2023年10月12日更新

【モノトーンミュージアム】嘘のない話

  • 難易度:★★★|
  • 人数:3人~5人|
  • プレイ時間:6~7時間(ボイスセッション)

4/1のエイプリルフールをモチーフにした演目。 ハンドアウトや情報項目の扱いが他の演目とは少々異なるため、GMはその点に注意すること。
■演目データ  プレイヤー:3~5人  演者レベル:5  プレイ時間:約6~8時間(※オンセにおける想定時間)
※本演目は、ゲームマスター(以降GM)が『モノトーン・ミュージアムRPG(以降MM)』及び『インカルツァンド(以降IZ)』『トレイメント(以降TM)』『フィオリトゥーラ(以降FT)』を所持している必要がある。
※本演目では、逸脱能力【剥ぎ取られる虚飾】の使用を禁止する。GMは予めプレイヤー(以降PL)達にこの事を伝えるのを忘れないこと。

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●最初に
 本シナリオを遊ぶGM(ゲームマスター)は、本文及びデータの内容を、複製したものに限り、改竄、削除及び加筆を行ってもよいものとします。
また本シナリオを遊んだことにより生じたあらゆる問題について、当方では一切の責任を負いかねます。予めご了承いただける方のみ、ご利用ください。
【要約:遊ぶ時に、話の流れやPCの設定で、シナリオの内容やデータ(エネミーデータ含む)が変わっても問題ありません。他のシナリオをプレイする時、このシナリオの設定を持ち込むのであれば必ずGMに相談しましょう。】

プリプレイ
◆◆◆モノトーンミュージアムRPG演目「嘘のない話」◆◆◆

■演目データ
 プレイヤー:3~5人
 演者レベル:5
 プレイ時間:約6~8時間(※オンセにおける想定時間)

※本演目は、ゲームマスター(以降GM)が『モノトーン・ミュージアムRPG(以降MM)』及び『インカルツァンド(以降IZ)』『トレイメント(以降TM)』『フィオリトゥーラ(以降FT)』を所持している必要がある。
※本演目では、逸脱能力【剥ぎ取られる虚飾】の使用を禁止する。GMは予めプレイヤー(以降PL)達にこの事を伝えるのを忘れないこと。

■本演目について
 4/1のエイプリルフールをモチーフにした演目。様々な「嘘」に塗れた国で、真実を追い求める物語。
 ハンドアウトや情報項目の扱いが他の演目とは少々異なるため、GMはその点に注意すること。


◆ 今回予告 ◆

 『嘘を吐いてはいけない』
 という御標が下った【正直者の国】。

 この国では誰もがお互いを信じあい、毎日を正直に生きている。
 諍いも争いも無く、誰もが幸福に生きている。

 しかし、そんな日々は一つの歪みで崩壊する。

 『嘘の許容が出来ぬ者は、己の虚言でほつれ消えゆく。』

 嘘しか吐けないこの国に、最早本当は存在しない。
 ゆえにこの日は神様も、嘘を吐くしかないのです。

モノトーンミュージアム
「嘘のない話」
          ーーーかくして、物語は騙られる。


◆ ハンドアウト ◆
 各PCには以下の設定がつく。GMはセッション開始時にPLとよく相談すること。PLが5人以下になる場合は、PC番号の若い順に使用すると良い。
 また、本演目の全てのハンドアウトには、嘘が混じっている。GMは嘘の内容を、ハンドアウトを選んだPLにのみ開示すること。

PC①:【正直者の国】に住む兵士
PC②:かつて【正直者の国】に住んでいた旅人
PC③:【正直者の国】の教会に勤める僧侶
PC④:【正直者の国】に訪れた旅芸人
PC⑤:特になし


演目「嘘のない話」【PC①用ハンドアウト】
■パートナー:チェンシー 推奨感情:信頼
■PC間パートナー:PC③
■クイックスタート:守護の騎士2.0(FTp105)

 君は【正直者の国】で兵士をしている。
 兵士とは言っても戦争をしているわけではない。どちらかと言うと警邏に近いだろう。【正直者の国】は平和であり、他国との仲も良好だからだ。

 【正直者の国】でも特に正直な男と呼ばれ、君の同僚でもある【チェンシー】と、普段通りの平和な日常を君は過ごしていた。

 しかし、そんな平和は長くは続かなかった。
 たった一つの歪んだ御標が、君の平和な日々に亀裂を入れる。

 ※紡ぎ手未覚醒のPCです。演目中に覚醒タイミングがあります。覚醒までは逸脱能力と【縫製】判定が出来ません。

 ※※※注意!以下PC①の真実※※※

  君は実は紡ぎ手だ。周囲の人たちにはそのことを隠して生きている。

 ※※※※※※※※※※※※※※※※


演目「嘘のない話」【PC②用ハンドアウト】
■パートナー:ショウハン 推奨感情:猜疑心
■PC間パートナー:PC④
■クイックスタート:名も無き旅人2.0(FTp102)

 君はかつて【正直者の国】に住んでいた旅人だ。旅立った理由と現在どこで何をしているかは自由に設定してよい。

 君は【正直者の国】がその名前で呼ばれる前の、嘘と欺瞞に満ちた犯罪者たちの国だった頃に住んでいた。当時はそこそこ裕福で、何不自由のない生活を送っていた。
 しかし、当時の君は【ショウハン】という孤児に騙されて、手痛い思いをさせられた。今でもその時の恨みが忘れられずにいる。

 そして現在、君は風の噂で自分の生まれ故郷が【正直者の国】と呼ばれていることを知る。
 一体自分の生まれ故郷に何があったのか?そして未だ忘れられない【ショウハン】はどうしているのだろうか?興味の尽きない君は、居ても立っても居られず【正直者の国】へと向かうのだった。

 ※【ショウハン】にどんな目に遭ったのかは自由に決定してよい。悩む場合は、「騙されて有り金を全部盗まれた」などにしておくと良いだろう。

 ※※※注意!以下PC②の真実※※※

  君と【ショウハン】は実はとても仲の良い友人だ。何故確執がある様に偽っているのかと言うと、孤児である【ショウハン】が、「俺と関わりがあると知れると、お前の評判が下がるから」と気を利かせてくれたからだ。

 ※※※※※※※※※※※※※※※※


演目「嘘のない話」【PC③用ハンドアウト】
■パートナー:シャンシン 推奨感情:庇護
■PC間パートナー:PC⑤
■クイックスタート:御標の守護者2.0(FTp104)

 君は【正直者の国】に唯一ある教会に勤める僧侶だ。

 元々この国はとても荒れており、【正直者の国】と呼ばれる前までは犯罪者がそこら中に闊歩する危険な国だった。
 しかし、今から十数年前に下った御標をきっかけに治安は改善していき、現在は【正直者の国】と呼ばれるようになった。

