2019年07月23日更新

【MM】はじまりの骨のものがたり

  • 難易度:|
  • 人数:3人~4人|
  • プレイ時間:4~5時間(ボイスセッション)

タイトルは、グインサーガの続編執筆などを手掛ける、五代ゆう先生のデビュー作より。ただしあちらは「物語」。
HJ文庫で復刻されていたので、そちらなら手に入るかもしれません。
【序章】
少女は剣を舞わせていた。
騎士は戦渦に懊悩していた。
わらべは貧困に立ち向かっていた。

そして。
魔法使いは、そこにいた。
それが求めるものは、ただひとつ。
それは、剣ではない。戦禍ではない。貧困ではない。
魔法使いはただ、いずこかに囚われた己の半身を、探し求めていた。

モノトーンミュージアム「はじまりの骨のものがたり」
正しき幕を引き、カーテンコールを。

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ストック

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コメント

はじめに

筆者が一番最初に書いた、モノトーンミュージアムのシナリオです。
地の文が多いのは多分そのせい。こなれていない。

物語

物語1

少女は戦場にいた。
育ててくれた魔法使いに恩を返すために。
その思いがいつしか、父に対するそれでなくなっている事に、気づかずにいた。

騎士は戦場にいた。
意味もなく続く戦争で、家督の義務を果たすために。
色のない世界の中で、ただひたむきに剣を振るう少女に、騎士は目を奪われた。

わらべは戦場にいた。
落ちているものを拾って売り、生きていくために。
戦火の跡で、魔法使いに笑みを向ける少女に、わらべは自分にない何かを見た。

紡ぐものは戦場にいた。
この物語にほころびをもたらすものを止めるために。
終わるはずのこの争いが、誰かの手によって際限のない殺戮へと変わっていた。

そして。
魔法使いが求めるものは、ただひとつ。
それは、少女ではない。戦禍ではない。貧困ではない。
魔法使いはただ、いずこかに囚われた己の半身を、探し求めていた。

物語2

あるべき物語はふたつ。
ひとつは魔法使いの物語。魔法使いは己の半身と再会し、少女は淡い失恋を経験する。
ひとつは騎士とわらべの物語。騎士はわらべと出会い、己の愚かさを知る。

伽藍は望む。多くの血を。
己の利益のために戦を行い、そして、勝利した。
その代価として巨万の富を得、ひととしての人生を失った。
人の姿に戻るため、彼は魔法使いの半身、彼の魂の伴侶たる聖なる骸「はじまりの骨」を手に入れ、復活に必要な多くの血を求める。

NPC

・魔法使い

特に名前はない。PC1の養い親。
「魔法使い」は職業というより種族名。ビビデバビデブーとか言いそう。
いわゆるおとぎ話に出てくる魔法使いで、存在的には精霊に近い。

魔法使いの御標

「伽藍に半身を捧げ、半身に赤き聖水を捧げよ」
但しこれは歪められたもの。正しくは、
「おのれに半身を捧げ、半身におのれの全てを捧げよ」

・領主

伽藍。肥え太って慇懃で強欲な感じ。
外見は、「ほかほかゴッド姉ちゃん」の作者をイメージ。ググれ。
己の欲を満たすため、御標に背き伽藍となったが、それさえも厭い、人であることを望む強欲な存在。

トレーラー

いつ終わるとも知れず、戦争は続いていた。
ささやかな内乱、そのはずだった。
騎士団が派遣され、暴徒という名の領民を制圧する。ありふれた話だ。
それが、もう一年も続いている。戦地は広がり、多くの死が山河を赤く染めた。
伽藍はただ、ほくそ笑む。

ハンドアウト

・PC1 メインアタッカー想定。

魔法使いの養い児。
魔法使いの願いに従い、戦場を駆ける戦剣の化身。
魔法使いは命令をしない。ただその望みを叶えるために、あなたは剣を振るう。
女性を想定していますが、PC2と性別が違えばどちらでも構いません。
PC2と同性という茨の道を選ぶことさえ、GMは受け入れましょう。

