2024年10月11日更新

ソードワールド2.5 「休息には甘いスイーツ(ですわ!)」

  • 難易度:|
  • 人数:2人~4人|
  • プレイ時間:

●シナリオの概要
 例によって依頼を探していたPC達。そんな彼らに受付嬢が持ってきたのは食材調達の依頼でした。依頼主は貴族に仕える料理人。いわく、過労気味の主人のために大好きなスイーツを作り、休息も兼ねたサプライズをしてあげたいのだという。果たしてPCは求められた食材を集め『フルーツタルト』という名のスイーツを完成させられるのでしょうか?
 ※2,3度成長したPC(3~4レベル)を想定しています。敵の最大レベルは5です。

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●シナリオの概要

 例によって依頼を探していたPC達。そんな彼らに受付嬢が持ってきたのは食材調達の依頼でした。依頼主は貴族に仕える料理人。いわく、過労気味の主人のために大好きなスイーツを作り、休息も兼ねたサプライズをしてあげたいのだという。果たしてPCは求められた食材を集め『フルーツタルト』という名のスイーツを完成させられるのでしょうか?
 ※2,3度成長したPC(3~4レベル)を想定しています。敵の最大レベルは5です。
 
 

●導入

●マスターシーン

〇ハーヴェス王国
 “導きの港”ハーヴェス王国。貴族制度の残るその国の貴族・レストア家で、歓喜の声が上がっていた。
 「ついに、ついに完成しましたわ!」
 叫んだ彼女はカレン・レストア。レストア家のご令嬢で、若干20歳にして魔道具の研究者でもあった。今、彼女の手に握られているものは新型の魔石灯。知識と財力を駆使して研究されたそれは、従来の物に比べ消費魔力が少なく、蓄積できる魔力も多い。
 「これでより広く、効率的に、人々に明かりを届けられます!」
 笑みを浮かべるカレンに、手伝っていた使用人たちも頬を緩ませる。一方で
 「お疲れ様です、カレン様。工場への通達、各所への設置などはこちらで致しますので、しばらく休息をお取りください」
 数か月以上ほぼ休むことなく、根を詰めて研究していた主人を、使用人たちは心配する。しかし、彼らの心配は
 「いいえ。我々には財があり、知識があり、力があります。人々の暮らしを守り、豊かにするという貴族の責務を放棄するわけにはいきませんし、立ち止まっている時間などありませんわ」
 そう言い残し、書庫へ向かったカレンによって棄却された。
 恒例になったやり取りに、使用人たちは頭を抱える。
 「おっしゃることもわかりますが、これではいつか倒れてしまいます…」
 そうなった場合、研究者であり、貴族でありながら権力を笠に着ず、優秀な研究者でもあるカレンをレストア家、ひいては王国が失うことになる。
 「どうにかして、休息していただかなくては…」
 こうして使用人たちによる『カレン様休息計画』が秘密裏に、進められることになった。
 
 

●内容

〇ハーヴェス王国/冒険者ギルド
 今日もいつものように依頼を探していたあなた達のもとに、丸い帽子が印象的な受付嬢が駆けてくる。
 「あの、冒険者さん、受けていただきたい依頼があるんです!」
 そう言って彼女が紹介したのは食材の調達依頼だった。
 
 場所を移し、受付カウンターで話を聞く。あなた達と受付嬢、そして依頼主である女性が同席していた。まず受付嬢が同席している女性について紹介する。
 「彼女は依頼主のディアナさんです」
 その言葉を受けて、ディアナと呼ばれた女性が頭を下げた。
 「初めまして。私はディアナ。貴族、レストア家で働かせてもらっている」
 「そしてこちらが冒険者さん。ディアナさんの困りごとを解決してくれる方々です」
 今度はディアナに、あなた達を紹介する受付嬢。
 
