「願いを叶えて欲しい?」
《白猫の公女ヴェイレイ》は少女たちに微笑む。
それは悪夢の始まり。
少女たちは叶わぬ願いを叶えるために、魔女が住むという白猫の館へと向かう。
「庭のお手入れができたら、願いを叶えてあげる。
約束、できるかしら?」
適正プレイヤー数:3~4人
プレイ時間:4~5時間
使用するテンプレート:全員が「少女」を使用する。(「深淵第二版テンプレート集 辺境騎士団領 収録」)
テンプレートの性別を変更して「少女」を「少年」として使用することは認められない。
プレイヤーキャラクターは全員が未婚の処女であること。
[描写1]
「白猫の館」を参照
[描写2]
「白猫の館」を参照
[描写3]
侍女に通された部屋で少女たちは館の主人に対面する。
寝椅子に横たわった妖艶な貴婦人は真っ白な猫のようだ。シミ一つないドレスも、銀色の髪も、真っ白な肌も、大理石のようだ。
その頭には純白の毛並みの猫耳が生えており、また、下肢に目をやれば、やはり純白の猫の尾がその脚に寄り添っている。
「願いを叶えて欲しい?」
この館の主である《白猫の公女ヴェイレイ》は気怠げに半身を起こすと、少女たちに微笑みかける。
「この館の中庭、荒れ放題になっているそこを、綺麗にお手入れできたなら、あなたたちの願いを叶えてあげましょう。約束、できるかしら?」
[描写4]
少女たちが約束をすることに決めたなら、ヴェイレイは侍女に合図を出す。合図を受けた侍女は退室し、兎ほどの大きさの別珍ケースを両手に抱えて戻ってくる。侍女が少女たちの目の前でケースを開いて見せると、そこには少女たちの人数分の指輪が並んでいる。
「では、約束の証にこの指輪をつけて頂戴」
ヴェイレイの言葉に、侍女は少女たちへ指輪を差し出す。
「それはお庭のお手入れに必要な道具。さあ、指を通して」
少女たちが指輪を装着すると、手の中に剪定ばさみや園芸用の小型シャベルが現れる。
「必要なら、身を守るための武器にもなるわ」
すると、手の中の道具は魔法の短剣や弓矢へと変わる。
「さあ、庭仕事の時間よ
あなたたちの願いのために、張り切って働いて頂戴」
[解説]
「白猫の館」を参照。
ヴェイレイとの約束の詳細について、少女たちが訊ねない場合は侍女から説明をする。ヴェイレイに直接質問したなら、ヴェイレイが答える。少女たちがすべきことは「草むしり」「中庭で失くしてしまった指輪の捜索」の二つ。この二点を達成すれば願いは叶う。
これに加えて、「これは約束ではなく、お願いになるのだけど」として「中庭中に咲く紫の花の駆除」を依頼される。これは達成できなくとも、願いは叶えてもらえる。これを達成できた場合については後述。
シナリオに登場する侍女は全てヴェイレイの下僕である白猫の侍女である。「ラヴィオラ」のテンプレートを使用する。GMはこのことを特に伝える必要はない。
約束である「中庭で失くしてしまった指輪の捜索」の詳細。少女たちのつけている指輪と同一のもの。少女たちと同じく、願いを叶えるために中庭の手入れを行った女の子が失くしてしまった、と聞かされる。その女の子がどうなってしまったのか問えば、約束の証を失くしてしまったのだから、当然願いは叶わなかった、と答えが返る。その女の子に関するそれ以上の情報を求めても、ヴェイレイなら「忘れてしまった」、侍女なら「存じ上げません」と躱されてしまう。
侍女に庭の手入れをさせない理由として、ヴェイレイは「あの紫の花の匂いが、この館の子たちは苦手で、無理にさせるわけにもいかず、放りっぱなしだったのよ」と正直に答える。ヴェイレイ自身もまた、あの花の匂いが苦手である。
指輪が武器になることに不信感を抱く者もいるかもしれない。武器が必要な理由を問われれば、中庭には蛇が出ると答えよう。少女たちは村娘であり、蛇程度を過剰に恐れることはないはずだ。
[描写1]
館の中を通り、中庭の入口へと案内される。館には沢山の白猫がおり、廊下で出会う少女たちを不思議そうに見上げている。
館は中庭をぐるりと囲むように建てられており、中庭に面した窓はそのどれもがぴったりと閉じられている。中にはカーテンが引かれているものも。
中庭は色々と伸びっぱなしになってはいるものの、鮮やかな紫の花が庭中に咲いており、綺麗だ。
[描写2]
中庭の入口前。やはり扉は閉じられている。
「扉は開けたらすぐ閉めるようにお願いします。それから、花の臭いをつけたまま館内を歩き回られては困ります。作業を終えましたら、着替えをご用意致しますので、こちらのベルでお呼びください」
侍女からいくつか注意を受ける。
「それでは、よろしくお願いします」
[描写3]
中庭は広い。周囲を囲む館の壁には蔓が絡みつき、館の歴史を偲ばせる。
中庭に咲く紫の花は少し匂いが強めではあるが、少女たちにとって嫌な匂いではない。甘く、それでいて爽やかな心地良いものに感じられる。何より、色鮮やかで綺麗だ。
