●トレーラー
いつだって悪意は静かに歩み寄り、日常を奪っていく。たとえ海水浴であってもそれは同じ。突然いなくなった親友。時を同じくして聞こえてきた、奇妙な生物の噂。事件を追うにつれ見えてくるFHの暗躍。彼らの目的とは…? 移りゆく季節。色合いを変える景色。潜む脅威をあぶり出し、変わらない日常(と時々お金)をつかみ取れ!
ダブルクロスThe 3rd Edition 『Fall leaves』
ダブルクロスそれは裏切りを意味する言葉。
FHのセル“白鴉”は誰もが暴走することなくその恩恵を受け取ることが出来る“完全な賢者の石”を作り上げようとしていた。今回彼らが試みたのは、あえてオーヴァードに賢者の石を取り込ませることで暴走させ、侵蝕率を上昇を上げた実験体をUGNに倒させることで、より強力で純度の高い賢者の石へと昇華させようというものだった。
そんな悪意の対象になったのがPC①の友人である秋空紅葉(あきぞら くれは)。もうすぐシーズンが終わるとあって海水浴に来た彼or彼女はその帰り、“白鴉”のA市支部トップである小此木信一(おこのぎ しんいち)によって無理やり賢者の石を取り込まされ、力を暴走させてしまう。赤黒い巨大なスライム状の生物になってしまった秋空紅葉は残された理性の中、意中の人物でもあるPC①に見られたくないと、地下に身を隠す。しかし暴走したブラム=ストーカーの力は秋空紅葉自身の意思を無視して従者を作り出し、人々を襲うようになってしまうのだった。
UGN職員のPC②、金欠で夏の間、海の家でバイトをしていたPC③を巻き込みながら秋空紅葉の暴走を収め、事件の黒幕である小此木信一を倒すとシナリオクリアとなる。
・推奨PC数:3人
・使用するルールブック:(Ⅰ)(Ⅱ)
※今回はなるべくルールブックに準ずる形式で書いてみました。
・PDF●DX3『Fall leaves』
いつだって悪意は静かに歩み寄り、日常を奪っていく。たとえ海水浴であってもそれは同じ。突然いなくなった親友。時を同じくして聞こえてきた、奇妙な生物の噂。事件を追うにつれ見えてくるFHの暗躍。彼らの目的とは…? 移りゆく季節。色合いを変える景色。潜む脅威をあぶり出し、変わらない日常(と時々お金)をつかみ取れ!
ダブルクロスThe 3rd Edition 『Fall leaves』
ダブルクロスそれは裏切りを意味する言葉。
ロイス:秋空紅葉(あきぞら くれは) 推奨感情 P:庇護/N:悔悟
カヴァー/ワークス 学生/指定なし
幼馴染の秋空紅葉は、あなたと同じくオーヴァードだ。長い休みが明け、学校が始まったばかりのある日、あなたは紅葉とともにひと夏収めとして海水浴に行った。その帰り、何かを伝えようと言いよどんだ紅葉だったが、結局、何も言わずに走り去ってしまう。学校で聞けばいいか。そう考えていたあなただったが、その時を最後に、紅葉が学校に来ることは無かった。
ロイス:彼岸朱音(かれぎし あかね) 推奨感情 P:尽力/N:憤懣
カヴァー/ワークス 指定なし/UGNエージェント
彼岸朱音はあなたが所属するUGN支部の上司にあたる女性だ。ある日、彼女から呼び出されたあなたはそこで「秋空紅葉」という女子生徒の捜索を依頼されることになる。場所は少し離れたA市。白い砂浜と一級河川の河川敷が特徴的なその町では、“白鴉(はくあ)”というFHのセルも暗躍しているという。朱音の見立てでは今回の事件との関係性は薄そうだと言うが…。
ロイス:凩剛毅(こがらし ごうき) 推奨感情 P:誠意/N:不信感
カヴァー/ワークス 指定なし/指定なし
少し金に困っていたあなたは友人の紹介で凩剛毅が経営する海の家でバイトをしていた。シーズン最後の書き入れ時、このままいけばボーナスが出ると語った剛毅。しかし、その日の夕暮れ、奇妙な生物に襲われる彼をあなたは目撃する。軽傷を負い、搬送された病院で剛毅はこのままでは店を開けられないと語る。ボーナスと人助けのために、あなたは奇妙な生物を追うことにした。
