長い長い街道の半ばで旅人たちの疲れを癒す宿場町、ボーガンタウン。この町に立ち寄った紡ぎ手たちは、とある職工の少女と出会う。
「この町で唯一、あたしだけが正しい御標を知っている」
そう告げる少女の工房には、壊れた古いからくりが安置されていた。
※本作は「すがのたすく/F.E.A.R、KADOKAWA」が権利を有する「モノトーンミュージアムRPG」の二次創作作品です。
(C)2011 Tasuku Sugano / FarEast Amusement Research Co.,Ltd. 2016「モノトーンミュージアムRPG」
使用ルールブック:モノトーンミュージアムRPG (以下、MM)
使用サプリメント:カッサンドラの書架 (以下、書架)
演者レベル:3~4
PL人数:3~5人
時間:3時間
HO:なし
「半ばの町」と呼ばれる宿場町には、幾つもの宿が乱立していた。そのなかのひとつ、ボーガン荘という花のない地味な宿は、同業者に勝てず経営難に陥って廃業の危機に瀕していた。宿をひとりで切り盛りしていたボーガンという男は、自分の宿をもっと大きくして同業者を見返したいという一心から御標に逆らってでも金を集めることに執着し、徐々に伽藍へと変貌していった。
伽藍となったボーガンによって引き起こされた歪みの影響で、昔から半ばの町に御標を降ろしていた「からくりの語り部」に故障が発生。更に、町で唯一からくりの語り部を修理できる職工の夫婦もほつれが原因で急死してしまう。ボーガンは「歪んだ御標」で町の実権を握り、ボーガン荘を中心とした町づくりを開始。他の宿屋を駆逐して、町の名前もボーガンタウンへと改名した。
壊れかけていたからくりの語り部は、町が伽藍に支配されることを防ぐため、最後の力を振り絞って職工の夫婦の一人娘であるヴェリクトに「自分を直せ」という内容の「小さな御標」を降ろす。
そんな状況のヴェリクトの前に紡ぎ手たちが現れたところから、物語は幕を開ける。
長い長い街道の半ばで旅人たちの疲れを癒す宿場町、ボーガンタウン。この町に立ち寄った紡ぎ手たちは、とある職工の少女と出会う。
「この町で唯一、あたしだけが正しい御標を知っている」
そう告げる少女の工房には、壊れた古いからくりが安置されていた。
モノトーンミュージアムRPG『からくりの語り部』
――かくして、物語は紡がれる。
シーンプレイヤー:GMの任意 PCは全員登場する。
◆描写
涼しい風が肌を撫でる、のどかで平和な昼下がり。特にトラブル等もなく順調に今日の旅程をクリアした君たちは、予定よりも少しだけ早く宿場町へと辿り着いた。
町人A「おー、旅人さん方。ここは宿場町のボーガンタウンだ、歓迎するよ」
町人B「とりあえず宿屋に行くと良い。美味しいお茶とお菓子を出してくれるよ」
町に入ると、住人たちが次々と声を掛けてきた。彼らに案内されるままに町の中央に向かうと、そこには町の規模にそぐわないほど巨大な旅館が立っていた。でかでかと掲げられた看板には「ボーガン荘」と書かれている。
暖簾をくぐって中に入ると、すぐに畳の敷かれた広間に案内された。広間には君以外にも多くの宿泊客が集まっているようだった。その中に、紡ぎ手の気配を感じ取ることもできるだろう。
※ここでPCが合流する。自己紹介の後、PCは他のPC1人にパートナーを結ぶこと。
※財産ポイント1点で飲み食いできるものとする。特殊な効果は特にない。
そんなわけでお茶やお菓子を楽しみながら談笑していると、広間の前方にある舞台の垂れ幕が上がり、一人の老人が壇上に上がった。