 君はこの国が【正直者の国】と呼ばれるようになってから、この国の教会に勤め始めた。元々この国で教区長を務めていた老人が近年亡くなり、君が異動されてきたという訳だ。

 亡くなった前教区長は、孤児だった【シャンシン】という少女の面倒を見ており、彼女を教会に住まわせていた。現在の【シャンシン】は新しく異動してきた君と共に、教会で祈りを捧げる毎日を送っている。

 ※※※注意!以下PC③の真実※※※

  君は実は聖教会の正式な僧侶ではない。どの組織に属しているのか、或いはどの組織にも属していないのか、何故ここで僧侶をやっているのかは自由に設定してよい。

 ※※※※※※※※※※※※※※※※


演目「嘘のない話」【PC④用ハンドアウト】
■パートナー:チェンシー 推奨感情:興味
■PC間パートナー:PC①
■クイックスタート:月に憑かれた道化(FTp84)

 君は【正直者の国】に訪れた旅芸人だ。旅芸人をしている理由は自由に設定してよい。

 君は最近とある噂を耳にした。それは、「国民がまったく嘘を吐かない国がある」というものだ。そんな国を、少なくとも君は知らなかった。

 君の芸は多くの人に称賛されるものだ。しかし、本当にそれは本音からのものだろうか?そんな疑問を君は抱くことがあった。
 しかしこの国へ行けば、自分の芸に対して正直な意見が聞けるじゃないか!

 思い立ったが吉日、とばかりに君は件の【正直者の国】へと向かうのだった。

 ※※※注意!以下PC④の真実※※※

  実は君は裁縫師組合の一員で、【正直者の国】には任務で訪れた事がある。その時君は、国の住人である【チェンシー】にほつれを繕う所を見られてしまっている。

 ※※※※※※※※※※※※※※※※


演目「嘘のない話」【PC⑤用ハンドアウト】
■パートナー:【正直者の国】 推奨感情:なし
■PC間パートナー:PC②
■クイックスタート:永遠の姫君(MMp42)

 君は紡ぎ手だ。何処で何をしているのかは自由に設定してよい。

 君の下に一つの御標が下る。

 『嘘のない国は欺瞞に塗れ、歪みほつれる。されど歪みも虚偽に塗れ、最後に残るは真実のみ。ーーーめでたしめでたし。』

 御標の指す『嘘のない国』とは、最近噂で聞いた【正直者の国】の事だろう。君はこの国へと向かった。

 ※※※注意!以下PC⑤の真実※※※

  嘘などない。君に虚偽など在りはしない。故に何者をも騙すことが出来るだろう。

 ※※※※※※※※※※※※※※※※


◆ 舞台設定:【正直者の国】 ◆
 統治形態:議事会による合議制
 所在地:北部(商いの国と職工の国の間辺り)

 この国はかつて、嘘つきたちが多く存在した。誰もが人を騙し、金品を巻き上げ、食料を奪い去る。人を貶めることに快感を覚えるような嘘つきどもが闊歩するような国だった。
 しかし十数年前、国内に『嘘を吐いてはいけない』という御標が下った。御標であれば、たとえ犯罪者でも従わざるを得ない。こうして半強制的に、この国では嘘つきがいなくなり、犯罪も減っていった。

 そうして現在のこの国は、周りの国から【正直者の国】と呼ばれる、善良な者達が多く住む国だと認識されている。しかしその実態は少々異なる。
 かつて詐欺師や嘘つきが多く存在したこの国では、嘘を吐かずに人を騙す技術が発達していた。そのおかげでこの国に訪れた人々は、自分が騙されている事に気付かないままこの国を去って行くようになった。

 『嘘を吐いてはいけない』という御標に逆らうことなく、人々を騙す国。それが【正直者の国】の実態である。

 現在の【正直者の国】は議事会の決定により、嘘を吐いた者は罪に問われるようになった。この罪は周辺国と比べてもかなり重い罪として扱われており、内容によっては最悪国外追放にもなりえる。

 かつて嘘を吐いていた名残か、今でもついうっかり嘘を吐いてしまう者はいる。しかしそれは、自らの意志で御標に逆らい嘘を吐いたのではないため、直ぐに嘘を認め反省すれば異形に成ることは無い。嘘を吐いたことを認めずにい続けることこそが、御標に自らの意志で逆らう行いなのだ。
 そのためこの国では、嘘による犯罪行為が相次いでいるが、異形と成った者は未だ一人もいない。誰しも異形と成るよりは、罪人となる事の方がマシだからだ。

 この国では異形は勿論のこと、紡ぎ手も快く思われていない。もしも異形や紡ぎ手である事が判明すれば、極刑は免れないだろう。


■NPC

■ショウハン
 道化/日陰者
「ホントホント!俺は正直者ですよ。嘘なんてこれっぽっちも吐いたことない!」
 普段から嘘ばかり吐く男。19歳。男。
 【正直者の国】の外に住んでいる青年。元々は【正直者の国】に住んでいた。
 幼い頃孤児だった彼は、元々荒れていたこの国で盗みを働いたりして生き延びていた。しかしある日、『嘘を吐いてはいけない』という御標が下ってから国内の環境は良くなり、まともな生活が送れるようになっていく。それから少しの間は、御標を信じて生きていたが、国内の卑怯な大人たちに騙され、正直者は馬鹿を見ると学ぶ。その後、御標に逆らい嘘を吐くも異形化せず、紡ぎ手として覚醒する。
 嘘を吐いても異形化しないところを見られれば紡ぎ手とばれてしまう。【正直者の国】では紡ぎ手は異端とされているため、国外に住むようになった。友人のチェンシーとシャンシンは今でも国内で馬鹿正直に生きているため、心配している。
 因みに彼が持っている逸脱能力は【神速移動】と【剥ぎ取られる虚飾】だ。

■チェンシー
 戦人/異形
「嘘は良くないことだ!人間正直が一番だな!」
 嘘を吐かない真っ直ぐな男。19歳。男。
 【正直者の国】に住む新米兵士の青年。嘘を嫌い、正直に生きることを信条としている。常に正直に生きているため人望は厚い。
 幼い頃はチェンシーとシャンシンと共によく遊んでいた。
 国内の人たちにはそれなりに騙されることがあるが、それでも正直に生きることが幸せにつながると信じている。

 が、彼は秘かに嘘というものに憧れている。御標により嘘を禁じられているため、小さな嘘さえつけない彼は、嘘つきへの憧れが積もり積もって伽藍へと成ってしまった。彼の願望は誰もが度肝を抜かれるような大嘘を吐き、多くの人を騙すことだ。歪んだ御標を下した理由は、全ての国民を騙す為である。

■シャンシン
 僧侶
「私は主を、そしてこの国の皆さんを信じてます!」
 人を疑うことを知らない僧侶。17歳。女。
 【正直者の国】の教会に努める少女。人を疑うことを知らず、人の言うことをなんでも信じてしまう。しかし、人柄がよく素直で何事にも真っすぐなその姿勢に、多くの人が毒気を抜かれて彼女を騙そうとする者はいない。
 元々荒れていたこの国で、彼女は孤児として生きていた。その現状を見かねた先代教区長に拾われ教会に住み、現在は僧侶として住み込みで主に仕えている。
 秘かにチェンシーに想いを寄せている。


