タイトルは、敬愛する女流海外SF作家の有名な1作より。名作です。
【トレーラー】
ある老いた王がいた。
彼には跡継ぎとなる息子がいた。
世代が移り、王は隠居して安穏とした日々を過ごす、そのはずであった。
即位式のおふれが出され、国が祭り賑わうなか、不幸な事件が起きた。
王の息子の事故死。
本当に事故なのか? 不穏な空気が王宮を満たし、理不尽な現実は、御標を越えて襲いかかる。
王の嘆きは国中に響き渡り、世界に綻びが生まれる。
シナリオタイトル 「たったひとつの冴えたやり方」
では、美しき幕引きを。
1.一部のPCのハンドアウトに、対象のプレイヤーにしか見せない裏ハンドアウトがあります。
2.すべてのハンドアウトに御標が用意されています。
あえて曖昧な表現に留めてあるので、解釈はプレイヤーにおまかせで、聞かれてもGMは「書いてある通りです」と答えてください。
伽藍に歪められた御標でないことだけは伝えてもよいです。
3.シナリオが始まった段階で、伽藍の行動が完了しているため、歪み表をほぼ適用しませんが、老王との謁見などで適度に適用して構いません。
賢王の統治する国。
大きくもなく、小さくもなく、ほどほどの大きさでほどほどに平和な国。
賢王である。
若い頃はヤンチャをしたもの。留学という名の武者修行に、海外を飛び回っていた。裁縫師の真似事もしていた。
王になり、后を娶り、子に恵まれたが、全て奸計により弑されている。
乱れた国内を納め、隣国との関係を正し、賢王と呼ばれるようになった頃にはもう壮年といってよい歳であった。
改めて、王は后を迎えた。
そんな過去もあり、壮年になって出来た子供たちを溺愛している。
いい子。ちょっと頼りないが、聡明な人物。
いい子。ヤンチャ気味なのはおそらく父の血。
いてもいい。特に決めてはいない。
PC4の国あたりに嫁いでいる娘はいそう。姉あたり。
なんなら第二王子をやめて重度のブラコン第一王女にしてもいい。姉でも妹でもいい。
御標:王の願いを叶える。
王の側近。近衛か、親衛隊長か。
息子の死の真相を突き止めることを、王の御前で宣誓する。
※PC1は裏ハンドアウトを持ちます。
御標:親友の本懐を遂げる。
事故死の直前、何かに脅えるような態度を取っていた親友。
彼の死に不信を抱き、事故の真相を求める。
御標:老いた王の国の綻びを正す。
かつて裁縫師であった王の国に綻びが生じた。
裁縫師協会の依頼で、その国に向う。
御標:自国に益する。
即位式に列席するため、国の代表として訪れていた。
自国の国益のためにも、この即位は重要なイベントであるはずだった。
※PC4は裏ハンドアウトを持ちます。
このハンドアウトの開示はGMの許可を取ってください。
あなたは、息子である王子を殺したのは王であり、王が伽藍でとなったことを知っている。
なぜなら、あなたはその現場に立ち会ったのだから。
王におりた御標は、
「そのいのち以て、若き王にその座を譲るべし」
その御標に、老王は喜び、国中に息子の即位をふれた。
我が身命を賭して息子を王に育て上げよう。そう誓った。
だがそれは、予想外の手段で成就されそうになった。
息子は伽藍となった宰相に操られ、父である老王を殺そうとした。
息子と、それを操っていた伽藍を自らの手で倒した時、
御標に背き「死にたくない」と思ったその時。
王は伽藍への道を歩むこととなった。
人であった最後の時に王の望んだことは、伽藍として討伐されることであった。
これが老王が最後に考えた「たったひとつの冴えたやり方」
そのための仲間を集めることが君の使命だ。
このハンドアウトの一番の目的は、PC4に裏があるとプレイヤーに思わせて疑心暗鬼をあおることだ!
