2022年06月17日更新

マール・レイアの花婿

  • 難易度:|
  • 人数:3人~4人|
  • プレイ時間:4~5時間(ボイスセッション)

美しい自然、豊かな水に恵まれた国、マール・レイア。
彼の地の領主は旧大公家の血を引く少女ステラ・マルバスである。
小国マール・レイアは強国ラルハースの強い影響下にある。
13歳の領主に代わり、老宰相とラルハースから派遣された騎士とが実権を握っている。
そのため、ステラを待つ未来は政略結婚である……かに思われていた。
彼女はある日、不思議な夢を見て、夢から覚めた彼女は領主として行動を起こした。
実権無きと言えど、彼女は領主である。彼女が本気で望むことを宰相も騎士も阻むことはできない。
こうして、マール・レイアの婿取りが公布されたのである。

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トレーラー

美しい自然、豊かな水に恵まれた国、マール・レイア。
彼の地の領主は旧大公家の血を引く少女ステラ・マルバスである。
小国マール・レイアは強国ラルハースの強い影響下にある。
13歳の領主に代わり、老宰相とラルハースから派遣された騎士とが実権を握っている。
そのため、ステラを待つ未来は政略結婚である……かに思われていた。
彼女はある日、不思議な夢を見て、夢から覚めた彼女は領主として行動を起こした。
実権無きと言えど、彼女は領主である。彼女が本気で望むことを宰相も騎士も阻むことはできない。
こうして、マール・レイアの婿取りが公布されたのである。
 
 

レギュレーション

適正プレイヤー数:3~4人
プレイ時間:4~5時間
使用するテンプレート:以下から選択
・騎士
・騎兵
・能吏
・貧乏貴族
・漂泊の若き騎士(ただし、運命は「[81]誓いの言葉」ではなく「[62]言えなかった一言/愛の言葉」とする)
・商人(ただし、父親はタルカスの豪商となる。父親へ4点以上の縁故を得る)
・流浪の貴公子(故郷を滅ぼした大国はガイウス・ラルハース時代のラルハース侯爵領を推奨)
・呪われし天才剣士
・異端イェロマーグ派の吟遊詩人
・風の公子
・ラルハース水の騎士
・雨使い(妖魔綺譚収録の「指輪のリージェ」のデータを流用する)
 
 

序章:婿取りの公布

[描写1]
 13歳の少女ステラ・マルバス。幼き日に両親を亡くし、マール・レイアの領主となった彼女は国の隅々までを把握する老宰相と大国から派遣されてきた騎士に頼り、政を行ってきた。彼女は、領主である。
 幼き領主はある日、夢を見た。
 夢から覚めた彼女が発した募集を君達も目にしたことだろう。
 
 我が伴侶となる者を募集する。
 募集に当たっての条件は一つ。マール・レイアの繁栄を祈ることのできる者。
 共にマール・レイアの繁栄を祈る者の多いことを願う。
 
 ステラ・マルバス
 
 
[解説]
 各PCがステラ・マルバスの公募を見て、マール・レイアへ集うように誘導する。
 マール・レイアとラルハース侯爵領やユラス男爵領との関係や、ステラ・マルバス自身の魅力、ステラが持つ大公家の血筋の価値、マール・レイアの領主たる彼女のみの知る情報などを餌としてPC達を釣り上げる。特に望みのないPCに関しては少女自身の魅力を用いることにする。
 ステラの見た夢に関しては後述。GMは最後まで目を通したうえでマスタリングを行うこと。この時点で夢の内容に触れることはない。
 GMはマール・レイア(辺境騎士団領P.47)についてある程度予習しておく。
 
 
[描写2]
 そうして、マール・レイアへとやってきたPC達。どうやら君達の他にも数名の応募者がいるようだ。
 領主の屋敷へと集められた君達の前に老宰相と水の騎士を伴ったステラ・マルバスが姿を現す。
 ステラは自身の婿候補達に挨拶をする。
「今日は私のために、よくぞお集まり下さいました。
 皆様がマール・レイアの未来を祈ってくださること、大変嬉しく思います。
 私はステラ・マルバス。この国の領主です」
 ステラの挨拶の後、老宰相アルブサスが前に前に出て、進行役を担当すると告げる。アルブサスは集まった領主の婿候補達に自己紹介をするように促す。
 
