2024年04月14日更新

【CoC7版ソロ】フランボワーズ・ティーハウス

  • 難易度:★★|
  • 人数:1人~1人|
  • プレイ時間:1~2時間(ボイスセッション)

喫茶店『フランボワーズ・ティーハウス』を舞台としたクローズドシナリオ。
甘い香りに包まれながら、緊迫した2時間を探索者と共にお楽しみください。

※本シナリオのリプレイ化をご希望の方は作者のTwitterアカウントのDMまでご連絡ください。

※本作は「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『新クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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ストック

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●レギュレーション

システム:クトゥルフ神話TRPG第7版
人数:1人
制限時間:2時間
推奨技能:〈目星〉〈図書館〉
難易度:☆☆
備考:ロスト有。神話生物の独自解釈有。

●シナリオ背景

 かつて、魔術による時間遡行を試みた魔女がいた。斎藤というその魔女は、禁忌を犯した他の例に漏れることなく、ティンダロスの猟犬に命を狙われるようになった。
 追い詰められた斎藤が助けを求めたのはイグという邪神だった。イグは蛇人間に崇拝されており、グレート・オールド・ワンにしては珍しく信者に慈愛の心を持って接する神である。イグは斎藤にある条件を呑ませた上で、自身が支配する領域(祠の中)に斎藤をかくまった。
 斎藤が呑んだ条件とは、この土地に祀られているイグの聖なる蛇に、毎月生贄となる人間を捧げることである。斎藤は生贄を捕らえるため、周辺に住んでいる蛇人間に協力を仰ぎ「人間が入って来る空間」と「人間を外に出さない仕組み」を作り上げた。それぞれ「喫茶店」と「血清フレグランス」である。
 斎藤は喫茶店の扉に細工を施し、あらゆる時代に繋がるように改造した。その結果、喫茶店は様々な時代の蛇人間が交流できる場となった。蛇人間たちはそのお礼として食料や生活必需品を持ち込むことで斎藤の生活をサポートするようになり、互いに良好な関係を築いていた。
 しかし、斎藤は長い時間を喫茶店の中だけで過ごしたことにより、精神に異常を来すようになっていた。何よりも、自身が助かるためとはいえ毎月人を犠牲にすることに途方もない罪悪感を抱えていた。今の彼女は、自身を助けてくれる存在を待ち望んでいる。そんな方法はないと知りながら。
 本シナリオは、そんな喫茶店に探索者が迷い込んだことから幕を開ける。

●シナリオの進め方

◆作中の時間経過について
 本シナリオはリアル時間と連動して進行する。リアル時間で10分が経過すると作中でも10分が経過する。故にレギュレーションにはプレイ時間の目安ではなく「制限時間」が記載されている。なお、本シナリオのプレイ時間の目安は90分ほどである。
 このことはPLに対して秘匿した状態でセッションを開始する。PLは探索を通して自ずとリアル時間と連動していることに気が付くだろう。KPはPLが時間経過に気づきやすくなるように、作中での現在時刻を逐一PLに報告しながらセッションを進めると良い。

◆店員の行動について
 本シナリオをクリアするためには、店員の目を盗んで店内を探索する必要がある。そのため本シナリオでは店員の行動にわかりやすい制限を設ける。
 店員は飲み物を準備するのに5分、食べ物を準備するのに10分、資料を探すのに10分の時間を要し、その間は厨房や資料室から出てこないものとする。店員は注文を受ける時に「〇分ほどお時間を頂きますが、よろしいでしょうか」と客に確認を取るとよい。この発言が探索者へのヒントになる。

◆ボーナスダイスについて
 本シナリオでは時間をリソースとしてボーナスダイスを獲得する行動を推奨する。具体的には、探索者がひとつの行動に時間をかけて慎重に判定する場合、5分につき1つのボーナスダイスを獲得できるとすると良いだろう。