プレイヤーは適度に引っ張った後、開示してよいです。
さておき、君の目的は次の王が自国の国益にかなう存在であるかを見極めることだった。
他でもそうしたように、自国を脅かす芽は早めに摘んでおかなければならない。
それが自身の御標の持つ意味だと信じていた。だが、
ほんとうにそうなのだろうか。
見極めるべき相手の突然の死が、自分の仕事が突然なくなってしまったことが、
心に小さな疑問を芽吹かせる。
正直、今の自分の役割をやめたいと思っている。暗殺とかもうやだなー。
王の居室。
御標が降りてくる。それを見て喜ぶ王。
国中に布令が飛ぶ。
老王、大喜び。
親バカっプリを遺憾なく発揮したロールプレイをしてください。自ら城下で布令をばらまくくらい。
ここでは御標そのものを開示しません。布令の中に「王位を譲るべしという御標が下った」と書いてある程度です。
この後、歪み表を適用してください。
以下、GM視点
この歪みは、第一王子の御標を伽藍が歪ませたことを想定しています。
早馬が、親友である王子の死を告げる。
夜半からの嵐が明けやらぬ朝。回想から始まる。
「不吉だ。季節外れの嵐の訪れに、PC2はあの時の親友の様子を思い出した。
(回想。王のお布令から数日、親友への激励に第一王子と面会をするPC2。
ここで、なにかに怯えている王子の姿を目にする)
早馬を告げる声が、PC2の回想を中断させる」
回想シーンの適当なところで、第一王子の死を告げる死者の登場。
暗転。
突然の王子の死にざわつく国内。
耳に入ってくる情報。
・戴冠式の予行演習で何かあったらしい。
・死んだのは、王子と、予行演習をしていた宰相の二人。
PC4は、身の安全の確保を名目に、体よく軟禁、拘束される。
他の国の列席者も客室を案内されたり護衛をつけられたりするのだが、何故だろう、PC4だけ扱いが違う。
以下、GM視点
第二王子は、PC4の国の暗部を知っている。
そのため、PC4を今回の事件の一番の容疑者として警戒しているが、国賓でもあるので言い訳が立つ程度の扱いに留めている。
客室の案内や護衛の手配に、第二王子が率先して指揮をしているシーンを入れると、第二王子の存在をプレイヤーに印象付けやすい。
裁縫師協会からの依頼。
ハンドアウト通り、とりあえず王の謁見をたまわろうと考える方向でお願いしてください。
ただし、プレイヤーから他の提案がある場合は全力で叶えてください。
シーンは、王の国に到着する手前でクローズ。
王の間にて、真相究明の任務を全うすることを誓ってもらってください。
「王は何も言えないのでお願いします」と、PC1にお願いしてください。
「悲しみのためか、深くうなだれ言葉もないようだ。王を思い、周りの重臣たちはPC1に期待を寄せる」
以下、GM視点
王からはなんの反応もない。伽藍なのだから。なりたてで王の良心が抑えている感じです。
事故についてPC1が調査していることを知り、合流しようとする。
国に着いた。タイミング的にはPC1の王の謁見の直後。
確かに王宮を中心にほつれが見てとれる。
早速謁見を賜ろうとしますが、当然ながらそれはかないません。
ただし、重臣たちからは、非常に申し訳ない感じで断られます。
「本来であれば、すぐにでも御目通り願うところなのだが、王は今、心労で臥せております。
PC1がことの究明に動いておりますので、どうかお力添えを」
老王自体、裁縫師を生業としていたこともあり、王の国は裁縫師に対する信頼が厚い。
老王が重臣に愛されている様子が、言葉の端々から感じ取れる。
軟禁されている部屋に、どうやって入ったのか自国から使者が内密にやってくる。
何が起きたのか、お前がやっちゃったのか、的な事実確認。
PCの合流を予定。以下のいずれかのルートを想定。
・重臣の一人に促され、来賓との目通り。主な目的はPC4の尋問。
その他の来賓を何人か顔を会わせた後、PC4との面会。
・現場検証。
その場合は玉座の間へ通されます。事故現場の情報は開示してよいです。
ここで案内した重臣から、第二王子がPC4を軟禁したことを知らされます。
・第二王子との面会
これは叶いません。
ここで、第二王子がPC4が軟禁したこと。そちらに向かっていることが知れます。
その他、PCからの提案があれば乗っかり、うまいことPC4と合流してください。
###情報収集
情報項目は多めですが、ひとり一つ対応したところで、強制的にミドル戦闘に突入します。
GMは最初にそのことをプレイヤーへ伝えてください。
事故は玉座の間で発生。
謁見の間とは別の部屋で、城下を見渡すバルコニーがあります。