 互いの自己紹介が終わったところで、依頼の内容について確認して行く。
 今回ディアナが持ってきた依頼は7種類の食材の調達。いわゆるお使いだった。
 「えっとそれぞれ〈バウニラの木〉〈濃厚ミルク〉、それから〈オオトリの卵〉が2つ、〈コムギ粉〉〈カタメ粉〉〈ハチミツ〉、それに後日届く予定の〈フルーツ〉ですか……?」
 「ああ。実はレストア家のご令嬢様に、サプライズを用意したいという話になってな……」
 ディアナが依頼に至るまでの内容を簡単に説明する。貴族レストア家のご令嬢、カレン・レストアがどう見ても過労であるため、家臣たちは休んでもらいたいと考えたようだ。そこで目を付けたのがスイーツ。甘いものに目がないカレンならきっと、それを理由に休んでくれるだろうという話になったらしい。
 「もちろん、当主様にお願いすれば、食材を購入することは可能だろう。しかし、聡明なカレン様に帳簿等が見つかれば露見する可能性もあるし、何より当主様が、その……愛ゆえにカレン様に漏らしてしまう可能性があってな……」
 そうして家臣だけで話を進めようという流れになったらしい。
 「もちろん、報酬はそれなりに用意させてもらう。私たちで用意できた金額……お一人2500Gでどうだろう?」
 「2500Gですか?! かなり多いような――」
 その金額を聞いて受付嬢が驚く。どうやらレベルに対して報酬が高かったようだ。しかし、すぐに
 「いえ、なるほど。この時期手に入りにくい卵、それに輸入品を入手するお金、森にハチミツを取りに行くリスクを考えると報酬が多すぎる、ということも無いですね」
 報酬について評価し直す。あまりに高額な報酬であれば、怪しい依頼であることも多い。その点、今回の依頼は不自然なものではないと、あなた達に助言する。最後にディアナが
 「生まれ持った地位や財力におごることなく、市民に寄り添うことが出来るあの方を、過労などで失うわけにはいかない。どうか、手を貸してもらえないだろうか?」
 あなた達に頭を下げるのだった。
 
 

●状況

・依頼の期限は週末。5日後の午前6時まで。現在は午前9時。
 
・〈バウニラの木〉〈濃厚ミルク〉〈オオトリの卵〉2つ〈コムギ粉〉〈カタメ粉〉〈ハチミツ〉各種食材の入手法については、順に後述。例外として〈フルーツ〉は5日後の期限の後に、ハーヴェス王国の西側の城壁にある関所に届くことになっている。〈フルーツ〉以外の食材6種を必要な量(卵は2つ)5日後の6時までに納品し、最後に〈フルーツ〉を納品して依頼達成となる。
 
・一部食材(〈濃厚ミルク〉〈コムギ粉〉〈ハチミツ〉)の一番上にある項目については依頼受注時に一括で【見識判定:5】を行ない、成功すれば知っていることにしてもよい。
 
・今回ディアナたちが作ろうとしているのは『フルーツタルト』。普通のミルクやバター、砂糖などはエムクイーン家にあるものを使用する。
 
・天気によって【探索判定】などの難易度は変化する。毎日朝6時に1d6を振り1~4なら晴れ、もしくは曇り、5,6であれば雨になる。雨の場合、影響すると思われる判定の目標値には「+2」の修正が入る。
 
・参考として【聞き込み判定】には最低1時間を要する。また、PCの接し方次第で難易度は変化する。
 
・ハーヴェスから海側に2時間ほど行くと港がある。そこでは大抵の輸入品を安く仕入れられる。品物の質に関しては依頼そのものには関係ないためPCの好みになる。一般的に高いものほど質は良いし、安いものほど質は落ちていく。
 
 

●食材調達

□〈バウニラの木〉

・外国からの輸入品。傷をつけると甘く香り高いにおいを放つ背の低い木で、香水や香料としても人気。小さく裁断された形で販売され、市場価格は500Gほど。ハーヴェスから歩いて2時間ほどの所にある港では輸送費などを差し引いて400Gほどで手に入る。この情報は【聞き込み判定/見識判定:9】で詳しい人から聞いたり、ひらめいたりできる。
 