●イベント時系列表

 以下に本シナリオで発生するイベントの時系列を纏める。ただし、これらのイベントは探索者の行動や店員の手が回らないなどの理由により、時間がずれる可能性がある。KPは状況に応じて柔軟に処理を行うこと。
15:00
・探索者入店。注文。
・店員、探索者の注文を受け厨房に向かう。
・客①、トイレに向かう。
15:05
・客①、席に戻る。
15:15
・客②入店、店員に『血清の資料』を渡し、別の資料を要求。
・店員、資料室に向かい『血清の資料』を本棚に保管。
15:25
・店員、客②に資料を渡す。
・客②、資料を受け取り退店。
15:30
・客①、トイレに向かう。
15:35
・客①、席に戻る。
15:40
・客③入店、木苺のショートケーキとフランボワーズティーを注文。その後勉強を始める。
・店員、客③の注文を受け厨房に向かう。
15:55
・店員、客③の席に木苺のショートケーキとフランボワーズティーを届ける。
16:00
・客④入店、ミートソースのスパゲティを注文。
・店員、客④の注文を受け厨房に向かう。
・客①、トイレに向かう。
16:05
・客①、席に戻る。
16:10
・店員、客④の席にミートソースのスパゲッティを届ける。
16:20
・客①退店。
16:50
・客③退店。
・客④退店。
17:00
・閉店。イグの聖なる蛇入店。

●シナリオクリアチャート

①入店する。
②棚を調べてフレグランスを発見する。
③本棚に一番近いテーブルを調べて『テーブルのメモ』を発見する。
④ケーキを注文するなどしてフォークを入手する。
⑤フォークを使って私室の鍵を開ける。
⑥私室の棚を調べて資料室の鍵を入手する。
⑦鍵を使って資料室に入る。
⑧10分使って資料室を探索し『血清の資料』を発見する。
⑨鼻をつまむ等によりフレグランスの効果を受けないようにする。
⑩出入口の扉を開けて退店する。

●導入

・探索者は私用で普段あまり来ない町に来ている。
・時刻は15時頃。少し休憩したいと感じていた時に、喫茶店の前を通りがかる。
・喫茶店の名前は『フランボワーズ・ティーハウス』
・入店するとカランカランとベルが鳴り、甘酸っぱい食欲をそそる香りが鼻腔をくすぐる。
・店員から「いらっしゃいませ」と声がかけられる。店員は黒髪の女性。年齢は20代半ばほどに見える。
・店内に客は自分の他に1人、おばあさんが本棚近くの席に座っているだけ。
・店員は「お好きな席へどうぞ」と着席を促す。
・席に着くと店員にメニューを渡される。
・店員は「当店は17時閉店となりますので、それまでにご退店ください」と探索者に伝える。
・探索者が注文すると、店員は必要時間を伝え、探索者の了承を得る。
・注文を終えると、客のおばあさんが店員に「斎藤ちゃん、お手洗い借りるわね」と伝え2階へ。
・店員は厨房へ。
以降は17時まで探索時間となる。時間指定のイベントに注意しつつ進行すること。

●探索(1F)

◆1F全体
・大きく分けて喫茶店スペースと厨房に分かれている。
・扉は出入口のみ。窓はなく、テーブルは6個。棚と本棚、2階へ続く階段がある。
▽〈目星〉
・テーブルの角、部屋の角など、店内すべての角が丸く削られていることに気づく。
▽本棚に最も近いテーブル(客①のテーブル)に〈目星〉
・テーブルの裏にメモが貼り付けられている。
・探索者に『テーブルのメモ』の情報を開示する。

◆扉
・開閉時にカランカランとベルが鳴る、喫茶店によくあるタイプの扉。
・ドアノブは付いておらず、押し引きするタイプ。
▽探索者が扉を開けようとした場合
・探索者の体が硬直する。扉から手を離すと動けるようになる。
・まるで体がドアを開けることを拒んでいるかのように感じるだろう。
・この奇妙な体験をした探索者は0/1の正気度喪失。

◆本棚
・店内の装飾としての役割がメインなのか、見たことのない言語で書かれている本が多い。
・数は少ないが日本語や英語の本も置いてある。そのほとんどは数年前の小説やエッセイ本だ。
▽〈図書館〉
・1冊の日本語で書かれた本にメモが挟まっていることに気づく。
・探索者に『本棚のメモ』の情報を開示する。

◆棚
・観葉植物などが飾られたディスプレイ棚。
▽〈目星〉
・ルームフレグランスが置いてあることに気づく。
・店内に漂う甘酸っぱい匂いはここから漂っていることがわかる。

◆厨房
・かなり広めの厨房だ。大きな冷蔵庫と調理台、食器棚の他、神棚が置かれている。
▽冷蔵庫を調べる場合〈目星〉
・ケーキやプリンの他、各種料理の材料が揃っている。
・〈幸運〉に成功すれば好きな食材や料理を手に入れることができる。
▽調理台を調べる場合〈目星〉
・大きくて作業がしやすそうな調理台。
・〈幸運〉に成功すれば好きな調理道具を手に入れることができる。
▽食器棚を調べる場合〈目星〉
・食器棚に隠されていたメモを見つける。
・探索者に『厨房のメモ』の情報を開示する。
・フォークなどの食器を手に入れることができる。判定不要。
▽神棚を調べる場合〈目星〉
・白い蛇が描かれたお札が納められている。白い蛇の額には三日月の印が付いている。