 
[解説]
 ステラ・マルバスを目にして夢歩きを行う。GMはここで各PCの欲望を強調しておきたい。モチベーションを明確にしておくと、この後の進行が潤滑に進む助けになるだろう。
 
 PC達以外の婿候補として4人程度のNPCを用意する。レギュレーションでPLに示した13のテンプレートの内、PLに選択されなかったものを用いる他、豪商、黒騎士、原蛇の魔道師、ギュラニン党の暗殺者などを使用する。
 PC以外の婿候補を選ぶ基準として、PLがラルハース水の騎士を選択しなかった場合は、ラルハース水の騎士を、選択した場合は黒騎士をNPCの一人目とする。次にPCにとって嬉しくない競争相手を追加する。商人に対しての豪商、風の公子や貧乏貴族に対しての原蛇の魔道師、騎兵や漂泊の若き騎士に対する騎士がこれに当たる。基本的にPCよりも年上で、PCが得手とすることがPCよりも得意なテンプレートである。騎士や能吏などの立場あるPCに対しては呪われし天才剣士や白き仮面の獣師などの何をしでかすか分からない危険人物を宛がう。
 ギュラニン党の暗殺者は表向きは商人としておき、夢歩きなどでPLにその正体を教えるとセッションに別の軸ができて楽しいかもしれない。
 
 

第一幕:第一の質問

[描写1]
 ステラ・マルバスは君達の自己紹介を熱心に聞いていた。全員の自己紹介が終わると、彼女は一つ頷いて言う。
「我が伴侶を貴方方から一人に定めねばなりません。
 そのために、三つ問います。問いに対する答えを以て、我が伴侶を選ぶこととします」
 13歳。まだ幼さの抜けきらぬその容貌は、しかして強い意志の元に凛とした表情を保っている。君が経験豊富な貴族や魔道師であるならば、その姿は微笑ましく映るかもしれない。彼女はこの場において、領主らしく在ろうとしているのだ。
 
[解説]
 ステラ・マルバスがこれから三つの質問を行うことをPL達に告げる。
 彼女が夢見る少女としてではなく、領主として伴侶を選ぼうとしていることも、PLに理解してもらっておいた方がいい。
 
[描写2]
 ステラ・マルバスはその円らな瞳で、自らの前にズラリと並ぶ婿候補達を順に眺める。
「第一の問いです。貴方との婚姻は、このマール・レイアに何をもたらしますか?」
 老宰相が質問に反応し、深く頷く。少女の背後では、水の騎士が苦い顔をしている。ラルハースから派遣された水の騎士ゴルド・スミランにとってはこの催し自体がその意に沿わぬものなのだろう。彼の不機嫌な視線は、君が緊張しているのだとしたら睨まれているようにすら感じられるだろう。もしかしたら、本当に睨んでいるのかもしれない。
 君はマール・レイアに、そして、ステラ・マルバスに、一体何を与えることができるだろうか。
 
[解説]
 自己アピールタイム。それぞれの婿候補が、その公約を披露する。豪商はその経済力を、魔道師であればこの危険な時代における知識の価値を、騎士や貴族であれば自身の軍事や外交的価値をそれぞれ訴えるところだろう。PLが悩むようであればGMは助言をすること。
 若いPCに対しては、その若さこそ価値だと伝える。長きに渡って安定して領主を支えられるのは主張するに足る長所である。ステラ・マルバスは幼い頃に両親を亡くしており、家族が欠乏している彼女には、愛情を示すことも有効である。
 逆に、対個人の戦闘能力は重視されない。彼女が求めているのは護衛ではなく、自身を支える伴侶であるからだ。逆に言えば、既に彼女の傍にはラルハース水の騎士がいるのだ。PCはゴルド・スミランを超える護衛だろうか?
 