 

□〈濃厚ミルク〉

・通常のミルクより手間をかけて作る、濃厚なミルク。劣化が早く、2日程度で腐ってしまう。この情報は【聞き込み判定/見識判定:5】で聞いたり、思いだしたりすることが出来る。
・手に入れるには(Ⅰ)P.386を参考に、ハーヴェスからジニアスタ闘技場に続く街道へ続く城壁の外すぐにある放牧場を訪ねる必要がある。購入価格は500Gほど。PCがそこに赴くと、牧場のおじさんから「最近、毎晩のように蛮族たちが出るせいで牛たちからミルクが出ない」という相談を持ち掛けられる。PCがその問題を解決した場合、一人500Gの報酬と〈濃厚ミルク〉を無料で手に入れられる。
・蛮族たちのねぐらは、牧場から30分ほど行った森にある、奥行きのない小さな洞穴。牧場近くで【探索判定:9】に成功し足跡を発見後、【足跡追跡判定:10】に成功する、もしくは夜間(22時~0時)に牧場に張り込むことで蛮族たちと戦闘になる。前衛に「『ボルグ』(Ⅰ)P.441」(PC数)体、後衛に「『ボルグハイランダー』(Ⅰ)P.442」1体。
 
 

□〈オオトリの卵〉

・平原に群れで暮らす体長3mほどのまんまるとした大型の鳥「オオトリ」。飛行能力が退化した分、脚力が発達し、ふわふわの羽毛が寒さや衝撃から身を守っている。ハーヴェスから東に半日ほど行ったファーベルト平原(Ⅱ)P.315に暮らしており、今の時期、卵を手に入れるならこの鳥が生む大きな卵を手に入れる必要がある。黄身と白身のバランスが良く、癖のないあじわいはどの料理でも重宝され、よく卵の採取依頼が出されるほど。この情報は【見識判定/聞き込み判定:6】で入手できる。なお、バッシャー鳥との関係は不明。
・卵を手に入れるには巣で卵を温めているオオトリを撃退し、そこにある卵を手に入れる必要がある。【探索判定:9】で足跡や巣を見つけ、オオトリ(PC数-1)体と戦闘を行ない、勝利することで無傷の卵を1つ手に入れられる。

'画像'
 
 

□〈コムギ粉〉

・穀物「コムギ」を石でひき、粉上にしたもの。さまざま料理に使われる。この情報は【聞き込み判定/見識判定:5】で聞いたり、思いだしたりすることが出来る。
・国産は上質な代わりに量は多くないため、必要な量を買うには300Gほどかかる。輸入品であれば250G、ハーヴェスから歩いて2時間ほどの所にある港では輸送費などを差し引いて200Gほどで手に入る。この情報は【聞き込み判定/見識判定:9】で詳しい人から聞いたり、ひらめいたりできる。
 
 

□〈カタメ粉〉

・芋系の野菜を加工して作る、白い粉。液体にとろみを加えたり、揚げ物・焼き物にサクリとした食感を加えたりと、その用途は様々。知る人ぞ知る「魔法の白い粉」。この情報は【聞き込み判定/見識判定:8】で聞いたり、思いだしたりすることが出来る。
・流通量は多くなく、輸入品がほとんど。ハーヴェスから歩いて2時間ほどの所にある港に行くか、ハーヴェス王国内にある料理人御用達のお店に行くと200Gほどで手に入る。この情報は【聞き込み判定/見識判定:10】で詳しい人から聞いたり、ひらめいたりできる。
 
 

