2023年10月12日更新

【モノトーンミュージアム】再会と困惑の蜃気楼

  • 難易度:★★★|
  • 人数:3人~5人|
  • プレイ時間:5~6時間(ボイスセッション)

カトリ様@jikuxkの【#再会と困惑の蜃気楼】企画に参加させて頂きました。
 本演目は、【再会の谷】と呼ばれる谷で出会う、かつての恋人の幻影に執着する女性との物語である。
NPCがほとんど登場せず、PC達の自主性に依存する演目となる。
GM、PL共に経験者であることが望ましい。

■演目データ
 プレイヤー:3~5人
 演者レベル:3
 プレイ時間:約4~6時間(※オンセにおける想定時間)
※本演目は、ゲームマスター(以降GM)が『モノトーン・ミュージアムRPG(以降MM)』『インカルツァンド(以降IZ)』『トレイメント(以降TM)』『フィオリトゥーラ(以降FT)』を所持している必要がある。

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●最初に
 本シナリオを遊ぶGM(ゲームマスター)は、本文及びデータの内容を、複製したものに限り、改竄、削除及び加筆を行ってもよいものとします。
また本シナリオを遊んだことにより生じたあらゆる問題について、当方では一切の責任を負いかねます。予めご了承いただける方のみ、ご利用ください。
【要約:遊ぶ時に、話の流れやPCの設定で、シナリオの内容やデータ(エネミーデータ含む)が変わっても問題ありません。他のシナリオをプレイする時、このシナリオの設定を持ち込むのであれば必ずGMに相談しましょう。】

■演目データ
 プレイヤー:3~5人
 演者レベル:3
 プレイ時間:約4~6時間(※オンセにおける想定時間)

※本演目は、ゲームマスター(以降GM)が『モノトーン・ミュージアムRPG(以降MM)』及び『インカルツァンド(以降IZ)』『トレイメント(以降TM)』『フィオリトゥーラ(以降FT)』を所持している必要がある。

■本演目について
 カトリ様@jikuxkの【#再会と困惑の蜃気楼】企画に参加させて頂きました。
 本演目は、【再会の谷】と呼ばれる谷で出会う、かつての恋人の幻影に執着する女との物語である。
 NPCがほとんど登場しないため、どうしてもPC達の自主性に依存してしまう演目となっている。GMはPC達が積極的に行動してくれるように誘導すると良いだろう。難しいようなら、この事実を直接言ってしまっても構わない。
 また、本演目の最終戦闘では、単体火力が低いと戦闘が長引き、要するにダレてしまう可能性がある。GMは事前にこの事をPL達に伝えることを推奨する。


◆ 今回予告 ◆

 かつての友は、記憶の彼方。愛しき人は、彼岸の先。

 人は出会い、そして別れるものだから。
 また会いたいと、願うのでしょう。
 「さよなら」でなく、「またね」というのでしょう。

 ここは、「再会の谷」。
 また会いたいと願う人と、二度と会えない人と、再び会える奇跡の場所。

 それでは、あなたも君も、私も僕も、あの谷の底で会いましょう。

モノトーンミュージアム
「再会と困惑の蜃気楼」
          ーーーかくして、幻は紡がれる。


◆ ハンドアウト ◆
 各PCには以下の設定がつく。GMはセッション開始時にPLとよく相談すること。PLが5人以下になる場合は、PC番号の若い順に使用すると良い。

PC①:かつて大事な人と別れ、現在も離別している。
PC②:其達の研究者。カッサンドラと知り合い。
PC③:ベアトリスのかつての友人。
PC④:PC②の助手兼護衛。
PC⑤:其達

またPC①は「種族:からくり」以外でなければならない。


演目「再会と困惑の蜃気楼」【PC①用ハンドアウト】
■パートナー:大事な人 推奨感情:執着
■PC間パートナー:PC②
■クイックスタート:名もなき旅人(FTp102)

 君は左の地を旅する旅人だ。旅する理由の一つは、かつて別れてしまった大切な人に再開することだ。
 それ以外の理由は自由に決めてよい。

 ある日、旅の最中で君は噂を耳にする。
 どんな人とも再会することが出来る「再会の谷」。
 例え死に別れた人だろうと、再会することが出来るらしい。

 そしてどうやらその谷はこの近くにあるようだ。その噂が本当ならば、大事な人に会えるかもしれない。
 期待を胸に君は、「再会の谷」を求めて出発した。

 ※シナリオパートナーである「大事な人」がどんな人かは、PLが自由に決めて構わない。これには名前も含まれる。PLが「大事な人」の名前を設定する場合は、GMの許可をとり名前を変えると良いだろう。


演目「再会と困惑の蜃気楼」【PC②用ハンドアウト】
■パートナー:件の其達 推奨感情:興味
■PC間パートナー:PC④
■クイックスタート:叡智の探究者(FTp94)

 君は日々其達を研究する賢者だ。左の地に生息する其達の種類には際限がなく、それ故に研究は楽しいものだ。

 ある日君の知人である「"知の魔女"カッサンドラ・エテルネル」から頼みごとをされる。
 その頼み事とは、「再会の谷」という場所に生息する其達を取ってきてほしいそうだ。

 しかし彼女は、頼みごとをしてきたくせに、其達について一切教えてくれなかった。仕方なく君は、その其達について調べる為に「再会の谷」へと向かうのだった。


演目「再会と困惑の蜃気楼」【PC③用ハンドアウト】
■パートナー:ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ 推奨感情:懐旧
■PC間パートナー:PC①
■クイックスタート:針の魔女(FTp103)

 君は裁縫師組合所属の裁縫師だ。ほつれを繕ったり、異形と戦う日々を送っている。

 君はかつて「ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ」という女性を弟子に取っていた。彼女は不死者で、しかも紡ぎ手だった。紡ぎ手としての技術を学びたくて裁縫師組合に入った彼女を、当時の君が教えていた。

 しかし彼女を教え始めてから数年後、彼女は唐突に姿を消す。何故彼女が消えてしまったのか、どこへ行ってしまったのかは誰にも分からない。

 さらにそれから幾許かの時間が過ぎ、「再会の谷」の噂を耳にした。その場所へ行けば、もしかしたら彼女にまた会えるかもしれない。
 事の真相を探るために、君は「再会の谷」へ向かうのだった。


演目「再会と困惑の蜃気楼」【PC④用ハンドアウト】
■パートナー:PC② 推奨感情:友情
■PC間パートナー:PC⑤
■クイックスタート:戦場の申し子(FTp90)

