2024年07月30日更新

零れた熱に魘されて

  • 難易度:★★|
  • 人数:1人~4人|
  • プレイ時間:2~3時間(ボイスセッション)

とある村を、旅行で訪れた探索者。
村の外れには寂れた神社があり、どうやらその神社は、負の感情を焼却することで新な一歩を踏み出すきっかけを作ってくれる神社。
というのが表の顔で、裏では人喰い神社と忌み嫌われ、何人もの行方不明者を出している神社でもある。
だが、もう遅い。あなたは引き返すことができない領域まで、足を踏み入れてしまったから。

  
※後味が悪いのでご注意を
※ロスト無し
4/7 解説追記

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ストック

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【背景】

クトゥグアの一瞬で全てを消し去る力に魅せられた姉と、血の繋がった姉でも一人の女性として心を寄せている弟のお話。
姉にとってはクトゥグアは信仰対象だが、弟にとっては家族を焼き殺され、自分の四肢の自由、そして姉の心を奪った憎くて憎くてたまらないといった存在。
  
姉を救い弟を見捨てれば、これからこの先、彼女は全身に負った火傷に苦しみながら、醜いと後ろ指をさされ孤独に生きていくことになるだろう。
そのような容姿を受け入れてくれる人はいない。天涯孤独の人生を歩むことになる。
いつになってもその痛みは収まることはなく、死ぬ間際まで彼女は喘ぎ苦しむのだ。
  
弟を救い、姉を見捨てれば、彼は最愛の人を失い、生きていく意味も失うだろう。
この世に存在する意味をなくした彼は、姉のもとへ向かうべく、自ら死を選ぶ。
姉にとってはクトゥグアが絶対だったように、彼にとっては、姉という存在がなにより絶対なのだから。
  
あなたは誰を救って、誰を見殺しにする?
あなたの選択が彼らの運命を決めるのだ。
  
※後味が悪い
  

【概要】

舞台 現代日本
プレイ人数 1~4人
プレイ時間 3時間
推奨技能 探索技能、 対人技能
準推奨技能 オカルト
形式 シティ
  

【登場人物】

不知火 朝陽 (しらぬい あさひ)女 22歳
不知火神社の巫女。美しい黒髪と整った顔立ちを持っている。夕陽と血の繋がった双子の姉。二卵性双生児。
全てをクトゥグアに燃やし尽くされたときから、その力に惚れ込みクトゥグアを信仰している。
彼女の目的はクトゥグアを再び復活させること。弟が自分を想っていることは気づいていないようだ。
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san75 幸運75 アイデア60 知識60 耐久力13 mp15 db0
  
不知火 夕陽(しらぬい ゆうひ) 男 22歳
不知火神社の神主。美しい黒髪をもつ。
朝陽と血の繋がった双子の弟。二卵性双生児。
クトゥグアに四肢を焼かれ不自由な身になる。顔もその際焼かれており、顔の右側が爛れている。姉がクトゥグアを信仰していることは知っており、両親や自分の四肢、姉の心など多くのものを自分から奪ったクトゥグアを憎んでいる。
姉のことを一人の女性として見ており、ひそかに想いを寄せている
Str3 con16 pow10 dex3 app7 siz14 int12 edu15
San50 幸運50 アイデア60 知識75 耐久力15 mp10 db0
  
黒髪の男
どうやら今回も一役買っているっぽい。
今回のシナリオではカラスの姿をとり、探索者を観察している。炎は嫌な思い出があるようで。
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San55 幸運55 アイデア60 知識60 耐久力16 mp11 db+1d4
  
クトゥグア
双子の先祖がとある黒髪の男から授かった神様の一部。先祖代々受け継ぎ、この神社に祀ってきた。
しかし、クトゥグアの体の一部を、幼かった朝陽が興味本意で持ち出し、外に出してしまったことでクトゥグアの一部が暴走。
熱と炎が神社や家、周囲一帯を焼き尽くす大火災となった。
父親と母親はその際焼け死んだ。
  

【導入】

季節は秋。10月だ。
葉は赤や黄色に色づき始め、日が出ていても頬に冷たい風を感じるようになった。
あなたはこれから旅行へ行く。
行き先は田園風景が続く空気の綺麗な田舎の村。
そこには有名な神社があるようで、そこへ行くこともあなたの目的の1つでもある。
バスが朝の7:00と夜19:00の二回出ており、片道6時間ほどかかる。
今は早朝なため、朝のバスに乗れば13:00には到着するはずだ。
  
暫くすると、バスがあなたの目の前に止まり、扉を開けてくれる。
周囲を確認すれば、乗り込む人はあなた以外は居ないようで、ひどく静かなことがわかる。
再び走り出したバスの心地よい振動に、あなたは身を委ねた。
※各々6時間を過ごして貰います。RPを自由に行ってください。
  
神社について電子機器で調べる
<図書館>〈コンピュータ〉
負の感情を焼却することで新な一歩を踏み出すきっかけを作ってくれる神社。という内容が書かれている。
何代も続く歴史ある神社で、火や熱を司る神を祀っているようだ。
しかし、12年程前に神社と家、その周囲一帯が燃える大火事に。
秋の乾燥により、みるみる内に炎は広がり、全てが灰になった。
その際、10歳の子供たちを残し、両親は死亡。死体は全てが燃えてしまったのだろう。見つかることはなかった。
  
<オカルト>
調べていると、こんな記事を見つける。
怪奇!不知火神社へ参拝した人間が次々と消滅していく。
神隠しだろうか?人喰神社の謎……。
  
6時間がたった頃、バスの中からは山々が立ち並ぶ大自然を見ることができる。
減速していったバスは、やがて無人の駅にとまる。
完全にバスが停車すると扉が開き、外からは澄みきった冷たい空気が車内を吹き抜けた。
  
バスから降りる
降りようとすると、運転手があなたに話しかける。
白髪混じりの黒髪。年齢は40代くらいだろうか。胸元にネームプレートをつけている。
「この村は私の故郷でもあります。何もない所ですが、空気が綺麗で良いところだと思います。……楽しんできてください。」
そう優しく笑った運転手は、踵を返し、運転席へと戻っていく。

ネームプレート
そこに書かれていた名前は「五十嵐 聡(いがらし さとる)」
  
周囲を畑で囲まれた田舎だ。
木々も多く、紅葉がうつくしい。
あたりを見渡してみると、あなたに背を向ける形で黒髪の男性が畑のそばに佇んでいる。
荷物などは持っていないようだ。彼以外に人は居ない。
  
スマートフォンなどの電子機器。
電源が入らない。
  
黒髪の男
声を掛けると、彼はこちらを振り返る。
日本人離れした顔の造形をしており、極めて整った容姿であることがわかる。
男性は「どうかされました?」とあなたに微笑みかける。
  