ここで一度、夢歩きを行い、少女たちのキャラクターを掘り下げる。
夢から戻った少女たちは周囲を見渡し、伸び放題の雑草を目にし、骨が折れそうだと感じることになる。
[解説]
中庭に生えている紫の花は猫が嫌う花である。
花に関して詳しい情報が欲しい場合は「生物知識(植物)」で判定を行う。目標値は10だが、達成値が高ければ詳しい情報が出ると伝える。成功者が魔力の刻印を持つ場合、花が微量の魔力を持っていることも伝える。
達成値10未満…失敗
達成値10以上15以下…この花が村の近くにも自生している品種だと分かる。毒はない。しかし、この花が咲くのは今の季節ではないはずだ。
達成値15以上…(上記の情報に加えて)猫などの一部の獣がこの花の匂いを嫌うとあなたは知っている。
中庭には《白猫の公女ヴェイレイ》の活力が封じられている。
花を取り除けば封印を破ることができる。花を取り除く行動をとれば、庭園の貴婦人キスネスクの下僕、寡黙なる侍女(リシュオン・ヴァラ)(ルールブックP.187)が現れ、襲い掛かる。
・草むしり
PL人数に等しい回数、目標値15の「体格」判定に成功すれば草むしりは完了する。
「生物知識(植物)」か「社交知識(農業)」で目標値12の判定に成功した少女は「体格」判定に+3の補正を得る。
体格判定に失敗すると、蛇と遭遇することになる。蛇との戦闘を行うか、効果値1のダメージを受ける。
大失敗をすると雑草でない草を抜いてしまい、同時に身体の力が抜ける。寿命を3年失う。
・指輪を探す
「夢歩き」の判定で目標値15を超えると、中庭に落ちている何かを見付けることができる。
GMは何を見付けたのか、運命カードを引いて決める。指輪は最大1つまでしか見つからない。運命カードを引いた結果、2つ目の指輪が見付かることになるなら、カードを引き直す。
黒剣:蛇の抜け殻。
翼人:白骨化した人の腕。サイズから推測するに、享年14歳前後か。指には約束の指輪がはまっている。
指輪:約束の指輪。
戦車:破魔矢。
通火:約束の指輪。ただし、真っ二つに割れている。
野槌:兎の足。以後、夢歩きに+1。
青龍:何も見つからない。+5の修正を得て、直ちに夢歩きを行う。
原蛇:イナゴ。見付かったイナゴは吹き抜けている空へ飛んでいく。
海王:綺麗な貝殻。
牧人:約束の指輪を見付けるが、紫の花の茎が指輪の穴を通っており、茎を折らずに取り出せない。
古鏡:精巧な人の腕の彫刻。素材は石(目標値14の「生物知識(人間)」か「魔法知識」に成功で石化した人の腕と判明)。指には約束の指輪。
風虎:鼠の死体。
八弦琴:石碑。読むには「上代語」で目標値17。「ここに《白猫の公女ヴェイレイ》を封ず。彼の者を目覚めさせてはならぬ」と書かれている。
[解説]
紫の花を手折ったり、積んだりした場合、この場所の封印を守る、寡黙なる侍女(リシュオン・ヴァラ)(ルールブックP.187)が現れ、少女たちに襲い掛かる。
[描写]
花の茎を折った瞬間、寒気が少女を襲う。背筋が凍るような感覚に、思わず背後を振り返る。
誰もいなかったはずの背後に、赤い髪の美女が立っている。毅然とした美貌の女だが、その顔に表情はなく、底冷えのするような視線を少女に向ける。美女ではあるが、その下半身は赤い大蛇のもので、腕は四本ある。四本の腕にそれぞれ長剣を持つ。蛇女は「封印を破ることは許されない」と告げ、長剣を振り下ろす。
[解説]
リシュオン・ヴァラは庭の外までは追って来ない。少女たちが中庭から出ると姿を消す。
リシュオン・ヴァラを倒すと、庭の紫の花は全て枯れ、匂いも消える。封印から解き放たれたヴェイレイは自ら、中庭へやってきて、少女たちを賞賛する。この時点で草むしりが終わっていなくとも、指輪が見付かっていなくとも、願いを叶えてくれる。
「白猫の館」を参照。
ヴェイレイは可能な範囲で少女たちの願いを叶える。
全員がレラの回復を願えば、レラの病は治る。
誰かの願いが本来の「レラを助ける」ことから外れたなら、レラの病は治るが、代わりに以下のうちのいずれかの運命を得る。
[11]借金、[19]醜悪、[20]恐怖症、[43]血の渇き、[45]異形の刻印、[85]龍のさだめ
1D6で決定するか、GMが任意で選んでもよい。
誰もレラの回復を願わなかった場合、レラは死ぬ。
ヴェイレイが封印から解放されているなら、誰かの願いが「レラを助ける」ことから外れても、代わりの運命を得ることなく、レラは助かる。
蛇
星座:原蛇
召喚値:10 影響値:1
出現形態:少女たちの親指程の太さの蛇。毒を持たない。
生命力:10 精神力:15
行動値:13 吸収値:3
攻撃1:牙[技1+修2=3、効果値2]
攻撃2:恐怖の凝視[影響値攻撃、恐怖(強度11)]
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