□〈ハチミツ〉

・集めた花の蜜を使ってハチたちが丹精込めて作る、とろっとした甘い液体。ハチが生息している地域によって香りや糖度が少しずつ異なる。この情報は【聞き込み判定/見識判定:5】で聞いたり、思いだしたりすることが出来る。
・ハチミツの採取には、ハーヴェス近辺にある森の中で【探索判定:8】に成功する必要がある。この情報は【聞き込み判定/見識判定:8】で聞いたり、思いだしたりすることが出来る。それとは別に、丸い帽子の受付嬢に話を聞けば判定に自動成功したものとして、この情報を入手できる。
・判定に成功した場合、同じくハチミツを狙うウルフたちの群れと遭遇する。前衛に「『ウルフ』(Ⅰ)P.450」を(PC数)体、後衛に「『パックリーダー』(Ⅰ)P.452」1体で戦闘を行ない、勝利するとハチミツを手に入れられる。
 
 

□〈フルーツ〉

・後日、西側の関所に届くと依頼主であるディアナが言っていた。
 
 

●〈フルーツ〉の受け取り

〇ハーヴェス王国/冒険者ギルド
 依頼を受注してから5日が経った朝。入手した食材を納品したあなた達は依頼主であるディアナと話していた。残すは事前にディアナたちが手配したフルーツを、商人から受け取り、ギルドに届けるだけ。
 「まずは感謝を。あなた達のおかげで、私たちの計画はうまくいきそうだ」
 そう言った彼女の格好は、白い調理服。どうやら彼女は、レストア家で働く料理人のようだった。
 「今からここの厨房を少し借りて、調理に入ろうと思う。夜には仲間たちが、ここにカレン様を連れてくる手はずになっている。『研究のためには冒険者たちの声も無視するわけにはいかない』と言えば、カレン様も疑いなく来てくださるだろう」
 そう言って席を立つ。
 「商人に頼んでおいたフルーツは、昼頃、西の関所に届く手はずになっている。受け取り次第、厨房に届けてほしい。もう報酬は受付嬢の子に渡してある。フルーツを彼女に届けた後、彼女から報酬を受け取ってくれ。恐らく私は調理で手が離せないだろうからな」
 エプロンを結び直し、あなた達に向き直ったディアナ。
 「あなた達のおかげで、新鮮で、良い材料を多く揃えることが出来た。きっとカレン様に最高のタルトを作ることが出来るだろう。スイーツが大好きなあの方の幸せそうな顔、楽しみだ」
 うれしそうな笑顔で告げ、彼女はギルドの厨房へ向かって行った。
 
 
 〈フルーツ〉を受け取るために、関所に赴いたあなた達。たどり着いたそこでは、しかし、あわただしく衛兵たちが駆けまわっていた。あなた達を見つけた衛兵が声をかけてくる。
 「君たち、ここは危ないから逃げなさい」
 どうやら何か不測の事態が起きているようだった。話を聞けば
 「今朝、街道にボルグの集団が出たんだ。今冒険者ギルドに連絡して退治依頼を申請しているが、この国も大きいからな。手続きに少し時間がかかっているようだ。依頼書ができるのは早くても明日になるそうだぞ」
 「幸い、近くには牧場しかない。もしものことがあっても、人的被害は最小限で済むだろう」
 「我々も思うところはある。しかし、あくまでこの国を守るのが使命だからな。勅命でもない限り動けないし、こんなことは日常茶飯事だ。いずれ優秀な冒険者が解決してくれる。慌てるようなことではない」
 
 (※PCがここで動かない場合、『タルト』が出来上がる。●結末へ)
 
 あなた達が街道へ急ぐと、遠目に大柄な蛮族が見えてくる。彼らは街道を通ろうとしていた商人たちの馬を襲っていた。馬車や積み荷は無事のようだが、それらが荒らされるのも時間の問題だろう。
 あなた達が駆けつけると、ひときわ大きなガタイをした蛮族(ボルグハイランダー)がゆったりと振り返る。武装したあなた達を見た彼は汎用蛮族語で仲間に呼びかかける。
 「お前ら、客だ。まずはこいつらを片付けるぞ。俺たちの食事が増えたな!」
 (※PCが〈濃厚ミルク〉をもらうとき、牧場で依頼をこなしていた)
 →「それに最近、近くで同胞がやられたからな。そのお礼参りをする必要もある。ここらの人族は皆殺しだ!」
 武器を構え臨戦態勢を取る。重装備をした蛮族が前に陣取り、後衛に話しかけていた蛮族が陣取る。統率された動きを見せた彼らの背後で、無力な商人たちはただただ怯えるばかりだった。
 
