●概要
ある時。海岸線にたどり着いたドールたちが立ち寄ったのは、レストラン跡地。おいしい料理を幻視して、温かい料理を求めた彼女たちは探索を開始する。戦争が終わって幾年月が過ぎてしまい、その店内には電気も食材もない。
それでも探索を諦めず、踏み込んだ食糧庫の地下。明かりがついているその場所では、今なお現役で調理機材が動いていた。冷蔵・冷凍庫もあり、その中には奇跡的に無事な食材たちもある。しかし、その価値もわからず貪り喰う、大きなアンデッドが……。
そのアンデッドを打ち倒した時。
崩れたレストランのその地下で。アンデッドの少女たちは料理と一緒に、優しく、暖かな時間を完成させることになる。
ある時。海岸線にたどり着いたドールたちが立ち寄ったのは、レストラン跡地。おいしい料理を幻視して、温かい料理を求めた彼女たちは探索を開始する。戦争が終わって幾年月が過ぎてしまい、その店内には電気も食材もない。
それでも探索を諦めず、踏み込んだ食糧庫の地下。明かりがついているその場所では、今なお現役で調理機材たちが動いていた。冷蔵・冷凍庫もあり、その中には奇跡的に無事な食材たちもある。しかし、その価値もわからず貪り喰う、大きなアンデッドがいて……。
そのアンデッドを打ち倒した時。
ある日、ある時、崩れたレストランのその地下で。アンデッドの少女たちは料理と一緒に、優しく、暖かな時間を完成させることになる。
ドールとして目覚めてしばらく。記憶のかけらを探して当てもなくさまよっていたあなた達は、黒い海の見える海岸まで来ていた。
見晴らしのいい海岸線を進んでいると、あなた達が読めない文字の書かれた看(※店名が書かれている)と広い駐車場のある、小さな平屋建ての建物を見つける。
あそこなら記憶のかけらを見つけられるかもしれない。
そんな一縷の望みと使命感を覚えたあなた達は、赤い屋根をしたその建物に歩を進める。
そうして踏み入った建物の入り口。荒れ果ててしまっているものの、その内装からあなた達はそこが飲食店であると直感する。であるならば――
★カルマの発表:「料理をする」
そうすれば、失ってしまった大切な記憶を取り戻せる気がした。
※GM情報:電気が通っているのは食糧庫とその地下のみ。それ以外の、例えば地上にある冷蔵庫や照明は機能していない。
廃車が数台とまったまま、時を止めた駐車場。経年劣化で窓が割れ、タイヤも潰れてしまっている。
○廃車
どの車も窓が割れて風雨に晒されていたため、その車内も荒れてしまっている。扉も変形してしまっていて、普通に開けることはできそうにない。
車内を捜索してみると、ある車のトランクの中に持ち運べる椅子と机のセットを見つける。その奥には折りたたまれたテントやバーベキューコンロなどが入っていた。
➡「記憶のかけら『遠出』……休日。両親に来るまで連れられ向かった海と山。ある時は河川敷の川辺で、またある時は潮の香りを浴びながら海辺で。景色を満喫しながらアウトドアを楽しんだ」を得る。
赤い屋根をした平屋建ての建物。頼りない木の扉を開けて中に入ると、入り口からは、すぐ目の前にある機材の置かれたカウンター――レジが目に付く。左はすぐ壁で、右にはたくさんの椅子と丸机が倒れて、転がっていることが見えた。それらから察するにここが飲食店だということがわかる。
割れた大きな窓ガラスから風や雨が入り込み、店内の客席は荒れてしまっている。
奥の壁、入り口を背に左側にはアーチ状に穴が開いており、仕切り扉(スイングドア)がついている。ここが飲食店であることから、厨房があると思われた。
建物内には大きな窓から外の光が差し込み、探索するには十分な明るさがあった。
○客席
長年吹きさらしだった店内は水や砂、土、泥にまみれている。
□レジ
探索すると、砂で開きづらくなっていた機材(レジ)の中にある硬貨や紙幣を見つけられる。一部錆びたり、破れたりしているがおよそ戦前の状態を保っていた。けれどももう、これらに意味はない。社会、人間が死んでしまったこの世界に、これらは必要ないのだ。何なら自分も……。