ボーガン「えー、旅人の皆々様。遠路はるばるお越し頂きまして誠にありがとうございます。ワタクシは当館の支配人を務めております、ボーガンと申します」
広間から客の一人が指笛を鳴らす。それを聞いて他の客も声を上げて囃し立てる。
ボーガン「ご声援ありがとうございます! 当館ではお客様にごゆるりと羽を伸ばして頂くために様々なサービスを提供しております。料理に酒に温泉に、皆様の求める物は何でもございます。さぁ、ご新規のお客様も、ご継続のお客様も、良きお時間をお過ごしください。めでたしめでたし」
ボーガンが奇妙な言葉で挨拶を締めたその瞬間、紡ぎ手である君たちは世界に歪みが発生したことを検知するだろう。※「歪み表」(MM p.263)をROCする。
ボーガンは舞台袖に引っ込み、代わりに壇上には豪華な衣装で着飾った踊り子たちが上がって来た。それを見て周囲の客たちが立ち上がり、騒ぎ始める。一瞬のうちに、広間は喧騒に包まれた。
紡ぎ手である君たちは、この状況について話し合うために、一度旅館の外へ出ることになるだろう。
※PCが旅館の外に出たら、シーン2へ移行する。
シーンプレイヤー:GMの任意 PCは全員登場する。
◆描写1
ボーガン荘の外へと出てきた紡ぎ手たちだが、意見を擦り合わせた結果、支配人のボーガンはおそらく伽藍であるということで、概ね意見が一致することだろう。となればほつれが出ているはずだが、周囲を軽く見渡しただけではほつれは見られなかった。
▼難易度10縫製判定
▷全員失敗:PC全員の剥離値を+1して振り直し
▷1人以上成功:世界の理に介入してほつれを探したところ、小さなほつれの気配を察知した。
◆描写2
気配を辿って町の端へやってくると、そこには小さな工房があった。看板には「ヴェリクト工房」と書かれている。
扉を開けると、中から身体がしびれるような大声が響いて来た。
ヴェリクト「だーー!!チクショウ!! また壊れてらあ!!」
工房の中にいたのは、長い赤髪を後ろで乱雑に纏めた眼帯の少女だった。少女は工具を手に、人間と同じくらいのサイズのからくりをガチャガチャといじっていたが、君たちの存在に気付くとピタリと手を止め、狂犬のような形相を向けてきた。
ヴェリクト「誰だてめえら!! 見せモンじゃねえぞ!!」
ヴェリクト「お前ら町の人間じゃねえな? それなら丁度いい、少し付き合え」
ヴェリクト「あたしはヴェリクト・ライター。職工だ」
ヴェリクト「ワケあって、あたしはこのからくりを直さねーといけねーんだ。お前らも手伝え」
▼からくりを調べた場合
一見するとただの壊れたからくりのようだが、よく見ればひび割れたパーツの奥から虚無が顔を覗かせている。この故障がほつれによるものであることがわかるだろう。
◆描写3
ヴェリクト「こいつはからくりの語り部。壊れちまってるが、この町に御標を降ろす語り部だ」
ヴェリクト「あたしは死んだ両親の代わりに、からくりの語り部を直さねーといけねーんだが、こいつ、いくら直しても次から次へと故障個所が増えていくんだ。全然キリがねー」
ヴェリクト「だから、いっそのことパーツを全部取っ換えちまおうと思ってるんだが、3つばかり足りないパーツがあるんだ。お前ら、それを探して持ってきてくれ」
ヴェリクト「足りないのは『樫の歯車』『シナノキの編み紐』『ミスリルのゼンマイ』の3つだ」
ヴェリクト「この町で唯一、あたしだけが正しい御標を知っている。逆に言えば、この町の連中は他の御標に従ってるからあたし以外まともに動けねー。だから部外者のお前らの協力が必要なんだ。わかったらさっさと手伝え」
→ミドルフェイズへ進む。
