2023年11月10日更新

インセイン 『船を襲ったのは奴だった件』

  • 難易度:★★★★★|
  • 人数:4人~4人|
  • プレイ時間:8時間以上(ボイスセッション)

太平洋を行く船の中。上階に続く階段から黒いぶよぶよした球体が転がり落ちてくる。
男性が球体に近づき、「なんだこれ…」とそれを手にしようと触った途端、彼の腕が球体に飲み込まれていく。そして男性の全身を飲み込んだ球体は、フルフルと震えると、同じ大きさの球体二つに分裂した。そして、そのうちの一体がまたフルフルと震えると、先ほどまで彼が身に着けていた衣服や時計、靴などを吐き出し、最後に肉をきれいにそぎ落とした人の骨を吐き出すのだった。
※推奨人数4人 キャラロストしやすいです。
※「インセインでサバイバル」をコンセプトに作成。サイクル数が”6”あります。
※PDFでもアップします。

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●インセイン 「船を襲ったのは奴だった件」

 

●概要

推奨人数:4人(3人でも一応可能。その場合、PC4をNPCとして配置)
サイクル数:6(3人なら8)
シナリオタイプ:特殊型/サバイバル
「インセインでサバイバル」をコンセプトに作成しました。末尾にPDFファイルを置いています。オフセならそちらも活用してください。下記の3つ以外にも、生き残る方法があるかもしれません。必要に応じて、エンディングを用意してください。
 

●背景

 事の発端は古くから続く名家が代々行っている成人の儀式。成人を迎える者がいればその年に、成人の儀式として様々な試練を課していた。今年も例によって、見聞を広めるために世界を周らせながら、試練を課そうと画策する。用意したのは先日、古代の遺跡から発見された不思議生物。無害かつ切っても焼いても死亡しないその生物を殺す方法を、独力で探し出してもらおうというものだった。もちろん一族の総力で、本部はその方法を知っている。試練の監視員にもその情報は渡していた。だが、いくら簡単と言えども、その試練を法整備が整った国内で行うと色々まずいので、海外で行なう。そのために、船に積み込んで旅先の海外で試練を受けてもらう予定だった。しかし、その情報は外部に漏れる。その生物を無力化・回収しようと国からエージェントが送り込まれたのだ。1日中探し回ったエージェントはようやく、その生物が入れられたケースを発見する。早速、無力化しようとケースを開く。エージェントは生物が非力と聞いていたため油断していた。素早く排気口に逃げ込んだその生物は生き残るために進化を遂げる。自分を痛めつけたやつらに復讐するために、そして敬愛するあの“モノ”に尽くす仲間を増やすために。
 たまたま船に乗り合わせた人々を襲う謎の球状生物。生き残った乗客の中には殺人鬼もいて…。混迷する船内をPC達は無事生き残ることが出来るのだろうか?
 

●導入

 晴れ渡る空。見渡す限りの海、海、海。客室にあるデッキに出たあなた達を迎えたのは、心地よい潮風と、群青の空と海だった。出航から丸一日。太平洋を横断する豪華客船「セント・クリスタル号」を堪能するにはまだまだ時間が足りない。豪華な食事。きらびやかなプール。荘厳なホール。静かな映画館。そして、各種イベントやショッピングモールが旅客を飽きさせない。
 
 そんな豪華な7泊6日の船旅に、破格の値段で参加したあなた達。事前の説明通り、他の部屋に比べると部屋は少し小さい。近くには機関室があり、少しだけだがその振動も来る。事実、地下にある客室は6室しか無い。そのほかの客室は全て上階にあり、これから行く国々で多くの旅客が載ってくる予定だった。しかし、泊まるには十分すぎる広さと設備。リビングにはテレビと特大のソファ。寝室にはダブルサイズのベッドが二つ。内装も欧風に洒落たものとなっている。加えて各部屋トイレとWi-Fiを完備していて、出不精にも優しい仕様になっていた。
 明日の朝まで港に寄ることがないため、今日は一日船の中だった。各々が一日を過ごし、ディナーをゆっくりと食べ、自室に戻る。明日は何をしようか。そんな期待を裏切るように夜、防音仕様のドアが激しく叩かれる。そしてうっすらと聞こえてきたのは必死に呼びかける男性の声だった。
「おい! 誰かいるか? 船内の様子が変だ! あまりにも静かすぎる!」
その声に応えるように、船内が一時停電する。すぐに非常灯が点くが船内は薄暗くなり、静寂が不気味さを強調してくる。
そして、耳をすませば前日まで聞こえていた旅客の喧騒が聞こえない。船の駆動音も聞こえなくなっていた。
ドアを開け、廊下に出ると、小さな息子を連れた親子3人、そしてPC達がいる。
「良かった…。すまない、こんな時間に。いや何、一つ上の階を見ても、人っ子一人いないんだ。俺たち以外、誰もいなくなったのかと肝を冷やしたよ。おっと、俺は佐藤浩二。んで、妻の葵。息子の翔琉だ」
そう自分たちを紹介する。「良ければ、君たちの紹介もしてもらえると助かる」
 