虚しさにも似た郷愁があなたの心をさいなむ。➡恐怖判定
□床
床を探索すると、いくつもの人の足跡が見つかる。しかし、どの足跡にも上から新しい砂や土がかぶさっていることから、ここ最近は誰も入っていないようだ。
□壊れた机・椅子
机や椅子を探索すると、それらの影に、ハードカバーの大きな本のようなものを見つける。机や椅子が風雨から本を守ったようだ。表紙にはあなた達の読めない文字(※店名)が書かれており、厚みは全くない。
本を開くと、読めない文字と数字、おいしそうな料理の写真が載っている。どうやらこの店のメニューのようで、そこに描かれている料理や飲み物は、ドールであるあなた達には無いはずの食欲を刺激してくれるだろう。
➡「記憶のかけら『記念日』……家族や友人、恋人と一緒に過ごした記念日。今はもう、料理の味など分からないかもしれないけれど、大切な人と一緒に食べる料理はどれもおいしくて、暖かかった」を得る。
○厨房
店内からアーチをくぐると、左は壁、右には様々な機材と調理台が見え、厨房だということがわかる。
少し暗いが、探索するには問題ない明るさはある。
調理台の向こう、右奥にある壁には厨房入り口と同じくアーチ状の穴が開いている。ただしそこに仕切り扉は無かった。
□調理機材
フライヤーに冷蔵庫、コンロ、排気口など、様々な調理機材が調理台を挟むように、壁沿いに続いている。機材の中には刃のついたローラーが上部についていて、下には取り出し口のようなものがある、謎の機材もあった。動力が無く、どれももう、動くことは無い。
もしドールが謎の機材を調べた場合、探索に成功すると、腐った肉片が取り出し口に落ちてくる。それを見たドールはその機材が肉をひき潰す機材であることを直感する。そして思い出す。自分が作られるときに見た、大きな機材。何かわからないものがブチャブチャ、バキバキと音を立てて潰され、肉になっていく。それを前にして楽しそうに笑っていた、あの人は……? そうして作られた何かわからない者の肉がひょっとして自分に……?
作られたときのトラウマが自己嫌悪となって、あなたの身を震わせる。➡恐怖判定
□調理台
調理台の頭上には天井から棚がつるされ、きれいな白い皿や器が重ねられている。調理台の下には両開きの扉がついていて、中に食材や調理器具などが収められるようになっている。
▶調理台上の棚
調理台の頭上。食器の並ぶ棚を調べると、紙束を見つける。そこには読めない文字とともに手書きの絵や調理器具が描かれていた。そこには矢印や数字が並び、料理の行程について書いてあるものだった。
➡「記憶のかけら『手料理』……今日はどれにしようかな。何を作ってあげようかな。本に書かれたレシピを見ながら考える。その人のために費やす時間が何よりも大切で、楽しいものだった」を得る。
▶調理台の下
調理台の下を探索すると、ある扉を開けた時に、その裏にある包丁を見つける。それを最初に目にしたドールは、手術台の上で、乱雑に切ったり、縫合されたり、改造されたり……マスクをしていて顔は思いだせないが、楽しそうにあなたというドールを改造していた人物と、その痛み、今の身体に対する違和感を思い出すことになる。
変わり果てた今の自分に対する嫌悪と、それを行なったあの人物に対する怒り、恐怖。様々な暗い感情が押し寄せる。➡恐怖判定
○厨房の奥
左右に続く廊下。その正面の壁には厨房を背にして左にハッチのついた金属の扉、右にドアノブがついた薄いドアがあり、それぞれ部屋になっているようだ。右(客席側)の通路の先は行き止まりだが、左の通路の先にはガラスが割れた薄いドアがあり、裏口になっている。黒い海が見えるその窓から光が差し込み、廊下を薄く照らしている。
廊下をドールが探索した場合、金属の扉から裏口に向けて、ほこりや砂の一部が無くなっていることに気付く。(※GM情報:これは食糧庫の地下にある食料のゾンビたちが這い出た跡)