あなたは観光客ですか?→「私ですか?そうかもしれません。何回かこの村には訪れたことがありまして。あなたは此所に来るのは初めてですか?」
  
名前は?→「内藤と申します」
  
神社について→「ここで有名なものといえば、不知火神社でしょうか……。
あなたの目的もそこに?
良ければそこまで案内して差し上げましょうか?」
  
電子機器について→「村、というかほぼ集落に近いですから、あまり機械に関することは特化していないのでしょうね。少々不便ですが仕方ありません。」
  
神社へ向かう
男は「神社までの道のりはそう遠くはありません。乗り物等は無いので少し歩きます。良いですか?」とあなたへ問いかける。
20分程だろうか、延々と続く道を歩き続け、只の砂利道しかないような村の外れまであなたはやってきた。
その先には赤鳥居が魅力的な、厳かな神社が現れる。
人の気配は感じられず、閑散としている。
鳥居の前まであなたを案内した男性は
「ここが不知火神社です。どうぞいってらっしゃい。
私は用がありますので、これで失礼します。」
目を細めあなたに微笑むと来た道を引き返していく。
  
もし、男性から視線を一度外し、再び男性を見ようとすると男性の姿は何処にもない。
ここは見晴らしのよい一本道。
この短時間で見えなくなるのはおかしいと感じる。
あの男性は何者だったのか不安な気持ちになるだろう。<Sanc0/1>
  
鳥居
色味の少ない、寂しげな場所に赤色がとても映える。
神社、という神聖で独特な雰囲気をあなたは感じる。
  
中にはいると、入り口左脇には手水舎、と絵馬掛け所、右側には社務所、中央には拝殿、その奥に本殿があるようだ。
少し離れた所には家が建っており、おそらくここを継いでいる人のものだろう。
あたりを見渡していると、社務所の方から慌ただしく出てくる人影をみる。
一人は女性でもう一人は男性だ。
女性はあなたの方へ駆け寄ってくると
「観光客の方ですか?!」
と息を切らしながら問いかける。
女性の後ろからはゆっくりと男性が歩いてきており
「姉さん、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。びっくりさせてしまったよね、申し訳ない。この神社に人が来ることは、今はもう少なくてね。来てくれてありがとう。とても嬉しいよ。」
という男性は落ち着きがあり、柔和な表情をしている。
  
あなた達は?→「申し遅れました、私は不知火神社で巫女をしている、不知火 朝陽といいます。彼とは双子で姉です。ここまで来てくれてとっても嬉しいの。ありがとう。」と微笑む女性は目鼻立ちがしっかりとしており、黒髪が美しい溌剌とした美人です。
  
「私は不知火神社の神主をしているよ。名前は不知火 夕陽。彼女とは双子で弟。
誰かが来てくれるのは何年ぶりだろう。とっても嬉しいね、姉さん。」
と笑いかける男性からは物腰が柔らかな印象を受ける。そして彼は両腕の手の先、そして顔の右側まで包帯を巻いており、足を庇うように歩いていた。
  
彼らを見ていると、双子の割にはあまり顔が似ておらず、性格も真反対に感じる。
  
包帯について→包帯について問うと夕陽が「この神社が12年前くらいに燃えてしまったのを知っているかな?これはその時に焼けただれてしまったんだ。それから両手足が不自由でね。生活をするのには困らない程度なんだけど、見た目が悪くて怖がられそうだから、隠すようにしているんだ。」 という夕陽は少し悲しそうな顔をする。
  
神社を探索しようとすると、鳥居の方から視線を感じる。
振りかえれば、一匹のカラスがこちらを見ていた。
騒々しく鳴くこともなく、真っ黒な瞳が、只静かにあなたを見ていた。
  
夕陽が「神社の中は自由に見てもらって構わないよ。でも本殿には入らないでね。
あそこは普段、僕たちも行かないところだから。
鍵をかけてあるから入れないと思うけど、よろしくね。
ここの名物の焼却場は拝殿の中にあるから是非どうぞ。」
と好きなところへ行くよう促す。
  
※神社の中にあるものは大体普通の神社と同じです。
  
本殿
木製の扉は鍵がかけられ、厳重に閉ざされている。
扉に触れると、まるで木が熱でも発しているのかと思うほど暖かかった。
※この本殿は地下を経由し繋がっている。地下で朝陽がいた場所はこの本殿の中である。
  
<聞き耳>
扉の隙間から、鉄錆のような、腐った肉のような香りがした。
  
拝殿
炎が燃え上がっている。側には人形をもしている紙があり、張り紙には『断ち切りたい負の感情を形代に書き出し、焼却せよ。』と記載されていた。
〈知識〉
形代というもので、不浄なものを根絶するために使用する人の形をした紙。
今回この神社は、“負の感情を焼却し、新たな一歩を踏み出す”ことで名が知れているため、この儀式の為に使う。
 
一時間程たったときだろうか、ふと空を見上げると……
なぜだろう、夜になり月が出ていた。
ついさっきまでは昼で、太陽が地上を照らしていたのに。
あなたはいきなり夜になったことに驚くとともに、不気味に思った。鳥居に居座る烏が一声鳴くと、艷やかな翼を広げ飛び立った。
<Sanc0/1>
  
時計などを着けており、時間を確認すれば19:00を過ぎていることに気がつく。
バスは朝の7:00と夜の19:00の2回だけ。今日はもう帰ることができない。
頭を抱えていると、
朝陽が「皆さんどうされました?……って、なぜ月が出ているのでしょうか!?さっきまでお昼だったのに……!」
夕陽は「姉さん、落ち着いて。こんなことって……。
何か良くないことがありそうですね。確か、今日のバスはもうありませんよね?
ここら辺は獣も多いですし、村には宿泊施設のようなものも無いので……。
もしあなたが良ければ、ですが、今日は神社の裏にある、僕たちの家に泊まっていってください。」
と提案すると朝陽もそれに賛同する。
「そうね、私たちがこの状況にもっと早く気づけていたらこのようなことには……。」
ととても申し訳なさそうな顔をしている。
  
二人にいわれたように、家に泊めて貰うことにしたあなたは朝陽に手を引かれ進んでいく。
  
不知火家
瓦屋根の立派な日本家屋。
建てて数年しかたっていないのか、家に傷はなく綺麗。
夕陽「この先に使っていない部屋があるから自由に使っていいよ。
姉さんと僕の部屋、そして地下室には入らないでね。お祈りに使うものとか、色々保管してあるから。暇だったら書庫に入っても良いけど今日は開けてないから明日ね。」
朝陽「お腹が空きませんか?夕食を作ってくるので寛いでください。そうですね…20:00時くらいに、中央の座敷まで来ていただけますか?食事にしましょう。食べたいものはありますか?」とあなたに訪ねる。
メモをとると夕陽に手伝うよう声をかけ、恐らく台所がある方へと行ってしまう。
  

【探索】

朝陽の部屋
障子紙が貼られた戸がある。
鍵はついていないため、容易に中へ入ることができる。
あなたは夕陽の言いつけを破り、中へ入りますか?
  