そうこうしていた時、非常灯に照らされ、上階に続く階段から黒いぶよぶよした球体が転がり落ちてくる。大きな水銀の粒のようにも見えた。
「なんだあれ? ちょっと見てくる。葵たちはそこで待っていてくれ」
佐藤浩二が球体に近づいて行く。「なんだこれ…」とそれを手にしようと触った途端、彼の腕が球体に飲み込まれていく。
「なんだこれ、吸い込まれる! みんな、気を付けろ! なんかやばい――」
そこまで言った時には身体がほとんど球体に飲み込まれていた。そして最後に彼の指先まで飲み込んだ球体は、フルフルと震えると、同じ大きさの球体二つに分裂する。そして、そのうちの一体がまたフルフルと震えると、先ほどまで彼が身に着けていた衣服や時計、靴などを吐き出し、最後に肉をきれいにそぎ落とした人の骨を吐き出すのだった。ランダムな特技で【恐怖判定】
「浩二…さん? 浩二さん! どうしたんですか?!」
佐藤葵が問いかける。けれども声は帰って来ない。その代わり、二体になった球体がゆっくりとこちらに近づいて来る。と、その時、階段を挟んだ向こう側の客室から若い男性が出てくる。
「なんだ? 酒飲んでそろそろ寝ようってときに…」
その声に応えるように、球体は進行方向を変え、彼のもとに転がっていく。そして、「なんだ?」と蹴とばそうとする男性が球体に触れた途端、彼も球体に飲み込まれ、人体の骨が2人分に、球体が三つに増えたのだった。
ひとまず謎の球体から離れた部屋に集まったあなた達は、生き残るために行動を開始したのだった。

●プリプレイ

 導入を伝え、各PCのハンドアウトとPC2が持つプライズを配置。次に、「佐藤葵」「佐藤翔琉」「謎の球体」「セント・クリスタル号」のハンドアウトを配置する。最後に、「場所」に相当するハンドアウト9枚を配置して、1サイクル目を開始する。
 

●プリプレイで伝えること

・クライマックス突入条件は3つ。「決められたサイクル(6/8サイクル)が終了する」(「救命ボートの儀式を行うと宣言する」)(スライムの本体を倒しに行く)
・情報やアイテムの受け渡しは同じシーンに登場すれば可能。【秘密】に「探索者は」「探索中」と書いてある場合、その【秘密】の情報を調査したシーンに登場しているPCのみ効果を解決する。感情による情報共有ではこの効果は発生しない。また、「場所」の【秘密】を調べた場合、調査判定に成功すれば登場しているPC全員がその【秘密】を獲得する。人や物の【秘密】の調査は通常通り。
・「場所」を探索するためには、常に球体と出会って死亡する恐怖が付きまとう。よってシーンプレイヤーは「場所」に対して「調査判定」を行なおうとする度に《死》で恐怖判定を行なう。ただし、シーンに登場しているPCの数だけ恐怖判定に+1の修正を加える。
 

●備考

・PC2の使命「事態を収束させる」は、「スライムを倒す」や「全てのスライムを無力化する」など幅広い解釈で良いです。とりあえずこの事件に一つの決着を付ければ達成となります。
・PC3の使命「謎の球体を捕獲する」は、「黒い石」を所持して終了する、もしくは「中身の入ったケース」を所持して終了することを指します。
 

●出来事・イベント

★「ショッピングモール」を調べた。(※成功・失敗に関わらず)
 あなたがショッピングモールを捜索していた時、近くのトイレから一人の人物が恐る恐るといった様子で出てくる。そしてあなたを見つけると、安心したように、極力静かに歩み寄り、自己紹介をした。あなたはひとまずその人物を連れ、生存者がいたことを知らせるために部屋に戻るのだった。「PC4の友人」の情報を開示。
 