◆ 演目背景 ◆
 嘘を吐くことが出来ない住人の住む国。【正直者の国】。この国では、嘘を吐かないまま、人を騙す詐欺師の様な輩が多く存在する。

 この国で新米兵士をしている【チェンシー】は国一番の正直者として有名だ。嘘を吐かないのは勿論、人の言う事を簡単に信用し、誰の助けにもなろうとする。そのおかげか国内での人望は厚い。
 しかし、このチェンシーは実は嘘つきに憧れており、嘘を吐いてはいけないという御標と嘘を吐けない性格が相まって、徐々に彼の心に良くないものが溜まっていった。そうして積み重なった我慢が歪みと成り、彼を伽藍へと堕としてしまう。

 【ショウハン】はこの国唯一の嘘つきだ。過去に紡ぎ手に覚醒したことで、嘘を吐いても平気になった。自分が紡ぎ手である事を隠すために、現在は国外に住んでいる。国民ではないから、自分は御標の対象外だと言い張る為に。演目中ではさも黒幕の様な動きをしながら、PC達を手助けする存在となる。

 伽藍となってしまったチェンシーは、自分の一世一代の大嘘を吐くために、国内に『嘘しか付けなくなる』歪んだ御標を下す。勿論嘘を吐いてはいけない御標も有効なため、国内は異形だらけとなってしまう。

 歪んだ御標を下したチェンシーを倒し、歪みを正すことで演目は終わりを迎える。


オープニングフェイズ


■シーン0 約束 マスターシーン
◆解説
 ショウハン、チェンシーそしてシャンシンの三人の幼い頃の記憶。このシーンは後のクライマックスフェイズへの伏線となる。

▼描写1
 小さな教会の前で話す、三人の子供。一人は少女で二人は少年。少年の一人が話し始める。

□セリフ:ショウハン
 「それじゃあ約束な!もしも三人の誰かが困ったときは、この教会に集まるんだ。そんでもって、皆でそいつを助ける!」
 「俺たち三人の約束だぜ!」

◆結末
 これは、幼い頃の記憶。まだ彼が正直者だった頃の、幸せな思い出。
 シーンを終了する。


■シーン1 正直な男 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC①のオープニング。チェンシーとの日常シーン。このシーンでチェンシーの人柄などを表現できると良いだろう。

▼描写1
 【正直者の国】。そこは、国民すべてに『嘘を吐いてはいけない』という御標が下った国。誰もが正直に生きるこの国は、「嘘を吐く」以外の方法で人を騙す人間も多く存在した。

□PC①とチェンシーの二人で買い物をしている場面

□セリフ:チェンシー
 「おい見てくれ!PC①!この立派な壺を!」
 「なんでも、"持っていると幸せになれるかもしれない壺"らしいんだ!しかも今なら割引価格で売ってくれると言うのでな!思わず買ってしまった!」

 「うむ。持っていると確かに、幸せな気持ちになっている気がするぞ!今度店主に礼を言っておかねばな!」

□PC①がチェンシーに騙されていると指摘しても、チェンシーは怒ったりはしない。笑いながら「騙されたのなら、それは自分が悪いのだ」と言うだろう。

▼描写2
 二人が談笑していると、小さな子供が二人の前を駆けていく...と思ったら目の前でこけてしまった。
 涙ぐむ少年にチェンシーが声をかける。

□セリフ:チェンシー
 「大丈夫か少年!?怪我をしていないか?痛いところは無いか?」
 「必ず正直に言うんだぞ?嘘は良くないことだからな!」
 「もし嘘を吐けば、こわーい化物になってしまうぞ!だから痛かったら正直に言うんだ。」

◆結末
 チェンシーとある程度会話したら、キリの良いところでシーン終了。


■シーン2 忘れられない男 シーンプレイヤー:PC②
◆解説
 PC②のオープニング。【正直者の国】へ向かうシーン。購入判定タイミングがある。

▼描写1
 真っ白な空間。見渡す限りの白。遮るものは何もなく、音もない静かな場所。そこには、君以外にもう一人、男が立っていた。
 その男は君に笑顔を向けると、口を開き君に一言...。

 そこで君は目が覚めた。その男は、忘れたくても忘れられない、君の過去に関わりのある男ショウハンだった。

□PC②が旅をしているなら野宿していたテントから外へ、そうでないなら寝室から街へ出ると、旅商人に声を掛けられる。

□セリフ:旅商人
 「やぁやぁ!そこの御仁!私各地を渡り歩いて商売をしております旅商人でございます!」
 「あなた様のお眼鏡に適う珍しい品物がきっと見つかる事でしょう!いかがです?ご覧になって行っては?」
 「今なら特別価格!旦那からここいらの話をしてもらえるなら、更にお安くしときますよ?」

□PC②はここで購入判定が出来る。この際達成値に+5する。

□セリフ:旅商人
 「いやはや毎度どうも!ありがとうございます!」
 「そうそう、サービス代わりと言っては何ですが、最近耳にした面白い噂をお教えしましょう。」

 「商いの国と職工の国の間辺りにある【正直者の国】って国はご存じですか?」
 「なんでもその国では、嘘を吐けないって御標が下ってるみたいでしてね?国民達は皆正直にしか話さないんですって。」

▼描写2
 商人の話を聞いて、君は思い出していた。かつての故郷を。今は【正直者の国】と呼ばれる国の事を。そして、あの男の事を。幸いにも今の君に、急ぎの用事は無い。

◆結末
 PC②が【正直者の国】へ向かったらシーンを終了する。


■シーン3 信じる少女 シーンプレイヤー:PC③
◆解説
 PC③のオープニング。シャンシンとの日常シーン。

▼描写1
 【正直者の国】にはあまり信心深いものは居ない。元々この国が犯罪者が多くいる国だったこともあり、国内には自分自身のみを信じる人が多いのだ。
 シャンシンは、そんな国で最もと言っても過言ではないほど信心深い少女だ。神を信じ、他人を疑わず、日々を慎ましやかに生きている。

 今日も彼女は祈っている。この国の幸福の為に。

□セリフ:シャンシン
 「・・・。あ!おはようございます!PC③様。今日も一日、精一杯主にお仕えしますね!」

 「そういえば、先ほど雑貨店の店主さんが"幸福になれるかもしれない壺"というのを寄贈してくださいました!」
 「私がお代をお支払いしようと思ったのですが、「シャンシンちゃんを騙すような真似は出来ねぇ!こいつは寄贈するから受け取ってくれ!」って言われまして。」