中へ入ると和風の家具で統一された内装であることがわかる。
箪笥、机、押し入れなど必要最低限のものしかなく、女性の部屋にしてはひどく殺風景だった。
  
箪笥
代えの巫女装束や普段着るための洋服や和服、化粧品や小物の類などが綺麗に収納されており、探索者は箪笥の奥底に隠されていた鍵を見つける。タグがつけられておりスペアと書かれている。
金属製で大きめ、所々が錆びて赤茶色になっている。(地下室の鍵1)
  

背の低い机。机の上にほとんど物はなく、側には行灯が置かれている。
机には引き出しが1つあるが、鍵がかけられており開かない。
  
行灯 <目星>
内側の木の枠の部分に小さい鍵が隠されていた。(引き出しの鍵)
  
引き出し
小さい鍵(引き出しの鍵)を使うと、かちりと音がした。
鍵は開いたようだ。
  
開ける
中から古びた一冊のノートを見つける。
紙はぼろぼろで、使い古されている。
とあるページにこのようなことがかかれていた。
「私は、あの時から忘れることができない。
全てを焼き払い、灰にしてしまうあの強大な力を。
私から両親を、弟の四肢を奪い去ったあの力を。
もし、幼い私があの炎を外に持ち出していなければ………。」
といった内容だった。
  
押し入れ
上段には至って普通な布団や毛布が収納されている。
干されたばかりなのか、お日様の香りがする。
下段にはブラスチック製のケースがある。
  
開ける
アルバムなどが仕舞われている。どれも状態がよいものばかりだが、その中に紛れるようにして、年季が入りくすんだ冊子をみつける。
  
冊子
そっと扱わなければ紙が破れてしまいそうなほど脆くなっている。
草書体でかかれており、軽く見ただけではなんと書いてあるのかわからない。
<母国語>-50
「この神社は数百年の歴史が重ねられた由緒ただしき神社である。
とある男から譲り受けた神の一部をご神体とし、祀っている。
その男は誰が見ても、見目の整った美しい風貌だった。
その神の性質は炎や熱。その神が目覚めれば、広大な土地が一瞬にして灰に変わるだろう。」
  
夕陽の部屋
障子紙が貼られた戸がある。
鍵はついていないため、容易に中へ入ることができる。
あなたは夕陽の言いつけを破り、中へ入りますか?
  
中に入るが、あまりの物の無さに驚く。
机とその側には行灯、小さな箪笥、押し入れがある程度だ。
  

机の上にはなにもない。
引き出しが1つ付いている。
鍵は掛かっておらず中を見ることは容易だ。
  
開ける
ノートを見つける。
ページを捲っていると、以下の内容に目が止まった。
「姉さんは、火事が起きてから変わってしまった。
姉さんはもう、僕を見ていない。
あの視線の先にあるのはいつだって……。
憎い、憎い、憎い、憎い。
どうして?なんで?
僕はこんなにも、姉さんのことを想っているのに。愛しているのに。」
文字の最後は滲んでいる。
  
小さな箪笥
代えの装束が折り畳まれ収納されている。
普段着るための洋服や和服なども仕舞われている。また、洋服の下敷きになるように錆びた金属製の鍵をみつける。
大きめなその鍵にはスペアと書かれたタグがついていた。
(地下室の鍵2)
  
押し入れ
上段には布団や毛布が収納されている。
下段には段ボール箱が一箱、奥の方に仕舞われていた。
  
開ける
背表紙に1から10と番号が振られている。
どれもアルバムであることがわかり、量が多い。
そのアルバムを開いて見ていくと、すぐに異常であることがわかる。
アルバムは、姉の朝陽しか写っていない。
幼い時の写真はなく、ここ数年のものばかりだ。
アングルや表情、そして目線がこちらに向いていないことから、隠しカメラ等で撮られたのでは、と想像がつく。
あなたはこのアルバムから狂気的なものを感じる。<Sanc0/1>
  
<目星>
アルバム隙間から小さな紙が落ちたのを見逃さなかった。
「僕の、僕だけの、大切な姉さん。
ねぇ、僕だけを見てはくれないの?
僕はこんなにも姉さんの事を愛してる。
どうして僕らは血の繋がった姉弟なんだろう。」
強い筆圧でかかれた文字は、インクで染みができていた。
  
地下室
日当たりが悪いせいで湿っぽい。
鉄製の巨大な扉が道を塞いでいる。
鍵穴が二つあることから、鍵は二つないと開かないようだ。
鍵を開けようとすると
「(探索者の名前)さーん。何処にいますかー?もう20:00です。食事にしませんかー?」
とあなたを探す朝陽と夕陽の声が聞こえる。
ここは引き返して彼らと合流したほうが安全だろう。
  
中央の座敷
座敷の前ではお盆をもった夕陽がおり、「どこへ行っていたんですか?なにか面白いものでも見つけましたか?」とあなたの顔を覗きこむ。
  
会話を終えると「冷めないうちに召し上がってください。姉さんの料理はとても美味しいですよ。」とあなたに座るよう促す。
テーブルの上にはあなたの好きなものが多く並んでいる。
「私たちも一緒に頂きましょうか。どうぞ遠慮せずに沢山食べてくださいね。」
と朝陽は料理をすすめる。
夕陽がいっていたとおり、料理はどれを食べても美味しい。
朝陽はあなたや夕陽が料理を食べる様子を眺めながら、とても幸せそうに微笑んでいた。
  
食事を終え、時刻を確認するともう21時を回っていた。
「お風呂はあちらです。使ってください。」と着替え一式を渡される。
体が温まり、腹も満たされたあなたは、身の回りのことを終えると糸が切れたかのように、深い眠りへと誘われた。
  
肌寒さで目が覚める。毛布がはだけていたようだ。
ぼんやりとした意識の中で、あなたは襖の向こう側。
廊下の方を誰かが歩く音を聞く。
衣擦れの音はどんどん遠ざかっていき、そして何も聞こえなくなった。
  
