タイトルは海外のSF短編より。内容はほぼ関係なく、漫画家きくち正太先生をリスペクト。ホンマスンマセン。
「食の大国」
家庭料理、薬膳、精進料理、宮廷料理、病人食、離乳食。ありとあらゆる食を追求し、外へ発信する、食文化の中心。
国が定めた12人の国家厨士は、国外への出張料理人として催し物に引っ張りだこである。
食の大国には女傑と評される大人物がいる。王族すら一目置くその人物は、かつて食のギルドで長を職とし、皆から「女将さん」と呼ばれ、恐れ敬われつつも慕われていた。
ある日、新米の新米国家厨士のもとに、依頼が来る。それは、女将さんの息子にして現ギルドマスターからの個人的な頼み事だった。
食の大国唯一のギルドの、元ギルドマスター。
その人柄から、現役時代は女将さんと呼ばれ、引退後は大女将(おおおかみ)と呼ばれたが、そっちは本人が激おこだったので取り止め。「あたしゃまだ若いよ!」
歳は70過ぎ。老いてなお壮健で、かくしゃくとした印象を受ける。
実は料理ができない。ただの食い道楽を突き詰めるとここまで行くという見本。
本名はエルクール。
歳は50前後。女将さんの息子となっているが、実は出自はよくわからない。
どっかで拾ったんじゃなかろうか?
女将さんが結婚したり産んだりという想像がつかない。まあ、女将さんも若い頃は色々あったかもしれない。
元はギルドの事務方筆頭で、誰が呼んだか「番頭さん」
この人も料理は出来ない。大丈夫か、この食のギルド
PC4のおじいちゃん。ギルド創立メンバー。ザ板前。
シナリオの一番最初で女将さんに包丁を返すのはこの人。
絶対的第三者にして自我を持った異質の伽藍。彼女は、御標を下す、もしくは歪めることで魔法を行使する。そのあと丁寧にひずみごと直す(ようにいい感じの御標を打ち直す)。
人に致命的な害はなさないが、致命的でない害はよく起こす。主にいたずら。
モノトーンミュージアムの世界に、NPCとしての魔女や、ラスボスに相当する悪い魔女はいても、存在そのものが超常現象的なチャシャ猫みたいな魔女がいないなあ、と嘆く筆者の願望の産物なので、ルールから逸脱した存在。
推奨サンプル :鋼の造物主、名もなき旅人(メインアタッカー想定)
コネクション:女将さん
貴方は国家厨士だ。新米の具合はプレイヤーに任せるが、少なくとも2、3回、他国に派遣された経験がある程度にすること。
国外でひと仕事終え、数年ぶりに馴染みの店でのんびりしていると、意外な人物が訪ねてきた。
「番頭さん」こと我らがギルドマスターその人だ。
推奨サンプル:微笑する執事、歯車仕掛けの従者(支援系想定)
コネクション:番頭さん(女将さんの息子)
貴方は女将さんの身の回りの世話をすることを生業とする。
実入りもいいし、やりがいのある仕事だが、貴方の一番の原動力は女将さんへの恩義だ。
他言無用。女将さんの体調に関して、番頭さんに口止めされたが、言われるまでもない。
推奨サンプル:魔弾の射手、針の魔女(遠距離系想定)
コネクション 食材流通ギルド
貴方はPC1の弟子だ。国家厨士を目指すという意味ではライバルでもいい。山河で育ち、野趣溢れる料理を得意とする。食材は現地調達だ。
推奨サンプル 秘境の巫女(稀人枠)
コネクション 祖父
大衆食堂を賄う祖父から、寝物語に聞かされた女傑の物語。自分の村は彼女に救われたという。彼女の役に立てたことが自分の誇りであると。
料理人になると言った時、祖父がくれたのは一本の使い込まれた包丁と、食の大国までの旅費だった。