※オープニングフェイズでは原則シーンプレイヤー以外登場できない。
〇解説
夏収めとしてA市の海水浴場を訪れたPC①と幼馴染の紅葉。しばらく遊んでいた時、《ワーディング》が展開される。しかし、すぐに解除されたため、レジャーを再開する。日も暮れた帰り際、PC①に告白しようとするも決心がつかず逃げるように消えた紅葉はその帰り道、“白鴉”のA市支部を取りまとめる小此木信一(おこのぎ しんいち)に無理やり賢者の石を取り込まされ暴走し、異形のバケモノになる。
その後、紅葉は醜い自分を誰か(特にPC①)に見られたくないと河川敷にあった工場の排水設備に身を隠す。しかし暴走するブラム=ストーカーの力が体の一部を従者として切り離し、血を求めて人々を襲うようになる。
いなくなった紅葉をPCが捜索しようと情報を集めようとしたところでシーン終了。別れ際、紅葉が言いよどんだ内容は告白。紅葉の性別はPC①が望んだものになる。表記はモデルケースとして男子とする。
一瞬だけ展開された《ワーディング》は、オーヴァードを探すために小此木が展開したもの。下水道への入り口は、河川敷の河口付近にあるものとする。
〇描写
雲一つない透き通る青空。白い砂浜には色とりどりのテントやパラソルが立てられている。海開きがもうすぐ終わる、秋のはじめ。あなたは幼馴染の秋空紅葉とともに海収めに来ていた。
・秋空紅葉
「海だ! 海だよ、PC①!」
「もう夏も終わりだし、目いっぱい楽しもうね!」
(ワーディング展開時)
「《ワーディング》?! ボクじゃないし、PC①?」
「何が起こってるかわからいないけど、警戒しよう!」
(ワーディング解除後)
「なんだったんだろう…。でも大丈夫そうだね。気を取り直して、ボクたちは海を楽しもう!」
(帰り道)
「今日は楽しかったね! ボクの我がままに付き合ってくれて、ありがとう!」
「PC①も楽しんでくれてたなら、嬉しいな。それで、あのね、PC①…えっと…」
「ううん、やっぱり何でもない! じゃあまた、学校でね」
○結末
あなたが何か言う間もなく、逃げるように帰って行った紅葉。そうして街灯に照らされた路地で別れたあなただったが数日後、学校が始まっても、そこに秋空紅葉の姿は無かった。心配して連絡してみても、返事は無い。あなたと海水浴に行ったあの日以来、忽然と姿を消してしまった紅葉の行方を追ってあなたは奔走するのだった。
〇解説
失踪した秋空紅葉の両親の相談を受けたUGNは紅葉が最後にいたA市と、最後に会っていたPC①の身元を数日間かけて調査する。結果、少なくともPC①に怪しい動きはなく、白と判断したUGNは、本格的な調査のためにPC②に現地A市に赴くよう指示を出す。また、その説明の際、PC②の上司である彼岸朱音から、FHのセル“白鴉”について知らされる。PC②が任務を了承したところでシーン終了。
このシーンは秋空紅葉の失踪から数日ほど経っているタイミング。
失踪した秋空紅葉の両親はオーヴァード。能力が非力なためUGNには所属していないものの、協力関係にあるいわゆるイリーガルという立場にある。
朱音が知っている”白鴉”に関する情報は、彼らが各地で『レネゲイドブースター』と呼ばれる侵蝕値を上昇させる薬を使って混乱をもたらしてきたことと、彼らが追っているものが賢者の石とRBであること。
PC①と秋空紅葉の呼称はそれぞれモデルケースとして女子と男子である場合を描写している。
〇描写
夏の残暑厳しく、熱くなったアスファルトが陽炎を立ち上らせる初秋。UGNに所属するあなたは上司である彼岸朱音に呼び出され、クーラーが聞いた会議室に呼び出されていた。