 君はPC②の助手兼護衛をしている傭兵だ。どういった経緯でそういった関係になったのかはPC②と相談して決めること。

 PC②が、どうやら知人のカッサンドラに依頼をされたらしい。今度の場所は「再会の谷」という場所の様だ。

 君はその場所の噂を聞いたことがある。なんでも、「たとえ死んだ者だろうと再会できる場所」の様だ。しかし噂にはこんなものもあった。

 「その場所へ行った人のほとんどが、帰ってこなかった」

 どうやら今回も護衛としての仕事が必要なようだ。君は戦いの準備を進めるのだった。


演目「再会と困惑の蜃気楼」【PC⑤用ハンドアウト】
■パートナー:「再会の谷」 推奨感情:興味
■PC間パートナー:PC③
■クイックスタート:奇妙な隣人(FTp111)

 君は其達だ。何処に住んでいて、今何をしているかは自由に決めて構わない。

 君の元に一つの御標が下る。

 『見通しの悪い深い谷の底。再び会える谷の底。得るはお宝。金銀財宝とは違うお宝なり。---めでたしめでたし。』

 ちょうど暇を持て余していた君は、この御標に従ってみることにした。


◆ 舞台設定:【再会の谷】 ◆
 左の地のどこかにある「かつて別れてしまった大事な人と再会できる谷」という逸話がある【再会の谷】。その正体は、谷の至る所に生える【蜃】と呼ばれるキノコの様な其達の出す胞子だ。その其達の出す胞子を吸うと、最も再会したいと考えている人物の幻覚を見る。非常に強力な幻覚であるため、触れることも出来るしこちらが傷付けられることもある。
 【ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ】が来るまでは廃村があった。元々どんな村があったかは、もはや誰にも分からない。彼女が来てからは、彼女が理を弄ることで村の見た目を綺麗なものに変えている。ただし人までは用意できないので、妙に小綺麗なゴーストタウンと化している。蜃の胞子が飛んでいるせいで、霧が出ているようにも見える。
 元々は大きな川が流れていたようで、その名残なのか地面には細く小さい川が流れている。


■NPC

■ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ
 裁縫師/不死者/異形
「彼にもう一度会えるなら、私はなんだってするわ。なんだってね。」
 かつて活躍した不死者の裁縫師。120歳。女性。
 暗黒期の只中に生を受けた女性。元々聖都で生きていた彼女は20代の頃に不死者となり、以降聖都で何不自由ない暮らしをする。
 それから数年後、【オットー・ソリアーノ】と運命的な出会いを果たし交際を始める。順調に見えた二人の生活は、しかし彼が病で命を落とすことで終焉を迎えた。
 悲しみくれた彼女には、オットーがいない生活での幸せな日々を綴った御標が下った。しかし彼の事を忘れられない彼女は、その御標に背いてしまう。勿論そうした者の末路は異形化という地獄だ。彼女は聖都の民に処刑されそうになり、命からがら聖都から逃れる。

 それから20年ほどの時が経ち、異形化もかなり進行してしまった。「不死者である私も、ようやっと彼の元へ行けるのね。」そう覚悟した彼女の前に、一人男が姿を現す。それは、かつてのオットーにそっくりの男性だった。勿論彼ではない。しかし彼女は確信する。目の前の男性は、オットーの生まれ変わりだと。その男性は、彼女がほとんど異形であるにも関わらず親切にしてくれた。そんな、かつてのオットーの様な行動に、彼女は感動の涙を流した。その涙は彼女の身体を伝い、地面に落ちると、彼女の異形化した部分が解けて消えていった。こうして彼女は紡ぎ手となった。

 それから彼女は、オットーの生まれ変わりである彼と生活を共にしながら、紡ぎ手としての技術を磨き、また魂についての研究を始めていった。今後、もしも彼が死ぬようなことがあっても、それを止めることは出来ない。不死者でもない限り、人が死ぬのは自然の摂理だ。だから、今後は彼の魂に寄り添おう。オットーの魂に寄り添って、彼の生まれ変わりと永遠に共に生きていこう。彼女はそう考え、魂についての研究を始めた。その研究の為に、理の技術体系化に成功した裁縫師組合にも所属した。彼女のその思惑はうまくいったようで、数年後彼が死んだ後、彼の新たな転生先を彼女は突き止めた。そうして彼女は、彼の魂と共に数十年を過ごした。

 しかしつい最近、彼がほつれに呑まれてしまった。ほつれに呑まれた魂は、虚無へと帰り輪廻の輪から外れる。完全に消えるのだ。彼女はそのことが納得できず、受け入れられず、歪んでしまった。

 その後彼女は、人知れずどこかへと消えてしまった。

 シナリオ本編では、「再会の谷」の噂を聞いた彼女が谷でかつてのオットー(幻覚)と再会し、幸せな日々を送っている。彼女が来る前の「再会の谷」は滅びた廃村だったのだが、彼女が住みやすくなるように理を弄って見た目を変えている。その為見た目だけなら霧が濃いゴーストタウンという感じになっている。

■オットー・ソリアーノ
 賢者
「おはよう。ベアトリス。今日も変わらず、君は綺麗だね。」
 かつてベアトリスの恋人だった男。享年24歳。男性。
 約100年前の聖都に住んでいた男性の学者。魂についての研究をしていた。どんな人にも優しく、困っている人を、たとえ危険人物だろうと放っておかない性格。
 かつて聖都で不死者として称えられていた【ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ】と運命的な出会いを果たし、恋仲となる。しかしそれから数年の内に病に伏し、そのまま帰らぬ人となる。

 その後彼の魂は輪廻転生し次の生を受ける。以降は転生するたびに、ベアトリスと出会い恋仲となる。それが2回ほど続いた後のとある人生で、彼は虚無に呑まれてしまう。こうして彼の魂は消滅し、転生することは二度となかった。

■蜃
 其達
「シューーー。(胞子を飛ばす音)」
 「再会の谷」に生息する茸のような其達。?歳。無性。
 基本的にはここにしか生息しておらず、他の地域ではほとんど見かけない。仮に見かけたとしても、「再会の谷」ほどの大きさの個体は存在せず、幻覚作用も胞子を意図的に大量に吸い込まない限りは発生しない。

 「再会の谷」に存在する蜃はかなり大きな個体ばかりで、小さい物でも人間の子供ぐらいの大きさがある。その生息数もかなり多く、それらすべてが幻覚作用のある胞子を飛ばしているため、谷の中はまるで霧が発生しているように霞がかっている。