<聞き耳> ガソリンの香りが仄かに残っていた。
※時計を確認するなら時刻は2:00
  
あなたは二度寝を貪るなり、そのまま起きるなりをして朝を迎えたのだった。
  

二日目 朝

日が上りはじめ、眩しい光が射し込む
時刻は6:00
襖の向こう側から「おはようございます。準備ができたら中央の座敷まで来て下さい。朝食ができています。」と朝陽が呼び掛ける。
  
中央の座敷へ
あなたの姿をとらえると「よく眠れましたか?」と食器をもった朝陽が話しかけてくる。
今日の朝食は、炊きたてのご飯、ふっくらとした焼き魚、豆腐とわかめの味噌汁、みずみずしいサラダなどの和食。
そして、いつもいる夕陽が見当たらない。
そのことを朝陽に聞けば「きっと神社の掃除をしているのだと思います。日課ですので。」
と返される。
  
食事を取っていると慌ただしく廊下を駆け抜ける音を聞く。
「皆さん…っ!大変です……!」と襖を強く開け放ったのは夕陽で、包帯だらけのその手には新聞が握られている。
  
新聞
朝刊。この村への朝と夜のバス、そして運転手について書かれている
バスには大量のガソリンがばらまかれ、何者かが放火をしたらしい。そして運転手の謎の失踪。置き手紙などもなく、神隠しにあったかのようにふっと姿を消したようだ。
そのため生死が定かでない。
「これでは帰ることができませんね……。バスが復旧されて代わりの運転手が見つかるまで、どうぞこの家に泊まってください。夕陽、構わないでしょ?」と真っ青な顔で確認をとる。
夕陽は「困ったときはお互い様だからね。もちろんだよ。
きっと明後日には帰れると思いますよ。」と返答する。
このような状況から、あなたはしばらくこの村に拘束されることとなる。
  
食事を終えると
夕陽「書庫の鍵は開けておきました。貴重な本もあるので、書庫から持ち出さなければ自由に使って頂いて構いません。」と言う。
  
書庫
室内は暗い。窓がないため光が入らないようだ。
電気をつければ室内は照らされ、よく見えるようになる。
壁をすべて埋め尽くすように置かれた本棚には、所狭しと本が納められている。
あまりの汚れのなさに、隅々まで掃除が行き届いていることがわかるだろう。
  
<図書館>①
分厚い本を見つける。
指先が本に触れた途端、背筋に悪寒が走る。
果てしなく続く闇の底へと飲みこまれるような、逃れられない恐怖があなたを襲う。
直感的に気がつくだろう。これは人が理解してはいけない本だと。<Sanc 0/1>
  
表紙には【ネクロノミコン】と書かれている。訳はオラウス・ウォルミウス
  
読む
<知識> ラテン語で書かれていることがわかる
ラテン語の辞典を見つけられたら自動成功で中身を読めたことにしてよい
  
本をめくれば、何かの招来や退散などといった内容のものが書かれている
本には付箋がひとつしてあり、そこを開くと《炎の精の召喚/従属》と書かれていた。
  
このような本を読んでしまった探索者は<sanc1d10/1d20>
クトゥルフ神話技能 +16%
全て理解するには66週間かかる。
  
<図書館>②
四つに折られた紙を見つける
内容は《クトゥグアの招来/退散》
その下には呪文のようなものが綴られている
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ
ふぉまるはうと うがあ ぐあ なふるたぐん
いあ!くとぅぐあ!」
フォーマルハウトが地平線上にあるとき、三回唱えなければならない。
  
フォーマルハウトとは
→<知識>または星座に関する本を探す
みなみの魚座にある恒星
日本では秋の1つ星、南の一つ星と呼ばれる。
見頃は6月から11月の中旬
  
<図書館>③
あまり厚さのない本を見つける
そこには「生ける漆黒の炎」の記述がある
「クトゥグアの招来に失敗した代わりに、その炎の一部が地球に呼び出されたもの。
理性が無いため、クトゥグア本体よりも危険だろう。
七本の角を生やした頭部と、筋肉の塊が不定形な形でうねっている。
唯一もつ思考は全てを発火し燃やすことだ。
この炎を制御する方法を、人間はしらない。」
  
全てを読み終わると大体昼頃。
昼食のよい香りが風に運ばれ、鼻先を掠める。
  
中央の座敷へ
食器を並べていた夕陽はあなたに気がつくと、「なにか面白いものでも見つけましたか?」と聞いてくる。
続けて、「食事を終えたら、村に赴いてみるのも良いかもしれませんね。何もありませんが今日はとても天気が良いですから散歩がてらにでもどうぞ。」と微笑む。
昼食決めロール1d6
1スパゲッティ
2 蕎麦
3 炒飯
4 豚丼
5 オムライス
6 親子丼
  
昼食後
朝陽「夕飯は19:00くらいに出来るようにするつもりなので、それまでに帰ってきて下さると嬉しいです。」
  
探索者の持ち物の確認後、村へ。
現在時刻は13:00
風は少し冷たいが、空高く昇る太陽の光があなたを照らし、温める。
背後からくぐもった烏の鳴き声が聞こえた。
日向ぼっこでもしているのだろうか、真っ黒な羽に日の光を集めている。
あなたのことに気がついた烏は、しばらくあなたを見つめたあと何処かへ飛びさっていった。
  
村の散策
村はひどく閑散としている。
そのような中、しばらく歩いていると、川岸で立ち尽くす一人の女性を見つける。
髪や肌に艶はなく、横顔から見える顔色はとても悪い。
痩せ細った体は枯れ枝を連想させる。
女性の視線の先は川の底へと向けられている。
  
※近づくだけでは女性は探索者の存在に気がつかない
近づく
女性がぶつぶつと何やら呟いている
「なんで……あの人は死んでない。皆どうして可哀想な目で私を見るの?私は認めない。認められない。だって、あの人は帰ってくるもの。」と永遠と呟いている。
  
声を掛ける
声を掛けられた女性は呟くのをやめ、ゆっくりと振りかえる。
女性の目には光が宿っていなかった。魂の抜けたような顔をしている。
涙が枯れるほど泣いたのだろうか、目元は赤く腫れ、肌には涙のあとが残っていた。
「何かご用ですか?」と発せられた言葉には、感情というものは感じられず、ひどく冷たかった。右手に紙切れのような何かを握っている。
  
持っているものは写真だ。

見る そこには仲睦まじく寄り添う二人の男女がいた。
夫婦だろうか、写真には幸せがみてとれるほど溢れていた。
女性は、今はすっかり容姿が変わってしまっているこの女性だろう。
そして、あなたはこの男性に見覚えがある。
白髪まじりの黒髪。優しそうな目元と柔和な笑顔。
そこには、あなたが以前出会い、会話を交わした男性の姿があった。
そう、この男性はバスの運転手だ。
  