・彼岸朱音
「来てくれてありがとう、PC②」
「今回あなたを呼び出したのは、A市で調べものをしてほしいの。対象はこの子よ」
(秋空紅葉の写真を見せながら)
「彼は秋空紅葉くん。実はその子、少し前に友達と海水浴に行った後から行方不明になっているらしいの」
(もう一枚、今度はPC①の写真を見せながら)
「この子が最後に会っていた人物PC①よ。どうやら二人は幼馴染みたいね」
「一応、紅葉くんのご両親から連絡を受けてすぐに、PC①さんを職員たちに見張ってもらっていたけれど、怪しい動きはなかったみたいね」
「むしろ見張りに気付いた様子もなく、紅葉くんを心配して今も探しているみたい」
「というわけで、あなたには紅葉くんの行方を追ってほしいの。必要だと思うならPC①さんに接触してみても良いと思うわ」
「あ、そうそう、A市と言えば。最近あの辺りで“白鴉”が動いているみたい」
「彼らが追っているのは“賢者の石”と、特定のRBだけだから、今回の事件には関係がないかもしれないけれど…。一応、知らせておくわね」
○結末
「それじゃあ、頑張ってきてね」
上司の激励を背に、あなたは涼しい部屋を出る。車や電車を利用しながらたどり着いたA市。綺麗な砂浜と海に流れ込む一級河川が有名なその場所にも、まだまだ夏の香りが残る。いなくなった秋空紅葉の行方を追って、あなたは街に繰り出すのだった。
〇解説
海の家でバイトをしていたPC③。夕暮れ、店じまいをしていた時、店の裏でごみの整理をしていた凩剛毅の悲鳴を聞く。駆けつけると、気を失った剛毅を襲う、奇妙な生物(秋空紅葉の従者)に遭遇する。助けた後、数日は療養のため入院する剛毅は、最後の書き入れ時に店を開けられないかもしれない、バイト代が少し少なくなると語る。PC③がバイト代と人助けを求めて、店長を襲った生物の調査に向かったところでシーン終了。
店長を襲う紅葉の従者は、赤黒い球体状の生物。裂けた口にある牙で人の血を吸う。PCが倒すと言えば倒せる。倒された分裂体は、赤黒いしみを残して、砂浜に染み込むように消えていく。
〇描写
夏も過ぎ去り、まだ高い気温も下がろうかという秋の上旬。あなたは友人に紹介された割のいいバイト、海の家でアルバイトをしていた。もうすぐ海水浴シーズンが終わるというこの時期。最後に海を堪能しようと大勢の海水浴客が訪れている。そのかいあって、あなたが働く海の家も連日盛況だった。
どうにかピークを乗り越えたあなたのもとに店長の凩剛毅がやってきて声をかける。
・凩剛毅
「お疲れさん! PC③のおかげで、このままいけば売上最高額を達成できそうだ。そうなったらバイト代とボーナス、期待しておいてくれ!」
(病院で)「まさかビビッて気を失うとは…。情けないな」
「しかし、なんだったんだ、あの生き物は…? あんなのがいるって噂にでもなれば客も来なくなる。俺も安心して店を開けられん。残念だが、今年は店じまいだろうな」
「昼間はああ言ったが、こうなった以上、ボーナスというわけにもいかん。もちろん働いてもらった分は払うつもりだが…」
○結末
あの奇妙な生物がいなくなれば、店を再開できると語った店長。“普通”では考えられない生物。きっとレネゲイドウィルスが関わっているだろう。人助けと夏のバイト代ボーナスをかけて、あなたは奇妙な生物の調査に赴くのだった。
※秋空紅葉が失踪して1週間ほど経過したタイミング。PC同士が接触するシーンがあれば、適宜演出する。全員が「河川敷の横穴に向かう」と宣言すればトリガーイベントが発生し、PC全員の時系列が一致、接触することになる。
●情報収集1
□〈任意の技能〉6
最近、海水浴場付近で赤黒い『スライム』がいると噂になっている。先週あたりから目撃されるようになったようで、牙を突き立てて人の血を吸うらしい。被害者によれば、何か鳴き声を上げていたとか。他にも白衣を着た研究者の集団が街をさまよっている、犬がよく鳴く電柱があるなどとりとめもないものも多い。