 

第二幕:第二の質問

[解説]
 第二の質問に関しては、下記の通りに進めるのではなく、見合いでの質問表(辺境騎士団領P.48)を参照し、そこから選ぶか、山札から1枚引き、出た星座の質問(試練)を与えてもいい。
 
[描写]
 少女は時折質問を交えながら(場合によっては老宰相や水の騎士から質問が飛ぶ場合もあるだろう)、各候補の答えを聞く。各候補の答えは老宰相の手によって記録されている。少女は満足気に頷く。
「第二の問いです」
 彼女がそう声を発した瞬間、その場にいる全員は眩暈に襲われます。同時に朦朧とした意識の中で、直前までは少しばかり毅然としてはいるものの貴族のお嬢様といった印象であったステラ・マルバスから大貴族の気品、風格、頭を垂れたくなるようなカリスマ性を感じる。そして、その場の全員が夢歩きを行う。
 
 夢歩きから覚めたあなた達に、彼女は問いを投げ掛ける。
「貴方は何を見ましたか?」
 
[解説]
 ステラの血筋に眠る旧大公家の力が一時だけ目覚める。魔道師や立場ある貴族であれば、そのことに気付けるかもしれない。ただし、気付けたとしても、夢歩きの後、冷静さを取り戻した後である。
 全員が同時に夢歩きし、同時に目を覚ます。処理の関係上、順番に夢歩きの描写を行うことになるが、時系列上は同時に起こっていることに注意したい。他の人が夢の中にいるうちに誰かを襲うようなことは当然できない。
 夢歩きでは、このマール・レイアへ将来起こるであろう脅威を描き出す。特に、その人物が領主の伴侶となった時に、最も脅威となるであろう危機を明らかにする。主たる危機としては、ラルハースとの戦争、ガイウス・ラルハースの出現、炎の大地の台頭、ユラスの脅迫、スナーダルやガープリスといった魔族の侵攻、冬翼の王の目覚めに伴う寒冷化とそれによる飢饉などが挙げられる。
 NPCとしてギュラニン党の暗殺者を採用しているならば、PCの内で戦闘向きでない若者の夢歩きで、暗殺者によるステラの暗殺を予見させる。この暗殺は夢から覚めた直後に起こるとPLに告げよう。PCに若者がいない場合は、夢歩きに使用する運命カードとして最も大きなカラーナンバーのカードを出したPLの一人のPCに暗殺の夢を見させる。ただし、この場合は暗殺が起きるのは夢歩きの後すぐではなく、婚姻の式に参列したジェイガン・ラルハースが暗殺される光景を見ることとする。
 
 
 ###第二幕:第三の質問
[描写]
 問いの答えを聞き、少し悩むように黙った後、ステラはやや緊張した面持ちで君達の方を見ます。
「三つ目の問いです」
 そう告げ、再び黙ります。その沈黙は、彼女が何事か悩んでいるためだと分かるでしょう。しばらくの沈黙の後、彼女は真っ直ぐに君達の方を見据えると、次の問いを発します。
「この地を火龍が襲ったとしたら……貴方達はマール・レイアのために、私のために戦って下さいますか?」
 
[解説]
 第三の質問は答えが「はい」か「いいえ」になる単純な問い。長々と答えをはぐらかしたり、容量の得ない答えを返す候補に対しては老宰相かNPCの水の騎士の口を借りて、肯定なのか否定なのかハッキリと答えさせる。
 この問いに関しては、NPCが先に回答するようにする。NPCは全員が戦うと答える。特に非戦闘系のNPCが真っ先に「貴方のために戦いましょう!」と答えさせる。少なくとも二人以上のNPCに先に回答させ、戦わないと言いづらい雰囲気にしておく。勿論、PCが戦わないと答えるのであれば、それを否定する必要はない。NPCがそのPCのことを嘲笑するだけで、ステラや老宰相はその答えを当然のものとして受け入れる。それぞれのPLが自身のPCであれば、どう答えるかを考えるのが重要となる。
 
  
[描写]
 少女は答えを聞くと、君達の脇を通り、領主の屋敷の窓を開け放ちます。窓の外は晴天で、美しいマール・レイアの景色が広がっている。その手が微かに震えていることに、君達は気付くだろうか?
「いい天気ですね」
 彼女は何でもない風にそんなことを言う。三つの問いが終わり、候補者の中には彼女がいつ伴侶を決めるのかヤキモキする者もいることだろう。しかし、ステラは頓着せず、皆を外へと誘います。
「折角ですから、泉へと向かいましょう。このマール・レイアの未来を左右するかもしれない重要な決断ですから、女神様の近くで決めさせて下さいませ」
 