 「あの方も主を信じる敬虔なる徒なのですね。私はとても嬉しく思います。」

□PC③がチェンシーの話をするとかなり動揺する。

◆結末
 シャンシンとある程度会話したらキリの良いところでシーン終了。


■シーン4 芸に生きる者 シーンプレイヤー:PC④
◆解説
 PC④のオープニング。芸人枠なのでコミカルに演出できると良いだろう。

▼描写1
 芸をしながら旅をする君は、今日もどこかの街で芸をしていた。溢れる喝采、向けられる笑顔、投げ入れられない硬貨。
 そう、芸とはそういうものだ。いかに評価されようと、目の前で拍手喝采称賛の嵐だろうと、それが金銭に変わらないことは多々あることだ。

 今日も芸を終えた君に、一人の子供が駆け寄ってきた。

□セリフ:子供
 「げいにんさん!すごくおもしろかった!だからね、えっとね、これ!あげる!」(一輪の花を差し出す)
 「げいにんさんはね。すごくおもしろかったよ!でもね、ぱぱとままがね。「あんまりよゆうがないから」って。だからね。それあげたの!」

□その様子を見ていたひとりの男が、PC④に話しかけてくる。

□セリフ:壮年の男
 「いやぁ、見事な芸だったな!見ていてすごくおもしろかったよ!さっきの子ほどじゃないが、俺からもこれ。」(PC④に財産点1点付与)
 「あんたの芸が面白くなかったわけじゃないんだが、最近この国も不景気でな。皆あんまり余裕が無いんだ。許してくれよな?」

 「そうだ!最近噂の【正直者の国】に行って来たらどうだ?ここからそう遠くな国だしな。」
 「御標によって国民が嘘を吐けない国らしくてな。話題性があるってんで、最近貿易が盛んなんだよ。あの国なら結構潤ってんじゃねぇかな?」

◆結末
 PC④が【正直者の国】へ向かったらシーン終了。


■シーン5 導かれる者 シーンプレイヤー:PC⑤
◆解説
 PC⑤のオープニング。完全自由枠なため、PCの設定に合わせてシーンを演出する事。

▼描写1
 (PC⑤の設定に合わせて普段通りの日常を演出)
 そんな君の下に、一つの御標が下った。

 『嘘のない国は欺瞞に塗れ、歪みほつれる。されど歪みも虚偽に塗れ、最後に残るは真実のみ。ーーーめでたしめでたし。』

 あまり穏やかではない内容。誰もが幸福になれるはずの御標に"歪み・ほつれ"の言葉。明らかに異形が絡んでくるであろう内容だった。

◆結末
 PC⑤が【正直者の国】へ向かったらシーン終了。


ミドルフェイズ


■シーン6 【正直者の国】 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC達の合流シーンその1。PC③・⑤は強制登場。登場タイミングはシナリオで指定がある。PC②・④は登場不可。シャンシンのチェンシーへの好意をうまく表現できると良いだろう。
 

▼描写1
 左の地の北部。商いの国と職工の国の間辺りに位置する【正直者の国】。
 嘘を吐くことを御標によって禁じられたこの国は、今日も穏やかな一日を迎えようとしていた。

 昨今の正直者の国は、変わった御標の下った国だと周辺国で話題であり、貿易に訪れる商人や興味本位で訪れる旅人が後を絶たない。
 兵士であるPC①は、そうした来訪者を管理するのも仕事の一つだ。今日はチェンシーと共に国門で入国審査の仕事をしている。

□PC⑤はここで登場可能。

□セリフ:チェンシー
 「入国希望の者は荷物を一旦こちらに預けてください!その後は個室で衣服を脱いで、身体調査にご協力ください!」
 「ほら!PC①も声をだすんだ!俺ばかり声を出しているじゃないか!」

□チェンシー又はPC①がPC⑤の身体調査をしているタイミングで描写2へ

▼描写2
 PC①とチェンシーが仕事をしていると、街の方からこちらに向かってくる人影がある。この国の教会に勤めるシャンシンとPC③だ。
 シャンシンはチェンシーの下へ来ると、手に持った布包みを開いた。

□セリフ:シャンシン
 「チェンシー!お勤めご苦労様。これ、PC③様と一緒にクッキーを焼いたの!」
 「おすそ分けしようと思って持ってきたの!よかったら皆様と一緒に召し上がって。」

□PC③がシャンシンと一緒に来た理由は何でもよい。理由がお見当たらない場合はシャンシンの付き添いで来たという事でいいだろう。

□クッキーを貰ってチェンシーは大喜びしている。その様を見るシャンシンは顔を赤らめ嬉しそうにしている。

□会話のキリがいいところで描写3へ

▼描写3
 君達が談笑していると、通りに面した露店の方で騒ぎが聞こえる。何かを言い争っている様子だったが、一人の男が「だからこれは!海守りから直に買い取った正真正銘の塩の結晶なんだよ!」と怒鳴った。

 一瞬、静寂がその場に訪れた後、怒鳴ったほうの男は顔を青ざめ謝りだした。自分は嘘を言ったと。そのすぐ後に兵士が数人来て、男を連れて行ってしまった。

□セリフ:チェンシー
 「ああ、今日もか。よりにもよって国門の近くで起こらなくてもいいのになぁ。」
 (PC⑤に向かって)「すまない旅のお方、お見苦しいものをお見せしたな。今のは、露店の店主がどうやら嘘を吐いたようだ。」

 「この国では、御標で嘘が禁じられている。だがしかし人間は咄嗟に嘘を言ってしまう事もあるだろう?」
 「そうした嘘は、本人がすぐに嘘を認めて謝罪すれば、異形化は起こらないんだ。国の偉い人曰く、"咄嗟の嘘は意志無き嘘。故に神も見逃す。されどその嘘を、意志を持って吐き続けるなら、それは御標に背く行いだ"だそうだ。」

 「この国で嘘を吐くことはかなりの重罪だ。これは国外の人にも適用されるから、くれぐれも嘘を吐いちゃだめだぞ!」

 「そうだ!俺たちはそろそろ休憩の時間なんだが、良かったら一緒に昼食を食べないか?是非旅の話を聞かせてくれ!」

◆結末
 PC達の合流がある程度出来たらシーン終了。


■シーン7 嘘吐きな男 シーンプレイヤー:PC②
◆解説
 PC達の合流シーンその2。PC④もシーンの最初から登場。PC①・③・⑤は登場不可。

▼描写1
 【正直者の国】には国門が二つある。一つは【商いの国】側に面する、貿易が最も盛んな南門。もう一つは【職工の国】側に面する北門だ。

 チェンシーやPC①が入国審査をしていた門とは別の門から、PC②とPC④は入国していた。
 入国してすぐ目の前には大通りが広がり、いくつもの露店が開かれていた。それらの露店の一つで、店主と言い合っている男の姿が目に入る。

□セリフ:ショウハン
 「いやですからね?オヤジさん。あなたの家が火事になってるんですよ!早くいかないと、家のもん全部燃えちまいますよ?」

 「嘘じゃないですって!いくら俺が国唯一の嘘つきだからって、流石にこんな事件の嘘、吐くわけないじゃないですか!」
 「現にほら!あっちあっち!オヤジさん家の方から、煙上がってるじゃないですか!早くいかないと!お店は俺に任せてほら行った行った!」

