2024年07月30日更新

無彩色の塗装

  • 難易度:★★|
  • 人数:1人~4人|
  • プレイ時間:1時間(ボイスセッション)

【あらすじ】
 最愛の妹が惨殺され、憎しみだけで生きてきた画家。彼女は極度のショックから色を失ってしまったのだった。彼女は、もう一度色を取り戻すことはできるのだろうか。
 
⚫形式 クローズド
⚫人数 1人~4人
⚫推奨技能 説得
⚫推定時間 1時間〜1時間30分

5/9 背景追加

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ストック

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コメント

【背景】

 悲劇の一連を眺めていたニャルラトホテプ。このような状況におかれた探索者は、一体どのような選択を取るのかを見るため、探索者は巻き込まれてしまうことになる。
 猟奇殺人を起こした男は、復讐と憎悪に心を燃やすシアエガの化身。男は化身である自覚は無いため、無意識のうちに生け贄を集め、シアエガ復活を目論んでいる。
ただ、生け贄収集をしていることは口外しようとはしないため「殺しに意味なんかない」と男は言うだろう。
今回は足を贄として捧げたが、その時々で部位は変わり、只いたぶって殺すだけということもある。
 
復讐や憎悪は感染、そして蔓延し、今回のような悲劇を産み出すのだ。
 
【NPC】
藤堂 遥花(とうどう はるか) 25歳 女性 画家
STR15 CON13 POW12 DEX6 APP14 SIZ11 INT14 EDU8
 早くに両親を無くし、2人だけの家族だった。年の離れた六花をなによりも可愛っており、何に変えても守ると決心。
 遥花が25歳の誕生日を迎えるとき、六花が行方不明になり、やっと出会えた最愛の妹の姿は、只の肉の塊。気がつけば、自身の視界から色は消え失せていた。

藤堂 六花(とうどう りっか)18歳 女性 高校生
STR14 CON10 POW7 DEX5 APP12 SIZ17 INT11 EDU17
 優しくて明るい姉と、その姉が描いた絵が大好きだった。姉の誕生日を祝うことを楽しみにしていた六花だったが、その夢は叶わずに終わってしまう。
  

【導入】

 夜も更けた頃、探索者はテレビやインターネットを介して、とあるニュースを目にする。それは、長らく行方不明になっていた少女“藤堂 六花”が、惨殺死体として発見されたというものだ。
 これから眠るというのに、随分と気分の悪くなるようなニュースだと感じながら、探索者は深い眠りへと落ちるのであった。
 
 目を覚ますと、そこは絵の具のような香りで満たされた、正方形の部屋だ。画家のアトリエを彷彿とさせる。扉はどこにもなく、下へ続く階段があることが分かる。
 辺りを見渡せば、ファイル、棚、椅子、イーゼルとキャンバス、テーブルがあった。足元には一枚のメモが落ちている。
(自分以外に探索者がいれば、視認することができる。)
※RPを開始してください。
 
・足元のメモ
表『殺しに善も悪も無い。命を奪えば、どんな理由があろうともそれは只の殺し。君が心の底から憎むアイツと同じさ。』
 
裏『私の瞳は、私の世界は、あの子を亡くしてから色を失った。』
 この文字を読んだ探索者は、視界が数回点滅した後、一瞬だけ目の前が白黒になる。
 
・棚
 木製のシンプルな棚。両開きの扉がついている。
開ける→分厚い冊子とノート、ガーゼに包まれた小さな何か。そして綺麗にラッピングが施された箱がある。
 
分厚い冊子
 アルバムだ。夜見たニュースの女性“藤堂 六花”とよく似ている。また、藤堂六花の隣で一緒に映る女性は、とても藤堂と似ている。関係は良好だったのだろう。
 仲睦まじく映る2人の女性の姿が印象的だ。
 
似ている女性に対して<知識-20>
 探索者は、彼女が画家の“藤堂遥花”であることを知っていた。画家としては、中々名の知れた存在であること、また、最近はスランプに陥ってしまったことを探索者は知っている。
 
