黒くどんよりとした雲が空を覆う、荒廃した世界。記憶のかけらを求め、都市を探索していたドール達は、その郊外に奇妙な形の建物を見つける。その入り口に飾られていた星のオブジェ。それを目にしたとき、ドールの中に星空を見上げたいという願望が生まれる。しかし、いつも分厚い雲に覆われたこの世界で、その思いは叶わないだろう。それでも衝動に任せてドールが探索しているその場所は戦前、「プラネタリウム」と呼ばれ、空が見えないところにすら星空を映す施設だった。
黒くどんよりとした雲が空を覆う、荒廃した世界。記憶のかけらを求め、都市を探索していたドール達は、その郊外に奇妙な形の建物を見つける。その入り口に飾られていた星のオブジェ。それを目にしたとき、ドールの中に星空を見上げたいという願望が生まれる。しかし、いつも分厚い雲に覆われたこの世界で、その思いは叶わないだろう。それでも衝動に任せてドールが探索しているその場所は戦前、「プラネタリウム」と呼ばれ、空が見えないところにすら星空を映す施設だった。
※比較的短めのシナリオです。
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ネクロニカ「Stargaze」
※見やすい方でご覧ください。
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ネクロニカ「Stargaze」
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かつて栄えていただろう都市の跡を捜索していたドールたち。崩れたビルの背後には今日もどんよりとした黒い雲が広がり、その先にあるはずの青空も星空も見ることはできない。
昼下がり。目ぼしい記憶の手がかりもなく、都市のはずれまで来たドールたちはそこに、円筒状の奇妙な建物を発見する。そこがどのような施設なのか。壊された標識や案内板からはわからない。
それでも記憶のかけらを求めて、中を捜索しようと入り口から中に入った時。ドールたちの目に映ったのは天井からぶら下がる星型のオブジェ。まだここがどのような施設なのかはわからない。それでも、ここにはかつて見た星空があるのではないか。直感めいた衝動がドールたちの小さな胸に湧く。
★カルマの発表:「姉妹(PC全員)で星空を見上げる」
微かに残る記憶。生前見たあの夜空を求めて、ドールたちは建物を捜索することにしたのだった。
※GM情報:館内に電気は通っていない。そのため電子機器は一様に作動しない。ただし、PCが電源設備で電気を復旧した場合、全ての機器を使うとこができる。また、建物は戦時中でも避難所として利用出来るよう設計されており、外壁などは見た目以上に頑丈。アンデッドの攻撃などで、破壊することはできない。
建物内には電気がついていないが、今は日中。外の光が建物内に届く程度で薄暗いが、ドールであるあなた達なら不自由なく探索できそうだ。入り口にはゲートとその横に受付とトイレがあり、ゲートの前にはあなた達が読める文字で「券売機」と書かれている。ゲートの奥、エントランスには壊れて原形をとどめないオブジェがあり、その頭上に吹き抜けの高い天井から星がぶら下がっていた。
□券売機
ドールたちが読める文字で「入館券・おとな」「入館券・こども」「回数券」などと書かれている。
ここを捜索した最初のドールは【記憶のかけら『入場券』:「それは夢へ続くチケット。それを手にしたあなたは、いつもとは違う非日常に足を踏み入れることが出来た。だから今回も、きっと、こんな荒廃した日常を忘れさせてくれるに違いない」】を得る。
□トイレ
入り口はゲートをくぐった先にある。男女に分かれた入り口から中に入ると、洗面台や壁に無数の穴が開いていることがわかる。
壁に空いた穴を調べれば、いくつか弾丸が見つかる。トイレに空いた穴はどうやら全て弾痕であるようで、入り口から無差別に銃を乱射したようだ。それを見たドールはふとドールは幻聴する。誰かの高笑いと、鳴り響く銃声を。そして幻視する。戦友で、姉妹でもあった彼女は狂気に満ちた顔で無抵抗なあなたに向けて機関銃を撃ち続ける。執拗に何発も、何発も。今隣にいる姉妹もいつかは、そうなってしまうのだろうか。恐怖があなたを疑心暗鬼に陥れる。➡【恐怖判定】
□受付
内側にあった棚や机、引き出しは全て破壊され、焦げてしまっている。受付内で何かが爆発したようだった。受付から続く「控室」の扉も同様に破壊され、ロッカーや机を遠目に見ることが出来た。