➡前衛:「『ボルグヘビーアーム』(Ⅰ)P.443」1体、「『ボルグ』(Ⅰ)P.441」(PC数-1)体
 後衛:「『ボルグハイランダー』(Ⅰ)P.442」1体(※〈剣のかけら〉2個で強化)
(※もし敵の数が減った時点でPCに余裕があるようなら、ラウンド終了時に「まさかこいつを使うことになるとはな!」とハイランダーが叫び、後衛に「『サンドウォーム』(Ⅰ)P.453」を配置してピンチを演出してもよい)
 
 
 戦闘後、動かなくなった蛮族たちを見て商人たちが駆けよってくる。
 「ありがとう! 君たちは命の恩人だ!」
 「しびれたぜ! あんたら強いんだな。今度うちに来い、サービスしてやる!」
 「お得意様からの依頼の品があったんだ! 助かったよ!」
 口々にお礼を述べた彼らの中に、ディアナの名前で発注されたフルーツが入った木箱もあった。命と積み荷の危機を救ってくれたあなた達を信用し、その荷物を渡してくれる商人。蛮族の襲撃という思わぬ誤算があったものの、無事、フルーツを受け取ることが出来たのだった。
 
 

●結末

〇ハーヴェス王国/冒険者ギルド
 夜。厨房から漂ってきたのは甘く香ばしいにおい。今頃、厨房ではディアナが丹精込めてタルトを焼いているだろう。
 その匂いに、酒場にいた冒険者たちがお腹を鳴らす。と、冒険者ギルドの入り口がにわかに騒がしくなる。見ればそこには従者風の男を連れた少女が一人、立っている。身なりや雰囲気が、冒険者のそれと少し異なる彼女は優雅に一礼してみせたあと、
 「お騒がせして申し訳ありません。私はカレン・レストア。研究の参考に、冒険者である皆様にお聞きしたいことがありまして……」
 そこまで言ったところで、どうすればいいのかと困ったように笑った。
 「カレンさん、ではなくて……レストア様。ひとまずこちらの席に」
 あなた達とディアナとの依頼を仲介し、サプライズ計画を知る丸い帽子の受付嬢。彼女がカレンを見つけ、酒場の一角に案内する。貴族を相手に一瞬ボロが出たものの、平静を装いながら
 「こちらでお待ちください。担当の者がすぐに参ります」
 そう言って厨房の方へ消えていく。ディアナにカレンの到着を伝えに行ったのだろう。しかしそれは『担当の者』が厨房にいるということを示す。ディアナ曰く聡明だというカレンに計画を勘づかれる可能性もあったが、
 「甘く、いい香りですわね……。きっとおいしいスイーツを焼いているのでしょう。ですが今回は研究が目的。決して、決して、屈しません……!」
 と彼女は酒場を満たす甘い香りに気を取られている様子。スイーツ好きという話も間違っていないようだ。
 