名前は→「五十嵐 久子(いがらし ひさこ)」
あの人とは→「私の大切な人。夫よ。愛しくてしょうがない人なの。
……でも、消えてしまった。書き置きもなにもない。皆は神隠しだ、もう死んだんだって言うけれど、私は信じない。絶対に彼は帰ってくる。」
夫について詳しく→「バスの運転手をしているわ。都心からこの村までのバスよ。私も彼も、ここで生まれ育ったの。」
  
ある程度話終わると、女性は
「夫を探しに行ってくるわ。」
と言い残し、おぼつかない足取りで、ゆっくりと歩いていく。
  
現在の時刻 15:00
※村でのイベントは以上なので、欲しいものを調達したり、探索者の好きなことをして19:00頃に神社に帰れば問題ありませんので早く帰っても良いです。
  
19:00 神社
太陽はすっかり沈んでしまった。そのかわり月が青白い光を放つ。
街灯が僅かにしかない砂利道を歩きながら、双子の待つ神社へと向かった。
  
帰宅
帰ると朝陽が出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。本当に何もない村でしょう?」
と話しかける。
中央の座敷には夕陽がおり、あなたが視界に映りこんだことに気がつくと
「あぁ、お帰りなさい。お腹空きましたか?ご飯にしましょう。」
と包帯だらけの腕で料理を配膳していた。
夕飯決めロール1d5
1ハンバーグ
2 ラーメン
3 餃子
4 カツ丼
5 麻婆豆腐
6 焼きそば
  
各々時間を過ごし、就寝する。
深夜1:00 <聞き耳>
成功 足音と衣擦れの音が聞こえる。その足音はどこかへ向かっているようだ。
  
地下へ行く場合
廊下は冷えきっている。風が強いようで、隙間から吹き込む冷たい風に体を震わす。
電気もついていないため、先がよく見えない。
足音を追うように歩いていくと、あなたは地下室への扉にたどり着く。
以前閉められていた鍵は二つとも開けられている。
  
重い扉を押す。
床と扉が擦れる嫌な音とともに扉が開く。
そこには下へと続く階段がある。
等間隔に置かれた蝋燭の僅な光を頼りに進んでいく。
階段をおりきると真っ直ぐな道が続いており、突き当たりには上へと続く梯子が一つ。
その上からは微かに光がさしていた。
  
上がる
<聞き耳> 声が聞こえる
クリティカル 朝陽の声であることがわかる
  
梯子を上りきると、木造の小さな建物の中へ出る。
明るい光の正体はろうそくの炎のようで、煌々と燃え上がっている。
扉が祭壇の右側にある。
一歩踏み出すごとに、吐き気を催すような腐敗臭が立ち込める。
あなたの周りには大きな木箱が積み上げられており、容易に体を隠すことができる。
あなたに背を向け座り込む女性を見つける。それは朝陽だ。
朝陽の視線は、台の上に置かれている1つの瓶に注がれている。
そして、彼女はこう唱えるのだ。
  
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ
ふぉまるはうと うがあ ぐあ なふるたぐん
いあ!くとぅぐあ!」
  
彼女の表情は見えないが、その声は嬉々としているのがわかる。
  
「私はあなたをずっと待っていました。あのとき、あなたの炎に魅せられてから、私はあなたの虜です。明日の夜、再びあなたに会えるのですね!」
  
朝陽が立ち上がった拍子に、ごとり、と何かが落ちた。
青ざめた肌、だらしなく開いた口元。
白髪混じりの黒髪、優しそうだった目元は、苦痛のあまりか見開かれている。
あなたは彼を知っている。
彼は、あなたをこの地まで送り届けたバスの運転手だ。
胴体から無惨に切り取られた頭部は床に転がり、腐りかけの肌と体液が床を汚した。
<Sanc1d3/1d5>
  

瓶の中で、七本の角をはやした頭部がうねっているのが見えた。
瓶越しから伝わる邪悪をあなたは感じることができた。<Sanc0/1>
  
木箱 <目星>or<聞き耳>
大小様々な箱がある。探索者が入れそうなほど大きめなものもある。
<目星 >
木箱には赤黒い染みや手形ができている。
多くの木箱の中から一箱だけ、小さな穴が空いたものを見つける。
覗くには充分な大きさの穴だ。
  
覗く
様々な角度から差し込むろうそくの炎が中を微かに照らす。
中のものを視認した時、最初はそれが何なのかよくわからなかった。
濁った黒い円、そこにはあなたがうつる。
  
……それは人間の目だった。
開ききった瞳孔。濁りきり憔悴した人間の目。
何を訴えるわけでもなく、その目はただあなたを見つめ続ける。<1/1d3>
  
<聞き耳>
鉄臭さと腐敗臭はおもにこの木箱からだということがわかる。
  

ドアノブがついた木造の扉。
※鍵が外側からかかっている
  
大体探索が終わったら
<聞き耳>
梯子を上ってくる人の気配を感じる。
※箱の中に隠れることも可能
  
梯子を上りきり、あなたの目の前へ現れたのは、両手両足に包帯をまいた夕陽だった。
夕陽はあなたに視線を向け
「あなたでしたか。ここへは立ち入ってはいけない。と僕は言いましたよね。残念です。
姉さんの邪魔をするなら、僕はいくらでも悪になれる。……ごめんなさい。(探索者名)さん。」
  
双子との戦闘
夕陽は呪文《ヨグソトースのこぶし》を唱える。ルルブ6版
使用MPは6
夕陽の声に気がついた朝陽もこの呪文で参戦する。
※ここでは探索者を気絶させる必要がある。もし双子が倒された場合は黒髪の男(ニャル)が現れ、探索者を強制的に気絶させる。
  
探索者を気絶させた
意識が遠退いていく。
ろうそくの炎の温かさと眩しさに体を委ねながら、あなたは瞼を閉じた。
Con×2 成功
双子が倒されていなければ、双子の重なった声でこう聞こえる。
「この地下室で見たものは全て忘れてください。」
双子が倒されていれば、心地よい男の声でこう聞こえる。
「この地下室で見たものは、全て忘れるのです。」
呪文 《記憶を曇らせる》
双子のMPが足りなくなった場合は、ニャルが代わりにかける。
探索者が怪我をした場合は呪文 《治癒》を唱える
  

朝 (三日目)

※<聞き耳>に失敗していた場合は、何事もなく目が冷める
朝9:00、あなたは目を覚ます。
何度かみた客室の天井が見える。
体には柔らかな掛け布団。
あなたは昨日の深夜、地下室でなにかを確実にみた。