□男が示したほうから、実際に小さな煙の筋が一本立っている。それを見た店主はかなり渋い顔をした後、悔しそうにその場を後にする。

□店主が走って行ったのを確認した後、男はお店の商品である食料をいくつか懐にしまった。PC達にはそれが見えている。

□PC②にはその男がショウハンであると分かる。

□PC達が声をかけるなら描写2へ。

▼描写2
 声をかけられた男、ショウハンはPC②達の方を向くと、一瞬驚いた表情を見せた。暫くの沈黙の後に、一言「ここじゃ目立つ。付いて来てくれ。」と言い路地へと入っていった。

□ショウハンへ付いて行くと、人気の少ない路地へと連れていかれる。ここなら何を話しても、誰かに聞かれることは無いだろう。

□セリフ:ショウハン
 「随分とまぁ懐かしい顔だな。元気にしてたか?PC②。」
 「なんで今更戻ってきたんだ?こんな、腐った国によ。まさか俺への復讐にでも来たのか?」

 (PC②がHOの嘘通りにショウハンに接する場合)「・・・へっ!そうかい。だがもう何年前のことだよそれ?流石に時効だろ。」
 「悪いが俺はお前ほど暇じゃねぇんだ。分かったらとっとと俺の事なんて忘れちまいな。過去に縛られてちゃ人生つまんなくなるぞ?」

 (PC②がHOの嘘をバラシてショウハンに接する場合)「おいおい!折角俺がお膳立てした嘘をばらすなよ!」
 「今の俺だって碌なもんじゃねぇ。そんな俺と関わってちゃあお前の評判が悪くなるぜ?」

 「まぁ何はともあれ、特に用がねぇならさっさとこの国を去ったほうがいいぜ?この国は今も昔も変わらねぇ。とことん腐った国だからよ。」
 「御標で嘘を縛ったって意味はねぇ。奴らの性根は腐ってやがるからな。人を騙して自分が利を得ることしか考えてねぇ。」

 「そうだ!折角遠路はるばるこの国まで来たんだし、ちょうど昼飯時だ。まだ滞在するってんなら、奢ってやるから何か食ってけよ。」

◆結末
 PC達の合流がある程度出来たらシーン終了。


■シーン8 ランチは賑やかに シーンプレイヤー:PC④
◆解説
 PC達の合流シーンその3。全PCがシーンの最初から登場。NPC同士の関係性などもこのシーンで演出。

▼描写1
 太陽が真上よりややズレたところに位置する時間。一般的に昼食を食べる時間に、君達はこの国で安いと評判の大衆食堂へと訪れていた。
 店に案内したショウハンは、入口でばったりチェンシー達と出会い、全員で大きな席を借りて食事をとることになった。

□セリフ:ショウハン
 「いやはや、すごい偶然もあったものですなぁ。まさか我が友チェンシーが同じ時間に、同じ店に、しかも同じように客人を連れて食事に来るとは!」
 「実に素晴らしい偶然だ!折角の機会ですからねぇ。是非、そちらの方ともお近づきになりたいものです。」(PC⑤の方を向いて)

 「では早速ですが!この俺から、皆様に自己紹介をしたいと思います。俺の名はショウハン。国の外で暮らす狩人です。普段は釣りや狩猟で食いつないでます。以後お見知りおきを。」

□セリフ:シャンシン
 「えと、では私も。私はシャンシン。この【正直者の国】の教会に住まわせていただいております。主にお仕えするしがない信徒の一人です。どうぞお見知りおきを。」

□セリフ:チェンシー
 「では俺も自己紹介を!俺の名はチェンシー!この【正直者の国】で兵士をやっている!何か困った事があれば俺に頼ってくれ!必ず力になろう!よろしく頼む!」

 (PC④の方を見て)「ところで、そちらの方はもしかして、どこかで俺と合っているだろうか?どうにも見覚えがあるのだが...。」
 「ああ!そうか思い出した!あなたはあの時の!」

□PC④が特に止めないのであれば、チェンシーはPC④が紡ぎ手である事を大きな声で話してしまう。

□PC④が紡ぎ手であることを、チェンシーは秘密にしてくれようとする。これは、チェンシーが「ほつれを繕っていたPC④」を良い人だと思ったからだ。

□PC達にも自己紹介をしてもらったら、好きに雑談をする。ショウハンが紡ぎ手である事とチェンシーの思惑以外であれば、GMの判断で自由に話して良い。

□話がひと段落したらショウハンが話し始める。

□セリフ:ショウハン
 「しかし皆様。あまり言いたくはないことなのですが、この国には長居しないほうが身のためですよ?」
 「この国は腐りきっている。嘘を吐けないことで、より一層その悪意は増していると言えるでしょう。嘘を用いない分、余計に達の悪い詐欺が横行している。」

 (笑みを浮かべながら)「いつかそう遠くないうちに、この国にもきっと裁きが下るでしょうね。」

▼描写2
 ショウハンがそう言うと、ピシッ、と何かにヒビが入るような音が響き渡った。その小さな音は、徐々に大きく、多くなっていき、君達の周りの空間にほつれを産んでいった。

◆結末
 描写2のすぐ後にシーン終了。


■シーン9 嘘吐きの御標 シーンプレイヤー:PC③
◆解説
 ミドル戦闘のシーン。全員登場。

▼描写1
 周囲に走るほつれは歪な笑い声を発し始める。聞く者の気を狂わせるそれは、徐々に形を持ち始める。

 『嘘の許容が出来ぬ者は、己の虚言でほつれ消えゆく。』

 誰しもが理解できるそれは、御標だった。
 周囲の人々が口々に言う。

 「御標だ!」ピシリ
 「ほつれが現れたぞ!」ピシリ
 「異形がいるんだ!」ピシリ

 言葉を発するたび、彼らは体をほつれさせる。歪んだ御標によるものか、彼らの身体はどんどん異形へと成っていった。

□歪み表Ver2.0をROCする。

□歪んだ御標によって、何か話すたびに異形化が進む。発した言葉が嘘であろうと本当であろうと御標に背いているからだ。

□チェンシーはシャンシンを護る様に立っているが、その体は徐々に異形化が進行している。シャンシンも同様だが、ほとんど言葉を発さなかったため、進行はかなり遅い。

□ショウハンはいつの間にか姿を消している。

▼描写2
 狼狽える人々。異形化する者達。ほつれ虚無に呑まれる彼ら。阿鼻叫喚の最中、完全に異形へと成ってしまった者達が、君達を見て襲い掛かってくる!