 全員で領主の屋敷の奥にある渓流を辿り、泉へと向かう。
 途中の道では妖魔が出ることもあると聞き、武器を持つ者は武器を持った状態での移動となる。
 そうして辿り着くのは、清き水で満ちた、風光明媚な泉である。このマール・レイアにとって、宗教的な意味を持つ極めて重要な場所だと、老宰相は君達に説明をする。その水面は太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
 そんな泉に、黒く大きな影が落ちる。上空を見上げれば、一体の火龍が羽ばたき、君達を、ステラ・マルバスを見下ろしている。火龍はそのまま高度を下げると、泉の中へと降り立った。その眼に正気の色は見えず、ただ狂気と殺戮が渦を巻いている。
 
 
[解説]
 夢歩きを行う。風の龍バサル(ルールブックP.156)との遭遇による夢歩きである。
 
 PCの中に「[08]呪われた出自/青龍」「[10]待機」「[18]大いなる予言」「[54]自己犠牲」「[57]導く者の伝説」「[66]魔法の力/青龍」「[70]残された瞳」「[82]英雄の出会い」「[85]龍のさだめ」「[92]聖戦の天啓/魔族関連の勢力」「[93]運命の器/龍or妖精騎士」「[98]前世の因果」のいずれかの未解決の運命を持つ者がいる場合、そのPCには特別な夢を見せても構わない。PCは特別な夢の中では穏やかな火龍と会話を行うことができる。龍は、夢の外での自身は狂気に支配されてしまい、会話が困難であると釈明しつつ、本題を切り出します。彼は来たる魔族との戦いに備えて、英雄となり得る人間を探し、各地を飛び回っている。そして、この場所へも英雄を求めて現れたのだ、と事情を話し、自身と共に魔族と戦うように求めます。PCが合意するなら、この後に戦闘は発生せず、龍はPCを連れて飛び去って行く。
 
 PCの中に「[08]呪われた出自/指輪」「[40]魔法の力/指輪」「[93]運命の器/約定の公女フリーダ」の運命を持つ者がいる場合、そのPCは夢の中でステラと会話ができる。夢の中でステラはおびえた様子で龍の襲来を夢で知っていたことを告白する。この地に龍に対抗する力を集めるための婿取りであったと。PCがこれを許すのであれば、龍はこちらから攻撃しない限りは危害を加えることなく、泉から飛び去る。
 
 PCの中に「[27]呪われた魔剣/青龍の魔族」の運命を持つ者がいて、この場へ魔剣を持参している場合は、上記の場合でも龍は飛び去ることはなく、魔剣を持つPCを狙って襲う。
 
 この夢歩きが終わると、例外を除き、龍との戦闘に突入する。PLに龍の危険性を十分に説明し、戦うか逃げるのかを問う。一人でも戦闘を行うのであれば、戦闘の処理を行う。戦闘が行われる間は、逃げたPCが戻って来て戦闘に参加することができる。
 全員が逃亡を選んだ場合、演出戦闘(辺境騎士団領P.142)の処理を行う。龍に蹂躙されるこの場所から逃げ出すために「効果値3」のダメージを受ける。複数人がステラを守る場合、例外として彼女への効果値は1以下になっても構わない。泉からの脱出後、狂った龍の迫りくるマール・レイアから逃げる出すなら「効果値1」のダメージを受ける。ステラ・マルバスは意識を失わない限り、マール・レイアから逃げることはしない。逃げずに戦闘を行うのであれば装備を整えて良い。必要なものがあれば、過剰でない範囲で領主の屋敷に用意してあったことにしてPCに武器や薬を渡してもよい。
 
 

最終幕:試練の終わり

 龍を撃退したのであれば、残った婿候補に、龍と戦わせるような酷い女領主である自身と、まだ結婚する意思はあるかステラは確認をする。結婚を望む者がいる場合は、ステラはその中からGMが最も妥当だと思う相手と婚姻を結ぶ。
 エンディングの夢歩きを行い、その後に思いを巡らせ、セッションを終了する。

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