 それでも特に強い幻覚作用を発生させているのは、「再会の谷」にある最も大きい個体だろう。谷の最奥部に生えているそれは、まるでセコイアの木の様に大きく、そこから放たれる胞子もかなりの量だ。
 蜃は大きな個体ほど強力な胞子を生成するようで、この最大の個体が発する胞子の幻覚作用は非常に強力だ。その効力は、幻覚に触ることが出来るほどである。

 因みに蜃は調理して食べると非常に美味である。それゆえか、蜃の見せる幻覚は見る人が一番再会したい人物の幻覚を見せる。そしてその幻覚の人物は蜃を守るような行動や言動をする。時には幻覚を見ている者を殺そうともしてくる。これが蜃が自分を守るために見せているのか、それともたまたまそうした作用があるだけなのかは不明である。


◆ 演目背景 ◆
 本演目は、左の地のどこかにある「再会の谷」と呼ばれる地で、過去に執着する不死者の紡ぎ手と対峙する物語である。

 演目の舞台となる「再会の谷」は深い谷で、左の地のどこかにあると噂されている。具体的な場所はここでは明記しない。もしもPLから質問された場合は、GMがその場で決めてしまって構わない。
 「再会の谷」は緩やかな坂になっており、谷を進んでいくといつか平地へと出る形となる。谷の形式としては「傷谷」に近く、地面に大きな亀裂が入ったような谷となっている。その谷の中心には、今は既に誰からも忘れられてしまった廃村があり、その村を中心として【蜃】という茸の様な其達が生息している。

 その谷に、噂を聞きつけた【ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ】が訪れ、そしてそこで【オットー・ソリアーノ】の幻覚を見る。ベアトリスは既に精神が歪み始めていたため、オットーが幻であることに気付かなかった。或いは気付かないふりをしていたか、それとも幻でもよかったのかもしれない。
 ともかく彼女はオットーと再会し、そして彼を谷から連れ出そうとした。しかしオットーはもちろん幻なので、彼は谷から出たがらない。そのオットーの様子を見て、ベアトリスはこの谷の廃村に住むことにした。幸い彼女は不死者なので、飲み食いしなくても生きていける。村の見栄えに関しても、裁縫師としての力を使えば過ごしやすいものに変えることは容易だった。

 しかし彼女はそこで、余計なことをしてしまう。歪んだ御標を下したのだ。自分と彼が、永遠にここで幸せに暮らせるようにと。その結果、ごく小さいものではあるがほつれが生じてしまった。
 もちろん彼女はほつれなど放っておく。彼と一時でも長く過ごす事が、彼女にとって最も大事なことだからだ。

 彼女は誰にも迷惑をかけず、永遠に彼とここで幸せに暮らそうと考えているが、ほつれは放っておけば広がっていくし、歪んだ御標を下した彼女自身も、既に歪み始めている。いつかは手の付けられない異形と成り果てるだろう。

 PC達はそれぞれの思惑を胸にこの谷へと赴くことになる。そこで彼女と出会ったPC達が、彼女を倒すことで本演目は終焉を迎える。


オープニングフェイズ


■シーン1 噂 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC①のオープニング。PC①が「再会の谷」の噂を聞いて、そこへ向かうシーン。
 「再会の谷」の具体的な場所は設定していないので、GMはここで好きな場所に設定してしまっても良いし、上手くぼかしても良い。

▼描写1
 旅を続けていれば、一人での野営ばかりではなく、村や街で泊めてもらったり、誰かの野営にお邪魔させてもらうこともあるだろう。
 今夜も君は、小さな村へとお邪魔していた。

 君は村人に誘われ村唯一の酒場へと来ていた。店内は小さいながらも賑わっており、人々は思い思いの酒を煽りながら、笑顔で語り合っている。君が旅人だと知っている村の人は、旅の話を肴にしようと君の元へ集まってくる。

 □ここでPC①に何か語ってもらうのも良いだろう。語り終えるか、或いは何も語らないのであれば、村人から話しかけられる。

□セリフ:村人
 「そういや旅人さん。旅人さんはやっぱり、この近くにあるっていう噂の"アレ"を探しに来たのかい?」

 「ほら、"アレ"だよ"アレ"!どんな人とも再会できる"再会の谷"ってやつ。」
 「もしかして、知らないでここまで来たのかい?」

 「ここいらじゃちょっとした噂なんだけどね、なんでも、たとえ死別した人とだろうと再会することが出来る奇跡の谷"再会の谷"っていうのが、この近くにあるらしいんだ。」
 「まぁあくまで噂だけどね。」

 □村人は谷の場所を知らない。PCが訪ねても知らないので答えられない。

 □PLが谷にどうやって向かうのか迷いだしたら、「この付近に谷の入口らしき場所は一か所だけしかない」と伝えると良い。

◆結末
 PC①が「再会の谷」を求めて村を出たならシーン終了。


■シーン2 知古 シーンプレイヤー:PC②
◆解説
 PC②及びPC④のオープニング。PC②が知人である【"知の魔女"カッサンドラ・エテルネル】に仕事を依頼されるシーン。
 PC②と④の共通オープニングとなるため、最初から両方登場となる。

▼描写1
 【"知の魔女"カッサンドラ・エテルネル】。かつて暴君カリギュラの参謀を務め、恐怖政治に荷担していた大罪人。現在は聖都にそびえる古城の地下牢に捕らえられている。---表向きには。

 彼女には多くの友人知人がおり、君もその一人だ。
 ある日君の元に、カッサンドラから手紙が来る。内容はいたってシンプルで、地下牢まで来て欲しいとのことだった。

 君は助手兼護衛であるPC④を伴って、カッサンドラのいる地下牢へと赴いた。君たちが来ることは予め伝えられていたようで、牢の中へはすんなりと通された。
 その牢の中心には、本の山を椅子代わりにして本を読む、"知の魔女"が佇んでいた。

□セリフ:カッサンドラ
 「ああ、よく来てくれたね。まぁ適当な所にでもかけてくれよ。」

 「さて、本題に入ろうか。今日来てもらったのは、君に頼みたいことがあるからなんだ。君は"再会の谷"というのを知っているかい?」
 「たとえ死別した人とだろうと再会できる奇跡の場所。されどその実態は・・・。」
 「まぁ谷についてはどうでもいいんだ。重要なのはその場所だよ。」
 「実は、そこにしか生息しない其達がいるんだけど、ちょっとそいつを取ってきて欲しいんだ。」