★「メインホール」を調べた。(※成功・失敗に関わらず)
 あなたがメインホールを調べていると、柱の裏で動く影を見る。謎生物かと思われたそれだったが、柱から出てきたのは一人の人物だった。あなたはひとまずその人物を連れ、生存者がいたことを知らせるために部屋に戻るのだった。「瀬戸」の情報を開示。
 
★「サブホール」を調べた。(※成功・失敗に関わらず)
 あなたがサブホールを調べていると、布がかかったピアノの下から「だ、誰かいるのか? 助けてくれ!」押し殺した声がする。そして出てきたのは一人の生存者だった。あなたはひとまずその人物を連れ、生存者がいたことを知らせるために部屋に戻るのだった。「山本」の情報を開示。
 
★貨物室を調べ、成功した。
 あなたが貨物室を探索していた時、「良かった、生存者がいたようだ」と声がする。そして姿を現したのは、すらりとした格好の一人の人物だった。軽い自己紹介を終えたその人物は「他に生存者はいるのか? いるなら、ぜひ案内してほしい」と語る。あなたはひとまずその人物を連れ、生存者がいたことを知らせるために部屋に戻るのだった。「一ノ瀬」の情報を開示。
 
★「貨物室」の調査が終わっていない状態で3サイクル目が終了した。
 あなた達が船内を捜索していると、「良かった、生存者がいたようだ」と声がする。そして姿を現したのは、すらりとした格好の一人の人物だった。軽い自己紹介を終えたその人物は「他に生存者はいるのか? いるなら、ぜひ案内してほしい」と語る。あなたはひとまずその人物を連れ、生存者がいたことを知らせるために部屋に戻るのだった。「一ノ瀬」の情報を開示。
 
★「瀬戸」の情報項目がある状態でサイクルを終えた。1回目。
 「トイレに行きたい」という佐藤翔琉。葵が連れて行くと言うが、子どもと女性、不安は残る。「じゃあ私も。物音には注意しますね。もしもの時は私が彼らを逃がします」と瀬戸が笑う。しばらくして、トイレから帰ってきたのは瀬戸だけ。「遅いと思ってまずは翔琉君を、葵さんを探して見たのですが、どこにもいらっしゃらなくて…。トイレと言っても狭いので、探し忘れはないと思います。だから、二人は運悪く…」と一人で帰ってきた事情を語る。そして悔し気に口をかむのだった。「佐藤葵」「佐藤翔琉」の情報項目を削除。もしすでに【秘密】を得ていた場合、その内容の確認は可能。以降、PCは手番を1回消費して3人が行ったトイレを見に行くことが出来る。そこには血だらけの親子二人の死体が転がっている。もし球体に襲われたなら、こんな風に死体は残っていないはず。一体何がどうなっているのか。《混沌》で恐怖判定。死体には鋭い刃物で切り付けられたような跡があった。
 
★「瀬戸」の情報項目がある状態でサイクルを終えた。2回目。
 「私も探索に向かいます。守られてばかりは、申し訳ないですし」そう言って彼が生存者の捜索に出向く。しばらくして無事に戻ってきたが、どうやら誰も見つからなかったようだ。しかし、その服は赤い血で染まっていた。「あぁこれですか? 先ほど言ったトイレの近くで佐藤親子が血だらけで倒れていたのです。彼らを助けようとしたのですが…。もうすでに亡くなられていました」と救命措置を行ったときについたものだと説明した。開示されていない「人物」に類する情報項目を削除。これは瀬戸が彼らを殺害したからである。以降、もしPCが「人物」がいた場所を探索した場合、死体を見つけることにしてもよい。その場合、《混沌》で恐怖判定を行なう。
 
★「瀬戸」の情報項目がある状態でサイクルを終えた。3回目。
 「あぁ、ああああああ! もうあなた達しかいないようです!」突然、狂ったように奇声を発する瀬戸。「殺したい! 殺したい! 殺したい! 殺したい!」そう言って隠し持っていた刃物を手の中で踊らせる。「あぁ、その血を! 肉を! 悲鳴を! 苦痛を! 私に見せてください!」そう言って襲い掛かってくる。《切断》で恐怖判定。「瀬戸」(「殺人鬼」(基本P.243))と戦闘。終了後、彼はその場を逃げ出す。
 

○対応表

・「ショッピングモール」→「PC4の友人」とプライズ「操舵室のカギ」
・「メインホール」→「瀬戸」
・「サブホール」→「山本」
・「貨物室」もしくは3サイクル目終了時 →「一ノ瀬」とプライズ「ケース」
・「瀬戸」がある状態でサイクルを終了 →「佐藤葵」「佐藤翔琉」を削除。
        →未公開の「人物」の情報項目を削除。
        →「瀬戸」(殺人鬼)と戦闘。