※記憶を消された場合
だが、何を見たのかを思い出すことができない。
記憶に靄がかかり、鮮明に思い出すことができない。

そして、昨日起こしに来てくれた朝陽は来ず、今日は嫌に閑散としている。
人の生活音が聞こえない。食事をつくる音も聞こえなければ、香りもしない。
  
廊下
日光をあび、きらりと光るものをあなたは見逃さなかった。
それは小さな鍵だ。(本殿の鍵)
  
中央の座敷
テーブルの上には人数分の皿に盛られたサンドイッチと置き手紙。

置き手紙
『夜まで私たちは帰ることができません。
ですので、朝食はテーブルの上のサンドイッチを召しあがってください。
昼食は冷蔵庫のなかのものを使って、自由に作ってください。
朝陽・夕陽』
  
双子の姉弟がいなくなった今、探索者はどこでも自由にみて回ることができる。
  
※再び地下室探索を示唆してあげると良いと思います
地下室
重厚そうな扉には鍵が2つ。
扉は固く閉ざされている。
  
地下室の鍵1.2を使用する。
かちりと音がし、解錠される。
扉は独りでに開ききり、あなたを地下へと誘うだろう。
日光が当たらない地下は酷く冷えきり、暗い。
電気は無い。
視界が悪いなか、あなたはさらに奥深くへと進んでいく。
ろうそくの燭台が暗闇で鈍く光っていた。
  
階段を降りきった先は、真っ直ぐな廊下が続く。
突き当たりには梯子が立て掛けられている。
  
梯子を上る
腐臭が鼻をつく。
血生臭い嫌な臭いでこの付近は満たされており、思わず顔を歪めてしまうことだろう。
梯子をのぼりきると、木造の建物の中へ出る。
梯子周りには木箱が数多く積み上げられている。
祭壇のような場所があり、その隣には扉がある。
  
祭壇
高く掲げられた瓶があり、その中には七本の角を生やした頭部がうねっている。
到底この世のものとは思えない邪悪さ、醜悪さを感じたあなたは背筋が凍る。<Sanc0/1>
  
瓶に触れようとする
理解不能の恐怖があなたを襲う。体が灼熱の炎にまかれるような錯覚をおぼえる。
本能が激しく警告している、これは容易く触れて良いものではないと。
  
木箱
重さはまばら。
蓋がついている。鍵は無いため開けられる。
  
開ける
蓋をあけると、閉じ込められていた悪臭が溢れだす。
あなたの肺を満たし、吐き気を催させる。
木箱に詰められていたのは肉塊。
引き裂かれた皮膚から臓物を引きずり出されている。
臓物に目玉や指、頭髪が絡まっている。
原型を留めぬそれの正体は、考えずともわかるだろう。<Sanc1/1d3>
※運転手の死体もある
  

ドアノブがついたシンプルな扉。
ドアノブを捻ったのなら、鍵が掛かっていることがわかる。
鍵は外側から掛けられている。
  
<アイデア >
神社の中に、唯一鍵がかけられていた場所があったことを思い出す。そこは本殿だ。
  
外側から本殿の鍵を開ける
カチリという耳障りのよい音がする。
相変わらずこの建物は触れると温かい。
鍵が開いたようだ。
  
入る
扉を開くと、冷たい風に乗って腐敗臭があなたにまとわりつく。
そこには数多く積み上げられた木箱や祭壇がある。
ここは地下から繋がる部屋だ。
  
神社から出ようとする
鳥居をくぐろうとすると、あなたの体に電流がはしる。
静電気よりも少し強い。体が痺れるような痛みが襲う。
神社と向こう側を綺麗に区切るように、鳥居が行く手を阻む。
まるで『逃がさない』とでも言っているように。
HP-1
ガアという鳴き声が聞こえた方向を見ると、一匹の烏があなたを見下ろしていた。
一瞬、人のような笑みを浮かべると何処かへ飛び去った。
  
特にやることが無ければ夜まで時間を進める。
辺りはすっかり暗い。時刻は20時になろうとしている。
南の方向にはフォーマルハウト見えつつあるだろう。
本殿には恐らく双子がいる。
本殿へ向かいますか?
  
本殿
声が聞こえる。
「……ぃあ!クトゥグア!」
3回目の最後の一文を唱え終えると、高らかとした笑い声が響きわたる。
「あぁ……クトゥグア様……お目覚めください。」
恭しく呟くと朝陽は瓶の蓋を音もなく、そっと開いた。
夕陽は、そんな姉をどこか悲しそうに見つめていた。
  
瓶の中から溢れた醜悪な炎が、何倍にも膨れ上がり、この小さな空間を糸も容易く覆い尽くしてしまう。
赤黒い炎は、嫌な音をたて、恐ろしい早さで灰を積み上げていく。
その空間の中心で座り込んだ朝陽は、恍惚とした表情で炎へ手を伸ばしている。
夕陽は姉に必死に手を伸ばすが、姉は気づいておらず、炎が邪魔で近づけないようだ。
  

【問いかけ】

ここで、探索者の皆さんに問いかけます。
あなたは、誰を助けて、誰を見殺しにしますか?
それとも、誰も助けないことを選択しますか?
※探索者が一人なら、双子のどちらかのみ助けられる
  
邪神に心を奪われた姉を殺しますか?
姉を愛してしまった弟を殺しますか?
どちらも救いますか?
どちらも殺してしまいますか?
  

エンディング分岐 双子版

条件:姉を殺して、弟を救った場合 ture end1
あなたは、姉の朝陽に必死の形相で手を伸ばす夕陽を遮り、炎から逃げた。
夕陽は姉を見つめていたが、朝陽の視線が弟に向けられることはなかった。
朝陽は炎にまかれ、皮膚が爛れた。髪がもえる嫌な臭いがする。
体の端から灰になり、美しかった朝陽の面影はどこにも見当たらなかった。
痛がることも、叫ぶこともせず、炎と自分だけの空間に身を委ねた朝陽の表情は、とても幸せそうだった。
  
夕陽は叫ぶ。
「姉さんッ!何で……!
……どうして、いつも僕ことは見てくれないの……。僕は、僕は誰よりも、姉さんはのことを愛していたのに……!」
夕陽は包帯まみれの手で顔を覆い、ただ泣くことしかできなかった。
その震える肩を抱いてあげていた姉の姿は、もう何処にもいない。
  
一人の人間と本殿を焼き付くした醜悪な炎は、眠りに落ちるように小さくなり、再び瓶の中へと帰っていった。
→五十嵐久子との接触へ進む
  
条件:姉を救って、弟を殺した場合 ture end2
朝陽はすでに全身の皮膚が溶け、爛れている。美しかった面影は全て消え失せていた。
意識はすでにない。
夕陽は「姉さんだけでも、どうか、助けてください。」
と微笑む。
「姉さんのことを愛してしまった僕を、姉さんは叱るかな。
……ごめんなさい。それでも、僕は愛してました。」
一筋の涙をこぼし、微笑んだ。
悲しそうなその声は、ごうごうと燃え上がる炎の音と本殿が崩れ落ちる音にかき消された。
  