ノート
 とあるページで手が止まる。歪んだ文字で文章が綴られていた。日付などがあることから、日記だろう。
 
『許さない。あの子から笑顔を奪ったことを。
許さない。あの子から未来を奪ったことを。
許さない。あの子から命を奪ったことを。
 
……絶対に、同じ目にあわせてやる。』
 力強く綴られ、インクで文字が潰れている。紙にはシワがよっており、最後の文字は微かに滲んでいた。
 
ガーゼに包まれた何か
 あまり重さはないが硬い。ガーゼを取り払うと、そこには乾いた血液で汚れたバレッタが入っていた。白い花をモチーフにしたものだが、すっかり汚れてしまい、所々欠けている。《sanc0/1》
<アイデア>
 探索者は眠りに落ちる前に見たニュースを思い出す。これは、藤堂六花が身に付けていたバレッタと同じものだと。
 
ラッピングされた箱
 白い箱に赤いリボンがかけられている。金色の線で縁取られたお洒落なカードが、なめらかな赤いリボンに挟まっている。
 
カード→
『お姉ちゃんへ。
いつも楽しそうに絵を描くお姉ちゃんの顔が好きだよ!お姉ちゃんのことも、もちろん大好きだけど、お姉ちゃんが描く絵はキラキラしてて、温かくてもっと好き!
 最近、長い髪の毛に絵の具が付いて邪魔そうだったから、お姉ちゃんに似合いそうな物をプレゼントするね!使ってね!誕生日おめでとう!
 
P.S.お姉ちゃんの長い髪に憧れて、私も最近伸ばしてるの!実はプレゼント、お揃いです!
六花』
 
箱を開ける→中には白い花をモチーフにした綺麗なバレッタが入っていた。うっすらと透明で、光を反射させ輝いている。
 汚れや傷ひとつなく、全く使用感がない。
 
ファイル
 夜見たニュースについての記事と男の写真だ。藤堂六花の殺され方について詳細に書かれている。
 
記事→
『少女は肩まであった頭髪をまばらになるまで引き抜かれ、頭皮が赤く露出していた。恐らく、生きたまま目玉をくり貫かれており、叫ばないよう口には食器用洗剤を流し込んだ痕跡を発見。耳は両方とも鋭利な刃物で切り取られ、無造作に投げ捨てられていた。
 何ヵ所も刃物で突き刺すと、腹を引き裂き、臓器を引きずりだす。引きずり出されたその臓器は、一体何の臓器なのか分からなくなるまで、執拗に切り刻まれていた。
 何故か、少女の左足の膝から下だけがなく、今も見つかっていない。』
 読み終えた探索者は、腹の底から沸き上がる吐き気を感じた。
 
写真
 不自然なアングルが多い男の写真が数枚。不健康そうな顔と体型をしている。
 
椅子
 木製の椅子だ。絵の具が付いている。絵の具が出されたパレットと筆が置いてあった。
 パレットの下に、紙の端が見えている。

読む→『こんなことが正しいとは思っていない。あの子が喜ぶ筈ないってわかっている。
__それでも、私は』
 ここで文字が途切れている。
 
キャンバス
 イーゼルに立て掛けられたキャンバス。そこには花のバレッタを身につけた少女の絵が描かれていた。
 微笑んでいるがどこか寂しげで、冷たい印象を受ける。着色は手付かずだ。
 
<目星>
 絵の中の少女が、一瞬涙を流したように見えた。キャンバスに触れてみれば、微かに濡れており、見間違いではなかったことがわかる。
《sanc0/1》
<アイデア>
 藤堂六花に似ていると探索者は感じる。
 
テーブル
 パステル、鉛筆、色鉛筆、絵の具、筆、パレットナイフなどで溢れかえっている。中央には大きなスケッチブックがある。
 
スケッチブック
 年季の入っているスケッチブック。美しいデッサンなどが何枚も描かれている。最後のページには、お世辞にも上手いとは言えないような、けれども愛嬌のある絵が描いてあった。
 小さく“おねえちゃんのにがおえ”と平仮名で書いてある。
また、このページには鍵が挟まっていた。
※鍵は階段下の扉に使用
 