□金属の扉(食糧庫)
店が使われなくなった時に開けられたのか、扉は既に少しだけ開いていた。中は食材を保存するためか、オレンジ色の蛍光灯が点滅している。音などは聞こえない。
扉を開くと、左右の壁沿いに並んだ棚、正面には粉の入った袋が多く残っており、それがいくつも積み重ねられている。ドールが中に入って探索しようとした場合、点滅するオレンジ色の光に照らされて、袋の山の後ろから何かが這い出して来るのを目にする。抜け落ちた髪にむき出しの頭皮。くぼんだ眼窩。骨と皮だけに見える細い腕で這いずるソレはゾンビ。あなた達ドールと同じアンデッド。グリンと首を回してあなたを見つめるソレに、あなたは本能的恐怖と嫌悪感を覚える。➡恐怖判定
(※マニューバを好きに使って、対処させる)
あなた達がゾンビに対処した衝撃で袋の山が崩れ(もしくは消え去り)、その奥にあった地下に続く扉が露わになった。→項目「◎地下」へ。
□薄いドア
中からは風の音がする。
ドアを開くと、そこは事務所のようになっている。正面には割れたガラス窓。灰色の引き出しのついたデスクと、デスクチェアーが部屋の中央に身を寄せるように置かれ、壁には資料棚が置かれていた。室内には紙の資料が散乱し、窓から時折吹き込む風によって宙を舞う。土や砂の上に雨が吹き込んだせいで資料のほとんどが読めなくなっていた。
▶引き出しのついたデスク
引き出しの多くは開いてしまっていて、中の資料などは部屋中に散らばってしまっている。
探索すると、引き出しの一つに奇跡的に無事な写真立てが入っているのを見つける。その写真立てには、朽ち果てる前のこの建物の外観を写したカラー写真が入っている。それを見たドールは
➡「記憶のかけら『ファミレス』:特別なんかじゃなくて、生活の中に当たり前にあった憩いの場所。ある時は友達と、またある時は家族と、恋人とともに訪れた。本当に何気ない、それでも今は何よりも大切な記憶」を得る。
▶資料棚
扉がガラス張りになっていて、中の資料が見えるタイプの資料棚。そのせいでガラスが割れ、中の資料の多くが無くなってしまっている。それでもファイルのようなものがいくつか無事な状態で並んでいた。
ファイルを調べてみると、経営方針について書かれた資料が目に留まる。読んでみると、戦争で疲弊していく飲食店の経営について書かれている。何よりも食料が手に入らない状況だったようだ。しかし、ある時を境にメニューを一新したことで経営状態が回復したと書いてあった。
さらに時間をかけてファイルを調べていくと、肉料理をメインにしたコンセプトへと店の方針を変え、戦時中の数少ない娯楽として、客にも好評だったようだ。方針転換の理由は安価で肉を手に入れるすべを手に入れたから。新型の調理機材を導入し、戦争で死んだ人間を買い取ってひき潰し、ミンチにして再利用する。秘密保持のために地下に作った試食用の部屋で精肉を行ない、表面上は食糧庫から肉を取り出したように見せる。「画期的なアイデアだ!」と最後に歪んだ文字で書いていた。最終戦争という極限状態で壊れていく人の精神、それを良しとする社会。おぼろげに、でも確かにあなたの中にある優しい記憶とは程遠い人間の狂気が、そこには書かれていた。➡恐怖判定
重い扉を開けると、そこには地下に続く階段があった。しばらく下った先には部屋があるようで、白い光が漏れている。食糧庫からでも、耳をすませばゴォンゴォンという(※機材の駆動音)が聞こえてくるだろう。
部屋のそばで聞き耳を立てれば、機材の駆動音に混じって微かに、複数のうめき声と、くちゃくちゃと何かを咀嚼する音が聞こえた。
一部屋しかないその部屋は大きく、厨房にも勝るとも劣らない調理機材が揃っている。しかも明かりがついていて、ゴォンゴォンと駆動音がすることから、そこにある機材はまだ現役で動いていると思われた。