本殿一帯を燃やし尽くした炎は眠りにつくように小さくなり、やがて瓶の中へと帰っていった。
朝陽は目を覚ます。皮膚を焼かれ、髪を焼かれ、喉を焼かれた彼女はあまりの激痛に悶える。
声にならない声で喘ぎながら、夕陽の姿を探す。
「ユ、ウヒ……ハ、ド、……コ?」
激痛により、意識が朦朧とする中、地を這いながら朝陽は本殿に手を伸ばす。
本殿は崩壊し、跡形もなく灰になった。
その様子をみて、夕陽はもうこの世に存在しないものになってしまったということに朝陽は気がついてしまった。
あなたは、姉を救い弟を見捨てた。
これからこの先、彼女は全身に負った火傷に苦しみながら、醜いと後ろ指をさされ孤独に生きていくことになるだろう。
そのような容姿を受け入れてくれる人はもういない。天涯孤独の人生を歩むことになる。
いつになってもその痛みは収まることはなく、死ぬ間際まで彼女は喘ぎ苦しむのだ。
→五十嵐 久子との接触
  
条件:双子両方を救った badend1
あなたたちは炎にまかれる双子に手を伸ばす。
朝陽はもう意識が無いようで、容易に本殿から救出することができた。
しかし、夕陽は自分に伸ばされた手から遠ざかるように、一歩、後ずさる。
「姉さんは、この炎の力に魅せられた。なら、僕もこの力を手に入れれば、姉さんは僕のことを見てくれるよね……?」
そう呟いた夕陽は、炎の核の部分を掴む。
熱さなど、もう感じなかった。
夕陽は、憎くて憎くて仕方ないクトゥグアの力を取り込もうと、そのまま一思いに飲み込んだ。咀嚼し、噛み砕き、自身の体に吸収していく。
「これで……これで僕も、姉さんに振り向いて貰える」
満ち足りた表情をしたのと同時に、夕陽の体が嫌な音をたて、燃え上がっていく。
当たり前だろう。只の人間が神を取り込もうとしたのだ。
クトゥグアの力を制御することができなかった彼は、炎を暴走させる。
※爆風により、探索者と本殿は吹き飛んだ。
ダメージ2d3

「やめて……こんなふうになるはずじゃ……姉さん、逃げてッ」
夕陽の意思と反して、醜悪な炎が朝陽を捕らえる。
炎に包まれた朝陽は目を覚ます。
彼女はこう呟く
「あぁ……クトゥグア様……私はあなたが一番です。」
夕陽は、顔を歪め、目に涙を貯めた。耳をつんざくような絶叫ののち、自らの手で、姉を焼き殺した。
朝陽がいたところには、灰が積み上がっており、突風とともに儚く散ってしまった。
最愛の人を失い、異形へと変貌した彼に手を差しのべてくれる者はいない。
独り世界に取り残された彼は、死ぬことも許されず、永遠の時をさ迷うように過ごすことだろう。
「姉さんは、やっぱり僕をみてはくれないんだね」
と呟くと、瞬きをした次の瞬間、夕陽の姿は跡形もなく消えていた。
→五十嵐久子との接触へ進む
  
条件:双子両方を殺した Happy end1
あなたは、炎にまかれる双子を見据え、その場を後にした。
崩壊する本殿の中、双子は互いの手を取り合い、見つめあっている。
「……姉さん、僕はね、姉さんのこと愛してる。誰よりも大切だし、僕の一番はいつだって姉さんだよ。」
「何いってるの。私だって、あなたのことを愛しているわ。
私にとって、たった一人の家族だし、大切な人だわ。」
「生まれ変わっても、姉さんの弟かいいな」
「可愛い弟の願いなら、断れないわね」
と顔を綻ばせ、抱き締めあう。炎の熱さなどもう感じない。
身を焼かれる数十分。彼らは世界で一番幸福で、穏やかな時間を過ごすことができただろう。
本殿が崩れ落ちた。
炎は小さくなると、眠りにつくように瓶の中へ帰っていった。
二人の姿はもう既にない。積み上げられた灰が風にのり、天高く舞った。
→五十嵐久子との接触へ進む
  

五十嵐久子との接触 エンディング分岐 夫婦版

神社の入り口から人の気配を感じとる。
足音は紛れもなく、こちらに近づいている。
神社内の灯りに照らされたその顔は、死人のような顔をした五十嵐久子だった。
「聡さんが……ここに居るような気がしたの……。
ねぇ、居るんでしょ?……会わせて……ッ!聡さんに会わせてッ!」
と危機迫った顔であなたに詰め寄る。
  

【問いかけ】

ここで、探索者のみなさんに問いかけます。
五十嵐久子に、夫が死んだことを伝えますか。伝えませんか?
最愛の者の死を、果たして彼女は受け止められるのでしょうか。
最愛の者の死を、見て見ぬふりをして生きるのは、果たして幸せなのでしょうか。
  
死んだ事実を伝える場合 説得+30
Happy end1 ※説得ロールが成功した場合
五十嵐久子は理解する。
認める。向き合う。否定し続けてきた、最愛の者の死を。
涙を流し、嗚咽をもらす妻を慰めるように、彼女の傍らに一瞬、夫である五十嵐聡の姿が見えたような気がした。
「私は、いつまでもあなたに添い遂げるわ。」
そう呟くと、村の方へと歩きだした。闇に溶け込み、足音も遠ざかっていった。
  
死んだ事実を伝えない、または<説得>に失敗した場合
Bad end1
妻は認めない。
頑なに言い張る。
「聡さんは生きている。死んでなどいない。」と。
全てを拒絶するように、自身を守るように腕で体を抱く。
ふらつく体を引きずりながら、大量の涙をこぼした彼女は闇の中へと消えていった。
  
騒動が終わり、時刻を確認すると既に深夜の0時を回っていた。
体にどっと疲れと眠気が振りかかる。
幸いなことに、双子がすむ家は何も被害がない。
朝がくるまで、あなたは眠りに落ちることにした。
  

朝(4日目)

あまり良く眠れなかった。ぼんやりと霞む視界。
今の時刻は5時。外はうす暗く、寒い。
今日はバスが復旧する日だ。
あなたはもとの日常に帰るため、支度をしなければならない。
バスの出発は7時だ。
  
弟を助けていた場合 ture end
昨夜、涙を流しながら放心していた夕陽を介抱しながら、あなたは彼を彼の部屋まで運んだ。様子を見に行きますか?