ここでは5つのシーンを演出する。いずれのシーンもPCは任意で登場することができる。シーンプレイヤーは登場するPCの中からGMが選択すること。
各シーンの始めに、PCは「ボーガン荘」「ヴェリクト工房」「聖教会」「酒場」の中から1つを選択し、その施設へ行くことができる。GMは選択された施設の演出を行う。PCはそれぞれ別の施設を選択しても良く、同じ施設を選択しても良い。(※特定の条件を満たすことで選択肢に「水車小屋」「近隣の森」が追加される)
PCは1シーンにつき1回だけ、情報収集の判定か購入判定に挑戦できる。施設名の横に記載されている能力値は、その施設で行える情報取集判定で使用する能力値である。
5つ目のシーン(シーン7)が終了した時点でPCが「樫の歯車」「シナノキの編み紐」「ミスリルのゼンマイ」を所持していない場合はシーン8へ、所持している場合はシーン9へ移行する。
町の中央に立つでかでかとした旅館。支配人のボーガンの下、中居さん、料理人、踊り子、用心棒など、多くの従業員が働いている。
※最初は情報収集①のみ挑戦できる。情報収集①に成功したら情報収集②に挑戦できるようになる。また、情報収集③はPCが大時計を探す宣言をした場合に挑戦できる。
▼情報収集①:難易度11社会判定
▷失敗:とくになし
▷成功:聞き込みの結果、『水車小屋』に歯車がたくさんあることがわかる。次のシーンから、PCが行ける施設の選択肢に『水車小屋』を追加する。
▼情報収集②:難易度難易度12社会判定
▷失敗:人込みに酔ってしまった。1D6点MPロス。
▷成功:『水車小屋』の扉の鍵が『ヴェリクト工房』にあることがわかる。
▼情報収集③(大時計を探す判定):難易度10社会判定
▷失敗:人込みに酔ってしまった。1D6点MPロス。
▷成功:ミスリルの大時計を発見する。『ミスリルのゼンマイ』を手に入れる。
ヴェリクト・ライターが両親から受け継いだ、町の端にある小さな工房。
▼情報収集:難易度10意志判定
▷失敗:ヴェリクトに「うるせえ! さっさとパーツを探しに行ってこい!!」と怒られる。
▷成功:ヴェリクトが町のことについて以下のように教えてくれる。
この町は元々『半ばの町』という、長い長い街道の半ばほどにある宿場町だった。当時は多くの宿屋が乱立して鎬を削っているような、今とは違う活気を持った町だった。ある時、からくりの語り部が急に動かなくなった。さらに立て続けに町で唯一の職工であったヴェリクトの両親も原因不明の病で亡くなってしまい、からくりの語り部を修繕できる者がいなくなってしまった。
それから少し経った頃、ボーガン荘という旅館が台頭して、破竹の勢いで他の宿屋を淘汰して行った。支配人のボーガンという男は御標を降ろすことができるため、町の住人たちはからくりの語り部の代わりに彼の言葉に従うようになった。そうしてボーガン荘は町を呑み込む規模にまで成長し、町の名前もボーガンタウンに変わった。
ヴェリクトは両親の遺書に従い、職工の技術について勉強し、からくりの語り部の修繕を試みた。最終的にそれは成功したのだが、直ったはずのからくりの語り部はすぐにまた壊れてしまった。しかし、からくりの語り部は再び動かなくなる直前に、ヴェリクトに対して小さな御標を降ろした。
「少女は僕を修繕し、町はかつての姿を取り戻しました。 めでたしめでたし」
だからヴェリクトは、からくりの語り部を直さないといけないのだ。
▼欲しいパーツについて質問された場合
ヴェリクト「何だよ忘れたのか? もう一度言うぞ。『樫の歯車』『シナノキの編み紐』『ミスリルのゼンマイ』の3つだ。町のどこかにはあるはずだよ」