●クライマックス

★スライムの本体を倒しに行った
 機関室にいる巨体。その表面を目玉のような核が動き回っている。周囲には小さな球体がフルフルとその身を震わせていた。スライム3体と戦闘。そのうち1体は本体であり【生命力】が60あるものとする。本体の生命力が10を下回った場合、「ケース」を使って核を捕獲できる。その場合、戦闘は終了しエンディングへ。【這い寄る】を受けた場合、下記にあるスライムに変わる描写を描き、スライムとなってキャラロスト。
 
★6or8サイクルが終了した。
 突如、あなた達のいる部屋の入り口から謎の球体が侵入してくる。それは排気口、排水溝、部屋の穴という穴からも侵入し、いよいよ逃げ場が無くなる。
→「救命ボート」の儀式が行えるなら次の★へ。
 そして、それがあなた達に触れ、飲み込む。抗うことすらできず、自分の体が作り変わっていく。煩わしい肉体を捨て、動きを制限する固い骨を除去し、新たな体を手に入れる。同時に、複数の意識があなたの中に侵入してくる。やがてあなたは自身を忘れ、一つの個として本体に奉仕する生物と化す。声が音が聞こえてくる。目は見えないが、振動は伝わってくる。奉仕する幸せと、自由。これをみんなに教えてあげよう。さあ、音のする方へ。振動する方へ。仲間を増やすために! →キャラロスト
 
★救命ボートの儀式を行なう。
 どうにか船のメインデッキに出て救命ボートへ走る。到着後すぐに救命ボートを起動し、乗り込もうとする。しかし、駆動音がやつらを引き寄せる。「スライム」(基本P.261「這いずるもの」を参考)2体と生き残っているキャラクターで戦闘開始。「一ノ瀬」「山本」「PC4の友人」「佐藤葵」「瀬戸」「佐藤翔琉」の生命力は6でありプロットは1で固定。全てのキャラクターにバッティングあり。エネミーの目標はランダム。NPCの手番や乗り込む順番はPCの次に上記の逆順。NPCは儀式を進める以外の行動は行なわない。彼らの行動の目標値は特技に関係なく7。【這い寄る】を受けたキャラクターは、上記にあるスライムに変わる描写を描き、スライムとなってキャラロスト。

 

●「スライム」

 脅威度10 属性/怪異 【生命力】30
●好奇心/怪異  特技/《破壊》《物音》《物陰》《効率》《混沌》
●アビリティ
【這い寄る】攻撃《混沌》 「命中した場合、そのキャラクターの【生命力】を0にし、次のラウンド開始時に『スライム』1体をプロット値6に配置する」
【忍び寄る】装備《物陰》 「あなたとバッティングしたキャラクターに【這いよる】を1回行なう」

 

●エンディング

★機関室に向かい、「スライム」を全て倒した。
 スライムの核を処理すると、周囲にいた全てのスライムが黒化し、石化する。それは船にいた全てのスライムに影響し、それらすべてが石化して動かなくなった。望むならば、全てのPCがその「黒い石」を【プライズ】として所持できる。
▶山本が生きている
 謎の生物がいなくなって動くようになった動力機関。山本によって操舵された船が、大海原の航海を再開する。音を立てて進む豪華客船。生き残ったあなたちの進む先を、照らす朝日が迎えてくれる。きっとこの旅は終わらざるを得ない。しかし、生きているなら何度でも旅立つことはできる。濃厚で壮絶な時間を生き残った実感に包まれながら、あなた達の乗った船は進むのだった。
▶山本が生きていない
 謎の生物がいなくなって動くようになった動力機関。だがさすがに、専門的な知識がなければ巨大な船を操舵することはできないだろう。気づけば朝日が昇る頃。耳をすませばバラバラと上空から音がする。救助用ヘリがあなた達を迎えに来たのだった。ヘリに乗り、上空から見下ろすその船には、黒い石がおびただしい数転がっていた。きっと本国に帰れば取材陣が殺到するに違いない。そして、船の事件が信じられることもないだろう。そんな風に考えられるのも、あの濃厚で壮絶な時間を生き残れたからに違いない。昇る朝日に包まれながら、あなた達を乗せたヘリは日常に向けて空を駆けるのだった。
 