エントランスからは左右に廊下が見え、円筒状の建物の外周に沿う形で続いている。そのため入り口からは突き当りまで確認することはできそうにない。正面には階段が二つあり、そこから上階へ行くことが出来そうだ。そして階段の先、2階には大きな両開きの扉が見えた。
※GM情報:エントランスには「敵」の襲撃とラスボスとなるバルキリーとの戦闘の痕がいたるところに残されている。多くは弾痕だが、例えば応戦したバルキリーのレーザービームによる線状の焦げ跡などもある。
□壊れたオブジェ
大小さまざまな、丸い金属製の輪っかがエントランスの中央付近に落ちている。中には変形してしまっているものもあった。近くにはオブジェについて紹介していると思われる案内板が立っている。
案内板を見れば、それが本来「天球儀」と呼ばれるもので、天体の位置や距離を示していたものだと分かる。これを最初に見たドールは【記憶のかけら『天体』:「今はもう見えない遠い空の、さらに先にあるもの。夜空に無数に輝く星の中には、こんな終わってしまった世界ではない、かつての世界に似た星もあるはずで…」】を得る。
□控室
受付のそばにある、小さな部屋。エントランスと受付、その両方から入ることが出来るようになっている。
室内には全て開けられた縦長のロッカーとパイプ椅子、机があるが、壁を含めそれらすべてに穴が開いていた。
穴を調べれば、いくつか弾丸が見つかる。空いた穴はどうやら全て弾痕であるようで、室内を銃で無差別に乱射したようだ。それを見たドールはふとドールは幻聴する。誰かの高笑いと、鳴り響く銃声を。そして幻視する。戦友で、姉妹でもあった彼女は狂気に満ちた顔で無抵抗なあなたに向けて機関銃を撃ち続ける。執拗に何発も、何発も。今隣にいる姉妹もいつかは、そうなってしまうのだろうか。恐怖があなたを疑心暗鬼に陥れる。➡【恐怖判定】
ロッカーを調べると、その一つの中に紙束を見つける。ドールたちが読める文字で書かれているそれを読めば、ここが「プラネタリウム」を楽しむことができる施設であることがわかる。また、戦時中に避難所になっていること、その他経営状況に関する数字が並ぶ。これを最初に見たドールは【記憶のかけら『プラネタリウム』:「真っ暗な閉ざされた空間。天井に阻まれて、本来そこに見えないはずの星空が、なぜかそこには広がっている。あなたはその夜空を、誰かの温もりを手に感じながら見ていた」】を得る。同時に、ドールになった今、もう二度と“生きている温もり”を感じることも、感じさせることもできないという現実がドールに哀愁にも似た絶望を覚えさせる。➡【恐怖判定】
小さな小窓から外の光が差し込む。薄暗いものの、ドールであれば探索するうえで問題はない。
白い壁には黒く変色した血の手形がいくつもついている。それは時折筆で描いた線のようになりながら、廊下の先に続いている。同様に、地面には点々と血の跡があった。
カーブした廊下を少し行くと、朽ち果てた遺骸が「展示室」というプレートがかかった部屋の前で倒れているところを目の当たりにする。血の跡もここで途切れているため、どうやらこの遺骸が血の跡を残した本人であるようだ。
さらに少し行くと、廊下の突き当りが見える。分厚い無機質な扉は固く閉ざされていて、ドールの力をもってしても破壊することが出来そうにない。鍵穴のようなものも見当たらなかった。
□遺骸
長い年月の末、骨だけになってしまった遺骸。足元に広がる血の痕跡は、遺骸がここで力尽きたことを物語っていた。そばにはメモ帳と鍵が落ちている。(※鍵は「電源設備」の部屋の扉を開けるためのもの)
メモ帳の内容は、どうやらこの遺骸がつけていた日誌のようなもの。最初の方は、平和な日常で感じた疑問やその答え、来館した人々の反応について書かれている。やがて「戦争」が始まったようで避難所としてここが使われること、人々と協力しながら、どうにかこうにか生活を続けていたことが書かれている。後半は、一部が血に浸って読めないものの、敵がここを狙っているため、避難してきた人々を別の施設に逃がしたこと。思い入れのあるこの施設を守るために相棒とここに残り、防衛システムを使うこと、それによってどうにか敵を撃退できたことが書かれている。しかしその後、想定外の「何か」が起き、施設の電源を落とすことでそれに対処した旨を最後にメモ帳は読めなくなった。(※もしこれを読んだドールが「戦争」に関する記憶のかけらを所持していた場合、日記の内容がトラウマを蘇らせる。➡【恐怖判定】)
□展示室
割れたショーケース、倒れた商品棚、散らばっている小物やアクセサリー。室内は何者かによって荒らされ、混沌としている。壁に飾られている大きな絵、値札シールがついた袋に入ったままの商品などから、ここが展示室と物販を行なう場所だったことがわかる。奥まった場所で光が届きにくいため、少し探索がしにくい場所だった。(※探索判定に-1の修正)