事故はこのバルコニーからの転落死ということになっています。
死んだのは、予行演習をしていた王子と宰相の二人。目撃者はなし。
以下、GM視点
この情報は一般公開のもの。
予行演習は王も立ち会うはず。
誰もが次期王と認める人物。
お布令が出てから挙動がおかしい。なにかに怯えるよう。
以下、GM視点
伽藍である宰相の手により、王子の御標は書き換えられていた
「老王を弑し王位を簒奪せよ」
彼は自身の御標に怯えていた。
他国の使者をいきなり拘束するのはおかしい。
命令を出したのは、第二王子と彼を支持する一派。
第一王子自体の実力は認めており、第二王子も兄を支え国を平和にすることを望んでいる。
老王に似た第二王子を王にと願うものも少なからず存在する。
父の影響か、外交官になるという名目で他国へ遊学中、兄の即位に一時帰国。
以下、GM視点
支持派の独断専行を匂わせてもよいです。
第二王子を王にというのは願望であり、無理に叶える気はありません。
PC4の国のことは、裏ではそれなりに有名。
昔から暗躍を好み、老王の若い頃の騒動は、主にかの国のによるものという噂。
死んだ大臣はこの国出身。
PC1に濡れ衣を着せるため、PC1が尋問を始めて程よいところで発生。
敵はPC4の国の暗殺部隊。
密偵の目的は、PC4をこの国の争乱に巻き込まれた犠牲者として殺すことで、外交問題を起こさせること。
今後の国交を有利に運ぶためのもの。
戦える仲間が揃ったので、このままクライマックスへ向かいます。
PC1のプレイヤーに、裏ハンドアウトの開示を許可します。
開示はしなくても構いません。その場合、
「老王に成り代わった伽藍を倒すための戦力が集まったので、協力をお願いする、ということでもOK」
と促してあげてください。
PC1から何らかの提案がある場合は、全力で乗っかってください。
GMは、このあとのマスターシーンで、プレイヤーにだけ情報を開示する意味で事故の当日の回想シーンを挿入しても良いか、PC1のプレイヤーに確認してください。
以下、GM視点
PC1からの情報の開示はPCに対して行われます。GMの開示方法は回想シーン扱いなので、PCは知り得ません。
(PC1の同意を得た場合、もしくは裏ハンドアウトを開示した場合のみ)
王に襲いかかる第一王子。それを操る大臣。その場に駆けつけるPC1。
あわやというところで剣をかわし、王子を一刀に伏せる老王は、その怒りのままに伽藍を切り捨てる。
王子と大臣はもつれるようにバルコニーから落ちます。
駆け寄るPC1。意気消沈する老王。
「ワシがうまく、先にあの大臣を倒しておれば、せがれは助かった。
いや、そうでなくとも、ワシが死んでいたとしても、伽藍を倒すものが現れ、せがれを助けてくれたろう、そう、例えばお前のようなものが」
「だがな、ワシは思ってしまった。
死にたくない。
不本意な死であるとか、伽藍であるとか、そんなことではなく、純粋に、死にたくなかった」
「バカな話だ。この御標が下ったとき、あれほど喜んだというのに」
老王の手に親子三人の肖像画。手のひらサイズ。そこにかかれている御標
「そのいのち以て、若き王にその座を譲るべし」
不意に、老王からひずみが生まれる。
御標が、変化する。
「PC1よ、ひとつ頼みがある」
人ならざるものとなっていく王の、最後の言葉だった。
以下、GM視点
老王の御標の変化内容は任意です。実は決めないのが想定です。御標の変化後、肖像画が燃えるという演出を推奨します。
老王との対決。王座の間で、大臣の居並ぶ場で行うことを前提とします。
王は伽藍として公然と倒されねばなりません。
倒された後、王はバルコニーから飛び降ります。
クライマックス前のマスターシーンをしなかった場合はここで。
あとは第二王子の戴冠式を想定しています。
任意です。
⚫️最後に 〜定型文〜
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身内で、コンベンションで、楽しんで頂く分には、何ら問題ありません。2次利用(リプレイ、動画等)も同様です。
のみすけです。 とある御縁により、いいシナリオ保管場所を見つけられたと感謝しきり。 シナリオコンテストとか以外は、ほぼシナリオフック的なメモを保管します。 しばらくは過去のシナリオのサルベージをのんびり。 非公開のものは新作です。どこかのコンベンションで開示するまでは非公開になります。ご容赦を。 連絡先は一時的な提示です。
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