・PC2 壁役想定。

辺境の騎士。代々この地の領主に仕える家系。
無能な領主に従わざるえない自分。領民を救えない自分にいきどおりを感じながらも、
いくさで剣を振るうことしかできない自分のいたらなさを恥じる。
そんな時あなたは、戦場でPC1を目にする。
戦場を彩る剣舞に、そのためらいのない瞳に、敵であるにもかかわらず、あなたは一目惚れをする。

・PC3 支援役想定。

戦場の火事場泥棒。いわば領主の被害者。
いくさが起こることに疑問を持たず、自分の商売の場とだけ認識している。
少年、もしくは少女を想定。老練な傭兵兼火事場泥棒でも構わない。
立場や若さから、広い視野を持てないPC2に、別の視点で世界を見せる役割なので、
火事場泥棒として純粋な児童が地のものの生き方を示すなり、
酸いも甘いも噛み分けた壮年が、見ていられず口出しをするなり、
そこはプレイヤーにお任せ。
プレイヤーが3人の場合はNPCとすることを推奨します。

・PC4 遠距離火力想定。

裁縫師。
裁縫師協会、もしくは、自分が所属なり、師事なりしている相手、もしくは雇用主からの依頼で、
あなたはPCたちのいる国の戦争の元を見極めるよう言われる。
曰く「あの戦争には歪んだ御標が影響している」
あなたの使命は御標を正すことであり、戦争など知ったことではない。
結果、戦争が収まるのは別に構わないのだが。

シナリオ

オープニング

・マスター

物語1を語る。
以下、GM視点
シナリオの開始を告げるものです。各PCのハンドアウトを改めて認識してもらう意味もあります。
おごそかに。

以降のシーンは時系列順です。

・PC1 少女のおはなし

戦場の天幕。
開幕前の緊張感の満ちるなか、いつもどおり、魔法使いと話をする少女。
心酔する少女と、父性を見せる魔法使いの対比を示す。
少女への御標
「魔法使いの言うことを聞き、彼の願いを叶える」
ただしこれは過去に下った御標。
PC1に、歪みに当たる身体特徴を付与してください。これはプレイヤーが選べます。
例:紅い髪、片方だけ紅い瞳、右手に紋様、など。フレーバーです。
以下、GM視点
この御標は歪められたもの。
正しくは「魔法使いを助け、彼の願いを叶える」

・PC2 騎士のおはなし

戦場にて。
たやすく決着がつくはずであったいくさ。だが一人の少女の存在が、それをくつがえし続けていた。
「赤の 戦女神」それに戦場で逢った時、騎士は恋に落ちた。
騎士への御標「少女を導き、また自らも導かれる」
歪み表を適用してください。
以下、GM視点
この御標は歪められたもの。
正しくは「わらべを導き、また自らも導かれる」

・PC3 わらべのおはなし

戦場跡にて。
わらべはただ落ちているものを拾っていた。それがわらべの糧だった。
戦場で、わらべは少女を見た。騎士を見た。そこに違和を感じる。
戦場で相対するふたり。明らかに一方通行な想い。残念な感じの騎士。
わらべへの御標「騎士に己の生きざまを見せよ」
違和感はさらに大きくなる。

・PC4 紡ぐもの

裁縫師協会からの連絡。
戦場で埋め込まれたほころびが、もつれている。裁縫師に指令が飛ぶ。
「ほころびを正し、あるべき姿に」

第一幕

・マスター

騎士は少女と出会う。だが、少女は騎士に興味を持たない。
以下、GM視点
ばっさりと、PC2を撫で斬りにする感じで宣告。

・PC1

次のいくさの準備をする。
魔法使いが現れてねぎらいの言葉をかける。
「次もよろしく頼む」
しばらくは戦闘もないだろう。中立地帯ででも出掛けるといいと、外に出ることをすすめ方られる。

・PC2

戦争の経過を領主に報告に来る。
部屋に入る手前で、領主と魔法使いの秘密の会話を偶然聞いてしまう。
領主「少女に情でも移ったか」
魔法使い「あれはコマでしかない」
それ以上の会話は聞き取れない。
領主の部屋に入ると、魔法使いはいない。
聞いても領主ははぐらかす。
しばらくは戦闘もないだろう。中立地帯ででも出掛けるといいと、外に出ることをすすめ方られる。