巨大な機材を搬入するためだろう。階段とは反対方向の壁には海の方向に続く、金属製の大きな扉がある。しかし遠目に診てもわかる大きさで、こじ開けられた跡があった。
そしてあなた達は部屋の隅で食事に耽る、ソレを捉える。鼻から上の皮膚や頭蓋がめくれむき出しになった脳。太い首でつながるその体は筋骨隆々で生気の無い緑色をしている。胡坐をかくように座るソレの足元には数えきれない無数のゾンビが這いずっており、彼らを大きな手でむんずと掴んだバケモノは、脳みその下にある大きな口で食いちぎり、咀嚼していた。
味に変化を加えるためか、触感を楽しんでいるのか。時折、目の前にある業務用冷蔵庫から新鮮な野菜を乱雑に掴んでは、その大きな口に運ぶ。そうして食事を楽しむバケモノの横には、それが食卓であるかのように、太い4本足の茶色い机が置かれていた。
この世のものとは思えない光景に思わず身がすくむ。➡恐怖判定
(※早く脳みそのバケモノを倒さなければ、食材は無くなってしまう。これを見てからドールたちはおおよそ1手番程度のみ猶予を得る。もしドールたちが気づかないようであれば、カルマの内容を引き合いに出して「早くしないと貴重な食料・食材が無くなってしまう」と気付かせる)
(※ドールたちがバケモノに戦闘を仕掛けると戦闘開始。)
※ドールたちがバケモノに戦闘を仕掛けると戦闘開始。
姿を見せたあなた達に対し、バケモノはよだれをまき散らしながら絶叫する。
すると、その声に呼応するように、傍らに置いてあった4本足の机が動き出す。どうやらそれもアンデッドだったようだ。バケモノがその机に騎乗すると同時。肉を盛り上がらせた机は形を変え、どうにか4足の細長い動物と呼べそうな見た目になる。戦場を素早く駆ける2体のアンデッド(と、彼らの餌だったアンデッドたち)があなた達に襲い掛かってくるのだった。
○戦闘終了条件: 敵の全滅
○戦闘カルマ:なし
解体され、動かなくなったバケモノたち。
その場で動いているのはあなた達と、音を立てて駆動する調理機材だけ。
業務用冷蔵庫・冷凍庫の中には、この荒廃した世界ではめったにお目にかかれない、安全な野菜や、鶏肉、ミンチ肉(ゾンビ肉)が入っていた。
戦闘があったにもかかわらず、オーブンや電磁誘導加熱式(IH)コンロ、その他扱いがわかるもの、分からないものも含めすべてが無事。自家発電機らしきものが動かなくなるまで、それらは自由に使えるだろう。
何もかもが終わった世界で、もう二度とないかもしれない奇跡的な場所が、そこにはあった。
内に秘めた使命感に従って、早速料理を始めるあなた達。
(※好きに料理を行なう)
ドールになって、変わり果てた身体。思った通りに料理できないかもしれない。失敗もあるだろう。たとえ料理が完成しても、もう二度と、味もにおいも、分からないかもしれない。
それでも。
救いのない、荒廃したこの世界で。
心の通い合った仲間と一緒に、何かをする。その時間は何よりも楽しく感じられるだろう。
しばらくして出来上がった料理たち。それらを机に並べ、卓を囲って食べようとするあなた達のその姿は、最終戦争前の日常風景と何ら変わらない。
ある日、ある時、崩れたレストランのその地下で。アンデッドの姉妹は料理とともに、優しく、暖かな時間を完成させたのだった。
ご覧いただいて、ありがとうございます。 見てみた・プレイしてみた感想や誤字脱字の報告を頂けると幸いです。 たまにシナリオに手を加えることがあります。 言葉足らずで不明なところは気軽に質問してください。 adobe のPDFは、見るだけは可能だと思います。もし不都合があれば教えてください。別のアップ方法を調べてみます。 ストックありがとうございます。それを励みにシナリオを作成していけたらと思います。
https://www.pixiv.net/users/60483311
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