 「谷の場所については教えてあげるけど、其達については教えてあげないよ。だってその方が面白そうだからね。」
 「正直、其達そのものよりも、それを取りに行く君の物語の方に興味があってね。なるべく楽しい冒険譚を期待しているよ。」

 □PC②が渋るようなら、「珍しい其達だから研究に役立つ」とか「取ってきたら一つだけ君の質問に答えよう」とか、PC②のメリットになりそうなことを言うと良いだろう。

 □カッサンドラはPC②に取って来てもらう其達を食べるつもりだ。その其達はとても美味で、少々の中毒性がある。久々に食べたいと考えた彼女は、知古であり其達の研究者であるPC②に依頼をしたのだ。もしもPC②が取ってきた其達をどうするか聞いてきた場合は、素直に答えても良いしはぐらかしても良い。

◆結末
 PC②と④が谷へ向かったらシーンを終える。


■シーン3 ベアトリス シーンプレイヤー:PC③
◆解説
 PC③のオープニング。【ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ】との回想シーン。

▼描写1
 これは、かつての記憶。ベアトリスという弟子との、懐かしい思い出。
 とある小さな町で起こった異形がらみの事件。君達二人の裁縫師は、この事件を解決した。しかし、この町では紡ぎ手も異形と変わりなし、という考えが主流だった。事件を解決したにも関わらず、君達は追われる身となり、命からがら町を飛び出した。

□セリフ:ベアトリス
 「何とか、逃げ切れたわね。師匠。」
 「こうしていると、あの頃のことを思い出すわ。私が異形だった頃に、聖都の騎士たちに追われていた日々の事を。」

 「師匠には、まだ話していなかったかしら?私はね、昔は異形だったの。聖都でエテルネルの称号を得て、何不自由ない暮らしをして。そして彼に出会って、幸せな日々を送ってた。」
 「でも御標で、彼とは別々の幸せを与えられた。私にはそんなの納得できなかったの!それで、異形に成ってしまった。」

 「それから長いこと逃亡生活を送ってたわ。とてもとても長い間。そうして逃げ続けて、もう駄目だ!ってところまで逃げて、そして彼にまた出会ったの。」
 「私ね、そこで紡ぎ手になったの。あの日御標に逆らったのは、間違いじゃなかったって、そう確信できたの。」

 「私は、彼と出会えて幸せよ。もちろん師匠ともね!」

▼描写2
 そんな彼女が突然行方をくらませてから、長い時が過ぎた。彼女の事を噂でも聞くことは無く、彼女は既に死んだのではないか?周りの者たちはそう考えていた。
 そんな折に、君の元に一つの噂が流れ込んできた。それは「再会の谷」の噂だった。かつて別れてしまった人と再び会える場所。そこに行けば、彼女にまた会えるかもしれない。

 □PLが谷にどうやって向かうのか迷いだしたら、御標を下して場所を示すと良いだろう。

◆結末
 PC③が谷へ向かったらシーン終了。


■シーン4 御標 シーンプレイヤー:PC⑤
◆解説
 PC⑤のオープニング。御標によって谷へ向かうシーン。
 このシーンはPC⑤の設定に合わせて状況を演出すること。もしも特に案が無い場合は、常闇森でのシーンにするとよい。

▼描写1
 君は其達だ。人とはどこか感覚が違う。人間ではないのだから当たり前だ。だから君の元に御標が下っても、それに従うかどうかは君の感覚によって変わる。
 普段通りの日々を過ごす君の目の前に、突然雷が降ってきた。驚く君の足元には、雷によって焼け焦げた地面と、そこに煌々と輝く文字があった。御標だ。

 『見通しの悪い深い谷の底。再び会える谷の底。得るはお宝。金銀財宝とは違うお宝なり。---めでたしめでたし。』

 □PCが御標に従うか迷うようなら、周りの人物や其達が従う様に促すと良いだろう。

 □PCが御標の指す「谷」について迷うようなら、其達の「みちしるべ(IZp198)」に案内させると良いだろう。

◆結末
 PC⑤が谷へ向かったらシーンを終える。


ミドルフェイズ


■シーン5 谷 シーンプレイヤー:PC⑤
◆解説
 PC達の合流シーン。PC達は全員最初から登場可能。PC①のみ強制登場。

▼描写1
 大地に入った大きな亀裂。その谷の入口は、緩やかに下る坂になっていた。谷の底は霧が発生しているようで、先を見通すことは出来ない。その谷の入口は、まるで地獄へと続いているかのような不気味さを湛えていた。

 □PC①が谷の入口へ近づくと、小さな立て看板が立っていて、そのそばには椅子に腰かけた老人がいる。

 □看板には「この谷、危険につき立入禁止」と書いてある。

 □PCが谷へ入ろうとすると老人が声をかけてくる。

□セリフ:老人
 「待ちなされ!まさか、この谷へ立ち入ろうとしておりませぬか?」
 「だとすれば今すぐ立ち去りなさい。この谷は危険です。」

 「わしは近くの村のもんです。この谷が危険な場所なので、人がむやみに立ち入らないように見張っておるのですよ。それがわしに定められた御標なのです。」

 「わしは何人もこの谷へ入っていくのを見ました。そして、入った者達は誰一人として、帰ってはこなかったのです。」
 「ある時わしに御標が下りました。『この谷へ赴く者に災いあり。谷の入口で老人は注意を促す。』と。ですからわしは、ここで見張りをやっとるのです。」

 「どうしても行くというのなら、わしには止めるすべはありませぬ。強引にでも行けばいいでしょう。ですが、わしは確かに注意しました。御標にただ従っただけではありませぬ。わしの本心として、ここは危険だと申しておるのです。」

 □もしも老人にベアトリスの事を尋ねるなら、「ここを通った人は多く、一人一人の顔など覚えていない。」とする。

 □PC達が谷へ入っても老人は異形化しない。あくまでも老人の御標は『注意を促す』だけである。

◆結末
 PC達が谷へと突入したらシーン終了。


■シーン6 影 シーンプレイヤー:PC④
◆解説
 ミドル戦闘のシーン。

▼描写1
 谷の内部は霧が濃く、先を見通すことが出来ない。周囲は谷の岩肌に囲われ、足元には僅かに川の名残の小さな水の流れが出来ている。谷の内部には、水の流れる音と君たちの足音だけが響いていた。

 □周囲には本当に何もない。植物も動物も無く、水も至って普通の水だ。

 □PC達がある程度進んだら下記判定を行わせる。

 [感応または知覚判定:難易度12]

 □誰か一人でも判定に成功した場合は、PC達に近づく襲撃者に気付ける。全員が失敗した場合は気付けずに[不意打ち]をされる。GMはIZp220の[不意打ち]のルールを把握しておくこと。

▼描写2
 突然空気の流れが変わった。周囲の霧が不気味に揺らめき、人影のようなものが形を成す。その人影は、君たちに襲い掛かってきた!