▼水車小屋の鍵について聞かれた場合
ヴェリクト「あ? 鍵がウチにあるって? そういや親父がそんなこと言ってたような……」
ヴェリクト(棚の中を探して)「……あー、あったあった。これだ、悪かったな」
※『水車小屋の鍵』を手に入れる。
町の端にある小さな教会。神父が一人で運営している。パーツについて話を聞くと、神父は「うーん、私ではわかりかねますね」と、困ったように笑った。
※最初は情報収集①のみ挑戦できる。情報収集①に成功したら情報収集②に挑戦できるようになる。
▼情報収集①:難易度12感応判定
▷失敗:とくになし。
▷成功:神父が何か隠し事をしているように感じる。
▼情報収集②:難易度12感応判定
▷失敗:とくになし。
▷成功:神父の部屋にこっそり忍び込むと、机の上に手紙が置いてあった。「親愛なる神父殿 この度は良質なミスリル製の大時計を我がボーガン荘にお譲り頂き感謝します。この町でのあなたの宗教活動を支持することを約束しましょう。ただし、この取引については聖教会の本部に悟られてはなりません。旅人など外部の方にも他言無用でお願いしますよ。 ボーガン」
町の端にある小さな酒場。夫婦と看板娘が切り盛りしており、常連客も多い。パーツについて話を聞くと、看板娘に「心当たりはあるけど……情報が欲しいなら店を手伝ってね」と言われてしまった。
▼情報収集:難易度12肉体判定
▷失敗:ガシャーーン!! 食器を割ってしまった。財産ポイントを1点失う。もしも財産ポイント1点を支払えなかった場合、GMは任意の常備化アイテム1つをPCから徴収できる。
▷成功:看板娘「私のお母さん、編み紐作りが得意なの。森で蔦を探して持ってくれば作ってくれると思うよ。だけど森には人を襲う猛獣が出るから気を付けてね」 次のシーンから、PCが行ける施設の選択肢に『近隣の森』を追加する。
▼PCが『蔦』アイテムを持ってきた場合。
1シーンにつき1つだけ、酒場の奥さんが『蔦』アイテムを『編み紐』アイテムに変えてくれる。『サンザシの蔦』は『サンザシの編み紐』に、『シナノキの蔦』は『シナノキの編み紐』に、『ヒイラギの蔦』は『ヒイラギの編み紐』になる。
町の外れにある水車小屋。森から流れて来る小川の水を利用して米の精白作業を行う施設のようだ。鉄製の扉には鍵が掛けられている。尚、ここでは購入判定に挑戦できない。
▼鍵を使わずに扉を開ける場合
扉は20点のHPと、斬20刺20殴20術10の防御修正を持つ。PCは攻撃によって扉を破壊しても良い。ただし、PCは弁償のために財産ポイントを3点失う。もしも財産ポイント3点を支払えなかった場合、GMは任意の常備化アイテム1つをPCから徴収できる。
▼小屋の中の描写
扉を開けて中に入る。小屋の中央には、いくつもの歯車で構成された石臼を挽くための機械が設置されていた。壁際の棚にはスペアと思われる歯車も置いてある。
▼情報収集:難易度 秘匿 知覚判定
▷達成値13未満:『樺の歯車』を手に入れる。
▷達成値13以上:『樫の歯車』を手に入れる。
町の近隣にある小さな森。危険な野生動物が住み着いており、人間はほとんど近づかない。ここでは購入判定に挑戦できない。
森の中を少し探索すると、蔦が絡まった木をいくつか発見した。しかし木の上には体長7mほどの巨大な蛇が居て、君たちを発見するや否や襲い掛かって来た。
◆戦闘
エネミー:大蛇(書架 p.243)×1
PCたちは同一エンゲージとし、その5m前方に大蛇のエンゲージがある。