□〈任意の技能〉8
河川敷付近で夜な夜な、誰かが泣いているような声が聞こえるのだとか。「見ないで、見ないで」と泣くその声はどうやら、近くにある工場から河川敷までつながる排水設備の横穴から聞こえると言うが…? →「河川敷の横穴に向かう」ことが出来るようになる。
※PC③のみ調べることが出来る。他のPCは「A市で広がる噂について」の情報収集に成功すれば調べられる。
□〈情報:噂話/裏社会〉6
つい最近見かけたという人によれば、その生物が近くにある川の方に這いずって行ったという情報を得られる。その後、川の中に消えて行ったようだ。
□〈情報:裏社会〉9
最近A市で”白鴉”と呼ばれるFHが何か良からぬことをしているらしい。奇妙な生物はその結果生まれたという不確かな情報を得る。そして街に現れる奇妙な生物の動きからそれらを操る親玉のような存在が河川敷の、とある横穴にいるのではないかということらしかった。→「河川敷の横穴に向かう」ことが出来るようになる。
※この情報は秋空紅葉を知っているPCのみ調べられる。
□〈情報:UGN〉6
両親がイリーガルで、UGNと協力関係にある。本人のシンドロームはブラム=ストーカーのピュアブリード。しかし両親同様その能力は強力なものではなく、戦闘員としては不向きである旨が書かれていた。
□〈情報:ウェブ〉6
SNSを調べてみれば、直近に友人(PC①)と海に行くこと、それに向けた買い物の様子などが書かれている。また、海水浴に行く直前「今度こそ言う!」と何かを決意したような投稿がされていた。しかし海水浴に行った日に撮った海の写真以降、更新は無い。
○条件
PC全員が「河川敷の横穴に向かう」と宣言した。
〇解説
集めた情報をもとに、異形化した秋空紅葉がいる河川敷の横穴へやってきたPCはそこで他のオーヴァード(他PC)と遭遇する。目的が同じである彼らに協力関係を結ばせ、暗い横穴を進む。横穴の入り口には鉄格子がはめられているため、適切な技能や演出で突破させる。なお、秋空紅葉は軟体を活かして鉄格子の間をすり抜けた。
横穴を進む際、〈知覚〉6の判定に成功すれば「見ないで…」「痛い…」と泣く秋空紅葉の声が聞こえる。また、奥に進むにつれ従者を見かけるようにもなる。光が漏れる横穴の最奥、そこはある工場の真下。半径15mほどの半球状の空間になっているそこに、赤黒いゼリー状の巨大な生物(スライム/秋空紅葉)がいて、泣いていることがわかる。ここまで近づけば、PC①はその声が秋空紅葉であることに気が付くことが出来る。暴走した秋空紅葉のレネゲイドの力は、やってきたPC達に襲いかかる。戦闘の際はルールブック(Ⅱ)P.266にある「クリムゾンビースト」を参考にする。
戦闘後、元の姿に戻った秋空紅葉は自身に石(小さな賢者の石)を渡した人物について話したのち、気絶する。PC②などがUGNに報告した場合、彼岸朱音から紅葉を異形化させたと思われるFHを追うように指示が出る。各PCがFHを追うところでシーンを終了し、情報収集へ。なおPC②以外の想定する動機としてPC①は秋空紅葉を無理やり異形化させたFHへの復讐。PC③は再び奇妙な生物が現れたり、他にもいたりするかもしれないため、安心してバイトを再開できるようにする、単に協力金が欲しいから、などがある。PC達が“白鴉”を追って情報収集に向かったところでシーンを終了する。
PC②、③が望むなら、このシーンのどこかで秋空紅葉に対してロイスを獲得してもよい。レネゲイドの力に振り回され、傷ついた紅葉を見れば、同じくオーヴァードであるPCも何か思うところはあるだろう。また、PC①は戦闘後、幼馴染を利用し、傷つけたFH“白鴉”に対してロイスを獲得する。推奨は「憎悪」や「憤懣」などのネガティブな感情。