 □野盗×6と戦闘になる。エネミーのデータはFTp230の[忍者]のものを使用すること。

 □初期配置はPC達で一つのエンゲージを構成し、PC達の前方10mに3体、後方10mに3体配置する。ここは谷なので、左右は壁に囲まれているものとすること。

 □野盗は追加で次の特技を所持している。 《曇白の毒蛇》3 (MMp119)

 □野盗達は幻覚を見ている。PC達は野盗達の見る幻覚を害する者だと、野盗たちは思い込まされている。だから野盗達はPC達に襲い掛かってくる。GMは戦闘中にそれっぽい事を野盗たちに言わせても良いだろう

▼描写3
 襲ってきた者たちは、どうやら幻覚を見ていたようだ。ほとんどの者が正気を失っていた。気絶した彼らをよく見てみると、所々異形化している者もいるようだ。

 □PC達が彼らを起こして話を聞こうとするなら、起きた彼らは再びPC達に攻撃を仕掛ける。PC達が宣言すれば野盗を再び気絶させることが出来る事にする。

 □野盗達を調べるなら、彼らは最近現れた【桜花の国】から来たことが分かる。
 (今回の演目と【桜花の国】とは何の関係も無い。PL達が深読みしてセッションが長引きそうなら、GMはこの事実を伝えると良いだろう。)

◆結末
 野盗達を倒し、先に進もうと考えたPC①をまだ意識のあった野盗が、背後から殴り掛かった。不意の攻撃になすすべもなく、PC①の意識は薄れていった。
 ここでシーンを終了する。


■シーン7 記憶 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC①の回想シーン。このシーンはPC①の設定に強く依存する。GMは予めPC①のPLと良く相談すること。

▼描写1
 これは、かつての記憶。忘れることのない、大事な人との思い出。

 □PC①のパートナーである【大事な人】との回想シーンを演出する。

 □回想シーンの候補としては、
 「大事な人と別れてしまった記憶」
 「大事な人との楽しかった記憶」
 「大事な人との出会いの記憶」
 などがあるだろう。どんなシーンを演出するかはPLと良く相談すること。

▼描写2
 かつての記憶から目覚めると、君は誰かに背負われているようだった。どうやら君は、野盗に殴られたときに気絶してしまったようだ。

 □野盗はPC達が好きなように処理した事にしてよい。

▼描写3
 PC①が気が付いてから暫く歩くと、村の看板の様な物が見えてくる。その看板の先には、いくつもの家々が連なっており、どうやら村が形成されている様だ。そして村の入口には、一人の女性が立っていた。
 その女性は、PC③の良く知る人物。かつての記憶と寸分たがわない姿の、ベアトリスがそこに立っていた。

◆結末
 彼女は君達が近づくと、恭しくお辞儀をし一言、「ようこそ、【再会の谷】へ。」と言った。
 シーンを終える。


■シーン8 情報 シーンプレイヤー:PC③
◆解説
 情報収集シーン。ここでは情報取集判定を放棄する代わりに、購入判定が出来る。但し場所が場所なだけに、調達できるものは限られる。GMは自身が適切だと思うアイテムのみ購入判定できる旨をPLに伝えること。

▼描写1
 村の入口に立っていた女性【ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ】は、君達を自分の家へと案内した。村にはほとんど人の姿が無く、ベアトリスの家に着くまでに誰とも会うことは無かった。

□セリフ:ベアトリス
 「改めまして、ようこそ【再会の谷】へ。私はここに住んでいる【ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ】と申します。」
 (PC③の方を見て)「師匠、お久しぶりです。まさかこのような所で出会えるとは思いませんでした。積もる話もあると思いますので、後でゆっくりお話ししましょう?」

 「さて、あなた方がこの地へいらっしゃったという事は、あなた方も"再会したい誰か"がいるのでしょう?」
 「であれば、暫くはこの村に滞在すると良いでしょう。噂は真実です。ここに居れば、近いうちに必ず、会いたい人と再会できます。」

 「ただこの村はどうやら廃村だったようで、他に人はおりません。家を間借りする際は、掃除が少し大変でしょうね。」

 (ベアトリスの再会した人について聞く)「ええ!私も、彼と再び会うことが出来ました。彼は今席を外しているので、村で見かけたら挨拶をしていただけると嬉しいです。」

 (其達について聞く)「其達?ああ!もしかしたら、村の至る所に生えている茸がそうかもしれませんね。彼から"危険だから触れてはいけない"と言われているので、詳しくは知りません。あなた方も、あまり近寄らないほうがいいかと思います。」

 「私はそろそろ彼を探しに行こうと思います。彼、私が迎えに行かないと、いつまでもふらふらしているので。それでは皆様、ごきげんよう。」

 □ここからは情報収集となる。もしもPLが望むのならば、ベアトリスとの会話シーンを個別に用意しても良いだろう。


情報項目

■村について 【知覚】難易度:8、10

8□村は完全な廃村なようで、ベアトリス以外に住んでいる人はいないようだ。いくつかの家には焚火の後の様なものがあるため、長い事無人だったというわけでも無いようだ。村そのものはかなり前に廃村になったようで、入口の看板はかなり老朽化が進んでいる。

12□入口の看板をかろうじて読むことが出来た。どうやらこの村の名前は、【水底の蜃の村】というらしい。


■其達について 【知覚】【感応】難易度:8、12

8□この谷に生息している其達は、辺りに生えている茸の様なものの事で間違いなさそうだ。そもそも他に生き物が見当たらない。大きさはまちまちだが、小さい物でも成人男性が腰かけられるぐらいには大きい。見た目はとても毒々しく、傘からは胞子を常に飛ばしている。意思の疎通は不可能なようで、そこらに生えている茸と大きさ以外に違いは無いように見える。