★救命ボートで脱出した。
 着水した船を波が受け止めて揺らす。同時にスクリューを回したボートはすぐに船から距離をとる。船の全貌が視界に収まる頃、爆発音が響き船から火の手が上がる。その爆発はやがて船全体へと波及していき、大きな渦を巻いて豪華客船は沈んでいく。不思議な生物と少しの謎を乗せた船が海底へと飲み込まれていくのだった。
 船が沈み、波が落ち着くころ。遠く水平線からは太陽が昇って来ていた。そして、耳をすませばバラバラと上空から音がする。救助用ヘリがあなた達を迎えに来たのだった。きっと本国に帰れば取材陣が殺到するに違いない。そして、船の事件が信じられることもないだろう。そんな風に考えられるのも、あの濃厚で壮絶な時間を生き残れたからに違いない。昇る朝日に包まれながら、あなた達を乗せたヘリは日常に向けて空を駆けるのだった。
 
★生き残ったメンバーに「瀬戸」がいる。
 ヘリ(船)の中に笑い声が響く。その手には鋭い刃物が握られたいた。その刃は赤く染まっている。周囲には血だまりができていた。その血だまりにはもちろん、その血の持ち主が物言わずに転がっている。「やっと、やっと殺せた! もう戻れない! まだ止まれない! もっと、もっと血と肉を! 死を私に!」狂った笑いを振りまく人物を乗せながら、操縦する者がいなくなった乗り物は落ちていく。最期まで笑い声が絶えることはなかったのだった。 →キャラロスト

 

●ハンドアウト

○PC1
 あなたは一人旅に来ていた一般人だ。豪華な船旅を格安で楽しめると聞き、人生経験になるだろうと軽い気持ちで参加した。そして見たのは異様な光景。ついさっきまでは、楽しい旅行のはずだったのに…。あなたの【使命】は「生き残ること」だ。
○裏 
ショック/なし
 一人旅を続けていたからこそわかる、他人の大切さ。誰かがそばにいるだけで、心が安らぐことをあなたは知っている。異常事態でも全員が正気を保てるように、あなたの【本当の使命】は「4人以上で生き残ること」だ。
 
○PC2
 あなたはこの船旅に参加した一般人だ。けれども楽しい旅行は一転、どうやら異常事態が起きてしまった。こういう時こそ、皆で協力しなくては。そして、最終的には身の安全を確保しなくては。あなたの【使命】は「他のPC達と協力し、事態を収束させること」だ。なお、あなたはプライズ「資料」を所持している。
○裏
ショック/【全員】
 あなたは、運び屋だ。とある名家の一族に依頼され「スライム」と呼ばれる生物を極秘資料とともに輸送していた。しかし、目的地を明日に控えた今、どうやら貨物室に運び込んだ特殊なケースから逃げ出したようだ。ことが露見しては信頼に関わってくる。早く収束させなくては。
 
○PC3
 あなたはコスパを重視してこの船旅に参加した一般人だ。豪華な船内を堪能し、明日はどこに行こうかと悩んでいた時に聞こえた激しいノックの音。そして見たのは異様な光景。安くて楽しい旅行じゃなかったのだろうか…?あなたの【使命】は「生き残ること」だ。
○裏
ショック/なし
 あなたは生物学者だ。今回、未知の生物がこの船に積み荷として積まれていたことを知っていた。そして、その未知の生物が目の前に現れたのだ。あなたの【本当の使命】は「『謎の球体』を捕獲すること」です。
 
○PC4
 あなたは友人とこの船旅に参加した一般人だ。ショッピングに行った友人の帰りを待っていた時に響いたノックの音。廊下で見た謎の球体による謎の現象。友人は大丈夫だろうか?あなたの【使命】は「友人と合流し、二人で生き残ること」だ。
○裏
ショック/なし
 あなたは古くから続く、名家に生まれた。同期と二人、成人の儀式として、生きてこの旅を終えよと言われていた。事前に試練があるとも言われていたため、これがその試練だろう。なんとしても生き残って、一人前であることを証明する必要がある。あなたの【本当の使命】は「生き残ること」だ。
 
○謎の球体
 黒く滑らかな表面を持つ、ぶよぶよした謎生物。どうやら音を頼りに動いているようで、普段は転がるように、あるいは滑るように移動している。状況を見るに、触れた人間は身に着けているものと骨を残して、球体の仲間入りを果たせるようだ。一方で、生物以外は分解されずに吐き出されるようだ。
○裏
ショック/なし
 しばらく観察してみると、彼らが自在に形を変え換気口に入っていくところを目撃する。自在に壁を這うこともできるようだ。籠城したとしても、運が悪ければ各部屋にある空調や排水溝から彼らが入ってくるかもしれない。また、静かにしていれば彼らは機関室の方に向かって行くようだ。
 