階段
 明かりはなく、下に進むにつれ、暗さを増していく。
 奥へと続く小さな黒い染み。それは仄かに鉄臭く、生臭かった。
 

 男女が話している声が聞こえるが、はっきりとは聞こえない。
 
<聞き耳>
 女性が静かに口を開く。
 
「ねぇ、何か言い残すことはある?」
 
 間髪いれずに男は声を発した。
 
「無いね。アンタは俺を恨んでいるのか?アンタ、馬鹿だな。どう考えたって、殺す方よりも、呆気なく殺されるような間抜けが悪いんだろ。」
 
と女性を嘲笑っている。女性の声はぱたりとしなくなった。
 
扉を開ける
→扉を開けると、そこには椅子に縛られ体から血を流す男性と、冷めた目付きでその男性を見下ろす女性がいた。
 部屋にはチェーンソーやノコギリといった工具で溢れている。女性は、先程アルバムで見た女性にそっくりだ。
 男性は、ファイルの中にあった写真の男性と似ている。探索者の存在に気がついた男性は助けを求めて声を掛けているが、女性はその様子をただじっと見つめている。
 
【問い】
 それでは、探索者に問う。
 あなたは、妹の仇を取るために殺人を犯そうとする姉を止める?それとも、止めない?
 彼女は、自らの手を汚してでも妹の仇を取るため、この男の息の根を止めようとしている。その覚悟はとてつもないものだろう。それもそうだ。彼女はたった一人の愛する家族を惨たらしく殺されているのだから。
 彼女を放っておけば、必ずこの男を殺すだろう。よく考えて選択して欲しい。
 
男に話しかける
「なぜ殺した?」→「そんなの、理由なんてない。ただそこに、その女が居たからだ。ま、運がなかったんだろうな。」
「反省の気持ちは?」→「無いね。逆に聞くが、どうして反省しなければならない?食べるために動物を殺すことが許されるのなら、無意味に殺すことだって許されるべきだろう?」
「藤堂六花の足はどうした?」→「あぁ……。とっくの昔に食った。とんなもんなのか気になってたから良い機会だったな。食えない味じゃなかった。姉妹で味の違いでも比べてみるか?」
<心理学>
成功 男は何か隠している。真実を話していない。
失敗 これが真実だ。
 
【エンディング分岐】
条件:殺人を止めなかった。
 探索者は、女の殺意を、憎しみを、恨みを止めなかった。乱暴に捕まれた男の頭髪が、草をちぎるような音と共に引き抜かれる。
 躊躇することなく、女の華奢な指が、男の目玉を突く。強引に指を差し込み、ぬるぬると動く目玉を捕らえ、引き抜いた。ガムテープをちぎるような音が響く。
 口には洗剤の代わりにカラフルな絵の具を。耳はパレットナイフで削いだためぐちゃぐちゃだ。
 何度も何度も男の体に刃物を突き立てるが、男はまだしぶとく生きていた。いや、この一瞬で終わらないよう、女は手加減していた。
 動けぬ男を床に突飛ばし、腹を大きく、深く裂いた。男は軽く痙攣している。露になる人間の内側。ぴくりぴくりと震える臓物を、引きずりだし、踏みつけ、刻む。
 立ち込める生臭さと鮮やかな赤が探索者の視界と肺いっぱいに広がった。気がつけば男の息は無く、そこには濃密な血液の臭いと、先程までよく喋っていた肉塊だけが残った。
《sanc1d3/1d6》
 
「お前の足なんか、食べようとも思わない。」
 
 そう一言だけ呟くと、部屋の隅に置かれたチェーンソーで、男の左足を切り落とす。彼女は満足したはずだ。やっと恨みを晴らしたはずだ。けれども彼女は色を取り戻さなかった。
 むしろ、より色がなくなり、心が締め付けられ、息が出来なくなるようなだけが痛みが残った。
 ぽろぽろと無表情で涙を溢す彼女の瞳は、もうなにも写してはいない。
 
「……駄目なお姉ちゃんでごめんね……六花。」
 
 彼女は手に持っていたチェーンソーを自身の首にあてがうと、躊躇うことなく体から切り離した。
 目の前で行われた残虐な光景により、猛烈な頭痛と吐き気で立っていられなくなった探索者は、そのまま血の海に倒れるようにして意識を失う。
 
 暫くして自室で意識を取り戻した探索者。暫く呼吸を止めていたかのような息苦しさだ。夢にしてはあまりにもリアルだった。身体中が嫌な汗でまみれている。
 部屋では何故かテレビがついており、大きくニュースを取り上げていた。
 
「速報です。藤堂遥花さんの死体が自宅で見つかったようです。詳しいことはまだ解っておらず、捜査を続けるとのことです。
 また、彼女が最後に遺した無彩色の少女の絵画に価値が見いだされ、2億7000万円まで価値がつり上がっています。この絵画は亡くなった妹の肖像画と言われており……。」
 