12□この其達が飛ばしている胞子には、強い幻覚作用があることが分かる。細かい作用は不明だが、どうやら吸引した生物の最も会いたい人物の幻覚を見せている様だ。この谷の噂の真相は、この其達が見せる幻覚だったのだろう。幻覚作用は、胞子を体内に取り込んでいる量や期間に影響するようで、長く多く吸っている者ほど、強烈な幻覚を長時間見るようだ。


■ベアトリスについて 【知覚】難易度:12

□彼女の家で、彼女の書いたであろう日記が見つかる。日記には以下のようなことが書かれている。

 「一日目
  この谷は霧が濃く、太陽の光が届きづらいようだ。明暗で今が昼か夜かは一応分かるが、念のため日付を管理するために日記をつけることにした。・・・この谷で、本当の彼に会えるのだろうか?」

 「二日目
  谷をある程度進んだところに廃村があった。霧のせいで入口の看板が見えなくて、村の名前は分からなかった。折角なので、この村に今夜は泊めてもらおう。谷はまだまだ続いてそうだ。」

 「三日目
  谷の突き当りまで来た。突き当りにには巨大な茸が生えていた。とても大きい。どこかの国の城ぐらいはあるんじゃないだろうか?・・・ともかく、これでこの谷はおしまいだった。結局噂は噂だったのだろうか?彼には、もう二度と会えないのだろうか?」

 「四日目
  やった!彼に会えた!彼に、あの頃の彼に!最初の彼に会えたんだ!噂はホントだった!本当に彼に会えた!彼が死んで、その魂に寄り添って、転生した彼に出会って、死んで、転生して、出会って。そんな彼がほつれに呑まれた時は、もう彼には会えないんだって絶望したけど、奇跡は本当にあるんだ!彼はここにいる。確かにここにいるんだ!」

 「五日目
  どうやら彼は、この谷から出たくないらしい。ちょうどいいことに廃村があることだし、あそこを綺麗にして彼と暮らそう。彼がここを出たくないなら、ここで永遠に一緒に暮らせばいい。理由なんてどうでもいい。彼さえいてくれるなら、私は幸せだ。もう日記をつける意味も無いだろう。」

※もしPCがベアトリスとの会話を望むなら、GMは新たにシーンを追加しても良いだろう。


■谷に発生しているほつれについて 【縫製】難易度:8、14

□村の内部にはかなりの数のほつれが発生している。どれも小さいものだが、放っておけば連鎖的に広がり、ここも傷谷と同じになってしまうだろう。この多さでは、かなり近いうちにそれは起こりそうだ。

14□ほつれに触れ、その大元を探ると、このほつれはベアトリスが生み出しているものだと分かる。


※この情報項目はPC①のみ判定できる。
※この情報項目の判定は、他の全PCが判定を行った後に挑戦できる。

■村の人影について 【知覚】【感応】難易度:10

□村の内部を調べていたら、人影を見かけた。追いかけてみると、そこにいたのは(PC①の大事な人)だった。

※この情報項目の判定に成功した場合は、シーン9に進めるようになる。


◆結末
 「■村の人影について」の情報取集判定に成功したら、このシーンを終了する。

※GMはPL達に「PC達の情報共有は次のシーンで行ってもらう」事を伝えること。


■シーン9 再会 シーンプレイヤー:PC②
◆解説
 この谷の真実に気づくシーン。PC①以外は最初から登場。

▼描写1
 村についてある程度調べ終わった君たちは、PC①だけが戻っていない事に気が付いた。辺りを見回してみると、PC①が何かを追いかけてる様に走っていくのが見える。

 □PC達がPC①を追いかけるなら、次の描写2に移る。

▼描写2
 PC①の目の前には(PC①の大事な人)が佇んでいた。君の方をただ見つめ、何も言わずに微笑んでいる。その様子はどこか儚げで、今にも消えてしまいそうな雰囲気を湛えていた。

 □PC①が話しかけるならきちんと対応する。但しPC①が質問を投げかけるなら、はぐらかしたり話題を変えようとしてくる。

 □他のPCには、PC①が何もない空間に話しかけているように見える。

 □もしも他のPCがPC①を幻覚から目覚めさせようと行動するなら、(PC①の大事な人)はPC①をたぶらかして、他PCと戦わせようとする。

 □もしもPvPが発生するようなら、GMは逸脱能力の使用を禁止すると良いだろう。もしも逸脱能力を使用可能にしてしまうと、最悪の場合は決着がつかなくなってしまう為である。

◆結末
 PC①が説得されたらシーンを終える。


クライマックスフェイズ


■シーン10 歪み シーンプレイヤー:PC④
◆解説
 ベアトリスの歪みを止めるシーン。もしもPC達がベアトリスを倒すことを躊躇っていたり、理由に迷っている場合は、直前のシーンやこのシーンの冒頭で「歪みが拡大している影響」として歪み表をROCすると良い。この時どの表をROCするかはGMの自由で構わない。もしもそれでもPC達が彼女を放っておくなら、この谷はほつれに呑まれる。エンディングへ向かうと良いだろう。

▼描写1
 この谷を歪めている元凶、ベアトリスの姿は村の中には無かった。村の入口から出た様子も無い。恐らくは谷の奥へと進んだのだろう。谷の先へと進むと、案の定ベアトリスが谷の突き当りにいた。そこには、他の其達とは比較にならないほど大きな其達が生えており、その根元でベアトリスは、いもしない彼に向かって笑顔を向け話しかけていた。

□セリフ:ベアトリス
 「あら?あなた達も来たのね。紹介するわ。彼が私の愛しい人【オットー・ソリアーノ】よ。」
 「オットーったら、ここを気に入っているみたいでね。よくここに来ているのよ。・・・とても大きな其達よね。なんだか見入ってしまうわ。」

 (PCが幻覚について告げる)「・・・何を、言っているのかしら?彼ならここにいるじゃない。触れることも出来る。そんな訳の分からないことを言わないで。」

 (PCがほつれについて言及する)「それがどうかしたの?いいじゃない。ほつれくらい。彼との生活に支障が無いなら、別にいくらあっても気にしないわ。」
 「彼との幸せの為には、そうなる御標が必要なのよ。歪みの一つや二つ、大した問題にはならないわ。」