▶『タルト』が出来上がった
 少しして、厨房からディアナが姿を見せる。手に持った皿には丸く、波打ったコムギ色のクッキー生地に、まん丸い丘を連想させるような白いクリームの山を乗せた、一口大の料理がいくつも見える。
 ディアナに気付いたカレンが、
 「ディアナさん?! 今朝からお見受けしませんでしたが、どうしてここに……?」
 と、驚いているその目の前に、ディアナは手にしていた料理を置いた。
 「カレン様。『タルト』でございます」
 「あら、おいしそう! ではありません! まさか、レストア家の待遇が不満で、職場を変えたんですか? であるならば、改善いたします! どうか戻ってきてくださいませんか?」
 勘違いしている様子のカレン。大好きだというスイーツを前に、それでもディアナに帰ってくるよう説得を始める。そんな彼女に対しディアナは、手短にことの経緯を伝える。カレンの働き過ぎを、皆が心配していること。休んでもらおうとサプライズのスイーツを用意したこと。最後に、
 「そうして彼らの協力を得て、無事、こうしてタルトをお出しできたわけです」
 計画に不可欠だったあなた達を手のひらで示し、紹介した。それを受けたカレンは
 「そうですか。まさか私が働くことで心配をかけてしまうなんて……」
 思わぬ心配をかけていたことにショックを受けている様子。しかしすぐに気を取り直して
 「であるならば。ここまでして頂いて、食べないという選択肢はありませんわ! それにこうしている間にもクリームが溶けてしまいます。早速、頂きましょう!」
 嬉々とした様子で、用意されたフォークを手にタルトを見つめる。しかし、食べない。
 「……? どうしたのですか? あなた達も一緒に食べますわよ! 早く席についてください! さぁ、さぁ!」
 どうやら功労者であるあなた達も当然、食べるものだと思っていたようだ。タルトは人数分以上用意してある。ディアナもあなた達の分をきちんと用意していたようだった。
 全員が席に着いたところで、従者風の男がどこから持ってきたのかカップとソーサーを用意し、紅茶を入れる。酒場の一角には明らかに高貴な雰囲気が漂い始めた。
 「早く食べてみてください! ディアナの作るスイーツは格別。セバスの入れる紅茶もよく合います。きっとあなた達にも満足して頂けますわ!」
 カレンが全力で推してくる。
 丁寧に丸く盛られたクリーム。よく見ればパテか何かで波のような模様が描かれている。フォークで切り分けたタルトを口に運ぶ。まず香るのはハチミツの香り。ほんのりとする花の香りが、クッキー生地の香ばしさと相まって、やがて口内にやってくる甘味への期待を高める。そしてクッキーを歯で砕くとやってくるクリームの奔流。卵由来の者とミルク由来のもの。二つのクリームを丁寧に混ぜ合わせたまろやかな甘みが舌を包む。と、感じられるのは微かな酸味。切り分けたタルトの断面を見れば、クリームの山にはどうやら、小さな赤い木の実でできたソースが隠されていたようだ。そのソースがともすると甘すぎるクリームにアクセントを加え、程よい具合に整えてくれる。
 それでも甘味でくどくなりそうなときは、湯気を立てる紅茶を一口。茶葉の香りが際立ち、その奥にはひっそりと果物の香りもある。そうして紅茶独特の渋みがタルトの甘みを中和しながら喉の奥に消えていき、さっぱりした口でタルトを迎えることができる。
 「ん~~~~……たまりません! 最高ですわね!」
 歓喜の声を漏らし、あなた達に同意を求めるカレン。浮かべられた無邪気な笑みからは疲れなど感じられない。フルーツが届かないというアクシデントはあったものの、サプライズがどうにか成功したことの何よりの証左だった。
 