○佐藤葵
 あなたは佐藤浩二の妻であり、佐藤翔琉の母親だ。年齢は20代後半から30代前半ぐらい。最初こそ、声をあげて球体を呼び寄せてしまったが、以降は静かに息子を守っています。どうしてこんなことに…。あなたの【使命】は「息子と二人で生き残ること」だ。
○裏
ショック/なし
【拡散情報】
 昨日の晩食の際、あなたはとある噂を耳にしている。一つ、この船には危険な実験生物が持ち込まれている。二つ、それが希少な生物で各国が狙っているらしいこと。その二つの噂を耳にしている。
 
○佐藤翔琉
 あなたは両親に連れられこの旅行に参加した子供だ。父親が球体に触れた途端いなくなり、代わりに球体が増えた。…父親はどこに行ったのだろう? 何かの手品だろうか?あなたの【使命】は「父親の行方を知ること」だ。
○裏
ショック/全員
【拡散情報】
 あなたは予知夢をよく見る。幸い、それを防ごうと動けばその通りになることはないが、何もしなければその通りになっていしまうことがよくあった。そして昨晩、あなたが見た夢。それは狂気的な殺人鬼によって人々が殺されていく悲惨な未来だった。
 
○PC4の友人
 あなたは友人であるPC4とともに船旅に参加した一般人だ。ショッピングモールを散策していた時に聞こえた悲鳴。大ホールを見下ろせば、丸い物体が人々を同族に変えていた。友人の待つ階下に降りることも出来なくなり、トイレに身を隠したのだった。あなたの【使命】は「生き残ること」だ。
○裏
ショック/PC4
 あなたはPC4を監視するために遣わされた人物だ。事前の話では、あの生物を使った試験は次の国で行われたはず。試験の内容は知らされていないが、少なくとも不測の事態が起きていることはわかる。とりあえずあのケースを使って、体の核を捕獲し、試験を滞りなく行えるようにしなくては。
 
○セント・クリスタル号
 世界各国を巡る豪華客船。比較的安い価格で世界を巡ることが出来ると人気だった。下階や屋上に遊興施設や食事場所。上階に宿泊スペースがある。PC達は今回から機関室横のデッドスペースを活用しようと特別に作られた客室に格安で宿泊していた。少しの駆動音と振動はあるが、値段わりに快適な船旅ができていた。
○裏
ショック/なし
 予定通りに行っていれば、今は太平洋のど真ん中。普段はホエールウォッチングやイルカを見ることが出来ることで有名な海域だが、凶暴なサメが多く生息していることでも有名。海に飛び込めば彼らの餌になること請け負いだろう。

 

 
 
○瀬戸
 あなたは商社に勤める会社員だ。突如現れた謎生物からどうにか生き延び、船内を捜索していたところ、ようやくPC達と合流した。悪運が強い方で、初めて謎生物と遭遇した時も同僚が飲み込まれているうちにどうにか逃げ延びることが出来た。それに負い目を感じていることもあり、【使命】は「これ以上犠牲者を出さないこと」だ。
○裏
ショック/全員
【拡散情報】
 あなたは殺人鬼だ。人を殺したくて仕方ない。しかし、あの生物が獲物を減らしていくではないか。あいつらに殺される前に、せめて一人でもこの手で殺してやる。あなたの【本当の使命】は「人を一人でも多く殺すこと」だ。この【秘密】が獲得された時、逃げ出し、この情報項目を取り除く。
 
○山本
 あなたは演奏家だ。手にヴァイオリンだって持っているし、格好もそれっぽい。今は音を出すことが出来ないため、腕前を披露することが出来ない。非常に残念だ。もし生きて帰ったなら、きっとみんなをコンサートに招待しよう。あなたの【使命】は「生き残ること」だ。
○裏
ショック/なし
 あなたはこの船の責任者であり、航海士だ。突如換気口から湧いた謎の球体が船員を次々に襲う様を見て錯乱し、操舵室に鍵をかけて船員を囮にしているうちに自分だけ逃げだした。途中で落としてしまった鍵も気になるが、何よりも自分がしてしまったことに負い目と後悔を覚えている。
 