 「・・・そう。分かったわ。あなた達、私から彼を奪おうとしてるのね?そうはさせないわ!彼は私が守る。今までだって、そうしてきたのだから!」

◆解説2
 クライマックス戦闘。
 PC達で一つのエンゲージを形成し、そこから10mの位置にベアトリスを配置する。さらにベアトリスから15mの位置に【巨大な茸の其達】を配置する。
 【巨大な茸の其達】は自身を守ろうと、PC達に害を成してくる。ベアトリス自身も、彼が幻覚であることは薄々分かっていたようで、【巨大な茸の其達】を守ろうと奮闘する。そのため、【巨大な茸の其達】のHPが0になると、ベアトリスは動揺し、1ラウンドだけ行動不能に陥る。但しその後自暴自棄になり、強力な攻撃をしてくる。
 戦闘の終了条件はベアトリスを倒すことである。

□セリフ:ベアトリス
 (戦闘開始時)「私から彼を奪わないで。私の幸せを奪わないでよ!」

 (【巨大な茸の其達】のHPが0に)「いや!やめて!彼を奪わないで!それが無くなったら、彼も消えてしまう!」

 (HPが50以下)「なんで私たちの幸せを奪おうとするの?誰にも迷惑をかけていないのに!」

 (HPが0 [1回目] )「この程度で死ねるほど、不死者は甘くないわ。それに私は、まだ死ぬつもりは無い!」

 (HPが0 [2回目] )「幻だっていいじゃない。彼は彼よ!たとえ本物でなくとも、私にとっては彼だけなの!」

 (HPが0)「私も・・・彼の元に・・・行けるかな。ごめんなさい・・・師匠・・・。」

◆結末
 ベアトリスを倒したらシーン終了。


エンディングフェイズ


シーン11 別れ シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 共通エンディングのシーン。もしも希望するPCがいるなら、このシーンで消える直前のベアトリスと会話しても良い。

▼描写1
 ベアトリスが消えたことによって、谷に発生していたほつれも徐々に塞いでいく。これでこの谷が傷谷のようになることは無くなった。戦いで疲れたPC①の前に、(PC①の大事な人)が姿を現した。

 □(PC①の大事な人)PC①に別れを告げる。もしも(PC①の大事な人)が死んでいないのなら、幻覚かどうか分からない別れ方をするとより良い演出となるだろう。

◆結末
 PC達が谷を後にしたらシーン終了。


 以下はエンディングプロットとなる。これまでの展開に応じて、自由にシーンを演出すると良いだろう。

【個別エンディングプロット】
■PC⑤:こうして君の冒険は終わった。御標に従うと碌な目に合わないことが多いが、今回は割と楽しい部類だったのではないだろうか?今後も君の日常は続いていくだろう。もしかしたら、新たな御標が下るかもしれない。

■PC④:これにて今回の護衛の仕事は終了した。今後もPC②の助手兼護衛としてやっていくのか、今回を機に別の仕事に移るのかは君の自由だ。

■PC③:かつての弟子ベアトリスとは再会できた。そして彼女が去った真相も知れた。今後も君は裁縫師として活躍していくだろう。また新たな弟子を取るのも良いかもしれない。

■PC②:無事其達を採取できた君はカッサンドラに報告しに行くだろう。カッサンドラは取ってきた其達を君と共に食べようとする。ともに食事の席に着くのか、早々に次の研究を始めるのかは君の自由だ。

■PC①:結局、君の求める(PC①の大事な人)には出会えなかった・・・と思う。少なくともその姿を見ることが出来ただけでも、良いのかもしれない。今後も(PC①の大事な人)を追い求めて旅をするのか、今回の件で吹っ切れるのかは君次第だろう。


◆ アフタープレイ ◆


 演目の目的を達成した項目については、以下のように判断すること。

・ベアトリスを倒す:5点
・【巨大な茸の其達】のHPを0にする。:3点
・PvPを起こさない:2点


◆ エネミーデータ ◆


■ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ
◆逸脱能力
 □□□□《虚構現出》(MMp125) 使用された逸脱能力を打ち消す。
 □□《完全否定》(MMp125) 受ける実ダメージを0にし、付随する不利な効果を全て打ち消す。自身のみ。
 □□《瞬速行動》(MMp126) 即座にメインプロセスを行う。1ラウンド1回。自身のみ。
 □□《無力なる三文役者》(FTp129) 単体・視界の対象に使用。対象はラウンド中、逸脱能力を使用できなくなる。
 □□《時空収束》(IZp143) 攻撃宣言直後に使用。攻撃対象を自身のみに変更。
 □《星降る空》(IZp144) イニシアチブで使用。範囲(選択)・視界の対象に5D6点の実ダメージを与える。

《星降る空》は【巨大な茸の其達】のHPが0になったラウンドの次のラウンドの最初のイニシアチブで使用する。
それ以外はGMが状況に合わせて使用すると良い。

◆パーソナルデータ
種別:人間 レベル:15 サイズ:1
命:9 回:6 術:9 抵:8
行:8 HP:100 剥:12

肉: 9/+3 知:15/+5 感:15/+5
意:15/+5 社:9/+3 縫:18/+6

攻:〈術〉10 / 物理
対:単体 射:至近
防:斬1 / 刺0 / 殴0 / 縫7

◆特技
【常時】
《無限の魔》(MMp238) 1
MPの消費が無くなる。
《無慈悲なる一撃》(MMp237) 2
自身のダメージロールに+2D6。
《頂に近き者:術攻撃》(MMp121)2
術攻撃のダメージ+2D6。
《永遠の跳梁者》(IZp139)3
《悠久なる魂》で回復するHPの量が3D6に変更される。

【オート】
《御標の託宣》(MMp238)
好きな御標を下せる。
《虚ろなる魂》(MMp236) 1
バッドステータスを受けた時にそれを回復する。重圧には使用不可。HP-3。
《悠久の魂》(MMp120)1
HPが0になった際にHP1で復活する。1シーン1回。
《返し縫い》(MMp101)1
判定直後に使用。判定を振りなおす。1ラウンド1回。
《紡ぎ目》(MMp103)3
【縫製】か【術操値】での判定の達成値に+3。
《生への渇望》(MMp119)2
HPが0になった際にHP20で復活する。1演目1回。

【ダメージロール】
なし

【セットアップ】
なし

【マイナー】
《鋭き理》(IZp128)3
術攻撃のダメージロールに+9。
《早縫い》(MMp101)1
「タイミング:マイナー」の特技をあと2つ使用する。
《範囲攻撃》(MMp238)3
攻撃の対象を範囲(選択)に変更する。1シーン3回まで。