このシナリオのクライマックス戦闘は料理です。
できればプレイヤー募集前くらいから、プレイヤーに必ず宣言してください。
基本、過去の話
以下、GM視点
オープニングは、一番古い時間から始まり、一番最近の過去で終わること。
女将さんの変化と番頭さんの成長を意識してプレイしてください。
PC2、PC3の順番は前後しても構いません。
歪み表の適用。
以降の内容は歪んだ御標によるものです。
ギルドホール。
ひとりの女性。歳は50半ば。同じ年格好の男性と対峙する。
間に挟まっておろおろする、若き番頭さん
「理由のひとつも言えないってのかい」
「ああ、すまんな」
包丁の持ち手を相手に向けて、騎士のように片ひざをつく。
「・・わかったよ。その包丁は餞別だ。持ってきな」
男は出ていく。
以下、GM視点
女将さんは包丁を受け取らない。
受け取ったらこの男は二度と戻っては来ない。そう信じた。
だから、ミドルフェーズでPC4がこの包丁を持ってきたとき、諦めというより、この当時の自分に納得したような気分になる。
包丁は戻ってきたのだと。
女将さんとの出会い。
プレイヤーの設定を拾ってシーンを設定ください。
PC1との出会い。
プレイヤーの設定を拾ってシーンを設定ください。
国家厨士の任命式。時代としては数年前。
元ギルドマスターである女将さん。歳は70手前。老いてなお壮健で、かくしゃくとした印象を受ける。
女将さんより直接に国家厨士の資格を賜る。
「今日をもって、あんたは他の国に我が国の料理の腕を振るう資格を得た。
これから、あんたの料理の腕前はあんた個人のものじゃあなくなった。
国の看板だ。精進しな。
そして、何より一番大事なことがある。
あたしにうまいもんを食わせな」
現ギルドマスターである番頭さんが、包丁を手渡す。通例は先代のものを継承するが、新品のようだ。
「PC1のお陰だ。しばらく空いてた12枚目の看板、あんたに任せるよ」
これは番頭さんの台詞。女将さんの心情の代弁。
料理人になると祖父に宣言する。
祖父から包丁を受け継ぐ。
ここから現在時間
床に臥しがちな女将さんの世話をする。
番頭さんがやってくる。
席をはずすように言われて退室する。
やあ母さんどうだい調子は、と明るい感じ。
しばらくすると部屋から出てくる。深刻な表情。
「PC1が帰ってきたら、いや、どの厨士でも構わんが、わしに知らせてくれ」
以下、GM視点
ここで、番頭さんがPC1に信頼をおいていること、かなり焦っていることを印象付けること。
あと、他の厨士が出払っていること、厨士はけっこう忙しく海外を飛び回っていることも。
ギルドへ道場破り。
包丁を見せると特別扱い。というか盗っ人扱い。そのあたりはPC4のプレイヤーのロール次第。とりあえず、ギルドに軟禁される。
「ギルドマスターが戻ったら、お前の進退の判断を仰ぐ(部外者には番頭さんとは言わない)」
番頭さんは不在。
PC1との仕事(海外の)帰り。PC2と遭遇。PC2が番頭さんに連絡して、とある料亭に集合。
PC4以外は登場可能
PC1に依頼する番頭さん。
場所は個室。座敷のようなところ。
なかなか豪勢な料理を食いながら、番頭さんは仕事の案配を聞く。
「そうかい、ごくろうさんだった。
女将さんにもよ、直接報告してやってくれ。喜ぶと思うんだ」
ここで言葉が途切れ、しばしの沈黙。
ぽつりぽつりと女将さんの具合を話す。
どうにも気力が出んそうだ。
外に出歩かなくなったよ。
PC2はよく世話してくれるよ。
メシも残すんだ、信じられるかい?