□異形化した者達と戦闘になる。エネミーデータは"大蛇(MMp240)"のものを使用すること。

□エンゲージはPC達で一つのエンゲージを構成し、そこから5mの位置に"大蛇(MMp240)"×3のエンゲージを配置。

◆結末
 戦闘が終了したらシーン終了。


■シーン10 協力者 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 戦闘後のシーン。ショウハンが黒幕ではないかと匂わせ、PC達のミスリードを誘う。

▼描写1
 何とか異形化した者達を倒した君たちは、その場にショウハンの姿だけ無いことに気付く。彼はどうやら戦闘が始まった際に、その場から逃げたようだ。怯えるシャンシンとそれを慰めるチェンシーの二人だけが、この場に残っていた。
 神妙な面持ちをしたチェンシーがPC①に対して口を開く。

□セリフ:チェンシー
 「お疲れ様だ、PC①。すごいな、お前は。お前のおかげで、被害が最小限に済んだ。本当にありがとう。」
 「それに比べて、俺は何の役にも立てなかった。本当にすまない。お前たちが命がけで戦っていたのに、俺は・・・。」

 「PC①、聞いてくれ。俺は見たんだ!戦い始まった際に、裏口の方へと駆けていくショウハンの姿を。」
 「あいつは俺の友だ。正直疑いたくはない。・・・だが、あいつの言葉を皮切りに、御標が下った。あまりにもタイミングが良すぎるとは思わないか?」
 「あいつは、この国で唯一嘘を吐く事が出来る男だ。関わりが無いとは思えない。」
 「それにあいつは、誰かを助けるでもなく、一人で逃げた。俺は、あいつの真意を確かめたい。」

 「PC①、図々しいお願いなのはわかっている。だが、どうか聞いて欲しい!ショウハンを、探してくれないか?」

 「俺はシャンシンを教会へと送っていく。ただ、教会も安全とは言い切れない。シャンシンの事は俺が教会で守らなければならない。」
 「だからPC①。お前にショウハンを探してもらいたいんだ。あいつを見つけて、教会まで連れてきて欲しい。お願いできないか?」

◆結末
 PC達がショウハンを探すことを決めたらシーン終了。


■シーン11 情報収取 シーンプレイヤー:PC⑤
◆解説1
 情報収集のシーン。この演目での情報収集は特殊な仕様となっているため、GMは解説2にある内容をよく読んで理解しておくこと。

▼描写1
 店の外に出ると、国のあちこちでほつれが走っている。身体に異形化の兆候が見える者も何人か見当たる。どうやら御標は国内全体に下ったようだ。
 一刻も早く原因を突き止め、事態の収拾を図らなければならない。この国がほつれに呑まれて消える前に。

◆解説2
 本演目での情報収集は、全ての情報収取判定に成功することで次のシーンへ進めるようになる。但し、基本的にPC1人につき判定は1回のみ行える。もしも全PCが判定を終えて、まだ判定に成功していない情報項目が残っていた場合は、クライマックス戦闘でのエネミー数を1体増やすことで、もう一度全PCが判定可能になる。
 また、本演目では判定に成功したPCにのみ情報を開示する。開示した情報をどう扱うかはそのPC次第である。GMは間違っても全PCに情報開示をしないよう注意すること。これらの情報はPCに事前に伝えること。


情報項目

※PC②のみ判定可能

■ショウハンの行方について 【社会】難易度:10

□ショウハンはどうやら、かつてPC②と一緒に遊んでいた路地に居るようだ。

※ショウハンと次のシーンで話せるようになる


■チェンシーの様子 【知覚】難易度:8、11、14

8□チェンシーはとても辛そうな表情をしている。異形化が進行する体で、大切な友を疑わなければいけない状況なのだから、当然と言えば当然だろう。

11□伝えるべきかどうかを迷うような表情を見せた後、チェンシーは君に伝えてきた。「もしかしたらショウハンの場所が分かるかもしれない」と。しかし彼はこうも伝えてきた。「シャンシンと俺と、ショウハンの三人で一度話してみたい」と。

14□チェンシーの異形化は、御標に背いたからだ。誰もがそう思っている。しかし、注意深く観察していた君だけは知っていた。彼は、言葉を発する前に異形化していると。御標に背いて異形化していないのなら、彼は何故異形化しているのだろうか?


※PC③のみ判定可能

■シャンシンの様子 【意志】難易度:8、11、14

8□シャンシンはとても怯えた表情をしている。この国がほつれに呑まれようとしているのだから、当然と言えば当然だろう。

11□シャンシンは君にだけは伝えてくれる。チェンシーがショウハンの居場所が分かったから、一緒に来て欲しいとお願いしてきたことを。そして自分はチェンシーの事を慕っており、彼の力になりたいという事を。

14□シャンシンは御標が下った後、二言三言、言葉を発してしまった。その所為で異形化は免れなかったが、その後はほとんど喋らずにいたためその進行具合は緩やかだ。それほど多くの時間をかけなければ、彼女が完全に異形化することは無いだろう。


■ほつれについて 【縫製】難易度:14

□ほつれに触れ、その理をほどき、原因を突き止めることに成功した。
このほつれを産んでいるのは、チェンシーだ。


■異形化した者達 【縫製】【知覚】難易度:8、12

8□異形化した者達の身体を調べた。この国で異形化した者の大半は、似たような姿へと変貌している様だ。
※クライマックス戦闘での一部のエネミーデータが解禁される。

12□どうやら異形化した者たちの中には、先ほどの者達には当てはまらないような姿へと変貌した者もいるらしい。こちらのほうが手強そうだ。
※クライマックス戦闘での全てのエネミーデータが解禁される。


◆結末
 全ての情報収集判定に成功したらシーン終了。


■シーン12 戯言 シーンプレイヤー:PC②
◆解説
 ショウハンとの会話シーン。PC②が"■ショウハンの行方について"の情報を共有したPCのみ登場可能。

▼描写1
 そこは、かつてのショウハンとPC②にとって思い出深い場所だった。細い路地を進んだ先にある、小さな広場の様な空間。周りが背の高い建物に囲まれた、街中にポツンと現れたエアーポケット。ショウハンはそこに居た。

□セリフ:ショウハン
 「よう。PC②。元気してるか?」
 「色々と、滅茶苦茶なことになっちまったな。」
 「だから言ったろう?さっさとこの国を出てった方が良いぜってな。」

 「俺を疑ってるのか?」
 「ああそうだよ!俺がやった!この腐った国を、一旦浄化してやろうってな!なんもかんもほつれに呑まれて、そんで一回綺麗にしようって。」

 「・・・なんてな。嘘だよ。俺がそんなことやるわけないだろう?」
 「俺はやってない。俺じゃない。犯人は別にいるんだ。」
 「なぁPC②、信じてくれるよな?俺は嘘は言ってないって。」

 「俺の目的は一つだけだよ。友人を助けたい。ただそれだけだ。」
 「こればっかりは本当に嘘じゃない。俺の偽らざる本心だよ。」

□ショウハンはここで逸脱能力《神速移動》を使用する。これに対して逸脱能力《虚構現出》を撃つことは可能。

□もしも《虚構現出》を撃った場合は、PCはショウハンに1つだけ質問が出来るものとする。この時GMは『正直に答える』か『答えない』のどちらかで質問に返答する事。質問をした後は、ショウハンは普通にシーンを退場する。