【メジャー】
《魔女の呪い》(MMp103)3
範囲(選択)・10mの対象に〈縫〉属性の1D6+6の術攻撃。
《魔女の嘆き》(IZp129)1
単体・20mの対象に〈縫〉属性の5D6+3の術攻撃。対象がリアクションに成功した場合、自身にもダメージロールが発生。

【イニシアチブ】
《侵されざるもの》(IZp138)3
HPを2D6+9回復する。1演目3回まで。
《パッチワーク》(MMp101)3
HPを4D6+3回復する。1ラウンド1回。3レベルなのでイニシアチブで使用できる。

◆行動指標
 以下に【ベアトリス・エテルネル・ラウティオラ】の戦闘での行動指標を記載する。ここでの行動指標とは、各タイミングに対してどういった行動を取るかを特技・逸脱能力をまとめて書いているものを指す。各行動指標には独自に名前を設定しており、後述する戦闘プランで使用する。名前にはあまり深い意味はない。

【攻撃】これが裁縫師の力よ!
《魔女の呪い》(MMp103)3 + 《鋭き理》(IZp128)3 + 《紡ぎ目》(MMp103)3 + 《頂に近き者:術攻撃》(MMp121)2 + 《無慈悲なる一撃》(MMp237) 2
タイミング:メジャー+マイナー+オート+常時
判定値:12 難易度:対決
対象:範囲(選択) 射程:10m
解説:永き生で培った術の技術と、学んだ裁縫師の力を合わせた術攻撃。範囲(選択)・10mの対象に5D6+15の〈縫〉属性のダメージを与える。

【攻撃(巨大な茸の其達のHPが0になって以降)】全力で殺してあげる!
《魔女の嘆き》(IZp129)1 + 《早縫い》(MMp101)1 + 《範囲攻撃》(MMp238)3 + 《鋭き理》(IZp128)3 + 《紡ぎ目》(MMp103)3 + 《頂に近き者:術攻撃》(MMp121)2 + 《無慈悲なる一撃》(MMp237) 2
タイミング:メジャー+マイナー+オート+常時
判定値:12 難易度:対決
対象:範囲(選択) 射程:20m
解説:自身に危険が及ぶことも厭わない、自滅覚悟の全力術攻撃。範囲(選択)・20mの対象に9D6+12の〈縫〉属性のダメージを与える。1シーン3回まで。

【PCのリアクションの判定直後】それ、無かったことにするわ。
《返し縫い》(MMp101)1
タイミング:オート
判定値:自動成功 難易度:なし
対象:単体 射程:視界
解説:時間を少しだけ戻して、起こった事実を無かった事にする術。PCのリアクションが成功したときに使用して、判定を振りなおさせる。1ラウンド1回まで。対象が複数いた場合はランダムに選ぶ。

【イニシアチブ】不死者の身体は伊達じゃないわ。
《侵されざるもの》(IZp138)3
タイミング:イニシアチブ
判定値:自動成功 難易度:なし
対象:自身 射程:なし
解説:不死者としての肉体を十全に利用し、自身の傷を治す術。HPを2D6+9回復する。1演目3回まで。

【イニシアチブ】この程度の傷なら治せます!
《パッチワーク》(MMp101)3
タイミング:イニシアチブ
判定値:自動成功 難易度:なし
対象:単体 射程:視界
解説:裁縫師の力を治療に充てて、自身の傷を治す術。HPを4D6+3回復する。1ラウンド1回まで。

【HPが0になった時(1回目)】この程度では死ねないわ。
《悠久の魂》(MMp120)1 + 《永遠の跳梁者》(IZp139)3
タイミング:オート+常時
判定値:自動成功 難易度:なし
対象:自身 射程:なし
解説:不死者の肉体は、そう簡単に死ぬことを許してはくれない。HPが0になった時、HPを3D6回復して復活する。1シーン1回まで。

【HPが0になった時(2回目)】まだ死ぬわけにはいかない!
《生への渇望》(MMp119)2
タイミング:オート
判定値:自動成功 難易度:なし
対象:自身 射程:なし
解説:死の間際で、それでも生きようと渇望する心が肉体を再生する。HPが0になった時、HPを20回復して復活する。1演目1回まで。

【リアクション】回避
特技の使用なし。


■初期配置
 PC達で一つのエンゲージを形成し、そこから10mの位置にベアトリスを配置する。さらにベアトリスから15mの位置に【巨大な茸の其達】を配置する。
 【巨大な茸の其達】は自身を守ろうと、PC達に害を成してくる。ベアトリス自身も、彼が幻覚であることは薄々分かっていたようで、【巨大な茸の其達】を守ろうと奮闘する。そのため、【巨大な茸の其達】のHPが0になると、ベアトリスは動揺し、1ラウンドだけ行動不能に陥る。但しその後自暴自棄になり、強力な攻撃をしてくる。
 戦闘の終了条件はベアトリスを倒すことである。
 【巨大な茸の其達】はHPと【オリジナル特技】一つだけをデータとして持っている。そのため、基本攻撃や回避はしない。【巨大な茸の其達】のデータは下記に記す。

■巨大な茸の其達
 HP200
 所持特技:【オリジナル特技】蜃気楼の胞子

《蜃気楼の胞子》1
タイミング:セットアップ
判定値:自動成功 難易度:なし
対象:場面 射程:視界
代償:なし
効果:この谷に生息する茸の其達が飛ばす胞子を、自衛特化に調整したもの。対象は即座にオリジナルバッドステータス[幻覚]を獲得する。

[幻覚]:攻撃宣言時、難易度12の【意志】判定を行う。成功した場合は特に何もない。失敗した場合は、攻撃可能対象の中からランダムに対象を選ぶ。この対象は自身も含まれる。
回復方法:マイナーアクション

■戦闘プラン

●セットアップ
【巨大な茸の其達】のオリジナル特技《蜃気楼の胞子》を使用して、ベアトリス含む対象にバッドステータス[幻覚]を付与する。

●【巨大な茸の其達】が生きている間
 基本は【これが裁縫師の力よ!】で攻撃するだけ。攻撃時にPCがリアクションに成功したなら【それ、無かったことにするわ。】で振りなおさせる。ダメージを受けた直後のイニシアチブでは【不死者の身体は伊達じゃないわ。】を使用しHPを回復する。

●【巨大な茸の其達】が倒れた後
 【全力で殺してあげる!】で攻撃するようになる以外は基本変わらない。イニシアチブでは【不死者の身体は伊達じゃないわ。】以外に【この程度の傷なら治せます!】も使用してHPを回復させる。

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