〇描写
時刻は夕暮れ。あなた達は情報収集の結果、怪しいと思われた河川敷の横穴に来ていた。ふと周囲を見渡せば、他にもこの横穴に用があると思われる人物(他のPC)がいる。
件の横穴は金網フェンスで囲われ、微かに水滴が垂れる入り口には人が誤って入らないよう頑丈な鉄格子がはめられていた。
・秋空紅葉
(横穴での〈知覚〉判定に成功)「痛い…、苦しい…、見ないで…!」
(PCが接敵)「見ないで! こんなボクを、見ないでPC①!」「お願い、助けて…!」
(戦闘後)「けほっ…。良かった、戻れた…。ありがとう、PC①。みんなも…」
「白衣を着た人が、変な石を渡してきて…そうしたら、力が暴走して。みんなも気を付けて」
「疲れちゃった。ごめん、ボク、少しだけ…寝る…ね」
・彼岸朱音
(UGNに連絡した/連絡が来る)「PC②、進捗はどう?」
「紅葉くんはとりあえずUGNで治療するわね。それにしてもどうして暴走したのかしら…」
「そう…。白衣、それに石…ね。納得だわ。多分、紅葉くんの言っていた石は賢者の石ね。それを無理やり取り込まされて暴走させられたんだと思うわ」
「恐らく任務前に言っていたFH“白鴉”の仕業ね。でもどうして貴重な賢者の石を…」
「PC②、悪いけどそのまま、A市に潜伏している”白鴉”を追ってくれないかしら。できればそこにいる他の皆さんにも協力してもらって」
(主にPC③へ)「もちろん、うちから協力金は出させてもらうわ。相応の、ね」
○結末
しばらくするとUGN職員がやってきて秋空紅葉を専門の医療機関へと搬送する準備を進める。立ち会った医師の見立てでは、無理な力の行使で衰弱しているだけだという。
賢者の石を与え、オーヴァードを無理やり暴走させるFH““白鴉””の暗躍。一難去ってまた一難とばかりに、事件はより深い闇へとあなた達を誘っているようだった。
※PC②が「宝石屋商会に向かう」と宣言すればクライマックスフェイズへ。
□〈任意の情報:○○〉6
FHのセルの一つ。賢者の石と、特定のRBのみを追い求める、白衣が特徴的な組織。A市でも白衣を着た集団がたびたび目撃されていて、どこかに活動拠点があるとされてきた。活動の資金源である「レネゲイドブースター」という薬を作るために、賢者の石が必要だとされている。→「白衣の行方」を調査可能。
□〈情報:UGN/裏社会〉9
彼らの真の目的は誰もが適応することが出来る“完全な賢者の石”を作ることらしい。RBを追うのも、彼らが高濃度のレネゲイドウィルスの塊であり、自己保存のために賢者の石になる可能性があるとみているようだ。先の事件は、秋空紅葉に手に入れた賢者の石を無理やり取り込ませて力を暴走させ、侵蝕率が上がったところで倒し、より大きく、より純度の高い賢者の石を作ろうと”白鴉”が画策していたようだった。
※この情報は「FH“白鴉”について」の情報収集に成功すると調べることが出来る。また初めてこの情報収集に成功した時、トリガーイベントが発生する。
□〈任意の情報:○○〉〈任意の知識:○○〉
あらゆる方法で調べたところ、どうやらA市の市街地付近でよく目撃されているようだ。→「白衣の行方2」を調査可能。また、トリガーイベントが発生。
※この情報は「白衣の行方」の情報収集に成功すると調べることが出来る。
□〈知覚〉8
雑踏の中、情報通り白衣を着た複数の人物を市街地で目撃する。見失わないよう、また、彼らに気付かれないよう、慎重に追ってみると、彼らが入っていったのは少し外れにある雑居ビル。「宝石屋商会」という看板が掛けられていた。病院などではなく、どう見ても白衣を着ている人物が出入りするには不釣り合いな建物と名前。どうやらそこが、彼ら“白鴉”の拠点のようだ。→「宝石屋商会へ向かう」と宣言できるようになる。