◆結末
 ショウハンはこの場を去った。去り際に彼は、「真実を知りたければ教会に来い。」と言い残していった。シーンを終了する。


■シーン13 閑話休題 シーンプレイヤー:PC④
◆解説
 ミドルフェイズ最後のシーン。全PC登場。PC同士での情報共有のシーン。このシーンで戦闘の準備を整えると良いだろう。

▼描写1
 街の様子は荒れていて、大抵の建物が壊され、多くの死体が通りに転がっている。泣き崩れる人、絶望し放心する人、怒りに震え武器を研ぐ人、幸いと言えることは、周囲に異形の姿が無い事だろう。
 恐らく元凶となる者は、教会に居るはずだ。君達は最後の戦いに向けて準備を進めていた。

□このタイミングで購入判定可能。この時判定値を【知覚】に変更して行ってもよい。

□このシーンでは1人1回だけ、シーンに登場しながら"舞台裏の処理"扱いでHP又はMPを1D6回復できる。

□PC達の任意のタイミングでシーンを終えることが出来る。

◆結末
 PC達が合意したらシーンを終了する。


クライマックスフェイズ


■シーン14 大嘘吐き シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 クライマックス戦闘のシーン。全員登場。

▼描写1
 教会へ向かうと、そこにはチェンシーとシャンシン、そしてショウハンの姿があった。ショウハンとチェンシーはお互いに向かい合い、その二人の間で交互に二人を見るシャンシン。
 チェンシーは厳しい顔を、ショウハンはおどけた笑みを向けあっていた。

□セリフ:チェンシー
 「ショウハン!君がなぜこんなことを引き起こしたのか、俺には分からない!だが、俺は君の友だ!友人が間違ったこ事をしたのなら、その償いは俺もするべきだと思う!」
 「ショウハン。俺はここで君を討つ。それが、この国の兵士である俺の勤めであり、友人である俺が出来る最大の償いだと思うんだ。」

□セリフ:ショウハン
 「俺を?止める?新米兵士のお前がか?笑わせるなよ、正直馬鹿が。」
 「俺を止めたって、この事態は変わらねぇよ。なら、この状況を最大限利用しようとは思はねぇか?」
 「なぁチェンシー、それにシャンシン。俺は、お前たち二人を助けたい。友人を、この腐った国から救いたいんだ。」
 「チェンシー。お前がどうあろうと、俺は気にしない。だから、三人でこの国から逃げよう!今がまさに絶好のチャンスなんだ!」

□PCがチェンシーを異形だと指摘するなら最初は軽く否定する。PCが尚も指摘してきた場合は描写2へ。

□PC達がチェンシーを異形だと指摘しようとしない場合は、ショウハンが「だから、もう嘘はつかないでくれ」といい逸脱能力《剥ぎ取られる虚飾》をチェンシーに使用する。描写2へ。

▼描写2
 俯き、影の出来たその顔は、表情を読み取ることは出来ない。かすかに震わせるその肩は、怒りによるものか、或いは。
 途端に、チェンシーは顔を上げた。その表情は、狂気に満ちた笑みを浮かべている。

□セリフ:チェンシー
 「アッハハハハハハハハ!正解!ご明察!その通り!俺こそが!今回の事件の黒幕でした!」
 「ああ。それにしてもネタバラシが早い!もう少しでチェンシーを殺せたのに。」
 「友を殺し、誰もが俺を英雄と呼び、国に平和が戻ったことを歓喜する!その幸せの絶頂で、俺こそが元凶だとネタバラシ!」
 「ああ、そうした時の皆の間抜けで絶望した表情が目見浮かぶなぁ!それが、一番の楽しみだったのに!」
 「ああ、でも仕方ないか。俺自身、ネタバラシをしたくてうずうずしてた。もうちょっとで我慢が出来なくなっていたと思うよ。」

 (PCに動機を聞かれる)「理由なんてないさ。強いて言うなら、俺がやりたかったからやったんだ。」
 「俺は昔から嘘ってものに憧れていた。いつか誰かを騙して、そんで大笑いしてやりたいって思っていたんだ。でも俺は、馬鹿で正直者で、人を疑うことを知らなかった。だから嘘も吐けなかったんだ。」
 「更には神様からの御標だ!俺は、もう二度と嘘が吐けないのかと絶望した!この状況でなお嘘を吐くチェンシーに嫉妬した!」
 「だから、もういっそ全部壊れてしまえばいいと思った。どうせなら一世一代の大嘘を吐いて、全部だめにしようと思ったんだ!」

 「さて、ネタバラシが済んだ以上、もうここに用は無い。」
 「折角手に入れた力だし、他の国も同じことを繰り返そう!俺はこれから、もっともっと多くの人を騙すんだ!そうして誰もに絶望を与えるんだ。ああ!今からでもすごく楽しみだ。」
 「その前に、後片づけくらいはしていかないとな?」

◆解説2
 クライマックス戦闘。
 PC達で一つのエンゲージを形成し、そこから5mの位置に"大蛇(MMp240)"×2体を配置。更にそこから5mの位置にチェンシーと"大蛇(MMp240)"×2体を配置する。
 情報収集シーンで時間をかけていた場合は、追加で"詐欺師(FTp232)"をPC達のエンゲージからチェンシー達の方向とは反対方向の5mの位置に配置する。
 戦闘の終了条件は全エネミーの撃破である。

□セリフ:チェンシー
 (戦闘開始時)「さぁ!一世一代の大嘘!その幕引きと行こうじゃないか!」

 (HPが200以下)「やはり、大勢を相手にするのは辛いか。だがそれでも戦えている!すごいじゃないか異形の力は!」

 (HPが100以下)「まだまだ余裕だ!俺はまだまだ戦えるぞ!紡ぎ手!」

 (HPが0)「まだ......一度しか...嘘を吐いて...無い......の...に。」

◆結末
 戦闘が終了したらシーン終了。


エンディングフェイズ


 以下はエンディングプロットとなる。これまでの展開に応じて、自由にシーンを演出すると良いだろう。

▼描写
 元凶であるチェンシーが討たれたことによって、国内に現れたほつれは消えてなくなった。異形化の兆候があった者の大半は、徐々に元の姿へと戻っていった。中には異形化が定着してしまった者もいるようだが、そういった者達がどのような境遇となるのかは、今後のこの国の問題だろう。

 国の者達は、事件を解決したPC達に感謝を示している。しかしその心の内は、紡ぎ手という厄介者を早く追い出したいという想いが支配しているだろう。感応の高いものであれば、向けられる笑顔の中に、そういった心の内を読み取ることが出来るかもしれない。

 ショウハンは、チェンシーの行いもあって異形の仲間ではないかとの噂が広まっている。当の本人はあまり気にした風は無く、シャンシンが居るうちはこの国にとどまるだろう。友人を一人失てしまったとしても、せめて残ったもう一人の友人だけは、守りたいのだろう。

 シャンシンは、想いを寄せていたチェンシーの真実を知り悲しみに打ちひしがれている。生きる気力を失った様子で、今にも命を絶ってしまいそうだ。それでも彼女が生きているのは、ショウハンとPC③の存在によるところが大きいだろう。

【個別エンディングプロット】
■PC⑤:こうしてこの国の事件は終わった。君の興味がまだ尽きないなら、この国に滞在しても良いし、興味が失われたなら別の地へ赴くと良いだろう。少なくとも、この地で君に出来る事はもうないだろう。

■PC④:今現在のこの国は、異形事件の後で憔悴している。国民にも元気はなく、これから復興が進んでいくだろう。芸人である君には、一体何が出来るのだろう?