・PC3

わらべは拾ったものを売りに来た。
そこで噂を聞く。
「このいくさ、なんでこんなにながびいてるんだ?」
ただの反乱分子の殲滅戦のはずが、もう1年も小競り合いが続いている。
小首をかしげながらも、自分に関係ない話だなと、中立地帯を歩いていると、PC2を見かける。からかってやろう。

・PC4

戦場の跡で、裁縫師はほころびを見た。(内容はプレイヤーの任意)そしてそのほころびの元がこの戦にあることに気づく。
情報を得るために、中立地帯へ向かうとしよう。

第二幕

・マスター

御標を受けたものたちが集い、ものがたりは少しづつ正しい方向へ。
以下、GM視点
皆が集合するシーンです。PC3起点くらいで巻き込まれつつ集合してもらってください。
GMからの提案としては、「PC3がPC2をからかう目的で、PC2に難癖つけて、PC1の座っているオープンカフェ的な場所に同席させる」です。
PC4は、そこに入っても入らなくてもよいですが、その状況が見える場所にいてもらってください。

・PC3

自由枠。PC1とPC2を引き合わせるために取る手段は問いません。

・PC1

突然、見知らぬ女性に肩に手を置かれる。
「どうやらあなたが元凶のようね」
第三勢力により、PC1が狙われる。中立地帯にもかかわらず、戦闘が発生する。
この女性は実は別口の裁縫師。
結果として伽藍に協力している少女を排除しようとする。
PC4は、彼女が裁縫師であると気づいてよい。

ミドル戦闘1

ここの戦闘は演出で済ませてもよい。
中立地帯で騒動を起こしてしまったことが重要。
戦闘を行う場合、1ターン経過で魔法使いが現れて戦闘終了。
憲兵が駆けつけるので、皆で逃げる。
PC2が憲兵に説明する選択肢もあるが、その場合、立場的に騒ぎの中心にいるのが問題なのと、PC1は確実に捕まる、もしくは逃げられて二度と会えない可能性があることを示唆。
皆で逃げてもらうのがよいです。
PC4は騒ぎを起こした裁縫師と間違われるので、まあ巻き込まれて一緒に逃げてください。

・PC2

逃げる途中、少しはぐれて(魔法使いの手妻によるもの)のち、騎士の前に魔法使いが現れる。
「君はうちの娘に好意を寄せているようだね。ありがとう、あの娘を慕ってくれて」
感謝の言葉を述べ、騎士に少女を託すようなことを言う。
ここで歪み表を適用してください。
以下、GM視点
この歪みは、魔法使いの行動によるもの。
歪められた御標とはいえ、少女を託すのは背く行為である。
気がつくと皆で逃げている途中の路地裏に戻っている。

・PC4

憲兵を撒いたので、一旦落ち着く。
そこで、ミドル戦闘のときの裁縫師から、PC4へ声をかけてくる。
PC4を裁縫師としての裏切り者とさげすみ、ほぼ問答無用で戦闘が再開する。

ミドル戦闘2

再戦、なのだが、相手の中のうち二人が異形化する。敵側の裁縫師も驚いている。
戦闘開始時に異形2体は正体を表し、他の兵士は脅されて戦わされる。

異形を2体倒すことが出来れば、少女と騎士の御標が正常に戻る。
ここで物語2の前半部分を語る。

最終幕

・マスター

御標を取り戻した彼らは、災いの根源を追い詰める。

・PC1、2

御標の意味を考える。
魔法使いの行動でほつれが生まれた理由は?
少女の御標が歪められていた理由は?
この戦争のキーマンである、PC1、2に下った御標により、本来であればいくさは収束するはずだった。
それを望まない存在。伽藍が、本来であれば関係しないPC1とPC2の御標を交わらせた。
ここで、魔法使いの歪められた御標がPC1の前に現れる。
「伽藍に半身を捧げ、半身に赤き聖水を捧げよ」
赤き聖水とは血のこと、伽藍は多くの血の贄を求めていた。