◆階段
・2階へ続く階段。

●探索(2F)

◆2F全体
・階段を上るとやや埃っぽい匂いがする。1階と異なり生活感があるように感じるだろう。
・風呂、トイレ、斎藤の私室、資料室があり、すべての部屋に扉がある。
※2階はフレグランスの臭いが届いていないので、ドアを開けることができる。

◆トイレ
・使用中の時を除き鍵はかかっていない。洋式。
・とくに目ぼしい情報はない。

◆風呂
・鍵はかかっていない。中に入ると脱衣所と風呂場に分かれている。
▽〈目星〉
・脱衣所の壁紙が剥がれかけている。調べると、壁に隠されたメモを見つける。
・探索者に『風呂場のメモ』の情報を開示する。

◆私室
・扉に鍵がかかっている。
・フォークを使って鍵を開ける場合〈鍵開け〉+30%の補正が入る。
・床には巨大な魔法陣が描かれており、それを避けるようにして机、ベッド、棚が置かれている。
▽魔法陣を調べた場合〈クトゥルフ神話〉
・詳細は分からないが時間遡行を試みた術式のように見えるだろう。
▽机を調べる場合〈目星〉
・日記帳を発見する。
・探索者に『日記帳』の情報を開示する。
▽ベッドを調べる場合〈目星〉
・ベッドの下にメモ用紙が隠されている。
・探索者に『私室のメモ』の情報を開示する。
▽棚を調べる場合〈目星〉
・資料室の鍵を発見する。

◆資料室
・扉に鍵がかかっている。こちらの鍵はフォークでは開けられない。
・本や資料がぎっしりと詰まった本棚がいくつもある。ほとんどは読めない言語で書かれた本だ。
・魔導書『エルトダウン・シャーズ』や英和辞典もこの本棚に入っている。
・本の量がとても多いため〈図書館〉のロールには10分の時間を要するものとする。
▽〈図書館〉
・先程、下の階でお兄さん(客②)が店員に返却していた資料を見つける。
・日本語で纏められた紙の資料だ。
・探索者に『血清の資料』の情報を開示する。

◆階段
・1階へ続く階段。

●エルトダウン・シャーズ

・詳細なデータは基本ルールブック222ページ『エルトダウン破片群』参照。
・店員に書名を伝えると少し驚いたような顔をされるが、資料室から持ってきてくれる。
・読むには〈英語〉が必要。内容を読み込むには2時間では足りない。
・英和辞典を使用すれば翻訳も可能であるが、1ページにつき10分ほど必要。
▽〈目星〉
・とあるページにメモ用紙が挟まれている。
・メモ用紙には何も書かれておらず、栞の代わりに使われているように感じる。
▽メモ用紙が挟まれていたページに〈英語〉あるいは英和辞典を使用して翻訳
・探索者に『ティンダロスの猟犬について』の情報を開示する。

●支配血清

・蛇人間は毒物に精通した種族である。詳細はルールブック268ページ参照。
・彼らが扱う薬品の中には人間の行動を限定的に支配するものが存在する。それが支配血清である。
・斎藤は蛇人間から支配血清を受け取り、フレグランスに加工して1階に設置した。
・これによりフレグランスが届く範囲内の人間は扉を開けるという動作ができなくなる。
・フレグランスの影響を受けるのは人間(探索者と斎藤)のみである点に注意。他の客は蛇人間であるため、影響を受けない。
・フレグランスが届く範囲は1階全体である。2階には届かない点に注意。

●2階の探索が店員にバレた時の処理

・探索者が私室や資料室にいることが店員にバレた場合、店員は探索者に1階に戻るよう求める。
・探索者がその要求に応じない場合、店員はフレグランスを2階に持ってきて探索者を部屋に閉じ込めるといった強硬策に出るだろう。そのまま17:00になれば、バッドエンドAへ進む。