見に行く
声をかけても返事はない。衣擦れの音も、呼吸する音も聞こえない。
扉を開けると、横に倒れた木製の椅子。天井から垂れた太い縄。
その先に括られていたのは、白い首。
その首の主は、包帯まみれの手足をだらりと下ろしていた。
夕陽は、首を吊っていた。
彼は最愛の人を失い、生きていく意味も失った。
この世に存在する意味をなくした彼は、姉のもとへ向かうべく、自ら死を選ぶ。
姉にとってはクトゥグアが絶対だったように、彼にとっては、姉という存在がなにより絶対なのだから。<Sanc1/1d3>
→村へ進む
  
姉を助けていた場合。Ture end
昨夜、あなたは全身火傷を負った朝陽を自室まで運んだ。
様子を見に行きますか?

見に行く
扉を隔てた向こう側から、呻き声が聞こえる。
扉を開くと、中には美しかった面影はどこにもない、醜い女性がいた。
赤黒い肉が爛れ、所々には骨のようなものも見えた。
あなたの存在には気が付いていない。それほどひどい痛みなのだろう。
これからこの先、彼女は全身に負った火傷に苦しみながら、醜いと後ろ指をさされ孤独に生きていくことになるだろう。
そのような容姿を受け入れてくれる人はいない。天涯孤独の人生を歩むことになる。
いつになってもその痛みは収まることはなく、死ぬ間際まで彼女は喘ぎ苦しむのだ。
自分が、あんなにも愛されていたことを知らずに。
→村へ進む
  
村へ
五十嵐 久子への説得が成功していた場合 happy end
村に近づくと、川辺に人だかりが出来ており、騒がしい。
人だかりの内の一人が、声高々にこう言うのだ。
「おい、五十嵐さんの奥さんの水死体が見つかった!入水自殺だって!」
人違いかもしれない。
しかし、外見、年齢、性別、どれもがあなたの知る五十嵐久子と重なった。
遺書を読むことができますが、読みますか?

読む
『聡さんは死にました。
生きていないなら、彼の帰りを永遠に待つ必要はありません。
私が向かえばいいのです。
聡さんの元へ行ってきます。
最愛である、彼の死を受け止めた上で、私は自ら、生を手放します。』
→バス停へ
  
バス停
バスがあなたを待っていた。
車内には運転手を除き、誰もおらず、ひどく静かだ。
※この時に運転手を見ても、普通の男性
  
バスに乗る
※五十嵐 久子への説得が失敗していた、伝えていなかった場合
  
7時ちょうどにバスは動きはじめ、あなたをもとの日常へと送り届けるはず、だった。
あなたの町のバス停が近くなった頃だろうか、バスの前方に人影が現れる。
よろよろとした足取りで、バスの前へ立ちふさがる。
白髪混じりの黒髪、血色の悪い肌、そして泣き腫し虚空を見つめる瞳、五十嵐久子がそこにはいた。
運転手は五十嵐久子が見えているのか、いないのか、止まる気など毛頭ないようにみえる。
ドンっという鈍い衝撃の後、バスは停止した。
町にいる人々が悲鳴をあげ、携帯を片手に何かを叫んでいる。恐らく救急車や警察だろう。
運転手は魂を抜かれてしまったかのように、ぼんやりと空を見つめている。
人を轢き殺した感覚 <sanc0/1d2>
  
この後、あなたは警察や救急隊員に話を聞かれ、解放される。
五十嵐久子は全身を打ち付け死亡した。
やっとの思いで家へと帰ることができるだろう。
あまりにも目まぐるしく、非現実的な経験。
何が正しくて何が間違っていたのだろう。
自分が選んだ選択は、果たして正解だったのか。
美しい紅葉が肌寒い風に吹かれ、はらりと儚く散った。
END
San回復 1d10
クトゥルフ神話技能+3
  
バスに乗る
※五十嵐 久子への説得が成功していた場合
  
7時丁度、バスは動きはじめる。
赤や黄色に色づいた葉は、息を飲むほど美しい。
予定外だらけの旅行、先日の出来事をあなたは忘れることができないだろう。
自分が選択した行動はあっていたのだろうか。
それとも間違っていたのだろうか。
バスの心地よい揺れに、そっと体を預けた。
END
San回復 1d10
クトゥルフ神話技能+3
 
解説
・朝陽が無傷な理由
→興味本意でクトゥグア(実際は召喚に失敗したクトゥグアの一部)を外に出してしまった幼い頃の朝陽は、火が自分を包む前に驚いて逃げ出す。
この事件が起こってしまったのは、皆が寝静まった真夜中であったため、両親と弟は火災に巻き込まれた。両親は煙により気絶し、逃げ遅れ、運良く目が覚めた夕陽は大火傷を負うが生き延びた。
朝陽自身も火傷は負ったが、成長の過程で消えてしまうような軽いものだった。朝陽は燃え上がる炎を呆然と見つめ、魅了される。
・人形を模した紙の意味
→形代というもので、不浄なものを根絶するために使用。
今回この神社は、“負の感情を焼却し、新たな一歩を踏み出す”ことで名が知れているため、この儀式の為に使う。
・木箱の死体
→朝陽が生け贄として用意したもので間違いない。
・初日の時間跳躍
→これに関しては、双子は全く関与しておらず、ニャルラトホテプが魔術を行使した。これを機に、双子は探索者を生け贄にすることを考える。
・祭壇の小瓶
→書庫で見つける書物(図書館③)瓶の中身はクトゥグアではなく、召喚に失敗した生ける漆黒の炎なのではないか?と探索者に緊張感を与えるためのもの。
実際、あの小瓶の中身の正体はクトゥグアではなく、クトゥグアの召喚に失敗し、ニャルラトホテプによって瓶に封じ込められたクトゥグアの一部。つまり生ける漆黒の炎。
生ける漆黒の炎についての言及はエイボンの書なため、双子は瓶の中身をずっとクトゥグアだと思っていた。

あとがき
シナリオの閲覧、プレイありがとうございます。
ここまで長いシティシナリオは初めて作りました。
読みづらい、分かりづらい点がありましたら気軽に質問をしてください。
クローズドと違って行動範囲が大きくて作るの大変ですね。
今回のシナリオは”後味の悪さ”を目標に作ってみたので、存分に味わって頂けたらな、と思います。
結局、物語の黒幕はニャルラトホテプが不知火家にクトゥグアの一部を与えたせいです。むかつきます。
テストプレイの結果は双子、夫婦共にバッドエンドで幕引きでした。みなさんお優しいですね。終了後の雰囲気がお葬式でしたけど。
他の探索者の皆さんが、どのような選択を取るのかとても興味深いです。

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