○条件
情報収集で「白衣の行方」の情報収集に成功した。
〇解説
白衣を着た集団の情報を集めていた時、PCは小此木信一が居酒屋で暴れている姿を目撃する。PCが足を止めた場合、悪酔いした彼は“白鴉”内でまだまだ身分が低いと悪態をつきながら暴れていることがわかる。また、秋空紅葉に賢者の石を取り込ませたことについて、一部をぼかしながら語る。小さな声で語られるその内容を知るには〈知覚〉8の判定に成功する必要がある。最後は他の構成員や店員に介抱されながら雑踏の中に消え、自宅に帰っていく。後をつけても拠点は分からない。
この時、小此木たちは白衣姿ではない。一般人に見えなくもないため、ただの酔っ払いだとPCがスルーしても問題はない。またFHだと断定できないため、PCが襲い掛かる理由はないと思われる。《ワーディング》等でオーヴァードであるかを確認するにしても、FH側に気付かれるリスクを知らせておく。それでも襲い掛かろうとするなら、レネゲイドブースターを使ってジャーム化した構成員2人と戦闘になる。「オーヴァードエージェント」ルールブック(Ⅱ)P.263を参考。戦闘の間に小此木は逃走する。
〇描写
あなたが“白鴉”の行方を追っていた、ある日の夜。繁華街を歩いていたあなたの耳に、何やら口のような怒声が聞こえてくる。見れば不健康そうなやせぎすの男が酒を片手に愚痴をこぼしているようだ。
・小此木信一
「おえだって! 俺だってな! がんばってんだ」
(PCが立ち止まり、〈知覚〉の判定に成功した)
「なおになんで…こんな小さい町の、部長どまりなんら…ヒック」
「折角もらった石も無駄になったし…。全部あのガキがわりぃんだ…。あんなに早く見つかりやがって…」
「こうなったらやつら(※UGNのこと)が来てもおかしくねぇ」
・“白鴉”構成員
「小此木さん、飲み過ぎです!」
(PCが立ち止まり、〈知覚〉の判定に成功した)
「一応ほら、部長ですよ。今回のいかした実験も、部長が考えて、実行までしたじゃないですか!」
「先週《ワーディング》まで使って見つけた、いい感じの実験体だったんですけど」
「また引っ越しですね…」
(PCが攻撃した)
「部長、逃げてください。ここは私たちが食い止めます」
「白鴉万歳!」→レネゲイドブースターで自らジャーム化する。
○結末
結局さんざん飲んだ小此木と呼ばれた男は、同卓していた部下と思われる人々に介抱されながら帰路に就いた様子。何気ない酔っ払いたちの日常だった。
○条件
PC②が「宝石屋商会に向かう」と宣言した。
〇解説
A市における“白鴉”の拠点の雑居ビル「宝石屋商会」には、一般人の研究員大勢と戦闘人員としてオーヴァードが複数人在籍している。
PCが雑居ビルに乗り込もうという時、その入り口から部下を引き連れた小此木信一が出てくる。PCが戦闘を仕掛けない場合、風や音の微かな違いから小此木がPC達を発見し戦闘になる。衝動判定を行ない最終戦闘へ。
エネミーのデータとしてはルールブック(Ⅱ)P.263、267にある「オーヴァードエージェント」「エージェント:コマンダー」を参考に、PCから5m、10mの位置に構成員が2体ずつエンゲージを形成して計4体、その最後方に小此木(コマンダー)をボスとして配置する。
戦闘後、倒された小此木の処遇をPCが決め、実行したところで個別エンディングへ。
〇描写
“白鴉”の拠点になっている雑居ビルへとやってきたあなた達。仕掛けようかという時、入り口と思われる場所から、眼鏡をかけたやせぎすの男と白衣を着た“白鴉”の構成員が複数人現れる。
「小此木部長、そろそろ移転の準備が…」
と話す内容から、どうやら最初に出てきたやせぎすの男がこの「宝石屋商会」の重役であることがわかるだろう。
・小此木信一