➡経験点(500+(判定での1ゾロ数)×50+(倒した魔物のレベル合計)×10点)を得る。
 
 
▶『タルト』が出来上がった
 少しして、厨房からディアナが姿を見せる。手に持った皿には丸く、波打ったコムギ色のクッキー生地に、まん丸い丘を連想させるような白いクリームの山を乗せた、一口大の料理がいくつも見える。山にはあなた達が手に入れた色とりどりのフルーツが飾り付けられ、見るものを蠱惑的に誘う。
 ディアナに気付いたカレンが、
 「ディアナさん?! 今朝からお見受けしませんでしたが、どうしてここに……?」
 と、驚いているその目の前に、ディアナは手にしていた料理を置いた。
 「カレン様。『フルーツタルト』でございます」
 「あら、とてもおいしそう! ではありません! まさか、レストア家の待遇が不満で、職場を変えたんですか? であるならば、改善いたします! どうか戻ってきてくださいませんか?」
 勘違いしている様子のカレン。大好きだというスイーツを前に、それでもディアナに帰ってくるよう説得を始める。そんな彼女に対しディアナは、手短にことの経緯を伝える。カレンの働き過ぎを、皆が心配していること。休んでもらおうとサプライズのスイーツを用意したこと。そしてフルーツが届かないという不測の事態に冒険者たちが迅速に対処してくれたこと。
 「そうして彼らの協力を得て、無事、こうしてフルーツタルトをお出しできたわけです」
 計画に不可欠だったあなた達を手のひらで示し、紹介した。それを受けたカレンは
 「そうですか。まさか私が働くことで心配をかけてしまうなんて……」
 思わぬ心配をかけていたことにショックを受けている様子。しかしすぐに気を取り直して
 「であるならば。ここまでして頂いて、食べないという選択肢はありませんわ! それにこうしている間にもクリームが溶けてしまいますし、果物も劣化してしまいます。早速、頂きましょう!」
 嬉々とした様子で、用意されたフォークを手にフルーツタルトを見つめる。しかし、食べない。
 「……? どうしたのですか? あなた達も一緒に食べますわよ! 早く席についてください! さぁ、さぁ!」
 どうやら功労者であるあなた達も当然、食べるものだと思っていたようだ。フルーツタルトは人数分以上用意してある。ディアナもあなた達の分をきちんと用意していたようだった。
 全員が席に着いたところで、従者風の男がどこから持ってきたのかカップとソーサーを用意し、紅茶を入れる。酒場の一角には明らかに高貴な雰囲気が漂い始めた。
 「早く食べてみてください! ディアナの作るスイーツは格別。セバスの入れる紅茶もよく合います。きっとあなた達にも満足して頂けますわ!」
 カレンが全力で推してくる。
 丁寧に丸く盛られたクリーム。よく見ればパテか何かで波のような模様が描かれている。その波に揺られるように乗っている新鮮で瑞々しいフルーツたちが、クリームでできた白い山に彩を添えていた。
フォークで切り分けたフルーツタルトを口に運ぶ。まず香るのはハチミツの香り。ほんのりとする花の香りが、クッキー生地の香ばしさと相まって、やがて口内にやってくる甘味への期待を高める。そしてクッキーを歯で砕くとやってくるクリームの奔流。卵由来の者とミルク由来のもの。二つのクリームを丁寧に混ぜ合わせたまろやかな甘みが舌を包む。と、感じられるのは微かな酸味。切り分けたタルトの断面を見れば、クリームの山にはどうやら、小さな赤い木の実でできたソースが隠されていたようだ。そのソースがともすると甘すぎるクリームにアクセントを加え、程よい具合に整えてくれる。
 さらにクリームの波に乗る様々な果物たちが香りや触感で味に変化を加え、飽きさせてくれない。
 それでも甘味でくどくなりそうなときは、湯気を立てる紅茶を一口。茶葉の香りが際立ち、その奥にはひっそりと果物の香りもある。どうやら本来の紅茶に仕入れたフルーツを加えた特製の紅茶のようだ。独特の渋みがタルトの甘みを中和しながら喉の奥に消えていき、さっぱりした口でもう一口、もう一口とタルトを迎えることができる。
 「ん~~~~……たまりません! 最高ですわね!」
 歓喜の声を漏らし、あなた達に同意を求めるカレン。体裁を繕わず、頬にクリームをつけたまま浮かべられた無邪気な笑みからは疲れなど感じられない。サプライズが大成功したことの何よりの証左だった。
 
➡報酬と経験点(1000+(判定での1ゾロ数)×50+(倒した魔物のレベル合計)×10点)を得る。
 

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ご覧いただいて、ありがとうございます。 見てみた・プレイしてみた感想や誤字脱字の報告を頂けると幸いです。 たまにシナリオに手を加えることがあります。 言葉足らずで不明なところは気軽に質問してください。 adobe のPDFは、見るだけは可能だと思います。もし不都合があれば教えてください。別のアップ方法を調べてみます。   ストックありがとうございます。それを励みにシナリオを作成していけたらと思います。

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