○一ノ瀬
 あなた一人旅を楽しむ一般人の女性だ。部屋でくつろいでいた時、隣から聞こえた悲鳴。訪ねようと廊下に出てみれば、謎の球体が逃げまどう人を襲っていた。恐怖で声が出なかったのが幸いし、どうにか逃げおおせることが出来た。それからは貨物室に逃げ込んで、息を殺していたところ、他の生存者に会うことが出来たのだった。
○裏
ショック/なし
 あなたは危険生物の処理のために送り込まれた人物だ。貨物室で見つけたその生物の処理には失敗したため、次の手を打った。唯一無事だった救命ボートの降下ボタンをボタンを押せば一分後に爆弾が起動し、船は沈む。その前に生存者を救出せねば。あなたの【使命】は「生存者を保護すること」だ。

 

 
○メインホール
 船1階の中心にあるメインホール。吹き抜けで円柱状の大きなホールには、ピアノや噴水も備わっている。予定では、ダンスパーティーやコンサートなどが企画されていた。昨日も多くの紳士淑女が行き交っていたが、今は人っ子一人いない。
○裏
ショック/全員
 噴水の影や舞台の下、柱の裏におびただしい数の人骨が転がっている。【死】で恐怖判定。人骨の中には劇の演者や船員のものも多くあることが、そばに落ちていた衣服などからわかる。また、探索中、向こうから微かな音を頼りに球体が向かってくる。「知覚」分野で判定(修正+2)を行い、失敗で死亡。成功で逃走。
 
○サブホール
 船1階の船尾側にあるサブホール。セッションなど規模の小さな音楽系の企画が予定されていた。今、壇上には楽器が無造作に投げ出され、転がっている。吹き抜けの造りおかげで見晴らしは良い。
○裏
ショック/全員
 噴水の影や舞台の下、柱の裏におびただしい数の人骨が転がっている。探索者は【死】で恐怖判定。人骨の中には劇の演者や船員のものも多くあることが、そばに落ちていた衣服などからわかる。そのうちの一人が機関室へと向かっていたようで、カギを持っていた。探索者は「機関室のカギ」をプライズとして得てもよい。
 
○メインデッキ
 船1階の外縁部にあるデッキ。庭園や公園などが船首側に、屋外ホールが船尾側にある。
○裏
ショック/全員
 側面のデッキに6人乗りの救命ボートが一つだけつられている。起動するとモーターが作動し、大きな駆動音が出る。他の救命ボートを使おうとした痕跡があるが、近くに骨が残されていることから脱出に失敗したことがわかる。この【秘密】を獲得しているキャラクターは儀式表「救命ボート」を行える。
 
○展望デッキ
 船の屋上にある展望デッキ。壮大な海原を一望できるそこにはプールやジャグジー、露店などがある。もちろんここにも人はおらず、飲みかけのカクテルや浮き輪などが放置されていた。そして至る場所に男女問わず水着が落ちている。よく見れば黒い石のようなものがプール、ジャグジーの底を覆いつくしていた。
○裏
ショック/なし
 物陰にいた謎生物があなた達の微かな足音をたどって近づいて来る。その時、プールのそばにあったグラスが落ち、音を立てて割れる。すぐに方向を変えてプールに入ると、謎生物は黒い石のようになり、動かなくなった。探索者は望むならその「黒い石」をプライズとして獲得できる。
 
○食事会場
 各階にある食事会場。和洋中だけでなく世界中の料理が味わえ、こちらも多種多様なラインナップをそろえている。バイキング・ビュッフェ方式の会場とレストランがある。食べかけ、飲みかけのものがテーブルに置いてあり、地面には食事が散乱していた。
○裏
ショック/なし
ここにはもちろん、まだ食べることが出来る物や飲み物も残っている。探索者は望むなら「鎮痛剤」を一つ、獲得してよい。これによって得られる鎮痛剤の上限は4つ。
 
○ショッピングモール
大ホールを中心に多種多様な商店が並ぶ。買い物は全て電子決済で行われていた。
○裏
ショック/なし
 ショッピングモールを捜索していると、きらりと光る何かを発見する。それは操舵室のカギであることがついているタグでわかる。しかし、その近くには謎の球体が震えている。拾う場合、【物音】で判定を行い、成功すれば「操舵室のカギ」のプライズを得る。失敗すれば死亡する。
 
○機関室
 この巨大な船を動かすモーターなどが備えてある。あなた達の宿泊している地下階に入り口があるが、カギがかかっている。この情報項目の【秘密】を調べるには、「機関室のカギ」が必要となる。
○裏
ショック/全員
 そこには巨大な球体がいた。表面を目玉が一つ、這っている。周囲にも小さな球体が駆動するモーターにまとわりついている。表面を這っていた黄色い目玉があなたを見つめると、周囲の球体が一斉にあなたのもとに殺到してきた。【情景】で恐怖判定。探索者は任意の「知覚」分野で判定を行い、失敗で死亡。成功で逃走。
 