●問題行動時の処理

・探索者が店員や他の客を攻撃した場合、探索者に反撃する。戦闘で処理を行うこと。
・探索者が店の物を破壊するなどして角を作り出そうとした場合、店員や他の客は全力でそれを阻止しようとする。戦闘で処理を行うこと。
・探索者が角を作り出すことに成功した場合、1d6ラウンド後にティンダロスの猟犬が現れる。他の客らはそれまでに店から逃げ出すだろう。ティンダロスの猟犬が現れたら、戦闘を行うこと。ティンダロスの猟犬のデータは基本ルールブック293ページを参照。
・探索者が気絶した場合、17:00まで起きないものとする。そのままバッドエンドAへ進む。

●脱出直前の演出

・鼻をつまむ等によりフレグランスの効果を受けない状態になった際、以下の描写を行う。
 嗅覚に蓋をしたことで他の感覚がより鋭敏になったのだろうか。夢から覚めるような感覚と共に、君が見ていた世界がゆっくりと真の姿を現した。
 店の床には無数の白い蛇が蠢き、君の足元を這いまわっている。今まで他の客がいた席には蛇の頭部を持つ怪物が座っており、2つにわかれた舌先をチロチロと覗かせながら、巨大な黄色い目でこちらを見ていた。
・この異様な光景を目撃した探索者は1/1d6の正気度喪失。
▶探索者が一人で店から出る場合
・店員は瞳からぽろっと雫をこぼしながらも、どこかほっとしたような表情をしている。
・恐怖に震えたような小さな声で「ありがとうございました」と言い、探索者を見送ってくれる。
▶探索者が店員を連れ出そうとした場合
・扉を出る直前、店員は手を振り払い、探索者だけを外に逃がす。
・店員は扉が閉まる直前に「ありがとうございました」と伝える。
・店員はこの時、初めて探索者に笑顔を見せる。
◆蛇人間の行動について
 蛇人間の客らは探索者を引き留めるようなことはしない。探索者が逃げても斎藤を生贄にする選択肢が残っているからだ。さらに言えば、彼らは別の時間軸で暮らす蛇人間であり、この時間軸で捧げる生贄には関係がない。彼らは彼らの時間軸でそれぞれ生贄を捧げているのだ。
 喫茶店がなくなれば彼らも困るのではないかと考えるかもしれないが、それもない。何故なら喫茶店の扉は様々な時間軸に通じているからである。彼らが次に喫茶店に入る時には、また斎藤が入れたお茶を楽しむことができるのだ。

●トゥルーエンド

・探索者が17:00までに自分で扉を開けて店の外に出た場合、以下の描写を行う。
外に出ると、そこは君が入って来た時と同じ住宅街だった。背後を振り返れば、そこに喫茶店はなく、代わりに古い祠が立っていた。祠には白い蛇が描かれたお札が祀られていた。
 祠に手を合わせるか、まっすぐ帰るか。それは探索者の自由であるが、どちらを選ぼうとも、もう不思議なことは起こらないだろう。何故なら君は穏やかな日常に帰って来たのだから。
→シナリオクリア!

●バッドエンドA

・探索者が17:00までに店の外に出られなかった場合、以下の描写を行う。
気が付くと、君の背後に店員が立っていた。
「時間です」
 店員がそう呟くと、カランカランと音を鳴らしながら、出入口の扉がひとりでに開く。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。ご主人様」
 店員が恭しく頭を下げると、それは姿を現した。丸太のような胴体が地面を這い、巨大な口から細長い舌がチロチロと覗かせている。それは額に三日月の印が付いた白い大蛇だった。
「お食事は既にご用意しております。どうぞ、お召し上がりください」
 店員の言葉を聞くと、大蛇の目がぎょろりと君の方を向いた。その瞬間、君の身体は硬直した。
指ひとつ動かせず、瞬きすら許されないまま、大きく開かれた口が君の身体を呑み込んだ。
「本日はご来店いただき、ありがとうございました。どうかごゆっくり、お休みください」
 最後に耳に届いたのは。店員の冷たい声だった。
→キャラクターロスト

●バッドエンドB

・探索者が他の客と一緒に店の外に出た場合、以下の描写を行う。
・客の口調や名称は適宜修正すること。以下は客①の場合である。
 外に出ると、そこには君の見知らぬ光景が広がっていた。背後を振り返れば、そこに喫茶店はなく、代わりに古い祠が立っていた。
よく見ると、祠の屋根の角からモクモクと煙のようなものが立ち上がっていることに気づくだろう。
「あら、もう嗅ぎつけたの。優秀なワンちゃんね」
「それじゃあ、私は帰るわね。あなたも斎藤ちゃんみたいに逃げられるといいわね」
 そう言うと、おばあちゃんはその場から姿を消した。
 その後のことを描写する必要は、もうないだろう。何故なら君の運命は既に決まっているのだから。
「一度猟犬と出会ってしまった者は、決して逃げ果せることはできない」
 エルトダウン・シャーズの一節を読みながら、斎藤は苦い紅茶を口にした。
→キャラクターロスト

