を組んでいる夜鬼も含めて味方につけました。軍勢を率いたスニドは1人での放浪の旅を止め、自身の安寧を保つためにガクの住民を脅し、ガクに入り込んだ人間を夜に忍び込んでは処理させていました。そのためガクからの香辛料が隊商によって届かなくなったのです。村人はやってくる人々を殺すことに対する罪悪感に苛まれ、スニドによって食料を奪われ自身の生活も困窮しました。遂に耐えきれなくなった村人の一部がガクを出てユスの修道院やアラン山へと逃げだしましたが、情報漏洩阻止のため大抵の村人は盗賊や食屍鬼、夜鬼によって捕らえられ命を落としました。運と体力のあった村人は逃げ出せましたが、アラン山に対しての情報をほとんど持っていなかったガクの住人は自由を求めて氷漬けになり死んでしまいました。この村人がアラン山で出会った男になります。

最期に入るにあたわざる都市についてですが、シナリオ中でガクの村人がアザトホスという名前で呼んでいました。これは大昔に起きたドリームランドの重大な危機にちなんでつけられています。その危機とはアザトースの分体とその配下である上位の神格がドリームランドを喰らおうと侵食してきたというものです。当時、大量の戦士と魔術師が集められ、数年をかけてゆっくり降臨しているアザトースと無限に湧いてくる神格を退散させるために多くの命が散っていきました。この時に拠点として作られたのが5本の岩で構築された巨大な魔法陣です。何年もかけてここを拠点としてアザトースを退散させることに成功しましたが、今ではその残滓に惹かれ多くのクリーチャーが棲みかにしています。そのため中に入って出てきた者は一人として記録されていません。

シナリオタイトルに込めた意味

探索者が銀の扉の前で儀式を行うことはすなわち、覚醒世界へと魂が戻り夢から醒めることに他なりません。夢の中でクラネス王にかけられた魔法によって朦朧としていた記憶はどんどん蘇ってくるのです。自分が何者であるかを思い出し、見た目は変わってしまっても魂の波長で最後はサイクロプスが親であることを確信しました。ここでシナリオ終了となります。
シナリオ名ヨビカエリに込めた意味はサイクロプスの呼ぶ声に振り返る選択肢、ヨビカエリとサイクロプスを置いて覚醒世界へと戻るヨミガエリの韻を踏ませたものになります。

シナリオ全体の構成としては前編を覚醒世界の事故を踏襲して作ってあります。
覚醒世界
バスで雪山へ→落下および炎上→親の力によってバスの外へ

ドリームランド
アラン山へ→夜鬼によってセレファイスを燃やされ、空中から落とされる→サイクロプスの力で覚醒世界へ

Default dc97b68ac5e45fe6e796100df0104bd212cb6cb56de14e1772ab29062c337ef0

Twitter @shumiyouacc1 今後過去シナリオや新作シナリオをBOOTHを通じて頒布予定です。誤字脱字の訂正、読みやすさを意識した階層、キーパリングを円滑に行う上でこれまで作成してきたデータシートなどを付与することで有料にする予定です。シナリオを気に入ってくださった方は応援のほどよろしくお願いします。

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