 夢で見たあの少女の絵画は寂しく微笑み、今も色が無いままだった。寂しげな少女の瞳から、ぽろりと涙が溢れたような気がした。
バッドエンド
san回復2d3
 
条件:殺人を止めた。
※止めるには、〈説得〉に成功する必要がある。バレッタを持っていくと説得に+30%、KPが納得のいく説得ができたら随時+補正。
 
 探索者は、女の殺意を、憎しみを、恨みを止めた。女は膝から崩れ落ちるようにして、その場に座り込む。両手で顔を覆い、静かに泣いていた。
 
「こんなことをしても、六花は喜ばないって十分分かってた。こいつと同等の存在になることも。
 どうしても、六花から幸せを奪ったこいつが許せなくて、憎くて、殺してやりたくて、仕方なかった。毎日気が狂いそうになりながら、こいつを殺してやることだけを考えて、なんとか今日まで生きてきた。
 ……でも、気がついたら、私もこいつと同じ目をしていたの。人殺しの目。
 
____でも、今はもう違う。」
 
 女は力強い眼差しで男を見据え、言葉を紡ぐ。
 
「あなたがやった事は絶対に許さない。だから、正しいやり方でお前を裁く。二度とこうやって悲しんだり、苦しむ人が現れないように、二度と大切な人を奪われないように。」
 
 空間に亀裂が入り、ガラスが割れるような音がする。崩れ行く部屋の中、女はゆっくりと探索者の方を向き、少し微笑んだ。
凛とした表情をした彼女の瞳に濁りはなく、人殺しの目などではなかった。そのような彼女を見届けて、探索者は意識を失った。
 
 暫くして自室で意識を取り戻した探索者。部屋では何故かテレビがついており、大きくニュースを取り上げている。
 そこに映っていたのは、先程の夢でみた男の姿だった。
 
「中村晶被告は、藤堂六花を極めて残虐な殺し方をしたということ、また、以前にも同じ手口で殺害をしたことが明るみになり、本日午前、逮捕されたようです。数人に渡って残虐な殺人を繰り返したため、死刑判決は免れないでしょう。それでは、次のニュースです。」
 
 ニュースキャスターは続ける。
 
「画家の藤堂遥花さんが、新しい絵画を完成させたようです。妹の藤堂六花さんを亡くし、長らくスランプに陥っていたようですが、素晴らしい絵画を描きあげたようですね。こちらをご覧ください。」
 
 画面が切り替わった。そこには夢の中で出会った女性と、あの絵画があった。
 
「私は妹を失い、犯人への憎しみだけで生きていました。犯人を同じ手口で殺してやろう。と思い、実行まで移すところでした。
 ですが、そんな私を引き留めてくれた方がいたんです。あの方に、心の底から感謝しています。私がいま、人殺しではなく、画家として、そして妹の姉としてここに立つことができているのは、あの方のお陰です。
 ショックで暫く色が見えなくなっていましたが、やっと色を取り戻すことができました。この絵画は、亡くなった私の妹です。」
 目を細めて絵画を見る藤堂遥花。無彩色だったあの絵画は、頭髪に、肌に、瞳に色がつけられた。柔らかく微笑む姉妹は、この世界に存在するなによりも尊くて、美しい。
 2人の髪には、お揃いのバレッタが輝いていたのを、探索者は見逃さなかった。
ハッピーエンド
San回復 3d3
バレッタを渡した san回復1d3
芸術(絵画)+20

【あとがき】

 無彩色の塗装(むさいしょくのとそう)のプレイ、閲覧ありがとうございます。
 見事ハッピーエンドを迎えた友人たちからは、珍しくハッピーエンドらしい結末だったと喜ばれました。ですが、妹が亡くなっている状態で始まったのは気に入らなかったようです。怒られました。
 今回、ハッピーエンドを迎えられたのは、友人らのPCは警察官という職業だったというのも要因の1つとして考えられますね。
 さくっと回せる短時間クローズドシナリオとなっていますので、ぜひプレイして頂けたらなと思います。
 質問や疑問点などありましたら、お気軽にご連絡下さい。私はシナリオのストックが無くなったので、書きかけのシナリオを進めたいと思います……。

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GLG 2020年11月23日

突然、失礼します。
このシナリオお借りさせていただきます。
動画投稿用に使用する予定です。

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