●クリア報酬

トゥルーエンドに辿り着いた場合、以下の報酬を受け取る。
・1d6点の正気度回復
・クリティカル/ファンブルした技能の成長ロール
 また、人によっては魔導書『エルトダウン・シャーズ』を持ち帰る者もいるだろう。この魔導書を読み込む場合は、基本ルールブック記載のデータに従い、正気度喪失の後に呪文を獲得すること。

●登場人物

◆店員
STR:30 CON:50 POW:70 DEX:50 APP:70 SIZ:50 INT:70 EDU:90 SAN:0
 喫茶店を切り盛りする女性。名前は斎藤。年齢は20代半ばほど。一部の客には研究資料の貸し出しも行っている。資料は探索者でも借りることができ、書名を伝えれば2階から持ってきてくれる。
 生活のために仕方なく喫茶店をやっているだけだが、料理の腕前は確か。厨房、私室、資料室には他人を入れたがらないが、〈説得〉〈言いくるめ〉などには応じることもあるかもしれない。
 生贄を集めることに疲れており、あまり元気がない。外の世界に出いと思っているが、喫茶店から1歩でも出ると死ぬことをよく理解しているため実行には移せない。探索者に連れ出されそうになっても、決して外に出ることはないだろう。
 本シナリオにおいて彼女を救う道は存在しないが、彼女が陥っている状況はほとんど自業自得、因果応報の結果であるため、あまり気にする必要はない。探索者は自分の命を守ることに注力してほしい。
 なお、トゥルーエンドにおいて探索者が脱出に成功すると、イグの聖なる蛇に捧げるための生贄がいなくなり、イグとの契約違反となる。そのため斎藤は罰として代わりに食われることになる。しかし、どうしようもない状況に置かれた斎藤にとっては死こそが唯一の救済なのかもしれない。探索者が外に出た際、少しだけほっとしたような表情を見せるのはそのためである。

◆客①(おばあさん)
 最初から店内にいるおばあさん。正体は蛇人間。探索者より5年ほど過去の世界から来ている。データはルールブック301ページを参照。アイスティーを飲みながら日本語のエッセイ本を読んでいる。
 年のせいかトイレが近く、30分おきに席を立つ。割と優しい性格で、シナリオに関係ないことであればいろいろな質問に答えてくれる。蛇が描かれたお札について聞かれれば、この辺を守護する土地神は蛇の姿をしているということを教えてくれる。
 退店時に扉の外に見えるのは探索者が入って来た時と同じ住宅街である。

◆客②(お兄さん)
 15:15に入店するお兄さん。正体は蛇人間。探索者より5年ほど未来の世界から来ている。データはルールブック301ページを参照。明るい性格で声が大きい。
 魔術の研究をしており、毎月のように斎藤と資料をやり取りしている。探索者に何の研究をしているのか聞かれた場合は化学の研究などと言って誤魔化す。
 退店時に扉の外に見えるのは更地である。探索者は知る由もないが、5年後の未来では祠の前にマンションが建つ計画が進んでいる。

◆客③(女子高生)
 15:40に入店する女子高生。正体は蛇人間。探索者より60年ほど過去の世界から来ている。データはルールブック301ページを参照。警戒心が強く、探索者にもあまり心を許さない。
 ケーキと紅茶を注文した後は学校の宿題を始める。探索者によっては、彼女が使用している教科書やノートがとても古いものであることがわかるだろう。
 退店時に扉の外に見えるのは田んぼである。60年前はまだ住宅街はできていなかった。

◆客④(おじさん)
 16:00に入店するおじさん。正体は蛇人間。探索者より10年ほど未来の世界から来ている。データはルールブック301ページを参照。年下には威張るような態度をとる。
 探索者が話しかけると「あ?」「今飯食ってんだよ」などと威圧的な反応をする。探索者の質問にもまともに答えてくれないだろう。
退店時に扉の外に見えるのは完成したマンションである。

◆メモを残した客
 シナリオ本編の前月に生贄となった男性。かなり積極的に店内を探索したが、ちょうど客②が資料室から『血清の資料』を持ち出していたため、扉を開けるためのヒントを得られなかった。