大蛇のデータは「HP:60」「回避値:5」「抵抗値:5」に変更して使用する。また、特技の《呪い:狼狽》を《呪い:邪毒2》に変更する。大蛇が戦闘不能になったらPC側の勝利とする。
PCが戦闘に勝利した場合、『サンザシの蔦』『シナノキの蔦』『ヒイラギの蔦』を発見する。
シーンプレイヤー:GMの任意。 PCは全員登場する。
※このシーンは、シーン7の終了時にPCが『樫の歯車』『シナノキの編み紐』『ミスリルのゼンマイ』を所持していない場合に演出するシーンである。
◆描写
夕刻になり、君たちは再びヴェリクト工房に集合した。
ヴェリクト「パーツは揃ったか? 見せてみろ」
ヴェリクト「おいおい、揃ってねーじゃねーか!!」
(※別のパーツを持っている場合「それじゃねーよ!」等言っても良い)
ヴェリクト「クソ……これじゃあ修理できねえぞ」
ヴェリクトは苛立たし気に頭を掻く。自身に下りた御標を達成できないことに対し、焦燥感が募っているようだ。
ヴェリクト「仕方ねえ、パーツが見つかるまで探してやる。ほら、お前らも手伝――」
しかし、ヴェリクトが言い終わる前に、町に変化が起きた。※「歪み表」(MM p.263)をROCする。
ヴェリクト「な、何だ!?」
町の変化と同調するかのように、からくりの語り部の外装に亀裂が入り、虚無がその姿を現す。ここまで来たら歪みの進行を止める手段は一つしかない。
※PCがボーガンの下に移動したら、シーン10へ移行する。
シーンプレイヤー:GMの任意。 PCは全員登場する。
※このシーンは、シーン7の終了時にPCが『樫の歯車』『シナノキの編み紐』『ミスリルのゼンマイ』を所持している場合に演出するシーンである。
◆描写
ヴェリクト「パーツは揃ったか? 見せてみろ」
ヴェリクト「よし、必要なパーツが揃ったな。これでからくりの語り部を直せるぜ!!」
ヴェリクトは工具を両手に、さっそくからくりの語り部の修復を始めた。
ヴェリクト「ここをこうして……こうだ!! よし、修復完了!!」
ヴェリクトが額の汗を拭う。その前では、からくりの語り部が元の姿を取り戻していた。
ヴェリクト「さっそく動かそう。見てろ……」
背部に付いているゼンマイを回すと、からくりの語り部の目に光が灯った。からくりの語り部はガコガコと歯車を回して君たちの方に顔を向けると、スピーカーから言葉を紡いだ。
「未来を紡ぐ者たちが 人々を操る伽藍を倒し 町は本来の姿を取り戻しました めでたしめでたし」
紡ぎ手である君たちには、これこそが正しく神の意向、歪みのない『正しい御標』であることがわかるだろう。
ヴェリクト「なんだかよくわからないが、お前らにも役目ができたみたいだな」
ヴェリクト「からくりの語り部の修理を手伝ってくれた礼だ。助けになるかわからないが、これを持って行け」※PC全員に『命の結晶』(書架 p.200)を1つずつ配布する。(このアイテムは演目終了時に失われる)
ヴェリクト「それじゃ、頑張れよ」
ヴェリクトに見送られ、工房を後にする。
この町に巣食う伽藍、ボーガンを倒すため、紡ぎ手たちはボーガン荘へと乗り込んで行く。
※PCがボーガンの下に移動したら、シーン10へ移行する。
シーンプレイヤー:GMの任意 PCは全員登場する。
◆描写1
君たちは再びボーガン荘にやって来た。広間に入ると、そこではたくさんの宿泊客を巻き込んだ大宴会が催されていた。舞台の上にはボーガンの姿も見える。
▼PCがボーガンに敵対する姿勢を見せた場合
用心棒A「おっと。お前さん方、何をするつもりだい?」
用心棒B「宿屋の中での荒事は禁止させてもらってるんですがね」