・マスター

伽藍のものがたりを語る
「凡庸な領主がいた。悪政をしいない、という意味ではよい領主なのだろう。
代々領主を務めるその地に、戦争を仕掛けるやからがいた。凶作に飢え、蛮族と化した、隣国の民だった。
無駄な出費だ。そう思いながらも、領主は直属の騎士団を派遣した。
そこで出費以上の見返りを得た。国からの褒賞金と、新たな領土。充分すぎる利益だった。
そしてそれが、領主を歪ませた。
御標を歪ませて他国に侵略させ、打ち倒し、益を得る。
いつしか領主は伽藍になり、そのことを悔いた。
おのれの行いをではなく、伽藍になったことを。
領主は偶然知り、偶然手にしてしまった。
「はじまりの骨」と呼ばれる聖なる骸。
それに大量の生き血を捧げることで人間に戻れることを。今手元にあるこれが、それであることを。

・PC4

PC1の御標が正されたことにより、好機と判断し、魔法使いが現れる。
伽藍の目的を語り、伽藍に君たちを捧げると言って連れていく。
以下、GM視点
魔法使いの目的は当然ながら伽藍の討伐。
歪んだ御標に背かぬような言動をしているだけ。
PC1の御標が歪んだままの場合、状況が御標と矛盾し、PC1は異形化しかねない。彼の言は「伽藍に捧げる」だが、彼を助けるのは「伽藍を倒すこと」。
実際のところ、魔法使いの行動は自身の歪んだ御標に背く行為だが、彼は気にしていない。

クライマックス戦闘

魔法使いに導かれ、領主の謁見の間へ。
そこに居合わせた臣下もろとも、伽藍との戦い開始。

幕引き(エンディング)

・マスター

戦闘終了直後。
「はじまりの骨」はさらさらと灰になり、やがて透明な女性の像を形作る。
いとおしそうにその女性を見る魔法使い。
やがて、魔法使いの身体も透き通ってくる。
魔法使いの御標が正しきものに戻る。
「おのれに半身を捧げ、半身におのれの全てを捧げよ」
原初の魔法使いは、その伴侶に再びめぐり合い、いるべき世界へと帰っていく。
養い児であつPC1に一言声をかける。
「(GMにおまかせします)」
常からPC1とフラグを立てまくって、ガッツリ回収するセリフ希望。
筆者が前にやったのは、頭を撫でられるのが好きなPC1に、いつもは嫌々だが、最後に笑って頭を撫でる。ってセリフじゃねえ。行動でも可。
二人の姿が虚空に消える。

・各PC

それぞれの幕引きを。

おしまい

おまけ

戦闘配員と戦略の事例です。

ミドル戦闘1

・御神鎚衆(裁縫師相当)
・騎兵(モブ)×2

ミドル戦闘2

戦略

プレイヤーに、封鎖のわずらわしさを印象づける。
大鼠相当がエキストラを動かし、PCを封鎖。そこに御神鎚衆が遠隔で攻撃。
敵側の裁縫師は戦闘に加わらない。
・御神鎚衆(異形1)
・大鼠(異形2)
・エキストラ ×3
※大鼠に操られるだけの存在。PCの移動妨害のみ。

クライマックス戦闘

戦略

ミドル戦闘2と基本は同じ。エキストラが臣下になり、御神鎚衆が伽藍になる。
大鼠はいてもいなくてもよいが、いる場合は臣下の一人が異形として正体を表す演出で。

⚫️最後に 〜定型文〜
本文書の著作権は、著者であるのみすけに帰属します。
私的かつ非商業目的で使用する場合を除き、事前に著者の書面による許可を受けずに、複製、公衆送信、改変、切除、ウェブサイトへの転載等の行為は著作権法により禁止されています。
身内で、コンベンションで、楽しんで頂く分には、何ら問題ありません。2次利用(リプレイ、動画等)も同様です。

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のみすけです。 とある御縁により、いいシナリオ保管場所を見つけられたと感謝しきり。 シナリオコンテストとか以外は、ほぼシナリオフック的なメモを保管します。 しばらくは過去のシナリオのサルベージをのんびり。 非公開のものは新作です。どこかのコンベンションで開示するまでは非公開になります。ご容赦を。 連絡先は一時的な提示です。

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