壁の絵は、小さな星をつなぎ合わせ、動物や物に見立てた星座を紹介しているものだと分かる。特に大きく書かれているのは琴、白鳥、ワシの絵をつないだ三角形。これを最初に見たドールは【記憶のかけら『夏の大三角』:「夜空の下。あなたの隣で星を指さす誰か。無邪気なその横顔に、あなたが言おうとしたこと。二人の“いつも”を変えてしまう、一言。それは何だっただろう。その後、二人はどうなったのだろう」】を得る。またそのドールがいずれかの姉妹に【恋心】の未練を持っていた場合、その狂気点に1点を加える。(※複数ある場合、そのすべてに1点を加える)
室内を探索すると、散らばったアクセサリーに埋もれて一冊のノートを見つけることが出来る。ここに来た人々、特に子どもが自由に書くことが出来るノートだったようで、可愛い絵やきれいだったという感想が、拙い文字で綴られていることが多い。さらに読み進めた場合、ある時を境に、不安や奇妙な絵が描かれることが多くなっていく。最後にはアンデッドに対する憎悪と、怨嗟に満ちた言葉、狂気的な絵が何ページにもわたって描かれ、子どもたちの日常がアンデッドによって破壊しつくされたことがわかる。そしてそのアンデッドにはあなた達ドールも含まれており、ノートに書かれた言葉と絵がつぶさに心を抉る。➡【恐怖判定】
小さな小窓から外の光が差し込む。薄暗いものの、ドールであれば探索するうえで問題はない。
白い壁には黒く変色した血の手形がいくつもついている。それは時折筆で描いた線のようになりながら、廊下からエントランス、そして右の廊下に続いている。同様に、地面には点々と血の跡があった。
カーブした廊下を少し行くと、「電源設備」と書かれたプレートがかかった部屋が見えてくる。無骨な金属の扉には鍵がかかっていて、ドールの力をもってしても開けたり、破壊したりできそうにない。(※ここにはいるためには「展示室」前にいる遺骸のそばに落ちていた鍵を使う必要がある)そしてその扉の前には壊され、さび付いた機械が放置されていた。(※この機械は展示室前で遺骸になっていた人物と相打ちになった、防衛システムの機械。)
さらに少し行くと、廊下の突き当りが見える。分厚い無機質な扉は固く閉ざされていて、ドールの力をもってしても破壊することが出来そうにない。鍵穴のようなものも見当たらなかった。
□電源設備
室内は赤い非常灯が点いていて、視界は良い。今も機器のランプは色とりどりに点滅し、ドールなどと同じく粘菌などを利用しているのだろう電源設備が現役であると分かる。とはいえこれほど大きな施設。あとどれくらい電力が残っているかは未知数だった。
大小さまざまな機器が並ぶ室内を探索すると、ドールが読める文字で「施設全体」と書かれたスイッチを見つける。現在はオフになっていた。それをオンにすると、バチンと言う音、そしてそれぞれの機器が駆動音を立てて動き出したことがわかる。電源設備室内の非常灯は白系統の明かりに照らされ、館内全体の電気が復旧する。以降は明かりを気にせず探索することが出来そうだ。
階段を上ると狭い踊り場、両脇に鉢植えの置かれた大きな扉がある。
扉に鍵はかかっておらず、中には簡単に入ることが出来る。
扉を開くと、目の前には音楽などで使う譜面台のようなものに、ラミネート加工(紙を長持ちさせるために止め否膜で薄くコーティング)された紙が置かれている。ドールたちが読める文字で書かれているそれを読めば、「中央付近にある『案内開始』のボタンを押すことで鑑賞できます!」と書かれている。しかしそれ以上にドールの心をとらえるのは、その文章とともに描かれているデフォルメされた女性のイラスト。何気なく描かれた2本の腕に2本の足。かわいくきれいな服を着て笑う“人間”。自分もかつてはそうだったはずなのに。変質し、改造され、もう人間ではない、戻れないという事実。憧れ、羨望、嫉妬、後悔…。様々な感情が押し寄せ、心を締め付ける。➡【恐怖判定】
ドーム状の天井。中央には、少し高くなった台座に棒の先に2つの球を取り付けたような、奇妙な機械が見える。そしてその台座を中心として、円形にイスがいくつも並ぶ。この光景を最初に見たドールは【記憶のかけら『投影機』:「あなたはあれを知っている。あれは星を映す機械。あれを動かせば、見上げた先にきれいな満天の夜空が広がるはず。あなたを夢の世界に誘う、魔法の機械」】を得る。
台座のそばには丸いボタンと『案内開始』のボタンがついたスタンドが立っていた。