「なんにしても生返事な母ちゃんがよ、なにか食いたいもんがないかって聞いたとたんにキッパリ一言よ
「宵闇ヒトヨダケの季節鍋が食べたい」
なあ、教えてくれ、宵闇ヒトヨダケってなんだ。そいつの季節鍋ってのは、何をいれて作りゃあいい。
俺もギルドのカシラなんぞやってるが、ついぞ聞いたことがねえ。
恥も外聞もねえ、頼む、作ってくれ!」
以下、筆者注釈
このシーンはきくち正太先生の某作品ほぼそのままです。
興味のある方、ロールプレイの参考にしたい方は、キーワード「きくち正太 瑠璃」で検索してみてください。
PC4は番頭さんの目通りのあと、強制的に同席させられる。
GMのロールが続くので、PC4とのやり取りを適当に挟んでもよい。
女将さんへの報告。
PC1がひと通り報告を終えたあと、PC4の姿とその包丁を見て、昔話。
「あんた(PC1)、その包丁(PC4の)の由来を知ってるかい?
昔ね、悔しくて悔しくて、頭が痛くなるくらい歯ぎしりしたことがあるんだよ。
すぐとなりの国で、大量の難民が発生してね。理由は忘れちまったが、どうせ下らない国家間のなんちゃらだよ。
あたしも若かった。知り合いの腕利きを連れて炊き出しに行くって、先の王に嘆願に行ったが却下されたよ。
お前の身代が惜しいってのが主な理由で、それは光栄だったが、こうも言われた。
気まぐれで野性動物にエサをやるのと変わらん。その場しのぎがお前の求める食の道か。
先の王は改めてあたしに依頼したよ。かの国でどこでも手に入る食材で、誰でも作れる料理を作れってね。そう、それがあたしのギルドの創立の瞬間さ。そのときの筆頭厨士がPC1よ、あんたの先代だ。末席でいいなんて言ってたが、あたしの中じゃあ、あれが筆頭だったよ。
そう、こりゃあいつの包丁さ、出ていっちまったあいつのね」
語って聞かせるのはPC1にだが、言葉はPC4の、その先にいる人物に向いている。
難易度等は適宜決めてください。
→PC4の祖父がそれである。
どうやら味覚障害が引退の理由らしい。
当時、筆頭厨士を競っているつもりでいる雑魚厨士がいた。PC1の任命にもイチャモンをつけていた。
何十年経っても雑魚は雑魚。
これ見よがしに腕前を見せつける、見るだけで胸焼けがしそうな料理が得意。
PC1の任命式後、行方不明。
→レシピは残っていない。女将さんが語った、ギルド創立時の料理らしい。
その国の出身である、PC4の祖父が作った料理。
→良くはないが、精神的なものの影響と、かすかなひずみ。
病状はPC1を任命した辺りから少しづつ出ていた。
厨士のことで肩の荷が下りたのだろうが、症状に出すぎている。
ここで歪み表を適用してください。
以下、GM視点
女将さんの症状は歪んだ御標の影響によるもの。
ひずみが活性化し、女将さんの病状が悪くなった、という演出を入れてください。
歪みを引き受けることで、症状は和らぎます。
皆を連れて祖父の元へ。場所は女将さんが語った、難民が出た国。
プレイヤーが他のルートを提案してきた場合は頑張って叶えること。但し、雑魚厨士は情報が得られないので進まない。
祖父に会う。女将さんと同じ、だがより強いひずみ。味覚障害。
ここで歪み表を適用してください。
以下、GM視点
味覚障害は、雑魚厨士によるもの。但し、引退当時のは毒害。
それが今も続いているのは御標の歪みによるもの。
PC4の祖父に毒を盛ったとき、雑魚厨士は人ならざる道を知らず歩みだした。
おじいちゃんが教えてくれる。
この国の王に、女将さんの支援を受け入れさせるために、料理で奇跡を起こせることを証明するために作った鍋料理。
「鍋を作ったのはワシじゃ。だが、」と舌を指す。再現は難しいとつぶやく。
「宵闇ヒトヨダケはある特別な日に1日だけ生える。本来なら入手は無理だ。
但し、ひとつだけ方法がある。
森に住む魔女。かつて、この国を救った時にエルクールが世話になった」
おじいちゃんが教えてくれる。
宵闇ヒトヨダケを探す女将さんの前に現れる。ある条件と共に、あげるよと言う。
条件は、御標「一生料理を作れない」を受け入れること。