(PCが仕掛けない)
「だれだ! 隠れても無駄だぞ!」
(PCが仕掛けた)
「ち、UGNの犬どもか! この間はよくも実験を邪魔してくれたな!」
「お前たちと、あの無能なガキのせいで貴重な石を無駄にした!」
「全ては完全な賢者の石を完成させるため…。むしろ、あのガキもそんな偉大な実験に尽力できたこと、光栄に思うべきだ」
「ふん。邪魔をするなら、排除するしかないな」
(戦闘後)
「いずれは俺の犠牲も、糧に…」
○結末
→個別エンディング
〇解説
PC①の個別エンディングの例。
無事、秋空紅葉を見つけ、救出することが出来たPCは紅葉が入院しているUGNの息がかかった病院を訪れる。病室でPCは秋空紅葉にUGNに入って、共に人々をレネゲイドの力から守ろうと誘われる。もしPCがSNSで言っていた、もしくはオープニングフェイズで言いよどんでいたことがUGNへの勧誘だったのかと聞けば、そうだと嘘をつく。
〇描写
後日。あなたは、秋空紅葉が入院している病院へお見舞いに来ていた。あなたの心配をよそに、紅葉は元気な様子。軽度の栄養失調と疲れで眠っていただけのようだった。
見舞いに来たあなたに、喜んで見せた紅葉。落ち着いたところで、話があると切り出した。
・秋空紅葉
「PC①、助けてくれてうれしかった! ありがとう!」
「それで、あのね、PC①。実はボク、UGNっていうオーヴァード関係の組織に入ってるんだ」
「両親もそこに入ってて、その流れで。でもみんなすごいんだよ?」
「悪い奴らをドーンって。ボクたちみたいなオーヴァードの強力な力が、悪用されないようにしてるんだ」
「PC①に黙っていたのは…できれば危ないことにはかかわらないで欲しかったから、かな」
「だから、うん。これはボクの我がまま。あのね、PC①。良かったらUGNに入らない? 僕と一緒に、レネゲイドの力が悪用されないように、みんなを守るために戦おう?」
「もちろん、公にはできないし、誰も褒めてはくれないけど…。ボクはPC①と一緒ならもっと頑張れそうな気がするんだ!」
(肯定)「ほんと? 本当に、ほんと?! やったー!」
「コホン、それじゃあ。改めてPC①。これから一緒に頑張ろう! 末永く、よろしくお願いします」
(否定)「気にしないで。もちろん一緒じゃないのは少し、ううん、とっても残念だけど」
「でも、ボクにとってPC①が正義のヒーローってことは変わらないから! お互いにこれからもずっと、変わらずにいようね」
(言いかけてたこと)
「あ、あれは、えっと…実はそうなんだー、あはは…」
「鋭いんだか、鈍いんだか。まったく…PC①は」
「なんでもない!」「でも次は、きっと…」
○結末
こうして海水浴から始まった事件は、無事終わった。数日後には秋空紅葉も退院し、日常生活を取り戻す。秋も深まり、気温は下がってきた。
「PC①、おはよー!」
そう言って、いつものように教室の入り口から手を振る紅葉。その制服は夏服から冬服に変わっていた。オーヴァードである限り、レネゲイドの力は容易に人々の日常を侵食する。季節は秋。木の葉はやがて、紅く紅く、色づいていくに違いなかった。
〇解説
PC②の個別エンディングの例。任務を終えたPCを上司である彼岸朱音がいたわる。そしてPCが大切なものを再確認するために、彼岸朱音は温泉旅行を手配する。
〇描写
秋空紅葉を捜索し、A市に潜む悪意を摘んだ。事件のいきさつを語るためにやってきた会議室。部下のあなたを彼岸朱音は満面の笑みで迎えていた。
・彼岸朱音
「お疲れ様。さすがPC②! よ、できる男/女!」
「とまぁ冗談は置いておいて。改めてお疲れ様、PC②。期待通り…いえ、期待以上の活躍だったわ」
「紅葉くんも無事。“白鴉”の拠点も壊滅。他のオーヴァードとの連携も見事」
「だからこそ、優秀なあなたを失うわけにはいかないわ。というわけで…」