◆白い大蛇
 この土地で祀られている土地神にして祠の主。正式名称はイグの聖なる蛇。詳細はルールブック310ページを参照。

●メニュー

【food】
・タマゴのサンドイッチ(500円)
・ベーコンとトマトのサンドイッチ(600円)
・ナポリタン(600円)
・ミートソースのスパゲティ(600円)
・オムレツ(500円)
・オムライス(700円)
・木苺のショートケーキ(600円)
・木苺のチョコレートケーキ(600円)
・木苺のタルト(800円)
・木苺パフェ(1000円)
・バニラアイスクリーム(500円)
・タマゴプリン(500円)
【drink】
・フランボワーズティー HOT/ICE (200円)
・フルーツティー HOT/ICE  (300円)
・ストレートティー HOT/ICE  (200円)
・ミルクティー HOT/ICE  (300円)
・コーヒー HOT/ICE  (300円)
・フルーツジュース ICE ONLY (200円)

●情報(メモ・資料)

◆本棚のメモ
(震えた字で書かれている)
おしまいだ。時間が来てしまった。
後に私のような状況に陥った者が現れた際に役に立つように、私が集めたいくつかの情報をこの建物の中に隠しておいた。このメモを読んでいる者が時間までに脱出できることを願っている。
タイムリミットは17:00だ。くれぐれも気を付けてほしい。

◆テーブルのメモ
私室の扉の鍵穴は大きいうえに粗雑な作りになっている。フォークを使えば簡単に開けられる。

◆厨房のメモ
 数時間観察してようやくわかったことがある。出入口の扉は様々な場所に繋がっている。
 客はいろいろな場所からこの店に入ってきて、元の場所へと帰っていく。自分が元居た場所に帰るには、自分でドアを開ける必要があるようだ。
しかし、私が帰れない原因は一体何なのだろうか。

◆風呂場のメモ
 店に入った時から気になっていたことがあった。この建物の中にあるものは柱や家具に至るまで、ありとあらゆる角が丸く削られている点だ。角にぶつかると危険とは言っても、それでは天井の端まで丸くなっている理由が説明できない。
 しかし、その疑問を解消してくれそうな本を資料室で見つけた。『エルトダウン・シャーズ』という本だ。英語の本なので翻訳には少々時間がかかりそうだが、少し読んでみようと思う。

◆私室のメモ
(震えた字で書かれている)
 試しに棚を削って角を作ってみたら、そこから気味の悪い煙がモクモクと立ち上がって来た。もしもあの本に書かれた記述が本当なら、これ以上はいけない。そう思った私は角を丸く削り直した。
幸いそれで煙はおさまり、怪物が出てくることもなかったが、一手遅ければ私もどうなっていたかわからない。あまり突飛なことはせず、今は脱出方法だけを考えることにしよう。

◆日記帳
・文章の内容から日記であると推測できるが、何故か日付が書かれていない。
・ほとんどは喫茶店での日常的な出来事についての記録だが、ひとつ異様な記載が探索者の目に留まる。
 外に出たい。いつまでこんな店で店員の真似事なんかしないといけないのだろう。自業自得なのはわかっている。そもそも私が今生きていること自体が奇跡なのだ。これ以上は望みすぎというものだ。
 しかしそれでも、一度でいいから外に出たい。どうか、誰か私を、救ってください。おねがいします。もう、嫌なんです。外に出られないのも、人を、騙し続けるのも……。

◆血清の資料
 彼らが使う血清は人間の動きを制御できるとても便利なものだ。これを使うことで人間の「ドアを開ける」という動作を封じることができ、生贄を外に出さないようにすることに成功した。
 問題は効力が低いことと効果時間がとても短いことだ。無理な制限はかけられないし、食べ物に含ませても数分で分解されてしまうためあまり意味がない。なにか継続的に血清を摂取させる手段が必要だ。

◆ティンダロスの猟犬について
 時間遡行者にとって避けては通れない障壁は、言うまでもなくティンダロスの猟犬である。時間の角に住む猟犬は禁忌を侵した者に罰を与える。
一度猟犬と出会った者は決して逃げ果せることはできない。猟犬はあらゆる鋭角から姿を現し、そこにいるすべての命を喰らい尽くす。もしも猟犬から身を隠したいと考えるのであれば、角のない部屋に閉じこもることが唯一の方法と言えるだろう。しかし、それで何かが解決するわけではない。一歩でも外に踏み出せば、そこには無数の角が待ち構えているのだから。

●MAP

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