快諾した女将さん(「料理は食うもんだ」)を気に入り、御標で季節を曲げて宵闇ヒトヨダケを発生させる。
以下、GM視点
女将さんが料理が出来ない理由はこれ。
番頭さんは母の手料理の味を知らないので作らない(興味がない)。
女将さんの本名。おじいちゃんは女将さんと呼ばない。
「お前さんたちには女将さんかもしれんが、当時のワシらのマドンナだ。同期のもんは、そんな色気のない呼び方はせん」
マドンナて。
森に住む魔女に行く途中で、食材確保がてら戦闘してもよい。
森に住む魔女は突然ひょっこり現れる。
ささやかなお願いと言って、最近住み着いた伽藍の討伐をお願いされる。ささやかではない。
伽藍は伽藍を殺せないんだ。世界が滅ぶからね(魔女の大嘘。そんなことはない)。
退治はしなくても可。女将さんの話をすれば喜んでヒトヨダケをくれる。
退治する場合は以下のマスターシーンを挿入。
雑魚厨士。
筆頭厨士を目指す男。才能に溺れ、努力を怠り、相手を敬う気持ちを忘れ。女将さんに見捨てられる。
先代を逆恨みし、その根の深さは先代に毒を盛ることで人の道を踏み外し、男を伽藍へといざなった。
この伽藍との戦いはミドル戦闘です。
伽藍を倒すことで、おじいちゃんの味覚は正常に戻ります。
女将さんもちょっと元気になります。
誰が女将さんに鍋を作るか。
先代厨士(おじいちゃん)と話し合い。
選択肢はPC1、PC4、おじいちゃん。
推奨はPC1。
おじいちゃんは基本、作りたがりません。
不義理をした負い目と、PC4に包丁を譲ったという事実が邪魔をします。
なんなら一緒に行くのも面倒がります。そっちはPC4がお願いすればついてきます。
美味しい料理を振る舞おう。
GMは、食材、あるいは料理行程という名のエネミーを用意しましょう。
・制限時間ちょうどで食材を全滅させる。早くてもいけない。
・基本、食材は反撃しない。但し、熱い汁が跳ねるなど、GMは面白そうなら入れてもいい。なんなら即興で入れればいい。
「おおっと、砕いた貝殻の欠片が、PC2に襲いかかった!」
えー、ほどほどに。
以下に食材の例を挙げます。
装甲値の高いエネミー。攻撃は当たりやすい。
回避の高い、HPの低いエネミー
モブ、もしくは1エンゲージ内の雑魚エネミー。範囲攻撃による1ターンキル想定。
残りHPを5以下にする。倒してはいけない。
といった感じで、GMはレシピを考えてみましょう。
オリジナルエネミーを考えた方がおそらく早いです。
おじいちゃんを連れてきた場合、支援をしてくれます。
支援回数2回(以下のいずれか)
・判定値に+5
・振り直し
・ダメージロールに±5点の幅で補正
同じ支援を二度使っても構いません。
振り直しにはあえて「何の」振り直しか書きません。
料理が出来たらエンディングです。
みんなで鍋を囲む。
「美味しいねえ。
なあ、料理ってのは面白いね。あたしは今、懐かしさを食ってる。
そん中にゃ当時の嬉しさ、若さ、気恥ずかしさ、そんなもんがごったになってる。
この子(PC4)にとってはじいちゃんの生み出した料理のうまさだろうし、お前さん(PC1)には新しいレシピへの驚きだろう。
まるで万華鏡みたいに、見る人によって景色が変わる。食べる人、作る人によって味が変わる。
けどね、うまい料理ってのは難しいけどシンプルだ。
食べさせたい人のために作る。
そういった意味じゃあうちの息子もいっぱしの料理人さね」
任意です。
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のみすけです。 とある御縁により、いいシナリオ保管場所を見つけられたと感謝しきり。 シナリオコンテストとか以外は、ほぼシナリオフック的なメモを保管します。 しばらくは過去のシナリオのサルベージをのんびり。 非公開のものは新作です。どこかのコンベンションで開示するまでは非公開になります。ご容赦を。 連絡先は一時的な提示です。
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