※電源を復旧した状態で、ドールたちが『案内開始』ボタンを押そうとすると、最終戦闘へ。
あなた達がそのボタンを押そうとした、まさにその時。どこからかエラー音が聞こえてくる。その音は段々と近づいてきて、入り口の扉が吹き飛ばされ、何者かが押し入ってきた。
「侵入者、発見。防衛システム、作動。排除します」
感情のない機械音声でそう告げたかと思うと、彼らは手にした武器を構え、なだれ込んでくる。
「あ、ああアンデッドをおお、こわ、壊す、すすすす! 施せせ設、るる守る、ければばば」
明らかに様子がおかしいそれらは、問答無用であなた達に襲い掛かってくるのだった。
○戦闘終了条件:投影機以外のエネミーを殲滅。
○戦闘カルマ:投影機のパーツが一つも破壊されない。
※戦闘プラン:地獄にいるスウォームは煉獄への移動を最優先します。スウォーム以外は、たとえエネミーが大失敗したとしても、彼が守るべき施設の一部である投影機を意図して攻撃することはありません。
ギミックとしての存在。ルール上、悪意点0点の手駒を作ってはいけないので、計算しない。投影機が破壊された場合、微かに残るカルマを達成するための最後の希望が失われることになったドールたち姉妹は絶望し、完全発狂する。➡バッドエンド
暴走する機械を破壊し、退けたドールたち。どうやら彼らは廊下の先、鍵穴のない扉の奥にいた、この施設を防衛するために作られた機械のアンデッドたちだったようだ。激しい戦闘だったが、ドールたちの奮闘もあって投影機は無事。案内開始のボタンを押せば、機械は動き出すだろう。
▶案内開始ボタンを押した。
明るい室内が少し暗転し、どこからか流れてくるオルゴール。中央にあった投影機が小さな光を漏らす。
そうして、最初に映されたのは夕暮れ。見上げる天井。茜色の空に一つ、また一つと星が映されていく。加速された時間がいくつもの季節を運び、その季節ごとの空を映す。同時に、赤い空が暗くなり、星はその数を増やしていき…。
気づけば星の川が流れ、夜空を二つに分かつ。時折光る流れ星が、川を渡り、空を駆ける。小さな光の一つ一つが個として、また、群として真っ暗な空を彩り、星座という絵を描いていく。
黒く分厚い雲に覆われ、荒廃しきったこの世界。それでも、光を失った今の地上から見上げたその先には、記憶にあるその夜空よりきっと、さらにきれいな星空が広がっているに違いない。そう確認することが出来る。いつかそんな日が来るのかはわからない。それでも、一つの“夢”として。その希望はこの狂気に満ちた世界に生きるあなた達を、あなた達足らしめるものになることだろう。
朝が来て、施設の電力が無くなると同時に投影機が動かなくなる、その時まで。あなた達は特等席で、夜空を眺め続けたのだった。
※電力が無くなると、隔壁が閉まってしまうため、二度と廊下の先を捜索することはできない。
▶その前に廊下の先を確認しに行った。 (※おまけ)
開き切った扉の奥。カーブした廊下はホールを一周するように続いていた。充電ケーブルが垂れ下がる廊下を行くと、途中。ちょうど施設の入り口の反対辺りに、遺骸を見つける。その手には「作戦書」と書かれた紙束が握られていた。
それを読めば、この施設を守るために残った二人による、暴走した防衛システムを止める作戦について書かれたものだと分かる。暴走し、微かな音や熱を感知してそれらすべてを破壊するようになってしまった機械たち。このまま放置すればやがて野に放たれ、避難した人々を襲うかもしれない。そう考えた二人は、アンデッド兵器迎撃用に造られた頑丈なこの施設を、彼らを閉じ込めるための檻として逆利用しようと考えたようだ。
そうして決行された作戦。一人が機械たちをおびき寄せ、一人が電源を落とし、防衛のために開けてしまった隔壁を閉める。そんなシンプルな作戦だったようだ。
最後のページには手書きで、相棒の無事を祈る言葉と、おびき寄せた機械が一つ少ないことを案じる言葉が書かれていた。
ご覧いただいて、ありがとうございます。 見てみた・プレイしてみた感想や誤字脱字の報告を頂けると幸いです。 たまにシナリオに手を加えることがあります。 言葉足らずで不明なところは気軽に質問してください。 adobe のPDFは、見るだけは可能だと思います。もし不都合があれば教えてください。別のアップ方法を調べてみます。 ストックありがとうございます。それを励みにシナリオを作成していけたらと思います。
https://www.pixiv.net/users/60483311
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