○操舵室
 船を操舵するための場所。船内放送の機器もここに置いてある。この情報項目の【秘密】を調べるためには「操舵室のカギ」が必要となる。
○裏
ショック/全員
 鍵がかかっていたにも関わらず、中に入っても人一人いない。代わりに多くの人骨と船員用の服が落ちているだけだった。通信機には使用された跡があり、どこかに救援要請は送っていたようだ。専門的な知識がなければ操舵することはできないだろう。
 
○貨物室
 船1階部分に入り口がある貨物室。手前には食料などが入ったコンテナ。奥には車が積まれている。その空いたスペースに、その他の運送物が丁寧に積まれている。
○裏
ショック/全員
 所々に落ちている骨と、従業員のものと思われる作業着。それをたどっていった先に大きなコンテナに一つだけ、意味ありげにスーツケースが放置されていた。奇妙な模様が描かれたそのケースの中身は空っぽであった。望むなら「ケース」を【プライズ】として所持してもよい。

 

 
○資料
【プライズ】
 「スライム」と呼ばれる生物に関する資料。紙束。とある古代の遺跡で見つかった、緑色の丸いふよふよした物体らしい。目的の欄には「試験に必要」とあり、注意の欄には「水に触れると石化する。水気厳禁」とあった。
○裏
ショック/なし
 この生物には目玉のような丸い核がある。切り離してもその部分がひとりでに動き、核のある「本体」に引っ付いた。切り離した部分を、水を使って石化させると本体は小さくなった。石化した部分は炭素化し、この生物の持つ働きを一切しない石になるようだ。核を潰せばこの生物は石化し、ただの石となった。
 
○黒い石
【プライズ】
 触ってみてもただの石。見た目のわりにずっしりと重い。
○裏
ショック/なし
 これは船内のいたるところにいた謎の球体が、石化したものだ。専門の研究機関でしっかりと研究すれば、あの生物について何かわかるかもしれないが、船内にその設備はないだろう。
 
○ケース
【プライズ】
 貨物室に置いてあった奇妙な模様が描かれたスーツケース。
○裏
ショック/なし
 入っていた紙切れによれば、この中には「スライム」と呼ばれる生物が入っていたようだ。古代の遺跡で見つかったその生物が収められていた箱を分析し、改良したものだということがわかる。これをスライムに使用し、【罠】の判定に成功すると、このプライズを手放し、「中身の入ったケース」をプライズとして得る。
 
○操舵室のカギ
【プライズ】
 操舵室に入るためのカギ。この情報項目に【秘密】はない。
 
○機関室のカギ
【プライズ】
 機関室に入るためのカギ。この情報項目に【秘密】はない。
 
○中身の入ったケース
 中身の入ったケース。持ってみるとずっしり思い。中に何が入っているのだろう?
 《分解》の判定に成功することで、ケースに入った中身を取り出すことが出来る。この作業はこれを所持しているキャラクターがシーンプレイヤーのシーンに1回、行なうことが出来る。
○裏
ショック/なし
 特殊なケースに入った謎生物。その名は「スライム」。ぶよぶよしたその球体は触れた人間を自身の一部とすることが出来るようだ。
この生物を取り出そうとした場合、表に書いてある判定に成功したのち、【時間】で判定を行う。成功すると逃走でき、失敗すると死亡してスライムの一部になる。

●儀式「救命ボート(6人乗り)」

      指定特技    条件        ペナルティ
1.乗り込む 【乗物】 シーンに登場している  失敗で【生命力】1点減少
2.降下   【機械】 段階1を行なっている  以降、誰も段階1を行えない
3.離脱   【乗物】 段階1を行なっている  なし

 

 

●PDF

インセイン「船を襲ったのは奴だった件」

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ご覧いただいて、ありがとうございます。 見てみた・プレイしてみた感想や誤字脱字の報告を頂けると幸いです。 たまにシナリオに手を加えることがあります。 言葉足らずで不明なところは気軽に質問してください。 adobe のPDFは、見るだけは可能だと思います。もし不都合があれば教えてください。別のアップ方法を調べてみます。   ストックありがとうございます。それを励みにシナリオを作成していけたらと思います。

https://www.pixiv.net/users/60483311

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