刀を携えた侍が2人、君たちの前に立ち塞がる。その騒ぎを聞きつけて、宿泊客たちの注目も、次第に君たちに集まり始めた。
ボーガン「誰です? この稼ぎ時に水を差すのは?」
ボーガン「おのれ曲者か!! 者ども、出会え!出会え!!」
※以下の通りに戦闘を開始する。
◆戦闘
エネミー:“願望の伽藍”ボーガン×1、用心棒×2、踊り子×2、中居×2
PCたちは同一エンゲージとし、配置は以下のようにする。尚、PCは用心棒と中居のエンゲージの間を通り抜けることはできない。また、PCが4人の場合はボーガンのHPを-30し、PCが3人の場合はさらにHPを-30する。
ボーガンが戦闘不能になったらPCの勝利とする。他のエネミーはボーガンの歪んだ御標の効果がなくなれば戦う理由もないので降伏するだろう。
▷PCが戦闘に敗北した場合:シーン11へ移行する。
▷PCが戦闘に勝利した場合:描写2に移行する。
◆描写2
町を操っていた伽藍、ボーガンが倒れた。周囲で野次馬をしていた宿泊客や、宿の従業員たちが皆息をのむ。御標を降ろしていたボーガンが倒れたということは、未来が書き換わるということ。次に何が起きるのか、その場に居る全員が周囲を警戒する。
パラッ……。広間の天井から小さな何かが降って来た。手をかざして受け止める。木片だった。
宿泊客A「…………おい、天井が崩れてないか?」
宿泊客B「いや、これは……うん、崩れてるな」
宿泊客C「えーと、つまり?」
宿泊客D「みんな逃げろーー!! 建物が崩れるぞーー!!」
皆が一斉に外へと走り出す。全員が無事に逃げ出せたところで、この町の歪みの象徴であるボーガン荘は、音を立てて崩れて行った。
※シーン12へ移行する。
シーンプレイヤー:GMの任意 死亡していないPCは全員登場する。
※PCが全員死亡している場合はマスターシーンとなる。
◆描写
紡ぎ手たちは無念にも、伽藍の前に倒れ伏した。
ボーガン「いやあ、素晴らしい余興でした。さぁ、宴はまだまだ続きます! 皆様どうぞお楽しみください!!」
酒を片手に宿泊客たちが囃し立て、踊り子たちが可憐に舞う。
楽しい夜が更けていく。その後、ボーガンタウンの夜はいつまでも明けることはなかったそうな。
めでたし めでたし。
-BAD END-
シーンプレイヤー:GMの任意 PCは全員登場する。
◆描写
町で唯一の宿泊施設だったボーガン荘が崩れたので、宿泊客たちの多くは野営して夜を明かした。君たちはヴェリクトの工房に泊めてもらい、ぐっすりと眠って体を休めることができただろう。
ヴェリクト「さて、あたしはこれから町の復興作業を進めねーと。お前らはどうするんだ?」
(各PCの今後の方針を聞いたら)
ヴェリクト「そうか、せっかく町を救ってくれたのに大した歓迎もできなくて悪かったな」
ヴェリクト「また来いよ。その頃には宿場町としてちゃんと復興して、お前らのことをもてなしてやるさ」
こうして未来は紡がれた。半ばの町はかつての姿を取り戻していくことだろう。伽藍によって惑わされていた人々も、もう迷うことはない。彼らを正しき世界に導くため、今日もからくりの語り部がガコガコと歯車を回して動いているのだから。
-HAPPY END-
『MM』p.152の指示に従いアフタープレイを行う。”演目を達成した”の経験点は、バッドエンドの場合は0点、ハッピーエンドの場合は4点とする。また、ミドルフェイズで『樫の歯車』『シナノキの編み紐』『ミスリルのゼンマイ』をそれぞれ手に入れていた場合、1つにつき1点の追加経験点を得る。すべて手に入れていた場合は更に追加で1点の経験点を得る。