(温泉旅行券を見せながら)
「PC②にはこちらをプレゼント! ご家族と一緒に、ゆっくり英気を養ってきなさい。これは業務命令、です!」
「悲しいことに、今もどこかでレネゲイドの力が悪用されていると思うわ。そしてその悪意から人々を守ることが出来るのは、同じくオーヴァードである私たちしかいないの」
「私たちはいつも危険な力と隣り合わせってこと。暴走ならまだしも、ジャーム化したり、死んでしまったりする可能性もある」
「だから、時々はあなたが守るべき人々、日常をしっかりと見る時間が必要なの。で、温泉旅行券」
「別に、たまたま福引で当たったけど一緒に行く人がいないし、折角だから部下とその家族を労わろうっていう、優しい上司を演じたいわけじゃないわよ?」
○結末
「仕事のことは良いから、ゆっくりしてきてね」
彼岸朱音がそう、あなたを送り出す。今回は任務ではなく、休暇へと。幾分か気温も下がり、温泉を楽しむにはちょうど良い季節。もう少しすれば紅葉で色づいた山々も美しいだろう。守るべきもの、守ったものを確認するために。あなたは帰るべき場所へと帰って行くことだろう。
〇解説
PC③の個別エンディングの例。無事、海水浴場の平和を取り戻したPCは再び海の家で働くことに。秋空紅葉の従者だった奇妙な生物の噂は、凩剛毅の懸念を裏切り大勢の客を呼び込む結果になる。PCはボーナスとUGNからの協力金を受け取って、シナリオ終了。
なお、従者についてはUGNの情報操作によって新種のクラゲとして認知されるようになる。
〇描写
海収めに来た海水浴客でにぎわう浜辺。そこに立つ海の家は今日も繁盛していた。ひっきりなしに飛ぶ注文。せわしなく駆けまわる定員達。漂う料理の匂い。無事退院し、あなたから奇妙な生物のその後を聞いた凩剛毅。彼も商人。安全を確認できてすぐに海の家を再開していた。
彼の横で調理を手伝っていたあなた。お互い調理の手を止めず、世間話をする。
・凩剛毅
「何日か休業したが、どうにか予定通り、ボーナスを出せそうだ!」
「にしても、俺を襲ったあの変な生物が噂になって、逆に人が来るなんてな…。そこは俺も計算違いだった」
「結局、あの生物は新種のクラゲ? かなんからしいが…初めて見た時はエイリアンかと思ったぞ」
「夏の間、PC③は思い出とかつくれたか? すまんな、シフト多く入れすぎたかもしれん」
「ま、満足できたんならしれでいい! 新しいオーダーだ! あと少し、最後まで頼りにしてるぞ!」
○結末
後日。ワイワイと騒がしかった海水浴場も海の家も、今年は終わり。売上最高額をたたき出したボーナスとして、剛毅から想定していた以上の額がバイターたちに支給される。
「PC③は少し多めだ。何せ命の恩人らしいからな」
そう耳打ちされたように、あなたへの支給額はさらに少し多かった。
さらに。後日確認したあなたの口座に振り込まれていたのはちょっとした額。「協力金」という名目でUGNという組織から振り込まれていたそのお金も相まって、財布事情は潤ったことだろう。こうして、苦労して手に入れたお金があなたの“日常”に彩を添えたのだった。
ご覧いただいて、ありがとうございます。 見てみた・プレイしてみた感想や誤字脱字の報告を頂けると幸いです。 たまにシナリオに手を加えることがあります。 言葉足らずで不明なところは気軽に質問してください。 adobe のPDFは、見るだけは可能だと思います。もし不都合があれば教えてください。別のアップ方法を調べてみます。 ストックありがとうございます。それを励みにシナリオを作成していけたらと思います。
https://www.pixiv.net/users/60483311
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