■PC③:上記の通りシャンシンは生きる気力を失っている。彼女は君に、道を示してくれることを願うだろう。あるいは、チェンシーの事は全て嘘だったのではないかと、現実から目を背けるような事を言い出すかもしれない。彼女にどんな答えを示すのかは君次第だ。

■PC②:上記の通りショウハンは国内に留まるそうだ。正確には今まで通り、国外に暮らしながら国に関わっていくようだ。君は今後、ショウハンとどう接していくのだろうか?

■PC①:友人であったチェンシーは、今回の事件の黒幕だった。君が紡ぎ手である事をチェンシーに黙っていたように、彼も異形であることを黙っていたのかもしれない。お互いを騙していた君たちは、最後には別れる形となってしまった。それでも君は生きているのだから、これからのこの国の事を、君は考えなければならない。


◆ アフタープレイ ◆


 演目の目的を達成した項目については、以下のように判断すること。

・チェンシーを倒し、正直者の国を救った:3点
・PC達自身が、チェンシーの嘘を暴いた:2点
・ハンドアウトに関わる内容以外で、PCが嘘を言った:そのPCのみ1点


◆ エネミーデータ ◆


■チェンシー
◆逸脱能力
 □□□《虚構現出》(MMp125)
 □□《憎悪の魔弾》(MMp127)
 □□《瞬速行動》(MMp126)
 □□《死神の招き》(MMp127)
 □□《凶運招来》(FTp128)
 □《墓所を超えるもの》(IZp144)

《虚構現出は》は基本PCの《虚構現出》に対して使う。《虚構現出》を2連続で使用するのは避けること。《憎悪の魔弾》は攻撃を受けるときに、《死神の招き》は攻撃をするときにそれぞれ積極的に使用する。《瞬速行動》はそれぞれのラウンドの最初のイニシアチブで使用する。それ以外ははGMが状況に合わせて使用すると良い。

◆パーソナルデータ
種別:異形 レベル:10 サイズ:1
命:10 回:6 術:6 抵:5
行:16 HP:230 剥:10

肉: 18/+6 知:12/+4 感:15/+5
意:12/+4 社:12/+4 縫:9/+3

攻:〈斬〉12 / 物理
対:単体 射:至近
防:斬7 / 刺6 / 殴5

◆特技
【常時】
《無限の魔》(MMp238) 1
《範囲攻撃半減》(TMp183) 1

【オート】
《御標の託宣》(MMp238) 1
《虚なる魂》(MMp236) 1
《堕ちたる魂》(IZp230) 1
《絶対先制》(MMp238) 1
《詐欺師の嘘》(MMp91) 3

【ダメージロール】
《罠の作り手》(MMp91) 3
《裂帛の気合い》(IZp115) 5

【セットアップ】
《一点集中》(IZp136) 1

【マイナー】
《攻撃増幅》(IZp230) 2

【メジャー】
《乱打》(MMp75) 2

【イニシアチブ】
なし

【リアクション】
《肉を切らせて》(MMp74) 3

◆行動指標
 以下に【チェンシー】の戦闘での行動指標を記載する。ここでの行動指標とは、各タイミングに対してどういった行動を取るかを特技・逸脱能力をまとめて書いているものを指す。各行動指標には独自に名前を設定しており、後述する戦闘プランで使用する。名前にはあまり深い意味はない。

【攻撃(3回目まで)】詐欺師の戦い方
《乱打》(MMp75) 2  + 《一点集中》(IZp136)1 + 《罠の作り手》(MMp91) 3 + 《攻撃増幅》(IZp230) 2
タイミング:メジャー+セットアップ+ダメージ+マイナー
判定値:12 難易度:対決
対象:範囲(選択) 射程:至近
解説:予め仕掛けた罠で動きを阻害しつつ剣で切りつける攻撃。〈斬〉6D6+24のダメージを与える物理攻撃を行う。1点でもダメージを与えた場合、さらに狼狽を付与する。

【攻撃(4回目以降)】兵士の戦い方
《乱打》(MMp75) 2  + 《一点集中》(IZp136)1 + 《裂帛の気合い》(IZp115) 5 + 《攻撃増幅》(IZp230) 2
タイミング:メジャー+セットアップ+ダメージ+マイナー
判定値:12 難易度:対決
対象:範囲(選択) 射程:至近
解説:異形の膂力で無造作に剣を叩きつける攻撃。〈斬〉7D6+24のダメージを与える物理攻撃を行う。


■初期配置
 PC達で一つのエンゲージを形成し、そこから5mの位置に"大蛇(MMp240)"×2体を配置。更にそこから5mの位置にチェンシーと"大蛇(MMp240)"×2体を配置する。
 情報収集シーンで時間をかけていた場合は、追加で"詐欺師(FTp232)"をPC達のエンゲージからチェンシー達の方向とは反対方向の5mの位置に配置する。
 戦闘の終了条件は全エネミーの撃破である。

■戦闘プラン

●セットアップでは特技の《一点集中》(IZp136)1を使用する。

●最初のイニシアチブでは特に特技や逸脱能力を使用せず、PC達の出方をうかがう様にする。基本的にはこちらからは接敵せず、PC達がエンゲージに侵入してきてから行動を起こす。PC達とエンゲージしてからは、イニシアチブで《絶対先制》(MMp238)1と《凶運招来》(FTp128)を使用し即メインプロセスを行う。その行動の次のイニシアチブでは《瞬速行動》(MMp126)を使用しよう。

●攻撃は3回までは【詐欺師の戦い方】を使って範囲に対して攻撃しつつ狼狽を与え、4回目以降は【兵士の戦い方】で高火力で範囲攻撃を行おう。範囲攻撃の際は《死神の招き》(MMp127)も使用すると良いだろう。

●敵が回避をする際は、《詐欺師の嘘》(MMp91) 3を使用する。但しこの特技はシーン3回までなので使用回数に注意する事。

●バッドステータスを受けた際は、基本は《虚なる魂》(MMp236) 1を用いて回復するが、【重圧】を受けた際にのみ《堕ちたる魂》(IZp230) 1を用いるとよい。

●攻撃をされた場合は《肉を切らせて》(MMp74) 3を使用する。

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