演目中に手に入れたアイテムはアフタープレイですべて失う。
種別:異形、人間 レベル:7 HP:160 MP:60
肉:9/+3 知:12/+4 感:15/+5 意:18/+6 社:15/+5 縫:18/+6
命:10 回:3 術:10 抗:5 行:14 戦移:18 全移:36
攻:〈殴〉+2 CT:12 対:単体 射:至近
防:斬5/刺5/殴5/術5
特技:《※虚ろなる魂》《念術:理力の衝撃》《化外の禁術》《呪詛の一撃:邪毒2》《不屈の怨念》
逸脱能力:《憤怒の一撃》□《虚構現出》□《虚無の現出》□《死神の招き》□□《堕落の声》□□《ねじくれた迷いの城》□
巨大旅館「ボーガン荘」の支配人。武器は持っておらず、得意の魔術で戦う。
種別:人間 レベル:5 HP:50 MP:20
肉:15/+5 知:15/+5 感:9/+3 意:15/+5 社:9/+3 縫:3/+1
命:10 回:5 術:4 抗:5 行:12 戦移:17 全移:34
攻:〈斬〉+21 CT:11 対:単体 射:至近
防:斬7 /刺5 /殴5
特技:《勇猛なる血》《無双の一撃》《異邦の技巧》
ボーガンに雇われた用心棒。刀の扱いに長けている。
種別:人間(モブ) レベル:2 HP:20 MP:15
肉:12/+4 知:9/+3 感:12/+4 意:12/+4 社:9/+3 縫:3/+1
命:5 回:5 術:7 抗:5 行:10 戦移:15 全移:30
攻:〈殴〉+0 CT:12 対:単体 射:至近
防:斬1/刺2/殴1/術2
特技:《演舞家》《芸は刃となりて》2
ボーガンに雇われた踊り子。不思議な踊りで敵を惑わす。
種別:人間(モブ) レベル:2 HP:20 MP:15
肉:12/+4 知:12/+4 感:9/+3 意:9/+3 社:12/+4 縫:3/+1
命:6 回:4 術:6 抗:4 行:8 戦移:13 全移:26
攻:〈刺〉+6 CT:12 対:単体 射:至近
防:斬2/刺2/殴2
特技:《完璧なる作法》《助太刀》
ボーガン荘で働く中居さん。くせ者が出た時には槍を持って戦闘に参加する。
◇ヴェリクト・ライター
ほつれの影響で亡くなった両親の後を継ぎ、ボーガンタウンで工房を営んでいた職工の少女。19歳。
雑な性格で、長い赤髪を適当に後ろで纏めている。幼い頃、工房で遊んでいた際に工業用からくりを誤作動させて左目を損傷しており、現在は眼帯を着けて生活している。
名前の由来はドイツ語の「非常識」と未来へ明かりを灯す「ライター」
◇ボーガン
桜花の国出身の、60歳程の老父。10年程前に半ばの町に移住してボーガン荘を開いたが、建物は狭く従業員に花もないということで開業当初から業績低迷。同業者から陰で笑われるのを耐え忍ぶような生活を続けていたが、ついに我慢の限界が訪れて伽藍となった。
ボーガン荘が建つと同業者たちはあっという間に廃業、町からの撤退を余儀なくされたが、彼等にも自業自得と言える部分はあるのかもしれない。
名前の由来は「願望」(ガンボウ → ボウガン → ボーガン)
◇神父
聖教会から派遣された神父。欲望に忠実で自分の立場を守ることに心血を注いでいる。
◇看板娘
酒場の看板娘。経営上手でボーガン荘が建ってからも上手く集客することに成功している。
◇半ばの町
長い長い街道のちょうど半ばほどにある宿場町。演目開始時点では「ボーガンタウン」に名前が変わっている。
◇からくりの語り部
昔から半ばの町に御標を降ろしてきた語り部。誰が作ったのか、その詳細は一切不明。シナリオフックとしてご使用ください。
Post Comment